(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191849
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】衝撃緩衝材
(51)【国際特許分類】
F16F 7/12 20060101AFI20221221BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20221221BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20221221BHJP
G21F 5/08 20060101ALI20221221BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16F7/12
F16F15/02 Z
F16F7/00 C
G21F5/08
G21F9/36 501J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100315
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】角 大詩
(72)【発明者】
【氏名】室屋 格
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺田 愉考
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AB01
3J048AC06
3J048AD05
3J048BC09
3J048EA07
3J066AA22
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC03
3J066BD07
3J066BF02
(57)【要約】
【課題】衝撃緩衝材の衝撃吸収性能を高める。
【解決手段】少なくとも一実施形態に係る衝撃緩衝材は、面心立方格子構造における立方格子に該当する第1立方体の8つの頂点、及び、第1立方体の6つの面のそれぞれにおける中央の点を含む14の点にそれぞれ配置され、点を囲むように形成された複数の第1殻部と、最近接の第1殻部同士を接続する複数の第2殻部と、を含む単位構造が繰り返し現れる中空の殻構造を有する。複数の第1殻部のそれぞれは、第1殻部から第2殻部にかけて曲率が徐変する曲面で第2殻部と接続される。複数の第1殻部及び複数の第2殻部は、板厚に分布を持つ。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面心立方格子構造における立方格子に該当する第1立方体の8つの頂点、及び、前記第1立方体の6つの面のそれぞれにおける中央の点を含む14の点にそれぞれ配置され、前記点を囲むように形成された複数の第1殻部と、
最近接の前記第1殻部同士を接続する複数の第2殻部と、
を含む単位構造が繰り返し現れる中空の殻構造を有し、
前記複数の第1殻部のそれぞれは、前記第1殻部から前記第2殻部にかけて曲率が徐変する曲面で前記第2殻部と接続され、
前記複数の第1殻部及び前記複数の第2殻部は、板厚に分布を持つ
衝撃緩衝材。
【請求項2】
前記面心立方格子構造における1つの前記頂点と、該頂点を含む3つの前記面のそれぞれにおける中央の点を含む4つの点を頂点とする第2立方体において、前記4つの点の1つをA、該第2立方体における前記4つの点以外の4つの頂点の1つをC、A点とC点とを結ぶ該第2立方体の辺を含む該第2立方体の面の1つ、についての中心をB、該第2立方体の中心をDとし、
A点、B点、C点、及びD点を頂点とする三角錐に関して、
前記B点と前記D点とを結ぶ前記三角錐の辺上の点を第1点とし、
前記B点と前記C点とを結ぶ前記三角錐の辺上の点を第2点とし、
前記A点と前記C点とを結ぶ前記三角錐の辺上の点を第3点とし、
前記A点と前記D点とを結ぶ前記三角錐の辺上の点を第4点とし、
前記第1点、前記第2点、前記第3点、及び前記第4点を含む曲面を単位曲面としたときに、
前記殻構造は、複数の前記単位曲面に対応する複数の領域から構成されている
請求項1に記載の衝撃緩衝材。
【請求項3】
前記殻構造は、前記第1点と前記第4点とを結ぶ前記単位曲面の稜線における板厚が前記第2点と前記第3点とを結ぶ前記稜線における板厚よりも薄い
請求項2に記載の衝撃緩衝材。
【請求項4】
前記殻構造は、前記第1点と前記第2点とを結ぶ前記単位曲面の稜線における板厚が前記第3点と前記第4点とを結ぶ前記稜線における板厚よりも薄い
請求項2に記載の衝撃緩衝材。
【請求項5】
前記殻構造は、前記第1点と前記第2点とを結ぶ前記単位曲面の稜線から前記第3点と前記第4点とを結ぶ前記稜線に向かうにつれて前記板厚が漸増する
請求項4に記載の衝撃緩衝材。
【請求項6】
前記殻構造は、前記第1点と前記第2点とを結ぶ前記単位曲面の稜線から前記第3点と前記第4点とを結ぶ前記稜線に向かうにつれて、初めに前記板厚が漸増し、次いで前記板厚が漸減し、その後、前記板厚が漸増する
請求項4に記載の衝撃緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衝撃緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
限られた体積の中でより多くのエネルギを吸収するように構成された衝撃緩衝材のニーズがある。このような衝撃緩衝材は、一例を挙げると、例えば使用済み核燃料集合体を収容するキャスクにおいて、落下時等の衝撃を緩和するために用いられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような衝撃緩衝材では、衝撃吸収性能を高めるため、応力が略一定でひずみが増加するプラトー領域の幅が広いことが望ましい。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、衝撃緩衝材の衝撃吸収性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る衝撃緩衝材は、
面心立方格子構造における立方格子に該当する第1立方体の8つの頂点、及び、前記第1立方体の6つの面のそれぞれにおける中央の点を含む14の点にそれぞれ配置され、前記点を囲むように形成された複数の第1殻部と、
最近接の前記第1殻部同士を接続する複数の第2殻部と、
を含む単位構造が繰り返し現れる中空の殻構造を有し、
前記複数の第1殻部のそれぞれは、前記第1殻部から前記第2殻部にかけて曲率が徐変する曲面で前記第2殻部と接続され、
前記複数の第1殻部及び前記複数の第2殻部は、板厚に分布を持つ。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、衝撃緩衝材の衝撃吸収性能を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材を用いる構造物の一例としての輸送容器の正面図である。
【
図2】衝撃緩衝材の理想的な応力ひずみ線図のグラフである。
【
図3】幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材の殻構造を示す斜視図である。
【
図4A】幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材の殻構造について説明するための図である。
【
図4B】幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材の殻構造を形状を決定する単位曲面について説明するための図である。
【
図5A】幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材の殻構造について説明するための図である。
【
図5B】
図5Aのラティス構造における円柱部材を円筒部材に置き換えた図である。
【
図5C】
図5Bのラティス構造における円筒部材同士を滑らかな曲線で接続した殻構造を示す図である。
【
図6A】幾つかの実施形態に係る単位構造における単位曲面を示す図である。
【
図6B】幾つかの実施形態に係る単位構造における単位曲面を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る衝撃緩衝材における殻構造の板厚分布を示すコンタ図である。
【
図8A】
図7に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8B】
図7に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8C】
図7に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8D】
図7に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9A】殻構造の板厚分布が一定である衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9B】殻構造の板厚分布が一定である衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9C】殻構造の板厚分布が一定である衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9D】殻構造の板厚分布が一定である衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10A】殻構造の板厚分布が一定である
図9Aから
図9Dに係る衝撃緩衝材、及び、
図7に示す衝撃緩衝材を圧縮したときの応力ひずみ線図である。
【
図10B】板厚比と緻密化開始ひずみとの関係を示すグラフである。
【
図11】他の実施形態に係る衝撃緩衝材における殻構造の板厚分布を示すコンタ図である。
【
図12A】
図11に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図12B】
図11に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図12C】
図11に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図12D】
図11に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】板厚比と緻密化開始ひずみとの関係を示すグラフである。
【
図14】さらに他の実施形態に係る衝撃緩衝材における殻構造の板厚分布を示すコンタ図である。
【
図15A】
図14に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15B】
図14に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15C】
図14に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15D】
図14に示す衝撃緩衝材の圧縮のシミュレーション結果を示す図である。
【
図16B】殻構造の板厚分布が一定である
図9Aから
図9Dに係る衝撃緩衝材、
図11に示す衝撃緩衝材、及び、
図14に示す衝撃緩衝材を圧縮したときの応力ひずみ線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
図1は、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材を用いる構造物の一例としての輸送容器12の正面図である。
幾つかの実施形態に係る輸送容器用緩衝体10は、例えば
図1に示すように、被輸送物15を収容可能な輸送容器12に装着される緩衝材である。
例示的な実施形態では、輸送容器12は、有底筒状の輸送容器本体14と、被輸送物15を出し入れするための開閉蓋18とで構成される。
例示的な実施形態では、輸送容器12は、内部に被輸送物15として使用済み核燃料などの放射性物質を収容する筒状の外形を有するキャスクである。
図示した実施形態では、輸送容器12は円筒形の形状をしたキャスクである。
図1中、矢印a方向は輸送容器12の軸方向を示し、矢印b方向は輸送容器12の半径方向を示す。
【0011】
輸送容器用緩衝体10は外郭を形成するケーシング16を備え、ケーシング16は輸送容器12の端部が嵌入される凹部16aを有している。また、ケーシング16は衝撃緩衝材20が充填される内部空間sを有する。
衝撃緩衝材20は、後述するように、単位構造が繰り返し現れる中空の殻構造を有する。
【0012】
輸送容器12の転倒時や落下時等に、緩衝体10に衝撃又は荷重が加わると、衝撃緩衝材20が塑性変形することで衝撃を吸収するため、輸送容器12への衝撃を緩和できる。
【0013】
(衝撃緩衝材の特性について)
図2は、衝撃緩衝材の理想的な応力ひずみ線図のグラフである。
衝撃緩衝材は、防護対象の構造物に衝撃力を伝達させないよう、比較的低い応力で比較的大きくひずむまで潰れ続けることが望ましい。そのため、衝撃緩衝材を圧縮した場合、
図2に示すような、ひずみが増えても応力が略一定となる所謂プラトー領域31が広いことが望ましい。
【0014】
(衝撃緩衝材20の形状について)
図3は、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造を示す斜視図である。
図4Aは、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造について説明するための図である。
図4Bは、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造の形状を決定する単位曲面について説明するための図である。
図5Aは、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造について説明するための図であり、面心立方格子構造における複数の格子点について、最近接の格子点同士を円柱部材で接続したラティス構造を表している。
図5Bは、
図5Aのラティス構造における円柱部材を円筒部材に置き換えた図である。
図5Cは、
図5Bのラティス構造における円筒部材同士を滑らかな曲線で接続した殻構造を示す図である。
【0015】
幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20は、
図3に示すように、単位構造3が繰り返し現れる中空の殻構造1を有する。具体的には、幾つかの実施形態に係る単位構造3は、面心立方格子構造における立方格子に該当する第1立方体110の8つの頂点(格子点)111、及び、第1立方体110の6つの面113のそれぞれにおける中央の点(格子点)115を含む14の点にそれぞれ配置され、この14の点を囲むように形成された複数の第1殻部101と、最近接の第1殻部101同士を接続する複数の第2殻部102と、を含む。すなわち、幾つかの実施形態に係る単位構造3では、面心立方格子構造における格子点の位置に第1殻部101が配置されている。
幾つかの実施形態に係る単位構造3では、複数の第1殻部101のそれぞれは、第1殻部101から第2殻部102にかけて曲率が徐変する曲面で第2殻部102と接続されている。
【0016】
複数の第1殻部101と複数の第2殻部102とを含む単位構造3が繰り返し現れる中空の殻構造1を有する衝撃緩衝材20は、例えば金属を積層して製品を造形する3次元積層造形(付加的製造方法:additive manufacturing)によって、造形できる。
【0017】
また、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造1は、以下のように説明することもできる。
幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造1は、
図5Aに示したラティス構造51に類似した構造を有する。すなわち、
図5Aに示すように、面心立方格子構造における複数の格子点111、115(
図3参照)について、最近接の格子点111、115同士を円柱部材55で接続したラティス構造51から出発し、
図5Bに示すように
図5Aにおける円柱部材55を円筒部材56に置き代えることで、
図5Bに示したラティス構造52を得る。
そして、
図5Bに示した円筒部材56同士の交差部57、すなわち面心立方格子構造における複数の格子点111、115に対応する位置において、円筒部材56同士が滑らかな曲線で接続されるように円筒部材56の筒部分の曲率を変更することで、
図5Cに示した殻構造53を得る。
このようにして得られた殻構造53は、上述した殻構造1と同じ構造を有する。
【0018】
(単位曲面Ω、Ω’について)
図6A及び
図6Bは、幾つかの実施形態に係る単位構造3における単位曲面Ω7及び単位曲面Ω’8を示す図である。
幾つかの実施形態に係る単位構造3は、上述したように面心立方格子構造に由来する構造を有しているので、以下で説明する単位曲面Ω7及び単位曲面Ω’8が繰り返し現れる。換言すると、幾つかの実施形態に係る単位構造3の形状は、単位曲面Ω7及び単位曲面Ω’8によって決定される。
【0019】
図4A及び
図4Bに示すように、面心立方格子構造における1つの頂点(格子点)111Aと、該頂点111Aを含む3つの面113A、113B、113Cのそれぞれにおける中央の点(格子点)115A、115B、115Cを含む4つの点を頂点とする第2立方体140について考える。
上記4つの点の1つをA、該第2立方体140における上記4つの点以外の4つの頂点apxの1つをC、A点とC点とを結ぶ該第2立方体140の辺acを含む該第2立方体の面の1つ、についての中心をB、該第2立方体140の中心をDとする。
A点、B点、C点、及びD点を頂点とする三角錐TPに関して、B点とD点とを結ぶ上記三角錐の辺bd上の点を第1点P1とする。B点とC点とを結ぶ上記三角錐TPの辺bc上の点を第2点P2とする。A点とC点とを結ぶ三角錐TPの辺ac(第2立方体140の辺ac)上の点を第3点P3とする。A点とD点とを結ぶ上記三角錐TPの辺ad上の点を第4点P4とする。
第1点P1、第2点P2、第3点P3、及び第4点P4を含む曲面を単位曲面Ω7としたときに、幾つかの実施形態に係る殻構造1(単位構造3)は、複数の上記単位曲面Ω7に対応する複数の領域R(
図6A、6B、7、11、14参照)から構成されているとよい。
【0020】
上記第2立方体140の1つの面につき、4つの上記三角錐TPが存在することとなるので、上記第2立方体140の1つにつき、24の上記三角錐TPが存在することとなる。上記単位構造3は、8つの第2立方体140を含むので、192の上記三角錐TPが存在することとなる。すなわち、上記単位構造3は、192の上記単位曲面Ω7のそれぞれに対応する領域Rが含まれ、上記単位構造3における殻構造1は、これら192の単位曲面のそれぞれに対応する192の領域Rによって形成されている。
厳密には、上記192の三角錐TPには、互いに鏡像の関係にある2種類の三角錐TP及び三角錐TP’がそれぞれ96ずつ含まれている。したがって、上記192の単位曲面には、互いに鏡像の関係にある2種類の単位曲面Ω7、及び単位曲面Ω’8がそれぞれ96ずつ含まれている。上記単位構造3における殻構造1は、それぞれ96ずつの2種類の単位曲面Ω7、及び単位曲面Ω’8のそれぞれに対応する96ずつの領域Rによって形成されている。
これにより、上記単位構造3における殻構造1を上記単位曲面Ω7、及び単位曲面Ω’8のそれぞれに対応する領域Rの繰り返し構造として把握できる。
【0021】
単位曲面Ω7、及び単位曲面Ω’8は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12、第2点P2と第3点P3とを結ぶ第2稜線L23、第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34、及び、第4点P4と第1点P1とを結ぶ第4稜線L41によって囲まれている。互いに隣接する単位曲面Ω7と単位曲面Ω’8とは、第1稜線L12から第4稜線L41の何れか一つの稜線、及び、該稜線の両端の点である、第1点P1から第4点P4の4点の内の何れか2点を共有している。
【0022】
(球殻部120及び接続殻部130について)
幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造1では、単位構造3は、以下で説明する球殻部120と接続殻部130とを含んでいる。
幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造1では、球殻部120は、殻構造1の内、複数の第2稜線L23によって形成される閉曲線に沿って延在する殻部である。
図6Bでは、複数の第2稜線L23によって形成される閉曲線を太い実線、及び太い2点鎖線で表している。なお、球殻部120は、厳密には球形状ではないが、本明細書では、上述したような、複数の第2稜線L23によって形成される閉曲線に沿って延在する殻部を球殻部120と称する。
【0023】
図6Bにおいて太い2点鎖線で表したように、殻構造1において比較的大きな内部空間が球殻部120によって形成される。この内部空間を形成する球殻部120には、同一平面上に存在する、連続する8本の第2稜線L23によって構成される閉曲線が3つ存在する。そして、この3つの閉曲線(閉曲線Cc1、閉曲線Cc2、及び、閉曲線Cc3)は互いに直交している。また、閉曲線Cc1、閉曲線Cc2、及び、閉曲線Cc3の内の任意の一つは、閉曲線Cc1、閉曲線Cc2、及び、閉曲線Cc3の内の他の一つと第3点P3で交差している。
なお、閉曲線Cc1、閉曲線Cc2、及び、閉曲線Cc3では、第2点P2と第3点P3とが交互に繰り返し現れるように第2稜線L23が配置されている。
【0024】
幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20の殻構造1では、接続殻部130は、隣り合う球殻部120同士を接続するように形成された殻部によって構成されており、少なくとも第4点P4と第1点P1とを接続する第4稜線L41を含む殻部をその一部として含んでいる。
【0025】
(殻構造1の板厚分布について)
上述したような殻構造を有する衝撃緩衝材では、衝撃緩衝材として比較的良好な特性を有する。また、殻構造における板厚を調節することで、衝撃緩衝材におけるエネルギ吸収量を調節できる。
しかし、上述したような殻構造を有する衝撃緩衝材であっても、殻構造の板厚分布が一定であると、後述するように、衝撃緩衝材を圧縮したときに、比較的潰れ易い領域と、比較的潰れ難い領域とが存在することを発明者らは見出した。
また、発明者らは、鋭意検討した結果、複数の第1殻部101及び複数の第2殻部102の板厚に分布を持たせ、上述したような比較的潰れ難い領域の板厚を他の領域の板厚よりも薄くすることで、応力が略一定でひずみが増加する所謂プラトー領域の幅を広げることができることを見出した。
すなわち、発明者らは、鋭意検討した結果、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130の板厚に分布を持たせ、上述したような比較的潰れ難い領域の板厚を他の領域の板厚よりも薄くすることで、応力が略一定でひずみが増加する所謂プラトー領域の幅を広げることができることを見出した。
【0026】
そこで、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20では、複数の第1殻部101及び複数の第2殻部102は、板厚に分布を持つように殻構造1を構成した。
したがって、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20によれば、複数の第1殻部101及び複数の第2殻部102に板厚に分布を持たせることで、衝撃緩衝材20の衝撃吸収性能を高められる。
すなわち、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20では、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130に板厚に分布を持たせることで、衝撃緩衝材20の衝撃吸収性能を高められる。
以下、幾つかの実施形態に係る衝撃緩衝材20における殻構造1の板厚分布について説明する。
【0027】
(
図7に示す実施形態について)
図7は、一実施形態に係る衝撃緩衝材20における殻構造1の板厚分布を示すコンタ図である。
図7では、殻構造1の板厚分布を黒色の濃淡によって表しており、黒色が濃くなるほど板厚が厚くなることを示している。
図7に示す衝撃緩衝材20では、殻構造1は、第1点P1と第4点P4とを結ぶ第4稜線L41における板厚が第2点P2と第3点P3とを結ぶ第2稜線L23における板厚よりも薄くなるように構成されている。
【0028】
発明者らが鋭意検討した結果、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定であると、衝撃緩衝材を圧縮したときに、球殻部120は潰れ易いものの、接続殻部130は比較的潰れ難いことを見出した。
図9Aから
図9Dは、殻構造1の板厚分布が一定である衝撃緩衝材20Xの圧縮のシミュレーション結果を示す図であり、塑性ひずみの大きさを黒色の濃淡で表しており、黒色が濃くなるほど塑性ひずみが大きいことを示している。
図9Aは、圧縮開始前の殻構造1を見た図である。
図9Bは、図示上下方向に圧縮を開始した後、圧縮開始前の図示上下方向の殻構造1の高さを100%としたときに、5%圧縮した状態を示している。
図9Cは、
図9Bに示す状態からさらに圧縮されて、16%圧縮した状態を示している。
図9Dは、
図9Cに示す状態からさらに圧縮されて、26%圧縮した状態を示している。
【0029】
殻構造1の板厚分布が一定の場合、例えば
図9Dに示した26%圧縮した状態では、図中央の球殻部120は比較的大きく潰れているが、その周囲の接続殻部130では、破線で囲んだ領域内に図示されているように塑性変形量は比較的小さい。
すなわち、殻構造1の板厚分布が一定の場合、球殻部120に比べると接続殻部130は比較的潰れ難いことが
図9Aから
図9Dよりわかる。殻構造1の板厚分布が一定である衝撃緩衝材20Xでは、球殻部120が潰れきった後、すぐに圧縮応力が上昇するため、プラトー領域は比較的狭くなってしまう。
【0030】
図7に示す衝撃緩衝材20における殻構造1では、第1点P1と第4点P4とを結ぶ第4稜線L41は接続殻部130上に位置し、第2点P2と第3点P3とを結ぶ第2稜線L23は球殻部120に位置する。
図7に示す衝撃緩衝材20によれば、衝撃緩衝材を圧縮したときに、球殻部が潰れきる前に接続殻部の塑性変形が広がり始めるようになることを発明者らは見出した。
図8Aから
図8Dは、
図7に示す衝撃緩衝材20の圧縮のシミュレーション結果を示す図であり、塑性ひずみの大きさを黒色の濃淡で表しており、黒色が濃くなるほど塑性ひずみが大きいことを示している。
図8Aは、圧縮開始前の殻構造1を見た図である。
図8Bは、図示上下方向に圧縮を開始した後、圧縮開始前の図示上下方向の殻構造1の高さを100%としたときに、5%圧縮した状態を示している。
図8Cは、
図8Bに示す状態からさらに圧縮されて、16%圧縮した状態を示している。
図8Dは、
図8Cに示す状態からさらに圧縮されて、26%圧縮した状態を示している。
【0031】
図7に示す衝撃緩衝材20では、例えば
図8Cに示した16%圧縮した状態では、図中央の球殻部120が潰れきる前に、その周囲の接続殻部130では、破線で囲んだ領域内に図示されているように塑性変形した領域が広がり始めている。
図10Aは、殻構造1の板厚分布が一定である
図9Aから
図9Dに係る衝撃緩衝材20X、及び、
図7に示す衝撃緩衝材20を圧縮したときの応力ひずみ線図である。
図10Aでは、殻構造1の板厚分布が一定である衝撃緩衝材20Xについてのグラフ線を実線で示し、
図7に示す衝撃緩衝材20についてのグラフ線のイメージを破線で示している。
図10Aに示すように、
図7に示す衝撃緩衝材20によれば、殻構造1の板厚分布が一定である衝撃緩衝材20Xと比べて、ひずみが大きくなっていた時に圧縮応力のグラフ線が立ち上がり始める緻密化開始ひずみを大きくすることができる。
なお、JIS H 7902によれば、
図10Aに示すような応力ひずみ線図において、ひずみが20~30%(0.2~0.3)の範囲における圧縮応力の平均値をプラトー応力と定義し、圧縮応力がプラトー応力の1.3倍になるときのひずみを緻密化開始ひずみと定義している。
【0032】
したがって、
図7に示す衝撃緩衝材20では、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定である場合と比べて接続殻部130が潰れ易くなる。これにより、プラトー領域の幅を広げることができる。
【0033】
図10Bは、第2点P2と第3点P3とを結ぶ第2稜線L23における板厚に対する第1点P1と第4点P4とを結ぶ第4稜線L41における板厚の比である板厚比を横軸にとり、縦軸に緻密化開始ひずみをとったときの板厚比と緻密化開始ひずみとの関係を示すグラフである。
図10Bにおいて、丸のプロットは、加工硬化が比較的大きい材料の例としてのSUS316Lによって形成された衝撃緩衝材20についての結果を示し、四角のプロットは、加工硬化が比較的小さい材料の例としてのインコネル718によって形成された衝撃緩衝材20についての結果を示している。なお、インコネルは登録商標である。
図10Bに示すグラフ線は、何れの材料についても、殻構造1の体積率を7.5%(気孔率92.5%)とした。
【0034】
図10Bに示すように、上記板厚比を0.7程度に設定すると、緻密化開始ひずみを大きくすることができることが分かった。
【0035】
(
図11及び
図14に示す実施形態について)
図11は、他の実施形態に係る衝撃緩衝材20における殻構造1の板厚分布を示すコンタ図である。
図14は、さらに他の実施形態に係る衝撃緩衝材20における殻構造1の板厚分布を示すコンタ図である。
図11及び
図14では、殻構造1の板厚分布を黒色の濃淡によって表しており、黒色が濃くなるほど板厚が厚くなることを示している。
図11及び
図14に示す衝撃緩衝材20では、殻構造1は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12における板厚が第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34における板厚よりも薄くなるように構成されている。
【0036】
発明者らが鋭意検討した結果、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12における板厚が第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34における板厚よりも薄くすることで、衝撃緩衝材20を圧縮したときに、球殻部120が潰れきる前に第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形が集中して、接続殻部130が潰れ易くなることを見出した。
【0037】
図12Aから
図12Dは、
図11に示す衝撃緩衝材20の圧縮のシミュレーション結果を示す図であり、塑性ひずみの大きさを黒色の濃淡で表しており、黒色が濃くなるほど塑性ひずみが大きいことを示している。
図12Aは、圧縮開始前の殻構造1を見た図である。
図12Bは、図示上下方向に圧縮を開始した後、圧縮開始前の図示上下方向の殻構造1の高さを100%としたときに、5%圧縮した状態を示している。
図12Cは、
図12Bに示す状態からさらに圧縮されて、16%圧縮した状態を示している。
図12Dは、
図12Cに示す状態からさらに圧縮されて、26%圧縮した状態を示している。
【0038】
図15Aから
図15Dは、
図14に示す衝撃緩衝材20の圧縮のシミュレーション結果を示す図であり、塑性ひずみの大きさを黒色の濃淡で表しており、黒色が濃くなるほど塑性ひずみが大きいことを示している。
図15Aは、圧縮開始前の殻構造1を見た図である。
図15Bは、図示上下方向に圧縮を開始した後、圧縮開始前の図示上下方向の殻構造1の高さを100%としたときに、5%圧縮した状態を示している。
図15Cは、
図15Bに示す状態からさらに圧縮されて、16%圧縮した状態を示している。
図15Dは、
図15Cに示す状態からさらに圧縮されて、26%圧縮した状態を示している。
【0039】
図11及び
図14に示す衝撃緩衝材20では、例えば
図12Bから
図12Dの各図、及び
図15Bから
図15Dの各図に示すように、図中央の球殻部120が潰れきる前に、その周囲の接続殻部130では、圧縮開始後の比較的早い段階から第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形が進行することが見て取れる。
【0040】
図11及び
図14に示す衝撃緩衝材20における板厚分布についてさらに説明する。
図16Aは、
図11及び
図14に示す衝撃緩衝材20について、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12から第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34にかけての板厚の分布を示すグラフである。
図11に示す衝撃緩衝材20では、
図11及び
図16Aから分かるように、殻構造1は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12から第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34に向かうにつれて板厚が漸増するように構成されている。
また、
図14に示す衝撃緩衝材20では、
図14及び
図16Aから分かるように、殻構造1は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12から第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34に向かうにつれて、初めに板厚が漸増し、次いで板厚が漸減し、その後、板厚が漸増するように構成されている。
【0041】
図16Bは、殻構造1の板厚分布が一定である
図9Aから
図9Dに係る衝撃緩衝材20X、
図11に示す衝撃緩衝材20、及び、
図14に示す衝撃緩衝材20を圧縮したときの応力ひずみ線図である。
図16Bでは、殻構造1の板厚分布が一定である衝撃緩衝材20Xについてのグラフ線を実線で示し、
図11に示す衝撃緩衝材20についてのグラフ線のイメージをピッチが狭い破線で示し、
図14に示す衝撃緩衝材20についてのグラフ線のイメージをピッチが広い破線で示している。
【0042】
図16Bに示すように、
図11及び
図14に示す衝撃緩衝材20によれば、殻構造1の板厚分布が一定である衝撃緩衝材20Xと比べて、ひずみが大きくなっていた時に圧縮応力のグラフ線が立ち上がり始める緻密化開始ひずみを大きくすることができる。
したがって、
図11及び
図14に示す衝撃緩衝材20では、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定である場合と比べて接続殻部130が潰れ易くなる。これにより、プラトー領域の幅を広げることができる。
【0043】
なお、
図11に示す衝撃緩衝材20のように、殻構造1は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12から第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34に向かうにつれて板厚が漸増するように構成されていてもよい。すなわち、
図11に示す衝撃緩衝材20のように、殻構造1は、第3点と第4点とを結ぶ第3稜線L34から第1点と第2点とを結ぶ第1稜線L12に向かうにつれて板厚が漸減するように構成されていてもよい。これにより、衝撃緩衝材20が圧縮されたときに、接続殻部130において第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形が進行しやすくなるので、上述したように、プラトー領域の幅を広げることができる。
【0044】
図13は、第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34における板厚に対する第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12における板厚の比である板厚比を横軸にとり、縦軸に緻密化開始ひずみをとったときの板厚比と緻密化開始ひずみとの関係を示すグラフである。
図13において、丸のプロットは、加工硬化が比較的大きい材料の例としてのSUS316Lによって形成された衝撃緩衝材20についての結果を示し、四角のプロットは、加工硬化が比較的小さい材料の例としてのインコネル718によって形成された衝撃緩衝材20についての結果を示している。なお、上述したようにインコネルは登録商標である。
図13に示すグラフ線は、何れの材料についても、殻構造1の体積率を7.5%(気孔率92.5%)とした。
【0045】
図13に示すように、上記板厚比を0.4から0.5程度に設定すると、緻密化開始ひずみを大きくすることができることが分かった。
【0046】
(
図14に示す実施形態について)
発明者らが鋭意検討した結果、
図14に示す衝撃緩衝材20のように、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12の近傍において板厚が厚い領域Rt(
図16A参照)を形成することで、衝撃緩衝材20を圧縮したときに、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形がより集中して、接続殻部130がより潰れ易くなることを見出した。
例えば、
図12Bから
図12Dの各図と、
図15Bから
図15Dの各図とを比較すると、
図11に示す衝撃緩衝材20よりも
図14に示す衝撃緩衝材20の方が、衝撃緩衝材20を圧縮したときに、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形がより集中することが見て取れる。
また、
図16Bに示すように、
図14に示す衝撃緩衝材20によれば、
図11に示す衝撃緩衝材20と比べて、ひずみが大きくなっていた時に圧縮応力のグラフ線が立ち上がり始める緻密化開始ひずみを大きくすることができる。
したがって、
図14に示す衝撃緩衝材20では、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定である場合と比べて接続殻部130がさらに潰れ易くなる。これにより、プラトー領域の幅をさらに広げることができる。
【0047】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0048】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る衝撃緩衝材20は、面心立方格子構造における立方格子に該当する第1立方体110の8つの頂点111、及び、第1立方体110の6つの面113のそれぞれにおける中央の点115を含む14の点にそれぞれ配置され、前記点を囲むように形成された複数の第1殻部101と、最近接の第1殻部101同士を接続する複数の第2殻部102と、を含む単位構造3が繰り返し現れる中空の殻構造1を有する。複数の第1殻部101のそれぞれは、第1殻部101から第2殻部102にかけて曲率が徐変する曲面で第2殻部102と接続される。複数の第1殻部101及び複数の第2殻部102は、板厚に分布を持つ。
【0049】
上述した単位構造3が繰り返し現れる中空の殻構造1を有する衝撃緩衝材20において、複数の第1殻部101及び複数の第2殻部102における板厚が一定であると、衝撃緩衝材20Xを圧縮したときに、比較的潰れ易い領域と、比較的潰れ難い領域とが存在することを発明者らは見出した。
また、発明者らは、鋭意検討した結果、複数の第1殻部101及び複数の第2殻部102の板厚に分布を持たせ、上述したような比較的潰れ難い領域の板厚を他の領域の板厚よりも薄くすることで、応力が略一定でひずみが増加する所謂プラトー領域の幅を広げることができることを見出した。
上記(1)の構成によれば、複数の第1殻部101及び複数の第2殻部102に板厚に分布を持たせることで、衝撃緩衝材20の衝撃吸収性能を高められる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、面心立方格子構造における1つの頂点(格子点)111Aと、該頂点111Aを含む3つの面113A、113B、113Cのそれぞれにおける中央の点115A、115B、115Cを含む4つの点を頂点とする第2立方体140において、上記4つの点の1つをA、該第2立方体140における上記4つの点以外の4つの頂点apxの1つをC、A点とC点とを結ぶ該第2立方体140の辺acを含む該第2立方体140の面の1つ、についての中心をB、該第2立方体140の中心をDとする。A点、B点、C点、及びD点を頂点とする三角錐TPに関して、B点とD点とを結ぶ上記三角錐の辺bd上の点を第1点P1とし、B点とC点とを結ぶ上記三角錐TPの辺bc上の点を第2点P2とし、A点とC点とを結ぶ三角錐TPの辺ac上の点を第3点P3とし、A点とD点とを結ぶ上記三角錐TPの辺ad上の点を第4点P4とする。第1点P1、第2点P2、第3点P3、及び第4点P4を含む曲面を単位曲面Ω7としたときに、殻構造1は、複数の上記単位曲面Ω7に対応する複数の領域Rから構成されているとよい。
【0051】
上記(2)の構成によれば、上記単位構造3における殻構造1を上記単位曲面Ω7に対応する複数の領域Rの繰り返し構造として把握できる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、上記殻構造1は、第1点P1と第4点P4とを結ぶ上記単位曲面Ω7(単位曲面Ω’8)の稜線(第4稜線L41)における板厚が第2点P2と第3点P3とを結ぶ稜線(第2稜線L23)における板厚よりも薄いとよい。
【0053】
発明者らが鋭意検討した結果、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定であると、衝撃緩衝材20を圧縮したときに、球殻部120は潰れ易いものの、接続殻部130は比較的潰れ難いことを見出した。
上記殻構造1では、第1点P1と第4点P4とを結ぶ第4稜線L41は接続殻部130上に位置し、第2点P2と第3点P3とを結ぶ第2稜線L23は球殻部120に位置する。
上記(3)の構成によれば、衝撃緩衝材20を圧縮したときに、球殻部120が潰れきる前に接続殻部130の塑性変形が広がり始めるようになることを発明者らは見出した。
したがって、上記(3)の構成によれば、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定である場合と比べて接続殻部130が潰れ易くなる。これにより、プラトー領域の幅を広げることができる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、上記殻構造1は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ単位曲面Ω7(単位曲面Ω’8)の稜線(第1稜線L12)における板厚が第3点P3と第4点P4とを結ぶ稜線(第3稜線L34)における板厚よりも薄いとよい。
【0055】
発明者らが鋭意検討した結果、上記(4)の構成により、衝撃緩衝材20を圧縮したときに、球殻部120が潰れきる前に第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形が集中して、接続殻部130が潰れ易くなることを見出した。
したがって、上記(4)の構成によれば、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定である場合と比べて接続殻部130が潰れ易くなる。これにより、プラトー領域の幅を広げることができる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、上記殻構造1は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ単位曲面Ω7(単位曲面Ω’8)の稜線(第1稜線L12)から第3点P3と第4点P4とを結ぶ稜線(第3稜線L31)に向かうにつれて板厚が漸増するとよい。
【0057】
上記(5)の構成によれば、第3点P3と第4点P4とを結ぶ第3稜線L34から第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に向かうにつれて板厚が漸減する。これにより、衝撃緩衝材20が圧縮されたときに、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形が進行し易くなるので、プラトー領域の幅を広げることができる。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、上記殻構造1は、第1点P1と第2点P2とを結ぶ単位曲面の稜線(第1稜線L12)から第3点P3と第4点P4とを結ぶ稜線(第3稜線L34)に向かうにつれて、初めに板厚が漸増し、次いで板厚が漸減し、その後、板厚が漸増するとよい。
【0059】
発明者らが鋭意検討した結果、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12の近傍において板厚が厚い領域Rtを形成することで、衝撃緩衝材20を圧縮したときに、第1点P1と第2点P2とを結ぶ第1稜線L12に沿って塑性変形がより集中して、接続殻部130がより潰れ易くなることを見出した。
したがって、上記(6)の構成によれば、複数の球殻部120及び複数の接続殻部130における板厚が一定である場合と比べて接続殻部130がさらに潰れ易くなる。これにより、プラトー領域の幅をさらに広げることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 殻構造
3 単位構造
7 単位曲面Ω
8 単位曲面Ω’
20 衝撃緩衝材
101 第1殻部
102 第2殻部
110 第1立方体
120 球殻部
130 接続殻部
140 第2立方体