(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191853
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】絞り機構、および、タービン
(51)【国際特許分類】
F16K 31/64 20060101AFI20221221BHJP
F01D 5/08 20060101ALI20221221BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20221221BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20221221BHJP
F16K 31/70 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16K31/64
F01D5/08
F01D25/00 G
F01D25/12 Z
F16K31/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100321
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 章吾
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴裕
【テーマコード(参考)】
3G202
3H057
【Fターム(参考)】
3G202AA06
3G202AA10
3G202AB01
3G202GA07
3G202GB01
3G202JJ02
3G202JJ12
3H057BB09
3H057BB11
3H057DD11
3H057DD12
3H057EE01
3H057FB00
3H057FC07
3H057FD14
3H057HH05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】運転状態に合わせて流路の断面積を変化させることを容易に実現可能な絞り機構等を提供する。
【解決手段】絞り機構50を構成する管状部材51を構成する材料と棒状部材52を構成する材料の線膨張係数が互いに異なっていることにより、温度に応じて管状部材51と棒状部材52との間の距離が変動する等の手段を用いることにより、流路を流れる流体の流量を制御する絞り機構が、温度に応じて流路の断面積を自律的に変化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体の流量を制御する絞り機構であって、
温度に応じて前記流路の断面積が自律的に変化するように構成されている、
絞り機構。
【請求項2】
前記流路を構成する内部空間が形成されている管状部材と、
前記管状部材の前記内部空間に設置されている棒状部材と、
前記管状部材の前記内部空間において前記棒状部材を支持する支持部材と
を有し、
前記管状部材を構成する材料の線膨張係数と、前記棒状部材を構成する材料の線膨張係数とが互いに異なっており、
温度に応じて前記管状部材と前記棒状部材との間の距離が変動することによって、前記流路の断面積が変化するように構成されている、
請求項1に記載の絞り機構。
【請求項3】
前記流路を構成する内部空間が形成されている管状部材と、
前記管状部材の前記内部空間に設置されている棒状部材と、
前記管状部材の前記内部空間において前記棒状部材を支持する支持部材と
を有し、
温度に応じて前記支持部材が膨張または収縮することに伴って前記内部空間において前記棒状部材が移動し、前記管状部材と前記棒状部材との間の距離が変動することによって、前記流路の断面積が変化するように構成されている、
請求項1に記載の絞り機構。
【請求項4】
前記流路を構成する第1の貫通孔および前記第1の貫通孔に連通するトレンチが形成されている第1の流路構成部材と、
前記流路を構成する第2の貫通孔が形成されており、前記トレンチの内部において移動可能に設置されている第2の流路構成部材と、
前記トレンチの内部において前記第2の流路構成部材の移動方向に前記第2の流路構成部材を付勢する付勢部材と
を有し、
前記付勢部材は、
前記トレンチの内部において前記移動方向の一方側に設置された第1の付勢部材と
前記トレンチの内部において前記移動方向の他方側に設置された第2の付勢部材と
を含み、
前記第1の付勢部材を構成する材料および前記第2の付勢部材を構成する材料は、温度に応じてヤング率が変化する傾向が互いに異なっており、
温度に応じて前記第2の付勢部材が前記トレンチの内部において移動するに伴って、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とがオーバーラップする部分の大きさが変動することによって、前記流路の断面積が変化するように構成されている、
請求項1に記載の絞り機構。
【請求項5】
タービンロータと、
前記タービンロータを収容しているタービン車室と、
複数の静翼が前記タービン車室の内部に配置された静翼翼列、および、前記タービン車室の内部において複数の動翼が前記タービンロータに配置された動翼翼列を含むタービン段落と
を備え、作動媒体が前記タービン車室の内部に導入され、前記タービンロータの軸方向において前記タービン段落を介して流れることによって前記タービンロータが回転するタービンであって、
請求項1から4のいずれかに記載の絞り機構
を有し、
前記作動媒体よりも温度が低い冷却媒体を前記タービン段落へ導入するための冷却媒体流路が、前記流路として、前記タービンロータと前記タービン車室との少なくとも一方に設けられており、
前記絞り機構は、前記冷却媒体流路に設けられている、
タービン。
【請求項6】
前記タービン段落は、
第1のタービン段落と、
前記軸方向において前記第1のタービン段落よりも前記作動媒体の下流側に位置する第2のタービン段落と
を少なくとも含み、
前記冷却媒体流路は、
前記第1のタービン段落に前記冷却媒体を導入するための第1の冷却媒体流路部と、
前記第2のタービン段落に前記冷却媒体を導入するための第2の冷却媒体流路部と
を少なくとも含み、
前記絞り機構は、少なくとも、前記第2の冷却媒体流路部に設置され、温度の上昇に伴って前記第2の冷却媒体流路部の断面積が小さくなるように構成されている、
請求項5に記載のタービン。
【請求項7】
前記タービン段落は、
第1のタービン段落と、
前記軸方向において前記第1のタービン段落よりも前記作動媒体の下流側に位置する第2のタービン段落と
を少なくとも含み、
前記冷却媒体流路は、
前記第1のタービン段落に前記冷却媒体を導入するための第1の冷却媒体流路部と、
前記第2のタービン段落に前記冷却媒体を導入するための第2の冷却媒体流路部と
を少なくとも含み、
前記絞り機構は、少なくとも、前記第1の冷却媒体流路部に設置され、温度の上昇に伴って前記第1の冷却媒体流路部の断面積が大きくなるように構成されている、
請求項5に記載のタービン。
【請求項8】
前記タービン段落は、
第1のタービン段落と、
前記軸方向において前記第1のタービン段落よりも前記作動媒体の下流側に位置する第2のタービン段落と
を少なくとも含み、
前記冷却媒体流路は、
前記第1のタービン段落に前記冷却媒体を導入するための第1の冷却媒体流路部と、
前記第2のタービン段落に前記冷却媒体を導入するための第2の冷却媒体流路部と
を少なくとも含み、
前記絞り機構は、
前記第1の冷却媒体流路部に設置され、温度の上昇に伴って前記第1の冷却媒体流路部の断面積が大きくなるように構成されている第1の絞り機構と、
前記第2の冷却媒体流路部に設置され、温度の上昇に伴って前記第2の冷却媒体流路部の断面積が小さくなるように構成されている第2の絞り機構と
を少なくとも含む、
請求項5に記載のタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、絞り機構、および、タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンは、高温かつ高圧な作動媒体(たとえば、超臨界CO2媒体)がタービン車室に導入されることによってタービンロータが回転するように構成されている。ここでは、耐熱性を考慮して、タービンロータ等に冷却媒体が流れる冷却媒体流路を設けることが提案されている。そして、冷却媒体流路を流れる冷却媒体の流量を調整するために、流量調整プラグ等の絞り機構を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定格運転時と起動時との間において、初段と最終段との圧力比が大きく変化するタービン(超臨界CO2媒体が作動媒体として導入されるCO2タービンなど)においては、着火以降は、作動媒体が流れる通路部の温度が高くなるため、構成する各部を適宜冷却する必要がある。下流側に位置するタービン段落では、作動媒体と冷却媒体との間の差圧が大きいため、流量を調整するための圧力損失を大きくする必要がある。このため、差圧が大きい定格運転時の条件に圧力損失を合わせた場合には、差圧が小さい起動時に、下流側に位置するタービン段落へ冷却媒体が流れにくくなり、場合によっては、冷却媒体の供給が行われない可能性がある。それゆえ、タービンの運転状態に合わせて、冷却媒体の流体が流れる流路(冷却媒体流路)の断面積を絞り機構で変化させることが要求されている。
【0005】
しかしながら、たとえば、絞り機構として配管にバルブを設置し、アクチュエータによってバルブを駆動することで配管内の流路の断面積を変化させる場合には、構成が複雑になると共に、配管を設置するための設置スペースが必要になる。また、上記の配管がタービン車室を貫通させるように設置する必要がある場合には、その配管が貫通する部分において作動媒体のリークが発生する場合があると共に、設置に伴ってコストが上昇する可能性がある。
【0006】
上記のような事情により、従来においては、運転状態に合わせて流路の断面積を変化させることが容易でない。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、運転状態に合わせて流路の断面積を変化させることを容易に実現可能な絞り機構、および、タービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の絞り機構は、流路を流れる流体の流量を制御する絞り機構であって、温度に応じて流路の断面積が自律的に変化するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる絞り機構の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、第2実施形態にかかる絞り機構の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、第2実施形態にかかる絞り機構の構成を模式的に示す上面図である。
【
図3A】
図3Aは、第3実施形態にかかる絞り機構の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、第3実施形態にかかる絞り機構の構成を模式的に示す上面図である。
【
図3C】
図3Cは、第3実施形態にかかる絞り機構において、第1の付勢部材631および第2の付勢部材632の特性の一例を示す図である。
【
図3D】
図3Dは、第3実施形態の変形例にかかる絞り機構において、第1の付勢部材631および第2の付勢部材632の特性の一例を示す図である。
【
図3E】
図3Eは、第3実施形態の変形例にかかる絞り機構において、第1の付勢部材631および第2の付勢部材632の特性の一例を示す図である。
【
図3F】
図3Fは、第3実施形態の変形例にかかる絞り機構の構成を模式的に示す上面図である。
【
図3G】
図3Gは、第3実施形態の変形例にかかる絞り機構の構成を模式的に示す上面図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態にかかる発電システムの全体構成について模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態にかかる発電システムにおいて、タービンの側面を模式的に示す側面図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態にかかるタービンの一部断面を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態にかかるタービンにおいて、冷却媒体CFの温度(冷却温度)と時間との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態にかかるタービンにおいて、冷却媒体CFの流量(冷却流量)と時間との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態にかかるタービンの一部断面を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第5実施形態にかかるタービンにおいて、冷却媒体CFの流量(冷却流量)と時間との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、第6実施形態にかかるタービンの一部断面を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、第6実施形態にかかるタービンにおいて、冷却媒体CFの流量(冷却流量)と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
[A]絞り機構の構成
第1実施形態にかかる絞り機構の構成について
図1を用いて説明する。
【0011】
本実施形態において、絞り機構50は、
図1に示すように、管状部材51と棒状部材52と支持部材53とを有し、流路(冷却媒体流路など)を流れる流体(冷却媒体など)の流量を制御する。ここでは、絞り機構50は、温度に応じて流路の断面積(流路面積)が自律的に変化するように構成されている。
図1では、管状部材51および棒状部材52の軸方向に対して直交する面における断面を示している。絞り機構50を構成する各部について順次説明する。
【0012】
本実施形態の絞り機構50において、管状部材51は、たとえば、円筒形状の管状体である。管状部材51は、冷却媒体流路などの流路を構成する内部空間SP51を内部に有する。
【0013】
棒状部材52は、管状部材51の内部空間SP51に設置されている。ここでは、棒状部材52は、たとえば、円柱形状の棒状体であって、管状部材51と同軸になるように配置されている。
【0014】
支持部材53は、管状部材51の内部空間SP51において棒状部材52を支持するために設けられている。ここでは、支持部材53は、複数の棒状体であって、一端が管状部材51の内周面に連結され、他端が棒状部材52の外周面に連結されている。
【0015】
本実施形態では、管状部材51を構成する材料の線膨張係数と、棒状部材52を構成する材料の線膨張係数とが互いに異なっている。これにより、本実施形態の絞り機構50は、温度に応じて管状部材51と棒状部材52との間の距離が変動する。その結果、流路において、管状部材51および棒状部材52の軸方向に対して直交する面の断面積が変化する。
【0016】
具体的には、管状部材51を構成する材料の線膨張係数よりも、棒状部材52を構成する材料の線膨張係数が大きい場合には、温度の上昇に伴って、管状部材51よりも棒状部材52が膨張するので、管状部材51の内周面と棒状部材52の外周面との間の距離が狭くなる。その結果、流路の断面積が減少する。この場合の材料の一例は、下記の通りである。なお、この場合、支持部材53の線膨張係数は、管状部材51よりも棒状部材52に近い方が好ましい(逆の場合には、引っ張りによって付根部分に応力が発生するため)。
・管状部材51を構成する材料:高Cr耐熱合金鋼(12Cr鋼)、アルミニウム合金
・棒状部材52を構成する材料:オーステナイト系ステンレス鋼、チタン合金、インバー
【0017】
この一方で、管状部材51を構成する材料の線膨張係数よりも、棒状部材52を構成する材料の線膨張係数が小さい場合には、温度の下降に伴って、管状部材51よりも棒状部材52が収縮するので、管状部材51の内周面と棒状部材52の外周面との間の距離が拡がる。その結果、流路の断面積が増加する。この場合の材料の一例は、下記の通りである。なお、この場合、支持部材53の線膨張係数は、棒状部材52よりも管状部材51に近い方が好ましい(逆の場合には、引っ張りによって付根部分に応力が発生するため)。
・管状部材51を構成する材料:オーステナイト系ステンレス鋼、チタン合金、インバー
・棒状部材52を構成する材料:高Cr耐熱合金鋼(12Cr鋼)、アルミニウム合金
【0018】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の絞り機構50では、温度に応じて流路の断面積が自律的に変化するように構成されている。このため、本実施形態では、たとえば、タービンの運転状態に合わせて温度が変化したときに、流路の断面積を変化させることを容易に実現可能である。
【0019】
<第2実施形態>
[A]絞り機構の構成
第2実施形態にかかる絞り機構の構成について
図2Aおよび
図2Bを用いて説明する。
【0020】
本実施形態の絞り機構50は、第1実施形態の場合と同様に、
図2Aおよび
図2Bに示すように、管状部材51と棒状部材52と支持部材53とを有し、流路(冷却媒体流路など)を流れる流体(冷却媒体など)の流量を制御する。ここでは、絞り機構50は、温度に応じて流路の断面積が自律的に変化するように構成されている。
図2Aでは、管状部材51および棒状部材52の軸方向に対して直交する面における上面を示している。
図2Bでは、管状部材51および棒状部材52の軸方向に沿った面における断面を示している。
【0021】
本実施形態の絞り機構50において、管状部材51の内部空間SP51は、たとえば、円錐台形状であって、管状部材51および棒状部材52の軸方向において一端(下端)から他端(上端)へ向かうに伴って、断面積が狭くなっている。
【0022】
棒状部材52は、管状部材51の内部空間SP51において、管状部材51の内部空間SP51と同軸になるように配置されている。
【0023】
支持部材53は、管状部材51の内部空間SP51において棒状部材52を支持するために設けられている。ここでは、支持部材53は、複数の棒状体であって、一端が管状部材51の内周面に連結され、他端が棒状部材52の外周面に連結されている。
【0024】
本実施形態では、温度に応じて支持部材53が膨張または収縮することに伴って内部空間SP51において棒状部材52が移動し、管状部材51と棒状部材52との間の距離が変動することによって、流路の断面積が変化するように構成されている。
【0025】
たとえば、温度が上昇した場合には、その温度の上昇に伴って支持部材53が膨張し、内部空間SP51において棒状部材52が上方へ移動する。これにより、
図2から判るように、管状部材51の内周面と棒状部材52の外周面との間の距離が短くなるため、流路の断面積が小さくなる。これに対して、温度が下降した場合には、その温度の下降に伴って支持部材53が収縮し、内部空間SP51において棒状部材52が下方へ移動する。これにより、
図2から判るように、管状部材51の内周面と棒状部材52の内周面との間の距離が長くなるため、流路の断面積が大きくなる。
【0026】
線膨張係数の関係は、棒状部材52および支持部材53が管状部材51よりも大きい方が好ましい。支持部材53のみが膨張した場合には、棒状部材52が押し上げられるので流路の断面積が小さくなる。また、棒状部材52のみが膨張した場合には、第1実施形態と同様に、棒状部材52と管状部材51との間の流路の断面積が小さくなる。
【0027】
なお、温度の上昇に伴って、流路の断面積が大きくなり、温度の下降に伴って、流路の断面積が小さくなるように、絞り機構50を構成してもよい。本構成については図示を省略しているが、たとえば、管状部材51の内部空間SP51について、管状部材51および棒状部材52の軸方向において一端(下端)から他端(上端)へ向かうに伴って断面積が拡がるように形成することで実現可能である(
図2B参照)。この場合、線膨張係数の関係は、上記した関係と逆の関係であることが好ましい。
【0028】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の絞り機構50では、第1実施形態の場合と同様に、温度に応じて流路の断面積が自律的に変化するように構成されている。このため、本実施形態においても、たとえば、タービンの運転状態に合わせて温度が変化したときに、流路の断面積を変化させることを容易に実現可能である。
【0029】
<第3実施形態>
[A]絞り機構の構成
第3実施形態にかかる絞り機構の構成について
図3Aおよび
図3Bを用いて説明する。
【0030】
本実施形態の絞り機構50は、第1実施形態の場合と異なり、
図3Aおよび
図3Bに示すように、第1の流路構成部材61と第2の流路構成部材62と付勢部材63とを有し、流路(冷却媒体流路など)を流れる流体(冷却媒体など)の流量を制御する。第1の流路構成部材61は、流路を構成する第1の貫通孔H61を有し、第2の流路構成部材62は、流路を構成する第2の貫通孔H62を有する。ここでは、絞り機構50は、温度に応じて流路の断面積が自律的に変化するように構成されている。
図3Aでは、第1の貫通孔H61および第2の貫通孔H62の中心軸方向に対して直交する面における断面を示している。
図3Bでは、第1の貫通孔H61および第2の貫通孔H62の中心軸方向に沿った面における上面を示している。
【0031】
本実施形態の絞り機構50において、第1の流路構成部材61は、板状体部611と凸部612とを有する。第1の流路構成部材61のうち、板状体部611には、第1の貫通孔H61が形成されている。第1の流路構成部材61のうち、凸部612は、一対であって、板状体部611の上面において両端に設けられている。板状体部611の上面において一対の凸部612の間には、矩形形状のトレンチT61(凹部)が介在している第1の流路構成部材61において、トレンチT61は、円柱形状の第1の貫通孔H61の中心軸方向において第1の貫通孔H61に並ぶように第1の貫通孔H61の上方に位置しており、第1の貫通孔H61に連通している。
【0032】
第2の流路構成部材62は、板状体であって、第1の貫通孔H61と共に流路を構成する第2の貫通孔H62が形成されている。第2の流路構成部材62において、第2の貫通孔H62は、円柱形状であって、たとえば、第2の貫通孔H62の内径が第1の貫通孔H61の内径よりも大きい。また、第2の流路構成部材62は、第1の流路構成部材61のトレンチT61の内部において移動可能に設置されている。第2の流路構成部材62において移動方向における幅は、第1の流路構成部材61のトレンチT61において移動方向における幅よりも狭い。
【0033】
付勢部材63は、たとえば、バネであって、トレンチT61の内部において第2の流路構成部材62の移動方向へ第2の流路構成部材62を付勢するために設置されている。ここでは、付勢部材63は、第1の付勢部材631と第2の付勢部材632とを含む。
【0034】
第1の付勢部材631は、トレンチT61の内部において第2の流路構成部材62の移動方向の一方側(左側)に設置されている。第2の付勢部材632は、トレンチT61の内部において第2の流路構成部材62の移動方向の他方側(右側)に設置されている。
【0035】
第1の付勢部材631を構成する材料および第2の付勢部材632を構成する材料は、温度に応じてヤング率が変化する傾向が、互いに異なっている。これにより、温度に応じて第2の付勢部材632がトレンチT61の内部において移動するに伴って、第1の貫通孔H61と第2の貫通孔H62とがオーバーラップする部分の大きさが変動する。その結果、第1の貫通孔H61と第2の貫通孔H62とで構成される流路の断面積が変化する。
【0036】
たとえば、ある温度からある温度に上昇した時にヤング率が変化する割合に関して、第1の付勢部材631を構成する材料よりも第2の付勢部材632を構成する材料の方を大きくする。これにより、温度の上昇に伴って第1の付勢部材631と第2の付勢部材の押し付け力のバランスが変化し、第1の貫通孔H61と第2の貫通孔H62とがオーバーラップする部分が小さくなることによって、流路の断面積が小さくなる。そして、温度の下降に伴って、第1の貫通孔H61と第2の貫通孔H62とがオーバーラップする部分が大きくなることによって、流路の断面積が大きくなる。
【0037】
図3Cは、第3実施形態にかかる絞り機構において、第1の付勢部材631および第2の付勢部材632の特性の一例を示す図である。
図3Cにおいて、横軸は温度tであって、縦軸はヤング率Eである。
【0038】
図3Cに示すように、第1の付勢部材631と第2の付勢部材632との間は、温度とヤング率の関係が互いに異なっている。ここでは、温度t0におけるヤング率Eは、第1の付勢部材631よりも第2の付勢部材632の方が高く、第1の付勢部材631のヤング率Eと第2の付勢部材632のヤング率Eとの間には、差d0がある。そして、温度t0よりも高い温度t1におけるヤング率Eは、第1の付勢部材631よりも第2の付勢部材632の方が低く、第1の付勢部材631のヤング率Eと第2の付勢部材632のヤング率Eとの間には、差d1がある。このように、温度t0から温度t1に変化したときは、第1の付勢部材631のヤング率Eと第2の付勢部材632のヤング率Eとの間の差d0,d1が変化する。その結果、第1の付勢部材631の付勢力と第2の付勢部材632の付勢力についても、温度に応じて差が生ずるため、第2の流路構成部材62が第1の流路構成部材61に対して移動する。
【0039】
なお、温度の上昇に伴って、流路の断面積が大きくなり、温度の下降に伴って、流路の断面積が小さくなるように、絞り機構50を構成してもよい。本構成については図示を省略しているが、たとえば、第1の貫通孔H61と第2の貫通孔H62とがオーバーラップする部分が小さい状態から、温度の上昇に伴って、そのオーバーラップする部分が大きい状態になるように絞り機構50を構成することで実現可能である。
【0040】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の絞り機構50では、第1実施形態の場合と同様に、温度に応じて流路の断面積が自律的に変化するように構成されている。このため、本実施形態においても、たとえば、タービンの運転状態に合わせて温度が変化したときに、流路の断面積を変化させることを容易に実現可能である。
【0041】
[C]変形例
上記実施形態では、第1の付勢部材631および第2の付勢部材632の特性について、
図3Cに示したが、これに限らない。
【0042】
図3Dおよび
図3Eは、第3実施形態の変形例にかかる絞り機構において、第1の付勢部材631および第2の付勢部材632の特性の一例を示す図である。
図3Dおよび
図3Eにおいて、横軸は温度tであって、縦軸はヤング率Eである。
【0043】
図3Dに示すように、温度t0よりも高い温度t1におけるヤング率Eは、
図3Cの場合と異なり、第1の付勢部材631よりも第2の付勢部材632の方が高くてもよい。また、
図3Dに示すように、第2の付勢部材632のヤング率Eは、温度t0から温度t1の間において、温度の上昇に伴ってヤング率Eが変化する割合が変動してもよい。図示していないが、第1の付勢部材631のヤング率Eも第2の付勢部材632のヤング率Eと同様に、温度t0から温度t1の間において、温度の上昇に伴ってヤング率Eが変化する割合が変動してもよい。このような場合であっても、温度t0から温度t1に変化したときは、第1の付勢部材631のヤング率Eと第2の付勢部材632のヤング率Eとの間の差d0,d1が変化し、第1の付勢部材631の付勢力と第2の付勢部材632の付勢力についても、温度に応じて差が生ずる。このため、第2の流路構成部材62が第1の流路構成部材61に対して移動する。
【0044】
また、上記実施形態では、第1の貫通孔H61および第2の貫通孔H62は、円形状である場合を例示したが、これに限らない。
【0045】
図3Fおよび
図3Gは、第3実施形態の変形例にかかる絞り機構の構成を模式的に示す上面図である。
【0046】
図3Fに示すように、第1の貫通孔H61および第2の貫通孔H62は、たとえば、矩形状であってもよい。第1の貫通孔H61および第2の貫通孔H62が矩形状である場合には、両者が重複する面積の算出が容易であるため、容易に設計可能である。
【0047】
この他に、
図3Gに示すように、第1の貫通孔H61は、移動方向において中央よりも側部の方が広くなるように構成されていてもよい。これにより、
図3Fの場合よりも面積の変化を大きくすることができる
【0048】
<第4実施形態>
[A]発電システムの構成
図4は、第4実施形態にかかる発電システムの全体構成について模式的に示す図である。
【0049】
図4に示すように、本実施形態の発電システムは、超臨界の作動媒体(作動CO
2媒体)を用いて発電を行うように構成されている。本実施形態の発電システムを構成する各部に関して順次説明する。
【0050】
[A-1]タービン10
本実施形態の発電システムにおいて、タービン10は、燃焼器81から超臨界状態の作動媒体が供給される。そして、タービン10において、作動媒体が膨張し仕事を行うことによって、タービン10の回転軸が回転する。タービン10から排気された媒体は、再生熱交換器82へ流れる。
【0051】
[A-2]発電機11
発電機11は、タービン10の駆動によって発電を行うように構成されている。ここでは、発電機11の回転軸は、タービン10の回転軸に連結されており、タービン10の回転軸が回転することで、発電機11の回転軸が回転し、発電機11において発電が行われる。
【0052】
[A-3]再生熱交換器82
再生熱交換器82では、タービン10から排気された媒体と、CO2ポンプ86から排出された媒体とが流入し、両者の間において熱交換が行われるように構成されている。ここでは、タービン10から排気された媒体は、再生熱交換器82での熱交換によって冷却される。この一方で、CO2ポンプ86から排出された媒体は、再生熱交換器82での熱交換によって加熱され、燃焼器81へ供給される。
【0053】
[A-4]冷却器83
冷却器83においては、タービン10から排気された後に再生熱交換器82で熱交換が行われた媒体が冷却される。これにより、冷却器83では、再生熱交換器82から排出された媒体に含まれる水蒸気が凝縮される。
【0054】
[A-5]湿分分離器85
湿分分離器85においては、冷却器83から排出された媒体が供給される。湿分分離器85では、その供給された媒体から、冷却器83での凝縮によって生じた水(液相水)を分離する。その分離された水は、湿分分離器85から外部へ排出される。このため、湿分分離器85では、高純度のCO2を含む媒体が得られる。
【0055】
[A-6]CO2ポンプ86
CO2ポンプ86は、高純度のCO2である媒体が湿分分離器85から供給され、その供給された媒体を超臨界圧に昇圧する。CO2ポンプ86で昇圧された媒体のうち、一部は、外部へ排出され、たとえば、貯留や、石油増進回収などに利用される。ここでは、たとえば、燃焼器81における燃焼で増加したCO2の量に相当するCO2が外部へ排出される。そして、CO2ポンプ86で昇圧された媒体のうち、残部は、上述したように、再生熱交換器82に供給され、加熱される。
【0056】
[A-7]燃焼器81
再生熱交換器82の途中から抽出された一部の媒体は、冷却媒体(冷却CO2媒体)としてタービン10に供給される。そして、再生熱交換器82を通過した媒体の残部は、燃焼器81に導かれる。つまり、再生熱交換器82において、CO2ポンプ86で昇圧された媒体が、タービン10から排気された媒体との熱交換によって加熱された後に、燃焼器81に流入する。燃焼器81では、燃料が外部から供給されると共に、酸素製造装置80から酸素が供給される。燃焼器81では、燃焼によって燃焼ガスが生成され、燃焼ガスを含む超臨界状態の作動媒体が排出される。
【0057】
[B]タービン10の構成
第4実施形態にかかるタービン10の一例に関して、
図5および
図6を用いて説明する。
【0058】
図5は、タービン10の側面を模式的に示している。
図6は、タービン10の一部断面を模式的に示している。
図6において、縦方向は鉛直方向zであり、横方向は第1水平方向xであり、紙面に垂直な方向は第2水平方向yである。
図6では、鉛直面(xz面)の一部断面(主に上半側の断面)を模式的に示している。
【0059】
実施形態に係るタービン10においては、
図5に示すように、作動媒体Fが燃焼器ケーシング811を介して内部に導入される。
【0060】
図6に示すように、タービン10は、タービンロータ20とタービン車室30とタービン段落40とを備える。タービン10は、多段式であって、タービンロータ20の回転中心軸AXに沿った軸方向(x)に複数のタービン段落40が並ぶように配置されている。タービン10において、作動媒体Fは、タービン車室30のうち外部車室32に収容された内部車室31の内部に、トランジションピース311を介して導入される。そして、その導入された作動媒体Fは、上流側Usから下流側Dsに並ぶ複数のタービン段落40において、順次、仕事を行う。
【0061】
その後、作動媒体Fは、
図5に示すように、排気管90を介して、タービン車室30の外部へ排出される。
【0062】
実施形態に係るタービン10を構成する各部の詳細に関して順次説明する。
【0063】
[B-1]タービンロータ20
タービンロータ20は、棒状体であって、回転中心軸AXが第1水平方向xに沿うように、軸受(図示省略)によって回転可能に支持されている。タービンロータ20には、複数のロータホイール21が外周面に設けられている。複数のロータホイール21は、回転中心軸AXに沿った軸方向(x)に並ぶように配列されている。
図6では図示を省略しているが、タービンロータ20は、発電機に連結されている。
【0064】
[B-2]タービン車室30
タービン車室30は、二重車室構造であって、内部車室31と外部車室32とを有する。
【0065】
[B-2-1]内部車室31
タービン車室30において、内部車室31は、複数のタービン段落40を囲うように、タービンロータ20の周囲に設置されている。
【0066】
[B-2-2]外部車室32
タービン車室30において、外部車室32は、内部車室31を介して、タービンロータ20を収容するように構成されている。
【0067】
[B-2-3]パッキンヘッド321
また、外部車室32には、最終段のタービン段落40よりも下流側Dsであって径方向の内側部分にパッキンヘッド321が設置されている。ここでは、軸方向においてパッキンヘッド321と最終段のロータホイール21との間には、最終段ホイールスペースRWが介在している。
【0068】
[B-3]タービン段落40
タービン段落40は、複数の静翼41(ノズル翼)で構成された静翼翼列、および、複数の動翼42で構成された動翼翼列を含む。タービン段落40は、静翼翼列と、静翼翼列の下流側Dsにおいて隣接する動翼翼列とによって構成されており、複数が回転中心軸AXに沿った軸方向に並んでいる。
【0069】
[B-3-1]静翼41
静翼翼列を構成する複数の静翼41(ノズル翼)は、内部車室31の内部において支持されている。複数の静翼41は、内側シュラウド411と外側シュラウド412との間において、タービンロータ20の周りを囲うように、回転方向Rに配列されている。
【0070】
[B-3-2]動翼42
動翼翼列を構成する複数の動翼42は、内部車室31の内部においてタービンロータ20の周りを囲うように、回転方向Rに配列されている。動翼42は、径方向において内側部分に植込部422が設けられている。植込部422は、タービンロータ20のロータホイール21の外周面に嵌合されている。動翼42の外周は、シュラウドセグメント421で包囲されている。シュラウドセグメント421は、外側シュラウド412によって支持されている。
【0071】
タービンロータ20の外周面のうち静翼41に対面する部分には、たとえば、遮熱ピース70が設けられている。ここでは、遮熱ピース70は、タービンロータ20の外周面において内側シュラウド411の内周面に対面する部分に支持されている。遮熱ピース70は、タービン車室30の内部において作動媒体Fが流れる主流路と、タービンロータ20との間を遮熱するために設けられている。
【0072】
[B-3-3]遮熱ピース70
遮熱ピース70は、遮熱板71と脚部72とを備えており、タービンロータ20の径方向において外側から内側へ向かうに伴って、遮熱板71と脚部72とが順次設けられている。
【0073】
遮熱ピース70において、遮熱板71は、タービンロータ20の回転中心軸AXに沿って延在する部分を含む。遮熱板71は、遮熱板71の外周面と内側シュラウド411の内周面との間に隙間が介在していると共に、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に空間が介在するように設置されている。脚部72は、タービンロータ20の径方向に延在しており、脚部72において径方向の内側には係合部72aが形成されている。係合部72aは、タービンロータ20に係合されている。
【0074】
静翼41の内周面と遮熱板71外周面との間を密封するために、適宜、シールフィン43が設けられている。また、動翼42の外周面と内部車室31に設けられたシュラウドセグメント421の内周面との間を密封するために、シールフィン43が設けられている。
【0075】
[B-4]上流側グランド部G1/下流側グランド部G2
タービン10は、上流側グランド部G1と下流側グランド部G2とを含む。
【0076】
上流側グランド部G1は、タービン10において軸方向でタービン段落40が配置されていない両端部のうち、作動媒体Fの上流側Usに位置する一端部である。下流側グランド部G2は、タービン10において軸方向でタービン段落40が配置されていない両端部のうち、作動媒体Fの下流側Dsに位置する一端部である。つまり、タービン10においては、軸方向でタービン段落40が配置された部分が上流側グランド部G1と下流側グランド部G2とによって挟まれている。
【0077】
[B-5]グランドシール部35a,35b,35c
上流側グランド部G1および下流側グランド部G2においては、グランドシール部35a,35b,35cが設置されている。グランドシール部35a,35b,35cは、タービンロータ20を含む回転体とタービン車室30を含む静止体との間を密封するために設けられている。
【0078】
具体的には、グランドシール部35aは、上流側グランド部G1において、外部車室32の内周面とタービンロータ20の外周面との間を密封するように、外部車室32の内周面に複数が設置されている。グランドシール部35bは、上流側グランド部G1において、内部車室31の内周面とタービンロータ20の外周面との間を密封するように、内部車室31の内周面に複数が設置されている。そして、グランドシール部35cは、下流側グランド部G2において、内部車室31に設置されたパッキンヘッド321の内周面とタービンロータ20の外周面との間を密封するように、パッキンヘッド321の内周面に複数が設置されている。
【0079】
グランドシール部35a,35b,35cは、たとえば、ラビリンスフィンを含むように構成されている。この他に、ブラシシール、リーフシール、アブレイダブルシール、ハニカムシールなどのように種々のシール構造でグランドシール部35a,35b,35cを構成してもよい。
【0080】
[B-6]トランジションピース311
トランジションピース311は、タービン車室30の上方から外部車室32と内部車室31とを貫通するように径方向に延在する部分を含む。トランジションピース311は、作動媒体Fを初段のタービン段落40に導入するように、初段のタービン段落40に連結されている。
【0081】
[B-7]冷却媒体導入管313
冷却媒体導入管313は、トランジションピース311と同様に、タービン車室30の上方から外部車室32と内部車室31とを貫通するように径方向に延在している。冷却媒体導入管313は、トランジションピース311において径方向に延在する部分を囲うように設置されている。冷却媒体導入管313の内径は、トランジションピース311において径方向に延在する部分の外径よりも大きく、冷却媒体導入管313の内周面とトランジションピース311において径方向に延在する部分の外周面との間を、冷却媒体CFが流れる。冷却媒体導入管313とトランジションピース311との間を流れた冷却媒体CFは、内部車室31の内部においてタービンロータ20の周りを回転方向Rに囲うように形成された冷却室R31aに導入される。
【0082】
[B-8]内部車室冷却媒体流路H31
内部車室31には、冷却媒体CFが流れる内部車室冷却媒体流路H31が形成されている。内部車室冷却媒体流路H31は、冷却媒体CFをタービン段落40の静翼41へ供給するために設けられている。ここでは、内部車室冷却媒体流路H31は、第1の内部車室冷却媒体流路部H311と第2の内部車室冷却媒体流路部H312とを含む。
【0083】
第1の内部車室冷却媒体流路部H311は、タービンロータ20の軸方向に沿った孔であって、作動媒体Fの上流側Usに位置する一端が冷却室R31aに連通している。
【0084】
第2の内部車室冷却媒体流路部H312は、タービンロータ20の径方向に沿った孔であって、径方向において第1の内部車室冷却媒体流路部H311よりも内側に形成されている。第2の内部車室冷却媒体流路部H312は、径方向において外側の一端が第1の内部車室冷却媒体流路部H311に連通している。これに対して、第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち径方向において内側の他端は、外側シュラウド412を介して、静翼41に連通している。
【0085】
内部車室冷却媒体流路H31は、たとえば、タービン10において上半側と下半側とのそれぞれに1つずつ設けられている。内部車室冷却媒体流路H31は、回転方向Rにおいて複数が等間隔で設けられていることが好ましい。
【0086】
[B-9]ロータ冷却流路H21
タービンロータ20は、冷却媒体CFが流れるロータ冷却流路H21が形成されている。ロータ冷却流路H21は、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に位置する空間へ、冷却室R31aから冷却媒体CFが流れるように構成されている。ここでは、ロータ冷却流路H21は、第1のロータ冷却流路部H211と第2のロータ冷却流路部H212と第3のロータ冷却流路部H213とを含む。
【0087】
第1のロータ冷却流路部H211は、タービンロータ20の径方向に沿った孔である。第1のロータ冷却流路部H211は、径方向において外側の一端が冷却室R31aに連通している。これに対して、第1のロータ冷却流路部H211のうち径方向において内側の他端は、第2のロータ冷却流路部H212に連通している。
【0088】
第2のロータ冷却流路部H212は、タービンロータ20の軸方向に沿った孔であって、タービンロータ20の回転中心軸AXに対して同軸に設けられている。
【0089】
第3のロータ冷却流路部H213は、タービンロータ20の径方向に沿った孔である。第3のロータ冷却流路部H213は、径方向において内側の一端が第2のロータ冷却流路部H212に連通している。これに対して、第3のロータ冷却流路部H213のうち径方向において外側の他端は、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に位置する空間に連通している。第3のロータ冷却流路部H213は、複数のタービン段落40のそれぞれに対応して設けられている。
【0090】
[B-10]絞り機構50a
本実施形態のタービン10においては、絞り機構50aが設けられている。絞り機構50aは、冷却媒体をタービン段落40へ導入するための冷却媒体流路である、ロータ冷却流路H21および内部車室冷却媒体流路H31に設けられている。
【0091】
具体的には、絞り機構50aは、ロータ冷却流路H21を構成する複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち最終段のタービン段落40よりも上流側Us側のタービン段落40に冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213(第1の冷却媒体流路部)には、設置されていない。絞り機構50aは、複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。
【0092】
また、絞り機構50aは、内部車室冷却媒体流路H31を構成する複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち最終段のタービン段落40よりも上流側Us側のタービン段落40に冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第1の冷却媒体流路部)には、設置されていない。絞り機構50aは、複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。
【0093】
絞り機構50aは、たとえば、第1実施形態の絞り機構50と同様な構成であって、最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)の断面積が、温度の上昇に伴って小さくなるように構成されている。絞り機構50aは、第2実施形態または第3実施形態の絞り機構50と同様な構成であってもよい。
【0094】
[C]冷却媒体CFの流れ
上記のタービン10における冷却媒体CFの流れに関して説明する。
【0095】
タービン10においては、
図5に示すように、冷却媒体CFが燃焼器ケーシング811を介して外部からタービン車室30の内部に導入される。ここでは、冷却媒体CFは、
図4で示したように、タービン10から排気された後に冷却等が行われた媒体であって、作動媒体Fよりも温度が低く、作動媒体Fよりも圧力が高い状態でタービン10に導入される。
【0096】
具体的には、冷却媒体CFは、
図6に示すように、冷却媒体導入管313を通って内部車室31の内部に流入する。冷却媒体CFは、トランジションピース311の外周面と冷却媒体導入管313の内周面との間を経由して、内部車室31の内部に設けられた冷却室R31aに導入される。
【0097】
冷却室R31aに導入された冷却媒体CFは、上流側グランド部G1において、タービン車室30の内部から外部へリークする。具体的には、上流側グランド部G1において、冷却媒体CFは、冷却室R31aから、グランドシール部35bが設けられた内部車室31の内周面とタービンロータ20の外周面との間へ流れる。その後、冷却媒体CFは、グランドシール部35aが設けられた外部車室32の内周面とタービンロータ20の外周面との間を流れる。
【0098】
また、冷却室R31aに導入された冷却媒体CFは、タービンロータ20に形成されたロータ冷却流路H21に導入される。ここでは、冷却媒体CFは、ロータ冷却流路H21において、第1のロータ冷却流路部H211と第2のロータ冷却流路部H212と第3のロータ冷却流路部H213とを順次流れる。そして、冷却媒体CFは、遮熱ピース70を構成する遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に位置する空間へ流れる。そして、たとえば、動翼42の植込部422とロータホイール21との間を通過して、冷却媒体CFが動翼42へ導入される。これにより、タービンロータ20および動翼42が冷却される。動翼42へ導入された冷却媒体CFは、たとえば、内部車室31の内部において作動媒体Fが流れる主流路へ排出される。
【0099】
この他に、冷却室R31aに導入された冷却媒体CFは、内部車室31に形成された内部車室冷却媒体流路H31を経由して、複数のタービン段落40のそれぞれにおいて静翼41へ供給される。具体的には、内部車室冷却媒体流路H31に流入した冷却媒体は、外側シュラウド412において径方向の外側に設けられた空間に導入される。外側シュラウド412において径方向の外側に設けられた空間は、回転方向Rにリング状に連通した空間であって、たとえば、静翼41と内側シュラウド411とのそれぞれの内部に形成された冷却孔(図示省略)に連通している。冷却媒体CFは、外側シュラウド412から静翼41と内側シュラウド411とのそれぞれに形成された冷却孔を順次流れる。これにより、静翼41などが冷却される。そして、静翼41の冷却で用いられた冷却媒体CFは、たとえば、内部車室31の内部において作動媒体Fが流れる主流路へ排出される。
【0100】
上述したように、本実施形態では、複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち最終段のタービン段落40よりも上流側Us側のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213には、絞り機構50aが設置されていない。同様に、複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち最終段のタービン段落40よりも上流側Us側のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312には、絞り機構50aが設置されていない。しかし、最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312には、絞り機構50aが設置されている。このため、最終段のタービン段落40においては、絞り機構50aを介して、冷却媒体が導入される。
【0101】
最終段のタービン段落40において、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に位置する空間へ流入した冷却媒体CFは、動翼42へ導入される他に、軸方向において最終段のロータホイール21よりも下流側Dsに位置する最終段ホイールスペースRWに流れる。最終段ホイールスペースRWに流れた冷却媒体CFは、下流側グランド部G2において、タービン車室30の内部から外部へリークする。具体的には、下流側グランド部G2において、冷却媒体CFは、グランドシール部35cが設けられたパッキンヘッド321の内周面とタービンロータ20の外周面との間へ流れる。
【0102】
[D]冷却媒体CFの温度(冷却温度)および冷却媒体CFの流量(冷却流量)について
図7は、冷却媒体CFの温度(冷却温度)と時間との関係を示す図である。
図8は、冷却媒体CFの流量(冷却流量)と時間との関係を示す図である。
【0103】
図7および
図8では、上記のタービン10について起動運転を開始した時点から定格運転を開始する時点までの間に関して示している。
図8においては、複数(4つ)のタービン段落のそれぞれに供給される冷却媒体CFの流量を示しており、「STG1」は、第1段(初段)のタービン段落40の場合を示し、「STG2」は、第2段のタービン段落40の場合を示し、「STG3」は、第3段のタービン段落40の場合を示し、「STG4」は、第4段(最終段)のタービン段落40の場合を示している。また、
図8においては、本実施形態のタービン10の場合を「実線」で示し、本実施形態のタービン10と異なり、絞り機構50aが設置されていない関連技術の場合を「破線」で示している。
【0104】
図7に示すように、冷却媒体CFの温度(冷却温度)は、本実施形態では、時間の経過に伴って、たとえば、比例して上昇する。つまり、起動の開始時から定格運転の開始時へ経過する間は、冷却媒体CFの温度(冷却温度)が線形に上昇する。なお、冷却温度を上昇させるためには、燃焼器81(
図4参照)の着火を実行する。
【0105】
図8において破線で示すように、本実施形態のタービン10と異なり絞り機構50aが設置されていない関連技術の場合、複数(4つ)のタービン段落40のそれぞれに供給される冷却媒体CFの流量(冷却流量)は、時間の経過に伴って、タービン入口圧力が上昇していくため、上昇する。起動の初期(
図8の左側)に冷却媒体CFが複数(4つ)のタービン段落40のそれぞれへ流れる流量は、タービン段落40の位置が上流側から下流側へ向かうに伴って少ない。冷却媒体CFの流量が時間に応じて上昇する割合は、タービン段落40の位置が上流側から下流側へ向かうに伴って大きい。起動の初期(
図8の左側)は、翼面熱伝達率が小さいため、冷却媒体CFの流量(冷却流量)は少なくてもよい。しかし、起動の初期(
図8の左側)は、第4段STG4(最終段)のタービン段落40では、上述したように、作動媒体と冷却媒体CFとの間の差圧が小さいため、冷却媒体CFの流量が不十分になる場合がある。
【0106】
図8において実線で示すように、本実施形態のタービン10の場合においても、定格運転の開始時(
図8の右側)には、複数(4つ)のタービン段落40のそれぞれに供給される冷却媒体CFの流量(冷却流量)は、関連技術の場合と同様である。
【0107】
本実施形態のタービン10は、絞り機構50aが設置されている。上述したように、絞り機構50aは、第4段STG4(最終段)のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312に設置されている。絞り機構50aは、温度の上昇に伴って、第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)の断面積が小さくなるように構成されている。
図7に示したように、冷却媒体CFの温度(冷却温度)が時間の経過に伴って上昇するため、絞り機構50aにおいては、時間の経過に伴って圧力損失が大きくなる。このため、絞り機構50aは、起動の初期(
図8の左側)には、定格運転の開始時(
図8の右側)よりも、冷却媒体CFが流れる流路の断面積が大きい。
【0108】
図8において実線で示すように、本実施形態のタービン10の場合には、起動の初期に第4段STG4(最終段)のタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量(冷却流量)が、関連技術の場合よりも増加している。これにより、起動の初期に第4段STG4(最終段)よりも上流側(STG1~STG3)に位置するタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量は、関連技術の場合よりも減少する。
【0109】
その結果、第4段STG4(最終段)のタービン段落40へ導入するための冷却媒体CFの流量が時間に応じて上昇する割合は、本実施形態の場合の方が、関連技術の場合よりも低くなる。これに対して、他のタービン段落40へ導入するための冷却媒体CFの流量が時間に応じて上昇する割合は、本実施形態の場合の方が、関連技術の場合よりも大きくなる。
【0110】
[E]まとめ
以上のように、本実施形態では、最終段よりも上流側のタービン段落40に冷却媒体CFを導入するための冷却媒体流路には、絞り機構50aが設置されていないが、最終段のタービン段落40に冷却媒体CFを導入するための冷却媒体流路には、絞り機構50aが設置されている。絞り機構50aは、温度の上昇に伴って冷却媒体流路の断面積が小さくなるように構成されている。このため、本実施形態では、上述したように、起動の初期時から定格運転の開始時までの間において、最終段のタービン段落40に冷却媒体CFを十分に導入することができる。また、本実施形態では、外部からアクセスしたり調整したりすることなく、流体の温度に伴って自律的な調整を実行可能である。
【0111】
[F]変形例
なお、上記の実施形態では、絞り機構50aは、複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち最終段のタービン段落40よりも上流側Us側のタービン段落40に冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213(第1の冷却媒体流路部)には、設置されていない。また、絞り機構50aは、内部車室冷却媒体流路H31を構成する複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち最終段のタービン段落40よりも上流側Us側のタービン段落40に冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第1の冷却媒体流路部)には、設置されていない。しかしながら、これに限らない。上記実施形態において絞り機構50aが未設置である冷却媒体流路にも、必要に応じて、絞り機構50aを設置してもよい。
【0112】
また、上記の実施形態では、第3のロータ冷却流路部H213は、径方向において内側の一端が第2のロータ冷却流路部H212に連通し、径方向において外側の他端が、遮熱板71の内周面とタービンロータ20の外周面との間に位置する空間に連通している場合について説明したが、これに限らない。第3のロータ冷却流路部H213のうち、径方向において外側の他端は、動翼42の内部の冷却流路に、直接、連通していてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)に、同じ構成の絞り機構50aを設置する場合について説明したが、これに限らない。当然ながら、必要に応じて、第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)において異なる構成の絞り機構50aを設置してもよい。
【0114】
<第5実施形態>
[A]タービン10の構成
第5実施形態にかかるタービン10の一例に関して、
図9を用いて説明する。
【0115】
図9は、
図6と同様に、タービン10の一部断面を模式的に示している。
【0116】
本実施形態のタービン10においては、絞り機構50bが設けられている。絞り機構50bは、第4実施形態の絞り機構50aと異なる位置に設置されている。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第4実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0117】
本実施形態において、絞り機構50bは、ロータ冷却流路H21を構成する複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち初段(第1段)のタービン段落40よりも下流側Ds側のタービン段落40に冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213(第1の冷却媒体流路部)には、設置されていない。絞り機構50bは、複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち初段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。
【0118】
また、絞り機構50bは、内部車室冷却媒体流路H31を構成する複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち初段(第1段)のタービン段落40よりも下流側Ds側のタービン段落40に冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第1の冷却媒体流路部)には、設置されていない。絞り機構50bは、複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち初段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。
【0119】
絞り機構50bは、たとえば、第1実施形態の絞り機構50と同様な構成であって、初段(第1段)のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)の断面積が大きくなるように構成されている。絞り機構50bは、第2実施形態または第3実施形態の絞り機構50と同様な構成であってもよい。
【0120】
[B]冷却媒体CFの流量(冷却流量)について
図10は、第5実施形態にかかるタービンにおいて、冷却媒体CFの流量(冷却流量)と時間との関係を示す図である。
【0121】
図10は、
図8と同様に、複数(4つ)のタービン段落のそれぞれに供給される冷却媒体CFの流量を示しており、「STG1」は、第1段(初段)のタービン段落40の場合を示し、「STG2」は、第2段のタービン段落40の場合を示し、「STG3」は、第3段のタービン段落40の場合を示し、「STG4」は、第4段(最終段)のタービン段落40の場合を示している。また、
図10においては、
図8と同様に、本実施形態のタービン10の場合を「実線」で示し、本実施形態のタービン10と異なり、絞り機構50bが設置されていない関連技術の場合を「破線」で示している。
【0122】
図10において実線で示すように、本実施形態のタービン10の場合においても、定格運転の開始時(
図10の右側)には、複数(4つ)のタービン段落40のそれぞれに供給される冷却媒体CFの流量(冷却流量)は、関連技術の場合と同様である。
【0123】
本実施形態のタービン10は、絞り機構50bが設置されている。上述したように、絞り機構50bは、第1段STG1(初段)のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312に設置されている。絞り機構50bは、温度の上昇に伴って、第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)の断面積が大きくなるように構成されている。
図7に示したように、冷却媒体CFの温度(冷却温度)が時間の経過に伴って上昇するため、絞り機構50bにおいては、時間の経過に伴って圧力損失が小さくなる。このため、絞り機構50bは、起動の初期(
図10の左側)には、定格運転の開始時(
図10の右側)よりも、冷却媒体CFが流れる流路の断面積が小さい。
【0124】
図10において実線で示すように、本実施形態のタービン10の場合には、起動の初期に第1段STG1(初段)のタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量(冷却流量)が、関連技術の場合よりも減少している。これにより、起動の初期に第1段STG1(初段)よりも下流側の段落(STG2~STG4)に位置するタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量は、関連技術の場合よりも増加する。
【0125】
その結果、第1段STG1(初段)のタービン段落40へ導入するための冷却媒体CFの流量が時間に応じて上昇する割合は、本実施形態の場合の方が、関連技術の場合よりも高くなる。これに対して、他のタービン段落40へ導入するための冷却媒体CFの流量が時間に応じて上昇する割合は、本実施形態の場合の方が、関連技術の場合よりも小さくなる。
【0126】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、初段よりも下流側のタービン段落40に冷却媒体CFを導入するための冷却媒体流路には、絞り機構50bが設置されていないが、初段のタービン段落40に冷却媒体CFを導入するための冷却媒体流路には、絞り機構50bが設置されている。絞り機構50bは、温度の上昇に伴って冷却媒体流路の断面積が大きくなるように構成されている。このため、本実施形態では、起動の初期時から定格運転の開始時までの間において、最終段のタービン段落40に冷却媒体CFを十分に導入することができる。また、本実施形態では、外部からアクセスしたり調整したりすることなく、流体の温度に伴って自律的な調整を実行可能である。
【0127】
<第6実施形態>
[A]タービン10の構成
第6実施形態にかかるタービン10の一例に関して、
図11を用いて説明する。
【0128】
図11は、
図6および
図9と同様に、タービン10の一部断面を模式的に示している。
【0129】
本実施形態のタービン10においては、絞り機構50aの他に、絞り機構50bが設けられている。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第4実施形態の場合(
図6参照)および第5実施形態の場合(
図9参照)と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0130】
本実施形態において、絞り機構50aは、第4実施形態の場合(
図6参照)と同様に設置されている。具体的には、絞り機構50aは、複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。また、絞り機構50aは、複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。絞り機構50aは、最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)の断面積が小さくなるように構成されている。
【0131】
本実施形態において、絞り機構50bは、第5実施形態の場合(
図9参照)と同様に設置されている。つまり、絞り機構50bは、複数の第3のロータ冷却流路部H213のうち初段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。また、絞り機構50bは、複数の第2の内部車室冷却媒体流路部H312のうち初段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)に設置されている。絞り機構50bは、最終段のタービン段落40へ冷却媒体を導入するための第3のロータ冷却流路部H213および第2の内部車室冷却媒体流路部H312(第2の冷却媒体流路部)の断面積が大きくなるように構成されている。
【0132】
[B]冷却媒体CFの流量(冷却流量)について
図12は、第6実施形態にかかるタービンにおいて、冷却媒体CFの流量(冷却流量)と時間との関係を示す図である。
【0133】
図12は、
図8および
図10と同様に、複数(4つ)のタービン段落のそれぞれに供給される冷却媒体CFの流量を示しており、「STG1」は、第1段(初段)のタービン段落40の場合を示し、「STG2」は、第2段のタービン段落40の場合を示し、「STG3」は、第3段のタービン段落40の場合を示し、「STG4」は、第4段(最終段)のタービン段落40の場合を示している。また、
図12においては、
図8および
図10と同様に、本実施形態のタービン10の場合を「実線」で示し、本実施形態のタービン10と異なり、絞り機構50bが設置されていない関連技術の場合を「破線」で示している。
【0134】
図12において実線で示すように、本実施形態のタービン10の場合においても、定格運転の開始時(
図12の右側)には、複数(4つ)のタービン段落40のそれぞれに供給される冷却媒体CFの流量(冷却流量)は、関連技術の場合と同様である。
【0135】
本実施形態のタービン10は、絞り機構50aおよび絞り機構50bが設置されている。上述したように、絞り機構50aは、起動の初期(
図12の左側)には、定格運転の開始時(
図12の右側)よりも、冷却媒体CFが流れる流路の断面積が大きい。これに対して、絞り機構50bは、起動の初期(
図12の左側)には、定格運転の開始時(
図12の右側)よりも、冷却媒体CFが流れる流路の断面積が小さい。
【0136】
本実施形態では、起動の初期に第4段STG4(最終弾)のタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量(冷却流量)は、第4実施形態の場合と同様に、絞り機構50aの作用により関連技術の場合よりも増加する。
【0137】
また、本実施形態では、起動の初期に第1段STG1(初段)のタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量(冷却流量)は、絞り機構50bの作用により、第5実施形態の場合と同様に、関連技術の場合よりも減少する。これに伴い、起動の初期に第1段STG1(初段)よりも下流側の段落(STG2~STG4)に位置するタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量は、関連技術の場合よりも増加する。
【0138】
その結果、本実施形態において、起動の初期に第4段STG4(最終弾)のタービン段落40に導入するための冷却媒体CFの流量(冷却流量)は、絞り機構50aおよび絞り機構50bの作用によって、第4実施形態および第5実施形態の場合よりも増加する。
【0139】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、最終段のタービン段落40に冷却媒体CFを導入するための冷却媒体流路には、絞り機構50aが設置されると共に、初段のタービン段落40に冷却媒体CFを導入するための冷却媒体流路には、絞り機構50bが設置されている。絞り機構50aは、温度の上昇に伴って冷却媒体流路の断面積が小さくなるように構成されている。絞り機構50bは、温度の上昇に伴って冷却媒体流路の断面積が大きくなるように構成されている。このため、本実施形態では、上述したように、起動の初期時から定格運転の開始時までの間において、最終段のタービン段落40に冷却媒体CFを十分に導入することができる。また、本実施形態では、外部からアクセスしたり調整したりすることなく、流体の温度に伴って自律的な調整を実行可能である。
【0140】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0141】
たとえば、上記の実施形態では、超臨界状態の作動媒体(作動CO2媒体)が導入されるCO2タービンであるタービン10に、絞り機構50(50a,50b)を設置する場合について説明したが、これに限らない。必要に応じて、他の媒体が作動媒体として導入されるタービン10に、絞り機構50(50a,50b)を設置してもよい。
【符号の説明】
【0142】
10…タービン、11…発電機、12…タービン、20…タービンロータ、21…ロータホイール、30…タービン車室、31…内部車室、32…外部車室、35a…グランドシール部、35b…グランドシール部、35c…グランドシール部、40…タービン段落、41…静翼、42…動翼、43…シールフィン、70…遮熱ピース、71…遮熱板、72…脚部、72a…係合部、80…酸素製造装置、81…燃焼器、82…再生熱交換器、83…冷却器、85…湿分分離器、86…CO2ポンプ、90…排気管、311…トランジションピース、313…冷却媒体導入管、321…パッキンヘッド、411…内側シュラウド、412…外側シュラウド、421…シュラウドセグメント、422…植込部、811…燃焼器ケーシング、AX…回転中心軸、CF…冷却媒体、Ds…下流側、F…作動媒体、G1…上流側グランド部、G2…下流側グランド部、H21…ロータ冷却流路、H211…第1のロータ冷却流路部、H212…第2のロータ冷却流路部、H213…第3のロータ冷却流路部、H31…内部車室冷却媒体流路、H311…第1の内部車室冷却媒体流路部、H312…第2の内部車室冷却媒体流路部、R…回転方向、R31a…冷却室、
RW…最終段ホイールスペース、Us…上流側、50…絞り機構、51…管状部材、52…棒状部材、53…支持部材、SP51…内部空間、61…第1の流路構成部材、62…第2の流路構成部材、63…付勢部材、H61…第1の貫通孔、H62…第2の貫通孔、T61…トレンチ、631…第1の付勢部材、632…第2の付勢部材