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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191859
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20221221BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221221BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221221BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G03B17/56 B
G03B17/02
H04N5/225 100
H04N5/222 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100327
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】福澤 和大
【テーマコード(参考)】
2H100
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H100AA61
2H100CC04
2H105AA03
2H105AA07
2H105AA08
2H105AA09
2H105AA52
5C122DA11
5C122EA05
5C122EA42
5C122FA18
5C122GD01
5C122GD04
5C122GD11
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】容易に画角調整可能であって、振動や衝撃に対して十分な保持力を有する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置(1)は、複数のカメラユニット(100~300)と、複数のカメラユニットをそれぞれ第一の回転軸回りに回転可能に保持する第一の保持部(120)と、第一の保持部を前記第一の回転軸とは異なる第二の回転軸回りに回転可能に保持する第二の保持部(150)と、複数のカメラユニットそれぞれの第一の回転軸回り、または、第二の回転軸回りの少なくとも一つの回転を規制するか否かを切り替える切替部(160、161、180、181)とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカメラユニットと、
前記複数のカメラユニットをそれぞれ第一の回転軸回りに回転可能に保持する第一の保持部と、
前記第一の保持部を前記第一の回転軸とは異なる第二の回転軸回りに回転可能に保持する第二の保持部と、
前記複数のカメラユニットそれぞれの前記第一の回転軸回り、または、前記第二の回転軸回りの少なくとも一つの回転を規制するか否かを切り替える切替部と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記複数のカメラユニットのそれぞれとともに前記第一の回転軸回りに回転可能に配置された第一の切替部を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記第一の保持部とともに前記第二の回転軸回りに回転可能に配置された第二の切替部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第二の保持部を、前記第一の回転軸および前記第二の回転軸とは異なる第三の回転軸回りに回転可能に保持する第三の保持部を更に有し、
前記切替部は、前記第二の保持部とともに前記第三の回転軸回りに回転可能に配置された第三の切替部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記切替部は、板バネからなるレバーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記切替部は、前記回転を規制する否かを切り替える操作部と、前記回転を規制する力を加える付勢部と、固定部とを有し、
前記固定部から前記操作部までの距離は、前記固定部から前記付勢部までの距離よりも長いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第一の切替部が前記第一の回転軸回りの回転を規制する力線は、前記第一の回転軸と平行であることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第二の切替部が前記第二の回転軸回りの回転を規制する力線は、前記第二の回転軸と平行であることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第三の切替部が前記第三の回転軸回りの回転を規制する力線は、前記第三の回転軸と平行であることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記切替部は、柱状部材からなるピンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第一の回転軸回りの回転はチルト回転であり、
前記第二の回転軸回りの回転はパン回転であり、
前記第三の回転軸回りの回転はシフト回転であることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記第一の保持部は、前記複数のカメラユニットをそれぞれチルト回転可能に保持するパンベースであり、
前記第二の保持部は、前記パンベースをパン回転可能に保持するシフトベースであり、
前記第三の保持部は、前記シフトベースを円弧状にシフト回転可能に保持するガイドレールであることを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記パンベースおよび前記シフトベースはそれぞれ、前記カメラユニットごとに設けられており、
前記ガイドレールは、前記複数のカメラユニットに対して共通であることを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記複数のカメラユニットを収容する収容部を更に有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記収容部は、
前記撮像装置を設置するためのボトムカバーと、
前記ボトムカバーの上に取り付けられた透明なドームカバーと、を有することを特徴とする請求項14に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカメラを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のカメラを備えた撮像装置(多眼カメラ)が知られている。一般に、多眼カメラを構成する各カメラは、多眼カメラの設置面に対して画角を調整可能であり、各カメラの画角を調整して固定することで、所望の画像が得られる。多眼カメラの画角調整機構として、支持筐体に対して各カメラが回動可能に支持され、画角調整後に特定のネジを締め付けることで、カメラの回動を制止する機構がある。しかし、ネジ締め作業には工具が必要である。また、多眼カメラは複数のカメラを備えるため、画角調整作業が煩雑になる。
【0003】
特許文献1には、各カメラが設置面に対して複数の回転軸上を回動可能に支持されている多眼カメラが開示されている。この多眼カメラは、回動の際の摺動面において互いに噛み合う凹凸形状が設けられており、通常時は凹凸が噛み合うことで、各カメラが回動することなく画角が固定される。一方、各カメラが回動する方向に力が加わると、凹凸の一部が弾性変形し、退避することで一時的に噛み合いが外れ、各カメラの画角を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開207573503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された多眼カメラにおいて、各カメラの画角は徒手で操作するため、画角の保持力は手で動かせる程度に限定される。このため、外部から振動や衝撃が加わると、各カメラの画角が動いてしまう可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、容易に画角調整可能であって、振動や衝撃に対して十分な保持力を有する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての撮像装置は、複数のカメラユニットと、前記複数のカメラユニットをそれぞれ第一の回転軸回りに回転可能に保持する第一の保持部と、前記第一の保持部を前記第一の回転軸とは異なる第二の回転軸回りに回転可能に保持する第二の保持部と、前記複数のカメラユニットそれぞれの前記第一の回転軸回り、または、前記第二の回転軸回りの少なくとも一つの回転を規制するか否かを切り替える切替部とを有する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容易に画角調整可能であって、振動や衝撃に対して十分な保持力を有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一の実施形態における多眼カメラの外観斜視図である。
図2】第一の実施形態における多眼カメラの分解斜視図である。
図3】第一の実施形態におけるカメラユニットの画角調整時の動きを示す斜視図である。
図4】第一の実施形態におけるカメラユニットの分解斜視図である。
図5】第一の実施形態におけるカメラ部の斜視図である。
図6】第一の実施形態におけるパンベースの斜視図である。
図7】第一の実施形態におけるシフトベースを上方から見た斜視図である。
図8】第一の実施形態におけるシフトベースを下方から見た斜視図である。
図9】第一の実施形態におけるカメラユニットの正面図である。
図10】第一の実施形態におけるカメラユニットの断面図(破線A)である。
図11】第一の実施形態におけるカメラユニットの断面図(破線B)である。
図12】第一の実施形態におけるカメラユニットの断面図(破線C)である。
図13】第二の実施形態におけるカメラユニットの斜視図である。
図14】第二の実施形態におけるカメラユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(第一の実施形態)
まず、図1乃至図12を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されない。
【0013】
図1は、本実施形態における多眼カメラ(撮像装置)1の外観斜視図である。多眼カメラ1は、多眼カメラ1を天井や壁面に設置するためのボトムカバー20と、ボトムカバー20の上に取り付けられた透明なドームカバー10とを有する。ボトムカバー20は、椀型で上部開口を有する。ドームカバー10も椀型であり、下部が開放されている。ボトムカバー20とドームカバー10により、後述のカメラユニット100、200、300を収容する筐体(収容部)が構成される。
【0014】
図2は、多眼カメラ1の分解斜視図であり、図1の状態から多眼カメラ1を構成する各部品を上下方向に引き離した様子を示している。本実施形態において、多眼カメラ1は、筐体の内部に3つのカメラユニット100、200、300を有し、透明なドームカバー10を通じて多眼カメラ1の周囲の様子を撮影することができる。カメラユニット100、200、300は、円環型のガイドレール(第三の保持部)400により、円軌道上を(略円弧状に)移動可能に支持される。なお、この詳細については後述する。ガイドレール400は、ボトムカバー20の上部開口を覆う略円盤型のベースプレート401により固定支持される。各カメラユニット100~300で撮影した映像は、不図示のケーブルを介して、ボトムカバー20に固定支持された制御基板402で処理され、映像化、保存、出力、または合成などを行うことができる。
【0015】
ここでドームカバー10は、例えばポリカーボネートなどを材料とし、筐体を構成する上で十分な剛性とカメラユニット100が多眼カメラ1周囲の様子を撮影できるよう十分な透明度を備える。ボトムカバー20は、例えばアルミダイキャストで構成され、設置面に取り付けられ、筐体内部の部品を支持するのに十分な剛性を備える。ガイドレール400やベースプレート401は後述するカメラユニット100~300を移動可能に支持する上で、十分な剛性を持つ板金や樹脂で構成されることが好ましい。
【0016】
次に、図3乃至図8を参照して、カメラユニット100~300のチルト回転、パン回転、およびシフト回転のための構成について説明する。なお、カメラユニット100~300は同一の構成であるため、以降、カメラユニット100に関して説明する。
【0017】
図3は、カメラユニット100の画角調整時の動きを示す斜視図であり、説明のために、ガイドレール400およびカメラユニット100を抜き出している。図4は、カメラユニット100の分解斜視図であり、図3の状態からカメラユニット100を構成する各部品を引き離した様子を示している。図5は、カメラ部(カメラユニット100の一部)の斜視図である。図6は、パンベース(第一の保持部)120の斜視図である。図7は、シフトベース(第二の保持部)150をドームカバー10側から見た斜視図である。図8は、シフトベース150をボトムカバー20側から見た斜視図である。
【0018】
図5に示されるように、カメラ部は、カメラケース111とカメラケース111内に収容されたカメラ110とを有する。カメラ110は、不図示の撮像素子と光学系とを備え、多眼カメラ1の周囲の様子を、ドームカバー10を通して撮影することができる。カメラケース111は、カメラ110を覆う球状保護部材としてカメラ110に固定される。カメラケース111には、撮影方向から光を取り込むためのカメラケース開口112が形成されている。カメラケース111の両側面には、柱状のチルト軸113が設けられている。
【0019】
カメラ110およびカメラケース111の下には、支持構造材であるパンベース120が設けられている。図6に示されるように、パンベース120は、カメラ110およびカメラケース111の下方に位置する底面部121と、底面部121から起立する2つの平面122とで構成される。パンベース120には、底面部121においてP軸(第二の回転軸:図3参照)と一致するパン挿通孔124と、平面122の先端付近においてT軸(第一の回転軸:図3参照)と一致するチルト挿通孔123とが形成されている。カメラケース111のチルト軸113をチルト挿通孔123に軽篏合させることで、カメラ110およびカメラケース111は、パンベース120に対してT軸(図3)を中心として(第一の回転軸回りに)チルト回転可能に支持される。
【0020】
パンベース120の下には、支持構造材であるシフトベース150が設けられている。図7に示されるように、シフトベース150の上面には、P軸(図3)を中心とする略円環状に配置されたパンガイド152と爪部151とが設けられている。爪部151の弾性を利用し、爪部151をパンベース120のパン挿通孔124に取り付け、パンガイド152をパン挿通孔124と軽篏合させる。これにより、パンベース120をシフトベース150に対してP軸(図3)を中心として(第二の回転軸回りに)パン回転可能に支持することができる。
【0021】
図8に示されるように、シフトベース150の下面には、四隅に爪形状部153が設けられている。円環型のガイドレール400の内環および外環に爪形状部153を取り付けることで、シフトベース150はガイドレール400上を略円環状(略円弧状)に移動可能に支持される。すなわち、シフトベース150がS軸(第三の回転軸:図3参照)を中心として(第三の回転軸回りに)シフト回転可能に支持される。カメラケース111、パンベース120、シフトベース150、およびガイドレール400は、それぞれカメラ110を移動可能に支持する上で十分な剛性を備える樹脂や金属の材料からなる。
【0022】
本実施形態において、パンベース120およびシフトベース150はそれぞれ、カメラユニットごとに設けられている。一方、ガイドレール400は、複数のカメラユニット100、200、300に対して共通である。
【0023】
本実施形態において、チルト回転、パン回転、およびシフト回転は手動で行われる。すなわち、チルト回転、パン回転、およびシフト回転を行うための機構は、駆動源を有さない。以上より、カメラ110は、設置面に固定されるボトムカバー20およびドームカバー10に対して、チルト回転、パン回転、およびシフト回転可能に支持され、カメラ110の撮影方向をユーザの所望の方向に変更することができる。
【0024】
次に、図5乃至図12を参照して、本実施形態におけるカメラ110の画角調整方法、および、カメラ110が画角の保持力を発揮する構成について説明する。図9は、カメラユニット100の正面図である。図10乃至図12はカメラユニット100の断面図であり、図9中の破線A、B、Cに沿った矢視断面図をそれぞれ示す。
【0025】
図7図8、および図10に示されるように、シフトベース150の内部には、カメラユニット100のシフト回転可否(シフト回転を規制するか否か)を切り替える切替部として、板状のシフトレバー(第一の切替部)160が配置されている。シフトレバー160の一端は、シフトベース150の爪形状で構成されるレバー固定部155に固定される固定部160cである。シフトレバー160の他の一端は、ユーザがシフトレバー160を操作するための操作部160aであり、シフトベース150上の凹み形状であるシフトベース把持部154と隙間をあけて対向するように配置される。
【0026】
シフトレバー160上の固定部160cと操作部160aとの間には、付勢部160bが設けられている。付勢部160bは、固定部160cをシフトベース150上のレバー固定部155に固定した状態で、シフトベース150からガイドレール400側に凸となるように配置される。ここで、シフトレバー160を取り付け固定したシフトベース150をガイドレール400に取り付けると、付勢部160bがガイドレール400を付勢する状態になる。一方、シフトベース150は爪形状部153によりガイドレール400に取り付けられている。その結果、ガイドレール400が爪形状部153と付勢部160bとで挟持されることで、ガイドレール400に対するシフトベース150の移動が制限される。
【0027】
操作部160aをシフトベース把持部154との隙間が小さくなる方向に動かすことで、シフトレバー160は、固定部160cを中心として反るように変形する。このとき、付勢部160bがガイドレール400を付勢する力が弱まり、シフトベース150の移動の制限を解除することができる。操作部160aを元に戻すと、シフトレバー160の弾性によって、付勢部160bが再びガイドレール400を押さえつけ、シフトベース150の移動を制限する。
【0028】
ユーザが画角調整のために、カメラユニット100をシフト回転させる際には、シフトベース150のシフトベース把持部154とシフトレバー160の操作部160aをつまみながら、シフトベース150をシフト回転方向に動かすことで行う。シフトベース把持部154と操作部160aは対向するように配置されるため、片手で把持することができる。また、シフトベース把持部154と操作部160aは、シフトベース150とともにシフト回転可能に設けられている。そのため、ユーザはシフトベース把持部154と操作部160aを掴んだ手で、カメラユニット100をシフト回転させることができる。ユーザがシフトベース把持部154と操作部160aから手を離すと、付勢部160bがガイドレール400を押さえつけ、シフト回転を固定する保持力が得られる。
【0029】
図6および図11に示されるように、パンベース120の内部には、カメラユニット100のパン回転可否(パン回転を規制するか否か)を切り替える切替部として、板状のパンレバー(第二の切替部)161が配置されている。パンレバー161の一端はパンベース120の爪形状で構成されるレバー固定部126に固定される固定部161cである。パンレバー161の他の一端は、ユーザがパンレバー161を操作するための操作部161aであり、パンベース120上の凹み形状であるパンベース把持部125と隙間をあけて対向するように配置される。パンレバー161上の固定部161cと操作部161aとの間には、付勢部161bが設けられている。付勢部161bは、固定部161cをパンベース120上のレバー固定部161cに固定した状態で、パンベース120からシフトベース150側に凸となるように配置される。
【0030】
ここで、パンレバー161を取り付け固定したパンベース120をシフトベース150に取り付けると、付勢部161bがシフトベース150を付勢する状態になる。一方で、パンベース120は爪部151によってシフトベース150に取り付けられている。結果として、パンベース120が爪部151と付勢部161bで挟持されることで、シフトベース150に対するパンベース120の移動が制限される。
【0031】
操作部161aをパンベース把持部125との隙間が小さくなる方向に動かすことで、パンレバー161は固定部161cを中心として反るように変形する。このとき付勢部161bがシフトベース150を付勢する力が弱まり、パンベース120の移動の制限を解除することができる。操作部161aを元に戻すと、パンレバー161の弾性によって、付勢部161bが再びシフトベース150を押さえつけ、パン回転を制限する。
【0032】
ユーザが画角調整のために、カメラユニット100をパン回転させる際には、パンベース把持部125とパンレバー161の操作部161aをつまみながら、パンベース120をパン回転方向に動かすことで行う。パンベース把持部125と操作部161aは対向するように配置されるため、片手で把持することができる。また、パンベース把持部125と操作部161aは、パンベース120とともにパン回転可能に設けられている。そのため、ユーザはパンベース把持部125と操作部161aを掴んだ手で、カメラユニットをパン回転させることができる。ユーザがパンベース把持部125と操作部161aから手を離すと、付勢部161bがシフトベース150を押さえつけ、パン回転を固定する保持力が得られる。
【0033】
図5および図12に示されるように、カメラケース111上には、カメラユニット100のチルト回転可否(チルト回転を規制するか否か)を切り替える切替部として、板状のチルトレバー(第三の切替部)162が配置されている。チルトレバー162は、略U字型の対称形状を有し、カメラケース111に対して光軸対称となるように、固定部162cにおいて取り付け固定される。チルトレバー162の両端部には、ユーザがチルトレバー162を操作するための操作部162aが配置されている。操作部162aは、カメラケース111上のカメラケース開口112付近においてカメラケース111から露出し、カメラケース111と隙間をあけて配置される。チルトレバー162上の固定部162cと各操作部162aとの間には、それぞれ付勢部162bが設けられている。付勢部162bは、チルトレバー162をカメラケース111に取り付け固定した状態で、カメラケース111からパンベース120側に凸となるように配置される。
【0034】
ここで、チルトレバー162を取り付け固定したカメラケース111を、パンベース120に取り付けると、2つの付勢部162bがパンベース120を付勢する状態となり、パンベース120に対するカメラケース111の移動が制限される。チルトレバー162の2つの操作部162aを互いに接近する方向に動かすことで、チルトレバー162は固定部162cを中心として反るように変形する。このとき、付勢部162bがパンベース120を付勢する力が弱まり、カメラケース111の移動の制限を解除することができる。操作部162aを元に戻すと、チルトレバー162の弾性によって、付勢部162bが再びパンベース120を押さえつけ、チルト回転を制限する。
【0035】
ユーザが画角調整のために、カメラユニットをチルト回転させる際には、チルトレバー162の重宝の操作部162aをつまみながら、カメラケース111をチルト回転方向に動かすことで行う。両操作部162aは対向するように配置されるため、片手で把持することができる。また、両操作部162aはカメラケース111とともにチルト回転可能に設けられている。そのため、ため、ユーザは両操作部162aを掴んだ手で、カメラユニットをチルト回転させることができる。ユーザが両操作部162aから手を離すと、付勢部162bがパンベース120を押さえつけ、チルト回転を固定する保持力が得られる。
【0036】
以上のように、ユーザは、シフトレバー160、パンレバー161、およびチルトレバー162を操作しながら、カメラユニット100を回転させることで、カメラ110の画角調整を片手で行うことができる。各レバーの操作を終えると、カメラユニット100の回転が制限されるため、外部からの振動や衝撃に対して、画角が保持される。
【0037】
シフト回転・パン回転・チルト回転の可否状態を切り替える各レバーは、例えば板金や板バネで構成され、操作部を摘まんだ際に付勢部が移動するための反り変形や、つまむ動作をやめた際に付勢部が元に戻る上で十分な弾性、剛性をそなえる。また、付勢部が対向する部品を押さえる力は、外部からの振動や衝撃によってカメラの画角がずれるのを防ぐ上で十分な保持力を発揮するよう、0.1kgf以上の力とすることが好ましい。
【0038】
各レバーの操作部を操作する力は、固定部から付勢部までの距離と、固定部から操作部までの距離に比例する。そのため、十分な画角保持力を有しながら、ユーザが操作時に要する力を小さくするには、(固定部から付勢部までの距離)<(固定部から操作部までの距離)となるように設定することが好ましい。
【0039】
図10に示されるように、シフトレバー160の付勢部がガイドレールを押し付ける力の力線170は、シフト回転軸Sと略平行となっている。そのため、ユーザがカメラユニット100をシフト回転させて調整した後に、操作部から手を離して付勢部が再びガイドレール400を押し付けても、シフト回転角度がずれることはない。
【0040】
同様に、図11に示されるように、パンレバー161の付勢部がシフトベース150を押し付ける力の力線171は、パン回転軸Pと略平行となっている。そのため、ユーザがカメラユニット100をパン回転させて調整した後に、操作部から手を離して付勢部が再びシフトベース150を押し付けても、パン回転角度がずれることはない。
【0041】
同様に、図12に示されるように、チルトレバー162の付勢部がパンベース120を押し付ける力の力線170は、チルト回転軸Tと略平行となっている。そのため、ユーザがカメラユニット100をチルト回転させて調整した後に、操作部から手を離して付勢部が再びパンベース120を押し付けても、チルト回転角度がずれることはない。
【0042】
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。なお本実施形態において、第一の実施形態と同一の構成となる箇所については説明を省略する。例えば多眼カメラ1が、ドームカバー10とボトムカバー20とで筐体を形成し、内部に複数のカメラユニット100~300とガイドレール400とベースプレート401と制御基板402とを有する点は第一の実施形態と同一であるため、説明を省略する。また、カメラユニット100がシフト回転、パン回転、およびチルト回転可能に支持される構成についても、第一の実施形態と同一のため、説明を省略する。
【0043】
図13および図14を参照して、本実施形態におけるカメラ110の画角調整方法、および、カメラ110が画角の保持力を発揮する構成について説明する。図13は、本実施形態におけるカメラユニット100とガイドレール400の斜視図である。図14は、図13の各部品を引き離した分解斜視図である。本実施形態は、シフト回転可否を切り替える切替部としてシフトロックピン180、パン回転可否を切り替える切替部としてパンロックピン181、チルト回転可否を切り替える切替部としてチルトロックピン182を有する点で、第一の実施形態とは異なる。
【0044】
シフトロックピン(第一の切替部)180は、ロックピン180aとバネ180bで構成される。ロックピン180aは柱状部材で、一端にユーザが操作するためのつまみを、他端にバネ180bの抜け止め形状を、その間にフランジ形状を有する。バネ180bは圧縮バネであり、ロックピン180aに抜け止め形状側から挿通することでシフトロックピン180が組みあがる。シフトベース150上のピン挿通孔156に対して、バネ180aおよび抜け止め形状がガイドレール400側となるようにシフトロックピン180を挿通することで、シフトベース150とシフトロックピン180が一体となりシフト回転することができる。ロックピン180aは、ピン挿通孔156により、シフトベース150からガイドレール400に向かう直線状を移動可能に支持される。ロックピン180aは、バネ180bによってガイドレール400側に付勢されるが、フランジ形状があるため、ロックピン180aが外れることはない。
【0045】
ここで、シフトロックピン180を取り付けたシフトベース150を、ガイドレール400に取り付け固定すると、ガイドレール400上の平坦部に対してシフトロックピン180が付勢される。このとき、シフトベース150がガイドレール400上をシフト回転する際の摩擦抵抗が増加し、カメラユニット100のシフト回転を制限する。
【0046】
ユーザが画角調整のために、カメラユニット100をシフト回転させる際には、シフトロックピン180を把持し、パンベース120側に引っ張りながらシフト回転方向に動かすことで行う。シフトロックピン180をパンベース120方向に引き上げると、シフトロックピン180がガイドレール400を付勢する力が弱まり、カメラユニット100がシフト回転可能な状態となる。この状態でシフトロックピン180をシフト回転方向に動かすことで、シフトロックピン180とシフトベース150が一体となってシフト回転することができる。ユーザがシフトロックピン180から手を離すと、再度シフトロックピン180がガイドレール400を付勢する力が働き、シフト回転が制限される。
【0047】
同様に、パンロックピン(第二の切替部)181は、ロックピン181aとバネ181bで構成される。なお、ロックピン181aとバネ181bの構成はシフトロックピン180と同一のため、その説明を省略する。パンベース120上のピン挿通孔127に対して、バネ181b及び抜け止め形状がシフトベース150側となるようにパンロックピン181を挿通することで、パンベース120とパンロックピン181が一体となりパン回転できる。ロックピン181aはピン挿通孔127によって、パンベース120からシフトベース150に向かう直線上を移動可能に支持される。ロックピン181aはバネ181bによってシフトベース150側に付勢されるが、フランジ形状があるため、ロックピン181aが外れることはない。
【0048】
ここで、パンロックピン181を取り付けたパンベース120を、シフトベース150に取り付け固定すると、シフトベース150上の平坦部に対してパンロックピン181が付勢される。このとき、パンベース120がシフトベース150上をパン回転する際の摩擦抵抗が増加し、カメラユニット100のパン回転を制限する。
【0049】
ユーザが画角調整のために、カメラユニット100をパン回転させる際には、パンロックピン181を把持し、シフトベース150から離れる方向に引っ張りながらパン回転方向に動かすことで行う。パンロックピン181を引き上げると、シフトベース150を付勢する力が弱まり、カメラユニットがパン回転可能な状態となる。この状態でパンロックピン181をパン回転方向に動かすことで、パンロックピン181とパンベース120が一体となってパン回転することができる。ユーザがパンロックピン181から手を離すと、再度パンロックピン181がシフトベース150を付勢する力が働き、パン回転が制限される。
【0050】
同様に、チルトロックピン(第三の切替部)182は、ロックピン182aとバネ182bで構成される。なお、ロックピン182aとバネ182bの構成はシフトロックピン180と同一のため、その説明を省略する。カメラケース111上のピン挿通孔114、および、パンベース120上のガイド穴128に対して、バネ182bおよび抜け止め形状がカメラケース111内側となるように挿通する。これにより、カメラケース111とチルトロックピン182が一体となり、チルト回転が可能となる。ロックピン182aはピン挿通孔114によって、パンベース120からカメラケース111に向かう直線上を移動可能に支持される。ロックピン182aはバネ182bによってカメラケース111側に付勢されるが、フランジ形状があるため、ロックピン182aが外れることはない。
【0051】
ここで、パンベース120に取り付け支持されたカメラケース111にチルトロックピン182を取り付けると、パンベース120上の平坦部に対してチルトロックピン182のフランジ形状が付勢される。このとき、チルトケースがパンベース120に対してチルト回転する際の摩擦抵抗が増加し、カメラユニットのチルト回転を制限する。
【0052】
ユーザが画角調整のために、カメラユニット100をチルト回転させる際には、チルトロックピン182を把持し、カメラケース111から離れる方向に引張りながらチルト回転方向に動かすことで行う。チルトロックピン182を引っ張ると、パンベース120を付勢する力が弱まり、カメラユニットがチルト回転可能な状態となる。この状態でチルトロックピン182をチルト回転方向に動かすことで、チルトロックピン182とカメラケース111が一体となってチルト回転することができる。ユーザがチルトロックピン182から手を離すと、再度チルトロックピン182がパンベース120を付勢する力が働き、チルト回転が制限される。
【0053】
以上より、ユーザはシフトロックピン180、パンロックピン181、チルトロックピン182を操作しながら、カメラユニット100を回転させることで、カメラの画角調整を片手で行うことができる。各ロックピンの操作を終えると、カメラユニット100の回転が制限されるため、外部からの振動や衝撃に対して、画角が保持される。また本実施形態では、各切替部が要する空間が小さいため、撮像装置を更に小型化することができる。
【0054】
各実施形態によれば、容易に画角調整可能であって、振動や衝撃に対して十分な保持力を有する撮像装置を提供することができる。
【0055】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で具現化できる様々な形態も本発明に含まれる。例えば、上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【0056】
第一の実施形態におけるチルトレバーは、略U字形状であり、光軸対称に配置されているが、光軸を挟んで片側に板バネ状の操作部を配置し、反対側にはカメラケースに把持部を設けてもよい。各レバーの曲げ部を限定するために、剛性を調整する目的で、板バネの一部に切欠きやフランジを設けてもよい。
【0057】
また各実施形態において、多眼カメラ1は、第一の回転軸回り、第二の回転軸回り、および第三の回転軸回りのそれぞれの回転を規制するか否かを切り替える切替部を有するが、これに限定されるものではない。多眼カメラ1は、第一の回転軸回りまたは第二の回転軸回りの少なくとも一つの回転を規制するか否かを切り替える切替部(シフトレバー160、パンレバー161、シフトロックピン180、パンロックピン181)を有していればよい。
【符号の説明】
【0058】
1 多眼カメラ(撮像装置)
100、200、300 カメラユニット
120 パンベース(第一の保持部)
150 シフトベース(第二の保持部)
160 シフトレバー(切替部)
161 パンレバー(切替部)
180 シフトロックピン(切替部)
181 パンロックピン(切替部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14