(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019186
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】既存杭除去装置及び既存杭除去方法
(51)【国際特許分類】
E02D 9/00 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
E02D9/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122871
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】595155060
【氏名又は名称】株式会社ハンシン建設
(71)【出願人】
【識別番号】502120147
【氏名又は名称】株式会社キョウシン
(71)【出願人】
【識別番号】309017965
【氏名又は名称】朝日技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506227552
【氏名又は名称】株式会社進明技興
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 勝則
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050AA02
2D050DA03
2D050DB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切断機構による切断後の残存鉄筋の数を減じる既存杭除去装置を提供する。
【解決手段】円筒状のケーシング2が、地中に埋設された既存杭10を偏心状態で内包するように地中に挿入される。ケーシング2の下端から所定高さの位置に配置された切断機構5が、ケーシング2の中心軸線2e周りの回転に伴って既存杭10を切断する。切断機構5が、ケーシング2の内周面2aの周方向Cの一部に突設固定された固定刃7と、可動刃8とを含む。可動刃8は、固定刃7よりもケーシング2の径方向内方R1へ突出する切断位置と退避位置とに変位可能に支持される。切断位置の可動刃8が、固定刃7により切断された切断溝11の溝底11aを残存鉄筋12Rと共に切断する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去するのに用いられる既存杭除去装置であって、
前記既存杭を偏心状態で内包するように地中に建て込まれる円筒状のケーシングと、
前記ケーシングの下端から所定高さの位置に配置され、前記ケーシングの中心軸線周りの回転に伴って前記既存杭を切断する切断機構と、を備え、
前記切断機構が、前記ケーシングの内周面の周方向の一部に突設固定された固定刃と、前記固定刃よりも前記ケーシングの径方向内方へ突出する切断位置と前記切断位置から退避する退避位置とに変位可能に前記ケーシングによって直接的に又は間接的に支持され、前記切断位置で前記固定刃により切断された切断溝の溝底を残存鉄筋と共に切断する可動刃と、を含む、既存杭除去装置。
【請求項2】
前記可動刃が、前記ケーシングの中心軸線と平行な支軸の中心軸線を中心として前記切断位置と前記退避位置とに回転変位可能に支持される、請求項1に記載の既存杭除去装置。
【請求項3】
前記支軸が前記固定刃によって支持されることにより、前記切断機構が、前記固定刃と前記可動刃と前記支軸とを含んでユニット化されている、請求項2に記載の既存杭除去装置。
【請求項4】
前記固定刃が、水平板部を含み、
前記可動刃が、可動刃本体と、前記可動刃本体から延設され、前記水平板部を上下に挟み、前記水平板部に摺接する一対のアーム板部と、を含み、
前記支軸が、前記水平板部と前記一対のアーム板部とを貫通している、請求項3に記載の既存杭除去装置。
【請求項5】
前記可動刃が、前記退避位置で前記ケーシングの所定方向への回転開始に応じて前記切断溝の前記溝底に食い込む突端を含み、
前記突端の食い込み状態で前記ケーシングが前記所定方向へ回転することにより前記可動刃が前記切断位置に変位駆動されるように構成されている、請求項2~4の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項6】
前記固定刃が、前記切断位置の前記可動刃の第1係合部と係合することにより前記可動刃を前記切断位置に規制する第1規制部を含む、請求項2~5の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項7】
前記第1規制部が、前記固定刃の刃先面の一部で形成される、請求項6記載の既存杭除去装置。
【請求項8】
前記可動刃の前記第1係合部が、前記可動刃の刃先面の背面で形成され、
前記固定刃の前記刃先面の前記一部と、前記切断位置にある前記可動刃の前記刃先面の前記背面とが、前記ケーシングの径方向と直交する、請求項7に記載の既存杭除去装置。
【請求項9】
前記固定刃が、前記退避位置の前記可動刃の第2係合部と係合することにより前記可動刃を前記退避位置に規制する第2規制部を含む、請求項6~8の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項10】
前記可動刃の前記第1係合部と前記第2係合部とが共通の部分で構成されている、請求項9に記載の既存杭除去装置。
【請求項11】
前記固定刃が、前記ケーシングの中心軸線の方向に見たときに山形形状をなす水平板状の固定刃本体と、前記固定板本体の上下に突出形成され、前記固定刃本体の頂部に向けて前記ケーシングの径方向に延びる補強リブとを含む、請求項1~10の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項12】
前記補強リブが、前記固定刃本体の前記頂部に近接する近接端を含み、
前記補強リブの前記近接端と前記固定刃本体の前記頂部とが、所定距離離隔している、請求項11に記載の既存杭除去装置。
【請求項13】
前記補強リブの前記近接端が、前記本体部の前記頂部に向かって高さが低くなる先細り状部の先端を含む、請求項12に記載の既存杭除去装置。
【請求項14】
地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去する既存杭除去方法であって、
下端から所定高さ位置の内周面に固定刃と可動刃とが配置されたケーシングが前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入し、
前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを第1回転方向に回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、
前記切断溝を形成した後に前記ケーシングを前記第1回転方向の反対方向である第2回転方向に回転させることにより、切断位置に変位された可動刃によって前記切断溝の溝底を残存鉄筋と共に切断し、
前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す、既存杭除去方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の既存杭除去装置を用いる、請求項14に記載の既存杭除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存杭除去装置及び既存杭除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された既存杭を除去するときに、既存杭を部分的に破断して、既存杭の上側部分から徐々に除去する工法が知られている。
例えば特許文献1に記載の技術では、既存杭を偏心状態で内包するようにケーシングを揺動させながら地中に所定深さまで挿入する(挿入工程)。次いで、ケーシングの揺動角度を大きくして最終的に全回転させることで、既存杭をケーシングの内周面に固定されたインナーカッターで切断する(切断工程)。
【0003】
切断工程において、インナーカッターの切断範囲にある鉄筋は、インナーカッターにより切断されるが、インナーカッターの切断範囲よりもケーシングの径方向内側にある鉄筋は、切断されずに残り、残存鉄筋となる。
このため、インナーカッターによる切断溝よりも上側にある既存杭の上側部分とケーシングとの間の隙間に楔を打ち込んで、前記上側部分をケーシングに固定した後、ケーシングを回転させることにより、前記上側部分を供回りさせ、残存鉄筋をねじ切るようにしている(ねじ切り工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、楔を用いる残存鉄筋のねじ切り工程は、作業が煩雑である。
そこで、ねじ切り工程での作業を簡略化するために、ケーシングの内周面からのインナーカッターの突出量を大きくすることにより、切断工程で残存鉄筋ができるだけ生じないようにすることが考えられる。
しかし、切断工程において、インナーカッターの突出量を大きくした場合、インナーカッターの切断抵抗が大きくなり、インナーカッターが食い込んだままでケーシングの回転が止まってしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、切断機構による切断後の残存鉄筋の数を減じることができる既存杭除去装置及び既存杭除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、地中(G)に埋設された既存杭(10)を所定長さで切断して除去するのに用いられる既存杭除去装置(1)であって、前記既存杭を偏心状態で内包するように地中に挿入される円筒状のケーシング(2)と、前記ケーシングの下端(2d)から所定高さの位置に配置され、前記ケーシングの中心軸線(2e)周りの回転に伴って前記既存杭を切断する切断機構(5)と、を備え、前記切断機構が、前記ケーシングの内周面(2a)の周方向(C)の一部に突設固定された固定刃(7)と、前記固定刃よりも前記ケーシングの径方向内方(R1)へ突出する切断位置と前記切断位置から退避する退避位置とに変位可能に前記ケーシングによって直接的に又は間接的に支持され、前記切断位置で前記固定刃により切断された切断溝(11)の溝底(11a)を残存鉄筋(12R)と共に切断する可動刃(8;8P)と、を含む、既存杭除去装置(1;1P)を提供する。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2のように、前記可動刃が、前記ケーシングの中心軸線と平行な支軸(9)の中心軸線(9a)を中心として前記切断位置と前記退避位置とに回転変位可能に支持されてもよい。
【0009】
請求項3のように、前記支軸が前記固定刃によって支持されることにより、前記切断機構が、前記固定刃と前記可動刃と前記支軸とを含んでユニット化されていてもよい。
請求項4のように、前記固定刃が、水平板部(70)を含み、前記可動刃が、可動刃本体(80)と、前記可動刃本体から延設され、前記水平板部を上下に挟み、前記水平板部に摺接する一対のアーム板部(83)と、を含み、前記支軸が、前記水平板部と前記一対のアーム板部とを貫通していてもよい。
【0010】
請求項5のように、前記可動刃が、前記退避位置で前記ケーシングの所定方向(M2)への回転開始に応じて前記切断溝の前記溝底に食い込む突端(8a)を含み、前記突端の食い込み状態で前記ケーシングが前記所定方向へ回転することにより前記可動刃が前記切断位置に変位駆動されるように構成されていてもよい。
請求項6のように、前記固定刃が、前記切断位置の前記可動刃の第1係合部(85)と係合することにより前記可動刃を前記切断位置に規制する第1規制部(73)を含んでいてもよい。
【0011】
請求項7のように、前記第1規制部が、前記固定刃の刃先面(70c)の一部で形成されていてもよい。
請求項8のように、前記可動刃の前記第1係合部が、前記可動刃の刃先面(80c)の背面(80d)で形成され、前記固定刃の前記刃先面の前記一部と、前記切断位置にある前記可動刃の前記刃先面の前記背面とが、前記ケーシングの径方向(R)と直交してもよい。
【0012】
請求項9のように、前記固定刃が、前記退避位置の前記可動刃の第2係合部(86)と係合することにより前記可動刃を前記退避位置に規制する第2規制部(74)を含んでいてもよい。
請求項10のように、前記可動刃の前記第1係合部と前記第2係合部とが共通の部分(80d)で構成されていてもよい。
【0013】
請求項11のように、前記固定刃が、前記ケーシングの中心軸線の方向に見たときに山形形状をなす水平板状の固定刃本体(70)と、前記固定板本体の上下に突出形成され、前記固定刃本体の頂部(75)に向けて前記ケーシングの径方向に延びる補強リブ(71)とを含んでいてもよい。
請求項12のように、前記補強リブが、前記固定刃本体の前記頂部に近接する近接端(71a)を含み、前記補強リブの前記近接端と前記固定刃本体の前記頂部とが、所定距離(L)離隔していてもよい。
【0014】
請求項13のように、前記補強リブの前記近接端が、前記本体部の前記頂部に向かって高さが低くなる先細り状部(71b)の先端を含んでいてもよい。
請求項14に記載の発明は、地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去する既存杭除去方法であって、下端から所定高さ位置の内周面に固定刃と可動刃とが配置されたケーシングが前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入し、前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを第1回転方向に回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、前記切断溝を形成した後に前記ケーシングを前記第1回転方向の反対方向である第2回転方向に回転させることにより、切断位置に変位された可動刃によって前記切断溝の溝底を残存鉄筋と共に切断し、前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す、既存杭除去方法を提供する。
【0015】
請求項15のように、請求項14に記載の既存杭除去方法において、請求項1~13のいずれか一項に記載の既存杭除去装置を用いてもよい。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明では、既存杭を偏心状態で内包するように地中に挿入されたケーシングを回転させることにより、固定刃によって既存杭の外周面に切断溝を形成する。次いで、可動刃を固定刃よりも突出する切断位置に変位させた状態でケーシングを回転させることにより、可動刃によって、切断溝の溝底を残存鉄筋とともに切断する。このため、切断機構による切断後に残存する残存鉄筋の数を減じることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、可動刃を支軸によって回転支持して、切断位置と退避位置にスムーズに変位させることができる。
請求項3に記載の発明では、固定刃によって支軸を介して可動刃を支持することで、切断機構をユニット化し、構造を簡素化することができる。
請求項4に記載の発明では、可動刃の可動刃本体から延びる一対のアーム板部と固定刃の水平板部とが、これらを貫通する支軸で連結され、一対のアーム板部が、水平板部を上下に挟んで摺接する。このため、固定刃によって、可動刃を安定して支持することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、退避位置にある可動刃の突端が、ケーシングの所定方向への回転開始に応じて切断溝の溝底に食い込む。この食い込み状態でケーシングが前記所定方向へ回転することにより、簡単な構造で可動刃を切断位置に自動的に変位駆動することができる。
請求項6に記載の発明では、可動刃の第1係合部に係合する固定刃の第1規制部によって可動刃を切断位置に規制することにより、可動刃による切断が安定する。
【0019】
請求項7に記載の発明では、第1規制部が固定刃の刃先面の一部で形成される。このため、可動刃を固定刃に一体化する状態で可動刃による安定した切断が可能になる。
請求項8に記載の発明では、可動刃の刃先面の背面で形成される第1係合部と固定刃の刃先面の一部とが、ケーシングの径方向と直交する。このため、可動刃が固定刃と一体となって、高荷重に耐えることができる。
【0020】
請求項9に記載の発明では、可動刃の第2係合部と係合する固定刃の第2規制部によって可動刃を退避位置に規制する。このため、非使用時の可動刃が、不用意な力を受けることなく保護される。
請求項10に記載の発明では、可動刃の第1係合部と第2係合部とを共通の部分で構成することにより、構造を簡素化することができる。
【0021】
請求項11に記載の発明では、固定刃の山形形状をなす水平板状の固定刃本体の上下に、固定刃本体の頂部に向けてケーシングの径方向に延びる補強リブが突出形成される。このため、固定刃の強度を格段に向上することができる。
請求項12に記載の発明では、固定刃が切断するときに、補強リブが切断の抵抗になることを抑制することができる。
【0022】
請求項13に記載の発明では、固定刃が切断するときに、補強リブが切断の抵抗になることを一層、抑制することができる。
請求項14に記載の発明に係る既存杭除去装置では、既存杭を偏心状態で内包するように所定深さまで挿入されたケーシングを第1回転方向に回転することにより、固定刃によって既存杭の外周面に切断溝を形成する。次いで、ケーシングを第1回転方向の反対方向である第2回転方向に回転させることにより、切断位置に変位された可動刃によって、切断溝の溝底を残存鉄筋と共に切断する。このため、残存鉄筋の数を減じることができる。
【0023】
請求項15に記載の発明では、前記既存杭除去方法において請求項1~13のいずれか一項に記載の発明と同じ効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る既存杭除去装置の概略縦断面図である。
【
図2】
図2は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、
図1のII-II断面図に相当する。
【
図3】
図3は、既存杭及び切断機構の概略斜視図であり、可動刃が退避位置にある状態を示している。
【
図4】
図4は、既存杭除去装置の模式的横断面図であり、可動刃が切断位置にある状態を示している。
【
図5】
図5は、既存杭及び切断機構の概略斜視図であり、可可動刃が切断位置にある状態を示している。
【
図10】
図10(a)~(h)は、既存杭除去装置を用いる既存杭除去方法の各工程を順序に示す工程図である。
【
図11】
図11は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、固定刃による切断途中の状態を示している。
【
図12】
図12は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、固定刃による切断が完了した状態を示している。
【
図13】
図13は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、退避位置にある可動刃の突端が既存杭の切断溝内に進入し始める状態を示している。
【
図14】
図14は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、退避位置にある可動刃の突端が既存杭の切断溝の溝底に食い込む状態を示している。
【
図15】
図15は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、可動刃が切断位置に変位された状態を示している。
【
図16】
図16は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、可動刃による切断途中の状態を示している。
【
図17】
図17は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、可動刃による切断が完了した状態を示している。
【
図18】
図18は、本発明の第2実施形態に係る既存杭除去装置の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る既存杭除去装置の概略縦断面図である。
図1に示すように、既存杭除去装置1は、ケーシング2と、回転駆動装置3と、掘削刃4と、切断機構5と、吊上げ装置6とを備える。
【0026】
ケーシング2は、上下に長い鋼製の円筒状部材である。ケーシング2は、内周面2aと外周面2bと、上端2cと、下端2dと、中心軸線2eとを有している。ケーシング2は、円柱状の既存杭10を偏心状態(すなわち、既存杭10の中心軸線10aがケーシング2の中心軸線2eに対して偏心する状態)で内包するように地中Gに建て込み挿入される。
【0027】
回転駆動装置3は、ケーシング2の外周面2bをチャックする状態で、ケーシング2を中心軸線2e周りに回転推進させながら地中Gに圧入する装置である。掘削刃4は、複数設けられている。複数の掘削刃4は、ケーシング2の下端2dに周方向に等間隔で固定配置されている。
図2は、既存杭除去装置1の概略横断面図であり、
図1のII-II断面図に相当する。
図3は、既存杭10及び切断機構5の概略斜視図である。
図2及び
図3に示すように、既存杭10は、中心軸線10aを中心とする円周12a上に、周方向に等間隔で配置される複数の棒状の鉄筋12を埋設している。図示していないが、複数の鉄筋12を包囲する補強環が高さ方向に等間隔で配置されて複数の鉄筋12を溶接固定することにより、鉄筋かごが形成されている。
【0028】
また、切断機構5は、固定刃7と、可動刃8と、支軸9とを含む単一のユニットUとして構成されている。固定刃7は、ケーシング2の内周面2aの周方向Cの一部に突設固定されている。可動刃8は、固定刃7によって支軸9を介して回転変位可能に支持されている。支軸9の中心軸線9aは、ケーシング2の中心軸線2eと平行である。可動刃8は、支軸9の中心軸線9aの周りに、固定刃7よりもケーシング2の径方向内方R1に突出する切断位置(
図4及び
図5を参照)と、前記切断位置から退避する退避位置(
図2及び
図3を参照)とに回転変位可能である。
【0029】
図6は、固定刃7の斜視図である。
図6に示すように、固定刃7は、固定刃本体70と、補強リブ71とを含む。固定刃本体70は、ケーシング2の中心軸線2eの方向に見たときに山形形状をなす水平板部である。固定刃本体70は、上面70aと、下面70bと、刃先面70cと、支軸挿通孔72と、第1規制部73と、第2規制部74とを含む。
固定刃本体70の刃先面70cは、頂部75と、一対の斜面部76,77とを含む。刃先面70cの頂部75は、ケーシング2の径方向Rと直交する平坦面又は僅かな曲率を有する凹湾曲面(実質的に平坦面に相当)で形成されている。刃先面70cの頂部75の少なくとも一部(例えば一方の斜面部76側の半部)によって、可動刃8を切断位置(
図4及び
図5を参照)に規制する第1規制部73が形成されている。
【0030】
刃先面70cの一対の斜面部76,77は、頂部75を挟んだ両側に配置され、互いに逆向きに凹面状に傾斜している。一方の斜面部76の略中央部に、V字形形状の凹部78が形成されている。凹部78の一対の内壁のうち頂部75側の内壁面の少なくとも一部によって、可動刃8を退避位置(
図2及び
図3を参照)に規制する第2規制部74が形成されている。
【0031】
支軸挿通孔72は、頂部75及び一方の斜面部76に近接する位置で、上面70a及び下面70bを貫通する貫通孔である。支軸挿通孔72に挿通される支軸9(
図3を参照)が、支軸挿通孔72の内周面によって回転可能に支持される。固定刃本体70の上面70a及び下面70bには、刃先面70cの頂部75に向かう面取り状の傾斜面70dが設けられている。傾斜面70dは、平面視で略台形形状である。
【0032】
補強リブ71は、固定刃本体70の上下に、すなわち上面70aと下面70bとに突出形成されている。補強リブ71は、固定刃本体70の頂部である刃先面70cの頂部75に向けて、ケーシング2の径方向Rに長尺に延びる矩形板である。補強リブ71は、固定刃本体70の頂部(刃先面70cの頂部75)に近接する近接端71aを含む。補強リブ71の近接端71aは、頂部75に向かって高さが低くなる先細り状部71bの先端で形成されている。頂部75と補強リブ71の近接端71aとは、所定距離Lで離隔している。
【0033】
図7は、可動刃8の要部の拡大斜視図である。
図8は、可動刃8の平面図である。
図9は、可動刃8の前面図である。
図7~
図9に示すように、可動刃8は、平面視で横方向に隣接する第1部分81と第2部分82とを有する可動刃本体80と、一対のアーム板部83とを含む。可動刃8は、ケーシング2の中心軸線2eの方向に見たときに勾玉状を呈する。
【0034】
可動刃本体80は、上面80aと、下面80bと、平面視で勾玉状の輪郭をなす刃先面80cと、刃先面80cの後方に配置される平坦面からなる背面80dとを含む。背面80dには、切断位置(
図4を参照)で固定刃7の第1規制部73に係合する第1係合部85と、退避位置(
図3を参照)で固定刃7の第2規制部74に係合する第2係合部86とが設けられている。
【0035】
一対のアーム板部83は、可動刃本体80の第1部分81における背面80dから後方に延設された互いに平行な板状部である。平面視において、可動刃本体80の第2部分82が、アーム板部83に対して横方向である第1方向K1に、くちばし状に突出しており、くちばしの先端が、可動刃8の突端8a(可動刃本体80の突端に相当)となっている。平面視において、可動刃8は、全体として勾玉状の形状を形成している。
【0036】
可動刃本体80の第1部分81における上面80aと下面80bとは、背面80d側の反対側である第2方向K2に向かって互いに逆向きに傾斜しており、また、第1方向K1に向かって互いに逆向きに傾斜している。同様に、可動刃本体80の第2部分82における上面80aと下面80bとは、第1方向K1及び第2方向K2の各方向に向かって互いに逆向きに傾斜している。
【0037】
刃先面80cにおける可動刃8の刃厚t(
図7及び
図9を参照)は、第1部分81では第2部分82側に向かって漸減されており、第2部分82では、一定とされている。後方から見て、第1部分81における背面80dは、矩形であり、第2部分82における背面80dは、略三角形である。
一対のアーム板部83は、固定刃7の水平板部である固定刃本体70を上下に挟んで配置されている(
図3を参照)。一対のアーム板部83には、支軸固定孔84(
図8を参照)が形成されている。支軸9の軸方向中央部が、固定刃7の支軸挿通孔72に挿通支持される状態で、支軸9の軸方向両端部が、一対のアーム板部83の支軸固定孔84に固定されている(
図3を参照)。
可動刃8が、支軸9の中心軸線9a周りに回転変位するときに、一対のアーム板部83が、固定刃本体70の上面70a及び下面70bに対してそれぞれ摺接する。
【0038】
次いで、既存杭除去装置1を用いる既存杭除去方法を説明する。
図10(a)~(h)は、既存杭除去方法の各工程を順序に示す工程図である。
まず、
図10(a)に示すように、地中Gに残存している既存杭10の上方に、回転駆動装置3を設置し、既存杭10に対して偏心した位置に(すなわち、既存杭10の中心軸線10aとケーシング2の中心軸線2eとがオフセットされるように)ケーシング2をセットする(セット工程)。このとき、既存杭10は、ケーシング2において固定刃7が設けられている側に対して反対側に偏心させて配置される。
【0039】
次いで、
図10(b)に示すように、回転駆動装置3により、固定刃7及び退避位置にある可動刃8が既存杭10に接触しない範囲でケーシング2を中心軸線2e周りに揺動させながら、
図10(c)に示すように地中Gに所定深さまで掘削挿入する(挿入工程)。
ケーシング2が所定深さまで達した後、
図10(d)及び(e)に示すように、回転駆動装置3によって、ケーシング2を第1回転方向M1(可動刃8の配置される側に対して反対側である他方の斜面部77側)に全周回転させ、
図11及び
図12に示すように、固定刃7の他方の斜面部77及び頂部75によって、既存杭10の外周面10bに切断溝11を形成する(固定刃切断工程)。このとき、可動刃8は、固定刃7よりも突出しない退避位置に退避している。切断溝11の溝底11aは、ケーシング2の中心軸線2eを中心とする、固定刃7による切削円7C(
図4も参照)に沿う。
【0040】
図12に示すように、ケーシング2が第1回転方向M1に全周回転すると、C字形状の切断溝11が形成され、その部分の鉄筋12が、ほぼ切断されて切断鉄筋12C(図中、白丸で示す)となり、残りの鉄筋12が、切断溝11の溝底11aのさらに奥にあって、図中、黒丸で示される残存鉄筋12Rとなる。
次いで、
図10(f)に示すように、回転駆動装置3により、ケーシング2を第2回転方向M2に回転させる。この回転開始に応じて、
図13に示すように退避位置にある可動刃8の突端8aが、
図14に示すように切断溝11の溝底11aに食い込む。この突端8aの食い込み状態でケーシング2が第2回転方向M2に回転されることにより、
図15に示すように、可動刃8が、固定刃7よりもケーシング2の径方向内方R1に突出する切断位置(
図4及び
図5も参照)に変位駆動される。
【0041】
このとき、可動刃8は、
図5に示すように、固定刃7の第1規制部73によって受けられて切断位置に位置規制される。可動刃8が切断位置に規制された状態で、
図10(g)に示すように、ケーシング2が第2回転方向M2に全周回転されることにより、可動刃8によって、切断溝11の溝底11aが、
図16及び
図17に示すように、残存鉄筋12Rと共に切断される(可動刃切断工程)。切断溝11の溝底11aは、ケーシング2の中心軸線2eを中心とする、可動刃8による切削円8C(
図4も参照)に沿う。
【0042】
可動刃切断工程の後も、ケーシング2が第2回転方向M2に回転されることにより、ケーシング2内の土砂圧で、
図10(h)に示すように、切断機構5よりも上方にある既存杭10の上側部分10Uが下側部分10Lから完全に破断される(ねじ切り工程)。
次いで、図示していないが、吊上げ装置6により、既存杭10の上側部分10Uを把持し、地上に引き上げて撤去する(撤去工程)。
【0043】
本実施形態の既存杭除去装置1及びこれを用いる既存杭除去方法によれば、下記の効果を奏する。すなわち、既存杭10を偏心状態で内包するように地中に挿入されたケーシング2を回転させることにより、固定刃7によって既存杭10の外周面10bに切断溝11を形成する(
図11及び
図12を参照)。次いで、可動刃8を固定刃7よりも突出する切断位置に変位させた状態でケーシング2を回転させることにより、可動刃8によって、切断溝11の溝底11aを残存鉄筋12Rとともに切断する(
図15~
図17を参照)。このため、切断機構5による切断後において切断されずに残る残存鉄筋12Rの数を減じることができる。
【0044】
このため、残存鉄筋12Rのねじ切り工程において、従来のような楔を用いずとも、回転するケーシング2内の土砂圧のみで残存鉄筋12Rをねじ切ることが可能となり、ねじ切り工程を格段に簡素化することができる。また、仮に、楔を用いた場合には、非常に容易に残存鉄筋12Rをねじ切ることができる。
また、可動刃8が、ケーシング2の中心軸線2eと平行な支軸9の中心軸線9aを中心として切断位置(
図5)と退避位置(
図3)とに回転変位可能に支持される。このため、可動刃8を支軸9によって回転支持して切断位置及び退避位置にスムーズに変位させることができる。
【0045】
また、
図3に示すように、固定刃7によって支軸9を介して可動刃8を支持することで、固定刃7、可動刃8及び支軸9を含む切断機構5をユニット化し、構造を簡素化することができる。
また、可動刃8の可動刃本体80から延びる一対のアーム板部83と固定刃7の水平板部(固定刃本体70)とが、これらを貫通する支軸9で連結され、一対のアーム板部83が、水平板部(固定刃本体70)を上下に挟んで摺接する。このため、固定刃7によって、可動刃8を安定して支持することができる。
【0046】
また、
図14に示すように、退避位置にある可動刃8の突端8aが、ケーシング2の第2回転方向M2への回転開始に応じて切断溝11の溝底11aに食い込む。この食い込み状態でケーシング2がさらに第2回転方向M2へ回転することにより、
図15に示すように、可動刃8を切断位置に自動的に変位駆動することができる。しかも、これを簡単な構造で達成することができる。
【0047】
また、
図4に示すように、可動刃8の第1係合部85に係合させた固定刃7の第1規制部73によって、可動刃8が切断位置に規制される。このため、可動刃8による切断が安定する。
また、
図4~
図6に示すように、第1規制部73が固定刃7の刃先面70cの一部(具体的には頂部75の一部)で成される。このため、可動刃8を固定刃7に一体化する状態で可動刃8による安定した切断が可能になる。固定刃7の刃先面70cも保護される。
【0048】
また、
図4に示すように、可動刃8の刃先面80cの背面80dで形成される第1係合部85と固定刃7の刃先面70cの一部(具体的には頂部75の一部である第1規制部73)とが、ケーシング2の径方向Rと直交する。このため、可動刃8が固定刃7と一体となって、高荷重に耐えることができる。
また、
図2に示すように、可動刃8の第2係合部86(
図7を参照)に係合させる固定刃7の第2規制部74によって可動刃8を退避位置に規制する。このため、非使用時の可動刃8が、不用意な力を受けることなく保護される。
【0049】
また、
図7に示すように、可動刃8の第1係合部85と第2係合部86とが、共通の部分(可動刃8の刃先面80cの背面80d)で構成される。このため、構造を簡素化することができる。
また、
図6に示すように、固定刃7の山形形状をなす水平板状の固定刃本体70の上下に、固定刃本体70の頂部75に向けてケーシング2の径方向Rに延びる補強リブ71が突出形成される。このため、固定刃7の強度を格段に向上することができる。
【0050】
また、補強リブ71の近接端71aと固定刃本体70の頂部75とは、所定距離Lだけ離隔されている。このため、固定刃7が切断溝11を形成するときに、補強リブ71が切断の抵抗になることを抑制することができる。
特に、補強リブ71の近接端71aが、頂部75に向かって高さが低くなる先細り状部71bの先端で形成されている。このため、固定刃7が切断溝11を形成するときに、補強リブ71が切断の抵抗になることを一層、抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の既存杭除去方法によれば、既存杭10を偏心状態で内包するように所定深さまで挿入されたケーシング2を第1回転方向M1に回転することにより、固定刃7によって既存杭10の外周面10bに切断溝11を形成する(
図11及び
図12を参照)。次いで、ケーシング2を第1回転方向M1の反対方向である第2回転方向M2に回転させることにより、切断位置に変位された可動刃8によって、切断溝11の溝底11aを残存鉄筋12Rと共に切断する(
図15~
図17を参照)。このため、切断機構5による切断後に残存する残存鉄筋12Rの数を減じることができる。このため、残存鉄筋12Rのねじ切り工程において、従来のような楔を用いずとも、回転するケーシング2内の土砂圧のみで残存鉄筋12Rをねじ切ることが可能となり、ねじ切り工程を格段に簡素化することができる。また、仮に、楔を用いた場合には、非常に容易に残存鉄筋12Rをねじ切ることができる。
(第2実施形態)
図18は、本発明の第2実施形態に係る既存杭除去装置1Pの概略横断面図である。
図18の第2実施形態の既存杭除去装置1Pが、
図4の第1実施形態の既存杭除去装置1と主に異なるのは、可動刃8Pを枢支する枢支部が、ケーシング2の内周面2aに設けられた、ケーシング2の要素である突リブ2fで形成されており、可動刃8Pが、ケーシング2によって直接的に支持されることである。
【0052】
可動刃8Pは、刃先面80cと背面80dとを有する板状の可動刃本体80Pと、可動刃本体80Pから背面80dに対して斜め後方に向けて延設されたアーム板部83Pとを含み、全体として、薙刀状に形成されている。アーム板部83Pの延設端が、突リブ2fによって支持される。
可動刃8Pは、
図18において実線で示されるように、背面80dの第1係合部85Pが固定刃7の頂部75の第1規制部73で受けられて、切断位置に規制される。また、可動刃8Pは、
図18において一点鎖線で示されるように、アーム板部83Pの外側面83Pa(第2係合部に相当)が、ケーシング2の内周面2a(第2規制部に相当)で受けられることにより、退避位置に規制される。
【0053】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図示していないが、固定刃7の補強リブ71が一様な高さの矩形板であってもよい。また、固定刃7の固定刃本体70の上下の何れか一方のみに、補強リブ71が設けられてもよい。また、補強リブ71が無くてもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 既存杭除去装置
1P 既存杭除去装置
2 ケーシング
2a 内周面
2d 下端
2e 中心軸線
2f 突リブ(枢支部)
3 回転駆動装置
4 掘削刃
5 切断機構
6 吊上げ装置
7 固定刃
8 可動刃
8P 可動刃
8a 突端
9 支軸
9a 中心軸線
10 既存杭
10a 中心軸線
10b 外周面
10U 上側部分
11 切断溝
11a 溝底
12 鉄筋
12C 切断鉄筋
12R 残存鉄筋
70 固定刃本体(水平板部)
70c 刃先面
71 補強リブ
71a 近接端
71b 先細り状部
72 支軸挿通孔
73 第1規制部
74 第2規制部
75 頂部
76 一方の斜面部
77 他方の斜面部
78 凹部
80 可動刃本体
80P 可動刃本体
80c 刃先面
80d 背面
81 第1部分
82 第2部分
83 アーム板部
83P アーム板部
83Pa 外側面
84 支軸固定孔
85 第1係合部
85P 第1係合部
86 第2係合部
C 周方向
G 地中
L 所定距離
M1 第1回転方向
M2 第2回転方向(所定方向)
R 径方向
R1 径方向内方
U ユニット
【手続補正書】
【提出日】2021-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去するのに用いられる既存杭除去装置であって、
前記既存杭を偏心状態で内包するように地中に建て込まれる円筒状のケーシングと、
前記ケーシングの下端から所定高さの位置に配置され、前記ケーシングの中心軸線周りの回転に伴って前記既存杭を切断する切断機構と、を備え、
前記切断機構が、前記ケーシングの内周面の周方向の一部に突設固定された固定刃と、前記固定刃よりも前記ケーシングの径方向内方へ突出する切断位置と前記切断位置から退避する退避位置とに変位可能に前記ケーシングによって直接的に又は間接的に支持され、前記切断位置で前記固定刃により切断された切断溝の溝底を残存鉄筋と共に切断する可動刃と、を含む、既存杭除去装置。
【請求項2】
前記可動刃が、前記ケーシングの中心軸線と平行な支軸の中心軸線を中心として前記切断位置と前記退避位置とに回転変位可能に支持される、請求項1に記載の既存杭除去装置。
【請求項3】
前記支軸が前記固定刃によって支持されることにより、前記切断機構が、前記固定刃と前記可動刃と前記支軸とを含んでユニット化されている、請求項2に記載の既存杭除去装置。
【請求項4】
前記固定刃が、水平板部を含み、
前記可動刃が、可動刃本体と、前記可動刃本体から延設され、前記水平板部を上下に挟み、前記水平板部に摺接する一対のアーム板部と、を含み、
前記支軸が、前記水平板部と前記一対のアーム板部とを貫通している、請求項3に記載の既存杭除去装置。
【請求項5】
前記可動刃が、前記退避位置で前記ケーシングの所定方向への回転開始に応じて前記切断溝の前記溝底に食い込む突端を含み、
前記突端の食い込み状態で前記ケーシングが前記所定方向へ回転することにより前記可動刃が前記切断位置に変位駆動されるように構成されている、請求項2~4の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項6】
前記固定刃が、前記切断位置の前記可動刃の第1係合部と係合することにより前記可動刃を前記切断位置に規制する第1規制部を含む、請求項2~5の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項7】
前記第1規制部が、前記固定刃の刃先面の一部で形成される、請求項6記載の既存杭除去装置。
【請求項8】
前記可動刃の前記第1係合部が、前記可動刃の刃先面の背面で形成され、
前記固定刃の前記刃先面の前記一部と、前記切断位置にある前記可動刃の前記刃先面の前記背面とが、前記ケーシングの径方向と直交する、請求項7に記載の既存杭除去装置。
【請求項9】
前記固定刃が、前記退避位置の前記可動刃の第2係合部と係合することにより前記可動刃を前記退避位置に規制する第2規制部を含む、請求項6~8の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項10】
前記可動刃の前記第1係合部と前記第2係合部とが共通の部分で構成されている、請求項9に記載の既存杭除去装置。
【請求項11】
前記固定刃が、前記ケーシングの中心軸線の方向に見たときに山形形状をなす水平板状の固定刃本体と、前記固定刃本体の上下に突出形成され、前記固定刃本体の頂部に向けて前記ケーシングの径方向に延びる補強リブとを含む、請求項1~10の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項12】
前記補強リブが、前記固定刃本体の前記頂部に近接する近接端を含み、
前記補強リブの前記近接端と前記固定刃本体の前記頂部とが、所定距離離隔している、請求項11に記載の既存杭除去装置。
【請求項13】
前記補強リブの前記近接端が、前記固定刃本体の前記頂部に向かって高さが低くなる先細り状部の先端を含む、請求項12に記載の既存杭除去装置。
【請求項14】
地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去する既存杭除去方法であって、
下端から所定高さ位置の内周面に固定刃と可動刃とが配置されたケーシングが前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入し、
前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを第1回転方向に回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、
前記切断溝を形成した後に前記ケーシングを前記第1回転方向の反対方向である第2回転方向に回転させることにより、切断位置に変位された可動刃によって前記切断溝の溝底を残存鉄筋と共に切断し、
前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す、既存杭除去方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の既存杭除去装置を用いる、請求項14に記載の既存杭除去方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項11のように、前記固定刃が、前記ケーシングの中心軸線の方向に見たときに山形形状をなす水平板状の固定刃本体(70)と、前記固定刃本体の上下に突出形成され、前記固定刃本体の頂部(75)に向けて前記ケーシングの径方向に延びる補強リブ(71)とを含んでいてもよい。
請求項12のように、前記補強リブが、前記固定刃本体の前記頂部に近接する近接端(71a)を含み、前記補強リブの前記近接端と前記固定刃本体の前記頂部とが、所定距離(L)離隔していてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項13のように、前記補強リブの前記近接端が、前記固定刃本体の前記頂部に向かって高さが低くなる先細り状部(71b)の先端を含んでいてもよい。
請求項14に記載の発明は、地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去する既存杭除去方法であって、下端から所定高さ位置の内周面に固定刃と可動刃とが配置されたケーシングが前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入し、前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを第1回転方向に回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、前記切断溝を形成した後に前記ケーシングを前記第1回転方向の反対方向である第2回転方向に回転させることにより、切断位置に変位された可動刃によって前記切断溝の溝底を残存鉄筋と共に切断し、前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す、既存杭除去方法を提供する。