(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191861
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】抵抗素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
H01L27/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100332
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】狩野 太一
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AR07
5F038AR09
5F038AR16
5F038AR21
5F038AR24
5F038AR25
5F038AV04
5F038AV05
5F038AV06
5F038BH02
5F038BH13
5F038CA06
5F038CA07
5F038CA10
5F038CA12
5F038CA16
5F038CA18
5F038CD18
(57)【要約】
【課題】実装面積を変更することなく、ESD耐量を確保しつつ、高抵抗化が可能となる抵抗素子を提供する。
【解決手段】半導体基板1,11上にフィールド絶縁膜2,12を介してに設けられた抵抗層31a,31c,91a,91cと、抵抗層31a,31c,91a,91cの一端側に電気的に接続されたパッド形成電極21,51と、抵抗層31a,31c,91a,91cの他端側に電気的に接続される一方の端子、及び半導体基板1,11にオーム性接触する他方の端子を有する中継配線22a,22c,52a,52cと、半導体基板1,11下に設けられた裏面電極9,19をそれぞれ備え、同一のチップサイズを有する複数の抵抗チップ10a,10bが積層されて抵抗チップ10a,10bの抵抗層31a,31c,91a,91cが直列接続され、抵抗チップ10aのパッド形成電極51と、抵抗チップ10bの裏面電極19の間の電気的経路を抵抗体とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられたフィールド絶縁膜と、
前記フィールド絶縁膜上に設けられた抵抗層と、
前記フィールド絶縁膜及び前記抵抗層を被覆するように設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に設けられ、前記抵抗層の一端側に電気的に接続されたパッド形成電極と、
前記層間絶縁膜上に前記パッド形成電極と離間して設けられ、前記抵抗層の他端側に電気的に接続される一方の端子、及び前記半導体基板にオーム性接触する他方の端子を有する中継配線と、
前記半導体基板下に設けられ、前記半導体基板にオーム性接触する裏面電極と、
をそれぞれ備え、且つ互いに同一のチップサイズを有する複数の抵抗チップが積層されて前記複数の抵抗チップのそれぞれの前記抵抗層が直列接続され、最上段の前記抵抗チップの前記パッド形成電極と、最下段の前記抵抗チップの前記裏面電極との間の電気的経路を抵抗体とすることを特徴とする抵抗素子。
【請求項2】
前記最上段の前記抵抗チップよりも下段の前記抵抗チップは、前記パッド形成電極上に設けられたメッキ層を更に備え、
上段の前記抵抗チップの前記裏面電極と、下段の前記抵抗チップの前記メッキ層とが接合層により接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗素子。
【請求項3】
前記接合層が、複数個所に互いに離間して設けられることを特徴とする請求項2に記載の抵抗素子。
【請求項4】
前記接合層が、上下段の前記抵抗チップの平面パターンの中央に設けられることを特徴とする請求項2に記載の抵抗素子。
【請求項5】
上段の前記抵抗チップの前記裏面電極と、下段の前記抵抗チップの前記メッキ層の間に、前記接合層に接して設けられた絶縁層を更に備えることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の抵抗素子。
【請求項6】
前記複数の抵抗チップが、互いに同一構造を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の抵抗素子。
【請求項7】
前記複数の抵抗チップが、互いに異なる抵抗値を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の抵抗素子。
【請求項8】
前記抵抗チップそれぞれに、前記パッド形成電極、前記中継配線および前記層間絶縁膜上に設けられた保護絶縁膜を更に備える
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の抵抗素子。
【請求項9】
半導体基板と、前記半導体基板上に設けられたフィールド絶縁膜と、前記フィールド絶縁膜上に設けられた抵抗層と、前記フィールド絶縁膜及び前記抵抗層を被覆するように設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に設けられ、前記抵抗層の一端側に電気的に接続されたパッド形成電極と、前記層間絶縁膜上に前記パッド形成電極と離間して設けられ、前記抵抗層の他端側に電気的に接続される一方の端子、及び前記半導体基板にオーム性接触する他方の端子を有する中継配線と、前記半導体基板下に設けられ、前記半導体基板にオーム性接触する裏面電極と、をそれぞれ備え、且つ互いに同一のチップサイズを有する複数の抵抗チップを用意する工程と、
前記複数の抵抗チップを積層して前記複数の抵抗チップのそれぞれの前記抵抗層を直列接続し、最上段の前記抵抗チップの前記パッド形成電極と、最下段の前記抵抗チップの前記裏面電極との間の電気的経路を抵抗体とする工程
とを含むことを特徴とする抵抗素子の製造方法。
【請求項10】
前記複数の抵抗チップを積層する工程は、
前記最上段の前記抵抗チップよりも下段の前記抵抗チップの前記パッド形成電極上にメッキ層を形成し、
上段の前記抵抗チップの前記裏面電極と、下段の前記抵抗チップの前記メッキ層とを接合層により接合する接合工程
を含むことを特徴とする請求項9に記載の抵抗素子の製造方法。
【請求項11】
前記抵抗チップそれぞれに、前記パッド形成電極、前記中継配線および前記層間絶縁膜上に設けられた保護絶縁膜を備え、
前記接合工程の後に、前記上段の前記抵抗チップの前記裏面電極と前記下段の前記抵抗チップの前記保護絶縁膜、前記メッキ層との間に封止部材を充填し絶縁層を形成する工程
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の抵抗素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のゲート抵抗素子等に使用される抵抗素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(IC)等の半導体装置用の抵抗素子として、シリコン基板上に絶縁層が設けられ、絶縁層上に薄膜の抵抗層が設けられた抵抗素子が知られている。この抵抗素子では、互いに対向する抵抗層の側辺に接続された2つの電極が抵抗層の上面側に存在する。このため、チップサイズが大きくなると共に、2つの電極に接続される2本のボンディングワイヤが必要となる。
【0003】
そこで、特許文献1は、上面側のパッド形成電極と下面側の裏面電極との間の電気的経路を抵抗体とする縦型の抵抗素子を開示する。特許文献1に記載の抵抗素子によれば、上面側のパッド領域が1つとなるため、ボンディングワイヤの本数を1本に低減することができると共に、上面側のパッド領域の占有面積を削減できるので、チップサイズを縮小することができる。
【0004】
特許文献2は、下段用半導体素子を備える下段チップと、上段用半導体素子を備える上段チップとを備える積層型集積回路を開示する。特許文献3は、保護用素子が形成されたICチップである半導体基板を、ドライバICチップである半導体基板上に積層した半導体モジュールを開示する。特許文献4は、パワーICチップとパワーICチップよりもチップサイズが大きい集積回路チップとが、互いの主表面が対向するように配置されたパワー半導体装置を開示する。特許文献5は、パワーFETが形成された半導体チップと、比較器が形成された半導体チップとがバンプを介して接続された半導体装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-106485号公報
【特許文献2】特開2019-145547号公報
【特許文献3】特開2019-12800号公報
【特許文献4】特許第6371122号
【特許文献5】特許第3973491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の抵抗素子は、1チップで1つの縦型の抵抗体を構成している。そのため、半導体モジュールごとに適切な抵抗値の抵抗素子を設計する必要があり、系列数が多くなってしまう。また、抵抗素子のチップサイズの変更を伴うような場合、半導体モジュールにおける実装面積を変更する必要がある。また、抵抗素子を1チップで高抵抗化する場合、抵抗体の幅を狭くすると、静電気放電(ESD)耐量との両立が困難となる。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、実装面積を変更することなく、ESD耐量を確保しつつ、高抵抗化が可能となる抵抗素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、(a)半導体基板と、(b)半導体基板上に設けられたフィールド絶縁膜と、(c)フィールド絶縁膜上に設けられた抵抗層と、(d)フィールド絶縁膜及び抵抗層を被覆するように設けられた層間絶縁膜と、(e)層間絶縁膜上に設けられ、抵抗層の一端側に電気的に接続されたパッド形成電極と、(f)層間絶縁膜上にパッド形成電極と離間して設けられ、抵抗層の他端側に電気的に接続される一方の端子、及び半導体基板にオーム性接触する他方の端子を有する中継配線と、(g)半導体基板下に設けられ、半導体基板にオーム性接触する裏面電極と、をそれぞれ備え、且つ互いに同一のチップサイズを有する複数の抵抗チップが積層されて前記複数の抵抗チップのそれぞれの前記抵抗層が直列接続され、最上段の抵抗チップのパッド形成電極と、最下段の抵抗チップの裏面電極との間の電気的経路を抵抗体とする抵抗素子であることを要旨とする。
【0009】
本発明の他の態様は、(a)半導体基板と、半導体基板上に設けられたフィールド絶縁膜と、フィールド絶縁膜上に設けられた抵抗層と、フィールド絶縁膜及び抵抗層を被覆するように設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜上に設けられ、抵抗層の一端側に電気的に接続されたパッド形成電極と、層間絶縁膜上にパッド形成電極と離間して設けられ、抵抗層の他端側に電気的に接続される一方の端子、及び半導体基板にオーム性接触する他方の端子を有する中継配線と、半導体基板下に設けられ、半導体基板にオーム性接触する裏面電極と、をそれぞれ備え、且つ互いに同一のチップサイズを有する複数の抵抗チップを用意する工程と、(b)複数の抵抗チップを積層して前記複数の抵抗チップのそれぞれの前記抵抗層を直列接続し、最上段の抵抗チップのパッド形成電極と、最下段の抵抗チップの裏面電極との間の電気的経路を抵抗体とする工程とを含む抵抗素子の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実装面積を変更することなく、ESD耐量を確保しつつ、高抵抗化が可能となる抵抗素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る抵抗素子の平面図である。
【
図4】実施形態に係る抵抗素子の他の平面図である。
【
図6】実施形態に係る抵抗素子の適用例を示す回路図である。
【
図7】実施形態に係る半導体モジュールの断面図である。
【
図8】実施形態に係る半導体モジュールの製造方法の平面図である。
【
図10】実施形態に係る半導体モジュールの製造方法の断面図である。
【
図11】実施形態の第1変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図13】実施形態の第2変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図15】実施形態の第3変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図16】実施形態の第4変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図17】実施形態の第5変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図18】実施形態の第6変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図20】実施形態の第7変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図21】実施形態の第7変形例に係る抵抗素子の等価回路図である。
【
図22】実施形態の第8変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図24】実施形態の第9変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図25】実施形態の第10変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図26】実施形態の第11変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図27】実施形態の第12変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図28】実施形態の第13変形例に係る抵抗素子の平面図である。
【
図29】実施形態の第14変形例に係る抵抗素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態及びその変形例を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0013】
(実施形態)
<抵抗素子>
図1は、本発明の実施形態に係る抵抗素子の平面図であり、
図1のA-A方向から見た断面図が
図2に対応し、
図1のB-B方向から見た断面図が
図3に対応する。本発明の実施形態に係る抵抗素子は、
図1~
図3に示すように、互いに同一のチップサイズを有する複数(2つ)の縦型の抵抗チップ10a,10bを積層して直列接続し、抵抗チップ10a,10bのうちの最上段である抵抗チップ10aのパッド形成電極51と、最下段である抵抗チップ10bの裏面電極19との間の電気的経路を抵抗体とする。
図1~
図3では2つの抵抗チップ10a,10bを積層するため、上段の抵抗チップ(以下、「上段抵抗チップ」ともいう。)10aが最上段となり、下段の抵抗チップ(以下、「下段抵抗チップ」ともいう。)10bが最下段となる。
【0014】
図1に示すように、上段抵抗チップ10aは、矩形の平面パターンを有する。なお、上段抵抗チップ10aの平面パターンは矩形に限定されない。上段抵抗チップ10aのチップサイズは例えば3mm×3mm程度であるが、適宜設定可能である。上段抵抗チップ10aは、上段抵抗チップ10aの矩形の各辺に沿って設けられた抵抗層31a~31dを備える。
【0015】
上段抵抗チップ10aは、
図2に示す断面構造において、低比抵抗の半導体基板1と、半導体基板1上に配置されたフィールド絶縁膜(第1絶縁膜)2と、フィールド絶縁膜2上に配置された薄膜からなる抵抗層31a,31cを備える。
図2の断面構造では省略されているが、
図1に示した抵抗層31b,31dは、
図2に示した抵抗層31a,31cと同様に、フィールド絶縁膜2上に配置されている。
【0016】
半導体基板1の厚さは例えば350μm程度である。半導体基板1としては、n型不純物を高濃度に添加したシリコン基板等の低比抵抗の基板が使用可能である。半導体基板1の抵抗成分は、抵抗層31a~31dの抵抗成分に対して無視できるレベルまで小さいことが好ましい。即ち、半導体基板1の抵抗成分は、抵抗層31a~31dの抵抗成分に対して1/100以下程度であることが好ましい。半導体基板1の比抵抗は、例えば2mΩ・cm~60mΩ・cm程度としてもよい。なお、半導体基板1としては、p型不純物を高濃度に添加したシリコン基板や、シリコン以外の半導体基板を使用してもよい。
【0017】
フィールド絶縁膜2の厚さは例えば800nm程度である。フィールド絶縁膜2を厚くすることで寄生容量を低減することができる。フィールド絶縁膜2としては、シリコン酸化膜(SiO2膜)、シリコン窒化膜(Si3N4膜)又はこれらの複合膜が使用可能である。フィールド絶縁膜2としては、有機ケイ素系化合物のテトラエトキシシラン(TEOS)ガスを用いた化学気相成長(CVD)法等による絶縁膜(TEOS膜)であってもよい。
【0018】
図1に示すように、抵抗層31a~31dは、矩形の平面パターンを有する。抵抗層31a~31dの厚さは例えば500nm程度であり、抵抗層31a~31dのシート抵抗は例えば150Ω/□程度である。抵抗層31a~31dとしては、例えばn型のドープド・ポリシリコン(DOPOS)層が使用可能である。n型のDOPOS層は、多結晶シリコン(ポリシリコン)に燐(P)等のn型不純物をイオン注入することやCVD装置で多結晶シリコンを堆積中に添加することで形成可能である。抵抗層31a~31dの抵抗値は、抵抗層31a~31dの幅W1及び長さL1を調整することにより制御可能である。また、DOPOS層を抵抗層31a~31dに用いる場合は、ポリシリコン中に添加する不純物元素の添加量を調整することによっても、抵抗層31a~31dの抵抗値を制御可能である。
【0019】
抵抗層31a~31dの温度係数は0ppm/℃以下である(換言すれば、抵抗層31a~31dの温度係数が0であるか、又は抵抗層31a~31dが負の温度係数を有する)ことが好ましい。これにより、高温動作時の抵抗値の上昇を抑制することができる。例えば、実施形態に係る抵抗素子を絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のゲート抵抗素子として適用した場合には、IGBTのオン時のロスを抑制することができる。DOPOSの温度係数は、例えばポリシリコンに不純物をイオン注入するときのドーズ量を調整することで制御可能である。例えば、ドーズ量を7.0×1015cm-2以下程度とすれば、DOPOSの温度係数を0ppm/℃以下程度にできる。なお、抵抗層31a~31dの温度係数は0ppm/℃以下に必ずしも限定されず、抵抗層31a~31dが正の温度係数を有していてもよい。
【0020】
抵抗層31a~31dは、p型のDOPOS層であってもよい。p型のDOPOS層も、ホウ素(B)等のp型不純物をポリシリコンにイオン注入する等の手法で形成可能である。抵抗層31a~31dはDOPOS層に限定されず、窒化タンタル(TaN
x)等の遷移金属の窒化物の膜や、クロム(Cr)-ニッケル(Ni)-マンガン(Mn)の順に積層された高融点金属膜の積層膜であってもよい。抵抗層31a~31dは、銀パラジウム(AgPd)や酸化ルテニウム(RuO
2)等の薄膜を使用してもよい。なお、
図1及び
図2に示した構造とは変わるが、抵抗層31a~31dを半導体表面に形成したp型拡散層又はn型拡散層で実現することも可能である。
【0021】
図1の左側に示すように、抵抗層31aを挟むように、抵抗層31aから離間して、ダミー層32a,32bが配置されている。
図1の上側に示すように、抵抗層31bを挟むように、抵抗層31bから離間して、ダミー層32c,32dが配置されている。
図1の右側に示すように、抵抗層31cを挟むように、抵抗層31cから離間して、ダミー層32e,32fが配置されている。
図1の下側に示すように、抵抗層31dを挟むように、抵抗層31dから離間して、ダミー層32g,32hが配置されている。
【0022】
ダミー層32a~32hは、n型のDOPOS等の抵抗層31a~31dと同じ材料からなり、抵抗層31a~31dと同じ厚さを有する。ダミー層32a~32hの幅及び長さは、抵抗層31a~31dの幅W1及びL1と同じでもよく、異なっていてもよい。ダミー層32a~32hは必ずしも配置しなくてもよい。
【0023】
図1では図示を省略するが、
図2及び
図3に示すように、フィールド絶縁膜2及び抵抗層31a~31dを被覆するように層間絶縁膜(第2絶縁膜)4が配置されている。層間絶縁膜4の厚さは例えば1500nm程度である。層間絶縁膜4としては、所謂「NSG膜」と称される燐(P)やホウ素(B)を含まないシリコン酸化膜(SiO
2膜)、燐を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、ホウ素を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、燐及びホウ素を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)又はシリコン窒化膜(Si
3N
4膜)の単層膜又はこれらのうちの複数種を選択して組み合わせた複合膜が採用可能である。例えば、層間絶縁膜4は、770nm程度のNSG膜と、650nm程度のPSG膜を積層した複合膜で構成できる。NSG膜は抵抗バラツキを抑制する機能を有し得る。また、PSG膜はワイヤボンディングの強度を確保する機能を有し得る。
【0024】
パッド形成電極51は、
図2及び
図3に示すように、フィールド絶縁膜2の上方に位置する。
図1に示すように、パッド形成電極51は、矩形の平面パターンを有する。パッド形成電極51の矩形の平面パターンの中心Oは、チップの中心に位置する。
図1及び
図2に示すように、パッド形成電極51の左側端部は、抵抗層31aの右側の一端に深さ方向において重複する。パッド形成電極51は、電極コンタクト領域61aを介して抵抗層31aの一端に接続されている。
【0025】
図1に示すように、パッド形成電極51の上側端部は、抵抗層31bの一端に深さ方向において重複している。パッド形成電極51は、電極コンタクト領域61bを介して、抵抗層31bの一端に接続されている。
図1及び
図2に示すように、パッド形成電極51の右側端部は、抵抗層31cの左側の一端に深さ方向において重複している。パッド形成電極51は、電極コンタクト領域61cを介して、抵抗層31cの一端に接続されている。
図1に示すように、パッド形成電極51の下側端部は、抵抗層31dの一端に深さ方向において重複している。パッド形成電極51は、電極コンタクト領域61dを介して、抵抗層31dの一端に接続されている。
【0026】
図1~
図3に示すように、層間絶縁膜4上には、中央のパッド形成電極(表面電極)51を囲むように、パッド形成電極51から離間して、中継配線52a~52dが配置されている。パッド形成電極51、抵抗層31a~31d、中継配線52a~52dの平面パターンは、チップの中心Oに対して4回回転対称となる。これにより、実施形態に係る抵抗素子の実装時に90°又は180°回転して使用してもよく、組み立て作業が容易となる。
【0027】
図2に示すように、中継配線52aの右側端部の位置が、抵抗層31aの他端と深さ方向において重複している。中継配線52aの一端(第1端部)である抵抗層接続端子は、配線コンタクト領域62aを介して抵抗層31aの他端に接触する。中継配線52cの左側端部の位置が、抵抗層31cの他端と深さ方向において重複している。中継配線52cの一端(第1端部)である抵抗層接続端子は、配線コンタクト領域62cを介して抵抗層31cの他端に接触する。
【0028】
図示を省略するが、
図2の紙面の奥側において、中継配線52bの端部の位置が、抵抗層31bの他端と深さ方向において重複している。中継配線52cの一端(第1端部)である抵抗層接続端子は、配線コンタクト領域62bを介して抵抗層31bの他端に接触する。
図2の紙面の手前側において、中継配線52dの端部の位置が、抵抗層31dの他端と深さ方向において重複している。中継配線52dの一端(第1端部)である抵抗層接続端子は、配線コンタクト領域62dを介して抵抗層31dの他端に接触する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、中継配線52a~52dの他端(第2端部)である基板接続端子は、基板コンタクト領域63a~63dを介して半導体基板1に低接触抵抗でオーム性接触している。基板コンタクト領域63a~63dと半導体基板1との接触箇所である半導体基板1の上部には、半導体基板1よりも高不純物濃度(低比抵抗)で半導体基板と同導電型のコンタクト領域が設けられてもよい。
【0030】
パッド形成電極51及び中継配線52a~52dの厚さは例えば3μm程度である。パッド形成電極51及び中継配線52a~52dは、例えば120nm程度のバリアメタルとしてのチタン/窒化チタン(Ti/TiN)、3μm程度のアルミニウム-シリコン(Al-Si)、45nm程度の反射防止膜としてのTiN/Tiの積層膜で構成できる。Al-Siの代わりに、Alや、Al-Cu-Si、Al-Cu等のAl合金等を使用してもよい。パッド形成電極51には、アルミニウム(Al)等の金属からなる直径300μm程度のボンディングワイヤ74が接続される。
【0031】
図1では図示が省略されているが、
図2及び
図3に示すように、層間絶縁膜4上にはガードリング層53が配置されている。ガードリング層53は、実施形態に係る抵抗素子を構成するチップの外周部分にリング状に配置されている。ガードリング層53は、周辺コンタクト領域64a,64bを介して半導体基板1に接する。ガードリング層53は、パッド形成電極51及び中継配線52a~52dと同じ材料からなる。ガードリング層53は、チップの側面からの水分の侵入を防止する機能を有し得る。
【0032】
図2及び
図3に示すように、パッド形成電極51、中継配線52a~52d及びガードリング層53上には、保護絶縁膜(第3絶縁膜)7が配置されている。保護絶縁膜7としては、例えばTEOS膜、Si
3N
4膜、ポリイミド膜を順に積層した複合膜で構成できる。保護絶縁膜7には開口部7aが設けられている。
図1では、保護絶縁膜7の図示を省略し、保護絶縁膜7の開口部7aのみを一点鎖線で図示している。開口部7aから露出するパッド形成電極51の部分がボンディングワイヤを接続可能なパッド領域となる。
【0033】
図2及び
図3に示すように、半導体基板1の下面には裏面電極(対向電極)9が配置されている。裏面電極9は、例えば金(Au)からなる単層膜や、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)の順で積層された金属膜で構成できる。裏面電極9の最外層は、はんだ付け可能な材料で構成できる。上段抵抗チップ10aは、パッド形成電極51と裏面電極9との間で4つの抵抗層31a~31dが並列接続されて、パッド形成電極51と裏面電極9との間の電気的経路を抵抗体とする。
【0034】
上段抵抗チップ10aでは、4つの抵抗層31a~31dを設けているが、電極コンタクト領域61a~61d、配線コンタクト領域62a~62d及び基板コンタクト領域63a~63dの有無を変更することにより、抵抗層31a~31dを選択的に使用することが可能である。例えば、4つの抵抗層31a~31dのうち、1つの抵抗層31aを選択的に使用する場合には、電極コンタクト領域61a~61d、配線コンタクト領域62a~62d及び基板コンタクト領域63a~63dのうち、電極コンタクト領域61a、配線コンタクト領域62a及び基板コンタクト領域63aを少なくとも設ければよい。
【0035】
抵抗層31a~31dの抵抗値がそれぞれ120Ωの場合には、抵抗層31a~31dのうちのいずれか1つを接続すると、上段抵抗チップ10aの抵抗値は120Ωとなる。抵抗層31a~31dのうちのいずれか3つを並列接続すると、上段抵抗チップ10aの抵抗値は40Ωとなる。抵抗層31a~31dのうちのいずれか2つを並列接続すると、上段抵抗チップ10aの抵抗値は60Ωとなる。
図1及び
図2に示すように4つの抵抗層31a~31dを並列接続すると、上段抵抗チップ10aの抵抗値は30Ωとなる。このように、抵抗層31a~31dの並列接続数を増減させることにより、上段抵抗チップ10aの抵抗値を調整することができる。
【0036】
実施形態に係る抵抗素子では、
図2及び
図3に示すように、下段抵抗チップ10bは、上段抵抗チップ10aと同一構造を有しており、上段抵抗チップ10aと同一の抵抗値を有する。下段抵抗チップ10bの平面パターンは図示を省略するが、
図1に示した上段抵抗チップ10aと同様である。なお、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bにおいて使用する抵抗層の数を互いに異ならせ、互いに異なる抵抗値としてもよい。
【0037】
下段抵抗チップ10bは、
図2に示す断面構造において、低比抵抗の半導体基板11と、半導体基板11上に配置されたフィールド絶縁膜(第1絶縁膜)12と、フィールド絶縁膜12上に配置された薄膜からなる抵抗層91a,91cを備える。
図2の断面構造では省略されているが、上段抵抗チップ10aと同様に、更に2つの抵抗層がフィールド絶縁膜12上に配置されている。また、
図3に示すように、フィールド絶縁膜12上には、ダミー層92b,92dが配置されている。
【0038】
図2に示すように、フィールド絶縁膜12及び抵抗層91a,91cを被覆するように層間絶縁膜(第2絶縁膜)14が配置されている。フィールド絶縁膜12の上方にはパッド形成電極21が設けられている。パッド形成電極21の左側端部は、抵抗層91aの右側の一端に深さ方向において重複する。パッド形成電極21は、電極コンタクト領域81aを介して抵抗層91aの一端に接続されている。パッド形成電極21の右側端部は、抵抗層91cの左側の一端に深さ方向において重複している。パッド形成電極21は、電極コンタクト領域81cを介して、抵抗層91cの一端に接続されている。
【0039】
層間絶縁膜14上には、中央のパッド形成電極(表面電極)21を囲むように、パッド形成電極21から離間して、中継配線22a,22cが配置されている。中継配線22aの右側端部の位置が、抵抗層91aの他端と深さ方向において重複している。中継配線22aの一端(第1端部)である抵抗層接続端子は、配線コンタクト領域82aを介して抵抗層91aの他端に接触する。中継配線22cの左側端部の位置が、抵抗層91cの他端と深さ方向において重複している。中継配線22cの一端(第1端部)である抵抗層接続端子は、配線コンタクト領域82cを介して抵抗層91cの他端に接触する。中継配線22a,22cの他端(第2端部)である基板接続端子は、基板コンタクト領域83a,83cを介して半導体基板11に低接触抵抗でオーム性接触している。
【0040】
層間絶縁膜14上にはガードリング層23が配置されている。ガードリング層23は、周辺コンタクト領域84a,84bを介して半導体基板1に接する。
【0041】
パッド形成電極21、中継配線22a,22c及びガードリング層23上には、保護絶縁膜(第3絶縁膜)17が配置されている。保護絶縁膜17には、パッド形成電極21の一部を露出する開口部17aが設けられている。半導体基板11の下面には裏面電極(対向電極)19が配置されている。下段抵抗チップ10bは、パッド形成電極21と裏面電極19との間で2つの抵抗層91a,91c及び図示を省略した2つの抵抗層が並列接続されて、パッド形成電極21と裏面電極19との間の電気的経路を抵抗体とする。
【0042】
下段抵抗チップ10bは、保護絶縁膜17の開口部17aから露出するパッド形成電極21上に設けられたメッキ層72を更に有する。メッキ層72は、例えば銅(Cu)やニッケル(Ni)、錫(Sn)等からなる。なお、下段抵抗チップ10bのパッド形成電極21が、後述する接合層71a~71dと接合可能である場合には、メッキ層72は設けなくてもよい。メッキ層72の厚さは保護絶縁膜17の厚さよりも薄く形成されている。
【0043】
図1及び
図3に示すように、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72とは接合層71a~71dにより接合されている。
図1では、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72との間の接合層71a~71dの配置位置を模式的に破線で示している。接合層71a~71dは、互いに離間してそれぞれ配置されている。
【0044】
接合層71a~71dの材料としては、例えばはんだ、焼結材、接着剤等の導電性材料が使用可能である。接合層71a~71dは、例えばはんだボールやバンプで構成されていてもよい。はんだとしては、例えば錫アンチモン(SnSb)系、錫銀(SnAg)系の材料が使用可能である。焼結材としては、例えば銀(Ag)系又は銅(Cu)系の金属粒子ペースト(導電性ペースト)等が使用可能である。接合層71a~71dの抵抗値は、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bの抵抗値に比べて非常に小さく、実施形態に係る抵抗素子の抵抗値に影響を与えない程度である。
【0045】
なお、接合層71a~71dが4箇所に設けられた場合を例示するが、接合層71a~71dの数や配置位置は特に限定されない。例えば、
図4は、実施形態に係る抵抗素子の他の平面図であり、
図4のA-A方向から見た断面図が
図5に対応する。
図4では、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72との間の接合層71の配置位置を模式的に破線で示している。
図4及び
図5に示すように、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを接合する接合層71が、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bの中央の一箇所に設けられていてもよい。
【0046】
図2及び
図3に示すように、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72との間には絶縁層73が設けられている。絶縁層73は、例えばポリイミド等の樹脂やシリコンゲル等の絶縁材料からなる。なお、実施形態に係る抵抗素子は、絶縁層73を必ずしも有していなくてもよい。絶縁層73は、実施形態に係る抵抗素子が実装される半導体モジュールにおいて、実施形態に係る抵抗素子が半導体チップと共に封止されるときの封止部材の一部で構成されていてもよい。
【0047】
実施形態に係る抵抗素子は、
図6に示すように、例えばu相、v相、w相で構成される3相モータを駆動するインバータモジュール100に適用可能である。インバータモジュール100は、u相を駆動する主素子TR1~TR4、v相を駆動する主素子TR5~TR8、w相を駆動する主素子TR9~TR12を備える。主素子TR1~TR12には還流ダイオード(図示省略)がそれぞれ接続されている。主素子TR1~TR12のそれぞれにはIGBT又はMOSFET等が使用可能である。スイッチング動作時の発振現象を抑制するために、主素子TR1~TR12のそれぞれのゲート電極にはゲート抵抗R1~R12が接続されている。
【0048】
実施形態に係る抵抗素子は、ゲート抵抗R1~R12のそれぞれに適用可能である。例えば、実施形態に係る抵抗素子をゲート抵抗R1に適用した場合、ゲート抵抗R1が主素子TR1のゲート電極に接続される側が、
図1~
図3に示した上段抵抗チップ10aのパッド形成電極51側の端子に対応する。また、ゲート抵抗R1が主素子TR1のゲート電極に接続される側の反対側が、
図2及び
図3に示した下段抵抗チップ10bの裏面電極19側の端子に対応する。
【0049】
実施形態に係る抵抗素子によれば、互いに同一のチップサイズを有する縦型の上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを直列接続して、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのパッド形成電極21との間の電気的経路を抵抗体とする。これにより、半導体モジュールにおける実装面積を変更することなく、ESD耐量を確保しつつ、高抵抗化を図ることができる。更に、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを組み合わせて抵抗値を調整することができるため、抵抗値の自由度を向上させることができる。
【0050】
<抵抗素子の製造方法>
次に、
図1~
図3を参照して、実施形態に係る抵抗素子の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べる抵抗素子の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0051】
まず、
図1~
図3に示した同一のチップサイズを有する上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを用意する。そして、下段抵抗チップ10bのパッド形成電極21上にメッキ層72を形成する。なお、メッキ層72を予め形成した下段抵抗チップ10bを用意してもよい。
【0052】
次に、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72とを、接合層71a~71dを介して接合する。例えば、下段抵抗チップ10bのメッキ層72上にはんだボールからなる接合層71a~71dを搭載する。引き続き、接合層71a~71d上に上段抵抗チップ10aの裏面電極9を搭載する。引き続き、熱処理を行うことにより接合層71a~71dを溶融させて、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72とを、接合層71a~71dを介して接合する。
【0053】
次に、上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72及び保護絶縁膜7との間にゲル状の樹脂等を充填することにより、絶縁層73を形成する。これにより、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子が完成する。
【0054】
<半導体モジュール>
本発明の実施形態に係る半導体モジュールは、
図7に示すように、絶縁回路基板111と、絶縁回路基板111上に搭載された半導体チップ113a,113bと、絶縁回路基板111上に半導体チップ113a,113bと離間して搭載された積層抵抗チップ114aとを備える。
【0055】
絶縁回路基板111は、例えば直接銅接合(DBC)基板や活性ろう付け(AMB)基板等であってもよい。絶縁回路基板111は、絶縁基板と、絶縁基板の上面及び下面にそれぞれ配置された導体層とで構成されている。半導体チップ113a,113bは、接合層112a,112bを介して絶縁回路基板111の上面側の導体層に接合されている。半導体チップ113aは、例えば半導体チップ113bに逆並列接続される還流ダイオード(FWD)を構成する。半導体チップ113bは、例えばスイッチング素子であるIGBTを構成する。
【0056】
積層抵抗チップ114aは、接合層112cを介して絶縁回路基板111の上面側の導体層に接合されている。積層抵抗チップ114aは、
図1~
図3に示した上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを積層した抵抗素子で構成されている。
【0057】
絶縁回路基板111、半導体チップ113a,113b及び積層抵抗チップ114aはケース105に収納されている。ケース105内には封止部材107が充填され、半導体チップ113a,113b及び積層抵抗チップ114aが封止されている。ケース105には外部端子106a,106bが取り付けられている。絶縁回路基板111、半導体チップ113a,113b、積層抵抗チップ114a及び外部端子106a,106bは、ボンディングワイヤ108を介して互いに接続されている。
【0058】
<半導体モジュールの製造方法>
次に、
図7~
図10を参照して、本発明の実施形態に係る半導体モジュールの製造方法(組み立て方法)を説明する。まず、
図8及び
図9に示すように、絶縁回路基板111上に、カーボン等からなる位置合わせ用の冶具109を搭載する。引き続き、絶縁回路基板111上の冶具109の開口部に、接合層112a~102c等を介して半導体チップ113a~113d及び積層抵抗チップ114a,114bを搭載する。例えば、半導体チップ113a,113dは還流ダイオード(FWD)を構成し、半導体チップ113b,113cはIGBTを構成する。
【0059】
積層抵抗チップ114a,114bは、半導体チップ113a~113dと比べて小さいため、接合層112a~102c等であるはんだ融解後の表面張力で傾きやすい。そこで次に、
図10に示すように、積層抵抗チップ114a,114bを固定するための冶具110を用いて、冶具110の凸部110aにより積層抵抗チップ114aの傾きを抑制する。
図8に、冶具110の平面パターンを破線で模式的に示している。例えば、積層抵抗チップ114aが絶縁回路基板111の上面に対して平行に配置されている場合に、凸部110aは、積層抵抗チップ114aと離間するように設けられていてもよい。冶具110の凸部110aは冶具110と一体的に形成され、カーボン等から構成されていてもよい。或いは、凸部110aは、ゴム等の弾性体で構成されていてもよい。図示を省略するが、冶具110の積層抵抗チップ114bに対応する位置にも凸部が設けられている。
【0060】
冶具110を配置した状態で、熱処理により、絶縁回路基板111と、半導体チップ113a~113d及び積層抵抗チップ114a,114bとを接合層112a~112c等を介して接合する。接合層112a~112c等として、積層抵抗チップ114a,114bのそれぞれの上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを接合する接合層71a~71dよりも接合温度(融点)の低い材料を使用してもよい。例えば、接合層71a~71dとして焼結材、接合層112a~112cとしてはんだを使用してもよい。そして、接合層71a~71dの接合温度(融点)よりも低い温度で加熱することにより、積層抵抗チップ114a,114bのそれぞれの接合層71a~71dを溶融させずに、絶縁回路基板111と、半導体チップ113a~113d及び積層抵抗チップ114a,114bとを接合層112a~112c等を介して接合することができる。
【0061】
次に、絶縁回路基板111、半導体チップ113a,113b、積層抵抗チップ114a及び外部端子106a,106bを、ボンディングワイヤ108を介して互いに接続する。引き続き、絶縁回路基板111、半導体チップ113a~113d及び積層抵抗チップ114a,114bを、外部端子106a,106bを取り付けたケース105に収納する。引き続き、ケース105内に封止部材107を充填することで、本発明の実施形態に係る半導体モジュールが完成する。
【0062】
なお、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bが接合層71a~71dを介して接合された積層抵抗チップ114a,114bを絶縁回路基板111上に搭載する代わりに、下段抵抗チップ10b、接合層71a~71d、上段抵抗チップ10aを互いに接合されていない状態で、絶縁回路基板111上に順次搭載してもよい。そして、絶縁回路基板111と、半導体チップ113a~113d及び積層抵抗チップ114a,114bとを接合層112a~112c等を介して接合するための熱処理の際に、接合層71a~71dを介して上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを接合し、積層抵抗チップ114a,114bを形成してもよい。この場合、接合層112a~112c等と接合層71a~71dは同一の材料で構成してもよい。
【0063】
また、上記の<抵抗素子の製造方法>では絶縁層73を形成せずに、ケース105内に封止部材107を充填するときに、この封止部材107を上段抵抗チップ10aの裏面電極9と、下段抵抗チップ10bのメッキ層72及び保護絶縁膜7との間に充填することにより絶縁層73を形成してもよい。さらに、上記の<抵抗素子の製造方法>では絶縁層73を上段抵抗チップ10aと下段抵抗チップ10bとの間の一部である、メッキ層72と接合層71a~71dとの接合部を覆うように形成し、ケース105内に充填する封止部材107により上段抵抗チップ10aと下段抵抗チップ10bと間の残りの部分を充填することにより絶縁層73を形成してもよい。
【0064】
<第1変形例>
本発明の実施形態の第1変形例に係る抵抗素子は、
図11及び
図12に示すように、上段抵抗チップ10aの4つの抵抗層31a~31dのうち、3つの抵抗層31a,31b,31dを選択的に使用して並列接続する点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。第1変形例に係る抵抗素子では、
図1及び
図2に示したパッド形成電極51と抵抗層31cとを接続する電極コンタクト領域61c、抵抗層31cと中継配線52cとを接続する配線コンタクト領域62c、中継配線52cと半導体基板1とを接続する基板コンタクト領域63cが設けられていない。
【0065】
図12に示した下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有しており、パッド形成電極21と抵抗層91cとを接続する電極コンタクト領域81c、抵抗層91cと中継配線22cとを接続する配線コンタクト領域82c、中継配線82cと半導体基板11とを接続する基板コンタクト領域83cが設けられていない。第1変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0066】
第1変形例に係る抵抗素子によれば、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と比較して、抵抗層31a,31b,31d等の並列接続数を減らすことにより、第1変形例に係る抵抗素子の抵抗値を増大させることができる。
【0067】
<第2変形例>
本発明の実施形態の第2変形例に係る抵抗素子は、
図13及び
図14に示すように、上段抵抗チップ10aの4つの抵抗層31a~31dのうち、3つの抵抗層31a,31b,31dを選択的に使用して並列接続する点は、
図11及び
図12に示した第1変形例に係る抵抗素子と共通する。しかし、第2変形例に係る抵抗素子では、
図1及び
図2に示したパッド形成電極51と抵抗層31cとを接続する電極コンタクト領域61cのみが設けられず、抵抗層31cと中継配線52cとを接続する配線コンタクト領域62c、中継配線52cと半導体基板1とを接続する基板コンタクト領域63cは設けられている点が、
図11及び
図12に示した第1変形例に係る抵抗素子と異なる。
【0068】
図14に示した下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有しており、
図2に示したパッド形成電極21と抵抗層91cとを接続する電極コンタクト領域81cのみが設けられず、抵抗層21cと中継配線22cとを接続する配線コンタクト領域82c、中継配線22cと半導体基板11とを接続する基板コンタクト領域83cは設けられている。第2変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図11及び
図12に示した第1変形例に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0069】
第2変形例に係る抵抗素子によれば、電極コンタクト領域61c,81cのみを設けない場合でも、抵抗層31c,91cを不使用とすることができる。なお、電極コンタクト領域61c,81cが設けられていても、配線コンタクト領域62c,82c又は基板コンタクト領域63c,83cを設けない場合には、抵抗層31c,91cを不使用とすることができる。即ち、電極コンタクト領域61c,81c、配線コンタクト領域62c,82c及び基板コンタクト領域63c,83cの少なくともいずれかを設けないことにより、抵抗層31c,91cを不使用とすることができる。
【0070】
<第3変形例>
本発明の実施形態の第3変形例に係る抵抗素子は、
図15に示すように、上段抵抗チップ10aの抵抗層31a,31cの幅W1が、抵抗層31b,31dの幅W2と異なる点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。抵抗層31a,31cの幅W1が、抵抗層31b,31dの幅W2よりも小さいため、抵抗層31a,31cの抵抗値が、抵抗層31b,31dの抵抗値よりも大きい。
図15では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第3変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0071】
第3変形例に係る抵抗素子によれば、抵抗層31a,31cの幅W1と、抵抗層31b,31dの幅W2とを異ならせることにより、抵抗層31a,31cの抵抗値と、抵抗層31b,31dの抵抗値とを異ならせることができる。したがって、抵抗層31a~31dのうちから選択的に使用する際に、第3変形例に係る抵抗素子の抵抗値の自由度を向上させることができる。なお、第3変形例に係る抵抗素子では、2つの抵抗層31a,31cの抵抗値と、2つの抵抗層31b,31dの抵抗値とを異ならせる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、4つの抵抗層31a~31dの幅を互いに異ならせることにより、4つの抵抗層31a~31dの抵抗値を互いに異ならせてもよい。
【0072】
<第4変形例>
本発明の実施形態の第4変形例に係る抵抗素子は、
図16に示すように、上段抵抗チップ10aの2つの抵抗層31a,31bがパッド形成電極51を挟むように対向して設けられている点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。抵抗層31a,31b、パッド形成電極51、中継配線52a,52bの平面パターンは、チップの中心Oに対して2回回転対称となるため、実施形態に係る抵抗素子の実装時に180°回転して使用してもよく、組み立て作業が容易となる。
図16では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第4変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0073】
第4変形例に係る抵抗素子によれば、2つの抵抗層31a,31bが設けられている場合でも、電極コンタクト領域61a,61b、配線コンタクト領域62a,62b及び基板コンタクト領域63a,63bの有無を変更することにより、抵抗層31a,31bの一部又は全部を選択的に使用することができる。
【0074】
<第5変形例>
本発明の実施形態の第5変形例に係る抵抗素子は、
図17に示すように、上段抵抗チップ10aのパッド形成電極51の矩形の平面パターンの一辺側に、複数(3つ)の抵抗層31a~31cが設けられている点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。
図17では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第5変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0075】
第5変形例に係る抵抗素子によれば、パッド形成電極51の矩形の平面パターンの一辺側に3つの抵抗層31a~31cが設けられている場合でも、電極コンタクト領域61a~61c、配線コンタクト領域62a~62c及び基板コンタクト領域63a~63cの有無を変更することにより、抵抗層31a~31cの一部又は全部を選択的に使用することができる。
【0076】
<第6変形例>
本発明の実施形態の第6変形例に係る抵抗素子は、
図18及び
図19に示すように、上段抵抗チップ10aの複数(2つ)のパッド形成電極51a,51bが互いに離間して設けられ、パッド形成電極51a,51bの間に抵抗層31a~31fが設けられている点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。
【0077】
パッド形成電極51aには、電極コンタクト領域61a~61cを介して抵抗層31a~31cの一端側が接続されている。抵抗層31a~31cの他端側には、配線コンタクト領域62a~62cを介して中継配線52a~52cが接続されている。パッド形成電極51bには、電極コンタクト領域61d~61fを介して抵抗層31d~31fの一端側が接続されている。抵抗層31d~31fの他端側には、配線コンタクト領域62d~62fを介して中継配線52a~52cが接続されている。
【0078】
中継配線52a~52cは、基板コンタクト領域63a~63cを介して半導体基板1に接続されている。基板コンタクト領域63a~63cと半導体基板1との接触箇所である半導体基板1の上部には、半導体基板1よりも高不純物濃度(低比抵抗)で半導体基板1と同導電型のコンタクト領域1aおよび周辺コンタクト領域1bが設けられている。コンタクト領域1aおよび周辺コンタクト領域1bは、実施形態の他の例においても設けてもよい。
【0079】
図19に示した下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。下段抵抗チップ10bでも、複数(2つ)のパッド形成電極21a,21bが互いに離間して設けられ、パッド形成電極51a,51bの間に抵抗層91b,91eが設けられている。パッド形成電極21aには、電極コンタクト領域81bを介して抵抗層91bの一端側が接続されている。抵抗層91bの他端側には、配線コンタクト領域82bを介して中継配線22bが接続されている。パッド形成電極21bには、電極コンタクト領域81eを介して抵抗層91eの一端側が接続されている。抵抗層91eの他端側には、配線コンタクト領域82eを介して中継配線22bが接続されている。
【0080】
中継配線22bは、基板コンタクト領域83bを介して半導体基板11に接続されている。基板コンタクト領域83a~83cと半導体基板11との接触箇所である半導体基板11の上部には、コンタクト領域11aおよび周辺コンタクト領域11bが設けられている。パッド形成電極21a,21b上にはメッキ層72a,72bがそれぞれ配置されている。メッキ層72a,72bが上段抵抗チップ10aの裏面電極9と接合層71a,71bにより接合されている。
【0081】
第6変形例に係る抵抗素子は、例えば
図6の一対のゲート抵抗R1,R2に適用可能である。第6変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0082】
第6変形例に係る抵抗素子によれば、複数(2つ)のパッド形成電極51a,51b等が設けられている場合でも、電極コンタクト領域61a~61f、配線コンタクト領域62a~62f及び基板コンタクト領域63a~63f等の有無を変更することにより、抵抗層31a~31f等の一部又は全部を選択的に使用することができる。
【0083】
<第7変形例>
本発明の実施形態の第7変形例に係る抵抗素子は、
図20に示すように、上段抵抗チップ10aの中継配線63a~63dに電気的に接続された補助パッド65a~65dが設けられている点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。
図20では保護絶縁膜の図示を省略し、保護絶縁膜の開口部7b~7eのみを破線で示すが、補助パッド65a~65dは、保護絶縁膜の開口部7b~7eから露出する。補助パッド65a~65dは、中継配線63a~63dと同じ材料からなり、中継配線63a~63dを形成する際に同時に形成可能である。
図20では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第7変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0084】
図21は、上段抵抗チップ10aの等価回路を示す。
図21において、パッド形成電極51がパッド側端子101に対応し、裏面電極9が裏面側端子102に対応し、補助パッド65a~補助パッド65dが補助端子103a~103dに対応する。パッド側端子101と裏面側端子102との間には、抵抗層31a~31dに対応する並列接続された抵抗R
poly1~R
poly4と、半導体基板1の抵抗R
subとが直列接続されている。補助端子103a~103dは、抵抗層31a~31dに対応する抵抗R
poly1~R
poly4のそれぞれと、半導体基板1の抵抗R
subとの間にそれぞれ接続されている。
【0085】
第7変形例に係る抵抗素子によれば、補助パッド65a~65dを配置したことにより、パッド形成電極51と補助パッド65a~65dとの間で、半導体基板1の抵抗Rsubの成分を除外した抵抗層31a~31dに対応する抵抗Rpoly1~Rpoly4の電気的特性を測定することができる。
【0086】
<第8変形例>
本発明の実施形態の第8変形例に係る抵抗素子は、
図22及び
図23に示すように、上段抵抗チップ10aのフィールド絶縁膜2上に抵抗層31a~31dと離間して、電位的に浮遊(フローティング)状態にある補助膜33が配置されている点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。
【0087】
補助膜33は、パッド形成電極51の下方の位置に抵抗層31a~31dと離間して配置される。補助膜33は、n型のDOPOS等の抵抗層31a~31dと同じ材料からなり、抵抗層31a~31dと同じ厚さを有する。補助膜33は、例えば矩形形状の平面パターンを有する。
【0088】
図23に示した下段抵抗チップ10bは、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。
図23に示した断面では、下段抵抗チップ10bのフィールド絶縁膜12上に抵抗層91a,抵抗層91cと離間して、電位的に浮遊(フローティング)状態にある補助膜93が配置されている。第8変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0089】
第8変形例に係る抵抗素子によれば、フィールド絶縁膜2,12上に電位的に浮遊状態にある補助膜33,93を配置することにより、フィールド絶縁膜2,12の厚さを厚くする場合と同様に、パッド形成電極21,51の下方の寄生容量を低減することができる。これにより、高周波動作時のインピーダンス低下に対する全抵抗の低減を抑制し、発振現象を抑制することができる。
【0090】
<第9変形例>
本発明の実施形態の第9変形例に係る抵抗素子は、
図24に示すように、上段抵抗チップ10aの抵抗層34a~34h及び中継配線54a~54hが更に設けられている点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。抵抗層34a,34bは、抵抗層31aを挟むように配置されている。抵抗層34c,34dは、抵抗層31bを挟むように配置されている。抵抗層34e,34fは、抵抗層31cを挟むように配置されている。抵抗層34g,34hは、抵抗層31dを挟むように配置されている。
【0091】
中継配線54a,54bは、中継配線52aを挟むように配置されている。中継配線54c,中継配線54dは、中継配線52bを挟むように配置されている。中継配線54e,中継配線54fは、中継配線52cを挟むように配置されている。中継配線54g,54hは、中継配線52dを挟むように配置されている。
図24では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第9変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0092】
第9変形例に係る抵抗素子によれば、抵抗層34a~34hを並列接続するための電極コンタクト領域、配線コンタクト領域、及び基板コンタクト領域の有無を変更することにより、抵抗層31a~31dの並列接続数と共に、抵抗層34a~34hの並列接続数を増減することができ、第9変形例に係る抵抗素子の抵抗値を更に細かく調整することができる。第9変形例に係る抵抗素子のように、抵抗層の数及び配置位置は限定されず、適宜設定可能である。
【0093】
<第10変形例>
本発明の実施形態の第10変形例に係る抵抗素子は、
図25に示すように、上段抵抗チップ10aのパッド形成電極51の矩形の平面パターンの一辺側に凸部51x~51zが設けられている点が、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と異なる。凸部51x~51zは、電極コンタクト領域61a~61cを介して抵抗層31a~31cの一端側にそれぞれ接続されている。抵抗層31a~31cの他端側は、配線コンタクト領域62a~62cを介して中継配線52a~52cにそれぞれ接続されている。中継配線52a~52cは、基板コンタクト領域63a~63cを介して半導体基板1にそれぞれ接続されている。
【0094】
第10変形例に係る抵抗素子では、3つの抵抗層31a~31cが並列接続されている。このため、
図25に矢印で模式的に示すように、パッド形成電極51の凸部51x~51zから、抵抗層31a~31c及び中継配線52a~52cを介して半導体基板1へ電流が流れる第1電流経路I1~I3がそれぞれ形成される。
図25では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第10変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図1~
図3に示した実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0095】
第10変形例に係る抵抗素子によれば、3つの抵抗層31a~31cが設けられている場合に、電極コンタクト領域61a~61c、配線コンタクト領域62a~62c及び基板コンタクト領域63a~63cの有無を変更することにより、抵抗層31a~31cの一部又は全部を選択的に使用することができる。
【0096】
<第11変形例>
本発明の実施形態の第11変形例に係る抵抗素子は、
図26に示すように、上段抵抗チップ10aのパッド形成電極51から凸部51x,51zが分離している点が、
図25に示した第10変形例に係る抵抗素子と異なる。上段抵抗チップ10aでは、パッド形成電極51の凸部51yから抵抗層31b及び中継配線52bを介して半導体基板1へ電流が流れる電流経路I1が形成される。
図26では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第11変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図25に示した第10変形例に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0097】
第11変形例に係る抵抗素子によれば、電極コンタクト領域61a~61c、配線コンタクト領域62a~62c及び基板コンタクト領域63a~63cの有無は変更しなくても、パッド形成電極51から凸部51x~51zを選択的に分離することにより、抵抗層31a~31cの一部又は全部を選択的に使用することができる。
【0098】
<第12変形例>
本発明の実施形態の第12変形例に係る抵抗素子は、
図27に示すように、上段抵抗チップ10aの複数(3つ)の抵抗層31a~31cが直列接続されている点が、
図25に示した第10変形例に係る抵抗素子と異なる。第12変形例に係る抵抗素子は、
図25に示した凸部51x,凸部51yが配置される位置に抵抗間配線55aを備え、
図25に示した中継配線52b,52cが配置される位置に抵抗間配線55bを備える。抵抗間配線55aは、配線コンタクト領域62b,62cを介して抵抗層31b,31cに接続されている。抵抗間配線55bは、電極コンタクト領域61a,61bを介して抵抗層31a,31bに接続されている。
【0099】
第12変形例に係る抵抗素子では、
図27に矢印で模式的に示すように、パッド形成電極51の凸部51zから抵抗層31c、抵抗間配線55a、抵抗層31b、抵抗間配線55b、抵抗層31c、中継配線52aを介して半導体基板1へ電流が流れる第1電流経路I1が形成される。
図27では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第12変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図25に示した第10変形例に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0100】
第12変形例に係る抵抗素子によれば、抵抗間配線55a,55bを配置することにより、複数の抵抗層31a~31cを直列接続し、抵抗値を増大させることができる。
【0101】
<第13変形例>
本発明の実施形態の第13変形例に係る抵抗素子は、
図28に示すように、上段抵抗チップ10aの複数(2つ)の抵抗層31a,31cが直列接続されている点が、
図25に示した第10変形例に係る抵抗素子と異なる。上段抵抗チップ10aは、
図25に示した凸部51x,51y及び中継配線52b,52cが配置される位置に抵抗間配線55を備える。抵抗間配線55は、電極コンタクト領域61aを介して抵抗層31aに接続され、且つ配線コンタクト領域62cを介して抵抗層31cに接続されている。
【0102】
第13変形例に係る抵抗素子では、
図28に矢印で模式的に示すように、パッド形成電極51の凸部51zから抵抗層31c、抵抗間配線55、抵抗層31a、中継配線52aを介して半導体基板1へ電流が流れる第1電流経路I1が形成される。
図28では図示を省略するが、上段抵抗チップ10aの下側に積層される下段抵抗チップ10bも、上段抵抗チップ10aと同様の構造を有する。第12変形例に係る抵抗素子の他の構成は、
図25に示した第10変形例に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0103】
第13変形例に係る抵抗素子によれば、抵抗間配線55を配置することにより、パッド形成電極51近傍での基板コンタクトを回避しつつ、複数の抵抗層31a,31cを直列接続し、抵抗値を増大させることができる。
【0104】
<第14変形例>
本発明の実施形態の第14変形例に係る抵抗素子は、
図29に示すように、
図2に示した実施形態に係る抵抗素子の上段抵抗チップ10aと、
図12に示した第1変形例に係る抵抗素子の下段抵抗チップ10bを積層している点が、実施形態に係る抵抗素子と異なる。上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bは、互いに同一のチップサイズを有するが、互いに異なる構造を有しており、互いに異なる抵抗値を有する。第14変形例に係る抵抗素子の他の構成は、実施形態に係る抵抗素子と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0105】
第14変形例に係る抵抗素子によれば、互いに異なる抵抗値を有する上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを積層することにより、抵抗値の自由度を向上させることができる。なお、本発明の実施形態及び第1~第13変形例に係る抵抗素子のいずれかの上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bのうちの一方同士を積層して抵抗体とすることも可能である。また、本発明の実施形態及び第1~第13変形例に係る抵抗素子において、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bの使用する抵抗層の数を互いに異ならせ、異なる抵抗値としてもよい。
【0106】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0107】
例えば、
図6に示すように、実施形態に係る抵抗素子を、ゲート抵抗R1~R12として適用する場合を例示したが、ゲート抵抗R1R12への適用に限定されるものではない。実施形態に係る抵抗素子は、各種ICの抵抗素子として適用可能である。
【0108】
更に、実施形態に係る抵抗素子では、2つ(2段)の上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bを積層した場合を例示したが、3つ(3段)以上の抵抗チップを積層してもよい。この場合、3つ以上の抵抗チップのうち、最上段の抵抗チップのパッド形成電極と、最下段の抵抗チップの裏面電極との間の電気的経路を抵抗体とする。抵抗チップの積層数を増やすことで、より高抵抗化を図ることができる。
【0109】
更に、実施形態に係る抵抗素子では、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bのそれぞれが複数の抵抗層を有する場合を例示したが、上段抵抗チップ10a及び下段抵抗チップ10bの一方又は両方が、1つの抵抗層のみを有していてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1,11…半導体基板
1a,11a…コンタクト領域
1b,11b…周辺コンタクト領域
2,12…フィールド絶縁膜(第1絶縁膜)
4,14…層間絶縁膜(第2絶縁膜)
7,17…保護絶縁膜(第3絶縁膜)
7a~7e,17a…開口部
9,19…裏面電極(対向電極)
10a,10b…抵抗チップ
21,21a,21b,51,51a,51b…パッド形成電極(表面電極)
22a,22c,52a~52d,54a~54h,63a~63d…中継配線
23,53…ガードリング層
31a~31f,34a~34h,91a~91c,91e…抵抗層
32a~32h,92a,92c…ダミー層
33,93…補助膜
51x~51z…凸部
55,55a,54b…抵抗間配線
61a~61f,81a,81c…電極コンタクト領域
62a~62f,82a,82c…配線コンタクト領域
63a~63f,83a,83c…基板コンタクト領域
64a,64b,84a,84b…周辺コンタクト領域
65a~65d…補助パッド
71,71a~71d…接合層
72,72a,72b…メッキ層
73…絶縁層
74…ボンディングワイヤ
100…インバータモジュール
101…パッド側端子
102…裏面側端子
103a~103d…補助端子
105…ケース
106a,106b…外部端子
107…封止部材
108…ボンディングワイヤ
109,110…冶具
110a…凸部
111…絶縁回路基板
112a~112c…接合層
113a~113d…半導体チップ
114a,114b…積層抵抗チップ