(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191867
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータの制御回路および電源回路、電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
H02M3/155 B
H02M3/155 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100347
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 智文
(72)【発明者】
【氏名】福島 瞬
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB98
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF01
5H730FG05
5H730FG26
(57)【要約】
【課題】ロードスイッチやハイサイドスイッチを安全にターンオフすることが可能な制御回路を提供する。
【解決手段】制御回路200Aは、ハイサイドトランジスタM2およびローサイドトランジスタM1を有する昇圧DC/DCコンバータ100に使用される。入力ピンVINは、昇圧DC/DCコンバータ100の入力電圧V
INを受ける。スイッチ駆動回路240は、ハイサイドトランジスタM2と負荷の間に接続されるPMOSトランジスタM3であるロードスイッチSW1を駆動する。スイッチ駆動回路240は、昇圧DC/DCコンバータ100を停止させる際に、PMOSトランジスタM3のゲートに昇圧DC/DCコンバータ100の入力電圧V
INに応じた電圧Vcを印加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを有する昇圧DC/DCコンバータの制御回路であって、
前記昇圧DC/DCコンバータの入力電圧を受ける入力ピンと、
前記昇圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号にもとづいて、前記ハイサイドトランジスタの制御信号および前記ローサイドトランジスタの制御信号を生成するロジック回路と、
前記ハイサイドトランジスタと負荷の間に接続されるPMOSトランジスタであるロードスイッチを駆動するスイッチ駆動回路と、
を備え、
前記スイッチ駆動回路は、前記昇圧DC/DCコンバータを停止させる際に、前記PMOSトランジスタのゲートに前記昇圧DC/DCコンバータの入力電圧に応じた電圧を印加する、制御回路。
【請求項2】
前記スイッチ駆動回路は、前記昇圧DC/DCコンバータを停止させる際に、前記PMOSトランジスタのゲートを前記入力ピンと接続する、請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記スイッチ駆動回路は、前記ロードスイッチをオンすべき期間において、前記PMOSトランジスタのソース電圧よりも所定電圧幅、低いオン電圧を、前記PMOSトランジスタのゲートに印加する、請求項1または2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記ハイサイドトランジスタ、前記ローサイドトランジスタおよび前記PMOSトランジスタをさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の制御回路。
【請求項5】
前記ハイサイドトランジスタと前記PMOSトランジスタの接続ノードに、ピンが設けられない、請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項6】
ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタおよびインダクタを有する昇圧DC/DCコンバータの制御回路であって、
前記昇圧DC/DCコンバータの出力ラインと接続されるべき出力ピンと、
前記昇圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号にもとづいて、前記ハイサイドトランジスタの制御信号および前記ローサイドトランジスタの制御信号を生成するロジック回路と、
前記昇圧DC/DCコンバータの入力ノードと前記インダクタの間に接続されるNMOSトランジスタであるハイサイドスイッチを駆動するスイッチ駆動回路と、
を備え、
前記スイッチ駆動回路は、前記昇圧DC/DCコンバータを停止させる際に、前記昇圧DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧を、前記NMOSトランジスタのゲートに印加する、制御回路。
【請求項7】
前記スイッチ駆動回路は、前記昇圧DC/DCコンバータを停止させる際に、前記NMOSトランジスタのゲートを前記出力ピンと接続する、請求項6に記載の制御回路。
【請求項8】
前記スイッチ駆動回路は、前記ハイサイドスイッチをオンすべき期間において、前記NMOSトランジスタのソース電圧よりも所定電圧幅、高いオン電圧を、前記NMOSトランジスタのゲートに印加する、請求項6または7に記載の制御回路。
【請求項9】
前記ハイサイドトランジスタ、前記ローサイドトランジスタおよび前記NMOSトランジスタをさらに備える、請求項6から8のいずれかに記載の制御回路。
【請求項10】
前記インダクタと前記ハイサイドスイッチの接続ノードと接地の間には、ダイオードが接続されない、請求項6から9のいずれかに記載の制御回路。
【請求項11】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から10のいずれかに記載の制御回路。
【請求項12】
DC/DCコンバータの主回路と、
請求項1から11のいずれかに記載の制御回路と、
を備える、電源回路。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の制御回路を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電源電圧より高い電圧を必要とするデバイスを動作させるために、昇圧DC/DCコンバータ(Boost Converter)が使用される。昇圧DC/DCコンバータは、入力ラインと出力ラインの間が、インダクタおよびハイサイドトランジスタのボディダイオードを介して常時、導通している。そのため、昇圧DC/DCコンバータの停止中にも、出力ラインには入力電圧と等しい電圧が発生し、負荷に供給される。
【0003】
昇圧DC/DCコンバータの停止中に、負荷に電圧が供給されるのを防止したい場合には、ハイサイドトランジスタと出力ラインの間に、ロードスイッチが挿入される。あるいはロードスイッチの代わりに、入力ラインとインダクタの間に、ハイサイドスイッチが挿入される場合もある。昇圧DC/DCコンバータの停止中は、ロードスイッチあるいはハイサイドスイッチをオフすることにより、出力ラインに電圧が発生するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロードスイッチやハイサイドスイッチは、インダクタと直列に接続されている。したがって、ロードスイッチやハイサイドスイッチをターンオフすると、インダクタに流れるコイル電流が急峻に変化し、過電圧を発生させる可能性がある。
【0006】
本開示は係る課題においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、ロードスイッチやハイサイドスイッチを安全にターンオフすることが可能な制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを有する昇圧DC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、昇圧DC/DCコンバータの入力電圧を受ける入力ピンと、昇圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタの制御信号およびローサイドトランジスタの制御信号を生成するロジック回路と、ハイサイドトランジスタと負荷の間に接続されるPMOSトランジスタであるロードスイッチを駆動するスイッチ駆動回路と、を備える。スイッチ駆動回路は、昇圧DC/DCコンバータを停止する際に、PMOSトランジスタのゲートに昇圧DC/DCコンバータの入力電圧に応じた電圧を印加する。
【0008】
本開示の別の態様もまた、ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタおよびインダクタを有する昇圧DC/DCコンバータの制御回路に関する。この制御回路は、昇圧DC/DCコンバータの出力ラインと接続されるべき出力ピンと、昇圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタの制御信号およびローサイドトランジスタの制御信号を生成するロジック回路と、昇圧DC/DCコンバータの入力ノードとインダクタの間に接続されるハイサイドスイッチとして設けられたNMOSトランジスタを駆動するスイッチ駆動回路と、を備える。スイッチ駆動回路は、昇圧DC/DCコンバータを停止する際に、NMOSトランジスタのゲートに昇圧DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧を印加する。
【0009】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本開示の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、ロードスイッチやハイサイドスイッチを安全にターンオフすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る昇圧DC/DCコンバータの回路図である。
【
図2】
図2は、スイッチ制御信号SWCTRLがローに遷移した直後のDC/DCコンバータの等価回路図である。
【
図3】
図3は、
図1のDC/DCコンバータの波形図(実測)である。
【
図4】
図4は、比較技術1に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【
図5】
図5は、DC/DCコンバータの制御回路の一例の回路図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る昇圧DC/DCコンバータの回路図である。
【
図7】
図7は、スイッチ制御信号SWCTRLがローに遷移した直後のDC/DCコンバータの等価回路図である。
【
図8】
図8は、比較技術2に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【
図9】
図9は、DC/DCコンバータの制御回路の一例の回路図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るDC/DCコンバータを備える電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係る制御回路は、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを有する昇圧DC/DCコンバータに用いられる。制御回路は、昇圧DC/DCコンバータの入力電圧を受ける入力ピンと、昇圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタの制御信号およびローサイドトランジスタの制御信号を生成するロジック回路と、ハイサイドトランジスタと負荷の間に接続されるPMOSトランジスタであるロードスイッチを駆動するスイッチ駆動回路と、を備える。スイッチ駆動回路は、昇圧DC/DCコンバータを停止する際に、PMOSトランジスタのゲートに昇圧DC/DCコンバータの入力電圧に応じた電圧を印加する。
【0014】
この構成によると、昇圧DC/DCコンバータを停止する際に、ロードスイッチ(PMOSトランジスタ)を直ちにオフせずに、PMOSトランジスタのゲートに、入力電圧に応じた電圧Vcを印加することで、PMOSトランジスタを、ソースフォロア回路(ドレイン接地回路)として動作させることができる。このとき、PMOSトランジスタのソース電圧、すなわちロードスイッチとハイサイドトランジスタの接続ノードの電圧VMIDは、
VMID=Vc+VGS≒VIN+VGS
にクランプされ、過電圧が発生するのを防止できる。ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタの接続ノード(スイッチングピン)の電圧VSWは、
VSW=VMID+VF=Vc+VGS+VF≒VIN+VGS+VF
となり、スイッチングピンの過電圧も抑制される。VFはハイサイドトランジスタのボディダイオードの順方向電圧である。またこのときインダクタの両端間電圧VLは、
VL=VIN-VSW=VIN-(Vc+VGS+VF)≒-(VGS+VF)
となる。これによりコイル電流を、-(VGS+VF)/Lの傾きで時間とともに減少させることができる。
【0015】
一実施形態において、スイッチ駆動回路は、昇圧DC/DCコンバータを停止させる際に、PMOSトランジスタのゲートを入力ピンと接続してもよい。これにより、PMOSトランジスタのゲートに、入力電圧VINを印加できる。
【0016】
一実施形態において、スイッチ駆動回路は、ロードスイッチをオンすべき期間において、PMOSトランジスタのソース電圧よりも所定電圧幅、低いオン電圧を、PMOSトランジスタのゲートに印加してもよい。
【0017】
一実施形態において、制御回路は、ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタおよびPMOSトランジスタをさらに備えてもよい。ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタおよびPMOSトランジスタは、外付けのディスクリート素子であってもよい。
【0018】
一実施形態において、ハイサイドトランジスタとPMOSトランジスタの接続ノードに、ピンが設けられなくてもよい。ハイサイドトランジスタとPMOSトランジスタの接続ノードの電圧VMIDを、ロードスイッチのPMOSトランジスタを利用してクランプできるため、接続ノードの跳ね上がりを抑制するための回路素子が不要となり、したがって、回路素子を接続するためのピンが不要となる。
【0019】
一実施形態に係る制御回路は、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを有する昇圧DC/DCコンバータに用いられる。制御回路は、昇圧DC/DCコンバータの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタの制御信号およびローサイドトランジスタの制御信号を生成するロジック回路と、昇圧DC/DCコンバータの入力ノードとインダクタの間に接続されるNMOSトランジスタであるハイサイドスイッチを駆動するスイッチ駆動回路と、を備える。スイッチ駆動回路は、昇圧DC/DCコンバータを停止する際に、昇圧DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧を、NMOSトランジスタのゲートに印加する。
【0020】
この構成によると、昇圧DC/DCコンバータを停止する際に、ハイサイドスイッチ(NMOSトランジスタ)を直ちにオフせずに、NMOSトランジスタのゲートに、出力電圧に応じた電圧Vdを印加することで、NMOSトランジスタを、ソースフォロア回路(ドレイン接地回路)として動作させることができる。このとき、ハイサイドスイッチとインダクタの接続ノードの電圧VMIDは、
VMID=Vd-VGS≒VOUT-VGS
にクランプされ、過電圧が発生するのを防止できる。ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタの接続ノード(スイッチングピン)の電圧VSWは、
VSW=VOUT+VF
となる。VFはハイサイドトランジスタM2のボディダイオードの順方向電圧である。またこのときインダクタの両端間電圧VLは、
VL=VMID-VSW=(Vd-VGS)-(VOUT+VF)≒-(VGS+VF)
となる。これによりコイル電流を、-(VGS+VF)/Lの傾きで時間とともに減少させることができる。
【0021】
一実施形態においてスイッチ駆動回路は、昇圧DC/DCコンバータを停止させる際に、NMOSトランジスタのゲートを出力ピンと接続してもよい。これにより、NMOSトランジスタのゲートに、出力電圧VOUTを印加できる。
【0022】
一実施形態においてスイッチ駆動回路は、ハイサイドスイッチをオンすべき期間において、NMOSトランジスタのソース電圧よりも所定電圧幅、高いオン電圧を、NMOSトランジスタのゲートに印加してもよい。
【0023】
一実施形態において、制御回路は、ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタおよびNMOSトランジスタをさらに備えてもよい。ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタおよびNMOSトランジスタは、外付けのディスクリート素子であってもよい。
【0024】
一実施形態において、インダクタとハイサイドスイッチの接続ノードと接地の間には、ダイオードが接続されなくてもよい。これにより、DC/DCコンバータの部品点数を削減できる。
【0025】
一実施形態において、制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0026】
(実施形態)
以下、本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0030】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0031】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る昇圧DC/DCコンバータ100Aの回路図である。昇圧DC/DCコンバータ(以下、単にDC/DCコンバータという)100Aは、入力端子(入力ライン)102の入力電圧V
INを昇圧し、所定の電圧レベルに安定化して、出力端子(出力ライン)104に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0032】
DC/DCコンバータ100Aは、主回路110Aと、制御回路200Aを備える。主回路110Aは、インダクタL1、ローサイドトランジスタ(スイッチングトランジスタ)M1、ハイサイドトランジスタ(同期整流トランジスタ)M2、出力キャパシタC1およびロードスイッチSW1を備える。
【0033】
制御回路200Aは、ひとつの半導体基板(ダイ)に集積化された機能ICである。本実施形態において、ローサイドトランジスタM1、ハイサイドトランジスタM2およびPMOSトランジスタM3は、制御回路200Aに集積化されている。PMOSトランジスタM3は、ロードスイッチSW1として設けられる。
【0034】
制御回路200Aは、ローサイドトランジスタM1、ハイサイドトランジスタM2、PMOSトランジスタM3に加えて、パルス変調器210、ロジック回路220、ハイサイドドライバ230、ローサイドドライバ232、スイッチ駆動回路240A、抵抗R11,R12を備える。
【0035】
制御回路200Aには、スイッチングピンSW、接地ピンPGND、入力ピンVIN、出力ピンVOUT、センスピンVOUT_SNSが設けられる。
【0036】
スイッチングピンSWには、外付けのインダクタL1が接続される。出力ピンVOUTには出力キャパシタC1が接続される。ローサイドトランジスタM1は、スイッチングピンSWと接地ピンPGNDの間に接続される。ハイサイドトランジスタM2およびPMOSトランジスタM3は、スイッチングピンSWと出力ピンVOUTの間に直接に接続される。入力ピンVINには、DC/DCコンバータ100Aの入力電圧VINが供給される。
【0037】
パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100Aの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号Spを生成する。DC/DCコンバータ100Aの出力は、出力電圧VOUTであってもよいし(定電圧出力)、出力電流IOUTであってもよいし(定電流出力)、負荷(不図示)内のノードの電圧であってもよい。
【0038】
本実施形態では、DC/DCコンバータ100Aは定電圧出力であり、出力電圧VOUTをその目標レベルVOUT(REF)に安定化する。センスピンVOUT_SNSには出力電圧VOUTがフィードバックされる。出力電圧VOUTは抵抗R11,R12により分圧され、出力電圧VOUTを示すフィードバック信号VFBが生成される。パルス変調器210は、フィードバック信号VFBが基準電圧VREFに近づくように、パルス信号Spを変調する。出力電圧VOUTの目標レベルVOUT(REF)は以下の式で表される。
VOUT(REF)=VREF×(R11+R12)/R12
【0039】
パルス変調器210の構成や制御方式は特に限定されない。たとえばパルス変調器210は、電圧モードのコントローラであってもよいし、ピーク電流モードや平均電流モードのコントローラであってもよい。あるいはパルス変調器210は、リップル制御、具体的にはヒステリシス制御(Bang-Bang制御)、ボトム検出オン時間固定制御、ピーク検出オフ時間固定制御のコントローラであってもよい。
【0040】
またパルス変調器210の変調方式も特に限定されず、パルス幅変調であってもよいし、パルス周波数変調であってもよいし、その他の変調方式であってもよい。
【0041】
ロジック回路220は、パルス信号Spにもとづいて、ハイサイドトランジスタM2の制御信号HGCTLおよびローサイドトランジスタM1の制御信号LGCTLを生成する。またロジック回路220は、PMOSトランジスタM3の制御信号SWCTLを生成する。
【0042】
ハイサイドドライバ230は、制御信号HGCTLにもとづいてハイサイドトランジスタM2を駆動する。ローサイドドライバ232は、制御信号LGCTLにもとづいてローサイドトランジスタM1を駆動する。
【0043】
スイッチ駆動回路240Aは、制御信号SWCTLにもとづいて、ロードスイッチSW1であるPMOSトランジスタM3を駆動する。
【0044】
スイッチ駆動回路240Aは、入力ピンVINと接続されており、入力電圧VINが供給される。スイッチ駆動回路240Aは、DC/DCコンバータ100Aを停止する際に、言い換えると、制御信号SWCTLがオフレベル(たとえばロー)に遷移すると、DC/DCコンバータ100Aの入力電圧VINに応じた電圧Vcを、PMOSトランジスタM3のゲートに印加する。
【0045】
電圧Vcが「入力電圧VINに応じている」とは、電圧Vcが入力電圧VINを利用して生成されていることを含む。これには、電圧Vcが入力電圧VINと等しい場合のみでなく、電圧Vcが入力電圧VINを正または負方向にレベルシフトされた電圧である場合や、電圧Vcが入力電圧VINに係数を乗じた電圧である場合も含まれる。本実施形態では、電圧Vcは、入力電圧VINと等しいものとする。
【0046】
スイッチ駆動回路240Aは、ロードスイッチSW1をオンすべき期間(制御信号SWCTLがオンレベル、たとえばハイ)において、PMOSトランジスタM3のゲートに、オン電圧VONを印加する。オン電圧VONの電圧レベルは、ロードスイッチSW1が確実にオンするように定められる。たとえばオン電圧VONは、PMOSトランジスタM3のソース電圧VMIDよりも所定電圧幅ΔV、低く定められる。所定電圧幅ΔVは、PMOSトランジスタM3のしきい値電圧Vgs(th)よりも大きい。
【0047】
内部電源回路250は、入力電圧VINにもとづいて、パルス変調器210やロジック回路220に供給すべき電源電圧VDDを生成する。なお、外部から電源電圧VDDが供給される場合、内部電源回路250は省略してもよい。
【0048】
以上がDC/DCコンバータ100Aの構成である。続いてその動作を説明する。DC/DCコンバータ100Aの動作中、スイッチ駆動回路240Aは、PMOSトランジスタM3のゲートに、オン電圧VONを印加する。これによりPMOSトランジスタM3すなわちロードスイッチSW1はオンに固定される。
【0049】
DC/DCコンバータ100Aの出力停止のイベントが発生するとロジック回路220は、スイッチ制御信号SWCTLをローとする。
図2は、スイッチ制御信号SWCTRLがローに遷移した直後のDC/DCコンバータ100Aの等価回路図である。
【0050】
スイッチ駆動回路240Aは、PMOSトランジスタM3のゲートに、入力電圧VINと同じ電圧レベルを有する電圧Vcを印加する。このときPMOSトランジスタM3は直ちにオフになるわけではなく、ソースフォロア回路として動作する。その結果、PMOSトランジスタM3のソース電圧、すなわちロードスイッチSW1とハイサイドトランジスタM2の接続ノードの電圧VMIDは、
VMID=Vc+VGS
にクランプされ、過電圧が発生するのを防止できる。
【0051】
このとき、ハイサイドトランジスタM2とローサイドトランジスタM1の接続ノードであるスイッチングピンSWの電圧VSWは、
VSW=VMID+VF=Vc+VGS+VF≒VIN+VGS+VF
となり、スイッチングピンSWの過電圧も抑制される。
【0052】
またこのときインダクタの両端間電圧VLは、
VL=VIN-VSW=VIN-(Vc+VGS+VF)
となる。上述のように、Vc≒VINとなるように定めると、
VL≒-(VGS+VF)
となる。これによりコイル電流ILを、-(VGS+VF)/Lの傾きで時間とともに減少させることができる。その後、コイル電流ILがゼロとなる。
【0053】
図3は、
図1のDC/DCコンバータ100Aの波形図(実測)である。
図3には、スイッチングピンSW、入力ピンVIN、出力ピンVOUTそれぞれの電圧V
SW,V
IN,V
OUTと、コイル電流I
Lが示される。時刻t
0より前において、DC/DCコンバータ100Aはスイッチング動作しており、出力電圧V
OUTは目標レベルV
OUT(REF)に安定化されている。
【0054】
時刻t0に、停止のトリガーとなるイベントが検出されると、ローサイドトランジスタM1、ハイサイドトランジスタM2のゲート電圧VHG,VLGがローレベルとなり、PMOSトランジスタM3のゲートに、電圧Vc=VINが印加される。その結果、スイッチング電圧VSWはVIN+VGS+VFにクランプされる。この区間において、コイル電流ILは、-(VGS+VF)/Lの傾き(A/s)で減少していき、時刻t1にゼロとなる。時刻t1以降、DC/DCコンバータ100Aの出力は停止する。
【0055】
以上がDC/DCコンバータ100Aの動作である。DC/DCコンバータ100Aの利点は、比較技術1との対比によって明確となる。
図4は、比較技術1に係るDC/DCコンバータ100Rの回路図である。比較技術1と実施形態1とでは、DC/DCコンバータ100Rを停止する際にPMOSトランジスタM3のゲートに印加する電圧が異なっている。比較技術1では、PMOSトランジスタM3を直ちにターンオフするために、PMOSトランジスタM3のゲートソース間電圧がゼロとなるように、ゲートに、ソース電圧V
MIDと同じ電圧が印加される。
【0056】
比較技術1では、PMOSトランジスタM3が瞬時にターンオフするため、コイル電流ILの経路が遮断される。コイル電流ILは、PMOSトランジスタM3のソースに向かって流れ続ける。ソース電圧VMIDを上昇させ、過電圧状態を引き起こすおそれがある。ソース電圧VMIDが上昇すると、スイッチング電圧VSWも過電圧状態となり得る。過電圧を抑制するためには、PMOSトランジスタM3のソースにピンVMIDを設け、ピンVMIDに、キャパシタC2を接続するなどの対策が必要となる。
【0057】
翻って、実施形態1によれば、PMOSトランジスタM3のソース電圧VMIDはクランプされるため、過電圧が発生しにくくなっており、信頼性が改善されている。
【0058】
さらに実施形態1では、PMOSトランジスタM3のソース電圧の過電圧が抑制されるため、過電圧を抑制するための対策が不要となる。つまり、PMOSトランジスタM3のソースに、ピンVMIDを設け、キャパシタC2を接続する必要がない。これによりコストの観点において、比較技術1と比べて有利である。
【0059】
続いて制御回路200Aの具体的な構成例を説明する。
【0060】
図5は、DC/DCコンバータの制御回路200Aの一例の回路図である。パルス変調器210は、電流モードのパルス幅変調器である。電流検出回路260は、コイル電流I
L(ローサイドトランジスタM1に流れる電流)を示す電流検出信号V
CSを生成する。
【0061】
パルス変調器210は、フィードバック信号VFBと電流検出信号VCSにもとづいて、パルス信号Spを生成する。
【0062】
パルス変調器210は、エラーアンプ212,214、PWM(Pulse Width Modulation)コンパレータ216を含む。第1エラーアンプ212は、フィードバック信号VFBと基準電圧VREFの誤差を増幅する。第1エラーアンプ212の出力信号VERR1は、電流検出信号VCSの目標値(電流指令信号)となる。第2エラーアンプ214は、電流指令信号VERR1と電流検出信号VCSの誤差を増幅する。PWMコンパレータ216は、第2エラーアンプ214の出力信号VERR2を、ランプ波あるいはのこぎり波の周期信号RAMPと比較し、パルス信号Spを生成する。
【0063】
スイッチ駆動回路240Aは、電圧源242およびセレクタ244を備える。電圧源242は、PMOSトランジスタM3のソース電圧VMIDをレベルシフトし、ソース電圧VMIDよりも所定電圧幅ΔV低い電圧(VMID-ΔV)を生成する。セレクタ244は、スイッチ制御信号SWCTLに応じて、入力電圧VIN(=Vc)と、VMID-ΔVの一方を選択し、PMOSトランジスタM3のゲートに供給する。具体的にはセレクタ244は、スイッチ制御信号SWCTLがオフレベルのときに、PMOSトランジスタM3のゲートを入力ピンVINと接続する。
【0064】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る昇圧DC/DCコンバータ100Bの回路図である。昇圧DC/DCコンバータ(以下、単にDC/DCコンバータという)100Bは、入力端子(入力ライン)102の入力電圧V
INを昇圧し、所定の電圧レベルに安定化して、出力端子(出力ライン)104に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0065】
DC/DCコンバータ100Bは、主回路110Bと、制御回路200Bを備える。主回路110Bは、インダクタL1、ローサイドトランジスタ(スイッチングトランジスタ)M1、ハイサイドトランジスタ(同期整流トランジスタ)M2、出力キャパシタC1およびハイサイドスイッチSW2を含む。
【0066】
制御回路200Bは、ひとつの半導体基板(ダイ)に集積化された機能ICである。本実施形態において、ローサイドトランジスタM1、ハイサイドトランジスタM2およびNMOSトランジスタM4は、制御回路200Aに集積化されている。NMOSトランジスタM4は、ハイサイドスイッチSW2として設けられる。
【0067】
制御回路200Bは、ローサイドトランジスタM1、ハイサイドトランジスタM2、NMOSトランジスタM4に加えて、パルス変調器210、ロジック回路220、ハイサイドドライバ230、ローサイドドライバ232、スイッチ駆動回路240B、抵抗R11,R12を備える。
【0068】
制御回路200Bには、スイッチングピンSW、接地ピンPGND、入力ピンVIN、出力ピンVOUT、センスピンVOUT_SNS、中間ピンVMIDが設けられる。
【0069】
中間ピンVMIDとスイッチングピンSWには、外付けのインダクタL1が接続される。出力ピンVOUTには出力キャパシタC1が接続される。ローサイドトランジスタM1は、スイッチングピンSWと接地ピンPGNDの間に接続される。ハイサイドトランジスタM2は、スイッチングピンSWと出力ピンVOUTの間に直接に接続される。NMOSトランジスタM4は、入力ピンVINと中間ピンVMIDの間に設けられる。
【0070】
パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100Bの出力が目標状態に近づくようにパルス変調されるパルス信号Spを生成する。実施形態1で説明したように、DC/DCコンバータ100Bの出力は、出力電圧VOUTであってもよいし(定電圧出力)、出力電流IOUTであってもよいし(定電流出力)、負荷(不図示)内のノードの電圧であってもよい。
【0071】
本実施形態では、DC/DCコンバータ100Bは定電圧出力であり、出力電圧VOUTをその目標レベルVOUT(REF)に安定化する。センスピンVOUT_SNSには出力電圧VOUTがフィードバックされる。出力電圧VOUTは抵抗R11,R12により分圧され、出力電圧VOUTを示すフィードバック信号VFBが生成される。パルス変調器210は、フィードバック信号VFBが基準電圧VREFに近づくように、パルス信号Spを変調する。実施形態1で説明したように、パルス変調器210の構成や制御方式は特に限定されない。
【0072】
ロジック回路220は、パルス変調器210にもとづいて、ハイサイドトランジスタM2の制御信号HGCTLおよびローサイドトランジスタM1の制御信号LGCTLを生成する。またロジック回路220は、NMOSトランジスタM4の制御信号SWCTLを生成する。
【0073】
ハイサイドドライバ230は、制御信号HGCTLにもとづいてハイサイドトランジスタM2を駆動する。ローサイドドライバ232は、制御信号LGCTLにもとづいてローサイドトランジスタM1を駆動する。
【0074】
スイッチ駆動回路240Bは、制御信号SWCTLにもとづいて、NMOSトランジスタM4を駆動する。
【0075】
スイッチ駆動回路240Bは、出力ピンVOUTと接続されており、出力電圧VOUTが供給される。スイッチ駆動回路240Bは、DC/DCコンバータ100Bを停止する際に、言い換えると、制御信号SWCTLがオフレベル(たとえばロー)に遷移すると、DC/DCコンバータ100Bの出力電圧VOUTに応じた電圧Vdを、NMOSトランジスタM4のゲートに印加する。
【0076】
電圧Vdが「出力電圧VOUTに応じている」とは、電圧Vdが出力電圧VOUTを利用して生成されていることを含む。これには、電圧Vdが出力電圧VOUTと等しい場合のみでなく、電圧Vdが出力電圧VOUTを正または負方向にレベルシフトされた電圧である場合や、電圧Vdが出力電圧VOUTに係数を乗じた電圧である場合も含まれる。本実施形態では、電圧Vdは、出力電圧VOUTと等しいものとする。
【0077】
スイッチ駆動回路240Bは、ハイサイドスイッチSW2をオンすべき期間(制御信号SWCTLがオンレベル、たとえばハイ)において、NMOSトランジスタM4のゲートに、オン電圧VONを印加する。オン電圧VONの電圧レベルは、ハイサイドスイッチSW2が確実にオンするように定められる。たとえばオン電圧VONは、NMOSトランジスタM4のソース電圧VMIDよりも所定電圧幅ΔV、高く定められる。所定電圧幅ΔVは、NMOSトランジスタM4のしきい値電圧Vgs(th)よりも大きい。
【0078】
以上がDC/DCコンバータ100Bの構成である。続いてその動作を説明する。DC/DCコンバータ100Bの動作中、スイッチ駆動回路240Bは、NMOSトランジスタM4のゲートに、オン電圧VONを印加する。これによりNMOSトランジスタM4すなわちハイサイドスイッチSW2はオンに固定される。
【0079】
DC/DCコンバータ100Bの出力停止のイベントが発生するとロジック回路220は、スイッチ制御信号SWCTLをローとする。
図7は、スイッチ制御信号SWCTRLがローに遷移した直後のDC/DCコンバータ100Bの等価回路図である。
【0080】
スイッチ駆動回路240Bは、NMOSトランジスタM4のゲートに、出力電圧VOUTと同じ電圧レベルを有する電圧Vdを印加する。このときNMOSトランジスタM4は直ちにオフになるわけではなく、ソースフォロア回路として動作する。その結果、NMOSトランジスタM4のソース電圧VMIDは、
VMID=Vd-VGS
にクランプされ、負電圧にはならない。これにより、NMOSトランジスタM4のドレインソース間に過電圧が印加されるのを防止できる。
【0081】
またハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタの接続ノード(スイッチングピン)の電圧VSWは、
VSW=VOUT+VF
となる。VFはハイサイドトランジスタM2のボディダイオードの順方向電圧である。このときインダクタの両端間電圧VLは、
VL=VMID-VSW=(Vd-VGS)-(VOUT+VF)≒-(VGS+VF)
となる。これによりコイル電流ILを、-(VGS+VF)/Lの傾きで時間とともに減少させることができる。
【0082】
DC/DCコンバータ100Bの利点は、比較技術2との対比によって明確となる。
図8は、比較技術2に係るDC/DCコンバータ100Sの回路図である。比較技術2と実施形態2とでは、DC/DCコンバータ100Sを停止する際にNMOSトランジスタM4のゲートに印加する電圧が異なっている。比較技術2では、NMOSトランジスタM4を直ちにターンオフするために、NMOSトランジスタM4のゲートソース間電圧がゼロとなるように、ゲートに、ソース電圧V
MIDと同じ電圧が印加される。
【0083】
比較技術2では、NMOSトランジスタM4が瞬時にターンオフするため、コイル電流ILの供給経路が遮断される。その結果、NMOSトランジスタM4のソース(VMIDピン)がハイインピーダンスとなり、その電圧が負電圧となり、NMOSトランジスタM4のドレインソース間に過電圧が印加されるおそれがある。過電圧を抑制するためには、NMOSトランジスタM4のソースにダイオードD1を接続し、NMOSトランジスタM4に変わる電流の供給経路を設ける必要がある。
【0084】
翻って、実施形態2によれば、NMOSトランジスタM4のソース電圧はクランプされるため、負電圧が発生しにくくなっており、ドレインソース間の過電圧が抑制され、信頼性が改善されている。
【0085】
さらに実施形態2では、NMOSトランジスタM4のドレインソース間の過電圧が抑制されるため、過電圧を抑制するための対策が不要となる。つまり、NMOSトランジスタM4のソースに、ダイオードD1を接続する必要がない。これによりコストの観点において、比較技術2と比べて有利である。
【0086】
続いて制御回路200Bの具体的な構成例を説明する。
【0087】
図9は、DC/DCコンバータの制御回路200Bの一例の回路図である。パルス変調器210は、
図5のそれと同様である。
【0088】
スイッチ駆動回路240Bは、電圧源246およびセレクタ248を備える。電圧源246は、NMOSトランジスタM4のソース電圧VMIDをレベルシフトし、ソース電圧VMIDよりも所定電圧幅ΔV高い電圧(VMID+ΔV)を生成する。セレクタ248は、スイッチ制御信号SWCTLに応じて、出力電圧VOUT(=Vd)と、VMID+ΔVの一方を選択し、NMOSトランジスタM4のゲートに供給する。具体的にはセレクタ248は、スイッチ制御信号SWCTLがオフレベルのときに、NMOSトランジスタM4のゲートを出力ピンVOUTと接続する。
【0089】
(変形例)
上述した実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なことが当業者に理解される。以下、こうした変形例について説明する。
【0090】
実施形態1、2に関連して、ローサイドトランジスタM1、ハイサイドトランジスタM2はディスクイート素子として外付けされてもよい。
【0091】
また実施形態1に関連して、PMOSトランジスタM3はディスクリート素子として外付けされてもよい。この場合において、スイッチ駆動回路240Aの一部、あるいは全部が、制御回路200AのICの外部にディスクリート素子で構成されてもよい。
【0092】
また実施形態2に関連して、NMOSトランジスタM4はディスクリート素子として外付けされてもよい。この場合において、スイッチ駆動回路240Bの一部、あるいは全部が、制御回路200BのICの外部にディスクリート素子で構成されてもよい。
【0093】
(用途)
続いて、DC/DCコンバータ100A,100B(以下、単に100として示す)の用途を説明する。
【0094】
図10は、実施形態に係るDC/DCコンバータ100を備える電子機器700の一例を示す図である。電子機器700は、たとえば、携帯電話端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、タブレット端末、ポータブルオーディオプレイヤなどの電池駆動型デバイスである。電子機器700は、筐体702、電池704、マイクロプロセッサ706およびDC/DCコンバータ100を備える。DC/DCコンバータ100は、その入力端子に電池704からの電池電圧V
BAT(=V
IN)を受け、出力端子に接続される負荷に、出力電圧V
OUTを供給する。
【0095】
電子機器700の種類は、電池駆動型のデバイスには限定されず、車載機器であってもよいし、ファクシミリなどのOA機器であってもよいし、産業機器であってもよい。
【0096】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示に含まれ、また本発明の範囲を構成しうることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0097】
100 DC/DCコンバータ
102 入力端子
104 出力端子
110A,110B 主回路
200 制御回路
210 パルス変調器
212 第1エラーアンプ
214 第2エラーアンプ
216 PWMコンパレータ
220 ロジック回路
230 ハイサイドドライバ
232 ローサイドドライバ
240 スイッチ駆動回路
242 電圧源
244 セレクタ
246 電圧源
248 セレクタ
250 内部電源回路
260 電流検出回路
SW1 ロードスイッチ
SW2 ハイサイドスイッチ
M1 ローサイドトランジスタ
M2 ハイサイドトランジスタ
M3 PMOSトランジスタ
M4 NMOSトランジスタ