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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191869
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】電池冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/06 20060101AFI20221221BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20221221BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221221BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221221BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20221221BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20221221BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221221BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20221221BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F28D15/06 D
H01M10/6569
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/633
H01M10/651
B60K1/04 Z
B60K11/02
F28D15/02 M
F28D15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100349
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正高
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AC20
3D038AC22
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
3D235FF38
3D235FF43
3D235HH02
5H031AA09
5H031CC09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】冷媒の漏れ判定を正確に行えるようにする。
【解決手段】電池冷却装置は、車両に搭載され、冷媒が封入されたサーモサイフォン式の電池冷却回路と、電池冷却回路からの冷媒の漏れを判定する漏れ判定処理を実行するプロセッサと、を備える。電池冷却回路は、1又は複数の電池セルが発する熱を吸収して液相冷媒を蒸発させることにより1又は複数の電池セルを冷却する冷却器と、冷却器よりも鉛直方向の上方に配置され、冷却器で気化した気相冷媒を凝縮させるコンデンサと、蒸気通路及び液体通路と、を含む。プロセッサは、漏れ判定処理において、車両が停止してから所定時間が経過した後に気相過熱制御を実行し、気相過熱制御によって気相冷媒が過熱状態となった後に、冷媒圧力センサによる圧力検出値と、初期封入時の冷媒の封入量の下での電池冷却回路内の冷媒の圧力推定値との比較結果に基づいて、冷媒の漏れを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電池冷却装置であって、
冷媒が封入されたサーモサイフォン式の電池冷却回路と、
前記電池冷却回路からの前記冷媒の漏れを判定する漏れ判定処理を実行するプロセッサと、
を備え、
前記電池冷却回路は、
1又は複数の電池セルが発する熱を吸収して液相冷媒を蒸発させることにより、前記1又は複数の電池セルを冷却する冷却器と、
前記冷却器よりも鉛直方向の上方に配置され、前記冷却器で気化した気相冷媒を凝縮させるコンデンサと、
前記冷却器と前記コンデンサとの間を接続し、前記気相冷媒を前記コンデンサに流通させる蒸気通路と、
前記コンデンサと前記冷却器との間を接続し、前記液相冷媒を前記冷却器に流通させる液体通路と、
を含み、
前記電池冷却装置は、
前記電池冷却回路に取り付けられ、前記電池冷却回路内の前記冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサと、
前記気相冷媒を過熱する過熱装置と、
をさらに備え、
前記プロセッサは、前記漏れ判定処理において、
前記車両が停止してから所定時間が経過した後に、前記気相冷媒が過熱状態となるように前記過熱装置を制御する気相過熱制御を実行し、
前記気相過熱制御によって前記気相冷媒が過熱状態となった後に、前記冷媒圧力センサによる圧力検出値と、圧力推定値との比較結果に基づいて、前記冷媒の漏れを判定し、
前記圧力推定値は、初期封入時の前記冷媒の封入量の下での前記電池冷却回路内の前記冷媒の圧力推定値であって、飽和蒸気圧である前記液相冷媒の圧力と前記液相冷媒の体積との積と気体の状態方程式に基づく前記気相冷媒の圧力と前記気相冷媒の体積との積との和を前記電池冷却回路の容積で除して得られる値である
ことを特徴とする電池冷却装置。
【請求項2】
車両に搭載された電池冷却装置であって、
冷媒が封入されたサーモサイフォン式の電池冷却回路と、
前記電池冷却回路からの前記冷媒の漏れを判定する漏れ判定処理を実行するプロセッサと、
を備え、
前記電池冷却回路は、
1又は複数の電池セルが発する熱を吸収して液相冷媒を蒸発させることにより、前記1又は複数の電池セルを冷却する冷却器と、
前記冷却器よりも鉛直方向の上方に配置され、前記冷却器で気化した気相冷媒を凝縮させるコンデンサと、
前記冷却器と前記コンデンサとの間を接続し、前記気相冷媒を前記コンデンサに流通させる蒸気通路と、
前記コンデンサと前記冷却器との間を接続し、前記液相冷媒を前記冷却器に流通させる液体通路と、
を含み、
前記電池冷却装置は、
前記電池冷却回路に取り付けられ、前記電池冷却回路内の前記冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサと、
前記気相冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと、
前記気相冷媒を過熱する過熱装置と、
をさらに備え、
前記プロセッサは、前記漏れ判定処理において、
前記車両が停止してから所定時間が経過した後に、前記気相冷媒が過熱状態となるように前記過熱装置を制御する気相過熱制御を実行し、
前記気相過熱制御によって前記気相冷媒が過熱状態となった後の所定期間において前記冷媒圧力センサと前記冷媒温度センサとを用いて取得される前記気相冷媒の温度変化速度及び前記電池冷却回路内の前記冷媒の圧力変化速度を、初期封入時の前記冷媒の封入量の下での前記温度変化速度と前記圧力変化速度との関係と比較することによって、前記冷媒の漏れを判定する
ことを特徴とする電池冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーモサイフォン式の電池冷却回路を備える電池冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーモサイフォン式の温度調整装置が開示されている。この温度調整装置は、機器用熱交換器とコンデンサと気相側配管と液相側配管とを有する流体循環回路を備えている。機器用熱交換器の熱交換部には、適正封入量に対応する適正液面位置よりも上方側に、気相冷媒温度センサが配置されている。温度調整装置は、気相冷媒温度センサで検出された表面温度と、適正封入量に対応する基準表面温度とを比較して、現時点における冷媒封入量を推定する流体量推定部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-086214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、上述のように、適正封入量に対応する適正液面位置よりも上方側において熱交換部に配置された気相冷媒温度センサで検出された熱交換部の表面温度と、適正封入量に対応する基準表面温度との比較結果に基づいて冷媒封入量が推定される。ここで、サーモサイフォン式の電池冷却装置が車両に搭載されている場合、機器用熱交換器(冷却器)の熱交換部内の適正液面位置は、車両の傾斜等の影響によって変化する。このため、特許文献1に記載のような温度差を利用する手法では、冷媒封入量の変化に起因する熱交換部の液面変化を正確に捉えつつ推定を行うことが難しくなる状況が生じ得る。このため、特許文献1に記載の技術は、冷媒封入量を正確に推定する点において改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、サーモサイフォン式の電池冷却回路を備える電池冷却装置において、冷媒の漏れ判定を正確に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電池冷却装置は、車両に搭載され、冷媒が封入されたサーモサイフォン式の電池冷却回路と、プロセッサと、を備える。プロセッサは、電池冷却回路からの冷媒の漏れを判定する漏れ判定処理を実行する。
電池冷却回路は、1又は複数の電池セルが発する熱を吸収して液相冷媒を蒸発させることにより、1又は複数の電池セルを冷却する冷却器と、冷却器よりも鉛直方向の上方に配置され、冷却器で気化した気相冷媒を凝縮させるコンデンサと、冷却器とコンデンサとの間を接続し、気相冷媒をコンデンサに流通させる蒸気通路と、コンデンサと冷却器との間を接続し、液相冷媒を冷却器に流通させる液体通路と、を含む。
電池冷却装置は、電池冷却回路に取り付けられ、電池冷却回路内の冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサと、気相冷媒を過熱する過熱装置と、をさらに備える。
プロセッサは、漏れ判定処理において、車両が停止してから所定時間が経過した後に、気相冷媒が過熱状態となるように過熱装置を制御する気相過熱制御を実行し、気相過熱制御によって気相冷媒が過熱状態となった後に、冷媒圧力センサによる圧力検出値と、圧力推定値との比較結果に基づいて、冷媒の漏れを判定する。圧力推定値は、初期封入時の冷媒の封入量の下での電池冷却回路内の冷媒の圧力推定値であって、飽和蒸気圧である液相冷媒の圧力と液相冷媒の体積との積と気体の状態方程式に基づく気相冷媒の圧力と気相冷媒の体積との積との和を電池冷却回路の容積で除して得られる値である。
【0007】
本開示の他の態様に係る電池冷却装置は、車両に搭載され、冷媒が封入されたサーモサイフォン式の電池冷却回路と、プロセッサと、を備える。プロセッサは、電池冷却回路からの冷媒の漏れを判定する漏れ判定処理を実行する。
電池冷却回路は、1又は複数の電池セルが発する熱を吸収して液相冷媒を蒸発させることにより、1又は複数の電池セルを冷却する冷却器と、冷却器よりも鉛直方向の上方に配置され、冷却器で気化した気相冷媒を凝縮させるコンデンサと、冷却器とコンデンサとの間を接続し、気相冷媒をコンデンサに流通させる蒸気通路と、コンデンサと冷却器との間を接続し、液相冷媒を冷却器に流通させる液体通路と、を含む。
電池冷却装置は、電池冷却回路に取り付けられ、電池冷却回路内の冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサと、気相冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと、気相冷媒を過熱する過熱装置と、をさらに備える。
プロセッサは、漏れ判定処理において、車両が停止してから所定時間が経過した後に、気相冷媒が過熱状態となるように過熱装置を制御する気相過熱制御を実行し、気相過熱制御によって気相冷媒が過熱状態となった後の所定期間において冷媒圧力センサと冷媒温度センサとを用いて取得される気相冷媒の温度変化速度及び電池冷却回路内の冷媒の圧力変化速度を、初期封入時の冷媒の封入量の下での温度変化速度と圧力変化速度との関係と比較することによって、冷媒の漏れを判定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る電池冷却装置によれば、車両が停止して所定時間が経過した後の冷媒の温度が安定した状況下において、飽和状態から逸脱する気相側の過熱状態が気相過熱制御を利用して形成される。そして、冷媒圧力センサによる圧力検出値と、初期封入時の冷媒封入量を想定した圧力推定値との比較結果に基づいて、冷媒の漏れが判定される。このような判定手法によれば、気相過熱状態であれば冷媒封入量の減少に起因する気相体積の減少の影響が冷媒圧力(圧力検出値)に表れることに着目し、冷媒の漏れを検出することができる。そして、本判定手法によれば、冷媒封入量の変化に起因する冷却器(熱交換部)の液面変化を正確に捉える必要がないので、車両が傾斜していても、冷媒の漏れ判定を正確に行うことが可能となる。
【0009】
また、本開示の他の態様に係る電池冷却装置によれば、上記の一態様と同様に気相過熱状態を形成した後に、気相側が過熱状態となった後の所定期間において冷媒圧力センサと冷媒温度センサとを用いて取得される気相冷媒の温度変化速度及び電池冷却回路内の冷媒の圧力変化速度を、初期封入時の冷媒の封入量の下での前記温度変化速度と前記圧力変化速度との関係と比較することによって、冷媒の漏れが判定される。このような判定手法によれば、冷媒圧力センサの個体差によるばらつきが生じ得る圧力検出値そのものではなく、圧力変化速度(すなわち、時間に対する圧力検出値の変化量)と温度変化速度との関係を利用して、漏れ判定が行われる。このため、上記の一態様と比べてより正確な判定を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る電池冷却装置の概略構成を示す図である。
図2】初期封入状態に対する冷媒の漏れが生じている時の電池冷却回路を示す図である。
図3】冷媒の飽和蒸気圧曲線を示すグラフである。
図4】気相冷媒が過熱状態である時の電池冷却回路内の気相及び液相の体積割合と冷媒封入量との関係を表した図である。
図5】実施の形態1に係る漏れ判定処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る漏れ判定処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施の形態2に係る漏れ判定処理の概要を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。ただし、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る技術思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る技術思想に必ずしも必須のものではない。
【0012】
1-1.電池冷却装置の構成
図1は、実施の形態1に係る電池冷却装置10の概略構成を示す図である。電池冷却装置10は、車両に搭載されている。より詳細には、車両には、電池パック1が搭載されている。例えば、電池パック1には、積層された複数の電池セルが収容されている。ただし、電池パック1に収容される電池セルの数は、特に限定されず、1つであってもよい。電池パック1には、車両走行用モータに供給される電力が蓄えられている。
【0013】
電池パック1の放電時と充電時には、各電池セルが通電に伴って熱を発生させる。電池冷却装置10は、電池パック1内の各電池セルを冷却するように構成されている。図1には、一例として、紙面の奥行き方向に積層された複数の電池セルの積層体である4つの電池スタック2が表されている。
【0014】
電池冷却装置10は、各電池スタック2の電池セルの熱を輸送し、放熱する。具体的には、電池冷却装置10は、冷媒(作動流体)が封入されたサーモサイフォン式の電池冷却回路12を備えている。電池冷却回路12は、冷却器14と、コンデンサ16と、蒸気通路18と、液体通路20とを備えている。
【0015】
蒸気通路18は、各冷却器14とコンデンサ16との間を接続している。液体通路20は、コンデンサ16と各冷却器14との間を接続している。すなわち、蒸気通路18と液体通路20とは、冷媒通路として環状に形成されている。電池冷却回路12は、冷媒の蒸発及び凝縮により熱移動を行うヒートパイプであり、気相状態の冷媒(気相冷媒)が流れる蒸気通路18と液相状態の冷媒(液相冷媒)が流れる液体通路20とが分離されたループ状のサーモサイフォンとなるように構成されている。
【0016】
電池冷却回路12を循環する冷媒として、例えば、蒸気圧縮式の冷凍サイクルで利用されるフロン系冷媒(例えば、R134a又はR1234yf)を用いることができる。あるいは、当該冷媒として、例えば、二酸化炭素等の他の冷媒、又は不凍液が用いられてもよい。
【0017】
図1に示すように、冷却器14は、一例として、1対の電池スタック2の間に配置されている。図1には、2対の電池スタック2が例示されているので、この例での冷却器14の数は2つである。各冷却器14は、例えば熱伝導材22を介して、隣り合う2つの電池スタック2のそれぞれの側面と接している。より詳細には、冷却器14は、電池セルの積層方向(紙面の奥行き方向)に延在し、各電池スタック2に含まれる各電池セルと熱伝導材22を介して接触するように形成されている。
【0018】
冷却器14の内部には、電池冷却回路12の冷媒通路の一部として機能する冷媒通路が形成されている。冷却器14には、液体通路20から液相冷媒が供給される。冷却器14は、電池スタック2(複数の電池セル)が発する熱を吸収して液相冷媒を蒸発させることにより、各電池セルを冷却する。
【0019】
図1に示すように、冷却器14への液相冷媒の入口(液体入口)14aは、鉛直方向の下方に設けられている。冷却器14からの気相冷媒の出口(蒸気出口)14bは、鉛直方向の上方に設けられている。そして、鉛直方向と直交する方向(紙面の奥行き方向)では、液体入口14aと蒸気出口14bとは互いに反対側に配置されている。これにより、冷却器14に供給された液相冷媒は、各電池セルの熱を受け取り、気化(沸騰)する(沸騰冷却)。冷却器14の内部で気化した気相冷媒(蒸気)は、鉛直方向の上方に移動し、蒸気出口14bから蒸気通路18に流出する。
【0020】
蒸気通路18は、冷却器14で気化した気相状態の冷媒(気相冷媒)をコンデンサ16に流通させる冷媒通路である。すなわち、各電池セルで生じた熱が気相冷媒によってコンデンサ16に輸送される。より詳細には、蒸気通路18は、各冷却器14からの気相冷媒が合流した後に、鉛直方向の上方に延びたうえでコンデンサ16の蒸気入口16aに接続されている。
【0021】
コンデンサ16の内部には、電池冷却回路12の冷媒通路の一部として機能する冷媒通路が形成されている。コンデンサ16は、冷却器14で気化した気相冷媒を冷却して凝縮させる。すなわち、冷却器14から輸送された熱は、コンデンサ16において放熱される。
【0022】
コンデンサ16は、冷却器14よりも鉛直方向の上方に配置されている。気相冷媒を凝縮させるためのコンデンサ16の具体的な構成は、特に限定されない。例えば、コンデンサ16は、車室内空調システムで用いられる冷凍サイクル装置を流れる低圧冷媒を気相冷媒と熱交換させるように構成されてもよい。さらに、例えば、コンデンサ16は、上記冷凍サイクル装置を流れる低圧冷媒によって冷却される流体(例えば、ロングライフクーラント(LLC))を気相冷媒と熱交換させるように構成されてもよい。さらに、例えば、コンデンサ16は、外気を気相冷媒と熱交換させるように構成された空冷式の放熱器(ラジエータ)として構成されてもよい。以下の説明では、一例として、コンデンサ16は、LLCを気相冷媒と熱交換させる構成を備えているものとする。
【0023】
付け加えると、上述の冷凍サイクル装置を利用する2つの例によれば、冷凍サイクル装置を制御してコンデンサ16内で冷媒と熱交換する流体(上記低圧冷媒又はLLC)の温度を制御することで、気相冷媒の冷却だけでなく気相冷媒(蒸気)の過熱をも含めた気相冷媒の温度調節(温調)を行うことができる。
【0024】
コンデンサ16の液体出口16bには、液体通路20が接続されている。液体通路20は、コンデンサ16で液化された液相冷媒を冷却器14に流通させる冷媒通路である。液体通路20は、鉛直方向に沿って下方に延びた後に、各冷却器14の液体入口14aに接続されている。これにより、コンデンサ16から流出した液相冷媒は、液相冷媒の自重によって鉛直方向の下方側に移動する。
【0025】
上述した電池冷却回路12によれば、コンデンサ16で気相冷媒を冷却可能な状態において各電池スタック2の電池セルが高温になると、冷媒が自然循環することによって、電池セルの継続的な冷却を行うことができる。
【0026】
また、電池冷却装置10は、電子制御ユニット(ECU)30を備えている。ECU30は、電池冷却装置10に関する各種処理を実行するコンピュータである。具体的には、ECU30によって実行される処理は、コンデンサ16の温調に関する処理、及び、後述の「漏れ判定処理」を含む。ECU30は、プロセッサ30a及び記憶装置30bを備えている。プロセッサ30aは、記憶装置30bに格納されているプログラムを読み出して実行する。これにより、プロセッサ30aによる各種処理が実現される。
【0027】
ECU30は、上述の各種処理に用いられる各種センサからセンサ信号を取り込む。ここでいう各種センサ類は、例えば、冷媒圧力センサ32、冷媒温度センサ34、及び電池温度センサ36を含む。冷媒圧力センサ32は、電池冷却回路12に取り付けられ、電池冷却回路12内の冷媒の圧力を検出する。冷媒圧力センサ32は、一例として蒸気通路18に取り付けられているが、電池冷却回路12上における蒸気通路18以外の部位に取り付けられていてもよい。冷媒温度センサ34は、気相冷媒の温度(気相温度)TVPを検出するために、例えば蒸気通路18に取り付けられている。電池温度センサ36は、電池セルの温度(以下、単に「電池温度T」とも称する)を検出する。一例として、電池温度センサ36は、電池スタック2のそれぞれに含まれる電池セルのうちの所定数の電池セルに設けられている。また、ECU30には、車両に設置された警告灯38が接続されている。
【0028】
1-2.冷媒の漏れ判定処理
サーモサイフォン式の電池冷却回路12は上述のように自然循環を利用しているので、冷媒の循環流量は、ポンプで冷媒を循環させる方式と比べて少なくなる。このため、電池冷却回路12内に多量の冷媒を封入することが必要となる。そして、このような方式の電池冷却装置10では、冷媒封入量は、車両の傾斜時及び車両に重力加速度が作用する時の電池冷却装置10の冷却性能に対して大きな影響を及ぼす。したがって、冷媒封入量の管理が重要であり、冷媒の漏れを正確に検出することが求められる。
【0029】
上述の図1中に記載の「液面L1」は、事前に決定された適正量の冷媒が電池冷却回路12内に封入されている初期封入状態における冷媒(液相冷媒)の液面に相当する。一方、図2は、初期封入状態に対する冷媒の漏れが生じている時の電池冷却回路12を示す図である。すなわち、図2に示す「液面L2」は、初期封入状態に対する冷媒の漏れが生じている時の液面の一例を示している。
【0030】
本実施形態では、ECU30は、初期封入状態に対する冷媒の漏れを検出するために、次のような「漏れ判定処理」を実行する。
【0031】
ここで、電池冷却回路12の内部は、基本的には、液相冷媒と気相冷媒とが共存する飽和状態となっている。飽和状態であれば、液相冷媒及び気相冷媒の何れの圧力も飽和蒸気圧となる。図3は、冷媒の飽和蒸気圧曲線を示すグラフである。飽和状態では、図3に示すように、冷媒の温度に対応する飽和蒸気圧を求めることで、電池冷却回路12内の冷媒の圧力を取得できる。すなわち、電池冷却回路12内の冷媒の圧力は、冷媒封入量の影響を受けない。換言すると、冷媒の漏れの影響は、飽和状態における冷媒圧力には表れない。
【0032】
一方、気相冷媒が過熱状態になれば、気相冷媒に対し、(1)式で表される気体の状態方程式を適用可能となる。(1)式は、(2)式のように圧力の式に変換できる。(1)及び(2)式において、Pは圧力、Vは体積、nは質量、Rは気体定数、Tは温度である。
PV=n・R・T ・・・(1)
P=(n/V)・R・T ・・・(2)
【0033】
図4は、気相冷媒が過熱状態である時の電池冷却回路12内の気相及び液相の体積割合と冷媒封入量との関係を表した図である。より詳細には、図4は、冷媒封入量Aと、冷媒封入量Aよりも多い冷媒封入量Bとの間で体積割合を比較して表している。図4に一例として示すように、気相の体積(体積割合)は、冷媒封入量が多いほど小さく(低く)なる。したがって、気相冷媒が過熱状態である場合、(2)式より、気相冷媒の圧力は、冷媒封入量が多いほど高くなるといえる。そして、冷媒圧力センサ32による電池冷却回路12内の冷媒の圧力検出値(以下、「センサ値P」とも称する)は、過熱状態にある気相冷媒の圧力の影響を受ける。このため、センサ値Pは、冷媒の漏れの発生に起因して冷媒封入量が減ると、初期封入時の冷媒封入量である場合と比べて低くなる。
【0034】
そこで、本実施形態に係る漏れ判定処理では、ECU30(プロセッサ30a)は、まず、車両が停止してから所定時間が経過した後に(すなわち、十分な車両ソークが行われた後に)、気相側が(すなわち、気相冷媒が)過熱状態となるように「気相過熱制御」を実行する。そのうえで、気相過熱制御によって気相側が過熱状態となった後に、ECU30は、センサ値Pと圧力推定値PAVEとの比較結果に基づいて、冷媒の漏れを判定する。
【0035】
ここでいう圧力推定値PAVEは、次の(3)式に従って算出される。(3)式において、関数f(TLQ)は、液相温度TLQの関数によって求められる飽和蒸気圧である液相冷媒の圧力に相当する。VLQは液相体積である。(n/VVP)×RTVPは、(2)式に基づく気相冷媒の圧力に相当する。より詳細には、nは気相冷媒の質量であり、VVPは気相体積であり、Rはガス定数であり、TVPは気相温度である。TTOTは電池冷却回路12の容積であり、(4)式に示すように液相体積VLQと気相体積VVPとの和である。
AVE=(f(TLQ)×VLQ+(n/VVP)×RTVP×VVP)/VTOT ・・・(3)
TOT=VLQ+VVP ・・・(4)
【0036】
センサ値Pは、電池冷却回路12の全体の冷媒圧力を検出する。換言すると、センサ値Pによれば、気相と液相の圧力の違いを平均化した冷媒圧力が得られる。そこで、(3)式では、センサ値Pとの比較に用いられる圧力推定値PAVEは、初期封入時の冷媒封入量の下(すなわち、冷媒漏れがない状態)での電池冷却回路12内の冷媒の圧力推定値であって、飽和蒸気圧で表現される液相冷媒の圧力(f(TLQ))と(2)式の気体の状態方程式で表現される気相冷媒の圧力((n/VVP)×RTVP)とをそれぞれの体積割合で加重平均して得られる値として表現されている。
【0037】
図5は、実施の形態1に係る漏れ判定処理の流れを示すフローチャートである。ECU30(プロセッサ30a)は、まず、ステップS100において、車両が停止したか否かを判定する。車両が停止したか否かは、例えば、車両のイグニッションスイッチからIG-OFF信号が入力されたか否かに基づいて判定できる。このステップS100の処理は、電池パック1の各電池セルの電流がゼロになったこと(すなわち、各電池セルの発熱がない状態となったこと)を判定するために行われる。
【0038】
ステップS100において、車両が停止していない場合には、ECU30は、今回の処理サイクルを終了する。一方、車両が停止した場合には、処理はステップS102に進む。
【0039】
ステップS102では、ECU30は、車両のソーク時間が十分か否かを判定する。具体的には、車両が停止してから所定時間が経過したか否かが判定される。この所定時間は、各電池セルの温度と電池パック1内の雰囲気温度との差が十分に小さくなる温度条件が成立するために必要な時間等、十分なソーク時間に相当する時間として予め設定されている。その結果、ソーク時間が十分となると、処理はステップS104に進む。
【0040】
ステップS104では、ECU30は、気相過熱制御を実行する。気相過熱制御は、例えば、コンデンサ16の温調を利用して行うことができる。より詳細には、例えば、上述の冷凍サイクル装置を制御してLLCの温度を高めることによって、気相冷媒を過熱状態とすることができる。この例では、冷凍サイクル装置が本開示に係る「過熱装置」の一例に相当する。あるいは、過熱装置は、例えば、電池冷却回路12内の気相側(例えば、蒸気通路18)に配置されるヒータであってもよい。当該ヒータは、気相冷媒が存在する部位であれば、蒸気通路18に限らず、他の気相側の部位であるコンデンサ16、冷却器14の上部、又は、液体通路20の上部(コンデンサ16に近い部位)に配置されてもよい。
【0041】
ステップS104に続くステップS106では、ECU30は、気相側(気相冷媒)が過熱状態になったか否かを判定する。この判定は、例えば、気相温度TVPと電池温度T(液相温度TLQ)との差が所定の閾値以上になったか否かに基づいて行うことができる。気相温度TVPは、冷媒温度センサ34によって検出できる。電池温度T(液相温度TLQ)は、電池温度センサ36によって検出できる。より詳細には、この判定で用いられる電池温度Tは、例えば、電池冷却装置10が備えるすべての電池温度センサ36の検出値の平均値であってもよいし、あるいは、特定の電池温度センサ36の検出値であってもよい。
【0042】
ステップS106において、気相側が過熱状態になっていない間は気相過熱制御が継続され、一方、気相側が過熱状態になると、処理はステップS108に進む。
【0043】
ステップS108では、ECU30は、センサ値Pと、初期封入時の冷媒封入量を想定した圧力推定値PAVEとを比較する。(3)式を用いた圧力推定値PAVEの算出に関し、液相温度TLQは、例えば、ステップS106の処理と同様に、電池温度センサ36の検出値を用いて取得できる。このような例に代え、電池冷却回路12は、液相温度TLQを直接的に検出するための冷媒温度センサを備えていてもよい。また、電池冷却回路12の容積VTOTは既知であるため、液相体積VLQ及び気相体積VVPは、例えば、液相体積VLQ及び気相体積VVPのそれぞれと気相温度TVPとの関係を事前に実験等で求めておくことにより、冷媒温度センサ34により検出される気相温度TVPから算出できる。また、(3)式中の気相冷媒の質量nは、例えば、初期封入時の冷媒封入量(既知の値)から液相冷媒の質量を引くことで算出できる。液相冷媒の質量は、例えば、液相体積VLQと、液相温度TLQ(電池温度T)に応じた液相冷媒の密度とから算出できる。
【0044】
そして、ステップS108では、センサ値Pと圧力推定値PAVEとの比較結果に基づいて、電池冷却回路12からの冷媒の漏れを判定する。具体的には、例えば、ECU30は、圧力推定値PAVEに対するセンサ値Pの低下量が所定の閾値未満の場合には、冷媒の漏れは生じていないと判定し、当該低下量が閾値以上となった場合には、冷媒の漏れが生じていると判定する。また、ECU30は、当該低下量が大きいほど、冷媒の漏れ量が多いと判定してもよい。
【0045】
ステップS108に続くステップS110では、ECU30は、ステップS108の判定結果に基づき、漏れがある場合にはステップS112に進み、漏れがない場合には今回の処理サイクルを終了する。
【0046】
冷媒封入量の減少は、電池パック1の冷却不良につながる。このため、ステップS112では、ECU30は、車両のユーザに冷媒漏れを警告するための処理を実行する。具体的には、例えば、ECU30は、警告灯38を点灯させる。なお、冷媒漏れの警告は、警告灯38に代え、あるいはそれとともに、音声等の他の任意の手法を用いて行われてもよい。ECU30は、ステップS112の処理を行った後に今回の処理サイクルを終了する。
【0047】
なお、冷媒圧力センサ32によるセンサ値Pには個体差がある。そこで、ステップS110の判定結果が否定的である場合(漏れがない場合)には、ECU30は、液相温度TLQ(電池温度T)及び気相温度TVPとともに、冷媒圧力(センサ値P)が、漏れがない場合のセンサ値Pの初期学習値として記憶してもよい。このような初期学習値の取得は、例えば車両が製造されてから間もない時期のように、冷媒の漏れが確実に生じていないと判断できる時期において取得されることが望ましい。そして、その後にステップS108の処理が実行される場合に、次のような判定処理が補足的に行われてもよい。すなわち、ステップS108の処理により取得されたセンサ値Pと上記の初期学習値との比較が補足的に実行されてもよい。そのうえで、例えば、ステップS108における上記低下量が閾値未満であっても、センサ値Pと初期学習値との差が所定の閾値以上である場合には、冷媒の漏れが生じていると判定されてもよい。
【0048】
1-3.効果
以上説明した実施の形態1に係る漏れ判定処理によれば、車両が停止して所定時間が経過した後の冷媒の温度が安定した状況下において、飽和状態から逸脱する気相側の過熱状態が気相過熱制御を利用して形成される。そして、センサ値Pと、初期封入時の冷媒封入量を想定した圧力推定値PAVEとの比較結果に基づいて、冷媒の漏れが判定される。このような判定手法によれば、気相過熱状態であれば冷媒封入量の減少に起因する気相体積VVPの減少の影響が冷媒圧力(センサ値P)に表れることに着目し、冷媒の漏れを検出することができる。そして、本判定手法によれば、冷媒封入量の変化に起因する冷却器14(熱交換部)の液面変化を正確に捉える必要がないので、車両が傾斜していても、冷媒の漏れ判定を正確に行うことが可能となる。
【0049】
付け加えると、車両が停止して所定時間が経過した後の冷媒温度が安定した状況下において漏れの有無の判定を行っているので、各電池セルの発熱の影響を排除した状態で判定を行うことができる。また、気相側を過熱することにより、気相側に代えて液相側を温める場合又は気相側とともに液相側を温める場合と比べて、液相温度TLQの変化が少ない状態で(より詳細には、液相温度TLQの変化に伴う液相冷媒の圧力(飽和蒸気圧)の変化が少ない状態で)、冷媒圧力の変化を生じさせることが可能となる。これにより、冷媒封入量の減少に起因する気相体積VVPの変化を、センサ値Pを利用してより確実に捉えることが可能となる。
【0050】
2.実施の形態2
実施の形態2は、「漏れ判定処理」の内容において、上述した実施の形態1と相違している。
【0051】
図6は、実施の形態2に係る漏れ判定処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施の形態1の図5に示すフローチャートとの相違点を中心に、図6に示すフローチャートの処理について説明する。
【0052】
図6では、ステップS106において気相側が過熱状態であると判定された後、処理はステップS200に進む。ステップS200では、ECU30は、気相冷媒の温度変化速度ΔTVPと、電池冷却回路12内の冷媒の圧力変化速度ΔPとから冷媒の漏れを判定する。
【0053】
図7は、実施の形態2に係る漏れ判定処理の概要を説明するためのグラフである。図7に示す関係は、気相側が過熱状態である時のものである。具体的には、同図中に実線で示す曲線(以下、便宜上、「判定基準曲線C」と称する)は、初期封入時の冷媒封入量での温度変化速度ΔTVPと圧力変化速度ΔPとの関係を示している。この判定基準曲線Cは、例えば、事前に実験等を行って取得することができる。一方、同図中に破線で示す曲線は、冷媒の漏れが発生した際の温度変化速度ΔTVPと圧力変化速度ΔPとの関係の一例を示している。
【0054】
実施の形態1において説明したように、気相過熱状態であれば、冷媒封入量の減少に起因する気相体積VVPの減少の影響が冷媒圧力(センサ値P)に表れる。このため、冷媒の漏れが発生した場合には、図7に示すように、同一の温度変化速度ΔTVPの下での圧力変化速度ΔPが、判定基準曲線C上の値に対して低くなる。
【0055】
そこで、ステップS200では、ECU30は、冷媒温度センサ34と冷媒圧力センサ32とを用いて、気相側が過熱状態となった後の所定期間における温度変化速度ΔTVP及び圧力変化速度ΔPを取得する。そのうえで、ECU30は、取得した温度変化速度ΔTVP及び圧力変化速度ΔPを、初期封入時の冷媒封入量での温度変化速度ΔTVPと圧力変化速度ΔPとの関係(すなわち、判定基準曲線C)と比較する。
【0056】
具体的には、例えば、ECU30は、今回取得した温度変化速度ΔTVPに対応する判定基準曲線C上の圧力変化速度ΔPの値に対する、今回取得した圧力変化速度ΔPの差が所定の閾値以上であるか否かを判定する。そして、ECU30は、この差が閾値未満の場合には、冷媒の漏れは生じていないと判定し、当該差が閾値以上である場合には、冷媒の漏れが生じていると判定する。また、ECU30は、当該差が大きいほど、冷媒の漏れ量が多いと判定してもよい。
【0057】
付け加えると、判定基準曲線Cを特定するための温度変化速度ΔTVP及び圧力変化速度ΔPのデータが実機上で取得(学習)されてもよい。そのような学習は、例えば、ステップS110の判定結果が否定的となる場合(漏れなしの場合)に、ステップS200の処理のために取得した温度変化速度ΔTVP及び圧力変化速度ΔPのデータを記憶することによって行われてもよい。また、このような学習は、漏れ判定処理において気相側の過熱状態を形成した場合に限らず、電池パック1内の雰囲気温度及び気相温度TVPの変化が大きい条件(例えば、急速充電時)において取得した温度変化速度ΔTVP及び圧力変化速度ΔPのデータを記憶することによって行われてもよい。
【0058】
以上説明した実施の形態2に係る漏れ判定処理によれば、実施の形態1と同様に気相過熱状態を形成した後に、気相側が過熱状態となった後の所定期間における温度変化速度ΔTVP及び圧力変化速度ΔPを、初期封入時の冷媒封入量での温度変化速度ΔTVPと圧力変化速度ΔPとの関係(すなわち、判定基準曲線C)と比較することによって、冷媒の漏れが判定される。このような判定手法によれば、冷媒圧力センサ32の個体差によるばらつきが生じ得るセンサ値Pそのものではなく、圧力変化速度ΔP(すなわち、時間に対するセンサ値Pの変化量)と温度変化速度ΔTVPとの関係を利用して、漏れ判定が行われる。このため、実施の形態1に係る漏れ判定処理と比べてより正確な判定を行えるようになる。
【符号の説明】
【0059】
1 電池パック
2 電池スタック
10 電池冷却装置
12 電池冷却回路
14 冷却器
14a 冷却器の液体入口
14b 冷却器の蒸気出口
16 コンデンサ
16a コンデンサの蒸気入口
16b コンデンサの液体出口
18 蒸気通路
20 液体通路
22 熱伝導材
30 電子制御ユニット(ECU)
30a プロセッサ
32 冷媒圧力センサ
34 冷媒温度センサ
36 電池温度センサ
38 警告灯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7