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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019187
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】既存杭除去装置及び既存杭除去方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/00 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
E02D9/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122872
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】595155060
【氏名又は名称】株式会社ハンシン建設
(71)【出願人】
【識別番号】502120147
【氏名又は名称】株式会社キョウシン
(71)【出願人】
【識別番号】309017965
【氏名又は名称】朝日技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506227552
【氏名又は名称】株式会社進明技興
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 勝則
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050AA02
2D050DA03
2D050DB08
(57)【要約】
【課題】既存杭切断用の固定刃を有するケーシングを地中に挿入するときに固定刃の反対側で土砂圧が高まることを抑制する既存杭除去装置を提供する。
【解決手段】円筒状のケーシング2が、地中Gに埋設された既存杭10を偏心状態で内包するように揺動しつつ地中Gに掘削挿入される。ケーシング2の内周面2aの周方向Cの一部に、既存杭切断用の固定刃5が突設固定される。ケーシング2が、固定刃5の反対側で複数の第1貫通開口21が周方向Cに並んで形成された第1領域A1を含む。ケーシング2の揺動挿入時に、固定刃5の反対側で既存杭10の外周面とケーシング2の内周面2aとの間の楔状の部分K1に押し込まれる土砂が、第1貫通開口21を通してケーシング2外へ排出される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去するのに用いられる既存杭除去装置であって、
前記既存杭を偏心状態で内包するように地中に掘削挿入される円筒状のケーシングと、
前記ケーシングの下端から所定高さの位置で前記ケーシングの周方向の一部の内周面に突設固定された固定刃と、を備え、
前記ケーシングが、前記固定刃の反対側で複数の第1貫通開口が周方向に並んで形成された第1領域を含む、既存杭除去装置。
【請求項2】
前記ケーシングの高さ方向に関して、前記第1領域の高さ範囲が、前記固定刃の高さ範囲よりも大きくされている、請求項1に記載の既存杭除去装置。
【請求項3】
前記ケーシングの高さ方向に関して、前記第1領域の前記第1貫通開口の高さ位置が、前記固定刃の高さ位置に対してオフセットされている、請求項1又は2に記載の既存杭除去装置。
【請求項4】
前記第1領域では、高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口が形成され、
高さ方向に隣接する列の第1貫通開口どうしの周方向の位置が互いにずらされている、請求項1~3の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項5】
前記ケーシングが、前記固定刃の下方に少なくとも1つの第2貫通開口が形成された第2領域を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項6】
前記第2領域が占める周方向の角度範囲が、前記固定刃が占める周方向の角度範囲と同等又は同等以上の大きさにされている、請求項5に記載の既存杭除去装置。
【請求項7】
前記ケーシングが、前記第1領域と前記第2領域との間の一対の中間領域をそれぞれ含んで高さ方向の全域に延びる一対の開口非形成領域を含む、請求項5又は6に記載の既存杭除去装置。
【請求項8】
各前記開口非形成領域が占める周方向の角度範囲が、前記第2領域が占める周方向の角度範囲よりも大きくされている、請求項7に記載の既存杭除去装置。
【請求項9】
前記ケーシングが、前記固定刃の上方に開口非形成領域を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項10】
前記固定刃が、前記所定の高さの位置で前記ケーシングの内周面に設けられた単一の固定刃である、請求項1~9の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項11】
地中に埋設された既存杭を請求項1~10の何れか一項に記載の既存杭除去装置を用いて除去する既存杭除去方法であって、
前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入する工程と、
前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを当該ケーシングの中心軸線周りに回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、前記切断溝の位置で前記既存杭を切断する工程と、
前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す工程と、を含む、既存杭除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存杭除去装置及び既存杭除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下端に掘削用のカッタを有する円筒状のケーシングが地中に埋設された既存杭を内包するようにケーシングを回転させながら地中に挿入し、既存杭と地盤とを縁切りさせた後に、既存杭を引抜き等により除去する方法が知られている(例えば特許文献1を参照)。
特許文献1では、外周面に螺旋状のスクリューが設けられたケーシングを地中に挿入する際に、ケーシング内外の土砂による回転抵抗をバランスさせるために、前記スクリューが設けられていない箇所であるケーシングの高さ方向の中央部付近に穿設された孔を通して、ケーシングの内外間で土砂の移動を許容することが提案されている。
【0003】
一方、既存杭の全体を一度に除去するのは、困難である。そこで、既存杭を上端から所定長さの位置で切断して、既存杭を上側部分から徐々に除去することが行われている。
例えば特許文献2では、ケーシングの下端の少し上側の内周面に周方向に並んで設けられた複数の水平刃である固定刃を用いて既存杭が切断される。具体的には、まず、既存杭に対して偏心する状態のケーシングを固定刃が既存杭と干渉しない範囲の揺動角度で揺動回転させながら所定深さまで挿入する。所定深さまで挿入した段階で、ケーシングを全周回転させて固定刃によって既存杭を切断し、その後、既存杭の切断部分の上側部分を除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-322646号公報
【特許文献2】特開2003-293369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存杭に対して偏心する状態のケーシングを揺動回転させながら地中に挿入するときに、固定刃の反対側で既存杭の外周面とケーシングの内周面との間の楔状の部分に土砂が押し込まれることにより、固定刃の反対側で土砂圧が高まる。このため、ケーシングが揺動し難くなり、ケーシングの掘削挿入が困難になる。
本発明の目的は、既存杭切断用の固定刃を有するケーシングを地中に挿入するときに固定刃の反対側で土砂圧が高まることを抑制することができる既存杭除去装置及び既存杭除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、地中(G)に埋設された既存杭(10)を所定長さで切断して除去するのに用いられる既存杭除去装置(1)であって、前記既存杭を偏心状態で内包するように地中に掘削挿入される円筒状のケーシング(2)と、前記ケーシングの下端(2d)から所定高さの位置で前記ケーシングの周方向(C)の一部の内周面(2a)に突設固定された固定刃(5)と、を備え、前記ケーシングが、前記固定刃の反対側で複数の第1貫通開口(21)が周方向に並んで形成された第1領域(A1)を含む、既存杭除去装置を提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2のように、前記ケーシングの高さ方向(H)に関して、前記第1領域の高さ範囲(HA1)が、前記固定刃の高さ範囲(H5)よりも大きくされていてもよい(HA1>H5)。
【0008】
請求項3のように、前記ケーシングの高さ方向に関して、前記第1領域の前記第1貫通開口の高さ位置が、前記固定刃の高さ位置に対してオフセットされていてもよい。
請求項4のように、前記第1領域では、高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口が形成され、高さ方向に隣接する列の第1貫通開口どうしの周方向の位置が互いにずらされていてもよい。
【0009】
請求項5のように、前記ケーシングが、前記固定刃の下方に少なくとも1つの第2貫通開口(22)が形成された第2領域(A2)を含んでいてもよい。
請求項6のように、前記第2領域が占める周方向の角度範囲(CA2)が、前記固定刃が占める周方向の角度範囲(C5)と同等(CA2=C5)又は同等以上(CA2≧C5)の大きさにされていてもよい。
【0010】
請求項7のように、前記ケーシングが、前記第1領域と前記第2領域との間の一対の中間領域(MA)をそれぞれ含んで高さ方向(H)の全域に延びる一対の開口非形成領域(A3)を含んでいてもよい。
請求項8のように、各前記開口非形成領域が占める周方向の角度範囲(CA3)が、前記第2領域が占める周方向の角度範囲(CA2)よりも大きくされていてもよい(CA3>CA2)。
【0011】
請求項9のように、前記ケーシングが、前記固定刃の上方に開口非形成領域(A4)を含んでいてもよい。
請求項10のように、前記固定刃が、前記所定の高さの位置で前記ケーシングの内周面に設けられた単一の固定刃であってもよい。
請求項11に記載の発明は、地中に埋設された既存杭を請求項1~10の何れか一項に記載の既存杭除去装置を用いて除去する既存杭除去方法であって、前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入する工程と、
前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを当該ケーシングの中心軸線周りに回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、前記切断溝の位置で前記既存杭を切断する工程と、前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す工程と、を含む、既存杭除去方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明では、円筒状のケーシングが既存杭を偏心状態で内包するようにケーシングをその中心軸線周りに、固定刃が既存杭と干渉しない範囲の揺動角度で揺動させながら、地中に掘削挿入する。このとき、固定刃の反対側でケーシングの内周面と既存杭の外周面との間に、周方向に楔状に狭くなる部分が形成される。ケーシングの揺動挿入に伴って、固定刃の反対側で前記の楔状に狭くなる部分に土砂が押し込まれるが、押し込まれた土砂は、固定刃の反対側に配置された第1領域の第1貫通開口を通してケーシングの外周面側に排出される。したがって、固定刃の反対側でケーシング内の土砂圧が増大することを抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、ケーシングの高さ方向に関して、第1領域の高さ範囲が、固定刃の高さ範囲よりも大きくされる。このため、固定刃の反対側でケーシング内の土砂圧が増大することを確実に抑制することができる。
請求項3に記載の発明では、ケーシングの高さ方向に関して、第1領域の第1貫通開口の高さ位置が、固定刃の高さ位置に対してオフセットされる。このため、第1貫通開口と固定刃とが、ケーシングの同一高さの断面を避けて配置されることにより、ケーシングの強度を向上することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、第1領域において高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口が形成され、高さ方向に隣接する列の第1貫通開口どうしの周方向の位置が互いにずらされている。このため、揺動挿入されるケーシングが、上下方向の挿入力や周方向の剪断力に対して十分な強度を持つ。
請求項5に記載の発明では、ケーシングを揺動させながら地中に掘削挿入するに伴って、掘削による土砂が、ケーシングの下端からケーシング内に入って来る。このとき、固定刃の下方に少なくとも1つの第2貫通開口が形成された第2領域があるため、固定刃の下方に入って来る土砂が、第2貫通開口を通して、ケーシングの内側から外側へ排出される。このため、ケーシングの挿入時に、固定刃の下方に土砂が滞留することを抑制することができる。これにより、ケーシングを地中に挿入する際の土砂抵抗を低減することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、第2領域が占める周方向の角度範囲が、固定刃が占める周方向の角度範囲と同等又は同等以上の大きさにされる。このため、ケーシングを地中に挿入するときに、固定刃の下方に土砂が滞留することを確実に抑制することができる。
請求項7に記載の発明では、ケーシングが、第1領域と第2領域との間の一対の中間領域をそれぞれ含んで高さ方向の全域に延びる一対の開口非形成領域を含むので、ケーシングの強度が確保される。このため、ケーシングを地中に揺動挿入するときに、ケーシングに座屈や変形が発生することを未然に防止することができる。
【0016】
請求項8に記載の発明では、各開口非形成領域が占める周方向の角度範囲が、第2貫通開口が形成される第2領域が占める周方向の角度範囲よりも大きい。このため、ケーシングを地中に揺動挿入するときに、ケーシングの座屈や変形の発生を未然に防止することができる。
請求項9に記載の発明では、ケーシングを揺動挿入するときにケーシング内に入って来る土砂によって固定刃が土砂圧を受けても、固定刃の上方に開口非形成領域があるため、ケーシングの強度を確保することができる。
【0017】
請求項10に記載の発明では、固定刃が、所定の高さの位置でケーシングの内周面に設けられた単一の固定刃である。このため、構造を簡素化することができる。
請求項11に記載の発明では、請求項1~10の何れか一項に記載の既存杭除去装置を用いて、既存杭を偏心状態で内包するようにケーシングを揺動挿入した後、ケーシングの回転に伴ってケーシングの内周面に設けられた固定刃によって既存杭を切断する既存杭除去方法において、各請求項1~10と同じ効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る既存杭除去装置の概略縦断面図である。
図2図2は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、図1のII-II断面図に相当する。
図3図3は、固定刃の概略斜視図である。
図4図4は、ケーシングの内周面側から見た固定刃とその周辺の正面図である。
図5図5は、固定刃が設けられた高さ位置におけるケーシングの模式的横断面図である。
図6図6は、固定刃の中央位置を通過する縦方向の切断線で切り開かれたケーシングの模式的展開図である。
図7図7(a)~(f)は、既存杭除去装置を用いる既存杭除去方法の各工程を順序に示す工程図である。
図8図8は、既存杭除去装置の概略横断面図であり、固定刃による切断が完了した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る既存杭除去装置の概略縦断面図である。図1に示すように、既存杭除去装置1は、ケーシング2と、回転掘削装置3と、掘削刃4と、固定刃5と、吊上げ装置6とを備える。
ケーシング2は、上下に長い鋼製の円筒状部材である。ケーシング2は、内周面2aと外周面2bと、上端2cと、下端2dと、中心軸線2eと、第1貫通開口21と、第2貫通開口22とを含む。ケーシング2は、円柱状の既存杭10を偏心状態(すなわち、既存杭10の中心軸線10aがケーシング2の中心軸線2eに対して偏心する状態)で内包するように地中Gに押込み挿入される。
【0020】
回転掘削装置3は、ケーシング2の外周面2bをチャックする状態で、ケーシング2を中心軸線2e周りに回転推進させながら地中Gに掘削挿入する装置である。掘削刃4は、複数設けられている。複数の掘削刃4は、ケーシング2の下端2dに周方向Cに等間隔で固定配置されている。図示していない油圧装置などのアクチュエータ、例えば油圧シリンダの複動によりケーシング2に対して、地中Gへの押込み荷重が付与される。
【0021】
図2は、既存杭除去装置1の概略横断面図であり、図1のII-II断面図に相当する。
図2に示すように、既存杭10は、中心軸線10aを中心とする円周11a上に、周方向Cに等間隔で配置される複数の棒状の鉄筋11を埋設している。図示していないが、複数の鉄筋11を包囲する補強環が高さ方向に等間隔で配置されて複数の鉄筋11を溶接固定することにより、鉄筋かごが形成されている。固定刃5は、ケーシング2の内周面2aの周方向Cの一部に突出形成されている。
【0022】
図3は、固定刃5の概略斜視図である。図3に示すように、固定刃5は、固定刃本体50と、補強リブ51とを含む。固定刃本体50は、ケーシング2の中心軸線2eの方向に見たときに山形形状をなす水平板部である。固定刃本体50は、上面50aと、下面50bと、刃先面50cとを含む。
固定刃本体50の刃先面50cは、頂部52と、一対の斜面部53,54とを含む。刃先面50cの頂部52は、ケーシング2の径方向Rと直交する平坦面又は僅かな曲率を有する凹湾曲面(実質的に平坦面に相当)で形成されている。刃先面50cの一対の斜面部53,54は、頂部52を挟んだ両側に配置され、互いに逆向きに凹面状に傾斜する。
【0023】
補強リブ51は、固定刃本体50の上下に、すなわち上面50aと下面50bとに突出形成されている。補強リブ51は、固定刃本体50の頂部である刃先面50cの頂部52に向けて、ケーシング2の径方向Rに長尺に延びる矩形板である。補強リブ51によって、固定刃5の強度が向上される。また、補強リブ51がケーシング2に溶接固定されることで、ケーシング2の強度が向上される。
【0024】
補強リブ51は、固定刃本体50の頂部(刃先面50cの頂部52)に近接する近接端51aを含む。補強リブ51の近接端51aは、頂部52に向かって高さが低くなる先細り状部51bの先端で形成されている。頂部52と補強リブ51の近接端51aとは、所定距離Lで離隔している。このため、補強リブ51が、固定刃5の切断性能に影響を及ぼすことが抑制される。特に、補強リブ51の近接端51aが先細り状部51bの先端で形成されるため、補強リブ51が固定刃5の切断性能に影響を及ぼすことが一層抑制される。
【0025】
図4は、ケーシング2の内周面2a側から見た固定刃5とその周辺の正面図である。図4に示すように、ケーシング2は、固定刃5の下方に少なくとも1つの第2貫通開口22が形成された第2領域A2を含む。図4の場合、第2領域A2において、3つの第2貫通開口22が、周方向Cに並んで配置されている。
図5は、固定刃5が設けられた高さ位置におけるケーシング2の模式的横断面図である。図6は、固定刃5の中央位置を通過する縦方向の切断線で切り開かれたケーシング2の模式的展開図である。
【0026】
図1図2及び図6に示すように、ケーシング2は、固定刃5の反対側で複数の第1貫通開口21が周方向Cに並んで形成された第1領域A1を含む。
また、図6に示すように、ケーシング2は、貫通開口が形成されない領域として、第1領域A1と第2領域A2との間の一対の中間領域MAをそれぞれ含んで高さ方向Hの全域に延びる一対の開口非形成領域A3を含む。
【0027】
また、ケーシング2は、貫通開口が形成されない領域として、固定刃5の上方に開口非形成領域A4を含む。固定刃5の上方の開口非形成領域A4は、ケーシング2の上端2cから固定刃5に隣接する位置まで延びている。
図5に示すように、第2領域A2が占める周方向Cの角度範囲CA2が、固定刃5が占める周方向Cの角度範囲C5と同等(CA2=C5)又は同等以上(CA2≧C5)の大きさである。また、各開口非形成領域A3が占める周方向Cの角度範囲CA3が、固定刃5が占める周方向Cの角度範囲C5と同等(CA3=C5)又は実質的に同等(-5度≦(CA3-C5)≦5度)の大きさである。
【0028】
図6に示すように、第1領域A1では、高さ位置の異なる複数列(図6の場合、3列)の第1貫通開口21が形成されている。第1領域A1では、高さ方向Hに隣接する列の第1貫通開口21どうしの周方向Cの位置が互いにずらされている。すなわち、第1貫通開口21は、高さ方向Hに向かって周方向Cに千鳥状に配置されている。図5に示すように、第1領域A1が占める周方向Cの角度範囲CA1が、90度を超え且つ180度未満の角度範囲(90度<CA1<180度)に設定されている。
【0029】
図6に示すように、ケーシング2の高さ方向Hに関して、第1領域A1の第1貫通開口21の高さ位置が、固定刃5の高さ位置に対してオフセットされている。また、ケーシング2の高さ方向Hに関して、第1領域A1の高さ範囲HA1が、固定刃5の高さ範囲H5よりも大きくされている(HA1>H5)。
次いで、既存杭除去装置1を用いる既存杭除去方法を説明する。図7(a)~(f)は、既存杭除去方法の各工程を順序に示す工程図である。
【0030】
まず、図7(a)に示すように、地中Gに残存している既存杭10の上方に、回転掘削装置3を設置し、既存杭10に対して偏心した位置に(すなわち、既存杭10の中心軸線10aとケーシング2の中心軸線2eとがオフセットされるように)ケーシング2をセットする(セット工程)。このとき、既存杭10は、ケーシング2において固定刃5が設けられている側に対して反対側に偏心させて配置される。
【0031】
次いで、図7(b)に示すように、回転掘削装置3により、固定刃5が既存杭10に接触しない範囲でケーシング2を中心軸線2e周りに揺動させながら、図7(c)に示すように地中Gに所定深さまで掘削挿入する(挿入工程)。
ケーシング2が所定深さまで達した後、図7(d)及び(e)に示すように、回転掘削装置3によって、ケーシング2を揺動角度が次第に大きくなるように揺動させて最終的に全周回転させ、図8に示すように、固定刃5によって、既存杭10の外周面10bにC字形状の切断溝12を形成する(切断工程)。切断溝12の溝底12aは、ケーシング2の中心軸線2eを中心とする、固定刃5による切削円5Cに沿う。
【0032】
C字形状の切断溝12が形成される部分の鉄筋11が、ほぼ切断されて切断鉄筋11C(図中、白丸で示す)となり、残りの鉄筋11が、切断溝12の溝底12aのさらに奥にあって、図中、黒丸で示される残存鉄筋11Rとなる。
次いで、既存杭10の上端の外周面とケーシング2の内周面2aとの間に楔部材7(図7(f)を参照)を打ち込んで既存杭10の上端をケーシング2に固定した状態で、ケーシング2を全周回転させることにより、図8の残存鉄筋11Rをねじ切り、図7(f)に示すように、固定刃5よりも上方にある既存杭10の上側部分10Uを下側部分10Lから完全に破断させる(ねじ切り工程)。
【0033】
次いで、図示していないが、吊上げ装置6により、既存杭10の上側部分10Uを把持し、ケーシング2から地上に取り出して撤去する(取出し工程)。
本実施形態では、円筒状のケーシング2が既存杭10を偏心状態で内包するようにケーシング2をその中心軸線2e周りに固定刃5が既存杭10と干渉しない範囲の揺動角度で揺動させながら地中Gに掘削挿入する。ケーシング2を地中Gに揺動挿入するときに、ケーシング2に対して、固定刃5の反対側に既存杭10が偏心することになり、固定刃5の反対側でケーシング2の内周面2aと既存杭10の外周面10bとの間に、周方向Cに楔状に狭くなる部分K1(図2を参照)が形成される。
【0034】
ケーシング2の揺動挿入に伴って、ケーシング2内の土砂が、固定刃5の反対側で楔状に狭くなる部分K1に押し込まれるが、押し込まれた土砂は、固定刃5の反対側の第1領域A1の第1貫通開口21を通して、ケーシング2の外周面2b側に排出される。したがって、ケーシング2の揺動挿入時に、固定刃5の反対側でケーシング2内の土砂圧が増大することを抑制することができる。このため、ケーシング2の揺動挿入時に、揺動抵抗が増大することを抑制して、ケーシング2を地中に掘削挿入し易くすることができる。
【0035】
また、図6に示すように、ケーシング2の高さ方向Hに関して、第1領域A1の高さ範囲HA1が、固定刃5の高さ範囲H5よりも大きくされる(HA1>H5)。このため、固定刃5の反対側でケーシング2内の土砂圧が増大することを確実に抑制することができる。
また、ケーシング2の高さ方向Hに関して、第1領域A1の第1貫通開口21の高さ位置が、固定刃5の高さ位置に対してオフセットされる。このため、第1貫通開口21と固定刃5とが、ケーシング2の同一高さの断面を避けて配置されることにより、ケーシング2の強度を向上することができる。
【0036】
また、第1領域A1において高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口21が形成され、高さ方向Hに隣接する列の第1貫通開口21どうしの周方向Cの位置が互いにずらされている。このため、揺動挿入されるケーシング2が、上下方向の挿入力や周方向Cの剪断力に対して十分な強度を持つ。
また、ケーシング2を揺動させながら地中Gに掘削挿入するに伴って、掘削による土砂が、ケーシング2の下端2dからケーシング2内に入って来る。このとき、図1に示すように、固定刃5の下方に少なくとも1つの第2貫通開口22が形成された第2領域A2があるため、固定刃5の下方に入って来る土砂が、第2貫通開口22を通して、ケーシング2の内側から外側へ排出される。このため、ケーシング2の挿入時に、固定刃5の下方に土砂が滞留することを抑制することができる。これにより、ケーシング2を地中Gに挿入する際の土砂抵抗を低減することができる。
【0037】
また、図5に示すように、第2領域A2が占める周方向Cの角度範囲CA2が、固定刃5が占める周方向Cの角度範囲C5と同等又は同等以上の大きさにされる(CA2≧C5)。このため、ケーシング2を地中Gに挿入するときに、固定刃5の下方に土砂が滞留することを確実に抑制することができる。
また、図6に示すように、ケーシング2が、第2領域A2と第1領域A1との間の一対の中間領域MAをそれぞれ含んで高さ方向Hの全域に延びる一対の開口非形成領域A3を含むので、ケーシング2の強度が確保される。このため、ケーシング2を地中Gに揺動挿入するときに、ケーシング2に座屈や変形が発生することを未然に防止することができる。
【0038】
また、ケーシング2を揺動挿入するときにケーシング2内に入って来る土砂によって固定刃5が土砂圧を受けても、固定刃5の上方に開口非形成領域A4があるため、ケーシング2の強度を確保することができる。
また、固定刃5が、所定の高さの位置でケーシング2の内周面2aに設けられた単一の固定刃である。このため、構造を簡素化することができる。
【0039】
また、本実施形態の既存杭除去装置1を用いる既存杭除去方法では、既存杭除去装置1が奏する効果と同じ効果を奏することができる。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、各開口非形成領域A3が占める周方向Cの角度範囲CA3が、第2領域A2が占める周方向Cの角度範囲CA2よりも大きくされていてもよい(CA3>CA2)。この場合、ケーシング2の強度を高めることができ、ケーシング2を地中Gに揺動挿入するときに、ケーシング2の座屈や変形の発生を未然に防止することができる。ただし、この場合にも、第2領域A2が占める周方向Cの角度範囲CA2が、固定刃5が占める周方向Cの角度範囲C5と同等(CA2=C5)又は同等以上(CA2≧C5)の大きさであることが好ましい。
【0040】
また、図示していないが、固定刃5の上方に、貫通開口が形成されていてもよい。その場合、固定刃5の上方の開口非形成領域A4の高さ方向Hの範囲が狭くされる。
また、図示していないが、固定刃5の反対側の第1領域A1において、第1貫通開口21が、2列で設けられてもよいし、4列以上で設けられてもよい。
また、図示していないが、固定刃5の補強リブ51が一様な高さの矩形板であってもよい。また、固定刃5の固定刃本体50の上下の何れか一方のみに、補強リブ51が設けられてもよい。また、補強リブ51が無くてもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 既存杭除去装置
2 ケーシング
2a 内周面
2d 下端
2e 中心軸線
3 回転掘削装置
4 掘削刃
5 固定刃
6 吊り上げ装置
7 楔部材
10 既存杭
10a 中心軸線
10b 外周面
21 第1貫通開口
22 第2貫通開口
A1 第1領域
A2 第2領域
A3 開口非形成領域
A4 開口非形成領域
C 周方向
C5 (固定刃の)角度範囲
CA1 (第1領域の)角度範囲
CA2 (第2領域の)角度範囲
CA3 (開口非形成領域の)角度範囲
G 地中
H 高さ方向
H5 (固定刃の)高さ範囲
HA1 (第1領域の)高さ範囲
K1 楔状に狭くなる部分
MA 中間領域
R 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既存杭を所定長さで切断して除去するのに用いられる既存杭除去装置であって、
前記既存杭を偏心状態で内包するように地中に掘削挿入される円筒状のケーシングと、
前記ケーシングの下端から所定高さの位置で前記ケーシングの周方向の一部の内周面に突設固定された固定刃と、を備え、
前記ケーシングが、前記固定刃の反対側で複数の第1貫通開口が周方向に並んで形成された第1領域であって、前記ケーシングの高さ方向に関して前記固定刃の高さ範囲を包含する高さ範囲を有する第1領域を含み、
前記ケーシングに、前記ケーシングにおいて前記固定刃が取り付けられた固定刃取付部分であって前記周方向に幅を有する固定刃取付部分の前記周方向の幅の範囲内での下方に、少なくとも1つの第2貫通開口が形成されている、既存杭除去装置。
【請求項2】
前記ケーシングの高さ方向に関して、前記第1領域の前記第1貫通開口の高さ位置が、前記固定刃の高さ位置に対してオフセットされている、請求項1に記載の既存杭除去装置。
【請求項3】
前記第1領域では、高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口が形成され、
高さ方向に隣接する列の第1貫通開口どうしの周方向の位置が互いにずらされている、請求項1または2に記載の既存杭除去装置。
【請求項4】
前記ケーシングが、
前記ケーシングにおいて前記固定刃取付部分前記周方向の幅の範囲内での下方のケーシング部分であって前記固定刃取付部分と同じ周方向の幅を有し前記第2貫通開口が形成されたケーシング部分に対して前記周方向の一方および他方にそれぞれ隣接して形成され、前記第2貫通開口に対して前記周方向に並ぶ副第2貫通開口と、前記第2貫通開口と、を含んで形成された第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間の一対の中間領域をそれぞれ含んで高さ方向の全域に延びる一対の開口非形成領域と、さらにみ、
前記第2領域が占める周方向の角度範囲が、前記固定刃取付部分が占める周方向の角度範囲よりも大きくされている、請求項1~3の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項5】
各前記開口非形成領域が占める周方向の角度範囲CA3が、前記固定刃取付部分が占める周方向の角度範囲C5に対して、下記の関係式を満たすように設定されている、請求項4に記載の既存杭除去装置。
-5度≦(CA3-C5)≦5度
【請求項6】
各前記開口非形成領域が占める周方向の角度範囲が、前記第2領域が占める周方向の角度範囲よりも大きくされている、請求項に記載の既存杭除去装置。
【請求項7】
前記ケーシングが、前記固定刃取付部分前記周方向の幅の範囲内での上方に開口非形成領域を含む、請求項1~の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項8】
前記固定刃が、前記所定高さの位置で前記ケーシングの内周面に設けられた単一の固定刃である、請求項1~の何れか一項に記載の既存杭除去装置。
【請求項9】
地中に埋設された既存杭を請求項1~の何れか一項に記載の既存杭除去装置を用いて除去する既存杭除去方法であって、
前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入する工程と、
前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを当該ケーシングの中心軸線周りに回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、前記切断溝の位置で前記既存杭を切断する工程と、
前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す工程と、を含む、既存杭除去方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
請求項1に記載の発明は、地中(G)に埋設された既存杭(10)を所定長さで切断して除去するのに用いられる既存杭除去装置(1)であって、前記既存杭を偏心状態で内包するように地中に掘削挿入される円筒状のケーシング(2)と、前記ケーシングの下端(2d)から所定高さの位置で前記ケーシングの周方向(C)の一部の内周面(2a)に突設固定された固定刃(5)と、を備え、前記ケーシングが、前記固定刃の反対側で複数の第1貫通開口(21)が周方向に並んで形成された第1領域(A1)であって、前記ケーシングの高さ方向(H)に関して前記固定刃の高さ範囲(H5)を包含する高さ範囲(HA1)を有する第1領域を含み、前記ケーシングに、前記ケーシングにおいて前記固定刃が取り付けられた固定刃取付部分であって前記周方向に幅を有する固定刃取付部分の前記周方向の幅の範囲内での下方に、少なくとも1つの第2貫通開口が形成されている、既存杭除去装置を提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項のように、前記ケーシングの高さ方向に関して、前記第1領域の前記第1貫通開口の高さ位置が、前記固定刃の高さ位置に対してオフセットされていてもよい。
請求項のように、前記第1領域では、高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口が形成され、高さ方向に隣接する列の第1貫通開口どうしの周方向の位置が互いにずらされていてもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項のように、前記ケーシングが、前記ケーシングにおいて前記固定刃取付部分前記周方向の幅の範囲内での下方のケーシング部分であって前記固定刃取付部分と同じ周方向の幅を有し前記第2貫通開口が形成されたケーシング部分に対して前記周方向の一方および他方にそれぞれ隣接して形成され、前記第2貫通開口(22)に対して前記周方向に並ぶ副第2貫通開口と、前記第2貫通開口と、を含んで形成された第2領域(A2)と、前記第1領域と前記第2領域との間の一対の中間領域(MA)をそれぞれ含んで高さ方向(H)の全域に延びる一対の開口非形成領域(A3)と、さらにみ、前記第2領域が占める周方向の角度範囲(CA2)が、前記固定刃取付部分が占める周方向の角度範囲(C5)よりも大きくされていてもよい。
請求項のように、各前記開口非形成領域が占める周方向の角度範囲CA3が、前記固定刃取付部分が占める周方向の角度範囲C5に対して、下記の関係式を満たすように設定されていてもよい。
-5度≦(CA3-C5)≦5度
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
求項のように、各前記開口非形成領域が占める周方向の角度範囲(CA3)が、前記第2領域が占める周方向の角度範囲(CA2)よりも大きくされていてもよい(CA3>CA2)。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項のように、前記ケーシングが、前記固定刃取付部分前記周方向の幅の範囲内での上方に開口非形成領域(A4)を含んでいてもよい。
請求項のように、前記固定刃が、前記所定高さの位置で前記ケーシングの内周面に設けられた単一の固定刃であってもよい。
請求項に記載の発明は、地中に埋設された既存杭を請求項1~の何れか一項に記載の既存杭除去装置を用いて除去する既存杭除去方法であって、前記既存杭を偏心状態で内包するように前記ケーシングを揺動させながら所定深さまで地中に挿入する工程と、前記所定深さまで挿入された前記ケーシングを当該ケーシングの中心軸線周りに回転することにより前記固定刃によって前記既存杭の外周面に切断溝を形成し、前記切断溝の位置で前記既存杭を切断する工程と、前記既存杭の切断部分の上側部分を前記ケーシングから取り出す工程と、を含む、既存杭除去方法を提供する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項1に記載の発明では、円筒状のケーシングが既存杭を偏心状態で内包するようにケーシングをその中心軸線周りに、固定刃が既存杭と干渉しない範囲の揺動角度で揺動させながら、地中に掘削挿入する。このとき、固定刃の反対側でケーシングの内周面と既存杭の外周面との間に、周方向に楔状に狭くなる部分が形成される。ケーシングの揺動挿入に伴って、固定刃の反対側で前記の楔状に狭くなる部分に土砂が押し込まれるが、押し込まれた土砂は、固定刃の反対側に配置された第1領域の第1貫通開口を通してケーシングの外周面側に排出される。したがって、固定刃の反対側でケーシング内の土砂圧が増大することを抑制することができる。
また、ケーシングを揺動させながら地中に掘削挿入するに伴って、掘削による土砂が、ケーシングの下端からケーシング内に入って来る。このとき、ケーシングに、固定刃取付部分の周方向の幅の範囲内での下方に少なくとも1つの第2貫通開口が形成されているため、固定刃の下方に入って来る土砂が、第2貫通開口を通して、ケーシングの内側から外側へ排出される。このため、ケーシングの挿入時に、固定刃の下方に土砂が滞留することを抑制することができる。これにより、ケーシングを地中に挿入する際の土砂抵抗を低減することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
求項に記載の発明では、ケーシングの高さ方向に関して、第1領域の第1貫通開口の高さ位置が、固定刃の高さ位置に対してオフセットされる。このため、第1貫通開口と固定刃とが、ケーシングの同一高さの断面を避けて配置されることにより、ケーシングの強度を向上することができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項に記載の発明では、第1領域において高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口が形成され、高さ方向に隣接する列の第1貫通開口どうしの周方向の位置が互いにずらされている。このため、揺動挿入されるケーシングが、上下方向の挿入力や周方向の剪断力に対して十分な強度を持つ。
請求項に記載の発明では、ケーシングを揺動させながら地中に掘削挿入するに伴って、掘削による土砂が、ケーシングの下端からケーシング内に入って来る。このとき、固定刃取付部分の周方向の幅の範囲内での下方のケーシング部分に形成された少なくとも1つの第2貫通開口と、前記ケーシング部分の周方向の一方および他方にそれぞれ隣接して形成され前記第2貫通開口に対して周方向に並ぶ副第2貫通開口と、を含む第2領域があるため、固定刃の下方に入って来る土砂が、第2貫通開口および副第2貫通開口を通して、ケーシングの内側から外側へ排出される。このため、ケーシングの挿入時に、固定刃の下方に土砂が滞留することを抑制することができる。これにより、ケーシングを地中に挿入する際の土砂抵抗を低減することができる。また、ケーシングが、第1領域と第2領域との間の一対の中間領域をそれぞれ含んで高さ方向の全域に延びる一対の開口非形成領域を含むので、ケーシングの強度が確保される。このため、ケーシングを地中に揺動挿入するときに、ケーシングに座屈や変形が発生することを未然に防止することができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項に記載の発明では、各開口非形成領域が占める周方向の角度範囲が、第2貫通開口が形成される第2領域が占める周方向の角度範囲よりも大きい。このため、ケーシングを地中に揺動挿入するときに、ケーシングの座屈や変形の発生を未然に防止することができる。
請求項に記載の発明では、ケーシングを揺動挿入するときにケーシング内に入って来る土砂によって固定刃が土砂圧を受けても、固定刃取付部分の周方向の幅の範囲内での上方に開口非形成領域があるため、ケーシングの強度を確保することができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項に記載の発明では、固定刃が、所定高さの位置でケーシングの内周面に設けられた単一の固定刃である。このため、構造を簡素化することができる。
請求項に記載の発明では、請求項1~の何れか一項に記載の既存杭除去装置を用いて、既存杭を偏心状態で内包するようにケーシングを揺動挿入した後、ケーシングの回転に伴ってケーシングの内周面に設けられた固定刃によって既存杭を切断する既存杭除去方法において、各請求項1~と同じ効果を奏することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
図4は、ケーシング2の内周面2a側から見た固定刃5とその周辺の正面図である。図4に示すように、ケーシング2は、固定刃5が取り付けられた固定刃取付部分であって周方向Cに幅を有する固定刃取付部分の下方に少なくとも1つの第2貫通開口22が形成されている。また、ケーシング2には、前記固定刃取付部分の周方向Cの幅の範囲内での下方のケーシング部分であって前記固定刃取付部分と同じ周方向Cの幅を有するケーシング部分(第2貫通開口22が形成されたケーシング部分)に対して周方向Cの一方および他方にそれぞれ隣接して、副第2貫通開口(図4において両側の貫通開口22が副第2貫通開口に相当)が形成されている。副第2貫通開口は、第2貫通開口22に対して周方向Cに並ぶ。ケーシング2は、第2貫通開口22と副第2貫通開口とを含んで形成された第2領域A2を含む。図4の場合、第2領域A2において、つの第2貫通開口22と2つの副第2貫通開口が、周方向Cに並んで配置されている。
図5は、固定刃5が設けられた高さ位置におけるケーシング2の模式的横断面図である。図6は、固定刃5の中央位置を通過する縦方向の切断線で切り開かれたケーシング2の模式的展開図である。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
また、ケーシング2は、貫通開口が形成されない領域として、固定刃5が取り付けられた固定刃取付部分の上方に開口非形成領域A4を含む。固定刃5が取り付けられた固定刃取付部分の上方の開口非形成領域A4は、ケーシング2の上端2cから固定刃5に隣接する位置まで延びている。
図5に示すように、第2領域A2が占める周方向Cの角度範囲CA2が、固定刃5が取り付けられた固定刃取付部分が占める周方向Cの角度範囲C5よりも大きくされている(CA2>C5)。また、各開口非形成領域A3が占める周方向Cの角度範囲CA3が、固定刃5が占める周方向Cの角度範囲C5と同等(CA3=C5)又は実質的に同等(-5度≦(CA3-C5)≦5度)の大きさである。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
また、図6に示すように、ケーシング2の高さ方向Hに関して、第1領域A1の高さ範囲HA1が、固定刃5の高さ範囲H5を包含する(HA1>H5)。このため、固定刃5の反対側でケーシング2内の土砂圧が増大することを確実に抑制することができる。
また、ケーシング2の高さ方向Hに関して、第1領域A1の第1貫通開口21の高さ位置が、固定刃5の高さ位置に対してオフセットされる。このため、第1貫通開口21と固定刃5とが、ケーシング2の同一高さの断面を避けて配置されることにより、ケーシング2の強度を向上することができる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
また、第1領域A1において高さ位置の異なる複数列の第1貫通開口21が形成され、高さ方向Hに隣接する列の第1貫通開口21どうしの周方向Cの位置が互いにずらされている。このため、揺動挿入されるケーシング2が、上下方向の挿入力や周方向Cの剪断力に対して十分な強度を持つ。
また、ケーシング2を揺動させながら地中Gに掘削挿入するに伴って、掘削による土砂が、ケーシング2の下端2dからケーシング2内に入って来る。このとき、図1に示すように、固定刃5が取り付けられた固定刃取付部分の下方に少なくとも1つの第2貫通開口22が形成されているため、固定刃5の下方に入って来る土砂が、第2貫通開口22を通して、ケーシング2の内側から外側へ排出される。このため、ケーシング2の挿入時に、固定刃5の下方に土砂が滞留することを抑制することができる。これにより、ケーシング2を地中Gに挿入する際の土砂抵抗を低減することができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
また、図5に示すように、第2貫通開口22および副第2貫通開口を含む第2領域A2が占める周方向Cの角度範囲CA2が、固定刃5が取り付けられた固定刃取付部分の占める周方向Cの角度範囲C5よりも大きされる(CA2>C5)。このため、ケーシング2を地中Gに挿入するときに、固定刃5の下方に土砂が滞留することを確実に抑制することができる。
また、図6に示すように、ケーシング2が、第2領域A2と第1領域A1との間の一対の中間領域MAをそれぞれ含んで高さ方向Hの全域に延びる一対の開口非形成領域A3を含むので、ケーシング2の強度が確保される。このため、ケーシング2を地中Gに揺動挿入するときに、ケーシング2に座屈や変形が発生することを未然に防止することができる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
また、ケーシング2を揺動挿入するときにケーシング2内に入って来る土砂によって固定刃5が土砂圧を受けても、固定刃5が取り付けられた固定刃取付部分の上方に開口非形成領域A4があるため、ケーシング2の強度を確保することができる。
また、固定刃5が、所定高さの位置でケーシング2の内周面2aに設けられた単一の固定刃である。このため、構造を簡素化することができる。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
また、本実施形態の既存杭除去装置1を用いる既存杭除去方法では、既存杭除去装置1が奏する効果と同じ効果を奏することができる。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、各開口非形成領域A3が占める周方向Cの角度範囲CA3が、第2領域A2が占める周方向Cの角度範囲CA2よりも大きくされていてもよい(CA3>CA2)。この場合、ケーシング2の強度を高めることができ、ケーシング2を地中Gに揺動挿入するときに、ケーシング2の座屈や変形の発生を未然に防止することができる