(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191870
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】炭化水素製造装置および炭化水素製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20221221BHJP
C01B 32/40 20170101ALI20221221BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20221221BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20221221BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20221221BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20221221BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20221221BHJP
C07C 9/14 20060101ALI20221221BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20221221BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20221221BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C10G2/00
C01B32/40
C01B3/02 H
C07C1/04
C07C1/12
C07C9/02
C07C9/04
C07C9/14
C07C31/04
B01D53/047
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100351
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅一
【テーマコード(参考)】
4D006
4D012
4G146
4H006
4H129
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MC02
4D006MC05
4D006MC58
4D006PA01
4D006PB20
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB67
4D006PB68
4D006PC80
4D012CA20
4D012CD07
4D012CH08
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC02
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB84
4H006AC29
4H006BD33
4H006BD52
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
4H006FE11
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC43
4H129BC45
4H129KA15
4H129KB03
4H129KD18Y
4H129KD19Y
4H129KD22Y
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】炭化水素の製造効率の向上を図る。
【解決手段】炭化水素製造装置1は、二酸化炭素および水素を用いて一酸化炭素および水素を含む合成ガスを得る逆シフト反応部2と、合成ガスを用いて炭化水素を製造する炭化水素製造部4と、炭化水素製造部4からの流出物から、水素、二酸化炭素および炭素数4以下の軽質炭化水素を含む気体成分と、炭素数5以上の炭化水素を含む液体成分と、を分離する気液分離部6と、気体成分から水素および二酸化炭素と、軽質炭化水素と、を分離する第1分離部10と、第1分離部10が分離した軽質炭化水素を用いて水素および一酸化炭素を生成する接触反応部8とを備える。逆シフト反応部2は、第1分離部10が分離した水素および二酸化炭素も合成ガスの生成に用いる。炭化水素製造部4は、接触反応部8が生成した水素および一酸化炭素も炭化水素の製造に用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスとしての二酸化炭素および水素を用いて、逆シフト反応によって二酸化炭素を一酸化炭素に還元し、一酸化炭素および水素を含む合成ガスを得る逆シフト反応部と、
前記合成ガスを用いて炭化水素を製造する炭化水素製造部と、
前記炭化水素製造部からの流出物から、水素、二酸化炭素および炭素数4以下の軽質炭化水素を含む気体成分と、炭素数5以上の炭化水素を含む液体成分と、を分離する気液分離部と、
前記気体成分から、水素および二酸化炭素と、軽質炭化水素と、を分離する第1分離部と、
前記第1分離部が分離した軽質炭化水素の供給を受けて、当該軽質炭化水素を用いて水素および一酸化炭素を生成する接触反応部と、を備え、
前記逆シフト反応部は、前記第1分離部が分離した水素および二酸化炭素の供給を受けて、当該水素および二酸化炭素も前記合成ガスの生成に用い、
前記炭化水素製造部は、前記接触反応部が生成した水素および一酸化炭素の供給を受けて、当該水素および一酸化炭素も前記炭化水素の製造に用いる、
炭化水素製造装置。
【請求項2】
前記液体成分は、炭素数5以上の炭化水素を含む油性成分と、水を含む水性成分とを含み、
前記接触反応部は、改質反応により前記軽質炭化水素から水素および一酸化炭素を生成し、
前記炭化水素製造装置は、前記液体成分から水性成分を分離する第2分離部を備え、
前記接触反応部は、前記第2分離部が分離した水性成分の供給を受けて、当該水性成分も水素および一酸化炭素の生成に用いる、
請求項1に記載の炭化水素製造装置。
【請求項3】
前記水性成分は、水に溶解する親水性の含酸素炭化水素も含み、
前記炭化水素製造装置は、前記水性成分から少なくとも一部の水を分離する第3分離部を備え、
前記接触反応部は、前記第3分離部により水が分離された水性成分の供給を受けて、当該水性成分を水素および一酸化炭素の生成に用いる、
請求項2に記載の炭化水素製造装置。
【請求項4】
前記接触反応部は、第1温度での改質反応により前記軽質炭化水素からメタンを生成し、前記第1温度よりも高い第2温度での改質反応により前記メタンから一酸化炭素および水素を生成する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炭化水素製造装置。
【請求項5】
原料ガスとしての二酸化炭素および水素を用いて、逆シフト反応によって二酸化炭素を一酸化炭素に還元し、一酸化炭素および水素を含む合成ガスを得る逆シフト反応工程と、
前記合成ガスを用いて炭化水素を製造する炭化水素製造工程と、
前記炭化水素製造工程からの流出物から、水素、二酸化炭素および炭素数4以下の軽質炭化水素を含む気体成分と、炭素数5以上の炭化水素を含む液体成分と、を分離する気液分離工程と、
前記気体成分から、水素および二酸化炭素と、軽質炭化水素と、を分離する第1分離工程と、
前記第1分離工程で分離した軽質炭化水素の供給を受けて、当該軽質炭化水素を用いて水素および一酸化炭素を生成する接触反応工程と、を含み、
前記逆シフト反応工程では、前記第1分離工程で分離した水素および二酸化炭素の供給を受けて、当該水素および二酸化炭素も前記合成ガスの生成に用い、
前記炭化水素製造工程では、前記接触反応工程で生成した水素および一酸化炭素の供給を受けて、当該水素および一酸化炭素も前記炭化水素の製造に用いる、
炭化水素製造方法。
【請求項6】
前記液体成分は、炭素数5以上の炭化水素を含む油性成分と、水を含む水性成分とを含み、
前記接触反応工程では、改質反応により前記軽質炭化水素から水素および一酸化炭素を生成し、
前記炭化水素製造方法は、前記液体成分から水性成分を分離する第2分離工程を含み、
前記接触反応工程では、前記第2分離工程で分離した水性成分の供給を受けて、当該水性成分も水素および一酸化炭素の生成に用いる、
請求項5に記載の炭化水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素製造装置および炭化水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GTL(Gas to Liquid)による液体燃料の製造技術が知られている(特許文献1参照)。この製造技術は一例として、天然ガスから水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを得る工程と、この合成ガスを原料としてフィッシャー・トロプシュ反応(以下では適宜「FT反応」という)によりエネルギー密度の高い液状の炭化水素を製造する工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、様々な経済活動で発生する二酸化炭素の削減が大きな課題の一つとなっている。排ガス等に含まれる二酸化炭素を上述した炭化水素の製造に利用すれば、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献できる。本発明者らは、このような観点から炭化水素の製造技術について鋭意検討を重ねた結果、炭化水素の製造効率の向上を図る技術に想到した。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、炭化水素の製造効率の向上を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、炭化水素製造装置である。この装置は、原料ガスとしての二酸化炭素および水素を用いて、逆シフト反応によって二酸化炭素を一酸化炭素に還元し、一酸化炭素および水素を含む合成ガスを得る逆シフト反応部と、合成ガスを用いて炭化水素を製造する炭化水素製造部と、炭化水素製造部からの流出物から、水素、二酸化炭素および炭素数4以下の軽質炭化水素を含む気体成分と、炭素数5以上の炭化水素を含む液体成分と、を分離する気液分離部と、気体成分から、水素および二酸化炭素と、軽質炭化水素と、を分離する第1分離部と、第1分離部が分離した軽質炭化水素の供給を受けて、当該軽質炭化水素を用いて水素および一酸化炭素を生成する接触反応部と、を備える。逆シフト反応部は、第1分離部が分離した水素および二酸化炭素の供給を受けて、当該水素および二酸化炭素も合成ガスの生成に用いる。炭化水素製造部は、接触反応部が生成した水素および一酸化炭素の供給を受けて、当該水素および一酸化炭素も炭化水素の製造に用いる。
【0007】
本発明の他の態様は、炭化水素製造方法である。この方法は、原料ガスとしての二酸化炭素および水素を用いて、逆シフト反応によって二酸化炭素を一酸化炭素に還元し、一酸化炭素および水素を含む合成ガスを得る逆シフト反応工程と、合成ガスを用いて炭化水素を製造する炭化水素製造工程と、炭化水素製造工程からの流出物から、水素、二酸化炭素および炭素数4以下の軽質炭化水素を含む気体成分と、炭素数5以上の炭化水素を含む液体成分と、を分離する気液分離工程と、気体成分から、水素および二酸化炭素と、軽質炭化水素と、を分離する第1分離工程と、第1分離工程で分離した軽質炭化水素の供給を受けて、当該軽質炭化水素を用いて水素および一酸化炭素を生成する接触反応工程と、を含む。逆シフト反応工程では、第1分離工程で分離した水素および二酸化炭素の供給を受けて、当該水素および二酸化炭素も合成ガスの生成に用いる。炭化水素製造工程では、接触反応工程で生成した水素および一酸化炭素の供給を受けて、当該水素および一酸化炭素も炭化水素の製造に用いる。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、炭化水素の製造効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る炭化水素製造装置の模式図である。
【
図2】比較例に係る炭化水素製造装置の模式図である。
【
図3】試験例1に係る炭化水素製造装置の模式図である。
【
図4】試験例2に係る炭化水素製造装置の模式図である。
【
図5】試験例3に係る炭化水素製造装置の模式図である。
【
図6】試験例4に係る炭化水素製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。したがって、実施の形態の内容は、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。実施の形態に記述される構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、この用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る炭化水素製造装置1の模式図である。炭化水素製造装置1は、逆シフト反応部2と、炭化水素製造部4と、気液分離部6と、接触反応部8と、第1分離部10と、第2分離部12と、第3分離部14と、第4分離部16と、第5分離部18とを備える。
【0013】
逆シフト反応部2は、炭化水素製造部4よりも上流側に配置される。逆シフト反応部2と炭化水素製造部4との間には、第4分離部16が配置される。炭化水素製造部4の下流側には、気液分離部6が配置される。気液分離部6と逆シフト反応部2および接触反応部8との間には、第1分離部10が配置される。また、気液分離部6と接触反応部8との間には、第1分離部10と並列に第2分離部12が配置される。第2分離部12と接触反応部8との間には、第3分離部14が配置される。接触反応部8と炭化水素製造部4との間には、第5分離部18が配置される。
【0014】
逆シフト反応部2は、原料ガスとしての二酸化炭素および水素の供給を受ける。そして、二酸化炭素および水素を用いて、逆シフト反応によって二酸化炭素を一酸化炭素に還元し、一酸化炭素および未反応の水素を含む合成ガスを得る。
【0015】
本実施の形態の逆シフト反応部2は、一例として水電解モジュール20から水素の供給を受ける。
図1では、水電解モジュール20が炭化水素製造装置1に対し外部機器として図示されているが、水電解モジュール20は炭化水素製造装置1の内部に組み込まれていてもよい。
【0016】
水電解モジュール20は、水の電気分解によって水素および酸素を発生する電解槽である。一例として水電解モジュール20は、イリジウムや白金等の触媒を有する酸素発生用電極と、白金等の触媒を有する水素発生用電極とが、プロトン伝導性を有する隔膜によって隔てられた構造を有する。つまり、水電解モジュール20は、固体高分子形水電解モジュールである。なお、水電解モジュール20の他の例としては、アルカリ形水電解モジュールや固体酸化物形水電解モジュールなどが挙げられる。固体高分子形水電解モジュールにおける水の電解時の反応は以下の式(1)および式(2)の通りである。
酸素発生電極で起こる反応:2H2O→O2+4H++4e- (1)
水素発生電極で起こる反応:4H++4e-→2H2 (2)
【0017】
水電解モジュール20は、図示しない電力供給装置から水電解に必要な電力の供給を受ける。電力供給装置としては、再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置、例えば風力発電装置や太陽光発電装置等が例示される。これにより、水素の生成、ひいては目的物である炭素数5以上の炭化水素(以下では適宜「C5+成分」という)の製造に伴う二酸化炭素の排出量を低減できる。なお、電力供給装置は、再生可能エネルギーを利用する発電装置に限定されず、系統電源であってもよいし、再生可能エネルギー発電装置や系統電源からの電力を蓄えた蓄電装置等であってもよい。また、これらの2つ以上の組み合わせであってもよい。ただし、カーボンニュートラルの実現に貢献する上では、電力供給装置は、再生可能エネルギーを利用する発電装置であることが好ましい。また、電力供給装置として系統電源や蓄電装置等を用いる場合には、それらの発電や蓄電に伴う二酸化炭素の排出量が再生可能エネルギーを利用する発電装置における排出量以下であることが好ましい。
【0018】
また、本実施の形態の逆シフト反応部2は、一例として二酸化炭素回収部22から二酸化炭素の供給を受ける。
図1では、二酸化炭素回収部22が炭化水素製造装置1に対し外部機器として図示されているが、二酸化炭素回収部22は炭化水素製造装置1の内部に組み込まれていてもよい。なお、炭化水素製造装置1は、全体が1つの反応器であることを意味するものではない。
【0019】
二酸化炭素回収部22は、例えば大気中から直接空気回収(DAC)等によって二酸化炭素を回収することができる。また、二酸化炭素回収部22は、火力発電や化学プラント等から排出された排気ガス中から化学吸着法等によって二酸化炭素を分離回収することができる。逆シフト反応部2が二酸化炭素回収部22から二酸化炭素の供給を受けることで、大気中や排気ガス中の二酸化炭素の削減が期待できる。また、C5+成分の製造に伴う化石燃料の消費を低減できる。
【0020】
逆シフト反応部2では、以下の式(3)に示す逆シフト反応が起こり、二酸化炭素が一酸化炭素に還元される。これにより、一酸化炭素と、未反応の水素とを少なくとも含む合成ガスが得られる。なお、合成ガスには、逆シフト反応で生成される水も含まれる。また、合成ガスには未反応の二酸化炭素も含まれ得る。
H2+CO2→CO+H2O (3)
【0021】
逆シフト反応部2における反応温度は、例えば290℃以上1100℃以下であり、好ましくは700℃以上1100℃以下であり、さらに好ましくは700℃以上950℃以下である。式(3)の逆反応は、水性ガスシフト反応と呼ばれる。逆シフト反応の触媒には、水性ガスシフト反応用の触媒が用いられることがある。しかしながら、700℃以上の反応温度は、一般的な水性ガスシフト反応における温度よりも遥かに高温である。このため、反応温度を700℃以上の高温に設定する場合、一般的な水性ガスシフト触媒は使用に適さない。
【0022】
これに対し、本実施の形態の逆シフト反応部2は、逆シフト触媒としてペロブスカイト構造ABO3を有する複合酸化物を含む。ペロブスカイト構造ABO3において、Aは、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)からなる群から選択されるアルカリ土類金属であり、好ましくはバリウムである。Bは、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)からなる群から選択される金属であり、好ましくはジルコニウムである。Bがチタンやジルコニウムである場合、その一部がマンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)で置換されていてもよく、好ましくは一部がマンガンで置換される。また、逆シフト触媒は、炭化水素の炭素原子間の結合を切断する酸点がなく、また水素の水素原子間の結合を切断する水素解離能を有しないことが好ましい。この特徴を有する逆シフト触媒は、例えばイソブテンと水素からなる混合ガスを用いた触媒反応で、二量化反応による炭素数8の炭化水素と、水素化反応によるイソブタンとが生成しないことを確認することでスクリーニングすることができる。このような逆シフト触媒を用いることで、700℃以上の高温によりメタネーション等の副反応を抑えながら、逆シフト反応を実現することができる。
【0023】
原子吸光分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計等を用いて、逆シフト反応の原料ガスに金属成分が含まれていないか計測することが好ましい。また、一酸化炭素が流れるリサイクルライン上には、浸炭により生じる炭化金属の微粉末を除去できるフィルターと、金属カルボニルを除去できる吸着剤とを設置することが好ましい。当該フィルターはセラミック製であることが好ましく、当該吸着剤はY型ゼオライトであることが好ましい。
【0024】
逆シフト反応で得た合成ガスを炭化水素の製造に用いる際、合成ガス中の二酸化炭素濃度を低減させるために、逆シフト反応部2と炭化水素製造部4との間に二酸化炭素除去装置を設置することがある。上記の逆シフト触媒を採用して高温の逆シフト反応を行うことで、逆シフト反応部2の出口におけるCO/(CO+CO2)比を向上させることができる。CO/(CO+CO2)比は、逆シフト反応部2の出口における一酸化炭素濃度および二酸化炭素濃度から算出される値である。すなわち、原料の二酸化炭素が一酸化炭素に転換(還元)された割合である。よって、逆シフト反応部2の出口における二酸化炭素濃度を低減できる。これにより、炭化水素製造部4における一酸化炭素と水素からなる合成ガスの分圧を上げて、一酸化炭素転化率とC5+成分の選択率とを向上させることができる。また、二酸化炭素除去装置に必要な熱エネルギーは、発熱反応であるFT反応を用いる炭化水素製造部4から供給することができる。これにより、炭化水素製造に必要なエネルギーを削減でき、目的物であるC5+成分の製造効率を向上させることができる。
【0025】
また、700℃以上の高温で逆シフト反応を行うことで、含酸素炭化水素等の生成を抑制することができる。これにより、含酸素系不純物が副生水中に含まれることを抑制できる。このため、逆シフト反応部2の下流に位置する第4分離部16で分離した水に精製処理(含酸素系不純物の除去)を施すことなく、水電解モジュール20へのリサイクルが可能となる。なお、高温の逆シフト反応を行わない場合は、第4分離部16で分離した水を後述する第3分離部14に供給することで、水の精製処理を施すことができる。
【0026】
また、上述の逆シフト触媒の採用により、従来のNi触媒等に比べて、二酸化炭素からメタンが生成されるメタネーション反応を抑制しやすくすることができる。これによってもCO/(CO+CO2)比を向上させることができる。CO/(CO+CO2)比を向上させることで、炭化水素製造部4での液体成分の収率を高めることができる。
【0027】
本実施の形態では、後述するように炭化水素製造部4のオフガスをリサイクルすることでC5+成分の製造効率の向上を図っているが、このリサイクルにもエネルギーが必要である。CO/(CO+CO2)比の向上により液体成分の収率が高まることで、オフガスのリサイクル量を抑えることができる。したがって、リサイクルに必要な補機動力、オフガスの分離に必要なエネルギー、リサイクル先での接触反応に必要な熱量等を低減することができる。これにより、C5+成分の製造工程全体として製造効率の向上が期待できる。
【0028】
逆シフト反応部2から流出する合成ガスは、第4分離部16に送られる。第4分離部16は、公知の気液分離器で構成することができ、合成ガスから水を分離する。第4分離部16で分離された水は、水電解モジュール20に供給されて水素の生成に用いられる。また、第4分離部16で分離された水は、接触反応部8に供給されて接触反応部8での接触反応に用いられる。これにより、C5+成分の製造効率の向上を図ることができる。なお、合成ガスから分離した水のリサイクルは、水電解モジュール20および接触反応部8の一方のみに対して行われてもよいし、両方に対して行われなくてもよい。
【0029】
第4分離部16で水が分離された合成ガスは、炭化水素製造部4に送られる。炭化水素製造部4は、供給された合成ガスを用いて、目的物であるC5+成分を製造する。C5+成分は、例えばノルマルパラフィンである。本実施の形態の炭化水素製造部4は、公知のFT反応器で構成される。FT反応器としては、管状固定床反応器、スラリー床反応器などを用いることができる。炭化水素製造部4では後述の式(4)に示すFT反応が起こり、炭素-炭素連鎖成長によってC5+成分が生成される。FT反応用の触媒としては、コバルト触媒、沈殿鉄触媒、ルテニウム触媒などを用いることができる。
【0030】
炭素数nの反応中間体が炭素-炭素連鎖成長により炭素数n+1の反応中間体へと重質化する割合は、連鎖成長確率αで表される。αは触媒の種類、反応条件によっても異なり、好ましくは0.75~0.95であり、より好ましくは0.85~0.95である。式(4)において、例えばαが0.95であるとき、0.1モル%以上含まれるC5+成分のnは5~60の整数である。また、炭化水素製造部4では、メタン、エタン、プロパン、ブタンといった炭素数4以下の常温常圧でガス状の軽質炭化水素(以下では適宜「C4-成分」という)も副生される。
nCO+(2n+1)H2→CnH2n+2+nH2O (4)
【0031】
炭化水素製造部4からの流出物は、気液分離部6に送られる。この流出物には、C5+成分やC4-成分だけでなく、他の副生物である水および含酸素炭化水素(CnHmOなど)、ならびに未反応の水素、一酸化炭素および二酸化炭素等が含まれ得る。含酸素炭化水素は、酸素を含む炭化水素化合物であり、親水性で水に容易に溶解する。含酸素炭化水素の例としては、アルコール、カルボン酸、エステル、エーテル、ケトン等が挙げられる。気液分離部6は、公知の気液分離器で構成することができ、流出物から液体成分と気体成分とを分離する。気液分離は、高温と低温の2段で行うことが好ましい。これにより、重質炭化水素による気液分離部6の閉塞を防ぐことができる。例えば、高温の気液分離は80℃、低温の気液分離は40℃で行うことができる。気液分離部が高圧の場合、その水の分圧における水の沸点温度から20℃低い温度まで、気液分離時の温度を上げてもよい。液体成分は、C5+成分を含む油性成分と、水および含酸素炭化水素を含む水性成分とを含む。気体成分は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素およびC4-成分を含む。
【0032】
(ガス分離リサイクル処理)
気液分離部6で分離された気体成分は、第1分離部10に送られる。第1分離部10は、気体成分から、水素および二酸化炭素と、C4-成分とを分離する(第1分離工程)。一酸化炭素は、C4-成分側に含まれる。なお、一酸化炭素は、水素および二酸化炭素側に含まれる場合もある。一例としての第1分離部10は、圧力変動吸着(PSA)法および膜分離法の少なくとも一方を用いて分離を行う。第1分離部10が膜分離法を用いる場合、一例としての第1分離部10は、ポリイミド膜、ポリイミド膜を炭化させた炭素膜、およびPdを含む金属膜の少なくとも1つを有する。
【0033】
第1分離部10で分離された水素および二酸化炭素は、逆シフト反応部2に送られる。逆シフト反応部2は、第1分離部10が分離した水素および二酸化炭素の供給を受けて、当該水素および二酸化炭素も合成ガスの生成に用いる。これにより、原料として供給される水素および二酸化炭素の利用率を高めることができ、C5+成分の製造効率を向上させることができる。また、逆シフト反応部2に供給されるリサイクルガスに、逆シフト反応部2での反応物である水素および二酸化炭素以外の化合物が多く含まれると、逆シフト反応部2内では平衡組成を目指して逆反応が起き、一酸化炭素の生成量が減少し得る。これに対し、第1分離部10で分離した水素および二酸化炭素を逆シフト反応部2に送ることで、逆反応を抑えることができるため、C5+成分の製造効率をより向上させることができる。
【0034】
第1分離部10で分離されたC4-成分と一酸化炭素は、接触反応部8に送られる。接触反応部8は、第1分離部10が分離したC4-成分の供給を受けて、当該C4-成分を用いて水素および一酸化炭素を生成する。第1分離部10を設けずにC4-成分を逆シフト反応部2に送った場合、C4-成分は逆シフト反応部2において反応し難いため、系内に蓄積されていく。この結果、系内での合成ガスの分圧が下がり、炭化水素製造部4での反応が阻害され得る。これに対し、本実施の形態では、第1分離部10で分離したC4-成分を接触反応部8に送り、水素および一酸化炭素の生成に用いている。これにより、C5+成分の製造効率をより向上させることができる。なお、一酸化炭素も接触反応部8での反応に用いられる。
【0035】
また、二酸化炭素は、接触反応部8での反応に関与しない。さらに、一般的に二酸化炭素は、不燃性の物質である。よって、接触反応部8が後述する部分酸化反応や自己熱改質反応を行う場合も、二酸化炭素が燃焼に用いられることはない。このため、第1分離部10を設けずに二酸化炭素を接触反応部8に送った場合、接触反応の反応温度まで接触反応部8を昇温させる際に、二酸化炭素も加温することになり、必要なエネルギーが増大し得る。これに対し、本実施の形態では、第1分離部10で分離した二酸化炭素を逆シフト反応部2に送り、合成ガスの生成に用いている。これにより、接触反応部8における必要エネルギーの増大を抑制することができ、C5+成分の製造効率をより向上させることができる。
【0036】
例えば接触反応部8は、水蒸気改質反応、部分酸化反応および自己熱改質反応のいずれかにより、C4-成分から水素および一酸化炭素を生成する。好ましくは、接触反応部8は改質反応(水蒸気改質反応および自己熱改質反応の少なくとも一方)によりC4-成分から水素および一酸化炭素を生成する。接触反応部8で行われる反応に酸素が必要である場合、この酸素は例えば水電解モジュール20から供給される。
【0037】
接触反応部8が水蒸気改質反応でC4-成分から水素および一酸化炭素を生成する場合、接触反応部8は、公知の水蒸気改質器で構成することができる。この場合、一例としての接触反応部8は、第1温度での水蒸気改質反応を行う前段反応によりC4-成分からメタンを生成し、第1温度よりも高い第2温度での水蒸気改質反応を行う後段反応によりメタンから一酸化炭素および水素を生成する。接触反応部8は、前段反応用の反応器と後段反応用の反応器とを備えてもよいし、1つの反応器内で温度を第1温度から第2温度に変化させてもよい。第1温度は例えば450~600℃であり、好ましくは450~500℃である。第2温度は例えば750℃以上である。また、前段と後段との反応温度の差は、好ましくは150℃以上、より好ましくは250℃以上である。
【0038】
炭素数が2以上のC4-成分を第2温度での改質反応に直に供した場合、隣り合う炭素原子がそれぞれ一酸化炭素に変換され、隣り合う一酸化炭素どうしの間で不均化反応が起こり、コーク(炭素)析出が起こりやすい。また、炭素数が2以上のC4-成分は、850℃以下では脱水素反応によるオレフィンの生成とその重合によるコーク(重質炭化水素)析出が起こる可能性も高い。コークが析出すると、触媒劣化や反応装置の閉塞を引き起こすおそれがある。C4-成分を前段反応で主にメタンに転換したうえで後段反応に供することで、コーク析出による触媒劣化等を抑制しつつ、水素および一酸化炭素を生成することができる。これにより、接触反応部8の使用期間を延ばすことができ、C5+成分の製造効率を向上させることができる。
【0039】
また、コーク析出を抑制する方法としては、隣り合う一酸化炭素間と活性点を奪い合う量の水を供給して、S/C比(スチーム/炭素比)を高めることが考えられる。S/C比は、接触反応部8内に供給される炭素原子のモル数(C)に対する酸素原子のモル数(S)の割合である。しかしながら、この場合は水の加温に必要な熱量が増えるため、C5+成分の製造にかかるエネルギー効率が低下する。これに対し、上述した二段階の改質反応を用いることで、コーク析出の抑制を目的とした水の供給量の増加を抑制できる。このため、C5+成分の製造にかかるエネルギーを削減でき、C5+成分の製造効率を向上させることができる。
【0040】
水蒸気改質を第1温度と第2温度との二段階で行う場合、接触反応部8では、以下の式(5)~式(8)に示す平衡反応が起きていると考えられる。そこで、前段反応として以下の式(5)~式(7)に示す予備改質反応が起きて主にメタンが生成するように、第1温度を設定する。このとき、S/C比は2.5~3.0が好ましい。式(7)に示す反応は、発熱反応である。このため、同じ組成、圧力であれば温度が低いほどメタンの収率が高くなる。続いて後段反応として以下の式(8)に示す反応が起きて一酸化炭素と水素とを含む合成ガスが製造されるように、第2温度を設定する。式(8)に示す反応は、式(7)の逆反応であり、また吸熱反応である。このため、同じ組成、圧力であれば温度が高いほど一酸化炭素と水素の収率が高くなる。例えば、第2温度におけるS/C比は1.0~2.5である。前段反応で消費された水を追加しないことでS/C比が調整できることが好ましい。式(5)において、C4-成分はCnHmと表記され、nは1~4の整数であり、mは4~10の整数である。以降の反応式においても、C4-成分は同様に表記する。
CnHm+nH2O→nCO+(n+m/2)H2 (5)
CO+H2O→CO2+H2 (6)
CO+3H2→CH4+H2O (7)
CH4+H2O→CO+3H2 (8)
【0041】
また、接触反応部8が自己熱改質反応でC4-成分から水素および一酸化炭素を生成する場合、接触反応部8は、公知の自己熱改質器で構成することができる。この場合、接触反応部8では、まず以下の式(9)に示す反応が起こり、続いて以下の式(10)に示す反応が起こる。式(9)に示す反応は、発熱反応である。一方、式(10)に示す反応は、吸熱反応である。式(10)に示す反応に必要な熱は、式(9)に示す反応で発生する熱で賄われる。式(9)に示す反応では、水電解モジュール20で生じた副生酸素を利用することができる。
CnHm+(n/2)O2→nCO+(m/2)H2 (9)
CnHm+nH2O→nCO+(n+m/2)H2 (10)
【0042】
また、接触反応部8が部分酸化反応でC4-成分から水素および一酸化炭素を生成する場合、接触反応部8は、公知の部分酸化反応器で構成することができる。この場合、接触反応部8では、以下の式(11)に示す反応が起こる。式(11)に示す反応では、水電解モジュール20で生じた副生酸素を利用することができる。
CnHm+(n/2)O2→nCO+(m/2)H2 (11)
【0043】
なお、接触反応部8が自己熱改質器で構成される場合、第1分離部10と接触反応部8との間に上述の予備改質反応を行う予備改質器(図示せず)が設けられてもよい。この予備改質反応は、上述の第1温度で行われる。これにより、上述の式(5)~式(7)に示す反応が起こり、第1分離部10から送られてくるC4-成分を予備改質器でメタンに改質し、このメタンを自己熱改質反応に供することができる。この結果、上述のようにコーク析出による触媒劣化を抑制しつつ、またS/C比の上昇を抑制しつつ、水素および一酸化炭素を生成することができる。よって、C5+成分の製造効率をより向上させることができる。
【0044】
接触反応部8からの流出物は、第5分離部18に送られる。この流出物には、水素および一酸化炭素だけでなく、未反応の水が含まれ得る。第5分離部18は、公知の気液分離器で構成することができ、流出物から水素および一酸化炭素と、水とを分離する。第5分離部18で分離された水は、接触反応部8に送られて、接触反応部8での反応に再利用される。なお、接触反応部8が部分酸化反応のみを行う場合は、第5分離部18から接触反応部8への水の供給は省略される。同様に、接触反応部8が部分酸化反応のみを行う場合は、前述した第4分離部16からの水の供給と、後述する第3分離部14からの水性成分の供給も省略される。
【0045】
炭化水素製造装置1の構造の簡略化等の観点から、第5分離部18を省略して第4分離部16に接触反応部8からの流出物を送ることが考えられる。しかしながら、接触反応部8からの流出物には、含酸素炭化水素が含まれ得る。このため、第4分離部16とは別個に第5分離部18を設置して、接触反応部8と第5分離部18との間で水をループさせることが望ましい。
【0046】
第5分離部18で分離された水素および一酸化炭素は、炭化水素製造部4に送られる。炭化水素製造部4は、接触反応部8が生成した水素および一酸化炭素の供給を受けて、当該水素および一酸化炭素もC5+成分の製造に用いる。これにより、原料として供給される水素および二酸化炭素の利用率を向上させることができ、C5+成分の製造効率を向上させることができる。
【0047】
(水性成分リサイクル処理)
気液分離部6で分離された液体成分は、第2分離部12に送られる。第2分離部12は、公知の油水分離器で構成することができ、液体成分から油性成分と、水性成分とを分離する(第2分離工程)。第2分離部12で分離された油性成分に含まれるC5+成分は、必要に応じて接触改質、水素化分解、水素化精製、アルキル化、異性化等によるアップグレード処理を経て、例えばジェット燃料、ガソリン、灯油等の代替品として利用される。硫黄や窒素などのヘテロ元素を含む原油由来の油性成分の処理がアップグレード装置でなされず、よって原油由来のガス成分がアップグレード装置からの流出物に含まれない場合、アップグレード装置で副生したC4-成分を第1分離部10に戻してもよい。これにより、ジェット燃料等の代替品としての製造効率を高めることができる。
【0048】
第2分離部12で分離された水性成分の一部は、接触反応部8に送られる。接触反応部8は、第2分離部12が分離した水性成分の供給を受けて、当該水性成分も水素および一酸化炭素の生成に用いる。これにより、接触反応部8において水性成分中の水を水素に転換することができる。よって、原料として供給される水素の量を減らすことができるため、C5+成分の製造効率を向上させることができる。また、接触反応部8において水性成分中の含酸素炭化水素を一酸化炭素に転換することができる。これによっても、C5+成分の製造効率を向上させることができる。また、第2分離部12が分離した水性成分の一部は、水電解モジュール20に送られる。水電解モジュール20は、第2分離部12が分離した水性成分の供給を受けて、当該水性成分を用いて水素を生成する。
【0049】
本実施の形態では、第2分離部12で分離された水性成分は、第3分離部14を経由して接触反応部8と水電解モジュール20とに送られる。第3分離部14は、水性成分から少なくとも一部の水を分離する。第3分離部14では、含酸素炭化水素を実質的に含まない水と、含酸素炭化水素が濃縮された水とが得られる。つまり、水の精製処理が施される。一例としての第3分離部14は、圧力変動吸着(PSA)法、精密蒸留法および膜分離法の少なくとも一つの方法を用いて分離を行う。第3分離部14が膜分離法を用いる場合、一例としての第3分離部14は、逆浸透膜、ゼオライト膜および炭素膜の少なくとも1つを有する。
【0050】
そして、第3分離部14で分離された水、つまり含酸素炭化水素が排除された水、換言すれば精製された水は、水電解モジュール20に供給される。水電解モジュール20は、第3分離部14が分離した水の供給を受けて、当該水を用いて水素を生成する。含酸素炭化水素が排除された水を水電解モジュール20に供給することで、水電解モジュール20における触媒劣化を抑制することができる。よって、水電解モジュール20の使用期間を延ばすことができ、C5+成分の製造効率の向上を図ることができる。
【0051】
また、第3分離部14で水が分離された水性成分、換言すれば含酸素炭化水素が濃縮された水は、接触反応部8に供給される。接触反応部8は、第3分離部14により水が分離された水性成分の供給を受けて、当該水性成分を水素および一酸化炭素の生成に用いる。接触反応部8は、改質反応により含酸素炭化水素から水素および一酸化炭素を生成する。
【0052】
接触反応部8が水蒸気改質反応で含酸素炭化水素から水素および一酸化炭素を生成する場合、接触反応部8は、公知の水蒸気改質器で構成することができる。この場合、一例としての接触反応部8は、第1温度での水蒸気改質反応を行う前段反応により含酸素炭化水素からメタンを生成し、第1温度よりも高い第2温度での水蒸気改質反応を行う後段反応によりメタンから一酸化炭素および水素を生成する。第1温度は例えば450~600℃であり、好ましくは450~500℃である。第2温度は例えば750℃以上である。また、前段と後段との反応温度の差は、好ましくは150℃以上、より好ましくは250℃以上である。
【0053】
含酸素炭化水素を前段反応で主にメタンに転換したうえで後段反応に供することで、C4-成分の場合と同様に、コーク析出による触媒劣化等を抑制しつつ、またS/C比の上昇を抑制しつつ、水素および一酸化炭素を生成することができる。これにより、C5+成分の製造効率を向上させることができる。また、含酸素炭化水素を二段階の反応で一酸化炭素および水素に転換する場合、前段の反応温度を後段の反応温度よりも下げることができる。また、C4-成分の場合よりも前段の反応温度をさらに下げることができる。これにより、C5+成分の製造に必要なエネルギーを削減でき、C5+成分の製造効率をより向上させることができる。
【0054】
水蒸気改質を第1温度と第2温度との二段階で行う場合、接触反応部8では、以下の式(12)~式(15)に示す平衡反応が起きていると考えられる。そこで、前段反応として以下の式(12)~式(14)に示す予備改質反応が起きて主にメタンが生成するように、第1温度を設定する。このとき、S/C比は2.5~3.0が好ましい。式(14)に示す反応は、発熱反応である。このため、同じ組成、圧力であれば温度が低いほどメタンの収率が高くなる。続いて後段反応として以下の式(15)に示す反応が起きて一酸化炭素と水素とを含む合成ガスが製造されるように、第2温度を設定する。式(15)に示す反応は、式(14)の逆反応であり、また吸熱反応である。このため、同じ組成、圧力であれば温度が高いほど一酸化炭素と水素の収率が高くなる。例えば、第2温度におけるS/C比は1.0~2.5である。前段反応で消費された水を追加しないことでS/C比が調整できることが好ましい。式(12)において、nは例えば1~7の整数であり、mは例えば4~16の整数である。以降の反応式においても、含酸素炭化水素におけるn,mの数値は同様である。
CnHmO+(n-1)H2O=nCO+(n-1+m/2)H2 (12)
CO+H2O→CO2+H2 (13)
CO+3H2→CH4+H2O (14)
CH4+H2O→CO+3H2 (15)
【0055】
また、接触反応部8が自己熱改質反応で含酸素炭化水素から水素および一酸化炭素を生成する場合、接触反応部8は、公知の自己熱改質器で構成することができる。この場合、接触反応部8では、まず以下の式(16)に示す反応が起こり、続いて以下の式(17)に示す反応が起こる。式(16)に示す反応は、発熱反応である。一方、式(17)に示す反応は、吸熱反応である。式(17)に示す反応に必要な熱は、式(16)に示す反応で発生する熱で賄われる。式(16)に示す反応では、水電解モジュール20で生じた副生酸素を利用することができる。
CnHmO+{(n-1)/2}O2→nCO+(m/2)H2 (16)
CnHmO+(n-1)H2O=nCO+(n-1+m/2)H2 (17)
【0056】
なお、接触反応部8が自己熱改質器で構成される場合、第3分離部14と接触反応部8との間に上述の予備改質反応を行う予備改質器(図示せず)が設けられてもよい。この予備改質反応は、上述の第1温度で行われる。これにより、上述の式(12)~式(14)に示す反応が起こり、第3分離部14から送られてくる含酸素炭化水素を水蒸気改質器でメタンに改質し、このメタンを自己熱改質反応に供することができる。この結果、上述のようにコーク析出による触媒劣化を抑制しつつ、またS/C比の上昇を抑制しつつ、水素および一酸化炭素を生成することができる。よって、C5+成分の製造効率をより向上させることができる。
【0057】
また、接触反応部8では、以下の式(18)に示す脱水反応および式(19)に示す脱水縮合反応が副反応として起こり、含水素炭化水素から水が生成され得る。式(18)および式(19)において、aの数値範囲はnと同様であり、bの数値範囲はmと同様である。
CnHmO=CnHm-2+H2O (18)
CnHmO+CaHbO=CnHm-1OCaHb-1+H2O (19)
【0058】
接触反応部8では、一酸化炭素の不均化反応によってコーク析出が起こる傾向にある。上述のように、コーク析出を抑制するためには水が必要である。一般的には、水の供給量を増やすことで、コーク析出の抑制に必要な水を確保する。水の供給量を増やすと、接触反応部8におけるS/C比が増加し、量論比より大きくなる。
【0059】
これに対し、本実施の形態では、第3分離部14で少なくとも一部の水を分離することで、接触反応部8に供給される水の量を減らしている。これにより、接触反応部8におけるS/C比を小さくすることができる。また、含酸素炭化水素を接触反応部8に供給し、接触反応部8内で含酸素炭化水素から副生水を生じさせることで、この副生水をコーク析出抑制に利用することができる。したがって、接触反応部8への水の供給量を減らしてS/C比を小さくしながら、コーク析出を抑制して接触反応部8における触媒劣化を抑えることができる。この結果、接触反応部8の使用期間を延ばすことができ、C5+成分の製造効率の向上を図ることができる。
【0060】
また、C5+成分の製造にかかるエネルギー効率は、以下の式(20)で表すことができる。
エネルギー効率=得られたC5+成分の発熱量/(消費した原料水素の発熱量+製造にかかる熱回収前提の必要熱量+消費した原料水素の製造に必要な電力+消費した原料二酸化炭素の回収に必要な熱量および電力) (20)
式(20)中の「製造にかかる熱回収前提の必要熱量」とは、各反応部における入口ガスと出口ガスの温度差分の熱を回収し、回収した熱を反応に再利用することを前提として、系外から加える熱量を意味する。
【0061】
具体的には、例えば逆シフト反応部2に供給される原料は、逆シフト反応部2における反応温度(例えば800℃)まで加温する必要がある。また、逆シフト反応は吸熱反応であるため、熱を追加していく必要がある。一方で、逆シフト反応部2で得られた合成ガスに第4分離部16で気液分離処理を施すためには、合成ガスを冷却する必要がある。そこで、逆シフト反応部2で排出される合成ガス(出口ガス)の熱を熱交換器で回収し、回収した熱を原料(入口ガス)に移す。これにより、原料を加熱するための加熱炉の燃料と、合成ガスを冷却するためのチラーの電力とを削減することができる。
【0062】
この他、例えば二酸化炭素回収部22が化学吸着法等によって二酸化炭素を分離回収する場合、吸着した二酸化炭素を放散するために熱が必要である。一方、炭化水素製造部4で起こるFT反応は発熱反応である。このため、炭化水素製造部4で生じた熱を熱交換器で回収し、回収した熱を二酸化炭素回収部22での二酸化炭素の放散に利用することができる。
【0063】
このようにできる限り熱回収しても不足する分の熱は、加熱炉で生成する必要がある。この加熱炉で生成される熱が、「製造にかかる熱回収前提の必要熱量」に相当する。なお、接触反応部8が自己熱改質器で構成される場合は、水蒸気改質器で構成される場合に比べて、当該必要熱量を小さくすることができる。
【0064】
接触反応部8への水の供給量が増えると、つまりS/C比が大きくなると、水の加温に必要な熱量が増える。このため、式(20)における「製造にかかる熱回収前提の必要熱量」が増加し、C5+成分の製造にかかるエネルギー効率が低下する。これに対し、水に代えて含酸素炭化水素を接触反応部8に供給することでS/C比を小さくすると、含酸素炭化水素由来の一酸化炭素からC5+成分が生成されるため、式(20)における「得られたC5+成分の発熱量」を増加させることができる。この結果、C5+成分の製造にかかるエネルギー効率が向上する。よって、接触反応部8への水の供給量を減らして、代わりに含酸素炭化水素を供給することで、C5+成分の製造効率をより向上させることができる。
【0065】
接触反応部8が自己熱改質器で構成される場合において、第1分離部10を設けず水素および二酸化炭素も接触反応部8に供給する場合、二酸化炭素の加温に熱が必要となり、改質反応に必要な反応熱をC4-成分の部分酸化で賄うことが困難となる。不足する反応熱は、二酸化炭素とともに接触反応部8に送られる水素の燃焼で賄われる。
【0066】
水素が燃焼すると水が副生する。そして、この水が接触反応部8での改質反応に用いられるようになる。このため、炭化水素製造部4の流出物から接触反応部8にリサイクルした水の消費が滞る。リサイクルした水が消費されないと、排水処理の必要な副生水の量が増える。換言すれば副生水をリサイクルして炭化水素製造部4で利用される水素に転換しないと、原料として炭化水素製造装置1の外部から追加する水素の量が増える。この結果、炭化水素製造装置1の外部から供給される原料(いわゆるフレッシュフィード)のH2/CO2比(モル比)が大きくなる。
【0067】
一方、接触反応部8が水蒸気改質器で構成される場合は、接触反応部8において水素の燃焼が起こらず副生水が生成されない。このため、接触反応部8に水素が供給されたとしても、炭化水素製造部4からリサイクルした水が接触反応部8での改質反応に用いられる。よって、接触反応部8が自己熱改質器で構成される場合に比べてフレッシュフィードのH2/CO2比を小さくすることができる。フレッシュフィードのH2/CO2比を小さくすることができれば、水素の製造に必要な電力を小さくすることができる。したがって、式(20)に示したエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0068】
よって、接触反応部8が水蒸気改質器で構成される場合は、水性成分のリサイクルによるC5+成分の製造効率の向上効果をより強く発揮することができる。また、接触反応部8が自己熱改質器で構成される場合は、第1分離部10を組み合わせることで、当該向上効果をより発揮させやすくすることができる。
【0069】
一例に係る炭化水素製造装置1において、炭化水素製造部4に供給される一酸化炭素と水素とのモル比(CO/H2比)は、1.5以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上3.5以下であることがより好ましく、2.2以上3.0以下であることがさらに好ましい。接触反応部8でのコーク析出を抑制するとともに、上述したCO/H2比を満たすために、前段反応におけるS/C比は、3.0以上6.0以下であることが好ましく、後段反応におけるS/C比は、0.5以上3.0以下であることが好ましく、1.0以上2.5以下であることがより好ましい。
【0070】
以下、本実施の形態に係る炭化水素製造装置1の作用を検証する。
図2は、比較例に係る炭化水素製造装置の模式図である。
図3は、試験例1に係る炭化水素製造装置の模式図である。
図4は、試験例2に係る炭化水素製造装置の模式図である。
図5は、試験例3に係る炭化水素製造装置の模式図である。
図6は、試験例4に係る炭化水素製造装置の模式図である。
【0071】
図2に示すように、比較例に係る炭化水素製造装置は、接触反応部8および第1分離部10を備えておらず、気液分離部6で分離された気体成分がそのまま逆シフト反応部2にリサイクルされている。また、第3分離部14も備えておらず、第2分離部12で分離された水性成分からの水の分離、つまり含酸素炭化水素の濃縮処理が施されていない。
【0072】
図3に示すように、試験例1に係る炭化水素製造装置は、第1分離部10を備えておらず、気液分離部6で分離された気体成分がそのまま接触反応部8にリサイクルされている。また、接触反応部8は自己熱改質器(ATR)で構成されている。また、第5分離部18で分離された水素、一酸化炭素および二酸化炭素が逆シフト反応部2にリサイクルされている。また、第3分離部14を備えており、第2分離部12で分離された水性成分に対し含酸素炭化水素の濃縮処理が施されている。そして、含酸素炭化水素が濃縮された水が接触反応部8にリサイクルされている。
【0073】
図4に示すように、試験例2に係る炭化水素製造装置は、第1分離部10を備えており、第1分離部10で分離されたC4-成分および一酸化炭素が接触反応部8にリサイクルされ、第1分離部10で分離された水素および二酸化炭素が逆シフト反応部2にリサイクルされている。また、接触反応部8は自己熱改質器で構成されている。また、第5分離部18で分離された水素および一酸化炭素が炭化水素製造部4にリサイクルされている。さらに、第3分離部14も備えており、第2分離部12で分離された水性成分に対し含酸素炭化水素の濃縮処理が施されている。そして、含酸素炭化水素が濃縮された水が接触反応部8にリサイクルされている。
【0074】
図5に示すように、試験例3に係る炭化水素製造装置は、第1分離部10を備えておらず、気液分離部6で分離された気体成分がそのまま接触反応部8にリサイクルされている。また、接触反応部8は水蒸気改質器(SR)で構成されている。また、第5分離部18で分離された水素、一酸化炭素および二酸化炭素が逆シフト反応部2にリサイクルされている。また、第3分離部14を備えており、第2分離部12で分離された水性成分に対し含酸素炭化水素の濃縮処理が施されている。そして、含酸素炭化水素が濃縮された水が接触反応部8にリサイクルされている。
【0075】
図6に示すように、試験例4に係る炭化水素製造装置は、第1分離部10を備えており、第1分離部10で分離されたC4-成分および一酸化炭素が接触反応部8にリサイクルされ、第1分離部10で分離された水素および二酸化炭素が逆シフト反応部2にリサイクルされている。また、接触反応部8は水蒸気改質器で構成されている。また、第5分離部18で分離された水素および一酸化炭素が炭化水素製造部4にリサイクルされている。さらに、第3分離部14も備えており、第2分離部12で分離された水性成分に対し含酸素炭化水素の濃縮処理が施されている。そして、含酸素炭化水素が濃縮された水が接触反応部8にリサイクルされている。
【0076】
比較例および各試験例の炭化水素製造装置を用いて、所定条件でC5+成分を製造した。そして、その際のエネルギー効率(式(20)を参照)を算出した。エネルギー効率を算出する際の反応条件は、以下の通りとした。また、以下の反応条件に加えて、逆シフト反応部に供給されるH2/CO2比(モル比)が3を維持するように、フレッシュフィードのH2/CO2比を調整した。
逆シフト反応部の反応温度:800℃
炭化水素製造部の反応温度:200℃
自己熱改質器または水蒸気改質器の反応温度:880℃
反応圧力(系内において一定):4MPa
【0077】
第2分離部12で分離した水性成分または第3分離部14で分離した水の、水電解モジュール20へのリサイクルを行った場合と行わなかった場合とについて、比較例におけるエネルギー効率を1としたときの各試験例におけるエネルギー効率(試験例のエネルギー効率/比較例のエネルギー効率)を比較した。結果は以下の通りであった。
【0078】
水性成分のリサイクルを行わなかった場合
比較例:1.00
試験例1:1.05
試験例2:1.17
試験例3:0.99
試験例4:1.19
水性成分のリサイクルを行った場合
比較例:1.00
試験例1:1.03
試験例2:1.13
試験例3:1.12
試験例4:1.34
【0079】
試験例1と試験例2との対比、および試験例3と試験例4との対比のそれぞれから、第1分離部10で水素および二酸化炭素と、C4-成分とに分離し、水素および二酸化炭素を逆シフト反応部2に、C4-成分を接触反応部8にそれぞれリサイクルすることで、C5+成分の製造にかかるエネルギー効率を改善できること、したがってC5+成分の製造効率を向上できることが確認された。なお、本発明者らは、接触反応部8を自己熱改質器から水蒸気改質器に変えることで、フレッシュフィードのH2/CO2比を約3から約2まで小さくできることを確認している。
【0080】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
原料ガスとしての二酸化炭素および水素を用いて、逆シフト反応によって二酸化炭素を一酸化炭素に還元し、一酸化炭素および水素を含む合成ガスを得る逆シフト反応部(2)と、
合成ガスを用いて炭化水素(C5+)を製造する炭化水素製造部(4)と、
炭化水素製造部(4)からの流出物から、水素、二酸化炭素および炭素数4以下の軽質炭化水素(C4-)を含む気体成分と、炭素数5以上の炭化水素(C5+)を含む液体成分と、を分離する気液分離部(6)と、
気体成分から、水素および二酸化炭素と、軽質炭化水素(C4-)と、を分離する第1分離部(10)と、
第1分離部(10)が分離した軽質炭化水素(C4-)の供給を受けて、当該軽質炭化水素(C4-)を用いて水素および一酸化炭素を生成する接触反応部(8)と、を備え、
逆シフト反応部(2)は、第1分離部(10)が分離した水素および二酸化炭素の供給を受けて、当該水素および二酸化炭素も合成ガスの生成に用い、
炭化水素製造部(4)は、接触反応部(8)が生成した水素および一酸化炭素の供給を受けて、当該水素および一酸化炭素も炭化水素(C5+)の製造に用いる、
炭化水素製造装置(1)。
[項目2]
液体成分は、炭素数5以上の炭化水素(C5+)を含む油性成分と、水を含む水性成分とを含み、
接触反応部(8)は、改質反応により軽質炭化水素(C4-)から水素および一酸化炭素を生成し、
炭化水素製造装置(1)は、液体成分から水性成分を分離する第2分離部(12)を備え、
接触反応部(8)は、第2分離部(12)が分離した水性成分の供給を受けて、当該水性成分も水素および一酸化炭素の生成に用いる、
項目1に記載の炭化水素製造装置(1)。
[項目3]
水性成分は、水に溶解する親水性の含酸素炭化水素も含み、
炭化水素製造装置(1)は、水性成分から少なくとも一部の水を分離する第3分離部(14)を備え、
接触反応部(8)は、第3分離部(14)により水が分離された水性成分の供給を受けて、当該水性成分を水素および一酸化炭素の生成に用いる、
項目2に記載の炭化水素製造装置(1)。
[項目4]
接触反応部(8)は、第1温度での改質反応により軽質炭化水素(C4-)からメタンを生成し、第1温度よりも高い第2温度での改質反応によりメタンから一酸化炭素および水素を生成する、
項目1乃至3のいずれかに記載の炭化水素製造装置(1)。
[項目5]
原料ガスとしての二酸化炭素および水素を用いて、逆シフト反応によって二酸化炭素を一酸化炭素に還元し、一酸化炭素および水素を含む合成ガスを得る逆シフト反応工程と、
合成ガスを用いて炭化水素(C5+)を製造する炭化水素製造工程と、
炭化水素製造工程からの流出物から、水素、二酸化炭素および炭素数4以下の軽質炭化水素(C4-)を含む気体成分と、炭素数5以上の炭化水素(C5+)を含む液体成分と、を分離する気液分離工程と、
気体成分から、水素および二酸化炭素と、軽質炭化水素(C4-)と、を分離する第1分離工程と、
第1分離工程で分離した軽質炭化水素(C4-)の供給を受けて、当該軽質炭化水素(C4-)を用いて水素および一酸化炭素を生成する接触反応工程と、を含み、
逆シフト反応工程では、第1分離工程で分離した水素および二酸化炭素の供給を受けて、当該水素および二酸化炭素も合成ガスの生成に用い、
炭化水素製造工程では、接触反応工程で生成した水素および一酸化炭素の供給を受けて、当該水素および一酸化炭素も炭化水素(C5+)の製造に用いる、
炭化水素製造方法。
[項目6]
液体成分は、炭素数5以上の炭化水素(C5+)を含む油性成分と、水を含む水性成分とを含み、
接触反応工程では、改質反応により軽質炭化水素(C4-)から水素および一酸化炭素を生成し、
炭化水素製造方法は、液体成分から水性成分を分離する第2分離工程を含み、
接触反応工程では、第2分離工程で分離した水性成分の供給を受けて、当該水性成分も水素および一酸化炭素の生成に用いる、
項目5に記載の炭化水素製造方法。
【符号の説明】
【0081】
1 炭化水素製造装置、 2 逆シフト反応部、 4 炭化水素製造部、 6 気液分離部、 8 接触反応部、 10 第1分離部、 12 第2分離部、 14 第3分離部、 16 第4分離部、 18 第5分離部、 20 水電解モジュール、 22 二酸化炭素回収部。