(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191872
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】作業車両システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20221221BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221221BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08G1/09 F
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100354
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲本 雅之
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5H181
【Fターム(参考)】
5C086AA19
5C086AA22
5C086BA18
5C086BA22
5C086CA01
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA08
5C086DA33
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA32
5C087AA37
5C087BB20
5C087DD03
5C087DD13
5C087DD40
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG10
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC27
5H181FF04
(57)【要約】
【課題】作業中のアクシデントや搭乗者の体調不良等に対して、より搭乗者の安全性を向上した作業車両システムを提供する。
【解決手段】作業車両システム100は、運転席9を有するトラクタ1と、トラクタ1の操作情報を取得する操作検出装置と、トラクタ1の挙動情報を取得する挙動検出装置と、操作検出装置および挙動検出装置と送受信可能なサーバ2と、を備え、操作情報および挙動情報に基づいて、サーバ2から予め登録されている端末21に、トラクタ1の状態の確認を促す情報を送信してなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有する作業車両と、
前記作業車両の操作情報を取得する操作検出装置と、
前記作業車両の挙動情報を取得する挙動検出装置と、
前記操作検出装置および前記挙動検出装置と送受信可能なサーバと、を備え、
前記操作情報および前記挙動情報に基づいて、前記サーバから予め登録されている情報端末に、前記作業車両の状態の確認を促す情報を送信してなる、
ことを特徴とする作業車両システム。
【請求項2】
前記作業車両に装着された撮像装置を更に備え、
前記作業車両の状態の確認を促す情報には、前記撮像装置によって撮影された画像データ又は映像データが閲覧可能となるような情報が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両システム。
【請求項3】
運転席を有する作業車両と、
前記作業車両の操作情報を取得する操作検出装置と、
前記運転席に搭乗した搭乗者の生体情報を取得する生体情報検出装置と、
前記運転席における環境情報を取得する環境情報検出装置と、
前記操作検出装置、前記生体情報検出装置および前記環境情報検出装置と送受信可能なサーバと、を備え、
前記操作情報、前記生体情報および前記環境情報に基づいて、前記サーバから前記搭乗者へ向けて前記搭乗者の体調又は作業環境に関する情報を報知する第1報知動作を実行する、
ことを特徴とする作業車両システム。
【請求項4】
前記第1報知動作を実行した後に、前記操作検出装置に基づいて前記作業車両の操作のない状態が所定時間続いたと判断された場合に、前記サーバから予め登録されている情報端末に前記搭乗者の体調確認を促す情報を送信する第2報知動作を実行する、
ことを特徴とする請求項3に記載の作業車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及びサーバを有する作業車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農作業は、太陽の照り付ける環境で行うことが多く、農作業中に熱中症になる場合がある。従来、特許文献1に記載されているように、作業着に体温測定部と表示部とを設け、体温測定部により作業着を着用した作業員の体温を測定し、体温が所定値に達すると、表示部に体温を表示すると共に警報を発して、作業員の熱中症の発生を回避するようにした熱中症警告装置が提案されている。
【0003】
さらに、特許文献2に記載されているように、移動体に設置された傾きに応じた加速度を取得する加速度取得部と、移動体の走行中に加速度取得部が取得した加速度と、加速度取得部が取得する現在の加速度とに基づいて、移動体の挙動または事故の少なくとも一方を検知するようにした挙動事故検知装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-59533号公報
【特許文献2】特開2017-120478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の熱中症警告装置は、体温測定部や表示部並びに電源やコード類を備えた作業着を農作業者が着用しなければならず、該作業着の着用が煩わしかった。このため、農作業者が上記作業着の着用を嫌がり、熱中症を防げない虞がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の挙動事故検知装置は、事故を検知可能であるものの、移動体の搭乗者の安全性の確保については依然として課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、作業中のアクシデントや搭乗者の体調不良等に対して、より搭乗者の安全性を向上し、もって上述した課題を解決した作業車両システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車両システム(100)は、
運転席(9)を有する作業車両(1)と、
前記作業車両(1)の操作情報を取得する操作検出装置(14、15)と、
前記作業車両(1)の挙動情報を取得する挙動検出装置(10、11、12)と、
前記操作検出装置(14、15)および前記挙動検出装置(10、11、12)と送受信可能なサーバ(2)と、を備え、
前記操作情報および前記挙動情報に基づいて、前記サーバ(2)から予め登録されている情報端末(21)に、前記作業車両(1)の状態の確認を促す情報を送信してなる、
ことを特徴とする。
【0009】
また、例えば
図1を参照して、前記作業車両(1)に装着された撮像装置(16)を更に備え、
前記作業車両(1)の状態の確認を促す情報には、前記撮像装置(16)によって撮影された画像データ又は映像データが閲覧可能となるような情報が含まれる。
【0010】
また、本発明に係る作業車両システム(100)は、
運転席(9)を有する作業車両(1)と、
前記作業車両(1)の操作情報を取得する操作検出装置(14、15)と、
前記運転席(9)に搭乗した搭乗者の生体情報を取得する生体情報検出装置(17)と、
前記運転席(9)における環境情報を取得する環境情報検出装置(13)と、
前記操作検出装置(14、15)、前記生体情報検出装置(17)および前記環境情報検出装置(13)と送受信可能なサーバ(2)と、を備え、
前記操作情報、前記生体情報および前記環境情報に基づいて、前記サーバ(2)から前記搭乗者へ向けて前記搭乗者の体調又は作業環境に関する情報を報知する第1報知動作を実行する、
ことを特徴とする。
【0011】
例えば
図7を参照して、前記第1報知動作を実行した後に、前記操作検出装置(14、15)に基づいて前記作業車両の操作のない状態が所定時間続いたと判断された場合に、前記サーバ(2)から予め登録されている情報端末(21)に前記搭乗者の体調確認を促す情報を送信する第2報知動作を実行する。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、操作情報および挙動情報に基づいて、サーバから予め登録されている情報端末に、作業車両の状態の確認を促す情報を送信するため、作業車両の外部において、情報端末を介して作業車両に発生したアクシデントを認識することができる。このため、作業車両の外部の関係者が、当該作業車両又はその搭乗者へ安全確認を行うことができ、作業車両に搭乗している搭乗者の安全性を向上することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、撮像装置によって撮影された画像データ又は映像データが閲覧可能なため、アクシデント発生時の情報をより詳細に把握することができ、適切な対応を取ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、操作情報、生体情報および環境情報に基づいて、サーバから搭乗者へ向けて搭乗者の体調又は作業環境に関する情報を報知するため、搭乗者が熱中症等の体調不良となることを未然に防止し、搭乗者の安全性を向上することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によると、作業車両の外部の関係者へ、情報端末を介して搭乗者の体調確認を促す情報を送信するので、作業車両に搭乗している搭乗者の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態に係る作業車両システムを示す全体構成図。
【
図3】アクシデント報知処理を示すフローチャート。
【
図4】機体の操作判定に用いられる情報例を示す説明図。
【
図5】機体の挙動判定に用いられる情報例を示す説明図。
【
図6】(a)はアクシデント内容を示す図、(b)は他のアクシデント内容を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る作業車両システム100は、
図1に示すように、作業車両としてのトラクタ1と、サーバ2と、トラクタ1に搭載された通信装置3およびGPSアンテナ4等を備えている。
【0019】
トラクタ1は、前後に車輪5が取り付けられた走行機体6を有しており、走行機体6には不図示のエンジンや変速装置等が搭載されている。また、走行機体6には、該エンジンの後方にシート7及びステアリングハンドル8等を備えた運転席9が配置されており、その後方に図示せぬ作業機を装着可能としている。該運転席9には、上記通信装置3の他に、加速度センサ10、角速度センサ11、傾斜センサ12、温湿度センサ13、舵角センサ14、PTOセンサ15等のセンサ類と、撮像装置としてのカメラ16とが設けられており、該カメラ16は、運転席9の内部と外部の画像を撮影できる位置に設置されている。また、上記シート7に着座する搭乗者にはウェアラブル機器17が装着されており、該ウェアラブル機器17により搭乗者の心拍数や体温、血圧等の生体情報を取得できるようになっている。さらに、運転席9の天面にはGPSアンテナ4が立設されており、該GPSアンテナ4が人工衛生18からの信号を受信することにより、トラクタ1の位置情報や時刻等を取得できるようになっている。
【0020】
なお、舵角センサ14とPTOセンサ15は、走行機体6の操作情報を取得する操作検出装置の一部を構成しており、加速度センサ10、角速度センサ11および傾斜センサ12は、走行機体6の挙動情報を取得する挙動検出装置を構成している。温湿度センサ13は、運転席9における環境情報を取得する環境情報検出装置を構成しており、検出する環境値としては暑さ指数(WBGT値)が好ましい。ウェアラブル機器17は、例えば腕時計のように搭乗者の腕や体の一部に装着され、搭乗者の体温や心拍数等の生体情報を取得する生体情報検出装置を構成している。なお、カメラ16にサーモグラフィを付設して搭乗者の体温を測定するようにすれば、ウェアラブル機器17の代わりにカメラ16を生体情報検出装置として利用することも可能である。
【0021】
上記通信装置3は、トラクタ1とサーバ2を携帯電話通信網またはインターネットを介して接続するための通信機器であり、トラクタ1には、通信装置3の他に制御装置19が搭載されている。
図2に示すように、制御装置19は、エンジンのキースイッチ、エンジン回転数、主変速レバー、副変速レバー、車速、PTO回転、GPS信号、加速度センサ10、角速度センサ11、傾斜センサ12、温湿度センサ13、ウェアラブル機器17から取得される生体情報、カメラ16の画像情報等を受けて、これら各データを通信装置3を介してサーバ2に送信すると共に、サーバ2からの指令を受けて運転席9の所定位置に設置された車内報知装置20に休息タイミング等を報知する。
【0022】
上記サーバ2は、例えば、農業機械の営業所や農業機械の管理を行う管理センタ等に設置されており、農業機械の稼働データやメンテナンス状況等の様々な管理を行う。該サーバ2は、トラクタ1に搭載された上記各センサのデータを受けて、トラクタ1の転倒や衝突等の有無、運転席9内の環境悪化、搭乗者に予測される体調変化等のインシデントを判断し、その判断結果に応じた情報をトラクタ1に送信すると共に、自宅や営業所に配設されたパソコンやスマートフォン等の情報端末としての端末21に送信する。なお、制御装置19は、サーバ2との間を通信装置3を介して通信し、走行機体6側の端末として機能する。また、サーバ2には、トラクタ1に搭載された通信装置3を認識するための情報(メールアドレスや搭乗者名等)が予め登録されており、これらの情報に基づいて通信装置3を特定することができるようになっている。
【0023】
本実施の形態に係る作業車両システム100では、トラクタ1に搭載された上記各センサのデータが常にサーバ2に送信されており、サーバ2側で上記インシデントの検出前の最新のデータを読み込んで機体状態や搭乗者の体調変化を判断し、その判断結果に基づいて以下に説明するアクシデント報知と体調確認報知を行うようにしている。
【0024】
まず、
図3~
図6を参照してアクシデント報知処理について説明する。なお、以下では、サーバ2が各判断を行う例について説明し、特に言及がない場合、以下の処理の主体はサーバ2であるが、これに限らない。例えば、トラクタ1の制御装置19や外部のPC等がアクシデント報知処理及び体調確認報知処理の各判断を行ってもよく、また、単一の制御装置が以下の処理の全ての判断を行わなくてもよく、例えばサーバ2と制御装置19が適宜各判断を分け合ってもよい。
【0025】
図3のフローチャートに示すように、エンジンキーの操作に基づいてエンジンが駆動状態であるか否か判断され(S11)、エンジンキーがACCモードまたはONになっていれば(S11;YES)、ステップS12に進む。次に、傾斜センサ12の検出値に基づいてトラクタ1の転倒が判断され(S12)、転倒していなければ(S12;NO)、加速度センサ10の検出値に基づいてトラクタ1の衝突が判断される(S13)。エンジンキーがACCモードまたはONではない場合(ステップS11;NO)並びに加速度センサ10の検出値に基づいてトラクタ1の衝突が検出されなかった場合(ステップS13;NO)、フローを終了してステップS11に戻る。
【0026】
トラクタ1の転倒が検出された場合(S12;YES)、またはトラクタ1の衝突が検出された場合(S13;YES)はステップS14に導かれ、直前の機体状態および位置情報の読み込み、アクシデント内容の判断、確認を促すメールの送信が行われる。ここで、ステップS14におけるアクシデント内容の判断は、
図4と
図5に示す情報の組合せにより行われる。例えば、
図4に示すエンジンキーON、エンジン回転、変速、車速(車軸回転)、PTO回転、位置情報に基づいて、機体の状態及び機体の直前の様子が判断される。
図4において、アイドリング又はエンスト状態が一定時間以上放置されている状態を、条件(A)とする。アイドリングは、エンジン回転が一定かつ変速がニュートラルに設定されている機体の状態を指し、エンスト状態は、エンジンキーONかつエンジン回転がONからOFFとなった機体の状態を指す。
【0027】
そして、機体の直前の様子が、走行中であることを条件(a)、作業中であることを条件(b)とする。機体の直前の様子が走行中であることは、エンジン回転がON、車速が高速、PTO回転がOFFかつ位置情報が圃場外であることから判断される。機体の直前の様子が作業中であることは、エンジン回転がON、車速が低速、PTO回転がONかつ位置情報が圃場内であることから判断される。
【0028】
また、
図5に示す加速度センサ10、角速度センサ11及び傾斜センサ12の検出値に基づいて、アクシデントにおけるトラクタ1の挙動が判断される。すなわち、加速度センサ10の上下方向、前後方向及び左右方向の検出値は、トラクタ1への衝撃の検知に用いられ、角速度センサ11のピッチ方向、ロール方向、及びヨー方向の検出値は、トラクタ1の転倒方向における姿勢変化の検知に用いられ、傾斜センサ12の前後方向及び左右方向の検出値は、トラクタ1の現在姿勢の検知に用いられる。そして、加速度センサ10、角速度センサ11及び傾斜センサ12がそれぞれ、トラクタ1への衝撃、トラクタ1の転倒動作及び転倒姿勢を検知した場合を、トラクタ1が転倒又は転落したことを示す条件(イ)とする。加速度センサ10及び角速度センサ11がそれぞれ、トラクタ1への衝撃及びトラクタ1の姿勢変化を検知したものの、傾斜センサ12が転倒姿勢ではない通常姿勢を検知した場合を、トラクタ1が衝突したことを示す条件(ロ)とする。そして、加速度センサ10及び角速度センサ11がそれぞれ、トラクタ1への衝撃及びトラクタ1の姿勢変化を検知せず、かつ傾斜センサ12が通常姿勢を検知した場合を、条件(ハ)とする。
【0029】
そして、例えば、条件(A)×(a)×(ロ)の組み合わせの場合、
図3のステップS14において、路上でのアクシデントによってトラクタ1は転倒していないものの、搭乗者が運転操作できない可能性あり、とのアクシデント内容を判断する。また、条件(A)×(b)×(イ)の組み合わせの場合、ステップS14において、圃場内での転倒・転落によって搭乗者が運転操作できない可能性あり、とのアクシデント内容を判断する。
【0030】
なお、
図4に示す情報において、圃場内/圃場外の判定に用いられる位置情報は、GPSアンテナ4が人工衛生18からの信号を受信することで取得できるが、その代わりに、車速及びPTO駆動の有無に基づいて判断することも可能である。また、
図5に示すように、上下、前後、左右の各方向に対応する3つの加速度センサと、ピッチ角、ロール角、ヨー角の各方向に対応する3つの角速度センサと、前後、左右の各方向に対応する2つの傾斜センサとを用いて衝撃の方向を細かく見れば、トラクタ1が追突したのか追突されたのかの判断や、どの方向から追突されたのか等を判断することが可能となる。
【0031】
このように機体の操作情報および挙動情報に基づいてアクシデントの有無を判定し、アクシデントが発生したと判断した場合、そのアクシデント内容に対応する情報を自宅や営業所の端末21にメール送信する。言い換えれば、端末21に、トラクタ1の状態の確認を促す情報を送信する。例えば、傾斜センサ12の検出値から転倒角を検出した場合は、
図6(a)に示すように、メールに管理項目が「アクシデント」であることに併せて「圃場での転倒のおそれがある」旨の注意喚起を添付し、加速度センサ10の検出値から急激な減速停止を検出した場合は、
図6(b)に示すように、メールに管理項目が「アクシデント」であることに併せて「路上での衝突アクシデントのおそれがある」旨の注意喚起を添付することにより、トラクタ1のアクシデント(転倒・衝突)を自宅や営業所にいる関係者に報知する。その際、トラクタ1に搭載されているカメラ16でアクシデント時の状況を撮影し、その画像データ又は映像データとリンクしたURLをメールに添付するようにすれば、アクシデント発生時の情報をより詳細に把握することができ、適切な対応を取ることができる。すなわち、上記URLは、画像データ又は映像データが閲覧可能となるような情報である。さらに、注意喚起の内容に高速走行や低速走行等の情報を追加したり、トラクタ1の現在位置をMAP表示したりするようにすれば、アクシデント発生時の情報をより詳細に把握することができ、適切な対応を取ることができる。
【0032】
次に、
図7~
図9を参照して体調確認報知処理について説明する。
図7のフローチャートに示すように、エンジンキーの操作に基づいてエンジンが駆動状態であるか否か判断され(S21)、エンジンキーがACCモードまたはONになっていれば(S21;YES)、温湿度センサ13により熱中症発生環境、例えばWBGT値が28度以上であるか否か判断され(S22)、WBGT値が28度に達していなければ(S22;NO)、ウェアラブル機器17(またはサーモグラフィ)により搭乗者の体調異常が判断される(S23)。ウェアラブル機器17(またはサーモグラフィ)により搭乗者の体調異常が判断されなかった場合(ステップS23;NO)、ステップS30に進む。
【0033】
WBGT値が28度以上を検出した場合(S22;YES)、または搭乗者の体調異常が検出された場合(S23;YES)はステップS24に導かれ、報知レベルの判断、報知内容の報知が行われる。
【0034】
ここで、ステップS24における報知レベルの判断は、
図8に示すように、センサ類等の条件により行われる。例えば、WBGT値が28度以上で、エンジン連続稼働時間が2時間以上になった場合、報知レベルがLEVEL1になったと判断して、LEVEL1に対応する報知内容を搭乗者(オペレータ)にアナウンスする。この場合、報知内容は通信装置3を介して走行機体6側の端末である制御装置19に送信され、制御装置19は、車内報知装置20に「熱中症に注意して下さい」、「休憩して下さい」等の注意喚起を液晶表示や音声ガイダンスによりアナウンスする。
【0035】
また、ウェアラブル機器17(またはサーモグラフィ)により体温の異常な上昇が検出された場合、あるいは、ウェアラブル機器17により心拍数の異常な変化が検出されると共に、操舵角センサによる蛇行運転や車速センサによる急加速/急減速が検出された場合、報知レベルがLEVEL2になったと判断して、LEVEL2に対応する報知内容を搭乗者(オペレータ)にアナウンスする。搭乗者に対しては、車内報知装置20に「熱中症の疑いがあります」、「極度の疲労、又は体調異常の疑いがあります」等の警告を液晶表示や音声ガイダンスによりアナウンスする。言い換えれば、操作情報、生体情報および環境情報に基づいて、サーバ2から搭乗者へ向けて搭乗者の体調又は作業環境に関する情報を報知する第1報知動作を実行する。
【0036】
なお、この時、自宅や営業所の端末21にLEVEL2の報知内容をメール送信してもよい。自宅や営業所の端末21に対しては、
図9に示すように、メールに管理項目が「体調」であることに併せて「熱中症又は熱射病のおそれがあります」旨の注意喚起を添付し、必要に応じてトラクタ1の現在位置のMAPとリンクしたURLを添付する。
【0037】
図7に戻り、ステップS24からステップS25へ進んで、
図3と
図4に示す各情報に基づいて機体操作又は挙動に変化があったか判断される。機体操作又は機体動作(挙動)に変化があった場合(S25;YES)、休止時間Tのカウントが開始され(S26)、フローを終了してステップS21に戻る。そして、次のステップS25おいて、機体操作又は機体動作に変化がないと判断されると(S25;NO)、休止時間Tが所定時間、例えば1分間以上続いているか判断される(S27)。機体操作又は機体動作に変化がない状態が1分以上続くと(S27;YES)、ステップS28に導かれて、端末21へ搭乗者の体調確認を促すメール送信が行われると共に、休止時間Tのカウントがリセットされる。言い換えれば、ステップS24における第1報知動作を実行した後に、舵角センサ14及びPTOセンサ15を含む操作検出装置に基づいて、トラクタ1の操作のない状態が所定時間続いたと判断された場合に、サーバ2から予め登録されている端末21に搭乗者の体調確認を促す情報を送信する第2報知動作が実行される。ステップS28で送信されるメール内容は、好ましくは搭乗者の体調又は作業環境に関する情報を含み、例えば搭乗者が熱中症や熱射病に罹って運転不能状態になっている可能性を示してもよい。この時、車内報知装置20は、搭乗者によりリセットされるまで警告音を発し続けるように鳴動してもよい。
【0038】
また、トラクタ1に搭載されているカメラ16でトラクタ1の内部又は周囲の状況を撮影し、その画像データ又は映像データとリンクしたURLをメールに添付するようにすれば、搭乗者の体調不良発生時の情報をより詳細に把握することができ、適切な対応を取ることができる。
【0039】
一方、ステップS27において休止時間Tが1分未満の場合(S27;NO)、機体操作又は機体動作に変化があったか判断され(S29)、機体操作又は機体動作に変化があった場合(S29;YES)、休止時間Tのカウントがリセットされる(S30)。例えば、ステップS24において搭乗者へ向けて車内報知装置20により放置された結果、1分以内にステアリング操作等の機体操作が行われた場合、搭乗者が運転を続行できる状態にあると判断して、自宅や営業所の端末21に対するメール送信は行わない。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態に係る作業車両システム100では、トラクタ1に設けられた各種センサ類からの情報に基づいて、トラクタ1の転倒等のアクシデントや搭乗者の体調不良等を推定し、その内容を自宅や営業所等にいる関係者にメール送信するので、トラクタ1の外部の関係者が、当該トラクタ1又はその搭乗者へ安全確認を行うことができ、トラクタ1に搭乗している搭乗者の安全性を向上することができる。また、車内報知装置20によって、トラクタ1を操作する搭乗者へ向けて搭乗者の体調又は作業環境に関する情報を報知するため、搭乗者が熱中症等の体調不良となることを未然に防止し、搭乗者の安全性を向上することができる。更に、作業車両システム100は、操作情報および挙動情報に基づいてトラクタ1の転倒等のアクシデントを判断するので、圃場抵抗が多い農地であっても、的確にアクシデントを判断することができる。
【0041】
なお、上述した実施の形態は、本発明の異常報知システムが適用される作業車両としてトラクタを例示して説明したが、これに限らず、田植機やコンバイン、田植機等の作業車両にも適用可能である。
【0042】
また、上述した実施の形態では、
図3に示すアクシデント報知処理と
図7に示す体調確認報知処理の両方を有する作業車両システム100を説明したが、これに限定されない。すなわち、作業車両システム100は、アクシデント報知処理及び体調確認報知処理の少なくとも何れか一方を有していればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 トラクタ(作業車両)
2 サーバ
9 運転席
10 加速度センサ(挙動検出装置)
11 角速度センサ(挙動検出装置)
12 傾斜センサ(挙動検出装置)
13 温湿度センサ(環境情報検出装置)
14 舵角センサ(操作検出装置)
15 PTOセンサ(操作検出装置)
16 カメラ(撮像装置)
17 ウェアラブル機器(生体情報検出装置)
19 制御装置
20 車内報知装置
21 端末(情報端末)
100 作業車両システム