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  • 特開-水耕栽培用育成ボード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191878
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】水耕栽培用育成ボード
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20221221BHJP
【FI】
A01G31/00 617
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100365
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 久雄
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NC24
2B314NC43
2B314PC09
2B314PC24
2B314PC35
2B314PC48
(57)【要約】
【課題】長期耐久性に優れ且つ養液における藻などの発生を抑制することが可能でありながら、植物の収穫量を増やすことができる水耕栽培用育成ボードを提供する。
【解決手段】本発明の水耕栽培用育成ボードは、ボードの本体部分を構成する板部材と、当該板部材に積層されたアルミニウム箔とを備え、前記アルミニウム箔は、厚さが6μm以上400μm以下であり、前記アルミニウム箔と前記板部材とを貫通する複数の孔を備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボードの本体部分を構成する板部材と、当該板部材に積層されたアルミニウム箔とを備え、
前記アルミニウム箔は、厚さが6μm以上400μm以下であり、
前記アルミニウム箔と前記板部材とを貫通する複数の孔を備えていることを特徴とする、水耕栽培用育成ボード。
【請求項2】
前記アルミニウム箔は、(A)予め定められた表面積に存在する晶出物の総表面積の割合が2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、圧延方向と垂直な方向の表面粗さRzが40nm以下であり、かつ、表面粗さRaが10nm以下であるアルミニウム箔、(B)クロム、チタン、およびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を0.01質量%以上0.5質量%以下含み、残部がアルミニウムと不可避不純物とからなるアルミニウム合金箔、(C)0.5質量%以上3.0質量%以下のMnと、0.0001質量%以上0.20質量%未満のCrと、0.2質量%以上1.8質量%以下のMgと、0.0001質量%以上0.6質量%以下のTiと、0よりも多く0.005質量%以下のCuと、0よりも多く0.1質量%以下のSiと、0よりも多く0.2質量%以下のFeとを含有するアルミニウム合金箔、から選ばれたことを特徴とする、請求項1記載の水耕栽培用育成ボード。
【請求項3】
前記板部材が、発泡スチロール、発泡ポリスチレンフォーム、発泡ポリエチレンフォームからなる群から選択される一種又は二種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水耕栽培用育成ボード。
【請求項4】
前記アルミニウム箔の表面に保護層を備えることを特徴とする、請求項請求項1から3のいずれかに記載の水耕栽培用育成ボード。
【請求項5】
前記アルミニウム箔が積層された側の表面には、一次粒子平均径3nm以上100nm以下の疎水性シリカ粒子が三次元網目状に結合した構造からなる多孔質層が形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の水耕栽培用育成ボード。
【請求項6】
側面に、隣り合う水耕栽培用育成ボードと嵌合により連結する連結部を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の水耕栽培用育成ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潅水式水耕栽培において用いる水耕栽培用育成ボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
潅水式水耕栽培は土を使用せずに、室内で安定して且つ養液による養分量のコントロールが容易な植物の育苗及び栽培が可能な方法として広く利用されている。
【0003】
潅水式水耕栽培では、水槽に養液を満たし、この上に水耕栽培用育成ボードと呼ばれるボードを設置する。水耕栽培用育成ボードには孔が設けられており、ここに植物の苗をセットし、根は水槽の養液に浸かり、葉茎は空気中におかれて日光や人工光が当たる様に構成されている。水耕栽培用育成ボードは葉茎が養液に触れて腐らない様に隔離する作用・効果と、苗を保持する作用・効果とがあり、樹脂板や木板等が広く使用されている。
【0004】
最近では、この水耕栽培用育成ボードに付加機能を付与する試みがなされており、例えば特許文献1にはボードの明度を高くして、さらに表面にアルミニウム蒸着PETフィルムを備えることにより、葉茎への日光や人工光の照射効率を向上することで植物の収穫量を増やすことができる水耕栽培用育成ボードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-65号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、単に表面の明度を高くすることにより葉茎への日光や人工光の照射効率を向上するものに過ぎず、長期使用に際して、水と触れている部分の塗料やアルミニウム蒸着膜が剥がれて、機能しなくなるおそれがあった。また水耕栽培用育成ボード表面の明度を塗料により高くしても、アルミニウム蒸着PETを用いても、光の一部は透過して養液に当たり、養液中や水槽の壁面、水耕栽培用育成ボードの裏面にカビや藻が発生してしまい、養分を藻に取られたり植物が病気になりやすくなったりするおそれがあった。
【0007】
そこで本発明は、長期耐久性に優れ且つ養液における藻などの発生を抑制することが可能でありながら、植物の収穫量を増やすことができる水耕栽培用育成ボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水耕栽培用育成ボードは、ボードの本体部分を構成する板部材と、当該板部材に積層されたアルミニウム箔とを備え、前記アルミニウム箔は、厚さが6μm以上400μm以下であり、前記アルミニウム箔と前記板部材とを貫通する複数の孔を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水耕栽培用育成ボードが上記構成であることによって、アルミニウム箔は可視光から赤外光や紫外光までの広い波長域の光を反射し、効率よく葉茎に日光や人工光を反射することができ、植物の収穫量を増やすことができる。また、アルミニウム箔はいずれの波長域の光も透過させないため、養液側の藻等の発生を防ぐことができる。さらに、アルミニウム箔は水に触れていても成分が溶出して光の反射効果が得られなくなる程劣化することが無いので長期耐久性にも優れる。すなわち、長期耐久性に優れ且つ養液における藻などの発生を抑制することが可能でありながら、植物の収穫量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る水耕栽培用育成ボードの一例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0012】
本実施形態の水耕栽培用育成ボードは、ボードの本体部分を構成する板部材と、当該板部材に積層されたアルミニウム箔とを備え、前記アルミニウム箔は、厚さが6μm以上400μm以下であり、前記アルミニウム箔と前記板部材とを貫通する複数の孔を備えていることを特徴とする。
【0013】
前記アルミニウム箔は、(A)予め定められた表面積に存在する晶出物の総表面積の割合が2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、圧延方向と垂直な方向の表面粗さRzが40nm以下であり、かつ、表面粗さRaが10nm以下であるアルミニウム箔、(B)クロム、チタン、およびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を0.01質量%以上0.5質量%以下含み、残部がアルミニウムと不可避不純物とからなるアルミニウム合金箔、(C)0.5質量%以上3.0質量%以下のMnと、0.0001質量%以上0.20質量%未満のCrと、0.2質量%以上1.8質量%以下のMgと、0.0001質量%以上0.6質量%以下のTiと、0よりも多く0.005質量%以下のCuと、0よりも多く0.1質量%以下のSiと、0よりも多く0.2質量%以下のFeとを含有するアルミニウム合金箔、から選ばれたいずれか一つであること、即ち、(A)(B)(C)のいずれか一つの箔であることが好ましい。
【0014】
前記板部材が、発泡スチロール、発泡ポリスチレンフォーム、発泡ポリエチレンフォームからなる群から選択される一種又は二種以上であることが好ましい。
【0015】
前記アルミニウム箔の表面に保護層を備えていてもよい。
【0016】
前記アルミニウム箔が積層された側の表面には、一次粒子平均径3nm以上100nm以下の疎水性シリカ粒子が三次元網目状に結合した構造からなる多孔質層が形成されていてもよい。
【0017】
側面に、隣り合う水耕栽培用育成ボードと嵌合により連結する連結部を備えていてもよい。
【0018】
(実施形態1)
以下、各構成について図1を参照して詳述する。
【0019】
<水耕栽培用育成ボード>
実施形態1の水耕栽培用育成ボード10,20は、当該ボードの本体部分である板部材にアウミニウム箔を積層して形成されており、貫通孔30,30が形成されていて、これらの貫通孔30,30に苗を固定する。
【0020】
貫通孔30,30の孔径や隣り合う貫通孔間のピッチ、孔の数は特に限定されないが、養液上への浮力の観点から、水耕栽培用育成ボード10,20の一方の面の面積のうち、全ての貫通孔30,30の開口面積が0.1%以上3%以下を占めることが好ましい。貫通孔30,30の孔径は特に限定されず、栽培する植物によって適宜変更することができるが、直径15mm~20mmであると、様々な植物に対応することができる。
【0021】
また、水耕栽培用育成ボード10,20の側面には、隣り合う水耕栽培用育成ボード同士を嵌合により連結する、ジグソーパズルのピースに用いられているような組み込み形状を有した連結部40,50を備えていることが好ましい。連結部40,50の形状は図1に示す形状に限定されず、隣り合う水耕栽培用育成ボード同士を嵌合により連結することができる形状であればどのような形状であっても構わない。また、1つの水耕栽培用育成ボードに連結部40,50をいくつ形成しても構わないし、1つの水耕栽培用育成ボードの複数の側面のうち、1面だけに形成してもよいし、複数の面に形成してもよい。
【0022】
水槽のサイズは必ずしも統一されていないため、大きな水槽で水耕栽培用育成ボードが浮遊して適切な光照射のコントロールが出来なくならない様に、複数の水耕栽培用育成ボードを、連結部を用いて組み合わせることでどの様な水槽にも適した大きさにすることができる。
【0023】
<板部材>
板部材は、水耕栽培用育成ボード10,20の本体部分であって、栽培される植物を支えるための部材であり、表側の面にアルミニウム箔が積層される。板部材は、その材質および厚さに制限はなく、樹脂および木材を好適に使用することができる。水槽や水槽を支える架台に付加がかからない様に、板部材は強度を有しながらも軽量であるものが好ましい。例えば、発泡スチロール、発泡ポリスチレンフォーム、発泡ポリエチレンフォームからなる群から選択される一種又は二種以上の材料を板部材に用いることが好ましい。
【0024】
より好ましいのは、発泡ポリスチレンフォームを用いることであり、強度の観点からも養液上での浮力の観点からも好ましい。
【0025】
こうした板部材の厚さは特に限定されないが、10mm以上40mm以下であることが好ましい。10mm未満では強度が低下し、植物の成長によって植物の重さが増大すると板部材が損傷してしまったり、植物が傷ついたりしてしまうおそれがある。40mmを超えると、苗の根を養液に漬けた状態で孔に固定することが困難となったり、苗の時期に葉に光が届きにくくなり枯れたりしてしまうおそれがある。
【0026】
<アルミニウム箔>
本実施形態においてアルミニウム箔は、厚さが6μm以上400μm以下のアルミニウム製の箔である。アルミニウムを主成分としていればよく、純度の高いアルミニウムでも、鉄やシリコン、マンガン、銅等の添加元素を含むアルミニウム合金箔でもよい。
【0027】
好ましくは、予め定められた表面積に存在する晶出物の総表面積の割合が2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、圧延方向と垂直な方向の表面粗さRzが40nm以下であり、かつ、表面粗さRaが10nm以下である、可視光反射用アルミニウム箔を用いると、より高い光の反射率が得られるため好ましい。なお、本開示において表面粗さとは、JIS B0601-2001にて定義されるアルミニウム箔の表面粗さである。
【0028】
また、クロム、チタン、およびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を0.01質量%以上0.5質量%以下含み、残部がアルミニウムと不可避不純物とからなる、アルミニウム合金箔、あるいは、0.5質量%以上3.0質量%以下のMnと、0.0001質量%以上0.20質量%以下のCrと、0.2質量%以上1.8質量%以下のMgと、0.0001質量%以上0.6質量%以下のTiと、0よりも多く0.005質量%以下のCuと、0よりも多く0.1質量%以下のSiと、0よりも多く0.2質量%以下のFeとを含有するアルミニウム合金箔を用いることで、ミネラル分が多い養液がアルミニウム箔に触れても腐食しにくいため好ましい。
【0029】
アルミニウム箔が厚さ6μm未満では製造過程でピンホールが出来やすく、これにより光の一部が透過して養液中に藻等が発生するおそれがあり、厚さ400μmを超えると、重くなることで養液に浮かばなくなったり、板部材が重みにより変形したりしてしまうおそれがある。
【0030】
<保護層>
アルミニウム箔と板部材の他に、任意の層を備えてもよく、例えば、アルミニウム箔の表面であって板部材が積層されている面とは反対の面に、アルミニウム箔を保護する保護層を備えていてもよい。保護層はアルミニウム箔に強い衝撃や強い薬剤等が付与された場合にアルミニウム箔を保護する機能を備える。アルミニウム箔による光反射機能を損なわないために、光透過性の材料を用いることが好ましく、ガラス、PET、二軸延伸ポリスチレン樹脂フィルム(OPS)からなる群から選択される一種又は二種以上の光透過性の材料を用いることが好ましい。保護層はアルミニウム箔表面を保護すればよく、これら保護層の厚みは特に限定されないが、ガラスコート剤等の被膜であれば10nm~1μm、フィルムやガラス板等であれば2μm~10mmの範囲の厚みであることが好ましい。
【0031】
<接着層>
また、それぞれの層間に接着剤を含有する接着層を備えていてもよい。公知の接着剤を用いることができ、接着剤を用いない場合でも、例えばアルミニウム箔と発泡ポリスチレンフォームからなる板部材とを熱融着により接着してもよい。
【0032】
<撥水層>
アルミニウム箔の表面であって板部材が積層されている面とは反対の面、また保護層を備えている場合には保護層の表面であってアルミニウム箔とは反対の面に、撥水層を備えていてもよい。撥水層が表面に存在することで、葉茎に水をかけたり、振動等により水槽から漏れ出た養液が水耕栽培用育成ボード上にかかったりした場合でも、表面に留まらせずに速やかに水槽に流すことができる。
【0033】
具体的には、水耕栽培用育成ボードの最表面に、一次粒子平均径3nm以上100nm以下の疎水性シリカ粒子が三次元網目状に結合した構造からなる多孔質層を形成していることが好ましい。これにより、水耕栽培用育成ボード上の水分は速やかに水耕栽培用育成ボードの側面や孔から水耕栽培用育成ボードの下に流れ落ちる。
【0034】
この場合、疎水性シリカ粒子の付着量が0.01g/m以上10g/m以下であることが好ましい。また、疎水性シリカ粒子表面にトリメチルシリル基を有していることが好ましい。
【実施例0035】
<実施例1>
厚さ15mmの発泡ポリスチレンフォーム(デュポン社製スタイロフォーム(登録商標))に厚さ25μmのOPSフィルムを熱融着により貼り合わせた。更に、OPSフィルムの表面に市販の両面テープにより厚さ100μmのアルミニウム箔(1N30特ツヤ、東洋アルミニウム(株)製)を貼り合わせた。次いでアルミニウム箔の露出面(貼り合わせ面とは反対側の面)に、厚さ12μmのPETフィルムを市販の接着剤を用いて貼り合わせた。なお、本実施例のアルミニウム箔は表面粗さが20nmのアルミニウム箔である。
【0036】
上記のようにして作成した積層体を60cm×45cmの大きさにカットし、直径15mmの孔30,30,・・8個を、互いに約20cm離間させて形成した(図1参照)。なお、側面にはジグソーパズルのはめ込み部の形状にカットして嵌合し合う連結部40,50を形成し、複数の積層体同士を組み合わせて連結できる様に構成した。このようにして水耕栽培用育成ボードを作成した。
【0037】
<実施例2>
アルミニウム箔として、予め定められた表面積に存在する晶出物の総表面積の割合が2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、圧延方向と垂直な方向の表面粗さRzが40nm以下であり、かつ、表面粗さRaが10nm以下である、厚さ15μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製ラクサル)を用いた以外は、実施例1と同様にして水耕栽培用育成ボードを得た。
【0038】
<実施例3>
アルミニウム箔として、厚さ7μmで、Crを0.1質量%、残部がアルミニウムと不可避不純物とからなるアルミニウム合金箔(東洋アルミニウム株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして水耕栽培用育成ボードを得た。なお、本実施例のアルミニウム箔は表面粗さが50nmのアルミニウム箔である。
【0039】
<実施例4>
アルミニウム箔として、厚さ200μmで、1.0質量%のMnと、0.10質量%のCrと、1.0質量%のMgと、0.1質量%のTiと、0.01質量%のFeとを含有するアルミニウム合金箔(東洋アルミニウム株式会社製アルソルト)を用い、アルミニウム箔の表面にPETフィルムを積層しなかった以外は、実施例1と同様にして水耕栽培用育成ボードを得た。なお、本実施例のアルミニウム箔は表面粗さが50nmのアルミニウム箔である。
【0040】
<実施例5>
最表面のPETフィルムに、一次粒子平均径3~100nmの疎水性シリカ粒子を含有するエタノール分散媒を塗布して乾燥させ、疎水性シリカ粒子の三次元網目状構造からなる多孔質層を形成した以外は、実施例1と同様にして水耕栽培用育成ボードを得た。
【0041】
<比較例1>
アルミニウム箔、OPSフィルム及びPETフィルムを用いずに、厚さ15mmの発泡ポリスチレンフォームのみを用いた以外は、実施例1と同様にして水耕栽培用育成ボードを得た。
【0042】
<比較例2>
アルミニウム箔に代えて、不織布の繊維表面にアルミ蒸着が施された厚さ170μmのシート(デュポン社製タイベックスシルバー)の表面にPETフィルムを貼り、裏面を両面テープで発泡ポリスチレンフォームと接着した以外は、実施例1と同様にして水耕栽培用育成ボードを得た。
【0043】
<比較例3>
アルミニウム箔に代えて、市販のアルミ蒸着PETシート(アズワン社製、PET12μm、アルミ蒸着膜の厚み10オングストローム)を用い、OPSフィルム及びPETフィルムを積層せずに裏面を両面テープで接着した以外は、実施例1と同様にして水耕栽培用育成ボードを得た。
【0044】
(試験例1)
植物の収穫量への効果検証として、120cm×45cm、深さ30cmの水槽を各実施例・比較例毎に用意した。それぞれの水槽に深さの半分まで市販の養液を充填し、その上に実施例1から5及び比較例1から3のそれぞれの水耕栽培用育成ボードをそれぞれ2つを連結させて浮かせた。アルミニウム箔を備えたものは、アルミニウム箔が上側に向くようにして設置した。
【0045】
そして、レタス(グリーンインパルス)の種を16mm四方のウレタンスポンジ中央に1粒撒いて発芽させ、種まきから11日後にそれぞれの水耕栽培用育成ボードの16個の孔に、発芽したレタスを有するウレタンスポンジを差し込んだ。光源は白色LEDとし、それぞれのサンプルに光照射の差異が生じない様に配置した。種まきから37日後にレタスを収穫し、ウレタンスポンジを取り除いて根を拭いた後、16個の孔に植えたレタスの合計の重量を測った。
【0046】
(試験例2)
藻発生対策への効果検証として、試験例1によるレタスの収穫後、実施例1から5及び比較例1から3のそれぞれの水耕栽培用育成ボードの孔の部分をアルミニウムホイルで塞ぎ、水槽の周囲を市販のアルミニウムホイルで遮光し、気温25度前後で日光が当たる場所に設置した状態で100日間静置した。その後、水耕栽培用育成ボードを外し、水耕栽培用育成ボードの裏面又は養液中に藻やカビ等が発生しているか否かを確認した。藻等が発生しなかったものを〇、発生したものを×として評価した。
【0047】
(試験例3)
長期耐候性への効果検証として、実施例1から5及び比較例1から3のそれぞれの水耕栽培用育成ボードに1%濃度の塩水をスプレーで噴霧し、5度に傾けてから戻し、これを1日に1回行い、気温25度前後で日光が当たる場所に設置した状態で100日後に水耕栽培用育成ボードの表面の状態を目視により観察した。変化が無かったものを〇、白く変色したが水耕栽培用育成ボード表面の剥がれは無かったものを△、水耕栽培用育成ボード表面が剥がれたものを×として評価した。
【0048】
以上の各試験の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
以上の結果に示される様に、本発明の水耕栽培用育成ボードは、長期耐久性にも優れ且つ養液における藻などの発生を抑制することが可能でありながら、植物の収穫量を増やすことができる。
【0051】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 水耕栽培用育成ボード
20 水耕栽培用育成ボード
30 孔
40 連結部
50 連結部
図1