(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191884
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】防水装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/08 20210101AFI20221221BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20221221BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20221221BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20221221BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G03B17/08
G03B17/02
G03B17/55
G03B15/00 U
H04N5/225 430
H04N5/225 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100374
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】小野 修平
【テーマコード(参考)】
2H100
2H101
2H104
5C122
【Fターム(参考)】
2H100AA41
2H100BB05
2H100EE05
2H101CC53
2H101CC60
2H101CC91
2H104CC06
5C122EA02
5C122EA03
5C122EA54
5C122EA55
5C122GE01
5C122GE11
5C122GE18
(57)【要約】
【課題】装置内の基板に実装された電気素子を電気的に保護し、効率的に電気素子の放熱を行いつつ防水性能を確立した上で、装置の小型化と良好な組み立て性を両立することを可能にした防水装置を提供する。
【解決手段】防水装置は、フロントカバー3およびリアカバー4で構成され、内部に電気素子が実装された基板が収容される筐体7と、前記フロントカバーと前記リアカバーとの間に配置される封止部材5と、を有し、前記封止部材は、前記フロントカバーと前記リアカバーによって押圧されることで前記筐体を封止する封止部51と、前記電気素子の発熱を前記筐体へ伝達することで放熱を行う放熱部52と、前記電気素子を外部からの放電から保護する放電保護部53と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントカバーおよびリアカバーで構成され、内部に電気素子が実装された基板が収容される筐体と、
前記フロントカバーと前記リアカバーとの間に配置される封止部材と、を有し、
前記封止部材は、
前記フロントカバーと前記リアカバーによって押圧されることで前記筐体を封止する封止部と、
前記電気素子の発熱を前記筐体へ伝達することで放熱を行う放熱部と、
前記電気素子を外部からの放電から保護する放電保護部と、を備えることを特徴とする防水装置。
【請求項2】
前記フロントカバーまたは前記リアカバーには通気孔が設けられており、
前記放電保護部は、前記封止部材において、前記通気孔の付近に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の防水装置。
【請求項3】
前記放電保護部は、前記封止部材において、前記筐体に保持されるレンズユニットの光学系の光軸に垂直な平面上で前記通気孔と重畳する位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の防水装置。
【請求項4】
前記封止部材は、前記放電保護部の周辺に通気部を更に備えることを特徴とする請求項2または3に記載の防水装置。
【請求項5】
前記通気部は、前記放電保護部の周辺に形成され前記封止部材を貫通する穴部であることを特徴とする請求項4に記載の防水装置。
【請求項6】
前記放電保護部と前記通気孔との間に空間があることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の防水装置。
【請求項7】
前記フロントカバーまたは前記リアカバーは、樹脂製であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の防水装置。
【請求項8】
前記放熱部は、前記電気素子と接触する接触部と前記電気素子と接触しない非接触部を備え、
前記接触部の先端には、テーパ状の誘い形状が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の防水装置。
【請求項9】
前記防水装置は、前記フロントカバーにレンズユニットが組み込まれるカメラであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の防水装置。
【請求項10】
前記封止部材の材料の熱伝導率は、1.0W/m・K以上であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の防水装置。
【請求項11】
前記封止部材の材料の体積抵抗率は、1TΩ・m以上であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の防水装置。
【請求項12】
前記封止部材の材料は、弾性部材であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の防水装置。
【請求項13】
前記弾性部材は、シリコンゴムであることを特徴とする請求項12に記載の防水装置。
【請求項14】
前記封止部、前記放熱部、および前記放電保護部は、一体に形成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の防水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防水仕様の小型カメラは、撮像素子が実装されたセンサ基板を金属外装や板金等の金属部品で覆うことで電気的に保護すると共にセンサ基板の発熱をその金属部品へ逃がし、外装の隙間を封止部材で密閉することで防水仕様とする構成が一般的であった。
【0003】
例えば、特許文献1には、二つの金属外装部品を、その間に封止部材を挟んだ状態でカシメ接合させることで筐体を密閉しつつ、筐体内部の基板を電気的に保護する構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、カメラ内のセンサ基板の位置を調整する調整部材によって基板の電気的な保護と、基板に実装された電気素子の放熱とを行う構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-046963号公報
【特許文献2】特開2010-278768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、外装部品が全て金属であるため高コストとなってしまう。また、センサ基板の発熱を放熱するための部材を配置するスペースが限られており、装置の小型化と組み立て性を両立させることは困難である。
【0007】
特許文献2の構造では、センサ基板の放熱経路が限定的であり効率的に放熱を行うことが難しいため、センサ基板の発熱の程度によっては装置が大型化してしまう。また、カメラを防水仕様とするためには、カメラ内にセンサ基板と調整部材の他に封止部材を配置する必要があるため、装置の小型化と組み立て性の両立が困難である。
【0008】
そこで、本発明は、装置内の基板に実装された電気素子を電気的に保護し、効率的に電気素子の放熱を行いつつ防水性能を確立した上で、装置の小型化と良好な組み立て性を両立することを可能にした防水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての防水装置は、フロントカバーおよびリアカバーで構成され、内部に電気素子が実装された基板が収容される筐体と、前記フロントカバーと前記リアカバーとの間に配置される封止部材と、を有し、前記封止部材は、前記フロントカバーと前記リアカバーによって押圧されることで前記筐体を封止する封止部と、前記電気素子の発熱を前記筐体へ伝達することで放熱を行う放熱部と、前記電気素子を外部からの放電から保護する放電保護部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置内の基板に実装された電気素子を電気的に保護し、効率的に電気素子の放熱を行いつつ防水性能を確立した上で、装置の小型化と良好な組み立て性を両立することを可能にした防水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本実施例による防水装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づき実施例を用いて詳細に説明する。
【0014】
以下、
図1~
図5を参照して、本実施例による防水装置について説明する。本実施例による防止装置は、防水仕様の電子機器に関し、特に監視カメラや車載カメラとして用いられる防水小型カメラに関する。
【0015】
図1は、本実施例による防水装置の断面図である。防水装置100の筐体7は、フロントカバー3とリアカバー4で構成されている。フロントカバー3とリアカバー4との間には封止部材5が配置される。封止部材5が押圧状態でフロントカバー3とリアカバー4との間に組み込まれることで筐体7が密閉される。
【0016】
フロントカバー3には、撮像素子21と電気素子22及び基板側コネクタ23が実装された基板2が固定されている。基板2は筐体7の内部に収容される。また、フロントカバー3の雌ねじ部3aとレンズユニット1の雄ねじ部1aが螺合することで、筐体7にレンズユニット1が保持される。
【0017】
レンズユニット1は、光軸Oの光学系を有し、レンズユニット1によって集光された光線が撮像素子21で結像する。これにより撮影が成される。レンズユニット1はカニ目1bを有する。カニ目1bを用いてレンズユニット1を回転することで雄ねじ部1aとフロントカバー3に設けられた雌ねじ部3aが螺合し、レンズユニット1がフロントカバー3に組み込まれる。
【0018】
フロントカバー3には、バネ挿入部3bが設けてあり、そこにセンサばね11が嵌入されている。センサばね11は、フロントカバー3とレンズユニット1を付勢し、レンズユニット1のフロントカバー3に対するガタ付きを除去している。フロントカバー3には、センサラバー嵌入部3cが設けられており、そこにセンサラバー13が設けられている。センサラバー13は、フロントカバー3と撮像素子21との間で撮像素子21を封止しており、撮像素子21にゴミ等が付着することを防いでいる。
【0019】
レンズユニット1には、Oリング組み込み部1cが設けられており、そこにOリング12が組み込まれている。Oリング12は、フロントカバー3に設けられたOリング嵌入部3fとOリング組み込み部1cとの間で押圧され、フロントカバー3とレンズユニット1との間の隙間を封止している。
【0020】
リアカバー4には、通気孔4aが設けられており、通気孔4aの筐体7の内部側の入り口には防水シート41が貼られている。この構成により、防水装置100は、防水構造でありながら密閉されない構造となり、気圧変化等によって筐体7の内部が結露する等の不具合を回避することができる。
【0021】
なお、本実施例では、通気孔4aをリアカバー4に設けた例を説明しているが、通気孔4aをフロントカバー3に設けるように構成してもよい。また、通気孔4aをフロントカバー3およびリアカバー4に設けるように構成してもよい。
【0022】
防水装置100は、ケーブルユニット6によって不図示の本体ユニットと接続する。フロントカバー3には、ケーブル挿入部3gが設けられており、そこからケーブルユニット6がフロントカバー3の中に挿入されている。ケーブルユニット6には、クランプ31がカシメられており、クランプ31の係止部31aがフロントカバー3のクランプ係合部3eと係合することでケーブルユニット6のフロントカバー3への固定がなされている。
【0023】
図2は、本実施例による防水装置100の分解斜視図である。ケーブルユニット6は、ケーブル61、ケーブル側コネクタ61a、本体接続コネクタ61b、ケーブルパッキン62、ケーブル板金63、ケーブルシート64で構成されている。ケーブル側コネクタ61aは、基板2に実装された基板側コネクタ23と接続する。本体接続コネクタ61bは、不図示の本体ユニットと接続する。ケーブルパッキン62は、フロントカバー3のケーブル挿入部3gに挿入され、ケーブル板金63によって押圧されることでケーブルユニット6とフロントカバー3の間の隙間を封止している。ケーブル板金63は、ケーブルシート64によって覆われており、外観からは見えなくなっている。
【0024】
図3は、本実施例による基板2の詳細図である。基板2には、電気素子22が実装されている。防水装置100を起動した際、電気素子22は発熱する。その熱は防水装置100内の雰囲気に伝わり、あるいは基板2からフロントカバー3に伝わることで放熱される。しかし、これらの経路の放熱だけでは十分ではない場合がある。特に、防水装置100を高温環境下にて使用する場合は、電気素子22の保証温度を超える懸念があり、撮像不良や機能停止等の不具合を引き起こす可能性がある。
【0025】
図4は、本実施例による封止部材5の詳細図である。封止部材5は、封止部51、放熱部52、放電保護部53、通気部54で構成される。これらは一体に形成されている。つまり、これらは一つの部材である封止部材5に形成されている。封止部材5の材料は、シリコンゴム等の弾性部材であり、低温、高温環境下においても封止部材として安定している。また、封止部材5の材料の熱伝導率は、1.0W/m・K以上となっており、放熱部材としての性能も高い。封止部材5の材料の体積抵抗率は、1TΩ・m以上で所謂絶縁体であるため、電気部品を放電等から保護する役割も担える。封止部51は、フロントカバー3のパッキン押圧部3dによってリアカバー4との間で押圧されることで、フロントカバー3とリアカバー4との間の隙間を封止している。
【0026】
ここで、フロントカバー3またはリアカバー4は樹脂製である。樹脂部品を用いることで、装置としてのコストが大幅に軽減することができる。本実施例では、少なくともリアカバー4は樹脂製である。このため、外部からの放電が通気孔4aを通って基板2に電気的な損傷を与える可能性がある。リアカバー4が金属製であれば放電による基板2の損傷を防ぐことはできるが、一般的に金属部品は樹脂部品の10倍以上のコストがかかるため、装置としてのコストが大幅に増大してしまう。通気孔4aから基板2までの距離が十分に遠ければ、基板2が放電による損傷を受けることはないが、それでは装置が大型化してしまう。そこで本実施例では、放電保護部53を封止部材5においてリアカバー4の通気孔4aの付近に配置している。具体的には、放電保護部53は、光学系の光軸Oに垂直な平面上でリアカバー4の通気孔4aと重畳する位置に配置されている。これにより、通気孔4aから基板2までの沿面距離が延長するため、基板2の電気的な損傷を防ぐことができる。この構成によって、装置を大型化せず、また、コストを増大させずに基板2を放電による電気的な損傷から保護することが可能になる。
【0027】
放電保護部53は、リアカバー4と接しておらず、通気孔4aとの間に空間がある。また、放電保護部53の周辺には、封止部材5を貫通する穴部である通気部54が形成されており、封止部材5によって通気孔4aが塞がれない構造となっている。
【0028】
放熱部52は、素子接触部52aで電気素子22と接触し吸熱する。素子非接触部52bは、電気素子22や他の素子及び基板2とは接触しないように素子接触部52aよりも低い位置に設けられている。素子接触部52aの先端には、テーパ状の誘い形状52cが設けられており、防水装置100の組立時に基板2と封止部材5が接触する際、素子接触部52aが電気素子22と適切に接触する位置に組まれるように、誘い形状52cは電気素子22を案内している。
【0029】
図5は、本実施例による封止部材5の詳細図である。素子接触部52aから吸熱された電気素子22の熱は、封止部材5の背面部52dからリアカバー4へと伝達され、リアカバー4から外気に放熱される。
【0030】
防水装置100は小型であるため、多くの部品を組み込むことに対して作業性が非常に悪い。これは、部品の位置決め形状を設ける空間や組み込みの作業を行う空間が限られているためである。
【0031】
本実施例による封止部材5を使用することにより、封止部51、放電保護部53、放熱部52の3つの部品を組み立てる工程を一度に行えるため、位置決め形状は部品1つ分で良く、作業も1工程で済むため組立性が非常に高くなる。
【0032】
上記の構成により、装置内の基板に実装された電気素子を電気的に保護し、効率的に電気素子の放熱を行いつつ防水性能を確立した上で、装置の小型化と良好な組み立て性を両立することを可能としている。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また設計機能を考慮した構成であれば、それを限定するものではない。
【符号の説明】
【0034】
フロントカバー 3
リアカバー 4
筐体 7
封止部材 5
封止部 51
放熱部 52
放電保護部 53