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特開2022-191888回転体の変位測定装置ならびに車輪に加わる横力およびモーメントの測定装置
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  • 特開-回転体の変位測定装置ならびに車輪に加わる横力およびモーメントの測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191888
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】回転体の変位測定装置ならびに車輪に加わる横力およびモーメントの測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/013 20060101AFI20221221BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20221221BHJP
   G01L 5/169 20200101ALI20221221BHJP
   G01L 5/166 20200101ALI20221221BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G01M17/013
G01B21/00 C
G01L5/169
G01L5/166
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100378
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 基弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳祥
(72)【発明者】
【氏名】天野 真輝
(72)【発明者】
【氏名】柴 真人
(72)【発明者】
【氏名】本庄 卓也
【テーマコード(参考)】
2F051
2F069
3D131
【Fターム(参考)】
2F051AA01
2F051AB03
2F051AB05
2F051BA07
2F051DA01
2F051DB01
2F069AA02
2F069GG31
2F069GG45
2F069GG63
2F069HH15
2F069JJ17
2F069NN02
2F069NN26
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】簡易な構成の回転体の変位測定装置を提供する。
【解決手段】回転軸線周りに回転する回転体10の表面にマーク12を設け、回転体10の周囲に、回転体10を挟んで互いに対向する第1センサ20と第2センサ22を配置する。マーク12が、第1センサ20の位置から第2センサ22の位置までの表区間Saを通過するのに要した時間Taと、第2センサ22の位置から第1センサ20の位置までの裏区間Sbを通過するのに要した時間Tbを求める。時間Taと時間Tbを加算して回転体10の回転周期Tを求め、時間Taと回転周期Tの比から角度θa、さらに変位量Δzを求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線周りに回転する回転体に設けられ、前記回転体の回転に伴って旋回する第1マークと、
前記回転軸線を挟んで配置され、前記第1マークの通過をそれぞれ検出する第1センサおよび第2センサと、
前記第1センサおよび前記第2センサの検出に基づき、前記第1マークが前記第1センサの位置から前記第2センサの位置までの表区間を通過するのに要した第1マーク表区間通過時間と、前記第1マークが前記第2センサの位置から前記第1センサの位置までの裏区間を通過するのに要した第1マーク裏区間通過時間との少なくとも一方を算出する区間通過時間算出器と、
前記回転体の回転周期を算出する回転周期算出器と、
前記第1マーク表区間通過時間と前記第1マーク裏区間通過時間の少なくとも一方と、前記回転周期とに基づき、前記回転軸線に直交し、かつ前記第1センサと前記第2センサの対向方向に直交する方向の変位を算出する変位算出器と、
を含む、回転体の変位測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転体の変位測定装置であって、前記変位算出器は、前記第1マーク表区間通過時間と前記回転周期の比に基づき前記変位を算出する、回転体の変位測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転体の変位測定装置であって、前記変位算出器は、前記第1マーク表区間通過時間と前記第1マーク裏区間通過時間の差分と前記回転周期に基づき前記変位を算出する、回転体の変位測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転体の変位測定装置であって、前記回転周期算出器は、前記第1マーク表区間通過時間と前記第1マーク裏区間通過時間の和を前記回転周期として算出する、回転体の変位測定装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転体の変位測定装置であって、前記回転周期算出器は、前記第1センサによる前記第1マークの前回の検出から今回の検出までの時間に基づき前記回転周期を算出する、回転体の変位測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の回転体の変位測定装置であって、さらに、前記回転体の前記回転周期の変動が所定値以上となった場合、前記変位算出器の算出した前記変位の出力を禁止する安定性判定器を含む、回転体の変位測定装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転体の変位測定装置であって、前記区間通過時間算出器は前記第1マーク表区間通過時間を算出し、前記回転周期算出器は、前記第1マークが表区間を通過している間の回転速度に基づき前記回転周期を算出する、回転体の変位測定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の回転体の変位測定装置であって、
前記回転体の、前記回転軸線に関して前記第1マークに対して反対側に設けられ、前記回転体の回転に伴って旋回する第2マーク、
をさらに含み、
前記第1センサおよび前記第2センサは、前記第2マークの通過を検出し、
前記区間通過時間算出器は、前記第2マークが前記裏区間を通過するのに要した第2マーク裏区間通過時間を算出し、
前記回転周期算出器は、前記第1マーク表区間通過時間と前記第2マーク裏区間通過時間の和を前記回転周期として算出する、
回転体の変位測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回転体の変位測定装置であって、
前記回転体の、前記回転軸線に関して互いに反対側に設けられ、前記回転体の回転に伴って旋回する第3マークおよび第4マーク、
をさらに含み、
前記第1センサおよび前記第2センサは、前記第3マークおよび前記第4マークの通過を検出し、
前記区間通過時間算出器は、前記第3マークが前記表区間を通過するのに要した第3マーク表区間通過時間を算出し、また前記第4マークが前記裏区間を通過するのに要した第4マーク裏区間通過時間を算出し、
前記回転周期算出器は、さらに、前記第3マーク表区間通過時間と前記第4マーク裏区間通過時間の和を前記回転体の第2の回転周期として算出し、
前記変位算出器は、さらに、前記第3マーク表区間通過時間と前記第4マーク裏区間通過時間の少なくとも一方と、前記第2の回転周期とに基づき、前記変位を算出する、
回転体の変位測定装置。
【請求項10】
ハブキャリアに回転可能に支持され、車両の車輪と一体となって回転するアクスルハブと、
前記アクスルハブの傾動の中心から離れた位置における当該アクスルハブの車両上下方向の変位を検出する請求項1から9のいずれか1項に記載の回転体の変位測定装置と、
前記車両上下方向の変位に基づきアクスルハブの車両前後方向に直交する鉛直面内の角度変位を算出する鉛直角度変位算出部と、
前記鉛直面内の角度変位に基づき前記車輪に加わる横力を算出する横力算出部と、
を含む、車輪横力測定装置。
【請求項11】
ハブキャリアに回転可能に支持され、車両の車輪と一体となって回転するアクスルハブと、
前記アクスルハブの傾動の中心から離れた位置における当該アクスルハブの車両前後方向の変位を検出する請求項1から9のいずれか1項に記載の回転体の変位測定装置と、
前記車両前後方向の変位に基づき前記アクスルハブの水平面内の角度変位を算出する水平角度変位算出部と、
前記水平面内の角度変位に基づき前記車輪に加わる鉛直軸周りのモーメントを算出するモーメント算出部と、
を含む、車輪モーメント測定装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転軸線に直交する方向の変位を検出する変位測定装置、ならびにこの変位測定装置を利用した車輪に加わる横力およびモーメントの測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、回転機械、特に車両の車輪支持用軸受ユニットのハブ(2)の回転軸線に直交する方向の変位を測定可能な測定装置が開示されている。ハブ(2)には、このハブ(2)と一体にエンコーダ(4)が固定されている。エンコーダ(4)は、円筒形状であり、周方向にスリット状の透孔(5)と柱部(6)が交互に配列されている。第一から第四センサ(7~10)は、透孔(5)と柱部(6)に応じた信号を出力し、ハブ(2)と共にエンコーダ(4)が回転すると、透孔(5)と柱部(6)の配列周期に対応した周期の波形を有する信号を出力する。下記特許文献1では、この信号の位相の変化に基づき、エンコーダ(4)の設置位置におけるハブ(2)の変位を検出している。なお、( )内の符号は、下記特許文献1で用いられた符号であり、本願の実施形態の説明で用いられる符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-225106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転体、例えば車両の車輪に加わる力およびモーメントを車輪のハブの変位に基づき測定する場合、回転体の非対称性により生じる変位および路面の細かな凹凸等によるランダムな変位が外乱となる。上述のエンコーダを用いた測定において、回転体の非対称性により生じる変位を除去するために、得られた波形の電気信号に対して帯域フィルタを用いることが考えられるが、十分には除去しきれない。回転体の回転周期が変動する場合、それに合わせて帯域フィルタの帯域を変化させる必要があり、構成が複雑となる。また、ランダムな変位は、帯域フィルタでは対応できず、時間に対して平均化することで除去することが考えられるが、必要な信号についても平均化により除去されるおそれがある。
【0005】
本発明は、回転体の変位を簡易に、また正確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転体の変位測定装置は、回転軸線周りに回転する回転体に設けられて当該回転体の回転に伴って旋回する第1マークと、回転軸線を挟んで配置され、第1マークの通過をそれぞれ検出する第1センサおよび第2センサと、第1センサおよび第2センサの検出に基づき、第1マークが第1センサの位置から第2センサの位置までの表区間を通過するのに要した第1マーク表区間通過時間と、第1マークが第2センサの位置から第1センサの位置までの裏区間を通過するのに要した第1マーク裏区間通過時間との少なくとも一方を算出する区間通過時間算出器と、回転体の回転周期を算出する回転周期算出器と、第1マーク表区間通過時間と第1マーク裏区間通過時間の少なくとも一方と、回転周期とに基づき、回転体の回転軸線に直交し、かつ第1センサと第2センサの対向方向に直交する方向の変位を算出する変位算出器と、を含む。
【0007】
変位算出器は、第1マーク表区間通過時間と回転周期の比に基づき回転体の変位を算出するものとすることができる。
【0008】
また、変位算出器は、第1マーク表区間通過時間と第1マーク裏区間通過時間の差分と回転周期に基づき回転体の変位を算出するものとすることができる。
【0009】
回転周期算出器は、第1マーク表区間通過時間と第1マーク裏区間通過時間の和を回転体の回転周期として算出するものとすることができる。
【0010】
また、回転周期算出器は、第1センサによる第1マークの前回の検出から今回の第1マークの検出までの時間に基づき回転周期を算出するものとすることができる。
【0011】
さらに、回転体の回転周期の変動が所定値以上となった場合、変位算出器の算出した変位の出力を禁止する安定性判定器を含むものとすることができる。
【0012】
また、区間通過時間算出器は第1マーク表区間通過時間を算出するもの、回転周期算出器は第1マークが表区間を通過している間の回転速度に基づき回転周期を算出するものとすることができる。
【0013】
さらに、回転体の変位測定装置は、回転体の、回転軸線に関して第1マークに対して反対側に設けられ、回転体の回転に伴って旋回する第2マークをさらに含むものとすることができ、第1センサおよび第2センサは、第2マークの通過を検出するもの、区間通過時間算出器は、第2マークが裏区間を通過するのに要した第2マーク裏区間通過時間を算出するもの、回転周期算出器は、第1マーク表区間通過時間と第2マーク裏区間通過時間の和を回転体の回転周期として算出するものとすることができる。
【0014】
さらに、回転体の変位測定装置は、第1マークおよび第2マークに加え、回転体の、回転軸線に関して互いに反対側に設けられ、回転体の回転に伴って旋回する第3マークおよび第4マークをさらに含むものとすることができ、第1センサおよび第2センサは、さらに第3マークおよび第4マークの通過を検出するもの、区間通過時間算出器は、さらに第3マークが表区間を通過するのに要した第3マーク表区間通過時間および第4マークが裏区間を通過するのに要した第4マーク裏区間通過時間を算出するもの、回転周期算出器は、さらに、第3マーク表区間通過時間と第4マーク裏区間通過時間の和を回転体の第2の回転周期として算出するもの、変位算出器は、さらに、第3マーク表区間通過時間と第4マーク裏区間通過時間の少なくとも一方と、第2の回転周期とに基づき変位を算出するものとすることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る車輪横力測定装置は、ハブキャリアに回転可能に支持され、車両の車輪と一体となって回転するアクスルハブと、アクスルハブの傾動の中心から離れた位置における当該アクスルハブの車両上下方向の変位を検出する前述した回転体の変位測定装置いずれか1つと、車両上下方向の変位に基づきアクスルハブの車両前後方向に直交する鉛直面内の角度変位を算出する鉛直角度変位算出部と、鉛直面内の角度変位に基づき車輪に加わる横力を算出する横力算出部と、を含む。
【0016】
本発明のさらに他の態様に係る車輪モーメント測定装置は、ハブキャリアに回転可能に支持され、車両の車輪と一体となって回転するアクスルハブと、アクスルハブの傾動の中心から離れた位置における当該アクスルハブの車両前後方向の変位を検出する前述した回転体の変位測定装置いずれか1つと、車両前後方向の変位に基づきアクスルハブの水平面内の角度変位を算出する水平角度変位算出部と、水平面内の角度変位に基づき車輪に加わる鉛直軸周りのモーメントを算出するモーメント算出部と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る回転体の変位測定装置によれば、回転周期ごとに変位が検出され、回転周期に同期して生じる外乱、およびランダムに生じる外力を簡易に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る変位の測定原理を説明するための図である。
図2】第1および第2センサの出力信号の波形を示す図であり、回転軸10が変位していないときの波形を示す図である。
図3】第1および第2センサの出力信号の波形を示す図であり、回転軸10が変位しているときの波形を示す図である。
図4】変位測定装置100の構成を示すブロック図である。
図5】変位測定装置102の構成を示すブロック図である。
図6】変位測定装置104の構成を示すブロック図である。
図7】変位測定装置106の構成を示すブロック図である。
図8】変位測定装置108の構成を示す図である。
図9】変位測定装置108の第1および第2センサの出力信号の波形を示す図である。
図10】変位測定装置108の構成を示すブロック図である。
図11】4つのマークを有する変位測定装置の構成を示す図である。
図12】車両の車輪、車軸、および車輪に加わる外力の測定装置の概要を示す図である。
図13】車輪に加わる横力およびモーメントを説明するための図である。
図14】車輪および車輪周辺の構成を模式的に示す断面図である。
図15】車輪に作用する横力を測定する装置の構成を示すブロック図である。
図16】車輪に作用するZ軸周りのモーメントを測定する装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に従って説明する。図1は、回転体としての回転軸10の変位を測定する測定装置100の構成およびその検出原理を説明するための図である。図1において、左右方向をX軸方向(右方向が正)、紙面を貫く方向をY軸方向(手前方向が正)、上下方向をZ軸方向(下方向が正)とする。回転軸10の中心が符号Oで示され、回転軸10の直径はdである。特に、変位前の回転軸10の位置が符号10sで示す破線で、そのときの中心が符号Osで示されている。以下、特に変位前の回転軸10、その中心Oについて言及する必要があるときには、回転軸10s、中心Osと記す。Z方向にΔz変位した後の回転軸10の位置が実線で示されている。変位量Δzは、説明のために強調されており、現実の変位は直径に対して百分の1以下である。
【0020】
回転軸10の周囲には、2つのセンサ20,22が回転軸10を挟むように配置されている。右側のセンサを第1センサ20、左側のセンサを第2センサ22と記す。第1および第2センサは、変位前の回転軸の中心Osに関し、対称に配置されている。回転軸10の表面には、マーク12が設けられており、マーク12は、回転軸10の回転に伴って回転軸の中心Oの周りを旋回する。第1および第2センサ20,22は、回転軸10の回転に伴うマーク12の通過を検出する。つまり、第1および第2センサ20,22は、その検出対象範囲をマーク12が通過すると、検出信号を出力する。第1および第2センサ20,22とマーク12は、例えば、磁気センサと、回転軸10の表面上に設けられた磁性体で形成された突起との組合せとすることができる。突起が磁気センサに接近すると、磁気センサ周囲の磁場が変化し、この変化によって突起の通過を検出することができる。また、第1および第2センサ20,22とマーク12は、光電センサと、回転軸10の表面と反射率の異なる検出片との組み合わせとすることもできる。光電センサは、回転軸10表面に向けて光を照射し、その光の検出片から反射光を受光し、これに基づき検出信号を出力する。
【0021】
回転軸10が、図1において反時計回りに回転するとき、マーク12は第1センサ20に検出された後、回転軸10の上側の孤に沿って移動し、第2センサ22の検出対象位置に達し、第2センサ22に検出される。この区間を表区間Saと記す。第2センサ22から第1センサ20までの下側の弧に対応する区間を裏区間Sbと記す。この「表」「裏」は、2つの区間Sa,Sbを、説明のために区別する目的で用いる。中心Oから表区間Saに対応する弧を見込む角の角度を2*θaとし、中心Oから裏区間Sbに対応する弧を見込む角の角度を2*θbとする。
【0022】
図2,3は、回転軸10が回転しているときの第1および第2センサ20,22の出力信号を示す図である。第1センサ20の出力信号が符号D1で示されており、第2センサ22の出力信号が符号D2で示されている。図2は、回転軸10が変位する前の信号を示し、図3は、回転軸10が変位した後の信号を示す。第1センサ20がマーク12を検出した時刻を符号t1で示し、第2センサ22がマーク12を検出した時刻を符号t2で示す。また、回転軸10のn回転目に係る時刻であることを、時刻t1,t2の後に(n)を付すことで表す。例えば、時刻t1(1)とは、回転軸10の1回転目に第1センサ20がマーク12を検出した時刻であることを示す。以下の各変数についても、(n)を各変数の後に付すことで、回転軸10のn回転目に係る変数であることを示す。
【0023】
マーク12が表区間Saを通過するのに要した時間Taは時刻t2と時刻t1の差として求められる(Ta(n)=t2(n)-t1(n))。時間Taを表区間通過時間Taと記す。同様に、マーク12が裏区間Sbを通過するのに要した時間Tbは、時刻t1と時刻t2の差として求められる(Tb(n)=t1(n+1)-t2(n))。時間Tbを裏区間通過時間Tbと記す。時間Tは、回転軸10が1回転した時間、すなわち回転周期である。回転周期を符号Tで表す。
【0024】
回転軸10が変位する前においては、表区間Saと裏区間Sbの長さは等しく、図2に示すように表区間通過時間Taと裏区間通過時間Tbも等しい。表区間Saおよび裏区間Sbにそれぞれ対応する弧を見込む中心角は180°であり、θa=θb=90°である。回転軸10がZ方向に変位した場合、表区間Saおよび裏区間Sbの長さが変化し、これに応じて表区間通過時間Taおよび裏区間通過時間Tbも変化する。したがって、表区間通過時間Taおよび裏区間通過時間Tbを測定することで、表区間Saおよび裏区間Sbの弧長、そしてこれらの弧を見込む中心角の角度2*θa,2*θbを次式(1),(2)に算出することができる。
2*θa(n)=2*π*Ta(n)/T(n) ・・・(1)
2*θb(n)=2*π*Tb(n)/T(n) ・・・(2)
回転周期T(n)は、第1センサ20の検出時刻t1(n)から次の検出時刻t1(n+1)までの経過時間(T(n)=t1(n+1)-t1(n))により、または表区間通過時間Ta(n)と裏区間通過時間Tb(n)の和(T(n)=Ta(n)+Tb(n))により求めることができる。
【0025】
中心角から回転軸10の変位量Δz(n)は、次式(3)または(4)により算出することができる。
Δz(n)=(d/2)*cos(θa(n))
=(d/2)*cos(π*Ta(n)/T(n)) ・・・(3)
Δz(n)=-(d/2)*cos(θb(n))
=-(d/2)*cos(π*Tb(n)/T(n)) ・・・(4)
【0026】
このように、回転軸10の変位量Δzは、表区間通過時間Taまたは裏区間通過時間Tbと、回転周期Tの比に基づき算出することができる。
【0027】
また、変位量Δzを裏区間Sbと表区間Saの差に基づき算出することもできる。裏区間Sbと表区間Saの差(Sb-Sa)に対応する弧を見込む中心角(2*θb(n)-2*θa(n))は、角度θaの余角φの4倍である。したがって、Δz(n)は次式(5)により算出することができる。
Δz(n)=(d/2)*sin{(θb(n)-θa(n))/2}
=(d/2)*sin{π*(Tb(n)-Ta(n))/(2*T(n))} ・・・(5)
【0028】
図4は、回転体の変位測定装置100の構成を示すブロック図である。第1通過時刻記録器24は、第1センサ20の検出信号に基づき、マーク12が第1センサ20の検出対象領域を通過した時刻t1を記録する。第2通過時刻記録器26は、第2センサ22の検出信号に基づき、マーク12が第2センサ22の検出対象領域を通過した時刻t2を記録する。区間通過時間算出器28は、第1および第2センサ20,22がマーク12を検出した時刻t1,t2に基づき、マーク12が表区間Saを通過するのに要した時間Taを算出し(Ta(n)=t2(n)-t1(n))、また、マーク12が裏区間Sbを通過するのに要した時間Tbを算出する(Tb(n)=t1(n+1)-t2(n))。回転周期算出器30は、表区間通過時間Taと裏区間通過時間Tbを加算して回転周期Tを算出する(T(n)=Ta(n)+Tb(n))。変位算出器32は、表区間通過時間Taと裏区間通過時間Tbの一方または双方と、回転周期Tに基づき、式(3)~(5)のいずれかにより変位量Δzを算出する。
【0029】
第1および第2通過時刻記録器24,26、区間通過時間算出器28、回転周期算出器30ならびに変位算出器32は、それぞれ独立した機器であってよく、またこれらの内のいくつか、または全てが1つの演算処理装置により構成されてもよい。演算処理装置が所定のプログラムに従って動作することにより、各機器として機能する。
【0030】
図5は、他の態様の回転体の変位測定装置102の構成を示すブロック図である。前述の変位測定装置100と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。変位測定装置102の、変位測定装置100との差異は、回転周期算出器である。この変位測定装置102の回転周期算出器34は、第1センサ20が、マーク12の前回の検出から今回の検出までの時間を回転周期Tとして算出する(T(n)=t1(n)-t1(n-1))。第1および第2通過時刻記録器24,26、区間通過時間算出器28、回転周期算出器34ならびに変位算出器32は、それぞれ独立した機器であってよく、またこれらの内のいくつか、または全てが1つの演算処理装置により構成されてもよい。
【0031】
図6は、さらに他の態様の回転体の変位測定装置104の構成を示すブロック図である。前述の変位測定装置100,102と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。変位測定装置104は、変位測定装置102に安定性判定器36を追加したものである。安定性判定器36は、回転周期算出器34が算出した回転周期T(n)を、前回の回転周期T(n-1)と比較し、それらの差の絶対値が所定の値δ以下であれば、回転が安定している判定する。そして、このとき変位算出器32で算出された変位量Δzは信頼できるとして、これを出力する。上述の式(3),(4),(5)による変位量Δzの算出は、回転軸10の回転速度が1回転中に変動しないことが前提となっている。変位測定装置104においては、回転周期Tの変動が所定の範囲(±δ)に収まることで回転速度が安定であることを担保している。第1および第2通過時刻記録器24,26、区間通過時間算出器28、回転周期算出器34、変位算出器32ならびに安定性判定器36は、それぞれ独立した機器であってよく、またこれらの内のいくつか、または全てが1つの演算処理装置により構成されてもよい。
【0032】
図7は、さらに他の態様の回転体の変位測定装置106の構成を示すブロック図である。前述の変位測定装置102と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。区間通過時間算出器38は、第1および第2センサ20,22がマーク12を検出した時刻t1,t2に基づき、マーク12が表区間Saを通過するのに要した時間Taを算出する(Ta(n)=t2(n)-t1(n))。また、変位測定装置106は、回転軸10の回転速度を検出する回転速度センサ40を含む。回転速度センサ40は、瞬時の回転速度を検出することができる。回転周期算出器42は、マーク12が表区間Saを通過する間の回転速度センサ40の出力に基づき、回転周期T1を算出する。回転速度は、マーク12が表区間Saを通過する間の平均の回転速度でよく、またこの間のいずれかの時点の回転速度としてもよい。変位算出器44は、上述の式(3)の回転周期T(n)を回転周期T1(n)で置き換えた次式(6)に基づき、変位量Δz(n)を算出する。
Δz(n)=(d/2)*cos(θa(n))
=(d/2)*cos(π*Ta(n)/T1(n)) ・・・(6)
この算出方法によれば、マーク12が裏区間Sbを通過しているときに回転速度が変化しても、変位量Δzの算出に影響を与えない。第1および第2通過時刻記録器24,26、区間通過時間算出器38、回転周期算出器42、ならびに変位算出器44は、それぞれ独立した機器であってよく、またこれらの内のいくつか、または全てが1つの演算処理装置により構成されてもよい。
【0033】
図8~10は、さらに他の態様の回転体の変位測定装置108を示す図であり、図8は回転軸10との関係を示す図、図9は検出信号の波形を示す図である。図10は、変位測定装置108の構成を示すブロック図である。変位測定装置108は、前述の変位測定装置100に、前述のマーク12と同じ、2つめのマーク14が加えられている。2つのマークを区別するために一方を第1マーク12、他方を第2マーク14と記す。第1マーク12と第2マーク14は、回転軸10の中心Oに関して対称に位置している。
【0034】
図9は、第1および第2センサ20,22の出力波形を示しており、上段が回転軸10が変位していないとき、中段が回転軸10が+Z方向(図において下方)に変位したとき、下段が-Z方向(図において上方)に変位したときの出力を示す。第1センサ20の出力信号D1において、第1マーク12が通過したときの信号を符号D1m1と記し、第2マーク14が通過したときの信号を符号D1m2と記す。同様に、第2センサ22の出力信号D2において、第1マーク12が通過したときの信号を符号D2m1と記し、第2マーク14が通過したときの信号を符号D2m2と記す。それぞれのセンサ20,22に関し、第1マーク12と第2マーク14は、センサの検出対象位置を交互に通過する。マークが2つとなったことにより、第1および第2センサ20,22のそれぞれ検出信号は、回転軸10の1回転に付き2回出力される。そこで、第1センサ20の第1および第2マーク12,14の検出時刻t1について、t1(1),t1(1.5),t1(2),・・・,t1(n),t1(n+0.5),・・・と括弧内の数字を0.5刻みとする。第2センサ22の検出時刻t2についても同様である。検出時刻t1は、図9の場合、括弧内の数値が整数のときが第1マーク12が通過した時刻、端数(0.5)があるときが第2マーク14が通過した時刻である。これとは逆に、第2センサ22の検出時刻t2は、括弧内の数値が整数のときが第2マーク14が通過した時刻、端数(0.5)があるときが第1マーク12が通過した時刻である。また、第1マーク12が表区間Saを通過するのに要した時間Tam1は、第2センサ22の検出時刻t2(n+0.5)からその直前の第1センサ20の検出時刻t1(n)を減算したものである(Tam1(n)=t2(n+0.5)-t1(n))。また、第2マーク14が裏区間Sbを通過するのに要した時間Tbm2は、第1センサ20の検出時刻t1(n+0.5)からその直前の第2センサ22の検出時刻t2(n)を減算したものである(Tbm2(n)=t1(n+0.5)-t2(n))。また、第1マーク12が裏区間Sbを通過するのに要した時間が符号Tbm1で、第2マーク14が表区間Saを通過するのに要した時間が符号Tam2で示されている。
【0035】
図9の上段が示すように、回転軸10が変位していないとき、第1センサ20が第1マーク12を検出するのと、第2センサ22が第2マーク14を検出するのは同時である。同様に、第1センサ20が第2マーク14を検出するのと、第2センサ22が第1マーク12を検出するのは同時である。図9の中段に示すように、回転軸10が下方に変位した場合、第1マーク12の表区間通過時間Tam1は短くなり、第2マーク14の裏区間通過時間Tbm2は長くなる。また、図9の下段に示すように、回転軸10が上方に変位した場合、第1マーク12の表区間通過時間Tam1は長くなり、第2マーク14の裏区間通過時間Tbm2は短くなる。
【0036】
図10に示す変位測定装置108において、前述の変位測定装置102と同様の構成については同一の符号を付し,その説明を省略する。区間通過時間算出器46は、第1マーク12の表区間通過時間Tam1と、これと同時期の第2マーク14の裏区間通過時間Tbm2を算出する。
【0037】
回転周期算出器48は、第1マーク12の表区間通過時間Tam1と、これと同時期の第2マーク14の裏区間通過時間Tbm2に基づき回転周期T1を算出する。第1マーク12が表区間Saを通過するのと並行して第2マーク14が裏区間Sbを通過する。この同じ時期の表区間通過時間Tam1と裏区間通過時間Tbm2は、加算すれば回転軸10の回転周期T2である。つまり、この回転周期T2は、回転軸10の約半回転の情報に基づき得られた回転速度である。よって、1回転に要した時間に基づいて求めた回転周期に比べて回転変動の影響を受けにくい。
【0038】
変位算出器50は、第1マーク12の表区間通過時間Tam1と、回転周期T2に基づき次式(7)から変位量Δz(n)を算出する。
Δz(n)=(d/2)*cos(π*Tam1(n)/T2(n)) ・・・(7)
【0039】
また、変位の向きは、時間的に近接する第1センサ20の出力信号D1m1,D1m2と第2センサ22の出力信号D2m1,D2m2において、第2センサ22の出力信号D2m1,D2m2が第1センサ20の出力信号D1m1,D1m2よりも先であるとき(図9の中段)、変位量Δzは正、つまり下向きの変位である。逆に、第1センサ20の出力信号D1m1,D1m2が第2センサ22の出力信号D2m1,D2m2よりも先であるとき(図9の下段)、変位量Δzは負、つまり上向きの変位である。例えば、図9の時刻t1(2),t2(2)において、出力信号D2m2が先であると下向きの変位、D1m1が先であると上向きの変位である。
【0040】
この算出方法によれば、第2マーク14が表区間Saを通過しているときに(このとき第1マーク12は裏区間Sbにある。)は回転速度が変化しても、変位量Δzの算出に影響を与えない。第1および第2通過時刻記録器24,26、区間通過時間算出器46、回転周期算出器48、ならびに変位算出器50は、それぞれ独立した機器であってよく、またこれらの内のいくつか、または全てが1つの演算処理装置により構成されてもよい。
【0041】
前述の変位測定装置108においては、第1マーク12と第2マーク14からなる1対のマークによる検出信号に基づき変位量Δzを算出した。さらに、図11に示すように、第1および第2マーク12,14と同一の周面上で異なる位置に第3および第4マーク16,18を設け、第3および第4マーク16,18からなる1対のマークの検出信号に基づき変位量Δzを算出するよう変位測定装置を構成してよい。第3および第4マーク16,18は、周上の位置のみ第1および第2マーク12,14と相違し、変位測定装置108に関して説明したのと同様に第3および第4マーク16,18の検出に基づき変位量Δzが算出される。変位測定装置108の第1通過時刻記録器24は、第1センサ20が4つのマークの通過を検出した時刻を順次記録し、同様に第2通過時刻記録器26も第2センサ22が4つのマークの通過を検出した時刻を順次記録する。区間通過時間算出器46は、第1および第2マーク12,14の通過時刻に基づき第1マークの表区間通過時間Tam1、第2マーク裏区間通過時間Tbm2を算出し、同様に第3および第4マーク16,18の通過時刻に基づき第3マークの表区間通過時間Tam3、第4マークの裏区間通過時間Tbm4を算出する。回転周期算出器48と変位算出器50はそれぞれ、2つのマーク対ごとに回転周期T2、変位量Δzを算出する。2対のマークを設けたことにより、変位量Δzの測定の頻度が高められる。マークの対を更に増やせば、変位量Δzの検出頻度をより高めることができる。
【0042】
図12は、車両の車輪60に作用する力およびモーメントを示す図である。車輪60の回転軸線A上かつ車輪の幅の中央に位置する点を原点Owとし、原点Owを通り車両の後方に向かう軸をX軸、原点Owを通り車両の左右方向において外側に向かう軸をY軸、原点Owを通り鉛直下方に向かう軸をZ軸とする。各軸に沿う方向の力をFx,Fy,Fzとし、各軸周りのモーメントをMx,My,Mzとする。また、以下の説明において、回転軸線Aに沿う方向を軸線方向、回転軸線Aに直交する方向を径方向と記す。
【0043】
車輪60は、車輪60と一体となって回転する車軸62を介して、車両の車体に対して回転可能に支持されている。車軸62は、前述の回転軸10に対応する。車軸62上には前述のマーク12が設けられ、マーク12は、車軸62の回転に伴って回転軸線A周りを旋回する。X軸方向において回転軸線Aを挟むように1対のセンサ20V,22Vが配置され、Z軸方向において回転軸線Aを挟むように1対のセンサ20H,22Hが配置されている。センサ20V,22Vは、前述の第1センサ20および第2センサ22に相当し、センサの設置位置における車軸62のZ軸に沿う方向、つまり鉛直方向の変位の測定に用いられる。以降、センサ20V,22Vを第1鉛直変位センサ20V、第2鉛直変位センサ22Vと記す。センサ20H,22Hは、前述の第1センサ20および第2センサ22に相当し、センサの設置位置における車軸62のX軸に沿う方向、つまり水平方向の変位の測定に用いられる。以降、センサ20H,22Hを第1水平変位センサ20H、第2水平変位センサ22Hと記す。
【0044】
定常円旋回時に車輪60に作用する外力は、車両の進行方向の摩擦を無視すれば、Y軸に沿う方向の路面からの摩擦力Fcのみである(Fy=Fc)。また、摩擦力Fcは、図13に示すように、車輪60の接地範囲の後方寄りの位置に作用する。これは、車輪60にスリップアングルが生じた場合、車輪60のタイヤのトレッド面のゴムが後方にいくほど大きく変形するためである。摩擦力Fcが後方にずれて作用することにより、Z軸周りのモーメントMzを生じさせる。
【0045】
図14は、車輪60および車輪60を支持する構成を模式的に示す断面図である。車輪60は、ホイール64とホイール64の外周に装着されたタイヤ66から構成される。ホイール64は、円板形状のホイールディスク68と、ホイールディスク68の外周に結合されて一体となった略円環形状のホイールリム70を含む。ホイールリム70の外周にタイヤ66が装着される。ホイールディスク68の中心には、アクスルハブ72が結合されており、アクスルハブ72は車輪60と一体に回転する。アクスルハブ72は、車軸62として機能するハブ軸74と、ハブ軸74の一端に固定され、ホイールディスクが結合されるハブフランジ76を含む。ハブ軸74は、ベアリング78を介して、ハブキャリア80により回転可能に支持されている。ハブキャリア80は、サスペンションアーム(不図示)等のサスペンション部品を介して車体に支持されている。ハブキャリア80は操舵車輪にあっては、ナックルと称される。ベアリング78は、2列に配置されたボール、ローラ等の転動体82を有する。ハブ軸74は、車輪60が外力を受けると傾動中心Otを中心として傾動する。傾動中心Otの位置は,ベアリング78の構造により定まり、この実施形態では、回転軸線A上の、2列の転動体82の中央にある。
【0046】
第1鉛直変位センサ20Vと第2鉛直変位センサ22Vは、車両の前後方向においてハブ軸74を挟むように配置され、ハブキャリア80に固定されている。また、第1水平変位センサ20Hと第2水平変位センサ22Hは、車両の上下方向においてハブ軸74を車挟むように配置されハブキャリアに固定されている。これら4つのセンサ20V,22V,20H,22Hは、傾動中心Otから軸線方向に距離Lだけ離れた位置に配置されている。また、マーク12も傾動中心Otから軸線方向に距離Lだけ離れた位置に配置されている。第1鉛直変位センサ20Vと第2鉛直変位センサ22Vのマーク12の検出に基づき、モーメント演算部86が車輪60に加わるZ軸周りのモーメントMzを算出する。また、第1水平変位センサ20Hと第2水平変位センサ22Hのマーク12の検出に基づき、横力演算部84が車輪60に加わるY軸方向の力Fyを算出する。
【0047】
図15は、車輪60に加わるF軸方向の横力を測定する車輪横力測定装置120の構成を示すブロック図である。車輪横力測定装置120は、前述の変位測定装置100を含み、この変位測定装置100において第1および第2センサ20,22をハブ軸74の前後に配置して、前述の第1鉛直変位センサ20V,第2鉛直変位センサ22Vとする。変位測定装置100は、マーク12が設けられた位置のハブ軸74のZ軸方向の変位量Δz(n)を出力する。横力演算部84の傾動角算出器88は、変位量Δz(n)と、距離Lに基づきハブ軸74のYZ平面内での傾動角λyz(n)を次式(8)により算出する。
λyz(n)=arctan(Δz(n)/L) ・・・(8)
【0048】
さらに、横力算出器90が傾動角λyz(n)と、YZ平面内での傾動に関するハブ剛性Kyzに基づき、横力Fy(n)を次式(9)により算出する。
Fy(n)=Kyz*λyz(n) ・・・(9)
ハブ剛性Kyzは、あらかじめ横力Fyに対する傾動角λyzを測定して求めておく。
【0049】
傾動角算出器88と横力算出器90は独立した機器であってよく、また1つの演算処理装置により構成されてもよい。また、傾動角算出器88と横力算出器90は、変位測定装置100と共通の演算処理装置の機能として実現されてもよい。車輪横力測定装置120において、変位測定装置100は、前述の変位測定装置102,104,106,108のいずれかと入れ替えてもよい。
【0050】
図16は、車輪60に加わるZ軸周りのモーメントを測定する車輪モーメント測定装置122の構成を示すブロック図である。車輪モーメント測定装置122は、前述の変位測定装置100を含み、この変位測定装置100において第1および第2センサ20,22をハブ軸74の上下に配置して、前述の第1水平変位センサ20H,第2水平変位センサ22Hとする。変位測定装置100は、マーク12が設けられた位置のハブ軸74のX軸方向の変位量Δx(n)を出力する。モーメント演算部86の傾動角算出器92は、変位量Δx(n)と、距離Lに基づきハブ軸74のXY平面内での傾動角λxy(n)を次式(10)により算出する。
λxy(n)=arctan(Δx(n)/L) ・・・(10)
【0051】
さらに、モーメント算出器94が傾動角λxy(n)と、XY平面内での傾動に関するハブ剛性Kxyに基づき、Z軸周りのモーメントMz(n)を次式(11)により算出する。
Mz(n)=Kxy*λxy(n) ・・・(11)
ハブ剛性Kxyは、あらかじめモーメントMzに対する傾動角λxyを測定して求めておく。
【0052】
傾動角算出器92とモーメント算出器94は独立した機器であってよく、また1つの演算処理装置により構成されてもよい。また、傾動角算出器92とモーメント算出器94
は、変位測定装置100と共通の演算処理装置の機能として実現されてもよい。車輪モーメント測定装置122において、変位測定装置100は、前述の変位測定装置102,104,106,108のいずれかと入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 回転軸、12 マーク(第1マーク)、14 第2マーク、16 第3マーク、18 第4マーク、20 第1センサ、20V 第1鉛直変位センサ、20H 第1水平変位センサ、22 第2センサ、22V 第2鉛直変位センサ、22H 第2水平変位センサ、24 第1通過時刻記録器、26 第2通過時刻記録器、28,38,46 区間通過時間算出器、30,34,42,48 回転周期算出器、32,44,50 変位算出器、36 安定性判定器、40 回転速度センサ、60 車輪、62 車軸、72 アクスルハブ、74 ハブ軸、78 ベアリング、80 ハブキャリア、82 転動体、84 横力演算部、86 モーメント演算部、88,92 傾動角算出器、90 横力算出器、94 モーメント算出器、100,102,104,106,108 変位測定装置、120 車輪横力測定装置、122 車輪モーメント測定装置、O 回転軸の中心、D1 第1センサの出力信号、D2 第2センサの出力信号、Sa 表区間、Sb 裏区間、t1 第1センサの検出時刻、t2 第2センサの検出時刻、Ta 表区間通過時間、Tb 裏区間通過時間、T 回転周期、T1 回転周期、Fy 横力、Mz Z軸周りのモーメント、Ot 傾動中心、L 傾動中心Otとセンサ位置の距離、λyz,λxy 傾動角、Kyz,Kxy ハブ剛性。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16