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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191892
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】流れ分析方法、流れ分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20221221BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20221221BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20221221BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G01N1/10 J
G01N35/08 B
G01N1/44
G01N1/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100387
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】504049626
【氏名又は名称】ビーエルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AD06
2G052AD27
2G052AD46
2G052CA03
2G052CA11
2G052CA14
2G052EB01
2G052EB02
2G052EB11
2G052EB13
2G052HC09
2G052HC27
2G052HC28
2G052JA07
2G052JA08
2G058AA01
2G058AA03
2G058BA08
2G058BA10
2G058DA05
(57)【要約】
【課題】流れ分析方法の分析精度を向上させる。
【解決手段】本発明に係る流れ分析方法は、試料を導入する試料導入工程と、試料に試薬を添加する試薬添加工程と、前記試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させる加熱工程と、前記加熱工程にて得られた気化した試料を液化する液化工程と、管路に存する気体を除去する気液分離工程と、前記液化工程にて液化された試料について分析を行う分析工程とを実行する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内に試料を導入する試料導入工程と、
前記管路内を通って移送される試料に試薬を添加する試薬添加工程と、
前記試薬が添加された試料を加熱して、前記試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させる加熱工程と、
前記加熱工程にて得られた気化した試料を液化する液化工程と、
前記液化工程にて液化した試料について分析を行う分析工程と、
を実行する流れ分析方法であって、
更に、前記液化工程の実行後、且つ、前記分析工程の実行前に、前記管路に存する気体を除去する気液分離工程を実行することを特徴とする流れ分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の流れ分析方法であって、
前記試料導入工程の実行後、且つ、前記試薬添加工程の実行前に、導入された試料に気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを作製する流れ分析方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流れ分析方法であって、
前記試薬添加工程の実行時に添加する試薬として、酸性試薬を用いる流れ分析方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の流れ分析方法であって、
前記気液分離工程の実行後、且つ、前記分析工程の実行前に、前記気液分離工程にて得られた液体に気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを作製する流れ分析方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の流れ分析方法であって、
前記試料導入工程の前に、以下に示す工程を含む調製方法を実行して、前記試料を調製する流れ分析方法;
管路内に前試料を導入する前試料導入工程と、
前記管路内を通って移送される前試料に、前試料が沸騰しない温度にて加熱処理を行う加熱工程と、
前記管路内を通って移送される前試料の流れに抗する圧力を付与する加圧工程。
【請求項6】
試料を管路内に導入するためのサンプリング装置と、
前記管路内を通って移送される試料に試薬を添加する試薬添加装置と、
前記試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させるための加熱処理を行う加熱装置と、
前記加熱処理にて得られる気化した試料を液化する液化装置と、
前記液化装置にて液化した試料について分析を行う分析装置と、
を具備してなる流れ分析装置であって、
更に、前記管路に存する気体を除去する気液分離装置が備えられてなることを特徴とする流れ分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の流れ分析装置において、
前記管路内に導入された試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路内に作製する気泡分節装置が備えられてなる流れ分析装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の流れ分析装置において、
前記気液分離装置の下流側であり、且つ、前記分析装置の上流側に、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路内に作製する気泡分節装置がさらに備えられてなる流れ分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流れ分析方法、流れ分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「FIA」と略称されるフローインジェクション分析方法(Flow Injection Analysis)や、「CFA」と略称される連続流れ分析方法(Continuous Flow Analysis)などの「流れ分析方法」を利用して試料(水試料)に含まれる金属元素を分析する方法として、試料(水試料)に対して硝酸や塩酸等の試薬を添加した後、加熱処理を行う前処理工程を含む方法が知られている。
【0003】
この前処理工程は、主として試料中に共存する有機物、懸濁物および金属錯体等の分解、並びに、金属元素の溶液化を目的として行われる。
【0004】
従来の分析方法では、前記前処理工程の目的を達成し、正確な分析を行うためには、前記試薬添加後の試料について加熱処理する時間(加熱時間)を長く確保することが必要であった。そして、前記加熱時間を長く確保するために、「流れ分析方法」における移動相の流速を下げる必要があった。
【0005】
ここで、従来の加熱処理を必要とする前記分析方法においては、前記移動相の流速が低下することに起因して、正確な分析を行うことが困難となるとの問題があった。
【0006】
上記問題を解決する分析方法として、特許文献1に記載の、管路に試料を導入する試料導入工程と、前記管路内を通って移送される試料に加熱処理を行う加熱工程と、加熱処理後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析工程と、管路内を通って移動する試料の流れに抗する圧力を付与する加圧工程を含む流れ分析方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-134519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の分析方法を含む、従来の加熱処理を必要とする分析方法には、前記加熱時間を長く確保する必要があるため、前記分析方法を行うために必要な時間(分析時間)自体が長時間となるとの新たな技術的課題が存在する。また、従来の加熱処理を必要とする分析方法を実施するための分析装置は、加熱処理に供される流路を長くする必要があるため、装置自体が大型化するとの新たな技術的課題が存在する。さらに、前記加熱処理時に前記管路中に気体が発生し、当該気体が存在することによって、正確な分析が困難となる等の不具合が生じるおそれがあるとの技術的課題が存在する。
【0009】
本発明は前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、分析精度を向上することができる新規な流れ分析方法、及び、流れ分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の加熱時間を長く確保する必要があることに起因する技術的課題を解決する別の方法として、加熱処理時の加熱温度を、試料の液体成分が沸騰する程度、又はそれ以上の高温に設定することによって、前記試料と前記試薬との反応速度を向上させ、前記前処理工程の目的を達成するために必要な加熱時間を短縮することが考えられる。
【0011】
しかしながら、前記加熱温度を、試料の液体成分が沸騰する程度、又はそれ以上の高温に設定した場合、前記加熱処理時に気化した試料による大量の気泡が混入し、そのことに起因して、特許文献1に記載の分析方法よりも、正確な分析がより困難となるとの新たな技術的課題が発生する。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究の結果、分析の前に、試料を、当該試料の液体成分が沸騰する程度、又はそれ以上の高温にて加熱し気化させる加熱工程の後、気化した試料を液化させる液化工程および気化された試料中に混入していた気体(気泡)を除去する気液分離工程を行うことにより、前記新たな技術的課題を解決できることを見出し、本発明に想到した。
【0013】
具体的には、本発明の一実施態様は以下の構成を包含する。
【0014】
〔1〕管路内に試料を導入する試料導入工程と、
前記管路内を通って移送される試料に試薬を添加する試薬添加工程と、
前記試薬が添加された試料を加熱して、前記試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させる加熱工程と、
前記加熱工程にて得られた気化した試料を液化する液化工程と、
前記液化工程にて液化した試料について分析を行う分析工程と、
を実行する流れ分析方法であって、
更に、前記液化工程の実行後、且つ、前記分析工程の実行前に、前記管路に存する気体を除去する気液分離工程を実行することを特徴とする流れ分析方法。
【0015】
〔2〕〔1〕に記載の流れ分析方法であって、
前記試料導入工程の実行後、且つ、前記試薬添加工程の実行前に、導入された試料に気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを作製する流れ分析方法。
【0016】
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載の流れ分析方法であって、
前記試薬添加工程の実行時に添加する試薬として、酸性試薬を用いる流れ分析方法。
【0017】
〔4〕〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載の流れ分析方法であって、
前記気液分離工程の実行後、且つ、前記分析工程の実行前に、前記気液分離工程にて得られた液体に気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを作製する流れ分析方法。
【0018】
〔5〕〔1〕~〔4〕の何れか1つに記載の流れ分析方法であって、
前記試料導入工程の前に、以下に示す工程を含む調製方法を実行して、前記試料を調製する流れ分析方法;
管路に前試料を導入する前試料導入工程と、
前記管路内を通って移送される前試料に、前試料が沸騰しない温度にて加熱処理を行う加熱工程と、
前記管路内を通って移送される前試料の流れに抗する圧力を付与する加圧工程。
【0019】
〔6〕試料を管路内に導入するためのサンプリング装置と、
前記管路内を通って移送される試料に試薬を添加する試薬添加装置と、
前記試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させるための加熱処理を行う加熱装置と、
前記加熱処理にて得られる気化した試料を液化する液化装置と、
前記液化装置にて液化した試料について分析を行う分析装置と、
を具備してなる流れ分析装置であって、
更に、前記管路に存する気体を除去する気液分離装置が備えられてなることを特徴とする流れ分析装置。
【0020】
〔7〕〔6〕に記載の流れ分析装置において、
前記管路内に導入された試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路内に作製する気泡分節装置が備えられてなる流れ分析装置。
【0021】
〔8〕〔6〕または〔7〕に記載の流れ分析装置において、
前記気液分離装置の下流側であり、且つ、前記分析装置の上流側に、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路内に作製する気泡分節装置がさらに備えられてなる流れ分析装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態によれば、分析の前に、試料を、当該試料が沸騰する程度、又はそれ以上の高温にて加熱し気化させる加熱工程の後、気化した試料を液化させる液化工程および気化された試料中に混入していた気体(気泡)を除去する気液分離工程を行うことにより、加熱時間および加熱処理に供される流路を短くすることができるので、分析時間を短縮し、分析装置を小型化することができ、高温にて加熱することにより、試料中に共存する有機物、懸濁物および金属錯体等の分解効率並びに金属元素の溶液化の効率を上げることができ、かつ、分析精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法の一例を表す模式図である。
図2図2は、実施形態1に係る流れ分析装置の一例を示す概略構成図である。
図3図3は、前記流れ分析装置の概略構成図と、試料導入工程の実行部分を拡大して示す断面図である。
図4図4は、前記流れ分析装置の概略構成図と、試薬添加工程の実行部分を拡大して示す断面図である。
図5図5は、前記流れ分析装置の概略構成図と、気液分離工程の実行部分を拡大して示す断面図である。
図6図6は、流れ分析装置の変形例を示す概略構成図である。
図7図7は、実施例3~25における流れ分析方法の条件等を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に記載の流れ分析方法および流れ分析装置を例に挙げて説明するが、本発明はこれらの図面に記載の流れ分析方法および流れ分析装置に限定されるものではない。なお、本明細書にて、「下流」とは、分析装置において、管路内に導入された試料が、分析装置に向かって流れる方向を表し、「上流」とは、「下流」と逆方向を表す。
【0025】
[実施形態1:流れ分析装置]
図2は、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置の概略構成図である。前記流れ分析装置1は、「サンプリング装置2」と、「試薬添加装置3」と、「加熱装置7」と、「液化装置として機能する、加熱装置7と気液分離装置5との間における管路100」と、「分析装置4」と、「気液分離装置5」と、を具備する。また、図2に示すように、流れ分析装置1の一実施形態には、更に「気泡分節装置6」が備えられていることが好ましい。さらに、流れ分析装置1は、「気液分離装置5」と「分析装置4」との間に「別の気泡分節装置」を備えていてもよい。加えて、流れ分析装置1の一実施形態は、「サンプリング装置2」と「分析装置4」との間の任意の位置に「マーカー導入装置」を備えると共に、「マーカー検出装置」を備えていてもよい。以下、「液化装置として機能する、加熱装置7と気液分離装置5との間における管路100」を単に、「液化装置」と称する。
【0026】
(管路)
管路100は、試料が移動する経路となる役割を担う。前記管路100の材質は、特に限定されないが、後述する加熱処理にて破損しない程度に熱に強く、金属によるコンタミネーション(汚染)が起こらないものであることが好ましい。前記管路100は、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンポリプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合対応(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、タイゴン、シリコン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、塩化ビニル等からなるチューブであり得る。
【0027】
(サンプリング装置)
前記サンプリング装置2は、試料をサンプリングして管路100内に導入する役割を担う。前記サンプリング装置2の構成は、前記試料をサンプリングして管路内に導入する役割を達成できる構成であれば、特に限定されない。前記サンプリング装置2は、例えば、図3に記載の、試料を前記管路100内に導く採取管20と、前記採取管20に吸引力を付与するサンプリング用ポンプ(ペリスタポンプ)21と、によって構成され得る。前記試料は特に限定されず、例えば、地下水、河川水、温泉水、沼湖水、海水、汽水、下水原水、下水処理水、工場排水および後述する試料を調製する工程にて得られる試料を挙げることができる。前記試料は通常、水が主成分である水性液体である。しかし、前記試料は、有機溶媒を含んでいてもよいし、有機溶媒を主成分とするものであってもよい。なお、ここで、主成分とは試料の50質量%以上、より好ましくは80質量%以上を意図する。前記有機溶媒としては、イソプロピルアルコール(IPA)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等が挙げられる。
【0028】
(試薬添加装置)
前記試薬添加装置3は、前記管路100内を通って移送される試料に試薬を添加する役割を担う。前記試薬添加装置3の構成は、前記試料に試薬を添加する役割を達成できる構成であれば、特に限定されない。前記試薬添加装置3は、例えば、図4に記載の、試薬を管路100に導入する試薬添加管30と、前記試薬添加管30に吸引力を付与する試薬添加用ポンプ(ペリスタポンプ)31と、によって構成され得る。
【0029】
(加熱装置)
前記加熱装置7は、前記管路100内を通って移送される試料を加熱して、前記試薬が添加された試料の液体成分、好ましくは前記液体成分の全量を沸騰させるための加熱処理を行う役割を担う。前記加熱装置7の構成は、前記加熱処理を行う役割を達成できる構成であれば、特に限定されない。前記加熱装置7としては、例えば、加熱処理の対象となる前記管路100の一部分を、例えばシリコンオイル、鉱物油、サンドバス、アルミおよびグラファイト等の熱媒を満たした加熱槽内部を通過させ、当該熱媒を加熱することによって、当該加熱槽内部を通過する前記管路100の一部分を加熱する構成を挙げることもできる。前記加熱処理にて、前記試薬が添加された試料の液体成分が沸騰した結果、気化された試料が得られる。また、前記加熱装置7として、熱媒を使用せずにそのまま管路100の一部分を加熱する構成を備える加熱装置を用いてもよい。前記熱媒を使用せずにそのまま管路100の一部分を加熱する構成としては、例えば、前記管路100の途中に配された、ラバーヒーターおよびニクロム線ヒータ等のヒータを用いて管路100の一部分を加熱する構成を挙げることができる。また、前記加熱装置7としては、前記熱媒を使用する加熱装置と、前記熱媒を使用しない加熱装置とを組み合わせてもよい。
【0030】
(液化装置)
前記液化装置は、前記加熱処理にて得られる気化された試料を液化する役割を担う。前記気化装置の構成は、前記気化された試料を液化する役割を達成できる構成であれば、特に限定されない。例えば、図2に記載の流れ分析装置1の一実施形態においては、前記液化装置は、前記加熱装置7と後述する気液分離装置5との間における管路100から構成されている。気化された試料は、前記加熱装置7と後述する気液分離装置5との間における管路100を流れる間に例えば室温で冷却されて液化する。なお、前記液化装置は、前記加熱装置7と後述する気液分離装置5との間における管路100の少なくとも一部を冷却する装置をさらに備えていてもよい。
【0031】
(気液分離装置)
前記気液分離装置5は、前記管路100内に存する気体を除去する役割を担う。前記気液分離装置5は、前記気体を除去する役割を達成できる構成であれば、特に限定されない。前記気液分離装置5は、例えば、図5に記載の、前記管路100の下流末端において、鉛直下方に向かって枝分かれする分析管50Sと、鉛直上方に向かって枝分かれする脱気管50Dと、を具備する三方管と、前記分析管50Sに吸引力を付与する分析ポンプ(ペリスタポンプ)51Sと、前記脱気管50Dに吸引力を付与する脱気ポンプ(ペリスタポンプ)51Dと、によって構成され得る。図5に示すように、前記管路100内に存する気体(A)および前記管路100内に導入された気泡(B)は上方に向かって浮き上がるため、前記管路100の下流末端において上方向に向かって枝分かれする前記脱気管50Dを通じて除去(脱気)される。
【0032】
なお、図5では、前記三方管は、鉛直下方と、鉛直上方とに向かって枝分かれしているが、気体(A)および気泡(B)が上方に向かって浮き上がることにより気液分離が可能であれば、分析管50Sおよび脱気管50Dは傾斜していてもよい。
【0033】
(気泡分節装置)
前記気泡分節装置6は、前記サンプリング装置2によってサンプリングされた試料に気泡分節を行う役割を担う。前記気泡分節装置6の構成は、前記気泡分節を行う役割を達成できる構成であれば、特に限定されない。前記気泡分節装置6は、例えば、図2に記載の、空気を前記管路100内に導く空気導入管60と、前記空気導入管60に吸引力を付与する空気導入用ポンプ(ペリスタポンプ)61と、によって構成され得る。気泡分節の気体は、空気であることが好ましいが、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガスであってもよいし、窒素及び酸素等の様々な気体を用いることもできる。これらの気体は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0034】
(別の気泡分節装置)
前記別の気泡分節装置は、前記気液分離装置を経た試料に気泡分節を行う役割を担う。前記別の気泡分節装置の構成は、前記気泡分節装置6と同様の構成であり得る。前記別の気泡分節装置を備えることによって、後述の分析装置4に供される試料を、気泡によって区画された複数のセグメントにて分節することができる。よって、前記別の気泡分節装置を備えることは、分析の精度をより向上させるとの面において好ましい。
【0035】
なお、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置が、後述の「マーカー導入装置」および「マーカ-検出装置」を備える場合も、前記別の気泡分節装置を備え得る。
【0036】
(分析装置4)
前記分析装置4は、前記液化装置にて液化した試料について分析を行う役割を担う。前記分析は、定量分析又は定性分析であり得る。前記分析装置4の構成は、前記分析を行う役割を達成できれば、特に限定されない。前記分析装置4の構成は、分析の目的によって種々の測定装置を使用可能であり、例えば、ICP発光分光分析装置、ICP-質量分析(MS)装置、フレーム原子吸光装置、電気加熱原子吸光装置等を使用することができる。
【0037】
(マーカー導入装置)
図2には図示しないマーカー導入装置は、管路内を通って移送する試料にマーカーを混入させる役割を担う。マーカー導入装置の構成は特に限定されず、例えば、マーカーを管路100に導く採取管と、前記採取管に吸引力を付与するポンプとを備える構成であり得る。なお、前記マーカー導入装置として、前記サンプリング装置2を使用することもできる。その場合、例えば、前記サンプリング装置2を用いて、マーカーを管路100内に導入した後、所定時間経過後に、当該サンプリング装置2を用いて、試料を管路100内に導入する。
【0038】
(マーカー検出装置)
マーカー検出装置は、前記マーカー導入装置により、試料中に混入されたマーカーを検出し、当該マーカーを検出したことを示す検出信号を、分析装置4に出力する役割を担う。マーカー検出装置から前記検出信号が分析装置4に出力され、前記検出信号が分析スタートの合図となり、分析装置4は分析データを取得する。これにより、試料の導入から分析装置まで、安定して、均一の時間で送液ができない場合であっても、分析データ取得のタイミングがずれることがないため、安定して連続的に試料を測定することができる。マーカー検出装置の種類は、使用するマーカーに応じて適宜選択でき、例えば、分光光度計、ボルタンメトリー計、イオン電極計、イオンクロマトグラフィー、濁度計および蛍光光度計等を挙げることができる。
【0039】
(マーカー)
前記マーカーは、前記マーカー検出装置にて検出される物質であれば、特に限定されない。前記マーカ―は、試料中に含まれない物質であることが好ましい。また、マーカーは管路100に導入されてからマーカー検出装置4までの間に添加される試薬及び熱により分解されない物質であることが好ましい。例えば、前記マーカーは、分光光度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ロジウム、ニッケル、銅、クロム、マンガン、ヨウ素、コバルト、硝酸イオン、リン酸イオン、及びケイ酸イオン等を挙げることができる。或いは、前記物質は、ボルタンメトリー計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、銅、カドミウム、ニッケル、水銀、ヒ素、及びセレン等を挙げることができる。或いは、前記物質は、イオン電極計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、カルシウム、カリウム、ふっ素、及びアンモニア等を挙げることができる。或いは、前記物質は、イオンクロマトグラフィーで検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、無機酸及び有機酸のイオン、フェノール、ヒドラジン、アミノ酸、並びに多糖類等を挙げることができる。或いは、前記物質は、濁度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ふっ酸以外の酸で溶解しない微粒子の物質であるシリカ等を挙げることができる。或いは、前記物質は、蛍光光度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、クマリン、及びナフタリン等を挙げることができる。中でも、検出の容易さから、特に好ましいマーカーは、ロジウム、コバルト、ニッケル、及び銅等である。
【0040】
[実施形態2:流れ分析方法]
本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、「試料導入工程」と、「試薬添加工程」と、「加熱工程」と、「液化工程」と、「気液分離工程」と、「分析工程」と、を実行する。また、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法においては、図1に示すように、前記「試料導入工程」の実行後、且つ、試薬添加工程の実行前にて、導入された試料に気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを作製することが好ましい。さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法においては、図1に示すように、前記気液分離工程の実行後、且つ、前記分析工程の実行前に、前記気液分離工程にて得られた液体に気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを作製することがより好ましい。
【0041】
(試料導入工程)
前記試料導入工程では、前記管路内に試料を導入する。前記管路内に試料を導入する方法は特に限定されず、例えば、図3に示すように、前記サンプリング装置2にて試料を前記管路100内に導入する。また、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法においては、図3に示すように、前記管路100内に試料を導入した後、且つ、後述の試薬を添加する前に、に前記気泡分節装置6にて空気を導入する気泡分節を行い、気泡(B)によって区画された複数のセグメント(S)を作製することが好ましい。一方、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法において、前記試料導入工程において、必ずしも、前記管路100に試料を導入した後、且つ、後述の試薬を添加する前に、セグメント(S)を作製することを要しない。
【0042】
(試薬添加工程)
前記試薬添加工程では、前記管路内を通って移送される試料に試薬を添加する。前記試料に試薬を添加する方法は特に限定されず、例えば、図4に示すように、前記試薬添加装置3にて前記管路100内を通って移送される試料の流れの中に試薬を添加する。前記試薬添加工程の実行によって、試料と試薬とが接触し、反応しながら前記管路100内を通って移送される。この試料と試薬の反応には気体(A)の発生を伴う場合があり、発生した気体(A)はセグメント(S)中で泡となる。
【0043】
前記試薬添加工程実行時において管路内に導入される試薬は、試料の前処理の必要性に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されない。また、前記試薬添加工程実行時にて、分析の必要に応じて複数種の試薬を同時、又は段階的に添加しても良い。前記試薬としては、酸性試薬および塩基性試薬などを適宜選択して用いることができる。前記試薬は、酸性試薬であることが好ましい。前記酸性試薬としては、例えば、塩酸、硝酸、過塩素酸、硫酸等を挙げることができる。前記塩基性試薬としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。ここで、試薬として、例えば、過酸化水素を含む溶液などの、前記試料との反応により大量の気体を前記管路内に発生させる試薬を用いた場合であっても、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法によれば、後述の気液分離工程を実行することにより、前記気体により分析の精度が低下することを抑制することができる。
【0044】
(加熱工程)
前記加熱工程では、前記管路内を通って移送される前記試薬が添加された試料を加熱して、前記試薬が添加された試料の液体成分、好ましくは前記液体成分の全量を沸騰させる加熱処理を行う。前記加熱処理を行う方法は、特に限定されず、例えば、図2に記載のように、前記加熱装置7にて前記管路100の一部を加熱し、加熱される管路100内に試料を順次通過させることによって前記加熱工程を実行する。前記加熱工程の実行によって試料と試薬の反応が大きく促進され、前記試料中に共存する有機物および懸濁物、並びに金属錯体が迅速に分解される。すなわち、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法によれば、前記試料と試薬の反応が大きく促進され、前記分解が迅速に終了する。従って、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法において、分析時間は短縮され、前記加熱工程に供される管路の長さが短くなることにより、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法に使用される分析装置(流れ分析装置)は小型化されるとの効果を奏する。
【0045】
試料と試薬の反応によって発生した気体(A)は、前記加熱工程の実行中に膨張する。又、前記試料導入工程実行後、且つ、試薬添加工程の実行前に、前記管路100内に導入された気泡(B)も膨張する。そして、前記気体(A)および気泡(B)は、沸騰により気化された試料中に混入される。
【0046】
なお、前記加熱工程における加熱温度は、前記試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させることができる温度であれば、特に限定されない。例えば、前記加熱工程を、熱媒を用いて管路100を加熱して実施する場合、前記熱媒の温度は、前記試料と試薬の反応を大きく促進するとの観点から、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。また、前記熱媒の温度が過剰に高温である場合には、分析装置における管路が損傷するおそれがある。前記管路の損傷を回避するとの観点、および、前記加熱温度が過剰に高温である場合に、後述の液化装置を構成する管路が長くなり、その結果、本願発明に係る流れ分析方法に使用する分析装置が大型化することを回避する観点からは、前記熱媒の温度は、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。上述の範囲内の温度にて、前記加熱処理を行うことによって、前記試薬と前記試料との反応の要する時間を好適に短縮し、その結果、分析時間を好適に短縮することができる。
【0047】
(液化工程)
前記液化工程では、前記加熱工程にて得られた気化した試料を液化する。前記液化工程を実行する方法は、特に限定されず、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法において、例えば、加熱装置7と気液分離装置5との間における管路100の内部を前記気化された試料が通過する間に、当該気化された試料が放冷され、その結果、当該気化された試料は液化する。また、前記放冷は室温(約25℃)にて実行されてもよく、室温よりも低温にて実行されてもよい。室温よりも低温にて、前記液化工程を実行する方法としては、加熱装置7と気液分離装置5との間における管路100の少なくとも一部を冷却しながら、前記液化工程を実行する方法を挙げることができる。
【0048】
前記液化工程を含むことによって、後述する気液分離工程にて気化された試料が除去されることを防止することができる。前記液化工程における時間、すなわち、前記液化工程に供される管路の長さは、前記気化した試料の全てが完全に液化する時間(管路の長さ)であれば、特に限定されない。ここで、前記液化工程における放冷がより低温で実行される場合、前記液化がより迅速に進行し、前記気化した試料の全てが完全に液化する時間(管路の長さ)が短縮される。その結果、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法において、分析時間はより短縮され、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法に使用される分析装置(流れ分析装置)はより小型化される。
【0049】
(気液分離工程)
前記気液分離工程では、前記管路内に存在し、前記気化された試料中に混入していた気体(気泡)を除去する。前記管路内に存する気体を除去する方法は、特に限定されず、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法において、例えば、図5に示すように、前記気液分離装置5にて前記管路100内に存する気体(A)を除去する。前記管路100内に存する気体(A)は上方に向かって浮き上がるため、前記管路100の下流末端において上方向に向かって枝分かれする前記脱気管50Dを通じて除去(脱気)される。なお、前記管路100内に導入された気泡(B)も前記脱気管50Dを通じて除去される。前記脱気管50Dの途中に配された脱気ポンプ51Dは、気体(A)や気泡(B)の排出速度を決定する役割を担う。
【0050】
前記前記気化された試料中に混入していた気体は、分析の精度を下げる原因となる。よって、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記気液分離工程にて前記気体を除去することによって、分析の精度を向上させることができるとの効果を奏する。
【0051】
(分析工程)
前記分析工程では、前記液化した試料について分析を行う。前記分析は、定量分析又は定性分析であり得る。前記分析を行う方法は特に限定されず、例えば、図5に示すように、気体(S)が除去された試料を、前記管路100の下流において鉛直下方向に向かって枝分かれする分析管50Sを通じて前記分析装置4に導入することによって前記分析工程を実行する。前記分析管50Sの途中に配された分析ポンプ51Sは、前記分析管50Sを通じて前記分析装置4へ導入される試料の導入速度を決定する役割を担う。
【0052】
なお、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法において、前記試料導入工程において、必ずしも、前記管路100に試料を導入するにあたりセグメント(S)を作製することを要しない。すなわち、本発明においては、前記管路100に試料を直接的に導入する仕組み(フローインジェクション分析方法に準ずる仕組み)を採用しても良い。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法において、前記試料導入工程の前に、以下に示す工程を含む調製方法を実行して、前記試料を調製する工程を含んでもよい。その場合、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法においては、調製された試料を前記試料導入工程にて管路内に導入することとなる。前記調製方法は、管路内に前試料を導入する前試料導入工程と、前記管路内を通って移送される前試料に、前試料が沸騰しない温度にて加熱処理を行う加熱工程と、前記管路内を通って移送される前試料の流れに抗する圧力を付与する加圧工程を含む。ここで、「前試料」とは、前記試料を調製する工程に供される試料であり、分析の対象となる試料であり得る。「前試料」は特に限定されず、例えば、環境水、地下水、水道水、工場排水を使用することができる。また、前記調製方法は、前記管路内に導入された前試料に試薬を添加する「試薬添加工程」を含み得る。なお、前記試薬は、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法の前記試料導入工程後に実行される「試薬添加工程」にて使用され得る試薬を使用できる。さらに、前記調製方法は、前記管路内に導入された前試料に試薬を添加する「試薬添加工程」にて、添加した試薬と前試料との反応により発生し得る気体を除去する「気液分離工程」を含んでいてもよい。
【0054】
前記調製方法における各工程の条件および各工程を実行するための装置等は、特開2020-134519号公報に記載の流れ分析方法における各工程の条件および各工程を実行するための装置等を参照することができる。
【0055】
本発明の一実施形態に係る流れ分析方法は、前記調製方法を実行して、前記試料を調製する工程を含むことによって、分析の対象である前試料に含まれる共存する有機物や懸濁物、並びに金属錯体の分解を二段階にて実行することにより、当該分解をより効率的に実施することができる。よって、分析の対象である前試料に含まれる不純物がより効率的に分解され、その結果、分析の精度がより向上し得る。
【0056】
前記前試料に試薬を添加する「試薬添加工程」と本発明の一実施形態に係る流れ分析方法の前記試料導入工程後に実行される「試薬添加工程」にて使用される試薬としては、例えば、前者の「試薬添加工程」にて硝酸などの過酸化水素よりも反応性が低い試薬を用い、後者の「試薬添加工程」にて過酸化水素を用いることが好ましい。
【0057】
[実施形態3:流れ分析装置の変形例]
図6に記載の流れ分析装置1は、実施形態1に係る流れ分析装置の変形例を示す。前記流れ分析装置1は、「サンプリング装置2」と、3つの「試薬添加装置3(3F、3S、3T)」と、「分析装置4」と、2つの「気液分離装置5(5F、5S)」と、を具備する。又、本実施形態に係る流れ分析装置1には、更に、「気泡分節装置6」と、二つの「加熱装置7(7F、7S)」と、「加圧装置8」と、「液化装置」が備えられている。
【0058】
実施形態1に係る流れ分析装置の変形例における「サンプリング装置2」、「試薬添加装置3」、「分析装置4」、「気液分離装置5」、「気泡分節装置6」、「加熱装置7」および「液化装置」は、本発明の実施形態1に係る流れ分析装置における「サンプリング装置」、「試薬添加装置」、「分析装置」、「気液分離装置」、「気泡分節装置」、「加熱装置」および「液化装置」と同様の構成を備える。
【0059】
また、前記加圧装置8は、管路100内を通って移送される試料の流れに抗する圧力を付与する役割を担う。前記加圧装置8の構成は、前記圧力を付与する役割を達成できれば、特に限定されない。前記加圧装置8の構成は、例えば、コンプレッサー等を備えた構成である。
【0060】
[実施形態4:流れ分析方法の変形例]
実施形態2に係る流れ分析方法の変形例として、本発明の実施形態3に係る流れ分析装置の変形例を使用して実行される流れ分析方法について以下に説明する。この変形例では、「試料導入工程」の実行の後、三段階で行う「試薬添加工程(第一~第三試薬添加工程)」と、二回の「気液分離工程(第一、第二気液分離工程)」と、「分析工程」と、を実行する。又、前記第二試薬添加工程の実行後と、前記第三試薬添加工程の実行後に、各々(都合二回)の「加熱工程(第一、第二加熱工程)」を実行する。
【0061】
(試料導入工程)
前記試料導入工程では、前記管路内に試料を導入する。また、前記試料としては、例えば、工場排水(水試料)を用いることができる。前記管路内に試料を導入する方法は特に限定されず、例えば、本変形例において、図6に示すように、前記サンプリング装置2にて試料を前記管路100内に導入する。なお、本変形例においては、図6に示すように、前記管路100内に試料を導入するにあたり、前記サンプリング装置2にて試料を前記管路100内に導入すると共に、前記気泡分節装置6にて空気を導入する気泡分節を行うことが好ましい。
【0062】
(第一試薬添加工程)
前記第一試薬添加工程では、前記管路内を通って移送される試料に第一試薬を添加する。具体的には、例えば、図6に示すように、試薬添加装置3(3F)にて前記管路100内を通って移送される試料に第一試薬を添加する。本変形例においては、第一試薬としては、例えば、硝酸水溶液を用いることができる。
【0063】
(第二試薬添加工程)
前記第二試薬添加工程では、第一試薬添加後の試料に第二試薬を添加する。具体的には、例えば、図6に示すように、試薬添加装置3(3S)にて第一試薬添加後の試料に第二試薬を添加する。本変形例においては、第二試薬としては、例えば、過塩素酸水溶液を用いる。なお、本実施形態では、第一試薬添加工程と第二試薬添加工程とを実行しているが、第一試薬添加工程のみを実行する形態であってもよい。
【0064】
(第一加熱工程)
前記第一加熱工程では、第一試薬及び第二試薬が添加された試料に加熱処理を行う。具体的には、例えば、図6に示すように、前記加熱装置7(7F)にて、第一試薬及び第二試薬が添加された試料に加熱処理を行う。前記第一加熱工程の実行によって試料と第一試薬及び第二試薬の反応が促進される。試料中に金属成分が含まれていると、試料と試薬の反応によって前記管路100内に気体(例えば、水素)が発生する。発生した気体(並びに前記気泡分節装置6にて導入された空気)は前記第一加熱工程の実行によって膨張しようとするが、本変形例においては、前記加圧装置8にて前記管路100内を通って移送される試料の流れに抗する圧力を付与する加圧工程を実行しているため、気体の膨張が抑制される。ここで、前記第一加熱工程における加熱は、前記試料の液体成分が沸騰しない程度の温度にて実施される。また、前記加圧工程を実行しているため、前記管路内での前記試料の沸点は、大気圧下での沸点よりも高くなる。例えば、前記加熱工程を、熱媒を用いて管路100を加熱して実施する場合、前記熱媒の温度は、前記試料と第一試薬および第二試薬の反応を大きく促進するとの観点から、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。また、前記管路の損傷を回避するとの観点から、前記熱媒の温度は、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。また、前記加圧工程にて加える圧力は、前記気体の膨張を好適に抑制するとの観点から、0.1MPa以上0.2MPa以下であることが好ましく、0.12MPa以上0.15MPa以下であることがより好ましい。
【0065】
(第一気液分離工程)
前記第一気液分離工程では、前記第一加熱工程にて発生した気体を除去する。具体的には、例えば、図6に示すように、前記気液分離装置5(5F)にて、前記管路100内に存する気体を除去する。
【0066】
(第三試薬添加工程)
前記第三試薬添加工程では、前記第一気液分離工程実行後の試料に第三試薬を添加する。具体的には、例えば、図6に示すように、試薬添加装置3(3T)にて、前記第一気液分離工程実行後の試料に第三試薬を添加する。本変形例においては、第三試薬としては、例えば、過酸化水素水溶液を用いる。
【0067】
なお、本実施形態では、前記第一気液分離工程実行後の試料に、同一の管路内で第三試薬を添加しているが、前記第一気液分離工程実行後の試料を、別の管路内に導入してもよい。この場合、本発明の実施形態4に係る流れ分析方法の変形例の(試料導入工程)~(第一気液分離工程)は、本発明の実施形態2に係る流れ分析方法の欄に記載の「試料を調製する工程」に相当する。言い換えると、本発明の実施形態4に係る流れ分析方法の変形例は、前記「試料を調製する工程」を含む、本発明の実施形態2に係る流れ分析方法であるとも言える。
【0068】
(第二加熱工程)
前記第二加熱工程では、第三試薬が添加された試料を加熱して、前記第三試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させる加熱処理を行う。具体的には、図6に示すように、前記加熱装置7(7S)にて、第三試薬が添加された試料に前記加熱処理を行う。前記第二加熱工程の実行によって試料と第三試薬の反応が大きく促進されると共に、例えば、過酸化水素の分解に応じて、前記管路100内に気体(例えば、酸素)が発生し、当該気体が、前記沸騰により発生する気化した試料に混入する。ここで、前記第二加熱工程を、例えば、熱媒を用いて管路100を加熱して実施する場合、前記熱媒の温度は、前記試料と第三試薬の反応を大きく促進するとの観点から、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。また、前記管路の損傷を回避するとの観点、並びに、前述の液化装置を構成する管路が長くなり、その結果、本願発明に係る流れ分析方法に使用する分析装置が大型化すること、および、後述の液化工程に要する時間が長くなり、本願発明に係る流れ分析方法全体における作業時間の長期化を回避する観点から、前記熱媒の温度は、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。
【0069】
(液化工程)
前記液化工程では、前記加熱工程にて得られた気化した試料を液化する。前記液化工程を実行する方法は、特に限定されず、本変形例において、例えば、第二加熱装置7Sと第二気液分離装置5Sとの間における管路100の内部を前記気化された試料が通過する間に、当該気化された試料が放冷され、その結果、当該気化された試料は液化する。また、前記放冷は室温にて実行されてもよく、室温よりも低温にて実行されていてもよい。室温よりも低温にて、前記液化工程を実行する方法としては、第二加熱装置7Sと第二気液分離装置5Sとの間における管路100の少なくとも一部を冷却しながら、前記液化工程を実行する方法を挙げることができる。
【0070】
前記液化工程を含むことによって、後述する第二気液分離工程にて気化された試料が除去されることを防止することができる。前記液化工程における時間、すなわち、前記液化工程に供される管路の長さは、前記気化した試料の全てが完全に液化する時間(管路の長さ)であれば、特に限定されない。ここで、前記液化工程における放冷がより低温で実行される場合、前記液化がより迅速に進行し、前記気化した試料の全てが完全に液化する時間(管路の長さ)が短縮される。その結果、本変形例において、分析時間はより短縮され、本変形例に使用される分析装置はより小型化される。
【0071】
(第二気液分離工程)
前記第二気液分離工程では、前記管路に存在し、前記気化された試料中に混入していた気体(気泡)を除去する。前記管路に存する気体を除去する方法は、特に限定されず、本変形例において、例えば、図6に示すように、前記気液分離装置5(5F)にて、前記管路100内に存する気体を除去する。
【0072】
(分析工程)
前記分析工程では、第一~第三試薬と反応後の試料について分析を行う。前記分析は、定量分析又は定性分析であり得る。
【0073】
前記各工程を実行する流れ分析方法は、水試料中に含まれる微量金属の自動分析を行うために構築されたものである。日本工業規格の工場排水試験方法では、水試料に含まれる金属元素の分析のための前処理が規定されているが、気体が発生する反応系のため、従来の流れ分析方法による自動分析は事実上実施されていなかった。即ち、本実施形態に係る流れ分析方法は、水試料に含まれる金属元素の自動分析を可能にしたものである。
【0074】
ここで、従来の分析方法では、酸の添加、加熱、放冷およびメスアップに至るまでの作業等の前処理の作業を人の手で行う必要があった。一方、本流れ分析方法において、流れ分析方法による自動分析を採用することによって、前記前処理の作業を自動で行うことができる。その結果、本流れ分析方法は、ヒューマンエラーの発生の防止、処理速度の向上および作業の効率化等を達成することができる。
【0075】
その余は、前記実施形態1において説明した事項と同様であり、繰り返しを避けるべくここでは説明を省略する。
【0076】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【実施例0077】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0078】
[測定方法:ICP-MS]
実施例1~25にて前処理した試料の金属元素の濃度を、ICP-質量分析装置(Agilent社製、製品名:ICP-MS 7800)を用いて、以下に示す条件下にて、測定した。
【0079】
<測定条件>
使用装置:Agilent 7800ICP-MS
使用ガス:アルゴン
コリジョンガス:ヘリウム
リアクションガス:水素
冷却水循環:空冷式冷却水循環装置
測定モード:ヘリウムモード(Se:水素モード)
検量線濃度:0.1~200μg/L
検量線の濃度を超えたものについては、試料を事前に希釈して測定を行った。
【0080】
[実施例1、2:模擬廃水標準試料の測定]
金属元素の濃度が既知である、市販の模擬廃水標準試料:JEMCA 0001-4およびJEMCA 0001-5のそれぞれに対して、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法を用いて、当該模擬廃水標準試料中の金属元素の濃度を測定した。以下の表1に、上記市販の模擬廃水標準試料における既知の金属濃度を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
図2~5に記載の流れ分析装置を用いて、前記模擬廃水標準試料に対して、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法を実施した。なお、前記流れ分析装置における管路100は、PFAからなるチューブであった。
【0083】
具体的には、以下の(1)~(6)に示す方法にて、流れ分析方法における前処理を実施した。
(1)サンプリング装置2を用いてマーカーを管路100内に導入した。その40秒後にサンプリング装置2を用いて、標準液をサンプリングして管路100内に導入した。その後、マーカー、標準液と順に管路100に導入した。標準液は0.1μg/L~200μg/Lの標準液を、濃度の低い標準液から、濃度の高い標準液の順で管路100に導入した。その後ロジウムを管路100に導入した。具体的には、マーカーを管路100に導入する工程を間に挟みつつ、分析対象の濃度が、0.1μg/Lの標準液、0.5μg/Lの標準液、1μg/Lの標準液、2.5μg/Lの標準液、5μg/Lの標準液、10μg/Lの標準液、25μg/Lの標準液、50μg/Lの標準液、100μg/Lの標準液、200μg/Lの標準液を、この順番にて、管路100に導入する工程を実行した。マーカーと前述の標準液のそれぞれとを交互に管路100内に導入し、続いて、前記模擬廃水標準試料をサンプリングして管路100内に導入した。前記マーカーは全て、ロジウムの濃度が100mg/Lのものを使用した。
(2)気泡分節装置6を用いて、導管100内に空気を導入し、サンプリングされた前記標準液および前記模擬廃水標準試料を、気泡(B)によって区画された複数のセグメント(S)に気泡分節した。
(3)試薬添加装置3を用いて、前記気胞分節された前記標準液および前記模擬廃水標準試料に対して、試薬として、1mol/Lの硝酸水溶液を、前記標準液または前記模擬廃水標準試料:硝酸水溶液の体積比率が10:2となるように添加した。
(4)加熱装置7を用いて、前記試薬が添加された試料の液体成分の全量を沸騰させるための加熱処理を行い、気化された試料を得た。前記加熱処理は、加熱処理の対象となる前記管路100の一部分を、シリコンオイルを加えた加熱槽内部を通過させ、当該シリコンオイルを120℃に加熱することによって、当該加熱槽内部を通過する前記管路100の一部分を加熱することによって実施した。
(5)前記加熱処理にて得られた気化された試料を加熱装置7から気液分離装置5まで移送するための導管を液化装置として使用して、前記気化された試料を室温にて放冷し、前記気化された試料を液化した。
(6)前記気液分離装置5を用いて、液化されずに管理100内に残留していた気体を除去した。
【0084】
前述の前処理の後、前記気体を除去した後に管路100内に存在する液化された試料に対して、前述の測定方法を用いて、各金属元素の濃度の測定を実施した。
【0085】
前記標準液および前記模擬廃水標準試料のそれぞれに対して、前述の方法により、本流れ分析方法を計3回実施し、各金属元素の濃度を測定した。
【0086】
その結果、本流れ分析方法により、前記標準液中の分析対象の濃度を正確に測定できることが確認された。また、前記模擬廃水標準試料中の各金属元素の濃度の測定値から、その平均値、標準偏差および相対標準偏差(CV%)を算出した。得られた測定値、平均値、標準偏差およびCV%の値を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表2に記載のとおり、算出された前記模擬廃水標準試料中の各金属元素の濃度の平均値は、表1に記載の既知の濃度と類似する。また、算出された各金属元素の濃度の標準偏差およびCV%の値は小さい。以上のことから、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置を用いた流れ分析方法により、試料に含まれる金属元素の濃度を、精度よく、正確に測定できることが分かった。
【0089】
[実施例3~25:回収率の測定]
<試料A~Wにおける金属元素の濃度測定>
金属元素の濃度が不明である試料A~Wのそれぞれについて、図7に記載のフローチャートに従って、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法を実施した。なお、前記流れ分析方法に使用した流れ分析装置における管路は、PFAからなるチューブであった。
【0090】
具体的には、以下の(a)~(k)に示す方法にて、流れ分析方法における前処理を実施した。
(a)測定対象の金属元素であるCd、Pb、As、Se、Cr、Zn、Fe、Cu、Mn、BおよびAlのそれぞれの濃度が不明の試料A~Wを準備した。
(b)サンプリング装置を用いてマーカーとして100mg/Lに調製したロジウムを管路100内に導入した。その40秒後、サンプリング装置を用いて、試料A~Wのうちの1つを、サンプリングして、流れ分析装置における管路内に導入した。
(c)気泡分節装置を用いて、管路内に空気を導入し、サンプリングされた前記試料を、気泡によって区画された複数のセグメントに気泡分節した。
(d)第一試薬添加装置を用いて、前記気胞分節された試料に対して、第一試薬として、1mol/Lの硝酸水溶液を、前記試料:硝酸水溶液の体積比率が7:1となるように添加した。
(e)加熱装置および加圧装置を用いて、前記試薬が添加された試料に対して、120℃、0.14MPaの条件下にて、高温高圧分解処理を実施した。前記高温高圧分解処理における加熱は、前記高温高圧分解処理に供される前記管路の一部分を、シリコンオイルを加えた加熱槽内部を通過させ、当該シリコンオイルを120℃に加熱することによって、当該加熱槽内部を通過する前記管路100の一部分を加熱することによって実施した。また、前記高温高圧分解処理にて付与される圧力は、管路内を通って移送される試料の流れに抗する方向に加えられた。
(f)前記高温高圧分解処理後、気液分離装置を用いて、前記高温高圧分解処理時に発生した管路内部の気体を除去した。前記気液分離装置としては、フェイズセパレータを使用した。
(g)前記気体を除去した後の試料に対して、再度、導管内に空気を導入して気胞分節を実施した。
(h)第二試薬添加装置を用いて、再度の気胞分節後の試料に対して、第二試薬として、30重量%の濃度の過酸化水素水を前記試料:過酸化水素水の体積比率が10:2となるように添加した。
(i)別の加熱装置を用いて、前記第二試薬が添加された試料の液体成分を沸騰させるための加熱処理を行い、気化された試料を得た。前記加熱処理は、加熱処理の対象となる前記管路の一部分を、シリコンオイルを加えた加熱槽内部を通過させ、当該シリコンオイルを120℃に加熱することによって、当該加熱槽内部を通過する前記管路の一部分を加熱することによって実施した。
(j)前記加熱処理にて得られた気化された試料を別の加熱装置から後述の別の気液分離装置まで移送するための導管を液化装置として使用して、前記気化された試料を室温にて放冷し、前記気化された試料を液化した。
(k)別の気液分離装置を用いて、液化されずに管理内に残留していた気体を除去した。前記別の気液分離装置としては、フェイズセパレータを使用した。
【0091】
前述の前処理の後、前記気体を除去した後に管路100内に存在する液化された試料に対して、空気を導入して気胞分節を行った後、吸光光度計(ビーエルテック社製、製品名SCIC4000)を用いて、波長:405nmの条件にて吸光度の測定を行い、マーカーであるロジウムの検出を実施した。そして、前記ロジウムを検出して、その後測定対象の前記試料が前記ICP-質量分析装置に到達したときに、検出信号を前記ICP-質量分析装置に出力した。なお、前記ロジウムを検出した後、測定対象の前記試料が前記ICP-質量分析装置に到達するまでの時間は、前記ロジウムを管路100に導入した後、前記試料を管路100に導入するまでの時間:150秒であった。
【0092】
吸光度の測定を行った後の試料に対して、フェイズセパレータを使用して、気体の除去を行い、液体の試料を得た。前記液体の試料に対して、前述の測定方法を用いて、各金属元素の濃度の測定を実施した。前記測定は、前記検出信号に基づき、前記ICP-質量分析装置に到達した試料を測定できるように、分析データの取得を開始するタイミングを調節して実施した。具体的には、前記ICP-質量分析装置が、前記検出信号を受け取った直後に、分析データの取得を開始するように設定して、前記測定を実施した。
【0093】
前記測定にて得られた試料A~Wにおける前記測定対象の金属元素のそれぞれの濃度を以下の表3および4に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
<試料A´~W´における回収率の測定>
試料A~Wそれぞれ25mLと測定対象の金属元素であるCd、Pb、As、Se、Cr、Zn、Fe、Cu、Mn、BおよびAlのそれぞれの濃度が200μg/Lである標準液6.25mLとを混合した後、全体の体積が50mLとなるように超純水を加えてメスアップすることにより、回収率測定用の試料A´~W´を調製した。前記超純水としては、超純水製造システム(商品名:超純水製造装置Milli-Q、メルク社製)を使用して製造したものを使用した。
【0097】
続いて、<試料A~Wにおける金属元素の濃度測定>に記載の方法と同一の方法にて、試料A´~W´のそれぞれにおける前記測定対象の金属元素の濃度を測定した。得られた値を、試料A´~X´における各金属元素の濃度の「測定値」とした。
【0098】
一方、試料A´~W´のそれぞれについて、各金属元素の濃度は、{試料A~Wのそれぞれにおける各金属元素の濃度/(50(mL)/25(mL))}+{(200μg/L)×(50(mL)/6.25(mL))}=(試料A~Wのそれぞれにおける各金属元素の濃度/2)+25μg/Lとなることが期待される。以下にて、前記計算式にて算出される値を「期待値」と称する。
【0099】
また、試料A´~W´のそれぞれについて、(各金属元素の濃度の測定値/各金属元素の濃度の期待値)×100の式にて算出される値を算出した。算出された値を「回収率(%)」と称する。前記「回収率(%)」が100%に近いほど、各金属元素の濃度を精度良く、正確に測定できたことを意味する。
【0100】
試料A´~X´における各金属元素の濃度の「期待値」および「測定値」、並びに、「回収率(%)」を、以下の表5~10に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
【表8】
【0105】
【表9】
【0106】
【表10】
【0107】
表5~10に記載のとおり、試料A´~X´のそれぞれにおける各金属元素の濃度の「回収率(%)」は、良好であった。よって、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置を用いた流れ分析方法により、試料に含まれる金属元素の濃度を、精度よく測定できることが分かった。
【0108】
また、実施例3~25における流れ分析方法を実施するのに要した時間(分析時間)は、最初の結果が出るまで25分、その後は1試料あたり5分と短時間であった。よって、本発明の一実施形態に係る流れ分析方法により、分析時間を短縮できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、新規な流れ式分析方法および新規な流れ式分析装置として好適に利用される。
【符号の説明】
【0110】
1 流れ分析装置
2 サンプリング装置
3 試薬添加装置
4 分析装置
5 気液分離装置
6 気泡分節装置
7 加熱装置
8 加圧装置
100 管路
20 採取管
21 サンプリング用ポンプ(ペリスタポンプ)
30 試薬添加
31 試薬添加用ポンプ(ペリスタポンプ)
50S 分析管
50D 脱気管
51S 分析ポンプ(ペリスタポンプ)
51D 脱気ポンプ(ペリスタポンプ)
60 空気導入管
61 空気導入用ポンプ(ペリスタポンプ)
3F 試薬添加装置
3S 試薬添加装置
3T 試薬添加装置
5F 気液分離装置
5S 気液分離装置
7F 加熱装置
7S 加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7