(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191907
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、およびマルチホップ中継システム
(51)【国際特許分類】
H04W 76/10 20180101AFI20221221BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20221221BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20221221BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20221221BHJP
H04J 3/06 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H04W76/10 110
H04W72/04 131
H04W72/04 132
H04W84/18 110
H04L7/00 930
H04J3/06
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100421
(22)【出願日】2021-06-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】519166154
【氏名又は名称】ソナス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】大原 壮太郎
【テーマコード(参考)】
5K028
5K047
5K067
【Fターム(参考)】
5K028MM16
5K047AA01
5K067AA03
5K067CC02
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE06
(57)【要約】
【課題】
フラッディング方式を用いる通信を行う無線通信システムにおけるチャネルホッピングに有利な技術を提供すること。
【解決手段】
それぞれが複数のサブスロットを含む第1のフラッディングスロットと第2のフラッディングスロットとにおいてフラッディング方式を用いてパケットを送受信するマルチホップ中継システムの通信装置は、前記第1のフラッディングスロット内の第1のサブスロットと第2のサブスロットとで、パケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替え、前記第2のフラッディングスロット内ではパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えず、複数の前記第2のフラッディングスロット間でパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数のサブスロットを含む第1のフラッディングスロットと第2のフラッディングスロットとにおいてフラッディング方式を用いてパケットを送受信するマルチホップ中継システムの通信装置であって、
前記第1のフラッディングスロット内の第1のサブスロットと第2のサブスロットとで、パケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替え、
前記第2のフラッディングスロット内ではパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えず、複数の前記第2のフラッディングスロット間でパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替える、
チャネル制御手段を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記チャネル制御手段は、前記第1のフラッディングスロットにおいてサブスロットごとに第1のホッピングパターンに従って前記周波数チャネルを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1のホッピングパターンは、ノード間で同期した擬似乱数に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記チャネル制御手段は、複数の前記第2のフラッディングスロットごとに第2のホッピングパターンに従ってパケットの送受信に使用する前記周波数チャネルを切り替えることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1のフラッディングスロット内で受信したパケットのパラメータに基づいて前記第2のホッピングパターンを特定する特定手段を有することを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第2のホッピングパターンは、ノード間で同期した擬似乱数に基づいて決定されることを特徴とする請求項4または5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1のフラッディングスロット内では固定長のパケットが送受信されることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第2のフラッディングスロットのそれぞれの先頭のサブスロットにおいてセンサから取得したセンサデータを送信する送信手段をさらに有することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記第1のフラッディングスロットでは、タイムスタンプ情報を含む同期パケットが送受信されることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記チャネル制御手段は、第1のフラッディングスロット内の前記第1のサブスロットにおいてパケットを受信した場合に、前記第2のサブスロットにおいてパケットの送受信に使用する周波数チャネルを特定し、
前記第1のサブスロットにおいて受信したパケットを前記第2のサブスロットにおいて転送する転送手段をさらに有することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
それぞれが複数のサブスロットを含む第1のフラッディングスロットと第2のフラッディングスロットとにおいてフラッディング方式を用いてノード間でパケットを送受信するマルチホップ中継システムの通信方法であって、
前記第1のフラッディングスロット内の第1のサブスロットと第2のサブスロットとで、パケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えることと、
前記第2のフラッディングスロット内ではパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えず、複数の前記第2のフラッディングスロット間でパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えることと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項12】
それぞれが複数のサブスロットを含む第1のフラッディングスロットと第2のフラッディングスロットとにおいてフラッディング方式を用いてノード間でパケットを送受信するマルチホップ中継システムであって、
前記第1のフラッディングスロット内の第1のサブスロットと第2のサブスロットとで、パケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替え、
前記第2のフラッディングスロット内ではパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えず、複数の前記第2のフラッディングスロット間でパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替える、
ことを特徴とするマルチホップ中継システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッディング方式で通信を行う通信装置、通信方法、およびマルチホップ中継システムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサノードを複数配置して、データ収集を行う場合、センサノードの消費電力を抑え、データ収集の確率を高めるため、同時送信を利用したフラッディングというブロードキャスト方式が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
同時送信を利用したフラッディング方式では、1つのセンサノードがデータ送信を行った際、そのデータを受信した1つ以上の中継ノードが、データ受信後直ちに、もしくは固定遅延で同じデータをブロードキャスト的に送信することで、無線信号の同時送信(複数の中継ノードが同時または準同時で同じ無線信号を送出すること)を起こし、これを複数回繰り返すことで、無線通信システム全体にデータを伝達することが可能である。同時送信を利用したフラッディング方式では、同時または準同時に同じデータが送信されるために、中継ノードが複数のノードから同時または準同時に信号を受信しても復号ができる。またルーティングも不要であり、実装も簡単化でき、消費電力を低減できる利点がある。
【0004】
同様な方式には、各無線通信ノードにタイムスロットを割当て、タイムスロット内にフラッディング方式を用いて自ノードのデータを送信し、受信した中継ノードは割り当てられたタイムスロットでデータを中継する。これを繰り返すことで送信ノードから送信されたデータを中継し、最終的にデータ収集ノードに到達させる方式がある。(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】F. Ferrari et al., "Efficient Network Flooding and Time Synchronization with Glossy", IPSN'11, 2011
【非特許文献2】Chao GAO et al., "Efficient Collection Using Constructive-Interference Flooding in Wireless Sensor Networks", 電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集,2011年_通信(2),428,2011-08-30
【非特許文献3】鈴木 誠、長山 智則、大原 壮太郎、森川 博之、"同時送信型フラッディングを利用した構造モニタリング"、電子情報通信学会論文誌B、No.12、pp.952-960、2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線通信において、耐干渉性能を高めることを目的としてパケット送信に使用する周波数チャネルを切り替えるチャネルホッピング技術が知られている。チャネルホッピング技術によれば、他の無線システムなどによって特定チャネルが占有されている場合であっても、通信を継続しうるが、送信側と受信側とでパケット送信に使用する周波数チャネルの同期を取る必要がある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みて成されたものであり、フラッディング方式を用い、チャネルホッピングによる通信を行う無線通信システムにおいて、効率的な通信を行うのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る通信装置は、
それぞれが複数のサブスロットを含む第1のフラッディングスロットと第2のフラッディングスロットとにおいてフラッディング方式を用いてパケットを送受信するマルチホップ中継システムの通信装置であって、
前記第1のフラッディングスロット内の第1のサブスロットと第2のサブスロットとで、パケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替え、
前記第2のフラッディングスロット内ではパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えず、複数の前記第2のフラッディングスロット間でパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替える、
チャネル制御手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために本発明の一態様に係る通信方法は、
それぞれが複数のサブスロットを含む第1のフラッディングスロットと第2のフラッディングスロットとにおいてフラッディング方式を用いてノード間でパケットを送受信するマルチホップ中継システムの通信方法であって、
前記第1のフラッディングスロット内の第1のサブスロットと第2のサブスロットとで、パケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えることと、
前記第2のフラッディングスロット内ではパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えず、複数の前記第2のフラッディングスロット間でパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えることと、
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために本発明の一態様に係るマルチホップ中継システムは、
それぞれが複数のサブスロットを含む第1のフラッディングスロットと第2のフラッディングスロットとにおいてフラッディング方式を用いてノード間でパケットを送受信するマルチホップ中継システムであって、
前記第1のフラッディングスロット内の第1のサブスロットと第2のサブスロットとで、パケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替え、
前記第2のフラッディングスロット内ではパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替えず、複数の前記第2のフラッディングスロット間でパケットの送受信に使用する周波数チャネルを切り替える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フラッディング方式を用い、チャネルホッピングによる通信を行う無線通信システムにおいて、効率的な通信を行うのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図。
【
図2】一実施形態に係る送信ノードの機能ブロック図。
【
図3】一実施形態に係る中継ノードの機能ブロック図。
【
図4】一実施形態に係るフラッディング方式を用いる通信のサブスロットを示すタイミング図。
【
図5】一実施形態に係るフラッディング方式を用いる通信のフラッディングスロットを示すシーケンス図。
【
図6】一実施形態に係るフラッディング方式を用いた通信で送受信されるパケットの構造の一例を示す図。
【
図7】同期パケットの伝送用のフラッディングスロットの構造を示すタイミング図。
【
図8】データパケットの伝送用のフラッディングスロットの構造を示すタイミング図。
【
図9】(A)はフラッディングスロットごとに使用されるチャネルの一例を示す図、(B)同期パケットの伝送用のフラッディングスロットにおいて使用されるチャネルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る無線通信システム100(マルチホップ中継システム)を示すブロック図である。
【0015】
無線通信システム100は、送信ノード110、中継ノード120a~120e(区別せずに中継ノード120と称する場合がある)を含む。無線通信システム100においては、複数の中継ノード120が同時送信を行う必要があるため、無線通信システム100内のノード間の同期が必要である。ノード間の同期をとるために、無線通信システム内の1台の送信ノード110は、同期パケットを定期的に送出し、当該同期パケットを受信した中継ノード120がフラッディング方式の通信によって同期パケットを転送することによって、無線通信システム100内の全ノードに同期パケットを伝送する。
【0016】
同期パケットを受信した各ノードは、同期パケットに含まれる時刻情報や同期パケットの転送回数から各ノードと送信ノード110との時刻のずれを計算して時刻同期を行う。ノードの再起動時など、中継ノードの時刻同期が外れた状態では、中継ノードは同期パケットの待受けを行い、同期パケットを受信してシステムクロックとの同期を取った後に無線通信システムに参加する。
【0017】
本実施形態に係る無線通信システム100は、センサデータなどのデータを含むパケットを送信したいノードは、割り当てられたフラッディングスロットを使ってデータ送信する送信許可を割り当てられる。また、送信許可を与えられた無線通信ノードは、自己に割当てられたフラッディングスロット内でセンサデータなどを含むパケットを送信する。そのパケットを受信した他のノードが直ちに同じパケットをフラッディング方式を用いてブロードキャスト送信するという動作を繰り返す。通信システムを同期させるために送信ノード110は、同期のためのフラッディングスロットにおいて、フラッディング方式を用いて各ノードを同期させるための同期パケットを送信する。中継ノード120は、送信ノード110または他の中継ノード120から受信した同期パケットを転送することで、システム全体に同期パケットをフラッディングさせてノード間の同期をとる。フラッディングスロットとは、1つの無線通信ノードから別の少なくとも1つの宛先となる無線通信ノードへ、パケットを送信するために、フラッディング方式を用いるブロードキャスト送信を繰り返す1つのサイクルを指す。なお、フラッディングスロット内において、各ノードが送信または受信を行うためのタイムスロットはサブスロットと呼ぶ。なお、サブスロットの長さ(サブスロット長)は送信ノードによって送信されるパケット長などに依存し、フラッディングスロットごとに異なってもよい。
【0018】
なお、
図1では、1台の送信ノード110、及び複数の中継ノード120を含む無線通信システム100を例に説明を行うが、無線通信システム100は複数の送信ノード110を含んでもよい。
【0019】
送信ノード110及び複数の中継ノード120は、時刻同期のためのフラッディングスロットを中継するときと、同期と異なる目的のフラッディングスロットでは、異なる役割を果たしてもよい。本実施形態では、送信ノード110は、後述するセンサデータの送信のためのフラッディングスロットにおいては、他のノードからセンサノードを収集するシンクノードとして動作するものとして説明を行うが、別例では、送信ノード110は、後述するセンサデータの送信のためのフラッディングスロットにおいては、他のノードが送信したセンサデータを含むパケットを中継する中継ノードとして動作してもよい。すなわち、ここでは
図1の送信ノード110及び複数の中継ノード120は、時刻同期のためのフラッディングスロットの説明のための例を示すものであり、別の例えばデータ送信を行うためのフラッディングスロットにおいてはそれぞれのノードは別の役割を果たしてもよい。なお、本実施形態において、送信ノード110、中継ノード120、およびシンクノードを含む、無線通信システム内のノードを無線通信ノードと称する。
【0020】
図2は、上記送信ノード110の構成を示すブロック図である。この送信ノード110は、無線通信部201と、通信制御部202と、同期パケット生成部203、データ収集部204を備える。
【0021】
無線通信部201は、無線信号の送受信部として動作するモジュールであり、他の中継ノード120との間で無線通信部201が備えるアンテナまたは外部のアンテナ(不図示)を介して無線によりデータの送受信を行う。通信制御部202は、無線通信部201の通信状態を管理し、決められたシーケンスに従って送信・転送処理を実行させる。なお、通信制御部202は、他の無線通信ノードからのパケットを受信すると共に、他の無線通信ノードからのデータを解析して、受信したパケットをフラッディング方式に従いブロードキャスト送信する中継処理を行ってもよい。
【0022】
通信制御部202は、同期パケットを送信する周波数チャネルを決定するチャネル決定部2021を備える。チャネル決定部2021は、同期パケットの伝送のためのフラッディングスロットに含まれる複数のサブスロットごとに同期パケットを送信するチャネルを擬似ランダム関数に基づいて決定する。また、データパケットの伝送のためのフラッディングスロットごとにデータパケットを受信するチャネルを擬似ランダム関数に基づいて決定する。チャネル決定部2021の詳細については
図7~
図9を参照して後述する。
【0023】
同期パケット生成部203は、所定の時間周期で同期パケットを生成し、通信制御部202に伝送する。一例では、同期パケット生成部203は、高精度なクロックを生成するために、水晶発振器などのクロックユニットを備える。
【0024】
なお、送信ノード110はプロセッサを備え、当該プロセッサがストレージに格納されたプログラムをメモリに展開して実行することで無線通信部201、通信制御部202、および同期パケット生成部203の少なくともいずれかの機能を実現してもよい。
【0025】
データ収集部204は、無線通信ノードの何れかからセンサデータを収集するシンクノードとしての機能を実現する。上述したように、本実施形態では送信ノード110がシンクノードとして機能するため、データ収集部204が送信ノード110に設けられる。一方、送信ノード110がシンクノードとして機能しなくてもよく、その場合にはデータ収集部204は他の無線通信ノードに設けられてもよい。
【0026】
図3は、上記中継ノード120の構成を示すブロック図である。この中継ノード120は、無線通信部301、通信制御部302、時刻同期部303、およびデータ生成部304を備える。
【0027】
中継ノード120の無線通信部301は、それぞれ送信ノード110の無線通信部201と同様の機能を有するため、説明を省略する。
【0028】
通信制御部302は、同期パケットを受信および転送(中継)する周波数チャネルを決定するチャネル決定部3021を備える。チャネル決定部3021は、同期パケットの受信および転送のためのフラッディングスロットに含まれる複数のサブスロットごとに同期パケットを送信するチャネルを擬似ランダム関数に基づいて決定する。また、チャネル決定部3021は、データパケットの送信または中継のためのフラッディングスロットごとにデータパケットを受信するチャネルを擬似ランダム関数に基づいて決定する。チャネル決定部3021の詳細については
図7~
図9を参照して後述する。
【0029】
時刻同期部303は、無線通信部301を介して受信した同期パケットに基づいて、中継ノード120のクロック補正を行う。
【0030】
データ生成部304は、シンクノードが収集する対象のデータを生成する。中継ノード120がセンサから取得したデータを送信するセンサノードである場合には、データ生成部304はセンサであってもよいし、中継ノード120の外部のセンサに接続されるインタフェースであってもよい。なお、中継ノード120は随意に送信ノード110と同様の構成を備えてもよい。すなわち、中継ノード120は、追加で同期パケット生成部203に対応する構成を備えてもよい。
【0031】
なお、中継ノード120はプロセッサを備え、当該プロセッサがストレージに格納されたプログラムをメモリに展開して実行することで無線通信部301、通信制御部302、時刻同期部303、およびデータ生成部304の少なくともいずれかの機能を実現してもよい。
【0032】
ここで、
図6を参照して、送信ノード110が送信する同期パケットフォーマットの一例を説明する。
【0033】
送信元情報601は、送信ノード110の識別子を示す情報である。宛先情報602は、パケットの宛先を示す情報であり、時刻同期パケットでは宛先情報602はブロードキャスト又はエニーキャストを示す識別子に設定される。時刻情報603は、送信ノード110の同期パケット生成部203が同期パケットを生成した時刻、または送信ノード110の無線通信部201が同期パケットを送信する時刻に対応する時刻情報である。時刻情報603はタイムスタンプ情報とも呼ばれる。タイミング情報604は、同期パケットが送信されるサブスロットに対応する情報であり、同期パケットがフラッディング方式で転送される度に変更される。一例では、同期パケットを受信した中継ノード120は、次のサブスロットにおいてタイミング情報604を更新してパケットを再構成して送信することで同期パケットの転送処理を行う。
【0034】
なお、一例では、宛先情報602は、上位レイヤで通知されてもよいし、スロット割当の時に作成したスケジュール情報を流用して通知されてもよい。この場合、宛先情報602は同期パケットのヘッダには含められずパケットペイロードに含められてもよい。
【0035】
フラッディングスロット設定情報606は、同期パケットを受信した中継ノード120がフラッディングスロットまたはサブスロットのパラメータを取得することを可能にするためのパラメータである。フラッディングスロット設定情報606は、フラッディングスロットの時間的な長さ、サブスロットの時間的な長さ、同期パケットの送信周期、フラッディングスロット内での最大送信回数、同期回復処理を実行するまでに許容される同期パケットのパケットロス数を含む。
【0036】
次に、
図4を参照して、
図1の構成の無線通信システムが行うフラッディング方式によるデータ転送の一例を説明する。
図4では、送信ノード110が同期パケットを送信する場合について説明する。またこの例ではノード間で同期がすでにとられているとして説明する。
【0037】
図4は、
図1に示す無線システムにおいて、各無線通信ノードのサブスロットの使用例を示している。
図4に示すフラッディング方式では、無線システム内のノードは、1つのサブスロットでパケットを受信すると、以降のサブスロットでは受信したパケットに基づく送信を繰り返すものとして説明を行う。しかしながら、パケットの送信回数の上限が決められてもよいし、1回送信すると次のサブスロットで再度受信を行い、パケットを受信するとそのパケットの送信を行ってもよい。
【0038】
まず、最初のサブスロット401において、送信ノード110は、同期パケットを送信する。送信ノード110からの同期パケットは、中継ノード120aおよび120bが受信するものとする。
【0039】
例えば、サブスロット401において、送信ノード110は、タイミング情報604が「1」を示す情報を設定して同期パケットを送信する。送信ノード110から送信された同期パケットは、中継ノード120aおよび120bに受信される。
【0040】
サブスロット401の次のサブスロット402において、送信ノード110、中継ノード120aおよび120bは、受信した同期パケットを転送する。1つのサブスロット内で、複数の無線通信ノードが送信した同期パケットは、データが同一であり、かつ送信時刻が同期されているため、衝突しても問題なく復号される。このため、中継ノード120cおよび120dは、中継ノード120aおよび120bから同時送信された2つの同期パケットを1つの同期パケットとして受信する。ここで、送信ノード110、中継ノード120aおよび120bは、タイミング情報604を「2」に増やして同期パケットの送信を行う。中継ノード120aおよび120bからの同期パケットは、送信ノード110ならびに中継ノード120cおよび120dが受信するものとする。
【0041】
続いて、サブスロット402の次のサブスロット403において、送信ノード110、中継ノード120aおよび120b、並びにサブスロット402で同期パケットを受信した中継ノード120cおよび120dは、タイミング情報604を「3」に設定して受信した同期パケットを転送する。送信ノード110、中継ノード120a~120dからの同期パケットは、中継ノード120eが受信するものとする。
【0042】
続いて、サブスロット403の次のサブスロット404において、送信ノード110、中継ノード120a~120d、並びにサブスロット403で同期パケットを受信した中継ノードeは、タイミング情報604を「4」に設定して受信した同期パケットを転送する。
【0043】
以降のサブスロット405、406においてもサブスロット404と同様に各ノードが同期パケットの送受信を行うことでネットワーク内の各ノードに同期パケットを送信することができる。
【0044】
なお、この例では、サブスロット401では中継ノード120c~120eも同期パケットを待受けている。しかしながら、中継ノード120c~120eは送信ノード110から送信された同期パケットをサブスロット401では検出できないため、後続のサブスロット402でも同期パケットの待受けを継続する。すなわち、点線で示すように、フラッディングスロットが始まってから、中継ノード120a~120eは同期パケットを受信するために待受け処理を実行している。
【0045】
また、中継ノード120は、同期パケットを受信し次第、時刻同期を行う。このため、
図4の例では同期パケットのパケット長とサブスロット長とが同じものとして図示されているが、同期パケットのパケット長をサブスロット長よりも短くし、サブスロット内の同期パケットの送受信の後にオーバヘッドが設けられてもよい。
【0046】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る無線通信システムが実行する処理の一例を説明する。
【0047】
図5は、送信ノード110が無線通信システム内の時刻同期を実行させ、いずれかの中継ノード120からデータを収集するまでの処理のシーケンス図を示す。なお、
図5においては、送信ノード110が中継ノード120からデータを収集するシンクノードであるものとして説明を行うが、無線通信システム100は送信ノード110とは別にシンクノードを備えてもよい。
【0048】
各フラッディングスロットは、フラッディングによるデータ転送の期間を表す。1つのフラッディングスロットは、送信ノード110及び中継ノード120を含む通信ノードのうちの1台から、他の通信ノードのうちの少なくとも1台のノードを宛先とした送信(ダウンリンク)、または他の通信ノードのうちの少なくとも1台の無線通信ノードから送信ノード110への送信(アップリンク)に割当てられる期間を表す。
【0049】
なお、アップリンクおよびダウンリンクの両方において、
図4を参照して説明したようなフラッディング方式の通信が用いられる。
【0050】
まず、フラッディングスロット501は、送信ノード110が同期パケットを送信し、フラッディング方式に従いネットワーク内の各通信ノードに時刻同期に必要な情報を無線通信システム内の通信ノードに通知するためのフラッディングスロットである。
【0051】
続いて、フラッディングスロット502において、送信ノード110に送信すべきデータを有している中継ノード120は、送信ノード110を宛先に、送信すべきデータの送信を希望する送信要求パケットを送信する。
【0052】
一例では、フラッディングスロット502では、送信すべきデータを有している1つ以上の中継ノード120が、擬似ランダム関数を用いて生成したランダム時間だけ待機し、送信要求パケット(送信要求信号)を送信する、ランダムバックオフベースのフラッディング方式の通信を行う。この場合、送信すべきデータを有している中継ノード120であって、送信要求パケットを送信する前に他の中継ノード120から送信要求パケットを受信した中継ノード120は、当該他の中継ノード120からの送信要求パケットを中継し、自身の送信要求パケットは送信しない。これによって、擬似ランダム関数を用いて生成したランダム時間が短い中継ノード120が送信要求パケットを送信することができる。このように、フラッディングスロット502において、送信ノード110はデータの送信を許可するノードを把握することができる。
【0053】
続いて、フラッディングスロット503において、送信ノード110は、次のフラッディングスロット504におけるデータ送信を許可する中継ノード120を宛先情報602に設定し、送信許可パケットを送信する。
【0054】
続いて、フラッディングスロット504において、送信許可パケットで指定された中継ノード120は、当該スロットで送信を開始する。すなわち、送信元情報601をその中継ノード120の識別子に設定し、宛先情報602を送信ノード110に設定し、センサデータを送信する。
【0055】
続いて、フラッディングスロット504においてセンサデータを正常に受信したと判断した送信ノード110は、フラッディングスロット505において他の中継ノード120にも、送信許可を送信する。一例では、フラッディングスロット506以降は、送信ノード110によって送信を許可された中継ノード120の数に対応するフラッディングスロット数だけセンサデータのアップリンク送信が行われる。その後、フラッディングスロットNにおいて、送信ノード110は全ての中継ノード120からのデータ収集が完了したと判定すると、スリープを指示するスリープパケット(スリープ信号)を送信する。スリープパケットを受信した無線通信システム内の無線通信ノードは、フラッディングスロットNの終了後、所定の時刻までスリープ状態に遷移する。所定の時刻とは、1000ミリ秒などの無線通信ノードで共通で事前に設定された時刻であってもよいし、スリープパケットに含まれる情報に基づいて特定されてもよい。
【0056】
<チャネル制御>
他の無線装置による干渉に対する耐性を高めることを目的として、同期パケットやデータパケットなどのパケットを送信する周波数チャネル(以降、チャネルと称する)を変えて送受信を行うチャネルホッピング技術が存在する。チャネルホッピング技術によれば、特定の周波数ノイズが発生している状態でも、ノイズの周波数以外を使用して通信を行うことで干渉に対する耐性を高めることができる。一方、受信ノードは、いずれのタイミングでいずれのチャネルを使用してパケットが送信されるのかを特定しないと、パケットを受信することができない。このため、チャネルホッピング技術を適用する場合には、送受信間でパケットの送信に使用されるチャネルの同期が取れている必要がある。
【0057】
無線通信システム100においてチャネルホッピング技術を適用することを検討すると、以下の課題が生じる。
【0058】
中継ノード120が起動し、無線通信システム100に参加する場合、中継ノード120は時刻同期が外れた状態であるため、同期パケットがいずれのタイミングでいずれの周波数で送信されるのかを特定することができない。このため、中継ノード120は時刻同期が取れるまで1つの周波数で時刻同期パケットを待ち受けてListen状態でいる必要がある。
【0059】
また、ある中継ノード120がデータ伝送用のフラッディングスロットにおいてデータパケットを待ち受ける場合、その中継ノード120はネットワークトポロジを把握していないため、データパケットを送信する中継ノードからデータパケットを待ち受けている中継ノード120までのホップ数を特定することができない。また、データ伝送用のフラッディングスロットでは、データパケットのサイズが可変である可変パケット長でデータ伝送が行われる場合がある。このため、中継ノード120は中継すべきデータパケットがいずれのタイミングでいずれの周波数チャネルで送信されるのかを特定することができない。
【0060】
以上の課題を鑑みて、本実施形態におけるチャネル制御について説明する。
【0061】
図7に、時刻同期のためのフラッディングスロット700および710(例えば
図5のフラッディングスロット501)における同期パケットの送受信について説明する。なお、
図7の例では、中継ノード120dがノードの再起動に伴い、時刻同期が外れており、同期パケットを特定のチャネル、例えばf1で待ち受けているものとする。時刻同期が外れている中継ノード120dが同期パケットを待ち受けるチャネルは、システムごとに設定されてもよいし、最小のチャネル番号を有するチャネルで待ち受けてもよい。また、
図7の例では中継ノード120a、120b、120c、および120eは、以前、同期パケットを受信しており、送信ノード110からのチャネルf1~f6を使用するチャネルホッピングによる同期パケットの送信タイミングとチャネルとを決定しているものとする。
【0062】
まず、フラッディングスロット700の一番目のサブスロット701において、送信ノード110は同期パケットをチャネルf1とは異なるチャネル(例えばチャネルf2)で送信する。中継ノード120a、120bは送信ノード110に同期しているので、送信ノード110から送信された同期パケットを受信する。
図7に示すように、中継ノード120c、120eも送信ノード110が同期パケットを送信するチャネルを決定しているため、サブスロット701において同期パケットが送信されるチャネルにおいて同期パケットの待受けを行うものとする。また、中継ノード120dは、サブスロット701において同期パケットが送信されるチャネルとは異なるチャネルで待ち受けを行っているため同期パケットを受信できない。
【0063】
なお、本実施形態において、同期パケットのパケット長は、サブスロット701の長さよりも短い。これは、送受信を行うチャネルを変更するためのオーバヘッドのためであり、受信においてもサブスロットの長さよりも短い期間同期パケットの待受けを行ってもよい。また、一例では、中継ノード120は、同期パケットの待受け中に同期パケットを検出し次第、待受けを終了してもよい。
【0064】
続く二番目のサブスロット702において、送信ノード110、中継ノード120a、および120bが同期パケットをチャネルf1とは異なるチャネル(例えばチャネルf4)で送信し、中継ノード120cが同期パケットを受信する。
図7に示すようにこの例では、サブスロット702では、サブスロット701において同期パケットが送信されたチャネル(f2)とは異なるチャネル(f4)で送信される。一方、中継ノード120dは、サブスロット702で同期パケットが送信されるチャネルとは異なるチャネルf1で同期パケットの待受けを行っているため、同期パケットを受信できない。
【0065】
続く三番目のサブスロット703において、送信ノード110、中継ノード120a、120b、および120cが同期パケットをチャネルf1とは異なるチャネル(例えばチャネルf6)で送信し、中継ノード120eが同期パケットを受信する。
図7の例では、サブスロット703では、サブスロット701、702において同期パケットが送信されたチャネル(チャネルf2、f4)とは異なるチャネル(f6)で送信される。一方、中継ノード120dは、サブスロット703で同期パケットが送信されるチャネルとは異なるチャネルf1で同期パケットの待受けを行っているため、同期パケットを受信できない。
【0066】
続く四番目のサブスロット704において、送信ノード110、中継ノード120a、120b、120c、および120eが同期パケットをチャネルf1で送信し、中継ノード120dが同期パケットを受信する。中継ノード120dは、同期パケットに含まれる時刻情報603および、タイミング情報604に基づいて、時刻同期を行い、無線通信システム100に参加することができる。また、時刻情報603およびシーケンス番号情報605の少なくともいずれか、タイミング情報604、並びに受信を待機していたチャネル番号に基づいて、次のサブスロット705において同期パケットの送信に使用されるチャネルを特定することができる。同期パケットの送受信に使用されるチャネルの決定については後述する。
【0067】
続いて、五番目および六番目のサブスロット705、706において、送信ノード110、中継ノード120a、120b、120c、120d、および120eが例えば五番目のサブスロット705ではチャネルf5で、六番目のサブスロット706ではf3で同期パケットを送信する。すなわち、中継ノード120dは同期が取れ、無線通信システム100に参加すると後続のパケット転送に参加する。以上のようにしてフラッディングスロット700においてノード間の同期をとることができる。
【0068】
フラッディングスロット700の後、次の時刻同期のためのフラッディングスロット710までの間に、データパケットの伝送のためのフラッディングスロットなどが設けられる(不図示)。一例では、無線通信システム100では、所定の時間間隔(例えば60秒おき)で時刻同期のためのフラッディングスロットが設けられる。
【0069】
フラッディングスロット700に続くフラッディングスロット710の一番目のサブスロット711において、送信ノード110は例えばチャネルf5で同期パケットを送信し、中継ノード120a、120bが同期パケットを受信する。中継ノード120c、120d、120eは同期パケットの受信はできないが、同期パケットの送信に使用されるチャネルの決定を行い、チャネルf5で同期パケットの待受けを行う。続いて、フラッディングスロット710の二番目のサブスロット711において、送信ノード110、中継ノード120aおよび120bが同期パケットをチャネルf4で送信し、中継ノード120cおよび120dが同期パケットの受信を行う。以下は同様に、無線通信システム100の各ノードが同期パケットを受信するように、チャネルを切り替えながら同期パケットの転送を行う。
【0070】
ここで、中継ノード120dは、フラッディングスロット700では四番目のサブスロット704で同期パケットの受信を行ったが、フラッディングスロット710では2番目のサブスロット712で同期パケットの受信を行う。このため、中継ノード120dは、フラッディングスロット710では三番目のサブスロット713において同期パケットの送信を行う。
【0071】
なお、無線通信システム100の配置の動的な変化、時間経過に従い変化する干渉信号や、周波数選択性の伝搬チャネルなどに起因し、中継ノード120が同期パケットを受信できるサブスロット番号は変化しうる。このため、本実施形態における中継ノード120は、同期が外れた場合は、同期パケットを受信するまで待ち受けを継続する。
【0072】
このように、フラッディングスロット内の複数のサブスロットにおいて、同期パケットを送信するチャネルを切り替えることで、高い耐干渉性能を得ることができる。
【0073】
なお、本実施形態に係る同期パケットは固定長のパケットを使う。このため、無線通信ノードは、それぞれのサブスロットの開始時刻を判定することができる。
【0074】
また、
図7では、時刻同期が取れた中継ノード120は、全てのサブスロットにおいて同期パケットの待受けを行うものとして説明を行った。しかしながら、過去の時刻同期のためのフラッディングスロットにおける同期パケットを受信したタイミングに関する情報に基づいて、中継ノード120は同期パケットの待受けを開始するサブスロット番号を決定してもよい。例えば、中継ノード120eは、フラッディングスロット700の三番目のサブスロット703で同期パケットを受信したことに基づいて、フラッディングスロット710において、三番目のサブスロット713から同期パケットの待受けを行い、サブスロット711および712では同期パケットの待受けを行わなくてもよい。これによって、中継ノード120による同期パケットの待受けに係る消費電力を削減することができる。
【0075】
続いて、
図8を参照して、データパケットを伝送するためのフラッディングスロット800、810におけるデータパケットの送受信について説明する。なお、
図8の例では、送信ノード110、及び中継ノード120の時刻同期は取れているものとする。また、フラッディングスロット800においては中継ノード120eが送信ノード110へデータパケットの送信を行い、フラッディングスロット800においては中継ノード120dが送信ノード110へデータパケットの送信を行うものとして説明する。また、本実施形態では送信ノード110がシンクノードとして機能するものとして説明する。
【0076】
また、フラッディングスロット800では、所定のチャネル(例えばチャネルf2)を用いてデータ伝送が行われる。そして、後続のフラッディングスロット810では、フラッディングスロット800とは異なるチャネル(例えばチャネルf1)を用いてデータ伝送が行われる。
【0077】
フラッディングスロット800の一番目のサブスロット801において中継ノード120eは、センサデータなどを含むデータパケットを送信ノード110宛に送信し、中継ノード120cがデータパケットを受信する。続いて、二番目のサブスロット802において、中継ノード120eおよび120cがサブスロット801においてデータパケットの送信に使用されたチャネルと同じチャネルにおいてデータパケットを送信し、中継ノード120a、120b、および120dがデータパケットを受信する。
【0078】
なお、
図8に示すように、サブスロット801および802では同じチャネルを使用してデータパケットの送信が行われるため、中継ノード120はデータパケットを受信するまで、複数のサブスロットにわたって継続的にデータパケットを待ち受けうる。
【0079】
また、
図8では、サブスロット801および802とは、データパケットの伝送に使用されるチャネルの切替が必要ないため、サブスロット長とパケット長が同じものとして図示されているが、データパケットの更新や無線送受信回路の切替を目的として適宜オーバヘッドが設けられてもよい。
【0080】
以降、三番目のサブスロット803において中継ノード120a、120b、120c、120d、および120eがデータパケットの送信を行い、送信ノード110がデータパケットを受信する。以降、サブスロット804、805、806でデータパケットの送信が行われ、フラッディングスロット800を終了する。なお、シンクノードである送信ノード110は、データパケットの受信のみを行い、送信は行わなくてもよい。
【0081】
続いて、フラッディングスロット800に続く、データ伝送のためのフラッディングスロット810の一番目のサブスロット811において中継ノード120dは、センサデータなどを含むデータパケットを送信ノード110宛に送信する。ここで、中継ノード120bおよび120cは受信に失敗するものとする。このため、二番目のサブスロット812においても中継ノード120dがデータパケットの送信を行う。サブスロット812において中継ノード120bおよび120cがデータパケットの受信を行う。
【0082】
続くサブスロット813において、中継ノード120b、120c、および120dがデータパケットの送信を行い、送信ノード110、中継ノード120a、および120eがデータパケットの受信を行う。以降、サブスロット814および815において送信ノード110および中継ノード120a、120b、120c、120d、および120eがデータパケットの送信を行う。
【0083】
なお、本実施形態に係るデータ伝送用のフラッディングスロットでは、
図8に示すように、複数のデータ伝送用のフラッディングスロット800と810とで異なるパケット長のデータパケットが伝送される。また、データパケットを中継する中継ノード120には、データ伝送用のフラッディングスロットにおいて伝送されるデータパケットのパケット長に関する情報は予め通知されない。このため、データパケットを受信していない中継ノード120は、サブスロットのスロット長を特定することができない。
【0084】
しかし、データ伝送用のフラッディングスロット内ではデータパケットの伝送に使用されるチャネルは切り替えられないため、中継ノード120は、そのチャネルでパケット検出を試行し続けることで、パケット長に関する情報を有しなくても可変長のデータパケットの伝送を実現することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る無線通信システム100では、中継ノード120はネットワークトポロジを把握していない。このため、データ伝送用のフラッディングスロットにおいて、データパケットを送信するノードからのホップ数を把握していない。このような場合であっても、フラッディングスロットにおいて使用されるチャネルでデータパケットの待受けを行えば、データパケットを送信するノードからのホップ数が分からなくても中継ノード120はデータパケットを受信することができる。
【0086】
また、データ伝送用の1つのフラッディングスロット内ではチャネルは切り替えられないため、チャネルを切り替えるためのガードタイムをデータパケット間に設ける必要がなく、データ伝送用のフラッディングスロット内でのオーバヘッドを削減することができる。
【0087】
また、複数のデータ伝送用のフラッディングスロットでは、異なるチャネルを用いてデータ伝送が行われる。これによって、データ伝送用のフラッディングスロットの耐干渉性能を高めることができる。
【0088】
<チャネル決定方法>
次に、送信ノード110および送信ノードと時刻同期の取れた中継ノード120による同期パケットの送信チャネルおよびデータパケットの送信チャネルの決定方法について説明する。
【0089】
本実施形態に係る無線通信システム100は、ノード間で同期した擬似乱数に対応したチャネルを使用してフラッディングスロットごとに送信チャネルを決定する。ここでは、以下の通り、線形合同法による擬似乱数に対応するチャネルを使用してデータパケットを送信する例を説明する。
【0090】
Xn+1 =(A×Xn+B) mod M
ここで、Xnは擬似乱数値である。n=0の場合のXn(X0)はシードと呼ばれる定数である。Mはネットワーク内で使用するチャネルの総数であり、AおよびBはMに応じて定められる定数である。一例では、AおよびBは、BがMと互いに素となり、A-1がMの持つすべての素因数で割り切ることができる数が選ばれる。
【0091】
例えば、中継ノード120は、デバイスの製造時、またはファームウェアの書き込み時に、参加する無線ネットワーク100に関する事前情報として、無線ネットワークの識別子や、送信ノード110またはシンクノードの識別子を取得している。
【0092】
これらの事前情報をシードとしてX0を特定し、定数AおよびBを特定し、擬似乱数の数列を生成する。そして、同期パケットに含まれるシーケンス番号nから、それぞれのフラッディングスロットに対応するチャネルを特定することができる。
【0093】
ここで、
図9(A)および
図9(B)を参照して、フラッディングスロット間でのチャネルの関係について説明する。
図9(A)には、データ伝送用のフラッディングスロット900、901、904~909、912、および913、制御信号伝送用のフラッディングスロット903および911、ならびに同期信号伝送用のフラッディングスロット902および910が示されている。フラッディングスロット900のシーケンス番号はk番目であり、伝送に使用されるチャネル番号はX
kであるものとする。また、
図9(B)にはフラッディングスロット902に含まれるサブスロット920~027が示されている。
【0094】
図9(B)に示すように、同期信号伝送用のフラッディングスロットのサブスロット920~927では上述したようにチャネルを切り替えながら同期パケットを伝送する。なお、
図9(B)の例ではY
0=X
k+2である。
【0095】
本実施形態において、同期信号伝送用のフラッディングスロットにおいては、ノード間で同期してフラッディングスロット内のサブスロット単位でチャネルの切替を行う。例えば上述のように、線形合同法による擬似乱数に対応するチャネルを使用してサブスロットごとにチャネルを切り替えながら同期パケットを送信してもよい。
【0096】
Yn+1 =(C×Yn+D) mod S
ここで、Ynは擬似乱数値、n=0の場合のYn(Y0)はシードと呼ばれる定数である。Sは同期信号伝送用のフラッディングスロットに含まれるサブスロットの総数であり、CおよびDはSに応じて定められる定数である。一例では、CおよびDは、DがSと互いに素となり、C-1がSの持つすべての素因数で割り切ることができる数が選ばれる。
【0097】
すなわち、フラッディングスロットごとのチャネル番号を特定するための擬似ランダム関数とは異なる擬似ランダム関数を使用して疑似乱数を生成し、サブスロットごとに使用するチャネルを切り替えるようにYnが決められてもよい。
【0098】
あるいは、チャネル番号をYn+1=(Yn+1) mod Mというように増やすなど、チャネルは所定のルールに基づいて切り替えられてもよい。あるいは、フラッディングスロットごとのチャネル番号を特定するための擬似ランダム関数を用いて以下のようにYnが決められてもよい。
【0099】
Y
n+1 =(A×Y
n+B) mod M
例えば、時刻同期が外れた中継ノード120が同期パケットの待受けを行った結果、
図9(B)に示すサブスロット923で同期パケットを受信したものとする。
【0100】
この場合、同期パケットを受信した中継ノード120は、事前情報をシードとしてX0を特定し、同期パケットに含まれるシーケンス番号情報605から、数列をXk+2まで生成することで、フラッディングスロット902における初期チャネルY0を特定することができる。続いて、上述したように、初期チャネルY0に基づいて、サブスロット923の次のサブスロット924で同期パケットの送信に使用するチャネルを特定することができる。
【0101】
このため、時刻同期が外れた中継ノード120は、同期パケットを受信した後、時刻同期を行うことで同期パケットの転送に参加することができる。
【0102】
続いて、中継ノード120はXk+2を特定しているため、k+3以降のフラッディングスロットにおいて、擬似ランダム関数を用いて擬似乱数を生成することによって制御パケットやデータパケットの伝送に参加することができる。
【0103】
このように、
図9(A)に示すように、各フラッディングスロットでパケットの伝送に使用される周波数チャネルX
k~X
k+13を切り替えることによって、耐干渉性能を向上することができる。
【0104】
また、各フラッディングスロット内でパケットの伝送に使用される周波数チャネルを擬似ランダム関数を用いて生成することで、複数の無線通信システム100が使用するチャネルが重なり続け、通信に失敗し続けることを防ぐことができる。
【0105】
<その他の実施形態>
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0106】
例えば、
図7および
図9(B)では、同期パケットの伝送用のフラッディングスロットではサブスロット1つおきに同期パケットの送受信に使用するチャネルが切り替えられるものとして説明を行った。しかしながら、サブスロット2つおきや、3つおきなど、所定の個数の連続したサブスロットを同じチャネルを用いて送信してもよい。すなわち、同期パケットの伝送用のフラッディングスロットでは、スロット内でチャネルの切替が行われればよく、サブスロットごとにチャネルの切替が行われる必要はない。
【0107】
本実施形態では、同期パケットの伝送用のフラッディングスロットでは、6つのサブスロットが含まれるものとして図示しているが、フラッディングスロットに含まれるサブスロットの数はフラッディングスロットの長さや、同期パケットのパケット長、あるいはサブスロット内のガードタイムを変更することで任意に設定することができる。一例では、サブスロットの数は、無線通信システム100が使用可能なチャネル数以上の数である。これによって、1つの同期パケットの伝送用のフラッディングスロットにおいて、無線通信システム100が使用可能なチャネルの全てで同期パケットが送信されることができ、時刻同期が外れて1つのチャネルで同期パケットを待機している中継ノード120が同期パケットを受信する確率を高めることができる。一例では、無線通信システム100が使用可能なチャネル数は16であり、同期パケットの伝送用のフラッディングスロットに含まれるサブスロットの数は16である。
【0108】
また、本実施形態では、データパケット伝送用のフラッディングスロットにおいては可変長のパケットが伝送されるものとして説明を行ったが、固定長のパケットが伝送されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
100:無線通信システム、110:送信ノード、120:中継ノード