(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191908
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】制輪子組付け構造
(51)【国際特許分類】
F16D 65/092 20060101AFI20221221BHJP
F16D 65/095 20060101ALI20221221BHJP
F16D 65/00 20060101ALI20221221BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16D65/092 B
F16D65/095 C
F16D65/00 E
F16D65/092 D
B61H5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100422
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】金子 太
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA69
3J058AA73
3J058BA65
3J058CA42
3J058CA47
3J058CA49
3J058CA50
3J058CA59
3J058DD02
3J058DD05
3J058DD06
3J058DD20
3J058FA21
(57)【要約】
【課題】アンカープレートの半掛けを防止すべく、制輪子装着時の誤組付けを視覚的に認知させることができる制輪子組付け構造を提供する。
【解決手段】ライニング25の押圧力を支持するプレッシャープレート13の背面27に取り付けられたアンカープレート29を有する制輪子15と、アンカープレート29をスライド可能に保持する保持レール17と、保持レール17のスライド方向両端部に設けられてアンカープレート29のスライドを規制するアンカーブロック31と、を有するキャリパホルダ19と、アンカープレート29の上端部に設けられた取付け嵌合部21と、取付け嵌合部21が対向するアンカーブロック31の対向部に設けられ、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた際にのみ取付け嵌合部21を嵌合できるように構成された被取付け嵌合部23と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータに押し付けるライニングの押圧力を支持するプレッシャープレートと、前記プレッシャープレートの背面に取り付けられたアンカープレートと、を有する制輪子と、
前記アンカープレートをスライド方向のみスライド可能に保持する保持レールと、前記保持レールのスライド方向両端部にそれぞれ設けられて前記アンカープレートのスライドを規制するアンカー固定部と、を有するキャリパホルダと、
前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部に設けられた取付け嵌合部と、
前記取付け嵌合部が対向する前記アンカー固定部の対向部に設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ前記取付け嵌合部を嵌合できるように構成された被取付け嵌合部と、
を備えることを特徴とする制輪子組付け構造。
【請求項2】
前記取付け嵌合部は、前記アンカープレートに取付けられて前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部から先端部が突出する取付けプレートとされ、
前記被取付け嵌合部は、前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な凹部とされたことを特徴とする請求項1に記載の制輪子組付け構造。
【請求項3】
前記取付けプレートの厚み方向における前記凹部との嵌合隙間は、前記取付けプレートの挿入幅方向における前記凹部との嵌合隙間より小さいことを特徴とする請求項2に記載の制輪子組付け構造。
【請求項4】
前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部には、複数の前記取付けプレートが取付けられ、
複数の前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な溝状の前記凹部が、前記アンカー固定部の対向部に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の制輪子組付け構造。
【請求項5】
前記アンカープレートのスライド方向両端部には、複数の前記取付けプレートがそれぞれ取付けられ、
複数の前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な溝状の前記凹部が、前記アンカー固定部の対向部にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項2に記載の制輪子組付け構造。
【請求項6】
前記アンカー固定部には、前記ディスクロータに向かって突出する凸部が設けられ、
前記制輪子には、前記凸部に対向する部分の角部を面取りして構成された制輪子内外周逆組付け防止部が設けられることを特徴とする請求項1~請求項5の何れか一項に記載の制輪子組付け構造。
【請求項7】
前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部に設けられた前記取付け嵌合部が、前記アンカープレートを挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線から前記挿入幅方向の片側にオフセットして配置され、
前記被取付け嵌合部は、前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部が対向する前記アンカー固定部の対向部にそれぞれ設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ前記取付け嵌合部を嵌合できるように構成されたことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の制輪子組付け構造。
【請求項8】
前記一方のスライド方向端部にのみ設けられた前記取付け嵌合部は、前記アンカープレートを挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線の両側にそれぞれ配置されて前記一方のスライド方向端部から異なる幅寸法の先端部が突出する複数の取付けプレートとされ、
前記被取付け嵌合部は、前記複数の取付けプレートの先端部が対向する前記アンカー固定部の対向部に設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ前記複数の取付けプレートの先端部がそれぞれ嵌合可能な凹部とされたことを特徴とする請求項1に記載の制輪子組付け構造。
【請求項9】
前記アンカープレートの一方のスライド方向端部に設けられた前記取付け嵌合部が、前記アンカープレートを挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線から前記挿入幅方向の片側にオフセットして配置されて前記一方のスライド方向端部から先端部が突出する取付けプレートとされ、
前記アンカープレートの他方のスライド方向端部に設けられた前記取付け嵌合部が、前記アンカープレートを前記挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線の両側にそれぞれ配置されて前記他方のスライド方向端部から先端部が突出する複数の取付けプレートとされ、
前記被取付け嵌合部は、前記取付けプレートの先端部が対向する前記アンカー固定部の対向部にそれぞれ設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ各々の前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な凹部とされたことを特徴とする請求項1に記載の制輪子組付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制輪子組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用キャリパにおいて、制輪子(ブレーキパッド組立体)をキャリパに装着する組付け構造としては、アリ溝(保持レール)を採用する構造が知られている。アリ溝に嵌合するアンカープレートを備えた制輪子をキャリパに装着する際には、アリ溝に沿ってスライドして装着した制輪子のアンカープレート両端をアンカーブロックで挟み込むことで、制輪子をキャリパに固定する。仮にアンカープレートがアリ溝に半掛け状態で装着されてアンカーブロックに挟まれた場合、制輪子の誤組付けに作業者が気付かずにそのまま走行すれば、途中で制輪子が脱落する可能性がある。
【0003】
そこで、制輪子の装着作業時に、作業者により誤組付けの認知を可能とする制輪子の誤組付け防止構造が提案されている。特許文献1のディスクブレーキ用ブレーキパッド組立体は、上下に2分割されたブレーキパッド組立体(制輪子)の誤組み付けを、上部アンカーブロック及び下部アンカーブロックをボルトで固定する段階で、整備担当者に認識させるものである。すなわち、ブレーキパッド組立体のそれぞれは、ディスクロータに対向する面にブレーキパッドが装着されるライナー、バックプレート、その反対側の面に取り付けられるアンカープレートを備えている。アンカープレートがブレーキパッド組立体保持部に嵌合されて、両バックプレートの端部がアンカーブロックにより固定されることで、ブレーキパッド組立体がキャリパに装着される。ライナー及びバックプレートの対向側端面を、少なくとも一部において、両アンカープレート突き合わせ面に対し互いに逆方向に偏倚させることにより、誤組み付け時に、突出部同士が突き合わされ、アンカーブロックの固定を困難にする。
【0004】
一方、特許文献2の鉄道用ブレーキパッドの誤組付け防止構造は、キャリパ本体を構成する一対のアームのうち、キャリパ本体のシリンダ側のアームに取り付けるアンカーブロックに誤組付け防止体を取り付け、シリンダ側のアームに取り付けるブレーキパッドには誤組付け防止体に対向する部分の角部を面取りして形成する。また、キャリパ本体の非シリンダ側のアームに取り付けるアンカーブロックに誤組付け防止体を取り付け、非シリンダ側アームに取り付けるブレーキパッドには誤組付け防止体に対向する部分の角部を面取りして形成する。そして、ブレーキパッドを対応するシリンダ側アームあるいは非シリンダ側アームに取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-10614号公報
【特許文献2】特開2012-180906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のディスクブレーキ用ブレーキパッド組立体は、上下に分かれた分割制輪子の誤組付け防止構造において、アリ溝に対するアンカープレートの半掛けを課題としており凹凸を利用しており、上下に分かれた制輪子間に凹凸が設置される。そのため、上下共に誤組付けの状態は防止できない上、分割タイプの制輪子でのみ誤組付けを防止できる仕様であった。
一方、特許文献2の鉄道用ブレーキパッドの誤組付け防止構造は、制輪子内外周の配置が逆になる誤組付けを防止する構造であり、制輪子の上下配置を誤った場合は検知できるが、アリ溝に対するアンカープレートの半掛けの検知はできない。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、アンカープレートの半掛けを防止すべく、制輪子装着時の誤組付けを視覚的に認知させることができる制輪子組付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) ディスクロータに押し付けるライニングの押圧力を支持するプレッシャープレートと、前記プレッシャープレートの背面に取り付けられたアンカープレートと、を有する制輪子と、前記アンカープレートをスライド方向のみスライド可能に保持する保持レールと、前記保持レールのスライド方向両端部にそれぞれ設けられて前記アンカープレートのスライドを規制するアンカー固定部と、を有するキャリパホルダと、前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部に設けられた取付け嵌合部と、前記取付け嵌合部が対向する前記アンカー固定部の対向部に設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ前記取付け嵌合部を嵌合できるように構成された被取付け嵌合部と、を備えることを特徴とする制輪子組付け構造。
【0009】
上記(1)の構成の制輪子組付け構造によれば、制輪子におけるアンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部には、取付け嵌合部が設けられている。一方、取付け嵌合部が対向するアンカー固定部の対向部には、被取付け嵌合部が設けられている。この被取付け嵌合部は、アンカープレートが保持レールに正常に組み付けられた際にのみ取付け嵌合部が嵌合するように構成されている。
そして、キャリパホルダへ制輪子を組付ける場合、キャリパホルダにおける保持レールのスライド方向一端部には、一方のアンカー固定部が予め設けられている。そして、制輪子のアンカープレートをスライド方向他端部から保持レールへスライド挿入した後、キャリパホルダにおける保持レールのスライド方向他端部に、他方のアンカー固定部が固定される。
ここで、アンカープレートが保持レールに正常に組み付けられている場合には、アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部に設けられている取付け嵌合部が、対向するアンカー固定部の被取付け嵌合部に挿入されるので、キャリパホルダにおける保持レールのスライド方向他端部に、他方のアンカー固定部が正常に組付け可能となる。
なお、アンカー固定部の被取付け嵌合部と、アンカープレートの取付け嵌合部とは、一定の微小なクリアランスを以って嵌合するように設定されている。仮に制輪子の装着時に、被取付け嵌合部が設けられているアンカー固定部と制輪子との相対位置が保持レールに対するアンカープレートの半掛けにより傾斜すると、取付け嵌合部が被取付け嵌合部に嵌まり込まない。即ち、制輪子のアンカープレートがキャリパホルダの保持レールに半掛かりした際、取付け嵌合部がアンカー固定部に干渉することでアンカープレートが保持レールに完全に挿入しきらない。
その結果、制輪子が誤組付け状態で他方のアンカー固定部をキャリパホルダにボルト締結等により固定すると、他方のアンカー固定部とキャリパホルダとの間に隙間が生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できる。
【0010】
(2) 前記取付け嵌合部は、前記アンカープレートに取付けられて前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部から先端部が突出する取付けプレートとされ、前記被取付け嵌合部は、前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な凹部とされたことを特徴とする上記(1)に記載の制輪子組付け構造。
【0011】
上記(2)の構成の制輪子組付け構造によれば、取付け嵌合部が、アンカープレートとは別体に形成された取付けプレートからなる。取付けプレートは、アンカープレートに取付けられ、アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部から先端部が突出する。被取付け嵌合部は、アンカー固定部に設けられ、取付けプレートの先端部が嵌合可能な凹部とされる。そこで、アンカープレートの端部に取付け嵌合部を簡単に設けることができる。また、取付けプレートからなる取付け嵌合部は、アンカープレートの形状や材質等の構成に係わらず形成することができるので、設計自由度が高まる。
【0012】
(3) 前記取付けプレートの厚み方向における前記凹部との嵌合隙間は、前記取付けプレートの挿入幅方向における前記凹部との嵌合隙間より小さいことを特徴とする上記(2)に記載の制輪子組付け構造。
【0013】
上記(3)の構成の制輪子組付け構造によれば、取付けプレートは、厚み方向における凹部との嵌合隙間が増大するに従って、保持レールに対するアンカープレートの半掛けにより傾斜しても凹部に嵌り込みやすくなる。すなわち、アンカー固定部と制輪子との相対位置が保持レールに対するアンカープレートの半掛けにより傾斜しても、厚み方向における凹部との嵌合隙間が所定以上に大きい場合には取付けプレートが凹部に嵌まり込む可能性が生じる。
そこで、本構成の制輪子組付け構造では、取付けプレートの厚み方向における凹部との嵌合隙間が、取付けプレートの挿入幅方向における凹部との嵌合隙間より小さく設定されることにより、取付けプレートの厚み方向における凹部との嵌合隙間の増大が抑制されている。即ち、例えば取付けプレートの挿入幅方向における凹部との嵌合隙間を保持レールに対するアンカープレートの挿入幅方向の隙間に影響する公差分と同等に小さくしつつ、厚み方向における凹部との嵌合隙間を挿入幅方向における凹部との嵌合隙間より小さく設定する。すると、取付けプレートの厚み方向における凹部との嵌合隙間を小さくし、取付けプレートが凹部に嵌り込まなくなる傾斜角度を小さくできるという効果を得ながら厚み方向における凹部との嵌合隙間の安定した設定ができる。これにより、アンカープレートが僅かな傾斜で保持レールに半掛けとなった場合であっても、取付けプレートが凹部に嵌り込まなくなる。その結果、制輪子の誤組付け検知機能をより確実にすることができる。
【0014】
(4) 前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部には、複数の前記取付けプレートが取付けられ、複数の前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な溝状の前記凹部が、前記アンカー固定部の対向部に設けられたことを特徴とする上記(2)に記載の制輪子組付け構造。
【0015】
上記(4)の構成の制輪子組付け構造によれば、アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部に取付けられた複数の取付けプレートは、アンカープレートと平行にかつアンカープレートの挿入幅方向に並べて配置される。取付けプレートは、アンカープレートの挿入幅方向に長いことにより、溝状の凹部に対して傾斜した際に、アンカー固定部とより干渉しやすくすることができる。そこで、複数の取付けプレートは、アンカープレートの挿入幅方向に離間して配置することにより、小さな板片状であっても、誤組付け検知機能を高めることができる。
【0016】
(5) 前記アンカープレートのスライド方向両端部には、複数の前記取付けプレートがそれぞれ取付けられ、複数の前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な溝状の前記凹部が、前記アンカー固定部の対向部にそれぞれ設けられたことを特徴とする上記(2)に記載の制輪子組付け構造。
【0017】
上記(5)の構成の制輪子組付け構造によれば、アンカープレートのスライド方向両端部から突出した取付けプレートの先端部が、一方のアンカー固定部と他方のアンカーブ固定部とに設けられた凹部にそれぞれ嵌め込まれる。
このため、仮に制輪子が保持レールに対するアンカープレートの半掛けにより傾斜すると、アンカープレートのスライド方向両端部の取付けプレートが、両方のアンカー固定部の凹部にそれぞれ嵌まり込まない。すなわち、アンカープレートのスライド方向両端部から突出した取付けプレートが両方のアンカー固定部にそれぞれ干渉する。
その結果、制輪子が誤組付け状態で他方のアンカー固定部をキャリパホルダへボルト締結すると、他方のアンカー固定部とキャリパホルダとの間には、一方のスライド方向端部のみに取付けプレートを設けた場合に比べ、2倍の隙間が生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けがより容易に認識できる。
これにより、本構成の制輪子組付け構造では、アンカープレートのスライド方向両端部におけるいずれか一方に取付けプレートが配置される場合よりも、誤組付け検知機能をより高めることができる。
【0018】
(6) 前記アンカー固定部には、前記ディスクロータに向かって突出する凸部が設けられ、前記制輪子には、前記凸部に対向する部分の角部を面取りして構成された制輪子内外周逆組付け防止部が設けられることを特徴とする上記(1)~(5)の何れか一つに記載の制輪子組付け構造。
【0019】
上記(6)の構成の制輪子組付け構造によれば、アンカープレートを保持レールにスライド挿入して制輪子をキャリパホルダへ組み付ける際、制輪子をキャリパホルダに対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けようとすると、制輪子の面取りのなされていない角部が、アンカー固定部に設けられた凸部に干渉する。このため、制輪子は、キャリパホルダの正確な位置に取り付けることができない。これにより、作業者は、制輪子の取付け方向が誤ったことを検知でき、制輪子内外周の配置が逆になる誤組付けを防止することができる。
【0020】
(7) 前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部に設けられた前記取付け嵌合部が、前記アンカープレートを挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線から前記挿入幅方向の片側にオフセットして配置され、前記被取付け嵌合部は、前記アンカープレートの少なくとも一方のスライド方向端部が対向する前記アンカー固定部の対向部にそれぞれ設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ前記取付け嵌合部を嵌合できるように構成されたことを特徴とする上記(1)~(3)の何れか一つに記載の制輪子組付け構造。
【0021】
上記(7)の構成の制輪子組付け構造によれば、仮に制輪子の装着時に、一方のアンカー固定部と制輪子との相対位置が保持レールに対するアンカープレートの半掛けにより傾斜すると、上述の作用と同様に、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できる。
これに加え、アンカープレートを保持レールにスライド挿入して制輪子をキャリパホルダへ組み付ける際、制輪子をキャリパホルダに対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けようとすると、アンカープレートの取付け嵌合部が、対応する被取付け嵌合部に嵌合できずにアンカー固定部に干渉する。このため、制輪子は、キャリパホルダの正確な位置に取り付けることができない。
これにより、作業者は、制輪子がキャリパホルダに対して上下逆に取付けられたり、アンカープレートが保持レールに対して半掛け状態となったりして制輪子がキャリパホルダに正常に組み付けられなかったことを検知できる。
【0022】
(8) 前記一方のスライド方向端部にのみ設けられた前記取付け嵌合部は、前記アンカープレートを挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線の両側にそれぞれ配置されて前記一方のスライド方向端部から異なる幅寸法の先端部が突出する複数の取付けプレートとされ、前記被取付け嵌合部は、前記複数の取付けプレートの先端部が対向する前記アンカー固定部の対向部に設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ前記複数の取付けプレートの先端部がそれぞれ嵌合可能な凹部とされたことを特徴とする上記(1)に記載の制輪子組付け構造。
【0023】
上記(8)の構成の制輪子組付け構造によれば、仮に制輪子の装着時に、一方のアンカー固定部と制輪子との相対位置が保持レールに対するアンカープレートの半掛けにより傾斜すると、上述の作用と同様に、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できる。
これに加え、アンカープレートを保持レールにスライド挿入して制輪子をキャリパホルダへ組み付ける際、制輪子を対応するキャリパホルダに対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けようとしたり、一方の制輪子を他方の対応しないキャリパホルダに対して誤って取り付けようとしたりすると、取付けプレートの先端部が、対応する凹部に嵌合できずにアンカー固定部に干渉する。このため、制輪子は、キャリパホルダの正確な位置に取り付けることができない。
これにより、作業者は、制輪子がキャリパホルダに対して上下逆に取付けられたり、一方の制輪子が他方の対応しないキャリパホルダに対して誤って取り付けられたり、アンカープレートが保持レールに対して半掛け状態となったりして制輪子がキャリパホルダに正常に組み付けられなかったことを検知できる。
【0024】
(9) 前記アンカープレートの一方のスライド方向端部に設けられた前記取付け嵌合部が、前記アンカープレートを挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線から前記挿入幅方向の片側にオフセットして配置されて前記一方のスライド方向端部から先端部が突出する取付けプレートとされ、前記アンカープレートの他方のスライド方向端部に設けられた前記取付け嵌合部が、前記アンカープレートを前記挿入幅方向に二等分して前記スライド方向に沿う中心線の両側にそれぞれ配置されて前記他方のスライド方向端部から先端部が突出する複数の取付けプレートとされ、前記被取付け嵌合部は、前記取付けプレートの先端部が対向する前記アンカー固定部の対向部にそれぞれ設けられ、前記アンカープレートが前記保持レールに正常に組み付けられた際にのみ各々の前記取付けプレートの先端部が嵌合可能な凹部とされたことを特徴とする請求項1に記載の制輪子組付け構造。
【0025】
上記(9)の構成の制輪子組付け構造によれば、仮に制輪子の装着時に、一方のアンカー固定部と制輪子との相対位置が保持レールに対するアンカープレートの半掛けにより傾斜すると、上述の作用と同様に、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できる。
これに加え、アンカープレートを保持レールにスライド挿入して制輪子をキャリパホルダへ組み付ける際、制輪子を対応するキャリパホルダに対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けようとしたり、一方の制輪子を他方の対応しないキャリパホルダに対して誤って取り付けようとしたりすると、取付けプレートの先端部が、対応する凹部に嵌合できずにアンカー固定部に干渉する。このため、制輪子は、キャリパホルダの正確な位置に取り付けることができない。
これにより、作業者は、制輪子がキャリパホルダに対して上下逆に取付けられたり、一方の制輪子が他方の対応しないキャリパホルダに対して誤って取り付けられたり、アンカープレートが保持レールに対して半掛け状態となったりして制輪子がキャリパホルダに正常に組み付けられなかったことを検知できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る制輪子組付け構造によれば、アンカープレートの半掛けを防止すべく、制輪子装着時の誤組付けを視覚的に認知させることができる。
【0027】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る制輪子組付け構造を備えるディスクブレーキ装置の斜視図である。
【
図2】一方の制輪子が省略されると共に他方の制輪子が取り外されたディスクブレーキ装置の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示したディスクブレーキ装置の側面図である。
【
図5】ディスクロータの車両本体から見た外面側における制輪子とアンカー固定部を示す分解斜視図である。
【
図7】
図5のB-B断面位置において制輪子の取付けプレートがアンカー固定部の凹部に進入した状態を示す断面図である。
【
図8】
図3のC-C断面位置における一方の制輪子の断面図である。
【
図9】
図3のA-A断面位置において一方の制輪子が半掛けとなったときの断面図である。
【
図10】
図3のC-C断面位置において一方の制輪子が半掛けとなったときの断面図である。
【
図11】制輪子の半掛けによりアンカー固定部との間に隙間が生じたキャリパホルダの側面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態の変形例に係るアンカープレートと保持レールの断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子とアンカー固定部を示す分解斜視図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子とアンカー固定部を示す分解斜視図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る制輪子組付け構造において、取付けプレートの先端部がアンカー固定部の凹部に進入した状態の
図3のC-C断面位置における断面図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る制輪子組付け構造において、半掛けにより取付けプレートがアンカー固定部に干渉した状態の
図3のC-C断面位置における断面図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子とアンカー固定部を示す分解斜視図である。
【
図18】
図17のD-D断面位置において制輪子の取付けプレートがアンカー固定部の凹部に進入した状態を示す断面図である。
【
図19】本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造において、半掛けにより取付けプレートがアンカー固定部に干渉した状態の
図18のE-E断面位置における断面図である。
【
図20】本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造において、上下逆の誤った取付けにより取付けプレートがアンカー固定部に干渉した状態の
図17のD-D断面位置における断面図である。
【
図21】本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造において、一方の制輪子が他方の対応しないキャリパホルダに対して誤って取り付けられたことにより取付けプレートがアンカー固定部に干渉した状態の
図17のD-D断面位置における断面図である。
【
図22】(a)は本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造の変形例を示す要部拡大図、(b)は半掛けにより取付けプレートがアンカー固定部に干渉した状態の
図18のE-E断面位置における断面図である。
【
図23】本発明の第5実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子とアンカー固定部を示す分解斜視図である。
【
図24】
図23のF-F断面位置において制輪子の取付けプレートがアンカー固定部の凹部に進入した状態を示す断面図である。
【
図25】本発明の第5実施形態に係る制輪子組付け構造において、上下逆の誤った取付けにより取付けプレートがアンカー固定部に干渉した状態の
図23のF-F断面位置における断面図である。
【
図26】本発明の第5実施形態に係る制輪子組付け構造において、一方の制輪子が他方の対応しないキャリパホルダに対して誤って取り付けられたことにより取付けプレートがアンカー固定部に干渉した状態の
図23のF-F断面位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る制輪子組付け構造を備えるディスクブレーキ装置11の斜視図である。
本第1実施形態に係る制輪子組付け構造は、鉄道車両用のディスクブレーキ装置11に好適に用いられる。ディスクブレーキ装置11は、プレッシャープレート13を有する制輪子15と、一対の傾斜側壁16,16によりスライド空間が画成されたアリ溝状の保持レール17(
図2参照)と、キャリパホルダ19と、取付け嵌合部21(
図2参照)と、被取付け嵌合部23(
図2参照)と、を主要な構成として有する。
【0030】
プレッシャープレート13は、ディスクロータ10に押し付けるライニング25の押圧力を支持する。プレッシャープレート13は、鉄道車両用の等面圧ディスクブレーキにおけるバックプレート(トルク受けプレートとも称す)及びディスクブレーキにおける裏金を含むものとする。
【0031】
図2は、一方(ディスクロータ10の車両本体から見た内面側)の制輪子15が省略されると共に他方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の制輪子15が取り外されたディスクブレーキ装置11の分解斜視図である。
制輪子15は、ライニング組立体とも称すことができる。制輪子15は、ライニング25を揺動自在に支持するガイドプレート12と、ガイドプレート12に固着されたプレッシャープレート13とを有する。制輪子15は、プレッシャープレート13の背面27(ライニング25と反対側の面)にアンカープレート29が設けられる。つまり、それぞれの制輪子15は、ディスクロータ10側からライニング25、ガイドプレート12、プレッシャープレート13、アンカープレート29の順で重ねられている。
【0032】
保持レール17は、一対の傾斜側壁16,16によりアンカープレート29をスライド方向のみスライド可能に保持する。保持レール17は、キャリパホルダ19のディスクロータ10に対向する側の面に形成される。保持レール17は、アンカープレート29をスライドさせて保持することにより、制輪子15のライニング25をディスクロータ10に対向させて配置する。
【0033】
キャリパホルダ19は、ディスクロータ10のロータ内外面に対向して一対が設けられる。キャリパホルダ19は、保持レール17のスライド方向両端部(
図1中、上下端部)に、アンカープレート29のスライドを規制するアンカー固定部としてのアンカーブロック31,32が、それぞれ設けられる。上側のアンカーブロック31と、下側のアンカーブロック32のそれぞれは、キャリパホルダ19の上下端に、上下方向から螺合されるブロック取付ボルト33により固定される。
【0034】
なお、保持レール17のスライド方向両端部に設けられる本実施形態のアンカー固定部は、着脱可能なアンカーブロック31,32に限るものではなく、キャリパホルダ19における保持レール17の一方のスライド方向一端部に設けられるアンカー固定部は、キャリパホルダ19に予め一体形成されてアンカープレート29のスライドを規制する構成とすることができる。
【0035】
ここで、一対のキャリパホルダ19にそれぞれ設けられるアンカー固定部(アンカーブロック31,32)は、ディスクロータ10を中心に面対称に構成されている。また、一対のキャリパホルダ19にそれぞれ対応して固定される一対の制輪子15は、ディスクロータ10を中心に面対称に構成された対称部品である。
【0036】
図3は、
図1に示したディスクブレーキ装置11の側面図である。
図4は、
図3のA-A断面図である。
ディスクブレーキ装置11は、キャリパボディ35を有する。キャリパボディ35は、サポート部37によって車両の静止部(図示略)に固定される。キャリパボディ35には、軸線が上下方向に沿うアーム軸39によって一対のブレーキアーム41がディスクロータ10を厚み方向から挟んで揺動可能に軸支される。キャリパホルダ19は、この一対のブレーキアーム41のそれぞれの揺動先端43に取り付けられている。キャリパボディ35には、アクチュエータ(図示略)が収容される。
【0037】
アクチュエータは、エア圧による拡開機構、或いは電動モータ及び減速機構からなるモータギヤユニット、或いは油圧駆動機構と、倍力機構と、一対のロッドと、によって構成される。本実施形態に係るアクチュエータは、エア圧による拡開機構が駆動されることで、倍力機構を介してロッドが進退される。一対のロッドは、一対のブレーキアーム41の揺動基端45に結合される。アクチュエータは、進退するロッドを介して一対のブレーキアーム41の揺動基端45を拡開作動する。その結果、一対のブレーキアーム41のキャリパホルダ19の取り付けられている揺動先端43は、間隔が縮小する。
【0038】
キャリパホルダ19は、一対のブレーキアーム41の揺動先端43に、それぞれがホルダ軸ボルト47(軸線が上下方向に沿う軸)によって揺動自在(首振り自在)に軸支されている。
【0039】
一対のキャリパホルダ19は、内側となる対向面に、ホルダ軸ボルト47に沿う方向で上記の保持レール17が形成される。本第1実施形態において、この保持レール17は、一対の傾斜側壁16,16により画成されたアリ溝として構成される。このアリ溝として構成された保持レール17には、制輪子15のアンカープレート29が
図3の下部側からスライド挿入されて装着される。これにより、制輪子15は、複数のライニング25が、ディスクロータ10に対面する向きで保持される。保持レール17に装着されたさ制輪子15は、上述のように、上下のアンカーブロック31,32によってスライドが規制されることになる。
【0040】
図5は、ディスクロータ10の車両本体から見た外面側における制輪子15とアンカーブロック31を示す分解斜視図である。
取付け嵌合部21は、アンカープレート29の少なくとも一方のスライド方向端部に設けられる。本第1実施形態において、取付け嵌合部21は、アンカープレート29の上端部のみに設けられている。なお、取付け嵌合部21は、アンカープレート29の下端部のみに設けられてもよく、アンカープレート29の上下端部に設けられてもよい。
【0041】
被取付け嵌合部23は、取付け嵌合部21が対向するアンカーブロック31の対向部に設けられる。被取付け嵌合部23は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた際にのみ、取付け嵌合部21が嵌合するように構成されている。換言すれば、被取付け嵌合部23は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられなかった場合には、取付け嵌合部21を嵌合しない。ここで、「正常に組み付けられなかった場合」とは、アンカープレート29がキャリパホルダ19に半掛かりした場合や、上下逆に取り付けられた場合を含むものとする。
【0042】
本第1実施形態において、取付け嵌合部21は、アンカープレート29に取付けられて、アンカープレート29の上端部から先端部49が突出する取付けプレート51とされる。
【0043】
アンカープレート29は、長い略長方形の金属板からなる。アンカープレート29は、長手方向に延在する凸条部53が、挿入幅方向の中央に形成される。アンカープレート29は、凸条部53を挟む挿入幅方向の両側が一対の平行な凹溝部55となっている。更に、アンカープレート29は、挿入幅方向の両側縁が、90度より小さい角度で凸条部53の突出方向と同方向で折り曲げられた一対の係合部57となっている。アンカープレート29は、一対の凹溝部55においてリベット59によりプレッシャープレート13に固定される。アンカープレート29は、両側縁の係合部57を一対の傾斜側壁16,16に係合することにより、保持レール17にスライド自在に保持される。
【0044】
本第1実施形態において、取付けプレート51は、長方形の金属板からなる。取付けプレート51は、アンカープレート29の一対の凹溝部55のそれぞれに、リベット59により取り付けられる。つまり、取付けプレート51は、2枚が使用される。アンカープレート29の少なくとも一方のスライド方向端部(本第1実施形態では上端部)に取り付けられた一対の取付けプレート51は、アンカープレート29の上端部から所定の寸法でそれぞれの先端部49が突出する。
【0045】
また、本第1実施形態において、被取付け嵌合部23は、取付け嵌合部21が対向する上側のアンカーブロック31の対向部に設けられ、取付けプレート51の先端部49が嵌合可能に形成された凹部61とされる。凹部61は、一対の凹溝部55のそれぞれに取り付けられた一対の取付けプレート51が同時に挿入される長方形の長穴として形成される。なお、アンカープレート29の下端部が対向する下側のアンカーブロック32の対向部には、被取付け嵌合部23が設けられていない。
【0046】
本第1実施形態においては、アンカープレート29の少なくとも一方のスライド方向端部である上端部に、複数の取付けプレート51が取付けられている。そして、これら複数の取付けプレート51の先端部49が嵌合可能な凹部61は、上側のアンカーブロック31の対向部に設けられている。
【0047】
なお、本実施形態に係る制輪子組付け構造は、アンカープレート29の両端部に、複数の取付けプレート51がそれぞれ取付けられていてもよい。この場合、複数の取付けプレート51の先端部49が嵌合可能な凹部61は、上側のアンカーブロック31及び下側のアンカーブロック31の対向部にそれぞれ設けられることになる。
【0048】
図6は、
図5のB-B断面図である。
図7は、
図5のB-B断面において制輪子15の取付けプレート51がアンカーブロック31の凹部61に進入した状態を示す断面図である。
キャリパホルダ19は、上下いずれか一方のアンカーブロック31,32がキャリパホルダ19に固定された状態で、上下いずれか他方から保持レール17にアンカープレート29が挿入される。通常、制輪子15の装着作業は、制輪子15が台車枠等(図示略)と干渉しないように、キャリパホルダ19の下方より、アンカープレート29が保持レール17へ挿入される。このため、キャリパホルダ19には、上側のアンカーブロック31が予め固定され、制輪子15が挿入された後、下側のアンカーブロック32が固定されることにより、アンカープレート29のスライドが規制されて制輪子15の装着が完了する。
【0049】
図8は、
図3のC-C断面位置における一方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の制輪子15の断面図である。
本第1実施形態の制輪子組付け構造を備えるディスクブレーキ装置11では、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた際にのみ、取付けプレート51が、凹部61に嵌合できるように構成されている。このため、制輪子15が正常に組み付けられた際には、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19との間には、隙間が空かず、双方が密着して取り付けられることになる。
【0050】
制輪子15は、アンカープレート29の上端から突出した取付けプレート51の先端部49が、
図8に示すように、凹部61に挿入される。そして、上側のアンカーブロック31に、アンカープレート29の上端が当接する位置まで、制輪子15が上側へスライドされる。その結果、制輪子15が所定の位置まで上側へスライドするので、アンカープレート29の下端と下側のアンカーブロック32とが所定位置で当接し、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19とが密着することになる。
【0051】
ここで、本実施形態の制輪子組付け構造は、取付けプレート51の厚み方向における凹部61との嵌合隙間Tが、取付けプレート51の挿入幅方向における凹部61との嵌合隙間Wより小さく設定されている。これにより、制輪子組付け構造では、制輪子15の誤組付け検知機能をより確実に担保している。
【0052】
また、本第1実施形態の制輪子組付け構造では、アンカーブロック31,32に、ディスクロータ10に向かって突出する凸部63が設けられている。一方、制輪子15には、凸部63に対向する部分の角部を面取りして構成された制輪子内外周逆組付け防止部65が設けられている。凸部63と制輪子内外周逆組付け防止部65とを備えた制輪子組付け構造では、アンカープレート29を保持レール17にスライド挿入して制輪子15をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子15をキャリパホルダ19に対して上下逆の誤った取り付け方向に取り付けようとすると、制輪子15の面取りのされていない角部と凸部63とが干渉し、制輪子15を正確な位置に取り付けることができない。これにより、制輪子15の制輪子内外周の配置が逆になる誤組付けが防止できるように構成されている。
【0053】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本第1実施形態に係る制輪子組付け構造では、ディスクロータに押し付けるライニング25の押圧力が、プレッシャープレート13により支持される。このプレッシャープレート13の背面27には、アンカープレート29が取り付けられる。これらライニング25、プレッシャープレート13及びアンカープレート29は、制輪子15を構成している。制輪子15は、キャリパホルダ19に取り付けられる。キャリパホルダ19は、保持レール17と、アンカーブロック31,32とを有する。保持レール17は、アンカープレート29をスライド方向のみスライド可能に保持する。アンカーブロック31,32は、保持レール17のスライド方向両端部にそれぞれ設けられて、アンカープレート29のスライドを規制する。
【0054】
制輪子15におけるアンカープレート29の上端部には、取付け嵌合部21(取付けプレート51)が設けられている。一方、取付け嵌合部21(取付けプレート51)が対向する上側のアンカーブロック31の対向部には、被取付け嵌合部23(凹部61)が設けられている。この被取付け嵌合部23は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた際にのみ取付け嵌合部21が嵌合するように構成されている。
【0055】
そして、キャリパホルダ19へ制輪子15を組付ける場合、キャリパホルダ19における保持レール17のスライド方向一端部(例えば、
図2中上端部)には、被取付け嵌合部23を備えた一方(上側)のアンカーブロック31が予め固定されて設けられている。そして、制輪子15のアンカープレート29をスライド方向他端部(例えば、
図2中下端部)から保持レール17へスライド挿入した後、キャリパホルダ19における保持レール17のスライド方向他端部に、他方(下側)のアンカーブロック32が固定される。
【0056】
ここで、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられている場合には、アンカープレート29の一方のスライド方向端部(例えば、
図2中上端部)に設けられている取付け嵌合部21が、対向する上側のアンカーブロック31の被取付け嵌合部23に挿入される。そこで、キャリパホルダ19における保持レール17のスライド方向下端部に、下側のアンカーブロック32が正常に組付け可能となる。
【0057】
図9は、
図3のA-A断面位置において一方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の制輪子15が半掛けとなったときの断面図である。
図10は、
図3のC-C断面位置において一方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の制輪子15が半掛けとなったときの断面図である。
なお、アンカーブロック31の被取付け嵌合部23と、アンカープレート29の取付け嵌合部21とは、一定の微小なクリアランスを以って嵌合するように設定されている。仮に制輪子15の装着時に、被取付け嵌合部23が設けられている上側のアンカーブロック31と制輪子15との相対位置が
図9に示すように、保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜すると、
図10に示すように、取付け嵌合部21が被取付け嵌合部23に嵌まり込まない。即ち、制輪子15のアンカープレート29がキャリパホルダ19の保持レール17に半掛かりした際、取付け嵌合部21が上側のアンカーブロック31に干渉することでアンカープレート29が保持レール17に完全に挿入しきらない状態となる。
【0058】
図11は、制輪子15の半掛けによりアンカーブロック32との間に隙間dが生じたキャリパホルダ19の側面図である。
その結果、制輪子15が誤組付け状態で下側のアンカーブロック32をボルト締結すると、下側に突出したアンカープレート29に、下側のアンカーブロック32が当たり、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できることになる。
【0059】
また、本第1実施形態の制輪子組付け構造では、取付け嵌合部21が、アンカープレート29とは別体に形成された取付けプレート51からなる。取付けプレート51は、アンカープレート29に取付けられ、アンカープレート29の上端部から先端部49が突出する。被取付け嵌合部23は、アンカーブロック31に設けられ、取付けプレート51の先端部49が嵌合可能な凹部61とされる。
【0060】
そこで、アンカープレート29の端部に取付け嵌合部21を簡単に設けることができる。また、取付けプレート51からなる取付け嵌合部21は、アンカープレート29の形状や材質等の構成に係わらず形成することができるので、設計自由度が高まる。
【0061】
また、本第1実施形態の制輪子組付け構造では、取付けプレート51の厚み方向における凹部61との嵌合隙間Tが、取付けプレート51の挿入幅方向における凹部61との嵌合隙間Wより小さい。なお、取付けプレート51及び凹部61は、厚みより幅が大きい矩形状とされる。
【0062】
取付けプレート51は、厚み方向における凹部61との嵌合隙間が増大するに従って、保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜しても凹部61に嵌り込みやすくなる。すなわち、アンカーブロック31と制輪子15との相対位置が保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜しても、厚み方向における凹部61との嵌合隙間が所定以上に大きい場合には取付けプレート51が凹部61に嵌まり込む可能性が生じる。
【0063】
そこで、本第1実施形態の制輪子組付け構造では、取付けプレート51の厚み方向における凹部61との嵌合隙間Tが、取付けプレート51の挿入幅方向における凹部61との嵌合隙間Wより小さく設定されることにより、取付けプレート51の厚み方向における凹部61との嵌合隙間Tの増大が抑制されている。即ち、例えば取付けプレート51の挿入幅方向における凹部61との嵌合隙間Wを保持レール17に対するアンカープレート29の挿入幅方向の隙間に影響する公差分と同等に小さくしつつ、厚み方向における凹部61との嵌合隙間Tを挿入幅方向における凹部61との嵌合隙間Wより小さく設定する。すると、取付けプレート51の厚み方向における凹部61との嵌合隙間Tを小さくし、取付けプレート51が凹部61に嵌り込まなくなる傾斜角度を小さくできるという効果を得ながら厚み方向における凹部61との嵌合隙間Tの安定した設定ができる。これにより、アンカープレート29が僅かな傾斜で保持レール17に半掛けとなった場合であっても、取付けプレート51が凹部61に嵌り込まなくなる。その結果、制輪子15の誤組付け検知機能をより確実にすることができる。
【0064】
また、本第1実施形態の制輪子組付け構造では、アンカープレート29の少なくとも一方のスライド方向端部である上端部に、複数(本第1実施形態では2枚)の取付けプレート51が取付けられる。2枚の取付けプレート51は、アンカープレート29と平行にかつアンカープレート29の挿入幅方向に並べて配置される。取付けプレート51は、アンカープレート29の挿入幅方向に長いことにより、溝状の凹部61に対して傾斜した際に、アンカーブロック31とより干渉しやすくすることができる。そこで、2枚の取付けプレート51は、アンカープレート29の挿入幅方向に離間して配置することにより、取付けプレート51のような小さな板片状であっても、誤組付け検知機能を高めることができる。
【0065】
更に、本第1実施形態の制輪子組付け構造では、アンカープレート29を保持レール17にスライド挿入して制輪子15をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子15をキャリパホルダ19に対して上下逆の誤った取り付け方向に取り付けようとすると、制輪子15の面取りのなされていない角部が、アンカーブロック31に設けられた凸部63に干渉する。このため、制輪子15は、キャリパホルダ19の正確な位置に取り付けることができない。これにより、作業者は、制輪子15の取付け方向が誤ったことを検知でき、制輪子内外周の配置が逆になる誤組付けを防止することができる。
【0066】
なお、本第1実施形態の制輪子組付け構造では、アンカープレート29の上端部にのみ取付けプレート51が取付けられ、上側のアンカーブロック31にのみ凹部61が設けられている。そこで、制輪子15を対応するキャリパホルダ19に対して上下逆の誤った取り付け方向に取り付けようとすると、取付けプレート51は凹部61が設けられていない下側のアンカーブロック32に干渉する。このため、制輪子15は、対応するキャリパホルダ19の正確な位置に取り付けることができず、制輪子内外周の配置が逆になる誤組付けを防止することができる。
【0067】
次に、上記構成の変形例を説明する。
(第1実施形態の変形例)
図12は、本発明の第1実施形態の変形例に係るアンカープレート67と保持レール69の断面図である。
本第1実施形態の変形例に係る制輪子組付け構造は、保持レール69が、上述したアリ溝状の保持レール17に代えて、レール延在方向に直交する断面T字形の溝となっている。この場合、アンカープレート67は、この保持レール69にスライド自在に挿入される係合部71を両側に備えたものとされる。
【0068】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子73とアンカーブロック31を示す分解斜視図である。
本第2実施形態の制輪子組付け構造では、アンカープレート29のスライド方向両端部に、複数の取付けプレート51が取付けられている。この場合、上下それぞれのアンカーブロック31,31の対向部には、複数(本第2実施形態では2枚)の取付けプレート51の先端部49が嵌合可能な溝状の凹部61が設けられる。
【0069】
本第2実施形態の制輪子組付け構造によれば、アンカープレート29のスライド方向両端部から突出した取付けプレート51の先端部49が、上側のアンカーブロック31と下側のアンカーブロック31(図示せず)とに設けられた凹部61にそれぞれ嵌め込まれる。
【0070】
このため、仮に制輪子15が保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜すると、アンカープレート29のスライド方向両端部の取付けプレート51が、上下両方のアンカーブロック31,31の凹部61にそれぞれ嵌まり込まない。すなわち、アンカープレート29のスライド方向両端部から突出した上下の取付けプレート51が両方のアンカーブロック31,31にそれぞれ干渉する。
【0071】
その結果、制輪子15が誤組付け状態で下側のアンカーブロック31をボルト締結すると、下側のアンカーブロック31とキャリパホルダ19との間には、一方のスライド方向端部のみに取付けプレート51を設けた場合に比べ、2倍の隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けがより容易に認識できる。
これにより、本第2実施形態の制輪子組付け構造では、アンカープレート29のスライド方向両端部におけるいずれか一方に取付けプレート51が配置される場合よりも誤組付け検知機能をより高めることができる。
【0072】
(第3実施形態)
図14は、本発明の第3実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子74とアンカーブロック75を示す分解斜視図である。
本発明の第3実施形態に係る制輪子組付け構造は、アンカープレート29の少なくとも一方のスライド方向端部(本第3実施形態では、スライド方向両端部)に設けられた取付け嵌合部21が、アンカープレート29を挿入幅方向に二等分してスライド方向に沿う中心線77から挿入幅方向の片側(ディスクロータ10の外周側)にオフセットして配置される。
【0073】
また、被取付け嵌合部23は、取付け嵌合部21が対向する上下のアンカーブロック75の対向部にそれぞれ設けられ、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた際にのみ取付け嵌合部21を嵌合できるように構成される。具体的には、取付けプレート51が、アンカープレート29の片側(ディスクロータ10の外周側)の凹溝部55にのみ設けられている。
【0074】
図15は、本発明の第3実施形態に係る制輪子組付け構造において取付けプレート51の先端部49がアンカーブロック75の凹部79に進入した状態の
図3のC-C断面位置における断面図である。
制輪子74は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた場合、アンカープレート29の上端から突出した取付けプレート51の先端部49が、上側のアンカーブロック75の凹部61に挿入される。凹部61は、取付けプレート51の幅寸法に対応する挿入幅方向の長さを有する長穴としてディスクロータ10の外周側にオフセットして形成されている。これにより、上述と同様に、アンカープレート29の上端が上側のアンカーブロック75と当接する位置まで上側へスライドされることになる。その結果、制輪子74が所定の位置まで上側へスライドするので、下側のアンカーブロック75(図示せず)とキャリパホルダ19とが密着することになる。
【0075】
図16は、本発明の第3実施形態に係る制輪子組付け構造において半掛けにより取付けプレート51がアンカーブロック75に干渉した状態の
図3のC-C断面位置における断面図である。
一方、仮に制輪子74の装着時、上側のアンカーブロック75と制輪子74との相対位置が保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜すると、取付けプレート51が凹部79に嵌まり込まない。即ち、取付けプレート51が上側のアンカーブロック75に干渉することでアンカープレート29が完全に挿入しきらない。すると、制輪子74が長手(スライド)方向の正規の位置へ到達できないため、結果として制輪子74を正常に装着できない。その結果、下側のアンカーブロック75をボルト締結すると、下側のアンカーブロック75とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けを容易に認識できる。
【0076】
これに加え、アンカープレート29を保持レール17にスライド挿入して制輪子74をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子74を対応するキャリパホルダ19に対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けようとしたり、一方の制輪子74を他方の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けようとしたりすると、アンカープレート29の取付けプレート51が、アンカーブロック75に干渉する。このため、制輪子74は、キャリパホルダ19の正確な位置に取り付けることができない。
これにより、作業者は、制輪子74が対応するキャリパホルダ19に対して上下逆に取付けられたり、一方の制輪子74が他方の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられたり、アンカープレート29が保持レール17に対して半掛け状態となったりして制輪子74がキャリパホルダ19に正常に組み付けられなかったことを検知できる。
【0077】
(第4実施形態)
図17は、本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子76とアンカーブロック81を示す分解斜視図である。
本第4実施形態において、アンカープレート29の一方のスライド方向端部(本第4実施形態では上端部)にのみ設けられる取付け嵌合部21は、アンカープレート29を挿入幅方向に二等分してスライド方向に沿う中心線77の両側にそれぞれ配置されてアンカープレート29の上端部から異なる幅寸法の先端部49,50が突出する複数(本第4実施形態では2枚)の取付けプレート51,52とされる。取付けプレート52の先端部50は、アンカープレート29の上端部から突出する部分に切欠きが形成されることにより、取付けプレート51の先端部49よりも幅寸法が狭くなるように構成されている。
【0078】
また、本第4実施形態において、被取付け嵌合部23は、2枚の取付けプレート51,52の先端部49,50が対向する上側のアンカーブロック81の対向部に設けられ、2枚の取付けプレート51,52の先端部49,50が嵌合可能に形成された凹部83とされる。凹部83は、2枚の取付けプレート51,52の先端部49,50が同時に挿入される長方形の長穴として形成される。なお、アンカーブロック81における凹部83の挿入幅方向の長さは、取付けプレート51と反対側に形成された切欠きにより先端部50の幅寸法が狭くなる分、上記アンカーブロック31における凹部61の挿入幅方向の長さよりも短くされる。
【0079】
図18は、
図17のD-D断面位置において制輪子76の取付けプレート51,52の先端部49,50がアンカーブロック81の凹部83に進入した状態を示す断面図である。
制輪子76は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた場合、アンカープレート29の上端から突出した取付けプレート51,52の先端部49,50が、上側のアンカーブロック81の凹部83に挿入される。これにより、上述と同様に、アンカープレート29の上端が上側のアンカーブロック81と当接する位置まで上側へスライドされることになる。その結果、制輪子76が所定の位置まで上側へスライドするので、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19とが密着することになる。
【0080】
図19は、本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造において、半掛けにより取付けプレート51がアンカーブロック81に干渉した状態の
図18のE-E断面位置における断面図である。
一方、仮に制輪子76の装着時、上側のアンカーブロック81と制輪子76との相対位置が保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜すると、
図19に示すように、取付けプレート51,52が凹部83に嵌まり込まない。即ち、取付けプレート51,52が上側のアンカーブロック81に干渉することでアンカープレート29が完全に挿入しきらない。すると、制輪子76が長手(スライド)方向の正規の位置へ到達できないため、結果として制輪子76を正常に装着できない。その結果、下側のアンカーブロック32をボルト締結すると、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けを容易に認識できる。
【0081】
図20は、本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造において、上下逆の誤った取付けにより取付けプレート51,52がアンカー固定部に干渉した状態の
図17のD-D断面位置における断面図である。
また、アンカープレート29を下方より保持レール17にスライド挿入して制輪子76をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子76が対応するキャリパホルダ19に対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けられると、
図20に示すように、取付けプレート51,52の先端部49,50が、アンカープレート29の下側に突出する。
【0082】
その結果、制輪子76が上下逆の誤った組付け状態で下側のアンカーブロック32をボルト締結すると、下側に突出した取付けプレート51,52の先端部49,50に、下側のアンカーブロック32が当たり、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できることになる。
【0083】
図21は、本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造において、一方(ディスクロータ10の車両本体から見た内面側)の制輪子76が他方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられたことにより取付けプレート51,52がアンカーブロック81に干渉した状態の
図17のD-D断面位置における断面図である。
更に、アンカープレート29を下方より保持レール17にスライド挿入して一方(ディスクロータ10の車両本体から見た内面側)の制輪子76をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子76が他方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられると、
図21に示すように、取付け嵌合部21が被取付け嵌合部23に嵌まり込まない。即ち、一方の制輪子76が他方の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられた際、取付けプレート51の先端部49が上側のアンカーブロック81に干渉することで、アンカープレート29が保持レール17に完全に挿入しきらない状態となる。
【0084】
その結果、一方の制輪子76が他方の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられた状態で下側のアンカーブロック32をボルト締結すると、下側に突出したアンカープレート29に、下側のアンカーブロック32が当たり、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できることになる。
【0085】
次に、上記第4実施形態の構成の変形例を説明する。
(第4実施形態の変形例)
図22の(a)は本発明の第4実施形態に係る制輪子組付け構造の変形例を示す要部拡大図、
図22の(b)は半掛けにより取付けプレート51がアンカーブロック84に干渉した状態の
図18のE-E断面位置における断面図である。
本第4実施形態の変形例に係る制輪子組付け構造は、上記第4実施形態の制輪子76における取付けプレート52(
図17参照)がアンカープレート29に対して表裏反対に取り付けられると共に、上述したアンカーブロック81に代えて、アンカーブロック84がキャリパホルダ19の上端に設けられている。
【0086】
アンカープレート29の上端部にのみ設けられる取付け嵌合部21をアンカープレート51と共に構成するため、アンカープレート29に対して表裏反対に取り付けられた本第4実施形態の変形例に係る取付けプレート52は、
図22の(a)に示すように、先端部50を形成するための切欠きが取付けプレート51側に配置されている。
【0087】
また、被取付け嵌合部23は、2枚の取付けプレート51,52の先端部49,50が対向する上側のアンカーブロック84の対向部に設けられ、2枚の取付けプレート51,52の先端部49,50がそれぞれ嵌合可能に形成された2つの凹部85a,85bとされる。
図22の(b)に示すように、凹部85aは、取付けプレート51の先端部49が挿入される長方形の長穴として形成される。また、凹部85bは、取付けプレート52の先端部50が挿入される凹部85aより短い長方形の長穴として形成される。
【0088】
制輪子76は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた場合、アンカープレート29の上端から突出した取付けプレート51の先端部49及び取付けプレート52の先端部50が、上側のアンカーブロック84の凹部85a及び凹部85bにそれぞれ挿入される。これにより、上述と同様に、アンカープレート29の上端が上側のアンカーブロック84と当接する位置まで上側へスライドされることになる。その結果、制輪子76が所定の位置まで上側へスライドするので、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19とが密着することになる。
【0089】
一方、仮に制輪子76の装着時、上側のアンカーブロック84と制輪子76との相対位置が保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜すると、
図22の(b)に示すように、取付けプレート51,52が凹部85a,85bに嵌まり込まない。即ち、取付けプレート51,52が上側のアンカーブロック84に干渉することで、アンカープレート29が保持レール17に完全に挿入しきらない。
【0090】
また、アンカープレート29を下方より保持レール17にスライド挿入して制輪子76をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子76を対応するキャリパホルダ19に対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けると、取付けプレート51,52の先端部49,50が、アンカープレート29の下側に突出する。
【0091】
更に、アンカープレート29を下方より保持レール17にスライド挿入して一方(ディスクロータ10の車両本体から見た内面側)の制輪子76をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子76が他方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられると、取付けプレート51の先端部49が凹部85bに嵌まり込まない。即ち、取付けプレート51が上側のアンカーブロック84に干渉することでアンカープレート29が保持レール17に完全に挿入しきらない。
【0092】
このように、制輪子76は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられない場合、下側のアンカーブロック32をボルト締結すると、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けを容易に認識できる。
【0093】
(第5実施形態)
図23は、本発明の第5実施形態に係る制輪子組付け構造を備える制輪子78とアンカーブロック75を示す分解斜視図である。
本第5実施形態において、アンカープレート29の一方のスライド方向端部(本第5実施形態では上端部)に設けられた取付け嵌合部21は、アンカープレート29を挿入幅方向に二等分してスライド方向に沿う中心線77から挿入幅方向の片側(ディスクロータ10の外周側)にオフセットして配置されて上端部から先端部49が突出する取付けプレート51とされる。
【0094】
また、アンカープレート29の他方のスライド方向端部(本第5実施形態では下端部)に設けられた取付け嵌合部21が、アンカープレート29を挿入幅方向に二等分してスライド方向に沿う中心線77の両側にそれぞれ配置されて下端部から先端部49が突出する複数(本第5実施形態では2枚)の取付けプレート51とされる。
【0095】
本第5実施形態において、被取付け嵌合部23は、取付けプレート51の先端部49が対向する上側のアンカーブロック75の対向部及び下側のアンカーブロック31の対向部にそれぞれ設けられ、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた際にのみ各々の取付けプレート51の先端部が嵌合可能な凹部79及び凹部61とされる。
【0096】
図24は、
図23のF-F断面位置において制輪子78の複数の取付けプレート51がアンカーブロック75の凹部79及びアンカーブロック31の凹部61にそれぞれ進入した状態を示す断面図である。
制輪子78は、アンカープレート29が保持レール17に正常に組み付けられた場合、アンカープレート29の上端から突出した取付けプレート51の先端部49が、上側のアンカーブロック75の凹部79に挿入される。これにより、上述と同様に、アンカープレート29の上端が上側のアンカーブロック75と当接する位置まで上側へスライドされることになる。そして、制輪子76が所定の位置まで上側へスライドされた後、アンカープレート29の下端から突出した2枚の取付けプレート51の先端部49が、下側のアンカーブロック31の凹部61に挿入される。そこで、下側のアンカーブロック32とキャリパホルダ19とは、密着することができる。
【0097】
一方、仮に制輪子78の装着時、上側のアンカーブロック75と制輪子78との相対位置が保持レール17に対するアンカープレート29の半掛けにより傾斜すると、取付けプレート51が凹部79に嵌まり込まない。即ち、取付けプレート51が上側のアンカーブロック75に干渉することで、アンカープレート29が保持レール17に完全に挿入しきらない。すると、制輪子78が長手(スライド)方向の正規の位置へ到達できないため、結果として制輪子78を正常に装着できない。その結果、下側のアンカーブロック31をボルト締結すると、下側のアンカーブロック31とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けを容易に認識できる。
【0098】
図25は、本発明の第5実施形態に係る制輪子組付け構造において、上下逆の誤った取付けにより取付けプレート51がアンカーブロック75に干渉した状態の
図23のF-F断面位置における断面図である。
アンカープレート29を下方より保持レール17にスライド挿入して制輪子78をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子78が対応するキャリパホルダ19に対して上下逆の誤った取付け方向に取り付けられると、
図25に示すように、上側の取付け嵌合部21が被取付け嵌合部23に嵌まり込まない。即ち、制輪子78が対応するキャリパホルダ19に対して上下逆に誤って取り付けられた際、アンカープレート29の上端から突出した2枚の取付けプレート51のうちディスクロータ10の内周側(
図25中、左側)に位置する取付けプレート51の先端部49が、上側のアンカーブロック75に干渉する。このため、制輪子78は、キャリパホルダ19の正確な位置に取り付けることができない。
【0099】
その結果、制輪子78が上下逆の誤った組付け状態で下側のアンカーブロック31をボルト締結すると、下側に突出したアンカープレート29の下端に、下側のアンカーブロック31が当たり、下側のアンカーブロック31とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できることになる。
【0100】
図26は、本発明の第5実施形態に係る制輪子組付け構造において、一方(ディスクロータ10の車両本体から見た内面側)の制輪子78が他方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられたことにより取付けプレート51がアンカーブロック75に干渉した状態の
図23のF-F断面位置における断面図である。
アンカープレート29を下方より保持レール17にスライド挿入して一方(ディスクロータ10の車両本体から見た内面側)の制輪子78をキャリパホルダ19へ組み付ける際、制輪子78が他方(ディスクロータ10の車両本体から見た外面側)の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けられると、
図26に示すように、上側の取付け嵌合部21が被取付け嵌合部23に嵌まり込まない。即ち、中心線77からオフセットして配置された取付けプレート51の先端部49が、上側のアンカーブロック75に当たって干渉することで、アンカープレート29が保持レール17に完全に挿入しきらない状態となる。
【0101】
このように、アンカープレート29を保持レール17にスライド挿入して制輪子78をキャリパホルダ19へ組み付ける際、ディスクロータ10の車両本体から見た内面側の制輪子78をディスクロータ10の車両本体から見た外面側の対応しないキャリパホルダ19に対して誤って取り付けようとすると、取付けプレート51の先端部49が、対応する凹部79に嵌合できずにアンカーブロック75に干渉する。このため、制輪子78は、キャリパホルダ19の正確な位置に取り付けることができない。
【0102】
その結果、ディスクロータ10の車両本体から見た内面側の制輪子78がディスクロータ10の車両本体から見た外面側の対応しないキャリパホルダ19に対して誤った組付け状態で下側のアンカーブロック31をボルト締結すると、下側に突出したアンカープレート29の下端に、下側のアンカーブロック31が当たり、下側のアンカーブロック31とキャリパホルダ19との間に隙間dが生じる。そのため、作業者は、視覚的に誤組付けが容易に認識できることになる。
【0103】
なお、上記の各実施形態では、取付け嵌合部21がアンカープレート29に設けられ、被取付け嵌合部23がアンカーブロック31(75,81)に設けられる場合を説明した。しかしながら、取付け嵌合部21と被取付け嵌合部23とは、これとは逆に、取付け嵌合部21がアンカーブロック31(75,81)に設けられ、被取付け嵌合部23がアンカープレート29に設けられてもよい。
【0104】
また、その他の変形例として、図示は省略するが、本発明の取付け嵌合部は、挿入方向に直交する断面形状が四角形以外の三角形、五角形、六角形等の多角形や、長円形、楕円形、円形等の取付けプレートであってもよい。この場合、被取付け嵌合部も、これらの形状のいずれかの取付け嵌合部が挿入可能となる断面形状の凹部とすることができる。
更に、本実施形態の取付け嵌合部は、アンカープレートの端部に直接設けることもできる。即ち、アンカープレートの端部に取付け嵌合部として嵌合凸部を一体形成し、嵌合凸部が嵌合可能な被取付け嵌合部としての凹部をアンカー固定部に設けてもよい。
【0105】
従って、上記各実施形態に係る制輪子組付け構造によれば、アンカープレート29の半掛けを防止すべく、制輪子装着時の誤組付けを視覚的に認知させることができる。
【0106】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0107】
10…ディスクロータ
13…プレッシャープレート
15…制輪子
17…保持レール
19…キャリパホルダ
21…取付け嵌合部
23…被取付け嵌合部
25…ライニング
27…背面
29…アンカープレート
31…アンカーブロック(アンカー固定部)
49…先端部
51…取付けプレート(取付け嵌合部)
61…凹部(被取付け嵌合部)