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特開2022-191913サスペンション制御装置、サスペンション制御方法、およびサスペンション制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191913
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】サスペンション制御装置、サスペンション制御方法、およびサスペンション制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/018 20060101AFI20221221BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60G17/018
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100428
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤井 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】平尾 隆介
(72)【発明者】
【氏名】松浦 諒
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA02
3D301DA38
3D301EA10
3D301EA11
3D301EA15
3D301EA21
3D301EA22
3D301EA35
3D301EB13
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC20
3D301EC37
3D301EC54
3D301EC55
3D301EC58
(57)【要約】
【課題】車両の挙動に応じたサスペンション制御の精度が十分ではなかった。
【解決手段】車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとの対応を示すパラメータであって、予め機械学習により決定された前記パラメータを記憶するパラメータ記憶部と、前記車両内で伝送される通信データのうち、前記挙動情報が入力され、前記挙動情報と前記パラメータ記憶部内の前記パラメータとに基づいて、前記車両の前記サスペンションに係る前記センサデータを推定する車両挙動推定部と、前記推定された前記センサデータを基に、前記サスペンションを制御するサスペンション制御値を算出する制御値計算部とを備えるサスペンション制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとの対応を示すパラメータであって、予め機械学習により決定された前記パラメータを記憶するパラメータ記憶部と、
前記車両内で伝送される通信データのうち、前記挙動情報が入力され、前記挙動情報と前記パラメータ記憶部内の前記パラメータとに基づいて、前記車両の前記サスペンションに係る前記センサデータを推定する車両挙動推定部と、
前記推定された前記センサデータを基に、前記サスペンションを制御するサスペンション制御値を算出する制御値計算部とを備えるサスペンション制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンション制御装置において、
前記車両挙動推定部は、ニューラルネットワークを含み、前記ニューラルネットワークは、前記挙動情報と前記パラメータとを用いて前記センサデータを推定するサスペンション制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサスペンション制御装置において、
前記通信データは、前記車両の車載ネットワークに伝送されるデータであるサスペンション制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のサスペンション制御装置において、
前記挙動情報は、前記車両の車輪速、前後加速度、左右加速度、ヨーレイトの少なくとも一つであるサスペンション制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のサスペンション制御装置において、
前記挙動情報は、前記車両挙動推定部で過去に推定された前記センサデータであるサスペンション制御装置。
【請求項6】
請求項4に記載のサスペンション制御装置において、
前記車両挙動推定部に入力される複数の挙動情報を一つの挙動情報にまとめる前処理部を備えるサスペンション制御装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のサスペンション制御装置において、
前記車両挙動推定部で推定する前記センサデータは、前記車両の4輪のサスペンション装置のピストン速度、またはばね上加速度の少なくとも一つを検出するセンサのセンサデータに相当するサスペンション制御装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のサスペンション制御装置と、
前記車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとを取得する取得装置とを含み、
前記取得装置は、前記挙動情報と前記取得した前記センサデータとを表示するサスペンション制御システム。
【請求項9】
車両のサスペンションを制御するサスペンション制御装置におけるサスペンション制御方法であって、
車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとの対応を示すパラメータであって、予め機械学習により決定された前記パラメータを記憶し、
前記車両内で伝送される通信データのうち、前記挙動情報が入力され、前記挙動情報と前記パラメータとに基づいて、前記車両の前記サスペンションに係る前記センサデータを推定し、
前記推定された前記センサデータを基に、前記サスペンションを制御するサスペンション制御値を算出するサスペンション制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載のサスペンション制御方法において、
ニューラルネットワークにより、前記挙動情報と前記パラメータとを用いて前記センサデータを推定するサスペンション制御方法。
【請求項11】
サーバ装置と車両のサスペンションを制御するサスペンション制御装置とを備えたサスペンション制御システムであって、
前記サーバ装置は、前記車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとを取得し、前記挙動情報と前記センサデータとの対応を示すパラメータを機械学習により決定し、
前記サスペンション制御装置は、前記サーバ装置より前記パラメータを取得し、前記車両内で伝送される通信データのうち、前記挙動情報が入力され、前記挙動情報と前記パラメータとに基づいて、前記車両の前記サスペンションに係る前記センサデータを推定し、前記推定された前記センサデータを基に、前記サスペンションを制御する、
サスペンション制御システム。
【請求項12】
請求項11に記載のサスペンション制御システムにおいて、
前記サーバ装置は、ニューラルネットワークを含み、前記ニューラルネットワークは、前記挙動情報と前記センサデータとの対応を示すパラメータを機械学習し、
前記サスペンション制御装置は、ニューラルネットワークを含み、前記ニューラルネットワークは、前記挙動情報に応じた前記パラメータを用いて前記センサデータを推定するサスペンション制御システム。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のサスペンション制御システムにおいて、
前記車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとを取得する取得装置を含み、
前記取得装置は、前記挙動情報と前記取得した前記センサデータとを表示するサスペンション制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション制御装置、サスペンション制御方法、およびサスペンション制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
路面状況や運転状況に合わせてサスペンションの堅さや特性などを変化させて車両の姿勢を制御するサスペンション制御装置が知られている。サスペンション制御装置は、車両の4輪のサスペンションのピストン速度、ばね上加速度を検出するセンサからのセンサデータを検出してサスペンションを制御している。また、センサを用いないサスペンション制御装置が考えられている。
【0003】
特許文献1には、ストロークセンサのような高価なセンサを用いることがなく、車輪速センサにより検出された車輪速変動の値が零を基準としてマイナス側に所定値以上となった場合、車輪の接地荷重が減少していると見做して減衰力を増加させる制御を行ない、左右の前輪における車輪速変動が大きい方の状態量に基づいて、左右の前輪それぞれに設けられた減衰力可変ダンパの減衰力を制御するサスペンション制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-189228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、車両の挙動に応じたサスペンション制御の精度が十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるサスペンション制御装置は、車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとの対応を示すパラメータであって、予め機械学習により決定された前記パラメータを記憶するパラメータ記憶部と、前記車両内で伝送される通信データのうち、前記挙動情報が入力され、前記挙動情報と前記パラメータ記憶部内の前記パラメータとに基づいて、前記車両の前記サスペンションに係る前記センサデータを推定する車両挙動推定部と、前記推定された前記センサデータを基に、前記サスペンションを制御するサスペンション制御値を算出する制御値計算部とを備える。
本発明によるサスペンション制御方法は、車両のサスペンションを制御するサスペンション制御装置におけるサスペンション制御方法であって、車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとの対応を示すパラメータであって、予め機械学習により決定された前記パラメータを記憶し、前記車両内で伝送される通信データのうち、前記挙動情報が入力され、前記挙動情報と前記パラメータとに基づいて、前記車両の前記サスペンションに係る前記センサデータを推定し、前記推定された前記センサデータを基に、前記サスペンションを制御するサスペンション制御値を算出する。
本発明によるサスペンション制御システムは、サーバ装置と車両のサスペンションを制御するサスペンション制御装置とを備えたサスペンション制御システムであって、前記サーバ装置は、前記車両の挙動を示す挙動情報と前記車両のサスペンションに係るセンサデータとを取得し、前記挙動情報と前記センサデータとの対応を示すパラメータを機械学習により決定し、前記サスペンション制御装置は、前記サーバ装置より前記パラメータを取得し、前記車両内で伝送される通信データのうち、前記挙動情報が入力され、前記挙動情報と前記パラメータとに基づいて、前記車両の前記サスペンションに係る前記センサデータを推定し、前記推定された前記センサデータを基に、前記サスペンションを制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の挙動に応じたサスペンション制御の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)(B)(C)サスペンション制御装置を搭載した車両を示す図である。
図2】車両挙動推定部の一例を示す図である。
図3】(A)(B)データ取得用車両のブロック構成図およびデータの一例を示す図である。
図4】学習装置のブロック構成図である。
図5】データを取得して学習するまでの処理を示すフローチャートである。
図6】挙動情報とセンサデータの表示画面の一例である。
図7】車両挙動推定部の変形例1を示す図である。
図8】(A)(B)(C)車両挙動推定部の変形例2、3、4を示す図である。
図9】(A)(B)車両挙動推定部の変形例5を示す図である。
図10】車両挙動推定部の変形例6を示す図である。
図11】サスペンション制御システムのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0011】
また、以下の説明では、プログラムを実行して行う処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えばメモリ)および/またはインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサとされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路(例えばFPGAやASIC)を含んでいてもよい。
【0012】
プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0013】
[第1の実施形態]
図1(A)、図1(B)、図1(C)は、本発明の第1の実施形態にかかるサスペンション制御装置111を搭載した車両101を示す図である。図1(A)は車両101の外観図、図1(B)は、サスペンション制御装置111のブロック構成図、図1(C)は、車両挙動推定部107を示す図である。
【0014】
図1(A)に示すように、車両101は、前輪のサスペンション106a、後輪のサスペンション106bを備えている。サスペンション106a、106bを制御することにより、走行時に路面Sから車輪を介して車両101に伝達された振動を抑制する。なお、サスペンション106a、106bは減衰力特性が制御できるものとし、サスペンション制御装置111はサスペンション106a、106bの減衰力を制御する。
【0015】
図1(B)に示すように、サスペンション制御装置111は、制御部102、重みパラメータ用記憶部103、データ読出部104を備える。さらに、制御部102は、車両挙動推定部107、制御値計算部108を備える。
【0016】
サスペンション制御装置111は、車両内でCAN(Controller Area Network)105を介して伝送される通信データの中から、走行時の車両挙動に係るデータ(以下、挙動情報と称する)を取得し、この挙動情報と重みパラメータ用記憶部103内の重みパラメータとに基づいてサスペンション制御値を算出して、サスペンション106(106a、106b)を制御する。
【0017】
なお、本実施形態では車載ネットワークとして、CANを例に説明するが、その他の車載ネットワークを用いてもよい。例えば、CAN FD(CAN with Flexible Data rate)、FlexRay(フレックスレイ)、車載イーサネットなどであっても同様に実施できる。
【0018】
次に、サスペンション制御装置111が実施するサスペンション106の減衰力制御について説明する。制御部102内の車両挙動推定部107は、重みパラメータ用記憶部103に格納されている重みパラメータをデータ読出部104を介して読み出す。さらに、車両挙動推定部107は、CAN105から到来する挙動情報と重みパラメータとに基づいて、制御値計算部108で必要なサスペンション制御に係るデータ、具体的には、サスペンション制御に係る瞬時値を推定する。制御値計算部108は車両挙動推定部107から入力される瞬時値に基づいてサスペンション106の減衰力を制御するためのサスペンション制御値を計算する。
【0019】
ここで、本実施形態と対比される比較例について説明する。この比較例では、車両の4輪毎に搭載されたサスペンション106に加速度センサを設置して、ばね上の上下速度(以下、ばね上速度と称する)やピストンのストローク速度(以下、ピストン速度と称する)を測定し、この測定結果に基づいてサスペンションを制御する。このため、加速度センサは車の4輪毎に設置する必要があり、設置のためにブラケットやハーネスなどの部品の増加、組み立て工数の増加などにより、コストが増加する。また、多くの部品からなる車両全体の剛性特性なども反映したサスペンション制御ができない。
【0020】
これに対し、本実施形態では、車両101の4輪毎に搭載されたサスペンション106に加速度センサを設置しない。本実施形態では、CAN105に常時伝送されているデータの中で挙動情報、例えば、車輪速、前後加速度、左右加速度、ヨーレイトなどを参照して、車両挙動推定部107が4輪毎のサスペンション制御に係るデータ(ばね上速度、ピストン速度)を推定する。そして、この推定結果を後段の制御値計算部108に転送する。これにより、加速度センサを設置する必要がなく、コストを低減することができる。さらに、車両挙動推定部107は、4輪毎のサスペンション制御に係るセンサデータを推定するが、車両挙動推定部107は例えば、ニューラルネットワークで構成される。ニューラルネットワークで用いる重みパラメータは、予め機械学習により当該車両101用として決定されているものを用いるので、車両全体の剛性特性なども反映して、車両101の挙動に応じたサスペンション制御の精度が向上する。
【0021】
図1(C)に示すように、車両挙動推定部107には、重みパラメータと、挙動情報とが入力される。そして、車両挙動推定部107は、重みパラメータと挙動情報とに基づいて瞬時値、例えば、ばね上速度、ピストン速度などのセンサデータを推定して、これを出力する。
【0022】
図2は、車両挙動推定部107の一例を示す図である。
図2に示すように、本例では車両挙動推定部107をニューラルネットワークで構成する。ニューラルネットワークは、入力層(素子数i)201、隠れ層(素子数j)202、出力層(素子数K)203の各素子を階層的に結合した3層構成の階層型ニューラルネットワークにより構成される。入力層201の各素子と隠れ層202の各素子とは、重みW1ij(i=1~I、j=1~J)で結合され、隠れ層202の各素子と出力層203の各素子とは、重みW2jk(j=1~J、k=1)で結合される。これらの重みの情報(以下、重みパラメータと称する)は、重みW1ij、重みW2jkの行列式で表される。重みパラメータは、詳細は後述するが、予め機械学習で求められて、重みパラメータ用記憶部103に格納されている重みパラメータを用いる。なお、この例では、最も単純な隠れ層202が1層の全素子接続型のニューラルネットワークを示したが、これに限定されない。
【0023】
図2に示すように、ニューラルネットワークの入力層201は、前方右輪の車輪速の時系列データが入力される入力層201aと、車両101の前後加速度の時系列データが入力される入力層201bで構成される。出力層203には、車両101の前方右輪に装着したと仮定したサスペンションのばね上速度の瞬時値が出力される。隠れ層202の素子数は、入力層201と出力層203の素子数から一般的に決められるが、ニューラルネットワークによる車両挙動推定の精度を最大化する数とする。出力層203の素子数は、車両挙動推定の出力仕様で決定される。
【0024】
出力仕様として、出力層203の素子数が256個である場合について説明する。車両挙動として推定される、例えばばね上速度はアナログの瞬時値であるが、ニューラルネットワークの出力は1または0であるためデジタルで表現する必要がある。そこでアナログの瞬時値の値域を複数レベルに分割して分割された値とニューラルネットワークの出力を1対1の関係で関連付ける。例えば、瞬時値の値域が-1.00から1.00だったとして、その間を256レベルで表現すると、1レベル当たり0.007843(={1.00-(-1.00)}÷255)となる。ここで、ニューラルネットワークの出力Y1を1.000000に割り当て、順番にY2は0.992157、Y3は0.984312、・・・、Y256は-1.000000に対応付ける。そして、瞬時値に対応する出力素子のみが“1”(ハイ)となるようにし、それ以外の素子は“0”(ロー)となるようにする。これにより、ニューラルネットワークの出力層203で、瞬時値が表現できるようになる。なお、この例では出力層203の素子数が256個である場合で説明したが、この数に限定されない。
【0025】
車両挙動推定部107をニューラルネットワークで構成した場合、ニューラルネットワークには、CAN105から到来する挙動情報を入力する。具体的には、CAN105から時系列に到来する挙動情報に対し、一定のサンプリングレートでデータを取得し、所定の時間幅のウィンドウ310(後述の図3(B)参照)で1つのデータセットを定義する。一例を挙げて説明すると、サンプリング間隔を20m秒毎、ウィンドウ幅を1秒とすると、ある物理量に対する1つのデータセットは50点(=1秒÷20m秒)で構成されることになり、この50点をニューラルネットワーク入力素子の50個に割り当てる。そして、ウィンドウ幅を時間方向にシフトさせることで、ニューラルネットワークの入力を更新していく。図2においては、前方右輪の車輪速と車両101の前後加速度の2種の物理量を入力としているので、ニューラルネットワークの入力素子は、i=100点(=50点×物理量2種)となる。
【0026】
図2は、説明を簡単にするために、車両101の前方右輪に装着されたサスペンション106を制御するためのニューラルネットワークを示したが、車両挙動推定部107は、同様の構成のニューラルネットワークを車両101の4輪に対応して備えている。
【0027】
図3(A)、図3(B)は、データ取得用車両301のブロック構成図およびデータの一例を示す図である。
データ取得用車両301は、CAN105に伝送されている挙動情報と、センサデータとの対応関係を予め取得するための車両である。したがって、データ取得用車両301は、サスペンション106にサスペンション用加速度センサ302を設置して、ばね上速度やピストン速度を取得する。
【0028】
図3(A)に示すように、データ取得用車両301は、サスペンション用加速度センサ302、制御部303、データ収集部304、データセット用記憶部305、データ読出部306、表示部307を備える。制御部303は制御値計算部108を有している。CAN105、サスペンション106は、図1(B)を参照して説明したものと同様である。
【0029】
制御部303の制御値計算部108は、サスペンション用加速度センサ302が出力する瞬時値に基づいてサスペンション106の減衰力のサスペンション制御値を計算する。また、データ収集部304は、CAN105に伝送されている挙動情報と、サスペンション用加速度センサ302が出力するセンサデータとを取得し、各情報を対応付けてデータセットとしてデータセット用記憶部305に格納する。表示部307は、データ読出部306を介してデータセット用記憶部305に格納されたデータセットを随時可視化して表示する。なお、表示部307はデータ取得用車両301に設けられている例を示すが、ネットワークを介してサーバ装置等の車外に設置されてもよい。
【0030】
図3(B)は、データ取得用車両301で取得されたデータセットの一例である。図の上段はCAN105に伝送されている挙動情報のうち、一例として車輪速を、図の下段はサスペンション用加速度センサ302が出力する瞬時値のうち、一例としてピストン速度を示す。横軸はいずれも時間である。
【0031】
図3(B)に示すように、CAN105に伝送されている車輪速とサスペンション用加速度センサ302が出力するピストン速度が対応付けられている。例えば、ウィンドウ310で示される車輪速は、サスペンション用加速度センサ302が出力する瞬時値311と対応付けられる。
【0032】
なお、データ取得用車両301に限らず、データ取得用車両301を模したシミュレーションなどの取得装置を用いて車両の挙動を示す挙動情報と車両のサスペンションに係るセンサデータとを取得してもよい。この場合も、取得装置は、表示部に挙動情報と取得したセンサデータとを対応して表示してもよい。
【0033】
図4は、学習装置401のブロック構成図である。
学習装置401は、制御部402、学習部403、データセット用記憶部404、重みパラメータ用記憶部405を備える。
データセット用記憶部404には、図3に示すデータ取得用車両301が取得したデータセットが記憶されている。具体的には、データ取得用車両301のデータセット用記憶部305に記憶されているデータセットが、ネットワーク等を介して学習装置401のデータセット用記憶部404に転送される。
【0034】
学習部403は、制御部402の学習開始の指示に従って、データセット用記憶部404からデータセットを読み出し、CAN105に伝送されていた挙動情報と、サスペンション用加速度センサ302からのセンサデータとの相関を学習する。
【0035】
学習部403は、例えば、図2を参照して説明したものと同様のニューラルネットワークで構成される。ニューラルネットワークによる機械学習は、データセット用記憶部404に格納されている挙動情報とサスペンション用加速度センサ302からのセンサデータを使用して実施される。具体的には、CAN105に伝送されている挙動情報、例えば、図3(B)に示すウィンドウ310に含まれるデータをサンプリングした離散値がニューラルネットワークの入力層(素子数i)201の素子にセットされ、これに対応するサスペンション用加速度センサ302からのセンサデータの瞬時値311をニューラルネットワークの出力層(素子数K)203の素子にセットする。
【0036】
ウィンドウ310とセンサデータの瞬時値311の関係について説明すると、図3(B)ではウィンドウ310の幅は判りやすく1秒とするが、センサデータの瞬時値311は、それより1秒前の走行履歴から推定される仕様とする。したがって、サンプリング間隔を例えば20m秒とするとウィンドウ310内のサンプリング点は50個(=1秒÷20m秒)となり、この50個のデータ群とセンサデータの瞬時値311の組み合わせを学習用データセットと定義し、ウィンドウ310とセンサデータの瞬時値311を20m秒ごと、あるいは20m秒×mごと(m:整数)に時間方向にスライドさせることでデータセットをn倍化する。
【0037】
ニューラルネットワークで構成される学習部403の機械学習の結果である重みパラメータは、重みパラメータ用記憶部405に格納される。この重みパラメータは、CAN105に伝送されている挙動情報と、サスペンション用加速度センサ302からのセンサデータとの相関、すなわち対応を示している。そして、重みパラメータ用記憶部405に格納された重みパラメータは、適宜、図1(B)に示した重みパラメータ用記憶部103に記憶される。そして、既に説明したように、サスペンション106に加速度センサを設置しない車両101において、ばね上速度、ピストン速度を推定してサスペンションを制御する。
【0038】
図5は、データを取得して学習するまでの処理を示すフローチャートである。
ステップS501では、図3(A)を参照して説明したように、サスペンション106にサスペンション用加速度センサ302を設置したデータ取得用車両301によるデータ取得を開始する。
【0039】
ステップS502では、データ取得用車両301を走行されながら、CAN105に伝送されている挙動情報と、サスペンション用加速度センサ302のセンサデータとを取得し、各情報を対応付けてデータセットとしてデータセット用記憶部305に格納する。これは、データ取得フェーズであり、実際にデータ取得用車両301を走行路で試験しながら、ニューラルネットワークを学習するためのデータセットを取得する。
【0040】
ステップS503では、データセットが想定レンジを超過したり、一定値に固定されているなど異常値であるかを判定する。この判定は、データ取得用車両301の制御部303で行う。異常値である場合は、データセットを破棄してデータセット用記憶部305には格納しない。そして、ステップS502へ戻る。データセットが異常値でなければ、ステップS504へ進む。
【0041】
ステップS504では、データセット用記憶部305に格納されたデータセットを学習装置401のデータセット用記憶部404へ転送する。
【0042】
次のステップS505で、学習装置401は、図4を参照して説明したように、CAN105に伝送されている挙動情報と、サスペンション用加速度センサ302からのセンサデータとの相関を機械学習する。これは、学習フェーズであり、データ取得フェーズで取得したデータセットを使用してニューラルネットワークの学習を実施する。
【0043】
なお、学習に計算リソースが必要であることから、学習装置401は、サーバ装置やパソコン等であり、学習部403を構成するニューラルネットワークの入力素子にウィンドウ310(図3(B)参照)内の時系列データがセットされ、ニューラルネットワークの出力素子にはサスペンション用加速度センサ302からのセンサデータである瞬時値がセットされる。この状態で、例えば誤差逆伝搬法等を使用して学習することにより、出力誤差が最小になるニューラルネットワークの重みパラメータが決定される。
【0044】
次のステップS506で、学習装置401は、学習結果を、例えば期待値と比較し、期待値との誤差が十分に小さくなったか否かを判定する。誤差が十分に小さくなるまで機械学習を行う。誤差が十分に小さくなったと判定した場合は、ステップS507へ進み、学習結果の重みパラメータを、図1(A)に示す車両101に反映させる。具体的には、学習した結果の重みパラメータを重みパラメータ用記憶部103へ転送する。
【0045】
その後、車両101において、サスペンション制御が可能になる。すなわち、車両101では、学習済みの重みパラメータがセットされたニューラルネットワークの入力素子にCAN105から到来する挙動情報が入力され、入力素子の値と重みパラメータとの演算により出力素子の値が導出され、それにより加速度センサに相当する瞬時値が得られる。
【0046】
図6は、挙動情報とセンサデータの表示画面601の一例である。
この表示画面601は、図3に示した表示部307に表示されるデータであり、図5に示したステップS502において表示される。
【0047】
データ取得用車両301によるデータ取得は、限られた時間で可能な限り多様な路面を走行して各種データを取得する。したがって、リアルタイムに、有効なデータが取得できているかを表示画面601により適宜確認できることが望ましい。
【0048】
図6では、表示画面601の上段にCAN105に伝送されている挙動情報である車輪速602と前後加速度603を表示した例を示す。そして、表示画面601の下段にはサスペンション用加速度センサ302のピストン速度604の時系列データを表示した例を示す。図5のステップS503で説明したように、データ取得用車両301の制御部303は、データセットが想定レンジを超過したり、一定値に固定されているなど異常値であるかを判定する。この際に、制御部303は、異常値であれば、表示画面601に異常値であることを示す識別情報を表示したり、図示省略した報知装置により音声等で報知する。
【0049】
また、ニューラルネットワークへ入力するためにデータセットをテキスト出力する。ボタン605は、テキスト出力の開始を指示するボタンである。このボタン605を指示すると、データ取得用車両301の制御部303は、例えばcsv形式のファイルでデータセットを出力する。なお、ボタン605は物理的なボタンでもよく、タッチ操作で選択されてもよく、ポインティングデバイス等で選択してもよい。
【0050】
図7は、車両挙動推定部107の変形例1を示す図である。
この変形例1は、車両挙動推定部107をニューラルネットワークで構成した例を示す。
図7に示すように、入力層701は、前方右輪の車輪速の時系列データが入力される入力層701aと、車両101の前後加速度の時系列データが入力される入力層701bと、車両101の左右加速度の時系列データが入力される入力層701cと、車両101のヨーレイトの時系列データが入力される入力層701dより構成される。隠れ層702、出力層703は、図2と同様であるのでその説明を省略する。
【0051】
この変形例1では、時系列データとして、前方右輪の車輪速、車両101の前後加速度、車両101の左右加速度、車両101のヨーレイトの4種の物理量を入力しているので、ニューラルネットワークの入力素子は、i=200点(=50点×物理量4種)となる。
【0052】
図7は、説明を簡単にするために、車両101の前方右輪に装着されたサスペンション106を制御するためのニューラルネットワークを示したが、車両挙動推定部107は、同様の構成のニューラルネットワークを車両101の4輪に対応して備えている。
【0053】
図8(A)、図8(B)、図8(C)は、車両挙動推定部107の変形例2、3、4を示す図である。
図8(A)に示すように、車両挙動推定部801は、CAN105に常時伝送されている通信データから車輪速と、その他の挙動情報と、車両挙動推定部801の後段にある制御値計算部108が出力するサスペンション制御値を入力する。制御値計算部108は、車両挙動に応じて好適なサスペンション制御値を出力するものであり、サスペンション制御値にも車両挙動に関する傾向が含まれる。これに着目して、車両挙動推定部801の入力にサスペンション制御値を追加し、サスペンション制御に係るデータ、例えばセンサデータの推定精度を向上させる。
【0054】
図8(B)に示すように、車両挙動推定部802は、CAN105に常時伝送されている通信データから車輪速と、その他の挙動情報と、ハンドルの操舵情報と、アクセルやブレーキのペダル操作情報とを入力する。操舵情報やペダル操作情報により、車両101の前後加速度は推定できるので、これらを車両挙動推定部802の入力にすることでサスペンション制御に係るセンサデータの推定精度を向上させる。
【0055】
図8(C)に示すように、車両挙動推定部803は、CAN105に常時伝送されている通信データから車輪速と、その他の挙動情報と、車両挙動推定部803が1世代前に、すなわち直前に出力したばね上速度、又はピストン速度とを入力する。ばね上速度、又はピストン速度は、サスペンション制御に係るデータであるが、いずれも連続した瞬時値の変化を示す値であり、直前の瞬時値の影響を受ける。したがって、CAN105から入力される通信データの他に、直前に車両挙動推定部803が出力した瞬時値を参照することでサスペンション制御に係るセンサデータの推定精度を向上させる。
【0056】
図9(A)、図9(B)は、車両挙動推定部107の変形例5を示す図である。
図9(A)に示すように、CAN105から到来する挙動情報を車両挙動推定部901に直接入力するのではなく、前段の前処理部902へ入力する。前処理部902は、複数の挙動情報を一つの挙動情報にまとめる。例えば、車輪速を他の挙動情報とまとめて、まとめた後の車輪速を車両挙動推定部901に入力する。後述するように前処理部902により、車両挙動推定部901の入力端子数を減らすことができる。車両挙動推定部901をニューラルネットワークで実現する場合は、大量の行列計算を実施することになるため、車載する制御部102で必要とする計算リソースを削減することができる。
【0057】
図9(B)は、図9(A)に示した前処理部902の一例を示した図である。
前処理部902は、微分器903と加減算器904を備える。CAN105から到来する車輪速は、微分器903で車輪加速度に変換する。そして加減算器904で車輪加速度と前後加速度とを、加速度の値同士で加減算を実施する。これにより車輪加速度と前後加速度とがまとめられた後の車輪加速度が生成でき、前後加速度自体はニューラルネットワークに入力する必要がなくなる。これにより、前後加速度用の入力層を省略でき、その結果、ニューラルネットワークのネットワーク規模が削減できる。図9(B)に示す例では、ニューラルネットワークの入力層905は、車輪加速度が入力される入力層905a、ヨーレイトが入力される入力層905b、1世代前のサスペンション制御値が入力される入力層905cで構成される。
【0058】
図9(B)では、前後加速度を用いてニューラルネットワークの回路規模を削減する例を示したが、その他にも、左右加速度やヨーレイト、あるいはその他の挙動情報を用いて前処理を行ってもよい。
【0059】
図10は、車両挙動推定部107の変形例6を示す図である。
図10に示すように、車両挙動推定部1001は、CAN105に常時伝送されている通信データから車輪速と、その他の挙動情報とを入力するだけでなく、自動運転や自動運転支援システムにより搭載が一般化しつつあるステレオカメラ等の画像データに基づく挙動情報を入力する。画像データに基づく挙動情報は、例えばフレーム毎の画像比較で、車両101の上下、前後、左右の挙動を検知した情報である。これにより、車両挙動の推定の精度を高め、それに基づいてサスペンション制御に係るセンサデータを推定できる。
【0060】
第1の実施形態によれば、CAN105に伝送されている挙動情報を利用することにより、サスペンション106に加速度センサを設置しない車両において、サスペンションの制御を行うことができる。そして、挙動情報とサスペンション制御に係るデータセットは、当該車両101を走行させて取得したものであり、多くの部品からなる車両全体の剛性特性も包含しているデータセットに基づいて機械学習により重みパラメータを決定しているので、車両101の挙動に応じたサスペンション制御の精度が向上する。
【0061】
[第2の実施形態]
図11は、サスペンション制御システムのブロック構成図である。
サスペンション制御システムは、サーバ装置1101、データ取得用車両1102、走行用車両1103より構成される。
【0062】
サーバ装置1101は、送受信インターフェース1104、制御部1105、学習部1107、データセット用記憶部1106、重みパラメータ用記憶部1108を備える。サーバ装置1101は、送受信インターフェース1104以外の構成は、第1の実施形態において図4を参照して説明した学習装置401と同様である。
【0063】
データ取得用車両1102は、サスペンション106、サスペンション用加速度センサ302、制御部303、データ収集部304、データセット用記憶部305、データ読出部306、表示部307、送受信インターフェース1109を備えている。さらに、制御部303は、制御値計算部108を備える。データ取得用車両1102は、送受信インターフェース1109以外の構成は、第1の実施形態において図3を参照して説明したデータ取得用車両301と同様である。
【0064】
走行用車両1103は、制御部102、重みパラメータ用記憶部103、データ読出部104、CAN105、サスペンション106、送受信インターフェース1110、データ書込部1111を備える。さらに、制御部102は、車両挙動推定部107、制御値計算部108を備える。走行用車両1103は、第1の実施形態で図1を参照して説明した車両101に相当する。
【0065】
データ取得用車両1102は、当該データ取得用車両1102を走行されながら、CAN105に伝送されている挙動情報と、サスペンション用加速度センサ302のセンサデータとを取得し、各情報を対応付けてデータセットとしてデータセット用記憶部305に格納する。そして、データセット用記憶部305に格納されたデータセットを送受信インターフェース1109を介してサーバ装置1101へ伝送する。
【0066】
なお、データ取得用車両1102の表示部307に、データ読出部306を介してデータセット用記憶部305に格納されたデータセットを随時可視化して表示してもよい。そして、図6を参照して説明したように、ボタン605を指示することにより、例えばcsv形式のファイルでデータセットを出力する。
【0067】
サーバ装置1101は、広域ネットワークから送受信インターフェース1104を介してデータ取得用車両1102よりデータセットを受信する。そして、受信したデータセットを制御部1105によりデータセット用記憶部1106に格納する。学習部1107は、制御部1105の学習開始の指示に従って、データセット用記憶部1106からデータセットを読み出し、そのデータセットが表すデータ取得用車両1102の挙動情報とセンサデータを用いて、CAN105に伝送されていた挙動情報と、サスペンション用加速度センサ302からのセンサデータとの相関を機械学習する。学習した結果の重みパラメータを重みパラメータ用記憶部1108に格納する。
【0068】
走行用車両1103は、サーバ装置1101の重みパラメータ用記憶部1108に格納された重みパラメータを、広域ネットワークを介して送受信インターフェース1110より取得し、データ書込部1111は、取得した重みパラメータを重みパラメータ用記憶部103に書き込む。サスペンション制御装置である制御部102は、車両挙動推定部107を備える。車両挙動推定部107はニューラルネットワークで構成されており、データ読出部104を介して重みパラメータを読み込むことで、サーバ装置1101の学習部1107による学習結果を反映させる。制御部102は、反映された学習結果に基づいてサスペンション106の制御を行う。
【0069】
本実施形態によれば、第1の実施形態で述べた効果を奏する他に、同一車種の車両であれば、1台のデータ取得用車両1102で取得した重みパラメータを複数の走行用車両1103に反映させることができる。また、データ取得用車両1102が継続してデータセットを取得し、取得したデータセットをサーバ装置1101が機械学習を随時行うことにより、走行用車両1103の重みパラメータを更新することができ、車両の特性を反映した精度の高いサスペンションの制御を行うことができる。
【0070】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)サスペンション制御装置111は、車両101の挙動を示す挙動情報と車両101のサスペンション106に係るセンサデータとの対応を示すパラメータであって、予め機械学習により決定されたパラメータを記憶するパラメータ記憶部103と、車両101内で伝送される通信データのうち、挙動情報が入力され、挙動情報とパラメータ記憶部103内のパラメータとに基づいて、車両101のサスペンション106に係るセンサデータを推定する車両挙動推定部107と、推定されたセンサデータを基に、サスペンション106を制御するサスペンション制御値を算出する制御値計算部108とを備える。これにより、車両の挙動に応じたサスペンション制御の精度が向上する。
【0071】
(2)サスペンション制御方法は、車両101のサスペンション106を制御するサスペンション制御装置111におけるサスペンション制御方法であって、車両101の挙動を示す挙動情報と車両101のサスペンション106に係るセンサデータとの対応を示すパラメータであって、予め機械学習により決定されたパラメータを記憶し、車両101内で伝送される通信データのうち、挙動情報が入力され、挙動情報とパラメータとに基づいて、車両101のサスペンション106に係るセンサデータを推定し、推定されたセンサデータを基に、サスペンション106を制御するサスペンション制御値を算出する。これにより、車両の挙動に応じたサスペンション制御の精度が向上する。
【0072】
(3)サスペンション制御システムは、サーバ装置1101と車両1103のサスペンション106を制御するサスペンション制御装置102とを備えたサスペンション制御システムであって、サーバ装置1101は、車両1103の挙動を示す挙動情報と車両1103のサスペンション106に係るセンサデータとを取得し、挙動情報とセンサデータとの対応を示すパラメータを機械学習により決定し、サスペンション制御装置102は、サーバ装置1101よりパラメータを取得し、車両1103内で伝送される通信データのうち、挙動情報が入力され、挙動情報とパラメータとに基づいて、車両1103のサスペンション106に係るセンサデータを推定し、推定されたセンサデータを基に、サスペンション106を制御する。これにより、車両の挙動に応じたサスペンション制御の精度が向上する。
【0073】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
101・・・車両、102、303、402・・・制御部、103、401、405、1108・・・重みパラメータ用記憶部、104・・・データ読出部、105・・・CAN、106・・・サスペンション、107、801、802、803、901、1001・・・車両挙動推定部、108・・・制御値計算部、111・・・サスペンション制御装置、201、905・・・入力層、202・・・隠れ層、203・・・出力層、301・・・データ取得用車両、302・・・サスペンション用加速度センサ、304・・・データ収集部、305、404・・・データセット用記憶部、306・・・データ読出部、307・・・表示部、401・・・学習装置、403、1107・・・学習部、605・・・ボタン、902・・・前処理部、903・・・微分器、904・・・加減算器、1101・・・サーバ装置、1102・・・データ取得用車両、1103・・・走行用車両、1104、1109、1110・・・送受信インターフェース、1105・・・制御部、1106・・・データセット用記憶部、1111・・・データ書込部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11