(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191914
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
A61B6/00 350M
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100431
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 聡太
(72)【発明者】
【氏名】野田 剛司
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093CA10
4C093CA36
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093FC18
4C093FC23
4C093FF08
4C093FF19
4C093FF28
(57)【要約】
【課題】ゲイン画像の取得に要する工数を低減すること。
【解決手段】放射線撮影システムは、照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部と、異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、画素に照射された線量と画素から出力される信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、放射線画像を補正する補正部と、画像取得部で新たに取得したゲイン画像を補正部により補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、前記信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部と、
異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、前記画素に照射された前記線量と前記画素から出力される前記信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、前記放射線画像を補正する補正部と、
前記画像取得部で新たに取得したゲイン画像を前記補正部により補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新部と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項2】
前記更新部は、前記補正画像の目標画素値と、前記補正画像の画素値との比率を前記更新係数として算出し、前記ゲインデータに前記更新係数を乗算することにより前記ゲインデータを更新することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、前記信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部と、
異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、前記画素に照射された前記線量と前記画素から出力される前記信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、前記放射線画像を補正する補正部と、
前記画像取得部で新たに取得したゲイン画像と前記ゲインデータとに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新部と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項4】
前記補正部は、前記画素の入出力特性を非線形関数により補間して前記新たに取得したゲイン画像を補正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記非線形関数による補間には、多項式補間、またはスプライン補間が含まれることを特徴とする請求項4に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記ゲインデータには、前記非線形関数の係数が含まれることを特徴とする請求項4または5に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記ゲインデータには、異なる線量で前記画像取得部により予め取得された複数のゲイン画像から取得される画素値が含まれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記更新部は、前記予め取得された複数のゲイン画像の画素値を前記更新係数に基づいて更新することを特徴とする請求項7に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記新たに取得したゲイン画像は、前記予め取得された複数のゲイン画像の数よりも少ないことを特徴とする請求項7または8に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記画像取得部は、前記新たなゲイン画像を、前記入出力特性が線形になる領域の線量で撮影することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項11】
異なる線量で予め取得された前記ゲインデータを保持する記憶部を更に有し、
前記補正部は前記記憶部から前記ゲインデータを取得して前記補正を行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項12】
前記画像取得部で新たに取得するゲイン画像の線量を調整する制御部を更に有し、
前記更新部は、前記調整された線量に基づいて前記新たに取得したゲイン画像を前記補正部により補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項13】
前記制御部は、仮撮影された放射線画像における画素値の平均値と、目標とする平均値との誤差が一定値以下になるように前記線量を調整することを特徴とする請求項12に記載の放射線撮影システム。
【請求項14】
前記制御部は、異なる線量で予め取得された前記複数のゲイン画像の画素値の平均値に基づいて、前記目標とする平均値を設定することを特徴とする請求項13に記載の放射線撮影システム。
【請求項15】
前記照射された放射線の線量を計測する線量計測部を更に有し、
前記制御部は、前記入出力特性が線形になる領域の下限に対応した第1線量から前記領域の上限に対応した第2線量の範囲になるように前記線量を調整することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項16】
照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、前記信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部により取得された前記放射線画像を処理する画像処理装置であって、
異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、前記画素に照射された前記線量と前記画素から出力される前記信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、前記放射線画像を補正する補正部と、
前記画像取得部で新たに取得したゲイン画像を前記補正部により補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項17】
照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、前記信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部により取得された前記放射線画像を処理する画像処理装置であって、
異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、前記画素に照射された前記線量と前記画素から出力される前記信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、前記放射線画像を補正する補正部と、
前記画像取得部で新たに取得したゲイン画像と前記ゲインデータとに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項18】
前記画像取得部で新たに取得するゲイン画像の線量を調整する制御部を更に有し、
前記更新部は、前記調整された線量に基づいて前記新たに取得したゲイン画像を前記補正部により補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新することを特徴とする請求項16または17に記載の画像処理装置。
【請求項19】
照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、前記信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部により取得された前記放射線画像を処理する画像処理方法であって、
異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、前記画素に照射された前記線量と前記画素から出力される前記信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、前記放射線画像を補正する補正工程と、
前記画像取得部で新たに取得したゲイン画像を前記補正工程で補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項20】
照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、前記信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部により取得された前記放射線画像を処理する画像処理方法であって、
異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、前記画素に照射された前記線量と前記画素から出力される前記信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、前記放射線画像を補正する補正工程と、
前記画像取得部で新たに取得したゲイン画像と前記ゲインデータとに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項21】
前記画像取得部で新たに取得するゲイン画像の線量を調整する制御工程を更に有し
前記更新工程では、前記調整された線量に基づいて前記新たに取得したゲイン画像を前記補正工程で補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新することを特徴とする請求項19または20に記載の画像処理方法。
【請求項22】
コンピュータに、請求項19乃至21のいずれか1項に記載された画像処理方法の各工程を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、放射線撮影システム、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関するものである。具体的には、医療診断における一般撮影などの静止画撮影や透視撮影などの動画撮影に好適に用いられる放射線撮影システム、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコンや単結晶シリコンからなる固体撮像素子を二次元状に配列して構成し、放射線像の撮影を行うFlatPanelDetector(以下、「FPD」と呼称する)が広く実用化されている。
【0003】
FPDは、複数の固体撮像素子で構成されているため、各固体撮像素子間の入出力特性が異なる。各固体撮像素子間で異なる入出力特性を合わせるために撮影前にゲイン画像を取得しておいて、撮影画像にゲイン補正を施すことで各固体撮像素子間の入出力特性を用いて、放射線画像を補正することができる。
【0004】
ここで、線量と画素値の入出力特性を示す一点のゲインデータしかない場合には、異なる線量における入出力特性を線形関数で線形近似して補正することが必要とされるが、入出力特性が非線形となる場合には、線形近似との乖離部分がアーチファクトとして画像に生じ得る。特許文献1には、このようなアーチファクトの発生を低減するために、線量の異なる複数のゲイン画像を取得して画素の入出力特性を非線形関数で近似してゲイン補正を実施する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、取得したゲイン画像は永続的に使えるわけでなく、X線管球の照射分布や蛍光体の発光等は経時的に変化するため、例えば、所定の期間ごとに行われる装置メンテナンスの際にゲイン画像の再取得が必要とされる。このため、特許文献1のように異なる線量の条件下で撮影された複数のゲイン画像をメンテナンス時に毎回取得するのは、メンテナンス工数の増大を招くことになり得る。開示の技術は上記課題を鑑み、複数のゲイン画像の取得に要する工数を低減することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の一態様による放射線撮影システムは以下の構成を備える。すなわち、放射線撮影システムは、照射された放射線の線量に応じた信号を出力する画素が二次元の領域に配置された放射線検出部を有し、前記信号に基づく放射線画像を取得する画像取得部と、
異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータを用いて得られる、前記画素に照射された前記線量と前記画素から出力される前記信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、前記放射線画像を補正する補正部と、
前記画像取得部で新たに取得したゲイン画像を前記補正部により補正した補正画像と前記補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数により前記ゲインデータを更新する更新部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、取得した更新係数によりゲイン補正に用いるゲインデータを更新することにより、複数のゲイン画像の取得に要する工数を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】開示の技術の実施形態に係る放射線撮影システムの構成を示す構成図。
【
図2】第1実施形態に係る多点ゲイン補正に用いるゲイン係数を推定する処理の流れを説明する図。
【
図3】更新係数に基づいてゲイン係数を更新した多項式関数の多点ゲイン補正による画素値の変化を例示的に示す図。
【
図4】第2実施形態に係る多点ゲイン補正に用いるゲイン係数を推定する処理の流れを説明する図。
【
図5】第2実施形態に係る各線量領域での画素の入出力特性を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。以下の実施形態及び特許請求の範囲において、放射線は、X線の他、α線、β線、γ線、及び各種粒子線なども含む。
【0011】
[第1実施形態]
(放射線撮影システム100の構成)
図1は、開示の技術の第1実施形態に係る放射線撮影システム100の構成例を示す図である。放射線撮影システム100は、放射線発生装置104、放射線管101、FPD102(放射線検出器)、画像処理装置120を有する。尚、放射線撮影システム100の構成を単に放射線撮影装置ともいう。画像処理装置120は、撮影した放射線画像に基づく情報(画像情報)を処理する。
【0012】
放射線発生装置104は曝射スイッチの押下により放射線管101に高電圧パルスを与えX線を発生させ、放射線管101は被写体103に放射線を照射する。放射線の種類は特に限定はしないが、一般的にはここで使用するようにX線が用いられる。
【0013】
放射線管101から放射線が被写体103に照射されると、FPD102は、画像取得部として機能して、画像信号に基づく電荷の蓄積を行って放射線画像を取得する。FPD102は、照射された放射線の線量に応じた信号を生成(出力)するための画素アレイを備えた放射線検出部(不図示)を有する。放射線検出部は、被写体103を透過した放射線を画像信号として検出する。放射線検出部には、入射光に応じた信号を出力する画素がアレイ状(二次元の領域)に配置されており、各画素の光電変換素子は蛍光体により可視光に変換された放射線を電気信号に変換し、画像信号として出力する。このように、放射線検出部は被写体103を透過した放射線を検出して、画像信号(放射線画像)を取得するように構成されている。
【0014】
FPD102の駆動部は、画像処理装置120の制御部105からの指示に従って読み出した画像信号(放射線画像)を制御部105に出力する。
【0015】
画像処理装置120は、撮影した放射線画像に基づく情報(画像情報)を処理する。画像処理装置120は、制御部105、モニタ106、操作部107、記憶部108、画像処理部109、表示制御部116を有する。
【0016】
制御部105は、不図示の1つまたは複数のプロセッサーを備え、記憶部108に記憶されているプログラムを実行することにより画像処理装置120の各種制御を実現する。記憶部108は、画像処理の結果や各種プログラムを記憶する。記憶部108は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部108は制御部105から出力された画像や画像処理部109で画像処理された画像、画像処理部109における計算結果を記憶することが可能である。また、記憶部108は異なる線量で予め取得されたゲインデータを保持する。ここで、ゲインデータには、異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいて取得されるゲイン係数(以下、「ゲインデータ(ゲイン係数)」)と、複数のゲイン画像から取得される画素値(以下、「ゲインデータ(ゲイン画像の画素値)」)とが含まれる。
【0017】
画像処理部109はFPD102から取得した放射線画像を処理する。画像処理部109は、機能構成として、ゲイン補正部110、ゲイン画像生成部111、更新部112を有している。これらの機能構成は、制御部105のプロセッサーが所定のプログラムを実行することで実現されてもよいし、画像処理部109が備える一つ又は複数のプロセッサーが記憶部108から読み込んだプログラムを用いて実現されてもよい。制御部105、画像処理部109のプロセッサーは、例えば、CPU(central processing unit)で構成される。画像処理部109の各部の構成は、同様の機能を果たすのであれば、それらは集積回路などで構成してもよい。また、画像処理装置120の内部構成として、GPU(Graphics Processing Unit)等のグラフィック制御部、ネットワークカード等の通信部、キーボード、ディスプレイ又はタッチパネル等の入出力制御部等を含むように構成することが可能である。
【0018】
モニタ106(表示部)は、制御部105がFPD102から受信した放射線画像(デジタル画像)や画像処理部109で画像処理された画像を表示する。制御部105は、モニタ106(表示部)の表示を制御する。操作部107は、画像処理部109やFPD102に対する指示を入力することができ、ユーザインターフェイスを介して画像処理部109やFPD102に対する指示の入力を受け付ける。このような構成で放射線撮影システム100は放射線撮影を実現することが可能である。
【0019】
[ゲイン補正処理]
(画素の入出力特性の線形性を仮定したゲイン補正)
第1実施形態で用いる非線形関数を用いたゲイン補正を説明する前に、画素の入出力特性(撮像素子の入出力特定)の線形性を仮定したゲイン補正(以後、単点ゲイン補正と呼称する)について説明する。単点ゲイン補正は、以下の数式1で示される。
【0020】
[数式1]
Gaincor(x,y)=pic(x,y)*α/Gain(x,y)
ここで、Gaincorはゲイン補正後の画像(補正画像)であり、picは撮影画像である。Gainはゲイン画像であり、ゲイン画像は被写体103を配置しない状態で撮影した画像である。各画像において、(x、y)は画素を示す。Gaincor(x,y)はゲイン補正後の画像の画素値であり、pic(x,y)は撮影画像の画素値である。Gain(x,y)は入出力特性を示すゲイン画像の画素値である。Gaincor(x,y)及びpic(x,y)において、xは、FPD102の放射線検出部の二次元領域に配置された画素の列番号を示し、yは画素の行番号を示す。
【0021】
αはゲイン補正後の画像の画素ゲイン補正後の出力値を調整する更新係数を示す。更新係数αは、任意の値を設定することができ、例えば、ゲイン画像における画素値の平均値やゲイン画像を取得時の線量などを使用して更新係数αを算出することができる。単点ゲイン補正では画素の入出力特性を線形と仮定しているので、画素の入出力特性が非線形となる場合、ゲイン画像の撮影時における入射線量(撮影線量)から離れるにしたがって、ゲイン補正をしても補正しきれないゲイン補正における誤差(ゲイン補正エラー)が発生し得る。
【0022】
(画素の入出力特性の非線形を考慮したゲイン補正)
単点ゲイン補正で生じ得るゲイン補正エラーを低減するために、撮影線量の異なる複数のゲイン画像に基づいて取得された補正関数(非線形関数)で放射線画像を補正するゲイン補正が用いられる。このゲイン補正を以後、多点ゲイン補正と呼称する。多点ゲイン補正では、画素の入出力特性を補間する補間方法として、例えば、線形補間、多項式補間、スプライン補間などの補間方法が使用される。本実施形態では、多項式補間として、数式2のような3次の多項式関数でゲイン画像における画素の入出力特性を用いて、放射線画像を補正する方法を説明する。なお、多項式補間の例は以下に例に限定されず、多項式関数の次数や係数などを種々に変更することが可能である。
【0023】
[数式2]
Gaincor(x,y)=a(x,y)×pic3
(x,y)+b(x,y)×pic2
(x,y)+c(x,y)×pic(x,y)
ここで、Gaincor(x、y)はゲイン補正後の画像(補正画像:Gaincor)の画素値であり、撮影画像の各画素について入出力特性の非線形性が補正されている。pic(x、y)は撮影画像の画素値である。Gaincor(x、y)及びpic(x、y)において、xはFPD102の放射線検出部の二次元領域に配置された画素の列番号を示し、yは画素の行番号を示し、a(x、y)、b(x、y)、c(x、y)は3次多項式関数における各次数のゲインデータ(ゲイン係数)である。各次数のゲイン係数a(x、y)、b(x、y)、c(x、y)は、撮影線量の異なる複数のゲイン画像と各ゲイン画像のゲイン補正後の出力値に対して最小二乗法やガウスの消去法等を用いることで求めることがでる。
【0024】
ゲイン補正部110は、異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像に基づいたゲインデータ(ゲイン係数)を用いて得られる、画素に照射された線量と画素から出力される信号との関係を示す画素の入出力特性を用いて、放射線画像を補正(ゲイン補正)する。ゲイン補正部110は、ゲイン補正を行う際に、各画素について各次数のゲイン係数a(x、y)、b(x、y)、c(x、y)を毎回求めて補正してもよいし、事前に各次数のゲイン係数a(x、y)、b(x、y)、c(x、y)を求めて記憶部108に記憶させておいて、ゲイン補正の際に記憶部108からゲイン係数a(x、y)、b(x、y)、c(x、y)を毎回読み出してもよい。
【0025】
このように、ゲイン補正部110は、事前に取得した撮影線量の異なる複数のゲイン画像に基づいて取得されたゲインデータ(ゲイン係数)の補正関数(非線形関数)を用いることで画素の入出力特性のゲイン補正を行うことができる。
【0026】
しかしながら、放射線撮影システム100においては、放射線管101とFPD102の配置関係や放射線管101の劣化による照射分布、FPD102の放射線検出部における蛍光体の発光量等は経時的に変化し得るため、ゲイン画像の撮影時からのこれらの経時変化分がゲイン補正における誤差(ゲイン補正エラー)となり得る。
【0027】
経時変化によるゲイン補正エラーを低減するために、例えば、通常1年に一回程度の放射線撮影システム100のメンテナンスが実施され、このメンテナンスには、多点ゲイン補正で使用する複数のゲイン画像の取得も含まれる。多点ゲイン補正によれば、ゲイン補正エラーを低減することができるが、単点ゲイン補正に比べ、撮影線量が異なる複数のゲイン画像の取得に要する工数(時間)が膨大となり得る。
【0028】
(多点ゲイン補正に用いる補正関数(非線形関数)の推定)
開示の技術の第1実施形態では、異なる線量のゲイン画像、または多点ゲイン補正に用いる補正関数(非線形関数)を新規に取得した単一(1枚)のゲイン画像から推定する。これにより、複数のゲイン画像の取得に要する多点ゲイン補正におけるメンテナンス工数を単点ゲイン補正におけるメンテナンス工数程度まで低減することを可能とするものである。
【0029】
図2は、第1実施形態に係る多点ゲイン補正に用いる補正関数(非線形関数)のゲインデータ(ゲイン係数)を新規に取得したゲイン画像から推定する処理の流れを説明する図である。以下、
図2を用いて多点ゲイン補正に用いる補正関数(非線形関数)のゲインデータ(ゲイン係数)を推定(取得)する処理を詳細に説明する。
【0030】
ステップS201において、放射線撮影システム100のFPD102(画像取得部)は被写体103を配置しない状態で新たにゲイン画像を撮影(取得)する。FPD102は、被写体を配置しない状態で放射線管101から放射線が照射されると、画像信号に基づく電荷の蓄積を行ってゲイン画像を取得する。ゲイン画像はノイズを低減するために同一の撮影線量で複数回撮影され、ゲイン画像生成部111は複数回撮影されたゲイン画像に対して平均化処理を実施して、平均化処理されたゲイン画像を取得する。
【0031】
ステップS202において、ゲイン補正部110は、ステップS201で取得されたゲイン画像に対してゲイン補正(多点ゲイン補正)を実施する。ゲイン補正部110は、ゲイン補正の際に、事前に取得した撮影線量の異なる複数のゲイン画像に基づいて取得されたゲインデータ(ゲイン係数)を記憶部108から取得する。ゲイン補正部110は、取得したゲインデータ(ゲイン係数)と、ステップS201で撮影されたゲイン画像に基づいて多点ゲイン補正を実施する。ここで、多点ゲイン補正に用いる補正関数(非線形関数)は、例えば、数式2で説明した3次の多項式関数を用いることが可能であり、ゲイン補正部110は、ゲイン画像に多点ゲイン補正を実施して、ゲイン補正後の画像(補正画像:Gaincor)を取得する。
【0032】
更新部112は、FPD102(画像取得部)で新たに取得したゲイン画像をゲイン補正部110により補正した補正画像と補正画像の目標画素値γとに基づいて更新係数β(x、y)を算出し、更新係数β(x、y)によりゲインデータを更新する。すなわち、更新部112は、FPD102(画像取得部)で新たに取得したゲイン画像をゲイン補正部110により補正した補正画像と補正画像の目標画素値とに基づいて得られる更新係数によりゲインデータを更新する。
【0033】
ステップS203において、更新部112は、多点ゲイン補正の結果(S202)を数式3に適用して画素ごとに多点ゲイン補正用の多項式関数の各次数のゲインデータ(ゲイン係数)を更新する更新係数β(x、y)を算出する。
【0034】
[数式3]
β(x、y)=γ/Gaincor(x,y)
ここで、γは、新たに撮影したゲイン画像に基づいて多点ゲイン補正をした後の補正画像(Gaincor)における目標画素値である。目標画素値γは、ゲイン画像における画素値の平均値やゲイン画像を取得する際の撮影線量や、撮影線量から推定される出力値などを用いて設定することができる。また、数式3において、Gaincor(x、y)は、ステップS202の処理で取得したゲイン補正後の画像(補正画像)の画素値である。
【0035】
ステップS204において、更新部112は、ステップS203で取得した更新係数β(x、y)を用いて多点ゲイン補正に用いる多項式関数における各次数のゲインデータ(ゲイン係数)を以下の数式4に基づいて更新する。
【0036】
[数式4]
a
(x,y)=a
(x,y)×β
(x、y)
b
(x,y)=b
(x,y)×β
(x、y)
c
(x,y)=c
(x,y)×β
(x、y)
図3は、更新係数β
(x、y)に基づいて各次数のゲインデータ(ゲイン係数)を更新した多項式関数の多点ゲイン補正による画素値の変化を例示的に示す図である。横軸は多点ゲイン補正前の画素値であり、縦軸は多点ゲイン補正後の画素値を示す。
【0037】
図3では、新たに取得したゲイン画像における画素の例示として、画素Aおよび画素Bの画素値の変化を例示している。画素A、画素Bにおいて、各画素の入出力特性の傾向は変化しないものと仮定して、入出力特性(実線で示す旧補正曲線)を維持しつつ、各次数のゲインデータ(ゲイン係数)を更新係数β
(x、y)倍したカーブフィッティング(補間処理)により、破線で示す新補正曲線が生成されている。
【0038】
図3において、画素Aの旧補正曲線311は、各次数のゲイン係数を更新していない多項式関数を用いた多点ゲイン補正による画素Aの入出力特性を示している。また、画素Aの新補正曲線312は、更新係数β
(x、y)に基づいて各次数のゲイン係数を更新した多項式関数を用いた多点ゲイン補正による画素Aの入出力特性を示している。画素Aの更新係数をβ
Aとすると、旧補正曲線311上の画素Aの画素値311Aは、新補正曲線312上の画素Aの画素値312Aに変化する。
【0039】
また、
図3において、画素Bの旧補正曲線321は、各次数のゲイン係数を更新していない多項式関数を用いた多点ゲイン補正による画素Bの入出力特性を示している。画素Bの新補正曲線322は、更新係数β
(x、y)に基づいて各次数のゲイン係数を更新した多項式関数を用いた多点ゲイン補正による画素Bの入出力特性を示している。画素Bの更新係数をβ
Bとすると、旧補正曲線321上の画素Bの画素値321Bは、新補正曲線322上の画素Bの画素値322Bに変化する。
【0040】
補正画像の目標画素値γと、ゲインデータ(ゲイン係数)を更新していない多項式関数を用いて多点ゲイン補正をした補正画像Gaincorの画素値Gaincor(x、y)との比率(更新係数β)を旧補正曲線311、321で示される画素値に乗算することによってゲインデータ(ゲイン係数)を更新し、旧補正曲線311、321(実線)で示される画素の入出力特性は、新補正曲線312、322(点線)で示される画素の入出力特性に更新される。数式4で説明した更新係数β(x、y)の計算を、新たに撮影したゲイン画像の画素ごとに実施して、更新係数β(x、y)に基づいて各次数のゲインデータ(ゲイン係数)を更新することによって、蛍光体の発光分布や放射線の照射分布など、経時変化によるゲイン補正エラーを低減することができる。
【0041】
ステップS205において、更新部112は、新たに撮影したゲイン画像の画素ごとにゲイン補正の多項式関数のゲイン係数が更新されたか判断する。全画素についてゲイン係数が更新されていない場合(S205-No)、処理をステップS206に進める。
【0042】
ステップS206において、更新部112は、ゲイン係数の更新処理が終了した画素の列番号(x)を参照して、ゲイン画像幅(N画素)に対応する配列(x=N)までゲイン係数の更新処理が終了しているか判定する。更新処理が終了していない場合(S206-No)、更新部112は、処理をステップS207に進める。
【0043】
ステップS207において、更新部112は、次の列(x=x+1:初期値ではx=0)の画素をゲイン係数の更新対象として設定し、処理をステップS202に戻す。
【0044】
一方、ステップS206の判定で、ゲイン画像幅(N画素)に対応する配列(N)までゲイン係数の更新処理が終了している場合(S206-Yes)、更新部112は、処理をステップS208に進める。更新部112は、次の行(y=y+1:初期値ではy=0)の画素をゲイン係数の更新対象として設定し、処理をステップS202に戻す。
【0045】
ステップ202では、ゲイン補正部110は、ステップS207で設定された列、またはS208で設定された行のゲイン画像の画素に対して、先に説明したステップS202の処理内容と同様の多点ゲイン補正を実施する。ステップS203で、更新部112は、多点ゲイン補正(S202)の結果に基づいて、更新係数β(x、y)を算出し、ステップS204で、更新部112は、ステップS203で取得した更新係数β(x、y)を用いて多点ゲイン補正に用いる多項式関数における各次数のゲインデータ(ゲイン係数)を更新する。
【0046】
ステップS205において、更新部112は、新たに撮影したゲイン画像の全画素についてゲイン係数が更新されたか判定し、ゲイン係数が更新されていない場合(S205-No)、処理をステップS206に進め、同様の処理を繰り返す。一方、ステップS205の判定で、全画素についてゲイン係数が更新された場合に処理は終了する(S205-Yes)。
図2で説明したように、新規に取得したゲイン画像に基づいて、画素ごとに多項式関数における各次数のゲインデータ(ゲイン係数)を更新することにより、画素の入出力特性における非線形性を補正した多点ゲイン補正用の補正関数(非線形関数)を推定(取得)することができる。
【0047】
なお、先に説明した数式4では、多点ゲイン補正に用いる補正関数(非線形関数)を推定する処理として、補正関数(非線形関数)のゲインデータ(ゲイン係数)を更新係数により更新する例を説明した。本実施形態は、この例の他に、例えば、ゲインデータとして、異なる線量でFPD102(画像取得部)により予め撮影(取得)された複数のゲイン画像を記憶部108に保持しておき、更新部112は、予め撮影(取得)された複数のゲイン画像に基づいて取得される画素値を更新係数β(x、y)に基づいて更新して、更新した画素値を有する新たなゲイン画像を推定することも可能である。
【0048】
本例では、
図2のステップS204において、更新部112は、ステップS203で取得した更新係数β
(x、y)を用いてゲイン画像の画素値を以下の数式5に基づいて更新する。
【0049】
[数式5]
Gain1(x,y)=Gain1(x,y)×β(x、y)
Gain2(x,y)=Gain2(x,y)×β(x、y)
Gain3(x,y)=Gain3(x,y)×β(x、y)
ここで、Gain1、Gain2、Gain3は異なる線量で撮影したゲイン画像であり、Gain1(x、y),Gain2(x、y),Gain3(x、y)は異なる線量で撮影したゲイン画像の画素値を示す。β(x、y)は数式3で取得された更新係数である。xは、放射線検出部の二次元領域に配置された画素の列番号を示し、yは画素の行番号を示す。
【0050】
ゲインデータ(ゲイン画像の画素値)として、数式5に例示するような3つのゲイン画像から取得される画素値を記憶部108に保持している場合に、更新部112は、更新係数β(x、y)を用いてゲイン画像の画素値を更新して新たなゲイン画像を推定(取得)することが可能である。ここで、更新係数の算出のために新たに取得したゲイン画像は、単一(1枚)のゲイン画像であり、予め取得された複数のゲイン画像(Gain1、Gain2、Gain3)の数よりも少ない。
【0051】
第1実施形態によれば、新たに取得したゲイン画像を用いて算出した更新係数によりゲイン補正に用いるゲインデータを更新することにより、複数のゲイン画像の取得に要する工数を低減することが可能となる。これにより、複数のゲイン画像の取得に要する多点ゲイン補正におけるメンテナンス工数を単点ゲイン補正におけるメンテナンス工数程度まで低減することができ、多点ゲイン補正の課題であったメンテナンス工数の増加を防ぐことが可能となる。
【0052】
[第2実施形態]
第1実施形態では、新たに取得したゲイン画像の多点ゲイン補正の結果を用いて更新係数β
(x、y)を算出し、補正前の画素の入出力特性(
図3の実線で示す旧補正曲線)を、更新係数β
(x、y)を用いて補正後の入出力特性(
図3の破線で示す新補正曲線)に補正する処理を説明した。しかし、多点ゲイン補正には少なからず誤差が生じ得るため、誤差の影響が更新係数βにも生じ得る。第2実施形態では、第1実施形態で説明した更新係数βの誤差を低減する構成について説明する。
【0053】
図4は、第2実施形態に係る多点ゲイン補正に用いる補正関数(非線形関数)のゲインデータ(ゲイン係数)を新規に取得したゲイン画像から推定する処理の流れを説明する図である。
図4において、ステップS403~S410は、第1実施形態の
図2のステップS201~S208と同様の処理であり、詳細な説明については省略する。本実施形態では、新たにゲイン画像を撮影(取得:S403)する前に、ゲイン画像の仮撮影(S401)、及び線量調整(S402)の処理を行う点で、第1実施形態の処理と相違する。また、
図5は、第2実施形態に係る各線量領域での画素の入出力特性を概略的に示す図である。
図5において、横軸は線量を示し、縦軸は画像出力(画素値)を示す。以下、
図4及び
図5を用いて、第2実施形態の処理について詳細に説明する。
【0054】
ステップS401において、放射線撮影システム100は、FPD102上に被写体103を配置しない状態で、ゲイン画像の撮影条件を決めるための放射線撮影(仮撮影)を実施する。
【0055】
ステップS402において、制御部105は、撮影された放射線画像における画素値の平均値を算出し、目標とする平均値に対する誤差を算出する。ここで、制御部105は、放射線画像の全体、または放射線画像の一部の注目領域(ROI:Region Of Interest)における、画素値の平均値を算出する。放射線画像の一部の注目領域には、例えば、放射線画像の中央部(中央ROI)が含まれる。
【0056】
事前に取得している撮影線量の異なる複数のゲイン画像が記憶部108に保持されている場合、目標とする平均値は、複数のゲイン画像の画素値(例えば、中央ROIにおける画素値)の平均値に基づいて設定される。
【0057】
図5に示すように、線形領域502では、線量に対する画像出力(画素の入出力特性)の変化が線形を示し、線量DS1と線量DS2との間で、画像出力は画像出力IM1から画像出力IM2に線形に変化する。線量DS1より線量の低い低線量領域501や線量DS2より線量の高い飽和線量領域503では、線量に対する画像出力の変化は線形領域502に比べて大きくなり、更新係数β
(x、y)による補正の誤差が大きくなる傾向を示す。
【0058】
このため、目標とする平均値を算出するためのゲイン画像として、複数の異なる線量のゲイン画像のなかでも、線形領域のゲイン画像を使用することが好ましい。
図5に示した例では、線量に対する画像出力の変化が線形を示す線形領域の下限の線量DS1(第1線量)から、線形領域の上限の線量DS2(第2線量)の範囲で撮影されたゲイン画像が線形領域のゲイン画像となり得る。この場合、線量DS1(第1線量)と線量DS2(第2線量)との間の線量DS3(第3線量)で撮影されたゲイン画像も線形領域のゲイン画像に含まれる。制御部105は、異なる線量で予め取得された複数のゲイン画像の画素値の平均値に基づいて、目標とする平均値を設定する。
【0059】
ここで、線量DS1、DS2、DS3で撮影された複数のゲイン画像をGain1、Gain2、Gain3とすると、制御部105は、線形領域の下限の線量DS1(第1線量)から、線形領域の上限の線量DS2(第2線量)の範囲で撮影された複数のゲイン画像(Gain1、Gain2、Gain3)に基づいて、目標とする平均値を算出する。複数のゲイン画像(Gain1、Gain2、Gain3)の画素値(中央ROIにおける画素値)の平均値を、それぞれIM1、IM2、IM3とした場合、制御部105は、複数のゲイン画像のうち、少なくともいずれか一つのゲイン画像の平均値に基づいて、目標とする平均値を設定する。例えば、複数のゲイン画像(Gain1、Gain2、Gain3)の全てを対象とする場合、制御部105は、IM1、IM2、IM3の平均値を目標とする平均値として設定する。
【0060】
なお、ゲインデータとして、ゲイン画像が記憶部108に保持されておらず、多項式補間に用いる各次数のゲイン係数a(x、y)、b(x、y)、c(x、y)のみが記憶部108に保持されている場合には、別途、目標とする平均値や目標とする線量(線量範囲)を記憶部108に保持しておけばよい。制御部105は、仮撮影された放射線画像における画素値の平均値と、目標とする平均値との誤差が一定値以下になるように線量を調整する。
【0061】
ステップS402の判定処理で、制御部105は、仮撮影(取得)された放射線画像における画素値の平均値(中央ROIの平均値)と、目標とする平均値との誤差(差分の絶対値)が一定値以下になっていない場合(S402-No)、誤差が小さくなるように管電流や放射線の照射時間等の照射条件の変更により線量を調整し、処理をステップS401に戻す。
【0062】
ステップS401において、放射線撮影システム100は、調整された線量で放射線撮影(仮撮影)を再度実施し、ステップS402の判定処理で、制御部105は誤差が一定値以下になっているか判定する。制御部105は、線量調整された条件に下に撮影された放射線画像における画素値の平均値(中央ROIの平均値)と、目標とする平均値との誤差が一定値以下になっていると判定する場合(S402-Yes)、ステップS403に処理を進める。
【0063】
なお、ステップS402の判定処理で、誤差を算出するための指標には、ステップS401で撮影された放射線画像における画素値の平均値の他、撮影時の線量を線量計測部(例えば、面積線量計(DAP)等)により計測した計測結果を用いることも可能である。線量計測部は照射された放射線の線量を計測し、制御部105は、入出力特性が線形になる領域の下限に対応した線量DS1(第1線量)から線形になる領域の上限に対応した線量DS2(第2線量)の範囲になるように線量を調整する。
【0064】
この場合、目標とする線量(線量範囲)として、例えば、
図5で示した、線形領域の下限の線量DS1(第1線量)から、線形領域の上限の線量DS2(第2線量)の範囲を記憶部108に保持しておき、制御部105は、面積線量計(DAP)による線量の測定結果と、目標とする線量(線量範囲)とを比較すればよい。
【0065】
制御部105は、線量の測定結果と目標とする線量との線量誤差(差分の絶対値)が一定値以下になっていない場合(S402-No)、線量誤差が小さくなるように管電流や放射線の照射時間等の照射条件の変更により線量を調整し、処理をステップS401に戻す。一方、S402の判定処理で、線量誤差が一定値以下になっている場合(S402-Yes)、ステップS403に処理を進める。ステップS403において、FPD102(画像取得部)は被写体103を配置しない状態で新たにゲイン画像を撮影(取得)する。FPD102(画像取得部)は、新たなゲイン画像を、入出力特性が線形になる領域(線形領域502)の線量で撮影(取得)する。
【0066】
ステップS403以降の処理(S403~S410)は第1実施形態と同様の処理となるので説明は省略する。
【0067】
本実施形態によれば、多点ゲイン補正に用いるゲイン画像を新たに撮影(取得)する前に、線量に対する画像出力の変化が線形領域の範囲内になるように、線量調整処理を行うことにより、更新係数βの算出で生じ得る誤差を低減することができ、精度の良い多点ゲイン補正を少ないメンテナンス工数で行うことが可能となる。
【0068】
(その他の実施形態)
開示の技術は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0069】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0070】
100:放射線撮影システム、101:放射線管、102:放射線検出部、
104:放射線発生装置、105:制御部、106:モニタ、107:操作部、108:記憶部、109:画像処理装置、110:ゲイン補正部、111:ゲイン画像生成部、112:更新部、120:画像処理装置