(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191919
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ボイラの制御装置、燃焼システム、ボイラの制御方法、及び、ボイラの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F23N 5/00 20060101AFI20221221BHJP
F23N 3/00 20060101ALI20221221BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F23N5/00 M
F23N3/00
F23C99/00 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100438
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 明紀
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊太
(72)【発明者】
【氏名】溝脇 豊
(72)【発明者】
【氏名】田口 睦明
(72)【発明者】
【氏名】平原 悠智
(72)【発明者】
【氏名】柳 智博
(72)【発明者】
【氏名】谷川 準
(72)【発明者】
【氏名】駒田 至秀
【テーマコード(参考)】
3K003
3K065
【Fターム(参考)】
3K003EA07
3K003FA05
3K003FA07
3K003FB04
3K003GA05
3K003JA07
3K003KA02
3K003KB01
3K003LA03
3K003NA02
3K065TA01
3K065TC01
3K065TC03
3K065TD08
3K065TE01
3K065TF02
3K065TN03
3K065TN07
3K065TN11
3K065TN13
(57)【要約】
【課題】燃焼調整の実施負担を抑えつつ、燃料性状が異なる燃料が用いられた場合においても排ガス中のNOx濃度を適切に制御する。
【解決手段】ボイラの制御装置は、排ガス中のNOx濃度の検出値とNOx濃度目標値との差分に基づいて、NOxマスタ信号を生成する。制御装置は、ボイラの制御裕度が十分な場合、NOxマスタ信号に基づいて燃焼装置を制御する。一方でボイラの制御裕度が十分でない場合、制御装置は、制御裕度が増加するように、ボイラの燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを調整するための補正信号に基づいて燃焼装置を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの排ガス中のNOx濃度を検出するNOx濃度センサと、
前記NOx濃度センサの検出値とNOx濃度目標値との差分に基づいてNOxマスタ信号を生成するように構成されたNOxマスタ信号生成部と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号を生成するように構成された補正信号生成部と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置を制御するように構成された制御部と、を備え、
前記補正信号生成部によって前記ボイラの制御裕度が十分でないと判定された場合、前記補正信号生成部は、前記ボイラの燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号を前記制御部に与える、ボイラの制御装置。
【請求項2】
前記補正信号生成部は、前記ボイラの制御裕度が十分でないと判定された場合、前記NOx濃度目標値を前記NOx濃度センサの検出値に置換する、請求項1に記載のボイラの制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ボイラの制御裕度が十分でないと判定された場合、前記NOxマスタ信号又は前記補正信号の大きさに基づいて、前記複数のパラメータのうちいずれか1つを前記燃焼制御パラメータとして選択するように構成される、請求項1又は2に記載のボイラの制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記NOxマスタ信号又は前記補正信号の変化に対して、前記複数のパラメータから、予め指定された優先順で前記燃焼制御パラメータを選択するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のボイラの制御装置。
【請求項5】
前記優先順は、前記排ガス中のCO濃度に対する感度に基づいて設定される、請求項4に記載のボイラの制御装置。
【請求項6】
前記NOx濃度センサの検出値が前記NOx濃度目標値より大きい場合、前記複数のパラメータは、前記ボイラのバーナノズル角度、アディショナル空気ノズル角度、及び、アディショナル空気ダンパ開度を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の石炭ボイラの制御装置。
【請求項7】
前記NOx濃度センサの検出値が前記NOx濃度目標値より小さい場合、前記複数のパラメータは、前記ボイラのバーナノズル角度、及び、アディショナル空気ノズル角度を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のボイラの制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記燃焼制御パラメータとして、前記ボイラに設けられた複数のアディショナル空気ダンパの開度を選択した場合に、前記複数のアディショナル空気ダンパのいずれかの開度が上限値又は下限値に到達したとき、前記NOxマスタ信号の変化に対して前記複数のアディショナル空気ダンパの開度が維持されるように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のボイラの制御装置。
【請求項9】
予め設定された許可条件が成立した場合に、前記NOxマスタ信号生成部に許可信号を送信するように構成された許可条件判定部を更に備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のボイラの制御装置。
【請求項10】
前記補正信号は、前記ボイラの蒸気温度に対する制御裕度に基づいて生成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のボイラの制御装置。
【請求項11】
前記ボイラは、石炭を主燃料とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のボイラの制御装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記制御装置によって制御されるように構成されたボイラと、
を備える、燃焼システム。
【請求項13】
ボイラの排ガスのNOx濃度を検出する工程と、
前記NOx濃度の検出値とNOx濃度目標値との差分に基づいて、NOxマスタ信号を生成する工程と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号を生成する工程と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置を制御する工程と、
前記ボイラの制御裕度が十分でないと判定された場合、前記ボイラの燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号に基づいて前記燃焼装置を制御する工程と、
を備える、ボイラの制御方法。
【請求項14】
コンピュータ装置を用いて、
ボイラの排ガスのNOx濃度を検出する工程と、
前記NOx濃度の検出値とNOx濃度目標値との差分に基づいて、NOxマスタ信号を生成する工程と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号を生成する工程と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置を制御する工程と、
前記ボイラの制御裕度が十分でないと判定された場合、前記ボイラの燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号に基づいて前記燃焼装置を制御する工程と、
を実行可能な、ボイラの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラの制御装置、燃焼システム、ボイラの制御方法、及び、ボイラの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラなどの大型のボイラは、中空形状をなして鉛直方向に設置される火炉を有し、この火炉壁に複数のバーナが火炉の周方向に沿って配設されている。また、大型のボイラは、火炉の鉛直方向上方に煙道が連結されており、この煙道に蒸気を生成するための熱交換器が配置されている。そして、バーナが火炉内に燃料と空気(酸化性ガス)との混合気を噴射することで火炎が形成され、燃焼ガスが生成されて煙道に流れる。燃焼ガスが流れる領域に熱交換器が設置され、熱交換器を構成する伝熱管内を流れる水や蒸気を加熱して過熱蒸気が生成される。
【0003】
通常、ボイラでは、その試運転時に燃料性状が異なる数種類の燃料を使用して燃焼調整を行う。そして、この燃焼調整を通して、排ガス中のNOx濃度や、燃焼後の灰に残留する未燃分量(灰中未燃分)などが規定値を達成するように燃焼制御パラメータを調整し、燃焼条件の決定がなされる。例えば、燃焼制御パラメータは燃焼用のバーナに供給する燃焼用空気流量を調整するダンパの開度やバーナノズル角度、NOx還元のためにアディショナル空気をボイラの内部に供給するアディショナル空気量を調整するダンパの開度、アディショナル空気ノズルの角度などである。そして、このような燃焼状態を制御するための機器(燃焼装置)の設定パラメータ(燃焼制御パラメータ)を、NOx濃度が例えば環境基準を満たす基準値以下、灰中未燃分が例えばコンクリートの材料などの有価物として利用できるのに必要な規定値以下(5%以下など)になるように決定する。
【0004】
例えば特許文献1では、燃焼によって生じる灰に含まれる未燃分、又は、排ガス中のNOx濃度の少なくとも一方である評価対象指標が所定のクライテリアを満たすように、燃焼制御パラメータの指定値を決定することで、当該燃料に対応する燃焼条件を精度よく迅速に決定できることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボイラでは、上述のように、試運転時に予め選定された特定の燃料性状を有する燃料を用いた燃焼調整を行うことで、その燃料性状に見合った燃焼条件(燃焼制御パラメータ)が決定される。そのため、燃焼調整を実施していない燃料(例えば過去に使用実績のない燃料)を使用してボイラの運転を行う場合には、燃焼制御パラメータが必ずしも適切に設定されるとは限らず、例えば排ガス中のNOx濃度が基準値を超えて上昇してしまう可能性がある。このようなNOx濃度の上昇を防止するためには、使用が想定される多くの種類の燃料に対して予め燃焼調整を行うことが理想ではあるが、燃焼調整には多大な時間を要するため現実的でない。
【0007】
また、使用燃料の種類によっては燃焼制御パラメータの調整だけでは排ガス中のNOx濃度を十分に低減することが困難な場合もある。この場合、燃焼調整によって排ガス中のNOx濃度を極力低く抑えつつ、更に、アンモニアを還元剤とする脱硝装置などを用いた排ガス中のNOxの低減処理が必要になるが、脱硝装置に供給されるアンモニアの使用量が増えると、ボイラの運転コストが増大してしまう。
【0008】
本開示の少なくとも一態様は上述の事情に鑑みなされたものであり、燃焼調整の実施負担を抑えつつ、燃料性状が異なる燃料を用いてボイラの運転を行う場合においても排ガス中のNOx濃度を適切に制御可能なボイラの制御装置、燃焼システム、ボイラの制御方法、及び、ボイラの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の少なくとも一態様に係るボイラの制御装置は、上記課題を解決するために、
ボイラの排ガス中のNOx濃度を検出するNOx濃度センサと、
前記NOx濃度センサの検出値とNOx濃度目標値との差分に基づいてNOxマスタ信号を生成するように構成されたNOxマスタ信号生成部と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号を生成するように構成された補正信号生成部と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記補正信号生成部によって前記ボイラの前記制御裕度が十分でないと判定された場合、前記補正信号生成部は、前記ボイラの前記燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号を前記制御部に与える。
【0010】
本開示の少なくとも一態様に係るボイラの制御方法は、上記課題を解決するために、
ボイラの排ガスのNOx濃度を検出する工程と、
前記NOx濃度の検出値とNOx濃度目標値との差分に基づいて、NOxマスタ信号を生成する工程と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号を生成する工程と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置を制御する工程と、
前記補正信号生成部によって前記ボイラの前記制御裕度が十分でないと判定された場合、前記補正信号生成部は、前記ボイラの前記燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号に基づいて前記燃焼装置を制御する工程と、
を備える。
【0011】
本開示の少なくとも一態様に係るボイラの制御プログラムは、上記課題を解決するために、
コンピュータ装置を用いて、
ボイラの排ガスのNOx濃度を検出する工程と、
前記NOx濃度の検出値とNOx濃度目標値との差分に基づいて、NOxマスタ信号を生成する工程と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号を生成する工程と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置を制御する工程と、
前記補正信号生成部によって前記ボイラの前記制御裕度が十分でないと判定された場合、前記補正信号生成部は、前記ボイラの前記燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号に基づいて前記燃焼装置を制御する工程と、
を実行可能である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の少なくとも一態様によれば、燃焼調整の実施負担を抑えつつ、燃料性状が異なる燃料を用いてボイラの運転を行う場合においても排ガス中のNOx濃度を適切に制御可能なボイラの制御装置、燃焼システム、ボイラの制御方法、及び、ボイラの制御プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係るボイラを備える燃焼システムの概略構成図である。
【
図3】
図2の制御装置によるボイラの制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図1の火炉のうちアディショナル空気ポートの設置領域における水平断面を模式的に示す概略断面図である。
【
図9】制御部の他の態様に係る制御フロー図である。
【
図10】
図2の許可条件判定部の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0015】
図1は、一実施形態に係る石炭を主燃料とするボイラ10を備える燃焼システム1の概略構成図である。
【0016】
本実施形態のボイラ10は、石炭(炭素含有固体燃料)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉燃料をバーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な石炭焚き(微粉炭焚き)ボイラである。
【0017】
本実施形態において、
図1に示すように、ボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と燃焼ガス通路13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11を構成する火炉壁101は、複数の伝熱管とこれらを接続するフィンとで構成され、微粉燃料の燃焼により発生した熱を伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換するとともに、火炉壁の温度上昇を抑制している。
【0018】
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁の下部側に設けられている。本実施形態では、燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数のバーナ21a、21b、21c、21d、21e、21f(以下、これらを総称する場合には「バーナ21」と称する)を有している。例えばバーナ21a、21b、21c、21d、21e、21fの各々は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されており、鉛直方向に沿って複数段(例えば、
図1では6段)にわたって配置されている。但し、火炉の形状やバーナの段数、一つの段におけるバーナの数、配置などはこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
バーナ21a、21b、21c、21d、21e、21f(以下、これらを総称する場合は、適宜、バーナ21と称する)は、微粉炭供給管23a、23b、23c、23d、23e、23fを介して複数の粉砕機(ミル)24a、24b、24c、24d、24e、24fに連結されている。この粉砕機24a、24b、24c、24d、24e、24fは、例えば、粉砕機のハウジング内に粉砕テーブル(図示省略)が駆動回転可能に支持され、この粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラ(図示省略)が粉砕テーブルの回転に連動回転可能に支持されて構成されている。石炭が、複数の粉砕ローラと粉砕テーブルとの間に投入されると、粉砕され、一次空気(搬送用ガス、酸化性ガス)により粉砕機のハウジング内の分級機(図示省略)に搬送されて、所定の粒径範囲内に分級された微粉燃料を、微粉炭供給管23a、23b、23c、23d、23e、23fを介してバーナ21に供給することができる。
【0020】
また、火炉11は、バーナ21の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト(風道)37の一端部が連結されている。空気ダクト37は、他端部に押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)38が設けられている。
【0021】
バーナ21の近傍には、補助バーナ22a、22b、22c(以下、これらを総称する場合には、適宜「補助バーナ22」と称する)が設けられている。補助バーナ22は、バーナ21の点火の際や、火炉11内のガス温度を、バーナ21での微粉燃料の燃焼が可能となる温度まで上昇させる際などに使用される。補助バーナ22に用いられる燃料には、バーナ21で使用される固体燃料よりも燃焼性が良い燃料が用いられ、例えば、軽油や重油等の液体燃料や、メタンガス等のガス燃料が用いられる。ボイラ10の起動時には、補助バーナ22の燃焼により火炉11内のガス温度が所定値を超えるとバーナ21を点火し、バーナ21の燃焼状態が安定した後に、補助バーナ22の消火を行う。
【0022】
燃焼ガス通路13は、
図1に示すように、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107が設けられており、火炉11で発生した燃焼ガスと各熱交換器の内部を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
【0023】
燃焼ガス通路13には、
図1に示すように、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出される煙道14が連結されている。煙道14は、空気ダクト37との間にエアヒータ(空気予熱器)42が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、煙道14を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、バーナ21に供給する燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)を昇温することができる。
【0024】
また、煙道14には、エアヒータ42より上流側の位置に脱硝装置43が設けられている。脱硝装置43は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を煙道14内に供給し、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物と還元剤との反応を、脱硝装置43内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。煙道14に連結されるガスダクト41は、エアヒータ42より下流側の位置に、電気集塵機などの集塵装置44、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)45、脱硫装置46などが設けられ、下流端部に煙突50が設けられている。
【0025】
一方、複数の粉砕機24a、24b、24c、24d、24e、24fが駆動すると、生成された微粉燃料が一次空気と共に微粉炭供給管23a、23b、23c、23d、23e、23fを通してバーナ21に供給される。また、煙道14から排出された排ガスとエアヒータ42で熱交換することで、加熱された燃焼用空気が、空気ダクト37から風箱36を介してバーナ21に供給される。バーナ21は、微粉燃料と一次空気とが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに微粉燃料混合気が着火することで火炎を形成する。火炉11内の下部で火炎が生じ、高温の燃焼ガスがこの火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路13に排出される。なお、酸化性ガスとして、本実施形態では空気を用いる。空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、燃料流量との適正化を図ることで使用可能になる。
【0026】
バーナ21の各々は、火炉壁101に対して所定の角度で設置され、火炉11に対する微粉燃料混合気の吹き込み角度を規定するバーナノズルを有する。バーナノズルの火炉壁101に対する鉛直断面での角度であるバーナノズル角度は、不図示のアクチュエータによって可変であり、初期状態では、予め設定された基準角度(例えば、火炉壁101に対して90度)に設定される。アクチュエータは、制御装置100からの制御信号に基づいてバーナノズル角度を調整可能である。バーナノズル角度は、水平断面での角度についても可変となるようにしてもよい。バーナノズルの角度を調整することで、後述する、火炉11の内部に形成される燃焼領域Aや還元領域Bの範囲を調整したり、各熱交換器における燃焼ガスと給水、蒸気との交換熱量を調整することが可能となる。
【0027】
また、風箱36には、各バーナ21に供給される燃焼用空気量を調整するための、風箱ダンパが各々設けられる。風箱ダンパは、その開度を調整することにより、各々のバーナ21へ供給される燃焼用空気量が可変に構成される。風箱ダンパの開度もまた、制御装置100からの制御信号に基づいて制御可能である。
【0028】
また、火炉壁101には、バーナ21の装着位置より上方に複数のアディショナル空気ポート39が設けられている(
図1では、代表的に1つのアディショナル空気ポート39のみが示されている)。アディショナル空気ポート39もまた、ボイラ10の燃焼装置12の一部を構成する。アディショナル空気ポート39に空気ダクト37から分岐したアディショナル空気ダクト40の端部が連結されている。従って、押込通風機38により送られた燃焼用空気を空気ダクト37から風箱36に供給し、この風箱36から各バーナ21に供給することができると共に、押込通風機38により送られた燃焼用追加空気(アディショナル空気、以下、AAと称する場合がある)を、アディショナル空気ダクト40からアディショナル空気ポート39に供給することができる。
【0029】
アディショナル空気ポート39の各々は、火炉壁101に対して所定の角度で設置され、火炉11に対するアディショナル空気の吹き込み角度を規定するアディショナル空気ノズルを有する。アディショナル空気ノズルの火炉壁101に対する鉛直断面での角度であるアディショナル空気ノズル角度は、不図示のアクチュエータによって可変であり、初期状態では、予め設定された基準角度(例えば、火炉壁101に対して90度)に設定される。アクチュエータは、制御装置100からの制御信号に基づいてアディショナル空気ノズル角度を調整可能である。アディショナル空気ノズル角度は、水平断面での角度についても可変となるようにしてもよい。
【0030】
また、アディショナル空気ダクト40には、各アディショナル空気ポート39に供給されるアディショナル空気量を調整するための、アディショナル空気ダンパが各々設けられる。アディショナル空気ダンパは、その開度を調整することにより、各々のアディショナル空気ポート39に供給されるアディショナル空気量が可変に構成される。アディショナル空気ダンパの開度もまた、制御装置100からの制御信号に基づいて制御可能である。
【0031】
火炉11は、下部の領域A(燃焼領域)にて、微粉燃料混合気と燃焼用空気とが燃焼して火炎が生じる。ここで火炉11は、空気の供給量が微粉炭の供給量に対して、理論空気量未満となるように設定されることで、内部が還元雰囲気に保持される。即ち、微粉炭の燃焼により発生した窒素酸化物(NOx)が火炉11の領域B(還元領域)で還元され、その後、アディショナル空気ポート39から燃焼用追加空気が追加供給されることで微粉炭の酸化燃焼が完結され、微粉炭の燃焼によるNOxの発生量が低減される。
【0032】
その後、燃焼ガスは、
図1に示すように、燃焼ガス通路13に配置される第2過熱器103、第3過熱器104、第1過熱器102、(以下単に過熱器と記載する場合もある)、第2再熱器106、第1再熱器105(以下単に再熱器と記載する場合もある)、節炭器107で熱交換した後、脱硝装置43により窒素酸化物が還元除去され、集塵装置44で粒子状物質が除去され、脱硫装置46にて硫黄酸化物が除去された後、煙突50から大気中に排出される。なお、各熱交換器は燃焼ガスの流れ方向に対して、必ずしも前記記載順に配置されなくともよい。また、各熱交換器で過熱された蒸気の温度は、例えば、各熱交換器に設置されたスプレイ弁(図示省略)により、蒸気に噴射して蒸気温度を低減させるためのスプレイ水の流量を調整して制御されてもよい。
【0033】
またボイラ10は、煙道14内を流通する排ガス中のNOx濃度を検出するためのNOx濃度センサ60を有する。例えば、NOx濃度センサ60は、節炭器107の下流側に配置される。NOx濃度センサ60の検出値は、電気的信号として制御装置100に送信されることで、制御装置100によって実施される各種制御に利用可能である。
【0034】
制御装置100は、ボイラ10のコントロールユニットであり、例えばコンピュータ等の電子演算装置を含むハードウェア構成を有する。具体的には、当該ハードウェア構成は、図示しないCPU(プロセッサ)、ROMやRAM等のメモリ、外部記憶装置等の記憶装置、及び、通信インターフェース等を含む。そして主記憶装置にロードされたプログラム(制御プログラム)の命令に従ってCPUが動作(データの演算等)することで、以下の各機能部を実現する。
【0035】
図2は
図1の制御装置100の概略構成図である。制御装置100は、NOx濃度検出値取得部112と、NOx濃度目標値設定部114と、NOxマスタ信号生成部116と、補正信号生成部117と、制御部118と、許可条件判定部120と、を備える。
【0036】
NOx濃度検出値取得部112は、ボイラ10の排ガス中のNOx濃度の検出値Cmを取得するように構成される。本実施形態では、ボイラ10の煙道14に設置されたNOx濃度センサ60(
図1を参照)によって、排ガス中のNOx濃度が検出され、NOx濃度検出値取得部112は、その検出結果を含む信号を受信することにより、NOx濃度の検出値Cmを取得する。
【0037】
NOx濃度目標値設定部114は、ボイラ10における標準的な排ガス中のNOx濃度を示す値として、例えば、燃焼調整において標準的な燃料性状を有する燃料が使用された際のNOx濃度検出値を、NOx濃度目標値Csに設定する。NOx濃度目標値Csは、後述するように燃焼装置12を制御することによりNOx濃度センサ60の検出値Cmを調整する際に、当該検出値Cmの制御目標値として設定される。
【0038】
尚、NOx濃度目標値Csとして、特定の燃焼性状を有する燃料を用いた燃焼調整によって得られたNOx濃度検出値を用いてもよい。この場合、燃焼調整に用いられた燃料の燃焼性状は、石炭燃料の燃料比(石炭燃料中の固定炭素/揮発分の比)によって特定されてもよい。一般的に石炭燃料の燃料比と排ガス中のNOx濃度には相関関係があり、例えば燃料比が高くなるほど、NOx濃度が高くなる傾向があることが知られている。また、NOx濃度目標値Csは、後述するように、可変に設定されてもよい。
【0039】
本実施形態では、NOx濃度目標値Csとして、燃料比が中程度(幅広い炭種を使用するボイラにおいて典型的には1.3~1.6程度)である中燃料比炭が使用された際のNOx濃度の目標値が設定される。これにより、ボイラ10に低燃料比炭や高燃料比炭が用いられた場合においても、後述の制御によって、新たな燃焼調整を行うことなく、NOx濃度を好適に低減することが可能となる。
【0040】
尚、上述の燃料比の高/中/低のクラス分けの目安となる燃料比範囲は、ボイラ10の設計段階において燃焼可能として設定された複数の石炭(使用候補炭)の燃料比の範囲に依存する相対的な指標である。例えば、使用候補炭の燃料比範囲が低燃料比側に偏っていた場合には、中燃料比炭として定義される燃料比範囲も低い側にシフトすることとなる。
【0041】
NOxマスタ信号生成部116は、NOx濃度検出値取得部112で取得されたNOx濃度の検出値Cmと、NOx濃度目標値設定部114で設定されたNOx濃度目標値Csとの差分ΔCに基づいて、NOxマスタ信号Sm1を生成するように構成される。より詳しくは、
図2に示すように、NOxマスタ信号生成部116は、減算器116aと、PI制御器116bとを含んで構成される。NOxマスタ信号生成部116に入力されたNOx濃度の検出値Cm及びNOx濃度目標値Csから、減算器116aによって差分ΔCが算出される。差分ΔCは更にPI制御部116bに入力されることにより、NOxマスタ信号生成部116に入力される差分ΔCに対応するNOxマスタ信号Sm1が生成される。
【0042】
制御部118は、NOxマスタ信号生成部116で生成されたNOxマスタ信号Sm1に基づいて、ボイラ10の燃焼装置12に関する燃焼制御パラメータPbcを制御するように構成される。これにより、排ガス中のNOx濃度の検出値Cmが、NOx濃度目標値設定部114で設定されたNOx濃度目標値Csに近づくように、燃焼装置12が制御される。
【0043】
補正信号生成部117では、ボイラ10の制御裕度を判定する。本実施形態では、ボイラ10で生成される主蒸気(過熱蒸気)の温度に対する制御裕度を判定するものとし、補正信号生成部117の動作について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は
図2の制御装置100の動作を示すフローチャートである。
図4は
図2の補正信号生成部117の制御フロー図である。
尚、ボイラ10の制御裕度を判定する制御対象としては、主蒸気温度に限定されず、燃焼により発生するNOx濃度と相関のある他の制御対象を選択してもよい。
【0044】
ボイラ10の蒸気温度に対する制御裕度は、ボイラ10における蒸気温度制御に関連する各パラメータに基づいて判定することができる。このような判定に用いられるパラメータは、例えば、蒸気温度に関するセンサ検出値であってもよいし、蒸気温度に影響を及ぼす構成要素に関する制御パラメータであってもよい。前者の場合、例えば、センサ検出値が予め規定された基準値を超える(又は下回る)場合に、蒸気温度の制御裕度が小さい(ボイラ10の安定運転を行うために十分ではない)と判定される。また後者の場合、例えば、制御パラメータが上限値又は下限値に対してある程度近づいていることで、制御に十分な余裕がない場合に、蒸気温度の制御裕度が小さいと判定される。
【0045】
図4には、補正信号生成部117における、ボイラ10の蒸気温度に対する制御裕度の判定の一態様として、次の3条件に基づく判定が例示的に示されている。
(条件1)NOx濃度センサ60の検出値Cmが基準上限値未満である(例えば、環境排出基準値に脱硝装置43における低減分を加味した数値として、NOx濃度センサ60の検出値Cmが140[ppm]未満)。
(条件2)ボイラ10の主蒸気温度を制御するスプレイ水の流量制御弁の開度が制御下限値付近である(例えば、スプレイ弁の開度が20%以下)。
(条件3)ボイラ10の主蒸気温度を制御するスプレイ水の流量制御弁の開度が制御上限値付近である(例えば、スプレイ弁の開度が80%以上)。
【0046】
図4では、条件1且つ条件2、または条件3のいずれかが成立する場合に、ボイラ10の蒸気温度に対する制御裕度が小さいと判定され、その他の場合に、ボイラ10の蒸気温度に対する制御裕度が十分であると判定される。蒸気温度に対する制御裕度が十分であると判定された場合、NOxマスタ信号生成部116のPI制御器116bには、上述したように、NOx濃度検出値取得部112で取得されたNOx濃度の検出値Cmと、NOx濃度目標値設定部114で設定されたNOx濃度目標値Csとの差分ΔCが入力され、PI制御器116bからは差分ΔCに対応するNOxマスタ信号Sm1が出力される。
【0047】
一方、ボイラ10の蒸気温度に対する制御裕度が小さいと判定された場合、補正信号生成部117は、NOxマスタ信号生成部116に入力されるNOx濃度目標値Csを、NOx濃度検出値取得部112で取得されたNOx濃度検出値Cmに置換する(詳細には、回路上では、CsにΔCを加算することで実現している)。その結果、NOxマスタ信号生成部116のPI制御器116bには、NOx濃度目標値CsとしてNOx濃度検出値Cmが入力されるため差分ΔCは0(ゼロ)となり、当該差分ΔCに基づいて生成されるNOxマスタ信号Sm1は現状値が保持(ホールド)される。また、補正信号生成部117は、補正信号Sm2を出力する。(なお、詳細には、制御裕度が十分と判断された場合にも、補正信号Sm2として現状値がホールドされているが、制御部118において燃焼制御パラメータPbcを変化させることはない。)このように、補正信号生成部117によって、有意な(燃焼制御パラメータPbcを変化させる)補正信号Sm2が出力される場合に、NOx濃度目標値Csを、NOx濃度検出値Cmに置換することで、差分ΔCがゼロ、即ち、NOxマスタ信号Sm1がホールドされて、NOxマスタ信号Sm1による制御と補正信号Sm2による制御が干渉し合うことを回避することができる。したがって、制御裕度が小さいと判定された場合は、実質的には補正信号Sm2に基づいた燃焼制御パラメータPbcの制御を行うことができる。
【0048】
図2に戻って、制御部118は、NOxマスタ信号生成部116で生成されたNOxマスタ信号Sm1及び補正信号生成部117で生成された補正信号Sm2に基づいて、ボイラ10の燃焼装置12に関する燃焼制御パラメータPbcを制御するように構成される。これにより、排ガス中のNOx濃度の検出値Cmが、NOx濃度目標値設定部114で設定されたNOx濃度目標値Csに近づくように、燃焼装置12が制御される。
【0049】
制御部118で制御対象となる燃焼制御パラメータPbcは、ボイラ10の燃焼装置12に関する複数のパラメータから選択されるように構成される。燃焼パラメータPbcとして選択されるパラメータは任意に選定することができるが、本実施形態では、前述した、バーナノズル角度、アディショナル空気ノズル角度及びアディショナル空気ダンパ開度が選定された場合について例示的に述べる。
【0050】
許可条件判定部120は、NOxマスタ信号Sm1による上記制御が許容される条件を規定する許可条件の成否を判定するための構成である。許可条件判定部120において許可条件が成立すると判定された場合には、許可条件判定部120からNOxマスタ信号生成部116のPI制御器116bに対して許可信号が送信されることにより、差分ΔCに応じたNOxマスタ信号Sm1出力される。一方で、許可条件が成立しないと判定された場合には、許可信号が送信されず、NOxマスタ信号Sm1が出力されない。このようなNOxマスタ信号Sm1による制御実施禁止に関する指令は任意のタイミングで割込み可能である。
【0051】
続いて
図3を参照して、上記構成を有する制御装置100によって実施されるボイラ10の制御方法について説明する。
【0052】
制御装置100では、まず補正信号生成部117において、ボイラ10の制御裕度が十分であるか否かを判定する(ステップS1)。本実施形態では、ボイラ10の蒸気温度に対する制御裕度が十分であるか否かの判定は、前述したように、条件1~3の成否に基づいて行われる。
【0053】
ボイラ10の制御裕度が十分であると判定された場合(ステップS1:YES)、NOxマスタ信号生成部116は、NOx濃度検出値取得部112で取得されたNOx濃度検出値Cmと、NOx濃度目標値設定部114で設定されたNOx濃度目標値Csとの差分ΔCに基づいて、NOxマスタ信号Sm1を生成する(ステップS2)。補正信号生成部117からは、補正信号Sm2として現状値がホールドされる(ステップS3)。制御部118は、ステップS2で生成されたNOxマスタ信号Sm1とステップS3で生成された補正信号Sm2(詳細には、現状値にホールドされたSm2)に基づいて、燃焼制御パラメータPbcを制御する(ステップS4)。
【0054】
一方、ボイラ10の制御裕度が十分ではないと判定された場合(ステップS1:NO)、補正信号生成部117は、補正信号Sm2を生成する(ステップS5)とともに、NOxマスタ信号Sm1として現状値がホールドされる(ステップS6)。さらに、NOx濃度目標値設定部114で設定されるNOx濃度目標値Csを、NOx検出値取得部112で取得された検出値Cmと同値になるように設定する(ステップS7)。このように、NOx濃度センサ60の検出値Cmと同値となるように、NOx濃度目標値Csを本来の目標値から一時的に書き換えることで、NOxマスタ信号生成部116において差分ΔCが0(ゼロ)となり、補正信号生成部117から出力される補正信号Sm2とNOxマスタ信号Sm1との干渉が回避される。
【0055】
制御部118では、前述の各ステップで生成されたNOxマスタ信号Sm1及び補正信号Sm2に基づいて、複数のパラメータのうち任意に選択された燃焼制御パラメータPbcを調整することにより、燃焼制御が行われる(ステップS4)。例えば、NOx濃度目標値Csが特定の燃料性状を有する燃料を用いた燃焼調整に基づいて設定された場合であっても、補正信号生成部117において、ボイラ10の制御裕度を好適に判定することで、燃焼調整時とは異なる燃料性状を有する燃料を用いた場合であっても、ボイラ10の制御安定性を損なうことなく、排ガス中のNOx濃度が環境基準を満たす基準値以下を維持するように燃焼装置12の制御を行うことができる。
【0056】
ここで、補正信号Sm2による制御の効果を説明するために、仮に上記構成において補正信号Sm2を用いずにNOxマスタ信号Sm1のみで燃焼制御を行う場合を検討する。この検討では、NOx濃度目標値Csは、ボイラ10で中燃比炭を使用した実績に基づき設定されるものとし、ボイラ10で高燃比炭を使用する場合を想定する。
【0057】
高燃比炭を使用する場合、含有する揮発分が少ないという高燃比炭の燃料性状から、ボイラで燃焼完結に要する時間が長くなり、その結果、バーナ21の近傍に形成される微粉炭火炎の火炎長が長くなる傾向がある。このため、火炉11における燃焼領域Aが拡大し、還元領域Bが縮小する。このため、火炉11内におけるNOxの還元効果が減少し、NOx濃度の検出値Cmは、中燃比炭使用時と比べて増加する。
また、燃焼排ガスと伝熱管内の水又は蒸気との交換熱量(吸熱量)に注目すると、火炎長が長くなることで、火炉壁101における吸熱量が相対的に減少し、火炉11の上部の熱交換器(例えば、過熱器102、103など)における吸熱量が相対的に増加する。このため、ボイラ10の蒸気温度は、中燃比炭使用時と比べて、増加傾向にあり、蒸気温度に対する制御裕度も小さく(例えば、過熱器スプレイ弁の開度が大きく)なる場合がある。
【0058】
このような状態で、NOxマスタ信号Sm1のみによる制御を行うと、NOx濃度目標値CsはNOx濃度検出値Cmより小さくなり、差分ΔC(=NOx濃度検出値Cm-NOx濃度目標値Cs)は正の値となり、NOxマスタ信号Sm1も正の値となる。NOxマスタ信号Sm1が正である場合は、後述する通り、(i)バーナノズル角度を減少させる操作、(ii)アディショナル空気ノズル角度を増加させる操作、(iii)アディショナル空気ダンパ開度を増加させる操作のいずれかが行われる。これらの操作のうち(i)及び(ii)はいずれも、還元領域Bを拡大することによりNOx濃度を低減する操作であり、(iii)は、燃焼用追加空気の量を増加して(相対的に燃焼領域Aへの空気供給量を低減して)、還元効果を増加させることによりNOx濃度を低減する操作である。蒸気温度に対しては、(i)の操作は蒸気温度を減少させ、(ii)の操作は蒸気温度を増加させ、(iii)の操作は蒸気温度を増加させる((ii)の操作よりも蒸気温度への影響は小さい)。
【0059】
ここで、NOxマスタ信号Sm1の大きさにより、例えば上記操作が(i)~(iii)の順番で選択された場合、NOx濃度を減少させる調整となるものの、蒸気温度に対しては増加させる調整となる。これは、(i)の操作による蒸気温度の減少量と(iii)の操作による蒸気温度の増加量は同程度であり相殺されるが、(ii)の操作は蒸気温度を増加への影響が大きいためである。前述の通り、高燃比炭使用時は、既に、蒸気温度に対する制御裕度が小さい状態であり、蒸気温度が増加への影響が大きい(ii)の操作を選択することは、ボイラ10の制御安定性を低下させる可能性がある。
一方、補正信号Sm2を用いた制御では、後述する通り、(ii)の操作は選択されない構成となっており、ボイラ10の制御安定性が低下することを抑制している。
【0060】
このように補正信号生成部117において、ボイラ10の制御裕度が十分であるか否かを判定し、その判定結果に基づき設定されたNOxマスタ信号Sm1及び補正信号Sm2によって、任意に選択された燃焼制御パラメータPbcの制御が行われる。すなわち、これにより、ボイラ10の制御安定性を損なうことなく、排ガス中のNOx濃度を低減し、より高度な環境性能を実現することができる。また、ボイラ10の燃焼制御だけでは系外へ排出されるNOx濃度を十分には低減できない場合に、排ガス処理に用いられる脱硝用アンモニアの使用量を減少することが可能となり、運転コストの低減を図ることができる。また、ボイラ10の制御裕度を確保し、制御状態の安定化を図ることができる。
【0061】
続いて
図4のステップS4において実施される、燃焼制御パラメータPbcの制御について説明する。
図5は制御部118の制御フロー図であり、
図6A~
図6Cは
図5の関数Fx1a、Fx1b、Fx1cをそれぞれ示す図であり、
図7A~
図7Cは
図5の関数Fx2a、Fx2b、Fx2cをそれぞれ示す図である。
【0062】
制御部118は、NOxマスタ信号Sm1と補正信号Sm2に基づいて、燃焼制御パラメータPbcを制御する。制御部118の制御対象となる燃焼制御パラメータPbcは、ボイラ10の燃焼装置12に関連する複数のパラメータから選択される。
【0063】
また制御部118は、NOxマスタ信号Sm1及び補正信号Sm2の大きさに応じて、選択された複数のパラメータのうち、いずれか1つのみを燃焼制御パラメータPbcとして選択してもよい。制御されるパラメータ数を1つに限定することにより、同時に複数のパラメータが制御されることで、石炭焚きボイラ10の燃焼バランスが崩れることを効果的に防止できる。
【0064】
また制御部118は、NOxマスタ信号Sm1及び蒸気温度補正信号Sm2の変化に対して、複数のパラメータから、予め指定された優先順で燃焼制御パラメータPbcを選択してもよい。このように燃焼制御パラメータPbcの選択が、予め指定された優先順に従って行われることで、石炭焚きボイラ10の燃焼バランスが崩れることを効果的に防止できる。この場合、優先順は、NOx濃度とは相反の関係にある排ガス中のCO濃度に対する感度に基づいて設定されてもよい。このような優先順に従って燃焼制御パラメータの選択が行われることで、NOx濃度の低減に対応して発生するCO濃度の増加を抑制し、石炭ボイラの燃焼バランスが崩れることを効果的に防止できる。
【0065】
ここで制御部118における制御内容を具体例に基づいて説明する。本実施形態では、燃焼制御パラメータPbcの選択候補であるボイラ10の燃焼装置12に関するパラメータとして、バーナノズル角度(以下、適宜、パラメータPaと称する)、アディショナル空気ノズル角度(以下、適宜、パラメータPbと称する)及びアディショナル空気ダンパ開度(以下、適宜、パラメータPcと称する)を採用した場合について、例示的に説明する。
【0066】
制御部118は、これらのパラメータPa、Pb、Pcのうち、いずれか1つが燃焼制御パラメータPbcとして選択されるように構成される。このような制御部118の機能を実現するために、制御部118は、
図5に示すように、関数部141~146を備える。関数部141、142、143には、NOxマスタ信号Sm1が並列に入力され、関数部144、145、146には補正信号Sm2が並列に入力される。
【0067】
関数部141は、
図5に示すように、NOxマスタ信号Sm1とパラメータPaの現状設定値に対して加算されるバイアス値ΔPa1との関係を規定する関数Fx1aを有する。
図6Aにおいて、縦軸は、パラメータPa(バーナノズル角度)の稼働範囲(例えば、水平方向に対してバーナノズル角度が-25度~25度)を、-100%~100%として、バイアス値ΔPa1の数値をパーセントで示している。関数Fx1aは、
図6Aに示すように、NOxマスタ信号Sm1の特定の範囲(nx4≦Sm1≦nx3、nx1≦Sm1≦px1、px3≦Sm1≦px4)では、Sm1に対してΔPa1が可変であり、その他の範囲ではSm1に対してΔPa1が一定(不変)になるように規定される。
【0068】
関数部142は、
図5に示すように、NOxマスタ信号Sm1とパラメータPbの現状設定値に対して加算されるバイアス値ΔPb1との関係を規定する関数Fx1bを有する。
図6Bにおいて、縦軸は、パラメータPb(アディショナル空気ノズル角度)の稼働範囲(例えば、水平方向に対してアディショナル空気ノズル角度が-25度~25度)を、-100%~100%として、バイアス値ΔPb1の数値をパーセントで示している。関数Fx1bは、
図6Bに示すように、NOxマスタ信号Sm1の特定の範囲(nx5≦Sm1≦nx4、nx2≦Sm1≦nx1、px1≦Sm1≦px2、px4≦Sm1≦px5)では、Sm1に対してΔPb1が可変であり、その他の範囲ではSm1に対してΔPb1が一定(不変)になるように規定される。
【0069】
関数部143は、
図5に示すように、NOxマスタ信号Sm1とパラメータPcの現状設定値に対して加算されるバイアス値ΔPc1との関係を規定する関数Fx1cを有する。
図6Cにおいて、縦軸は、パラメータPc(アディショナル空気ダンパ開度)の稼働範囲を0%~100%として、バイアス値ΔPc1の数値をパーセントで示している。関数Fx1cは、
図6Cに示すように、NOxマスタ信号Sm1の特定の範囲(px2≦Sm1≦px3、px5≦Sm1≦px6)では、Sm1に対してΔPc1が可変であり、その他の範囲ではSm1に対してΔPc1が一定(不変)になるように規定される。
【0070】
関数部144は、
図5に示すように、補正信号Sm2とバイアス値ΔPa1に対して加算されるバイアス値ΔPa2との関係を規定する関数Fx2aを有する。
図7Aにおいて、縦軸は、パラメータPa(バーナノズル角度)の稼働範囲(例えば、水平方向に対してバーナノズル角度が-25度~25度)を、-100%~100%として、バイアス値ΔPa2の数値をパーセントで示している。関数Fx2aは、
図7Aに示すように、補正信号Sm2の特定の範囲(nz3≦Sm2≦nz2、nz1≦Sm2≦pz1、pz2≦Sm2≦pz3)では、Sm2に対してΔPa2が可変であり、その他の範囲ではSm2に対してΔPa2が一定(不変)になるように規定される。
【0071】
関数部145は、
図5に示すように、補正信号Sm2とバイアス値ΔPb1に対して加算されるバイアス値ΔPb2との関係を規定する関数Fx2bを有する。
図7Bにおいて、縦軸は、パラメータPb(アディショナル空気ノズル角度)の稼働範囲(例えば、水平方向に対してアディショナル空気ノズル角度が-25度~25度)を、-100%~100%として、バイアス値ΔPb2の数値をパーセントで示している。関数Fx2bは、
図7Bに示すように、補正信号Sm2の全範囲において、Sm2に対してΔPb2が一定(不変)になるように規定される。
【0072】
関数部146は、
図5に示すように、補正信号Sm2とバイアス値ΔPc1に対して加算されるバイアス値ΔPc2との関係を規定する関数Fx2cを有する。
図7Cにおいて、縦軸は、パラメータPc(アディショナル空気ダンパ開度)の稼働範囲を、0%~100%として、バイアス値ΔPc2の数値をパーセントで示している。関数Fx2cは、
図7Cに示すように、補正信号Sm2の特定の範囲(pz1≦Sm2≦pz2、pz3≦Sm2≦pz4)では、Sm2に対してΔPc2が可変であり、その他の範囲ではSm2に対してΔPc2が一定(不変)になるように規定される。
【0073】
このように関数Fx1a、Fx1b、Fx1cでは、NOxマスタ信号Sm1に対して、関数Fx2a、Fx2b、Fx2cでは、補正信号Sm2に対して、可変となる範囲が互いに異なるように設定される。これにより、制御部118では、NOxマスタ信号Sm1または補正信号Sm2の変化に対して、パラメータPa、Pb、Pcのうちいずれか一つが燃焼制御パラメータPbcとして可変制御される。言い換えると制御部118では、NOxマスタ信号Sm1または補正信号Sm2の大きさに応じて、パラメータPa、Pb、Pcのうちいずれか一つが燃焼制御パラメータPbcとして選択される。
【0074】
また関数Fx1a、Fx1b、Fx1cでは、NOxマスタ信号Sm1が変化した際に、関数Fx2a、Fx2b、Fx2cでは、補正信号Sm2が変化した際に、パラメータPa、Pb、Pcが所定の優先順で選択されるように構成される。例えば、NOxマスタ信号Sm1が0から増加する場合、Pa、Pb、Pcの優先順で、1つずつ繰り返し選択される。このような優先順は、例えば、NOx濃度と負の相関(NOx濃度が減少するとCO濃度が増加する)を有する排ガス中のCO濃度に対応する各パラメータの感度に基づいて(感度が小さいものを優先して)設定される。このように設定することで、NOx濃度を低減することによって発生する、ボイラ10の他の運転パラメータ(上記例では排ガス中のCO濃度の増加)への影響を小さくすることができる。
【0075】
また関数Fx1a、Fx1b、Fx1cではNOxマスタ信号Sm1に対して、関数Fx2a、Fx2b、Fx2cでは補正信号Sm2に対して、可変となる範囲が複数区間用意され、且つ、各範囲におけるパラメータ(Pa、Pb、Pc)に対するバイアス値(ΔPa1、ΔPa2、ΔPb1、ΔPb2、ΔPc1、ΔPc2)の可変範囲が比較的小さくなるように制限されている。例えば、関数Fx1aでは、パラメータPaに対するバイアス値ΔPa1は、nx4≦Sm1≦nx3において40~20%の範囲で可変であり、nx1≦Sm1≦px1において20~-20%の範囲で可変であり、px3≦Sm1≦px4において-20~-40%の範囲で可変である。このように、各可変範囲を比較的小さく設定することで、NOxマスタ信号Sm1及び補正信号Sm2に対して、燃焼制御パラメータPbcが急激に変化することが防止される。その結果、ボイラ10の燃焼バランスが崩れず、安定した燃焼状態を維持しながら、排ガス中のNOx濃度を制御することが可能となる。
【0076】
ここで制御部118による上記制御の変形例について説明する。制御部118は、燃焼制御パラメータPbcとして、ボイラ10に設けられた複数のアディショナル空気ダンパの開度(すなわち前述のパラメータPb)を選択した場合に、複数のアディショナル空気ダンパのいずれかの開度が上限値又は下限値に到達したとき、NOxマスタ信号Sm1及び補正信号Sm2の変化に対して複数のアディショナル空気ダンパの開度が維持されるように構成されてもよい。
【0077】
図8は
図1の火炉11のうちアディショナル空気ポート39の設置領域における水平断面を模式的に示す概略断面図である。
図8に示すように、火炉11は矩形状の水平断面を有する。アディショナル空気ポート39は、当該水平断面において4つのコーナ部C1、C2、C3、C4にそれぞれ対応して配置された4つの上段側アディショナル空気ダンパ39a1、39a2、39a3、39a4と、その鉛直方向下方側に配置された下段側アディショナル空気ダンパ39b1、39b2、39b3、39b4とを含む。
尚、上段側アディショナル空気ダンパ39a1、39a2、39a3、39a4と、下段側アディショナル空気ダンパ39b1、39b2、39b3、39b4とは、鉛直方向上側から見た際に、互いに重なるように配置され、互いに同等の構成を有する。
【0078】
ボイラ10における一般的制御の一つとして、このような複数のアディショナル空気ダンパの開度に差を設けることがある。例えば
図8に示す実施形態では、コーナ部C1、C3に対応する上段側アディショナル空気ダンパ39a1、a3及び下段側アディショナル空気ダンパ39b1、b3の開度が50%に制御される場合、コーナ部C2、C4に対応する上段側アディショナル空気ダンパ39a2、a4及び下段側アディショナル空気ダンパ39b2、b4の開度が80%に制御されており、これらのアディショナル空気ダンパ間に30%の開度差が存在している。
【0079】
制御部118は、前述のようにNOxマスタ信号Sm1又は補正信号Sm2に基づいて、アディショナル空気ダンパ開度を燃焼制御パラメータPbcとして制御する場合、いずれかのアディショナル空気ダンパの開度が上限値(100%)又は下限値(0%)に到達した場合は、NOxマスタ信号Sm1又は補正信号Sm2の変化に対して、全てのアディショナル空気ダンパの開度が、その時点での開度に保持されるように制御する。すなわち、
図8の態様では、NOxマスタ信号Sm1又は補正信号Sm2が増加することによりコーナ部C2、C4に対応する上段側アディショナル空気ダンパ39a2、a4及び下段側アディショナル空気ダンパ39b2、b4の開度が上限値(100%)に到達した際に、コーナ部C1、C3に対応する上段側アディショナル空気ダンパ39a1、a3及び下段側アディショナル空気ダンパ39b1、b3の開度は70%(=100%-30%)であるため可動範囲が残されている。このような場合、更にNOxマスタ信号Sm1または補正信号Sm2が増加したとしてもコーナ部C1、C3に対応する上段側アディショナル空気ダンパ39a1、a3及び下段側アディショナル空気ダンパ39b1、b3の開度もまた70%に維持される。
【0080】
このような制御部118における機能は、以下の構成によって実現可能である。
図9は制御部118の他の態様に係る制御フロー図である。
【0081】
図9では、パラメータPc(アディショナル空気ダンパ開度)が燃焼制御パラメータPbcとして選択された場合に、上段側アディショナル空気ダンパ39a1、39a2、39a3、39a4及び下段側アディショナル空気ダンパ39b1、39b2、39b3、39b4のいずれかの開度が上限値に到達したか否かを判定する第1保持判定部152と、上段側アディショナル空気ダンパ39a1、39a2、39a3、39a4及び下段側アディショナル空気ダンパ39b1、39b2、39b3、39b4のいずれかの開度が下限値に到達したか否かを判定する第2保持判定部154とが設けられる。
【0082】
第1保持判定部152では、上段側アディショナル空気ダンパ39a1、39a2、39a3、39a4のいずれかの開度が上限値に到達したか否かを判定する条件4と、下段側アディショナル空気ダンパ39b1、39b2、39b3、39b4のいずれかの開度が上限値に到達したか否かを判定する条件5とのいずれかが成立した場合に、制御対象の燃焼制御パラメータPbc(この場合、パラメータPc)が保持されることで、NOxマスタ信号Sm1または補正信号Sm2が変化しても、パラメータPcは変化しない。
【0083】
第2保持判定部154では、上段側アディショナル空気ダンパ39a1、39a2、39a3、39a4のいずれかの開度が下限値に到達したか否かを判定する条件6と、下段側アディショナル空気ダンパ39b1、39b2、39b3、39b4のいずれかの開度が下限値に到達したか否かを判定する条件7とのいずれかが成立した場合に、制御対象の燃焼制御パラメータPbc(この場合、パラメータPc)が保持されることで、NOxマスタ信号Sm1又は補正信号Sm2が変化しても、パラメータPcは変化しない。
【0084】
このように、ボイラ10が有する複数のアディショナル空気ダンパのいずれかの開度が、上限値又は下限値に到達したときには、その後のNOxマスタ信号Sm1又は補正信号Sm2が変化した場合にも、それぞれの開度が維持されるように制御される。これにより、例えば、複数のアディショナル空気ダンパの開度が所定のバランスで(開度差を持って)制御されている場合に、いずれかのアディショナル空気ダンパの開度が上限値又は下限値に到達した際においても、当該バランス(開度差)が維持され、ボイラ10における燃焼バランスが崩れることを好適に防止できる。
【0085】
続いて
図10を参照して、許可条件判定部120の詳細構成について説明する。
図10は
図2の許可条件判定部120の制御フロー図である。
【0086】
許可条件判定部120は、NOxマスタ信号生成部116(PI制御器116b)に対して、上記制御の実施を許可するための許可信号を出力する機能を有する。許可条件は、様々な観点から規定することができるが、本実施形態では、許可条件判定部120における判定制御の一態様として、次の6条件に基づく判定が例示的に示されている。
(条件8)ボイラ10の負荷が基準値(例えば40%)以上であるか。
(条件9)バーナ21のいずれかが点火状態にあるか。
(条件10)補助バーナ22が消火状態にあるか。
(条件11)ボイラ10の運転状態が負荷変化中(過渡状態)であるか。
(条件12)バーナ21が点火操作中又は消火操作中であるか。
(条件13)緊急運転状態(例えば、ボイラ10の負荷を急減させるファストカットバック(FCB)運転などの緊急制御中)であるか。
【0087】
条件8~条件13は、ボイラ10が燃料を定常燃焼させる安定した運転状態にあることを判定するための条件である。条件8~条件10では各条件の全てが成立した場合にON信号が出力され、当該ON信号は演算器146によって所定期間(例えば600sec)待機した後、出力される。
【0088】
条件11は、ボイラ10が負荷変化を伴う過渡状態にあるか否かを判定するための条件である。条件11では、過渡状態でない場合に条件11から出力されるOFF信号が演算器147によって所定期間(例えば300sec)継続して確認された場合に、演算器148によって反転されることでON信号が出力されるように構成される。
【0089】
条件12は、ボイラ10の起動時又は停止時においてバーナ21が点火操作中又は消火操作中であるか否かを判定するための条件である。条件12では、バーナ21が点火操作中又は消火操作中でない場合に条件12から出力されるOFF信号が演算器149によって所定期間(例えば300sec)継続して確認された場合に、演算器150によって反転されることでON信号が出力されるように構成される。
【0090】
条件13は、ボイラ10が緊急運転状態にあるか否かを判定するための条件である。ボイラ10では、現状の運転状態を計測した場合に、運転に支障が生じる、又は、生じる可能性がある場合に緊急対応を行うための緊急運転が行われることがある。このような緊急運転は、例えば手動的又は自動的に実施されることでボイラ負荷を急減することにより行われる。条件13では、このような緊急運転状態にない場合にOFF信号が出力され、当該OFF信号は演算器151によって反転されることにより、ON信号が出力される。
【0091】
このように許可条件判定部120では、上記各条件に起因するON信号が全て得られたことを条件に、NOxマスタ信号生成部116(PI制御器116b)に対して許可信号を送信する。これにより、許可条件が成立した場合にPI制御器116bに対して制御許可を行うことでNOxマスタ信号Sm1が生成され、ボイラ10の運転状態を健全に確保しつつ、NOx濃度を好適に抑制可能な燃焼制御が可能となる。
【0092】
以上説明したように、燃焼システム1では、制御装置100によってボイラ10を制御することで、多くの種類の燃料について燃焼調整を行うことなく、排ガス中のNOx濃度を好適に抑制することができる。
【0093】
また、上述した実施形態では、本発明のボイラを石炭焚きボイラとしたが、燃料としては、バイオマス燃料や石油精製時に発生する石油コークス(PC:Petroleum Coke)、石油残渣などの固体燃料を使用するボイラであってもよい。また、燃料として固体燃料に限らず、重油、軽油、重質油などの石油類や工場廃液などの液体燃料、天然ガスや副生ガスなどの気体燃料、さらに水素やアンモニアなどの脱炭素燃料も使用することができ、これらの燃料を組み合わせて使用する混焼焚きボイラにも適用することができる。
【0094】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0095】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0096】
(1)一態様に係るボイラの制御装置は、
ボイラ(例えば上記実施形態のボイラ10)の排ガス中のNOx濃度を検出するNOx濃度センサ(例えば上記実施形態のNOx濃度センサ60)と、
前記NOx濃度センサの検出値(例えば上記実施形態のNOx濃度の検出値Cm)とNOx濃度目標値(例えば上記実施形態の差分ΔC)との差分に基づいてNOxマスタ信号(例えば上記実施形態のNOxマスタ信号Sm1)を生成するように構成されたNOxマスタ信号生成部(例えば上記実施形態のNOxマスタ信号生成部116)と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号(例えば上記実施形態の補正信号Sm2)を生成するように構成された補正信号生成部と(例えば上記実施形態の補正信号生成部117)、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置(例えば上記実施形態の燃焼装置12)を制御するように構成された制御部(例えば上記実施形態の制御部118)と、
を備え、
前記補正信号生成部によって前記ボイラの前記制御裕度が十分でないと判定された場合、前記補正信号生成部は、前記ボイラの前記燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータ(例えば上記実施形態の燃焼制御パラメータPbc)を前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号を前記制御部に与える。
【0097】
上記(1)の態様によれば、ボイラの制御裕度に応じて、NOx濃度センサの検出値とNOx濃度設定値との差分に対応したNOxマスタ信号、もしくは制御裕度を増加させるための補正信号に基づいて、複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを調整することにより、ボイラの燃焼制御が行われる。特に制御裕度が十分でないと判定された場合に、NOxマスタ信号によるNOx低減操作に先立ち、補正信号に基づいて制御裕度を増加させる燃焼制御を行うことで、ボイラの制御性を損なうことなく、NOx濃度センサの検出値をNOx濃度目標値に近づけることができる。
このような燃焼制御によれば、例えば、特定の性状を有する燃料を用いた燃焼調整の結果に基づいて設定されたNOx濃度設定値に対して、燃焼調整時とは異なる性状を有する燃料を用いる場合であっても、ボイラの制御性を損なうことなく、排ガス中のNOx濃度がNOx濃度目標値に近づくように燃焼装置の制御を行うことができる。
【0098】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記補正信号生成部は、前記ボイラの制御裕度が十分でないと判定された場合、前記NOx濃度目標値を前記NOx濃度センサの検出値に置換する。
【0099】
上記(2)の態様によれば、補正信号に基づいて燃焼制御が行われる場合、NOx濃度目標値にNOx濃度センサの検出値を置換することで、NOx濃度センサの検出値とNOx濃度目標値との差分を実質的に0(ゼロ)にすることで、NOxマスタ信号と補正信号とが競合して制御に相互干渉が生じることを好適に防止できる。
【0100】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記制御部は、前記ボイラの制御裕度が十分でないと判定された場合、前記NOxマスタ信号又は前記補正信号の大きさに基づいて、前記複数のパラメータのうちいずれか1つを前記燃焼制御パラメータとして選択するように構成される。
【0101】
上記(3)の態様によれば、燃焼制御パラメータとして選択されるパラメータ数を1つにすることにより、同時に複数のパラメータが制御されることで、ボイラの燃焼バランスが崩れることを効果的に防止できる。
【0102】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記制御部は、前記NOxマスタ信号又は前記補正信号の変化に対して、前記複数のパラメータから、予め指定された優先順で前記燃焼制御パラメータを選択するように構成される。
【0103】
上記(4)の態様によれば、NOxマスタ信号又は前記補正信号に基づく燃焼制御パラメータの選択が、予め指定された優先順に従って行われることで、ボイラの燃焼バランスが崩れることを効果的に防止できる。
【0104】
(5)他の態様では、上記(4)の態様において、
前記優先順は、前記排ガス中のCO濃度に対する感度に基づいて設定される。
【0105】
上記(5)の態様によれば、排ガス中のCO濃度に対する感度に基づいて設定された優先順に従って燃焼制御パラメータの選択が行われることで、NOx濃度の低減に対応してCO濃度が増加することを抑制し、ボイラの燃焼バランスが崩れることを効果的に防止できる。
【0106】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記NOx濃度センサの検出値が前記NOx濃度目標値より大きい場合、前記複数のパラメータは、前記ボイラのバーナノズル角度(例えば上記実施形態のバーナ21のノズル角度)、アディショナル空気ノズル角度(例えば上記実施形態のアディショナル空気ポート39のノズル角度)、及び、アディショナル空気ダンパ開度(例えば上記実施形態のアディショナル空気ポート39のダンパ開度)を含む。
【0107】
上記(6)の態様によれば、NOx濃度センサの検出値がNOx濃度目標値より大きい場合、これらのパラメータから燃焼制御パラメータを選択することにより、燃焼状態のバランスを確保しながら、燃焼装置の制御によって排ガス中のNOx濃度を好適に制御できる。
【0108】
(7)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記NOx濃度センサの検出値が前記NOx濃度目標値より小さい場合、前記複数のパラメータは、前記ボイラのバーナノズル角度(例えば上記実施形態のバーナ21のノズル角度)、及び、アディショナル空気ダンパ開度(例えば上記実施形態のアディショナル空気ポート39のダンパ開度)を含む。
【0109】
上記(7)の態様によれば、NOx濃度センサの検出値がNOx濃度目標値より小さい場合、これらのパラメータから燃焼制御パラメータを選択することにより、燃焼状態のバランスを確保しながら、燃焼装置の制御によって排ガス中のNOx濃度を好適に制御できる。
【0110】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記制御部は、前記燃焼制御パラメータとして、前記ボイラに設けられた複数のアディショナル空気ダンパの開度を選択した場合に、前記複数のアディショナル空気ダンパのいずれかの開度が上限値又は下限値に到達したとき、前記NOxマスタ信号の変化に対して前記複数のアディショナル空気ダンパの開度が維持されるように構成される。
【0111】
上記(8)の態様によれば、ボイラが有する複数のアディショナル空気ダンパのいずれかの開度が上限値又は下限値に到達したときには、その後のNOxマスタ信号の変化に対して、それぞれの開度が維持されるように制御される。これにより、例えば、複数のアディショナル空気ダンパの開度が所定のバランスで制御されている場合に、いずれかのアディショナル空気ダンパの開度が上限値又は下限値に到達した際においても、当該バランスが維持され、燃焼バランスが崩れることを好適に防止できる。
【0112】
(9)他の態様では、上記(1)から(8)のいずれか一態様において、
予め設定された許可条件が成立した場合に、前記制御部に許可信号を送信するように構成された許可条件判定部(例えば上記実施形態の許可条件判定部120)を更に備える。
【0113】
上記(9)の態様によれば、許可条件が成立した場合に上記制御を実施することで、ボイラの運転状態を健全に確保しつつ、NOx濃度を好適に抑制可能な燃焼制御が可能となる。
【0114】
(10)他の態様では、上記(1)から(9)のいずれか一態様において、
前記補正信号は、前記ボイラの蒸気温度に対する制御裕度に基づいて生成される。
【0115】
上記(10)の態様によれば、ボイラの蒸気温度に対する制御裕度に基づいて、補正信号が生成される。このような補正信号を用いることで、ボイラの蒸気温度に対する制御裕度を確保しながら、ボイラの制御性を損なうことなく、NOx濃度センサの検出値をNOx濃度目標値に近づけることができる。
【0116】
(11)他の態様では、上記(1)から(10)のいずれか一態様において、
前記ボイラは、石炭を主燃料とする。
【0117】
上記(11)の態様によれば、燃料性状の変動幅が大きく、また燃料性状がボイラ10の燃焼状態に与える影響が大きい燃料である石炭を主燃料とするボイラ、いわゆる石炭焚きボイラにおいて好適に燃焼制御が可能となる。
【0118】
(12)一態様に係る燃焼システムは、
上記(1)から(11)のいずれか一態様の制御装置と、
前記制御装置によって制御されるように構成されたボイラと、
を備える。
【0119】
上記(12)の態様によれば、多くの種類の燃料について燃焼調整を行うことなく、ボイラからの排ガス中のNOx濃度を好適に抑制可能な燃焼システムを実現できる。
【0120】
(13)一態様に係るボイラの制御方法は、
ボイラの排ガスのNOx濃度を検出する工程と、
前記NOx濃度の検出値(例えば上記実施形態のNOx濃度の検出値Cm)とNOx濃度目標値(例えば上記実施形態のNOx濃度目標値Cs)との差分(例えば上記実施形態の差分ΔC)に基づいて、NOxマスタ信号(例えば上記実施形態のNOxマスタ信号Sm1)を生成する工程と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号(例えば上記実施形態の補正信号Sm2)を生成する工程と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置(例えば上記実施形態の燃焼装置12)を制御する工程と、
前記補正信号生成部によって前記ボイラの前記制御裕度が十分でないと判定された場合、前記補正信号生成部は、前記ボイラの前記燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータ(例えば上記実施形態の燃焼制御パラメータPbc)を前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号に基づいて前記燃焼装置を制御する工程と、
を備える。
【0121】
上記(13)の態様によれば、ボイラの制御裕度に応じて、NOx濃度センサの検出値とNOx濃度設定値との差分に対応したNOxマスタ信号、もしくは制御裕度を増加させるための補正信号に基づいて、複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを調整することにより、ボイラの燃焼制御が行われる。特に制御裕度が十分でないと判定された場合に、NOxマスタ信号によるNOx低減操作に先立ち、補正信号に基づいて制御裕度を増加させる燃焼制御を行うことで、ボイラの制御性を損なうことなく、NOx濃度センサの検出値をNOx濃度目標値に近づけることができる。
このような燃焼制御によれば、例えば、特定の性状を有する燃料を用いた燃焼調整の結果に基づいて設定されたNOx濃度設定値に対して、燃焼調整時とは異なる性状を有する燃料を用いる場合であっても、ボイラの制御性を損なうことなく、排ガス中のNOx濃度がNOx濃度目標値に近づくように燃焼装置の制御を行うことができる。
【0122】
(14)一態様に係るボイラの制御プログラムは、
コンピュータ装置を用いて、
ボイラの排ガスのNOx濃度を検出する工程と、
前記NOx濃度の検出値(例えば上記実施形態のNOx濃度の検出値Cm)とNOx濃度目標値(例えば上記実施形態のNOx濃度目標値Cs)との差分(例えば上記実施形態の差分ΔC)に基づいて、NOxマスタ信号(例えば上記実施形態のNOxマスタ信号Sm1)を生成する工程と、
前記ボイラの制御裕度に基づいて補正信号(例えば上記実施形態の補正信号Sm2)を生成する工程と、
前記NOxマスタ信号及び前記補正信号に基づいて前記ボイラの燃焼装置(例えば上記実施形態の燃焼装置12)を制御する工程と、
前記補正信号生成部によって前記ボイラの前記制御裕度が十分でないと判定された場合、前記補正信号生成部は、前記ボイラの前記燃焼装置に関する複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータ(例えば上記実施形態の燃焼制御パラメータPbc)を前記制御裕度が増加するように調整するための前記補正信号に基づいて前記燃焼装置を制御する工程と、
を実行可能である。
【0123】
上記(14)の態様によれば、ボイラの制御裕度に応じて、NOx濃度センサの検出値とNOx濃度設定値との差分に対応したNOxマスタ信号、もしくは制御裕度を増加させるための補正信号に基づいて、複数のパラメータから選択された燃焼制御パラメータを調整することにより、ボイラの燃焼制御が行われる。特に制御裕度が十分でないと判定された場合に、NOxマスタ信号によるNOx低減操作に先立ち、補正信号に基づいて制御裕度を増加させる燃焼制御を行うことで、ボイラの制御性を損なうことなく、NOx濃度センサの検出値をNOx濃度目標値に近づけることができる。このような燃焼制御によれば、例えば、特定の性状を有する燃料を用いた燃焼調整の結果に基づいて設定されたNOx濃度設定値に対して、燃焼調整時とは異なる性状を有する燃料を用いる場合であっても、ボイラの制御性を損なうことなく、排ガス中のNOx濃度がNOx濃度目標値に近づくように燃焼装置の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0124】
1 燃焼システム(ボイラシステム)
10 ボイラ
11 火炉
12 燃焼装置
13 燃焼ガス通路
14 煙道
21a~21f バーナ
22a~22c 補助バーナ
23a~23f 微粉炭供給管
24a~24f 粉砕機(ミル)
36 風箱
37 空気ダクト(風道)
38 押込通風機(FDF)
39 アディショナル空気ポート
40 アディショナル空気ダクト
41 ガスダクト
42 エアヒータ(空気予熱器)
43 脱硝装置
44 集塵装置
45 誘引通風機(IDF)
46 脱硫装置
60 濃度センサ
100 制御装置
101 火炉壁
102 第1過熱器(熱交換器)
103 第2過熱器(熱交換器)
104 第3過熱器(熱交換器)
105 第1再熱器(熱交換器)
106 第2再熱器(熱交換器)
107 節炭器(熱交換器)
112 NOx濃度検出値取得部
114 NOx濃度目標値設定部
116 NOxマスタ信号生成部
117 補正信号生成部
118 制御部
120 許可条件判定部
141~146 関数部
152 第1保持判定部
154 第2保持判定部