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特開2022-191926ウインドレギュレータ及び車両用ドア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191926
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ及び車両用ドア
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20221221BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20221221BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
E05F11/48 C
E05F15/689
B60J1/17 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100451
(22)【出願日】2021-06-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 秀聡
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA17
3D127AA13
3D127CB05
3D127DF03
3D127DF09
(57)【要約】
【課題】ワイヤに塗布されたグリスが、プーリ周りに蓄積するのを抑制することができるウインドレギュレータ及び車両用ドアを提供する。
【解決手段】車両の窓ガラスWを支持するキャリアプレート3と、表面にグリスGが塗布されると共にキャリアプレート3を牽引する上昇側ワイヤ4と、上昇側ワイヤ4を駆動する駆動部6と、上昇側ワイヤ4が巻き掛けられ、上昇側ワイヤ4を方向転換するプーリ31と、プーリ31に向かって移動する上昇側ワイヤ4のグリスGを捕集する右捕集部43及び左捕集部44と、を備えた。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
表面にグリスが塗布されると共に前記キャリアプレートを牽引するワイヤと、
前記ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ワイヤが巻き掛けられ、前記ワイヤを方向転換するプーリと、
前記プーリに向かって移動する前記ワイヤの前記グリスを捕集するグリス捕集部と、を備えたことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記グリス捕集部は、前記プーリに向かって移動する前記ワイヤに摺接して、前記グリスを捕集することを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記グリス捕集部は、
前記ワイヤに摺接して前記グリスを捕集する摺接部と、
捕集した前記グリスを貯留する貯留部と、を有することを特徴とする請求項2に記載のウインドレギュレータ。
【請求項4】
前記グリス捕集部は、前記プーリから繰り出された前記ワイヤの周面における、前記プーリに接触する面に摺接することを特徴とする請求項2又は3に記載のウインドレギュレータ。
【請求項5】
前記グリス捕集部は、前記プーリから他の部材に向かって移動する前記ワイヤに対し、捕集した前記グリスを塗布することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウインドレギュレータ。
【請求項6】
前記プーリの第1のワイヤ繰出し位置に向かって移動する前記ワイヤの前記グリスを捕集する第1の前記グリス捕集部と、
前記プーリの第2のワイヤ繰出し位置に向かって移動する前記ワイヤの前記グリスを捕集する第2の前記グリス捕集部と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のウインドレギュレータ。
【請求項7】
車両の窓ガラスと、
前記窓ガラスを格納する格納部、前記格納部の上方に配設されたドアサッシ、及び前記格納部の上端部に配設され、前記窓ガラスに摺接するアウターウェザーストリップを有するドア本体と、
前記窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータと、を備え、
前記ウインドレギュレータは、
前記窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
表面にグリスが塗布されると共に前記キャリアプレートを牽引するワイヤと、
前記ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ワイヤが巻き掛けられ、前記ワイヤを方向転換するプーリと、
前記プーリに向かって移動する前記ワイヤの前記グリスを捕集するグリス捕集部と、を備えたことを特徴とする車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータ及び車両用ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤ駆動式のウインドレギュレータとして、例えば、グリスが塗布されたワイヤを用いるウインドレギュレータがある(特許文献1参照)。このウインドレギュレータは、窓ガラス(ドアガラス)を支持するキャリアプレート(可動ブラケット)と、キャリアプレートを摺動案内するガイドレールと、一対のプーリに掛けて張設されたワイヤと、ワイヤを走行させることによりキャリアプレートをガイドレールに沿って移動させる駆動ドラムと、を含んでいる。このウインドレギュレータでは、ガイドレールの、ワイヤが接近する部分に線状溝を設け、この線状溝にグリスを付与しておくことで、ワイヤにグリスを塗布している。このようにグリスが塗布されたワイヤを用いることで、ワイヤがガイドレール等の他の部材に接触したときに生じる異音の発生や、ワイヤ及び当該他の部材の摩耗等を抑制することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実全平02-089184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のウインドレギュレータでは、ワイヤに塗布されたグリスが、窓ガラスの昇降動作に伴って、プーリ周りに蓄積してしまうという問題が生じた。プーリ周りにグリスが蓄積すると、プーリの回転に伴うプーリからのワイヤの繰出しによって、蓄積されたグリスが引き出されて、プーリとプーリから繰り出されたワイヤとの間にグリスの膜が張る現象が生じる。プーリとワイヤとの間にグリスの膜が張った状態で、更にワイヤが繰り出されていくと、グリスの膜が薄くなっていき、最終的にグリスの膜が破れてグリスが糸状になる。この糸状になったグリスが、静電気等により窓ガラスに引き寄せられて、窓ガラスに付着してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、ワイヤに塗布されたグリスが、プーリ周りに蓄積するのを抑制することができるウインドレギュレータ及び車両用ドアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、表面にグリスが塗布されると共に前記キャリアプレートを牽引するワイヤと、前記ワイヤを駆動する駆動部と、前記ワイヤが巻き掛けられ、前記ワイヤを方向転換するプーリと、前記プーリに向かって移動する前記ワイヤの前記グリスを捕集するグリス捕集部と、を備えたことを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、車両の窓ガラスと、前記窓ガラスを格納する格納部、前記格納部の上方に配設されたドアサッシ、及び前記格納部の上端部に配設され、前記窓ガラスに摺接するアウターウェザーストリップを有するドア本体と、前記窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータと、を備え、前記ウインドレギュレータは、前記窓ガラスを支持するキャリアプレートと、表面にグリスが塗布されると共に前記キャリアプレートを牽引するワイヤと、前記ワイヤを駆動する駆動部と、前記ワイヤが巻き掛けられ、前記ワイヤを方向転換するプーリと、前記プーリに向かって移動する前記ワイヤの前記グリスを捕集するグリス捕集部と、を備えたことを特徴とする車両用ドアを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウインドレギュレータ及び車両用ドアは、ワイヤに塗布されたグリスが、プーリ周りに蓄積するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ、及び、ウインドレギュレータが設けられた車両用ドアを示した全体概略図である。
図2】車両用ドアの各部品の位置関係を示した図1のA‐A´線断面図である。
図3】(a)は、窓ガラスの全閉状態におけるウインドレギュレータを示した正面図であり、(b)は、窓ガラスの全開状態におけるウインドレギュレータを示した正面図である。
図4】(a)は、プーリアッセンブリ周りを示した斜視図であり、(b)は、プーリアッセンブリ周りを示した正面図であり、(c)は、プーリアッセンブリ周りを示した左側面図である。
図5】グリス捕集部材を示した正面図(a)、右側面図(b)、左側面図(c)及び底面図(d)である。
図6】(a)は、グリス捕集部材を示した図5(d)のB-B´線断面図であり、(b)は、グリス捕集部材を示した図5(d)のC-C´線断面図であり、(c)は、グリス捕集部材を示した図5(d)のE-E´線断面図である。
図7】(a)は、プーリブラケットを省略したプーリアッセンブリを示した平面図であり、(b)は、プーリブラケットを省略したプーリアッセンブリを示した図7(a)のF‐F´線断面図である。
図8】(a)は、窓ガラスの上昇動作時におけるプーリアッセンブリ周りのグリスの挙動を示した説明図であり、(b)は、窓ガラスの下降動作時におけるプーリアッセンブリ周りのグリスの挙動を示した説明図である。
図9】(a)は、プーリ周りにグリスが蓄積した状態を示した説明図であり、(b)は、プーリとプーリから繰り出された上昇側ワイヤとの間にグリスの膜が張った状態を示した説明図であり、(c)は、プーリアッセンブリ周りにおける糸状のグリスの挙動を示した左側面図である。
図10】(a)は、グリス捕集部材の第1変形例を示した正面図であり、(b)は、グリス捕集部材の第1変形例を示した平面図であり、(c)は、グリス捕集部材の第2変形例を示した正面図であり、(d)は、グリス捕集部材の第2変形例を示した底面図である。
図11】(a)は、ウインドレギュレータの変形例におけるプーリアッセンブリ周りを示した斜視図であり、(b)は、ウインドレギュレータの変形例におけるプーリアッセンブリ周りを示した正面図であり、(c)は、ウインドレギュレータの変形例におけるグリス捕集部材を示した正面図であり、(d)は、ウインドレギュレータの変形例におけるグリス捕集部材を示した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ及びウインドレギュレータを備えた車両用ドアについて説明する。この車両用ドアは、自動車(車両)に設けられたものである。一方、ウインドレギュレータは、車両用ドアに取り付けられ、車両の窓ガラスを昇降する昇降装置である。特に、本ウインドレギュレータは、グリスが塗布されたワイヤを用いる構成において、プーリ周りにグリスが蓄積するのを抑制する構造を備えたものである。なお、以下、窓ガラスの昇降方向、上昇方向及び下降方向を、単に昇降方向、上昇方向及び下降方向と呼称する。また、以下、各図に示す通り、左右方向、前後方向及び上下方向を規定して説明する。なお、本実施形態では、昇降方向とウインドレギュレータの上下方向とが一致し、車幅方向とウインドレギュレータの前後方向とが一致しているものとする。
【0011】
(車両用ドアの構成)
図1に示すように、車両用ドアDは、ドア本体D1と、ドア本体D1に設けられたガラスガイドD11、D12に沿って昇降自在に支持された車両の窓ガラスWと、ドア本体D1に取り付けられ、窓ガラスWを昇降させるウインドレギュレータ1と、を備えている。本実施形態では、表面(車室外側)に撥水コーティングが施され、裏面(車室内側)に紫外線カットコーティングが施された窓ガラスWを用いている。
【0012】
ドア本体D1は、窓ガラスWを格納する格納部D13と、格納部D13の上方に配設されたドアサッシD14と、格納部D13の上端部に配設され、窓ガラスWに摺接するインナーウェザーストリップD5及びアウターウェザーストリップD16(図2参照)と、を有している。図2に示すように、格納部D13は、車室内側のインナーパネルD17と、車室外側のアウターパネルD18と、を有しており、このインナーパネルD17とアウターパネルD18との間に、ドア内部空間が形成されている。
【0013】
図2に示すように、インナーウェザーストリップD15は、ドアサッシD14の下部においてインナーパネルD17の上端部に固定されており、車両前後方向に延在して直線状に設けられている。一方、アウターウェザーストリップD16は、ドアサッシD14の下部においてアウターパネルD18の上端部に固定されており、車両前後方向に延在して直線状に設けられている。インナーウェザーストリップD15は、ウインドレギュレータ1による窓ガラスWの昇降動作に伴って窓ガラスWの裏面に摺接し、アウターウェザーストリップD16は、ウインドレギュレータ1による窓ガラスWの昇降動作に伴って窓ガラスWの表面に摺接する。これらにより、インナーウェザーストリップD15及びアウターウェザーストリップD16は、ドア内部空間への水等の浸入を抑止すると共に窓ガラスWの汚れを除去する。これらのインナーウェザーストリップD15やアウターウェザーストリップD16による窓ガラスWへの摺接が、窓ガラスWに静電気が帯電する一因となっている。
【0014】
(ウインドレギュレータの構成)
図1乃至図3に示すように、ウインドレギュレータ1は、上記ドア内部空間においてインナーパネルD17に取り付けられており、昇降方向に沿って設けられたガイドレール2と、窓ガラスWを支持すると共に、ガイドレール2に摺動自在に取り付けられたキャリアプレート3と、キャリアプレート3を牽引しガイドレール2に沿って昇降させる上昇側ワイヤ4(ワイヤ)及び下降側ワイヤ5と、ガイドレール2の下端部に配設され、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5を駆動する駆動部6と、ガイドレール2の上端部に配設され、上昇側ワイヤ4を方向転換するプーリ31を有するプーリアッセンブリ7と、ガイドレール2の長手方向略中央部に配設され、プーリ31と駆動部6との間の上昇側ワイヤ4を支持するワイヤガイド8と、を備えている。すなわち、このウインドレギュレータ1は、ワイヤ4、5を用いてキャリアプレート3を昇降するワイヤ駆動式のウインドレギュレータであると共に、駆動部6がガイドレール2の下端部に配設された下端レール式のウインドレギュレータである。
【0015】
ガイドレール2は、長板状の金属板を所定の曲率で車幅方向に湾曲させて形成されており、ドア本体D1に対して車両前後方向の後方側に傾いて配置されている。そして、ガイドレール2は、昇降方向に沿って延在し、キャリアプレート3を昇降自在に支持している。
【0016】
図3に示すように、キャリアプレート3は、例えばポリアセタール等の樹脂によって形成された板状の部材であり、ガイドレール2上を摺動すると共に上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の端部が取り付けられた本体部11と、本体部11の左右両端に形成された取付け孔12、12と、を有している。取付け孔12、12は、窓ガラスWを保持する図略のガラスホルダW1(図2参照)を取り付けるためのものである。すなわち、本実施形態では、キャリアプレート3は、ガラスホルダW1を介して、窓ガラスWを支持している。
【0017】
上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5は、金属ワイヤで構成されており、表面にグリスG(図8参照)が塗布されている。上昇側ワイヤ4は、一端部が駆動部6のドラム22(後述する)に連結されており、駆動部6から上方に繰り出されてプーリ31に到り、プーリ31によって下方に方向転換された後、他端部がキャリアプレート3に取り付けられている。一方、下降側ワイヤ5は、一端部が駆動部6のドラム22に連結されており、駆動部6から上方に繰り出されて他端部がキャリアプレート3に取り付けられている。本実施形態では、プーリ31からキャリアプレート3に到る上昇側ワイヤ4と、駆動部6からキャリアプレート3に到る下降側ワイヤ5とが、前方から見て(ドラム22の軸方向から見て)、ガイドレール2と重なるように配設されている。そのため、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5が、ガイドレール2に接触する構成となっている。これに対し、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の表面にグリスGが塗布されていることで、ワイヤ4、5とガイドレール2との接触に伴う異音の発生や、ワイヤ4、5及びガイドレール2の摩耗を抑制することができる。なお、ワイヤ4、5の表面に加え、ガイドレール2の、ワイヤ4、5との接触部分にもグリスGが塗布されていることが好ましい。
【0018】
駆動部6は、正逆回転駆動可能な減速機付きのモータ21と、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の一端部が連結され、モータ21の駆動によって回転することにより上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の巻取り及び繰出しを行う円筒状のドラム22と、ガイドレール2の下端部が嵌合すると共にドラム22を回転自在に収容するドラムハウジング23と、ドラムハウジング23に取り付けられ、モータ21を保持するモーターハウジング24と、を有している。
【0019】
モータ21を正転駆動すると、ドラム22が正転し、これに伴って、下降側ワイヤ5が繰り出されつつ上昇側ワイヤ4が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が上昇側ワイヤ4に引っ張られ上昇方向に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスWが上昇する。一方、モータ21を逆転駆動すると、ドラム22が逆転し、これに伴って、上昇側ワイヤ4が繰り出されつつ下降側ワイヤ5が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が下降側ワイヤ5に引っ張られ下降方向に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスWが下降する。
【0020】
(プーリアッセンブリの構成)
次に図4乃至図8を参照して、プーリアッセンブリ7について説明する。図4に示すように、プーリアッセンブリ7は、上昇側ワイヤ4が巻き掛けられ、上昇側ワイヤ4を方向転換するプーリ31と、ガイドレール2の上端部に固定された金属製のプーリブラケット32と、プーリブラケット32に固定されると共に、プーリ31を回転自在に支持するプーリシャフト33と、プーリ31とプーリブラケット32との間に取り付けられたグリス捕集部材34と、を有している。
【0021】
プーリ31は、上昇側ワイヤ4が巻き掛けられるガイド溝31aが周設されており、プーリシャフト33に回転自在に支持されると共に、駆動部6から上方に繰り出されてきた上昇側ワイヤ4を、下方に且つキャリアプレート3に向かって方向転換する。そのため、プーリ31は、上昇側ワイヤ4を、ガイド溝31aの右部から下方に且つキャリアプレート3に向かって繰り出すと共に、ガイド溝31aの左部から下方に且つ駆動部6(ドラム22)に向かって繰り出すと言える。なお、プーリ31の右ワイヤ繰出し位置P1(第1のワイヤ繰出し位置)とキャリアプレート3との間の上昇側ワイヤ4を、符号4aとし、プーリ31の左ワイヤ繰出し位置P2(第2のワイヤ繰出し位置)と駆動部6との間の上昇側ワイヤ4を、符号4bとする。
【0022】
(グリス捕集部材の構成)
図5に示すように、グリス捕集部材34は、樹脂製の部材で構成されており、プーリ31とプーリブラケット32との間に取り付けるための円板状の取付け部41と、取付け部41の下部から右斜め下に延びる右腕部42と、右腕部42の先端に取り付けられ、プーリ31とキャリアプレート3との間の上昇側ワイヤ4aに面して配設された右捕集部43(第1のグリス捕集部)と、取付け部41の下部から左斜め下に延びる左腕部44と、左腕部44の先端に取り付けられ、プーリ31と駆動部6との間の上昇側ワイヤ4bに面して配設された左捕集部45(第2のグリス捕集部)と、を一体として有している。
【0023】
取付け部41には、プーリシャフト33を挿通する挿通孔51と、取付け部41の回止めを行う回止め突起52と、を有している。回止め突起52が、プーリブラケット32に形成された係合孔32aと係合することで、取付け部41が、プーリ31に連れ回りするのが阻止され、プーリ31とプーリブラケット32との間において、プーリシャフト33で位置決めされ且つ回転不能に取り付けられた状態となっている。
【0024】
右捕集部43は、円錐台形状に形成された本体部61と、本体部61に形成され、上昇側ワイヤ4aを挿通する挿通孔62と、本体部61の右端から挿通孔62にかけて形成され、上昇側ワイヤ4aを挿通孔62に導入する導入スリット63と、を有している。
【0025】
図6及び図7(b)に示すように、挿通孔62は、上側を先側とし下側を底側とする円錐台形状に形成されており、挿通孔62の上端が上昇側ワイヤ4aと略同一の径を有している。そして、挿通孔62上端の縁が、上昇側ワイヤ4aの略全周を覆い、上昇側ワイヤ4aに摺接する摺接部64となっており、挿通孔62の内周面が、摺接部64の摺接によって上昇側ワイヤ4aから捕集したグリスGを貯留する貯留部65となっている。すなわち、右捕集部43は、摺接部64及び貯留部65を有している。
【0026】
具体的には、摺接部64は、プーリ31の右ワイヤ繰出し位置P1に向かって移動する上昇側ワイヤ4aに摺接してグリスGを捕集する。すなわち、図8(a)に示すように、窓ガラスWの上昇動作において、プーリ31の右ワイヤ繰出し位置P1とキャリアプレート3との間の上昇側ワイヤ4aが、プーリ31側に移動するとき、右捕集部43の摺接部64が、移動する上昇側ワイヤ4aの表面に摺接して、上昇側ワイヤ4aの表面に塗布されたグリスGが捕集される。これにより、プーリ31に向かう上昇側ワイヤ4aのグリスGが捕集され、当該グリスGがプーリ31周りに蓄積するのを防止することができる。
【0027】
一方、貯留部65は、挿通孔62の内側において上昇側ワイヤ4aに面してグリスGを貯留することで、プーリ31の右ワイヤ繰出し位置P1からキャリアプレート3に向かって移動する上昇側ワイヤ4aに、捕集したグリスGを塗布する構成を有している。すなわち、図8(b)に示すように、窓ガラスWの下降動作において、プーリ31の右ワイヤ繰出し位置P1とキャリアプレート3との間の上昇側ワイヤ4aが、キャリアプレート3側に(下方に)向かって移動するとき、右捕集部43の貯留部65に貯留されたグリスGが、移動する上昇側ワイヤ4aに塗布される。これにより、プーリ31から離間した上昇側ワイヤ4aについて、グリスGが十分塗布された状態にすることができる。
【0028】
なお、図7に示すように、摺接部64の左端の位置は、右ワイヤ繰出し位置P1におけるガイド溝31aの溝底の位置と、左右方向(車幅方向及び昇降方向に直交する方向)で一致している。これによって、上昇側ワイヤ4aと摺接部64との遊びの中で、上昇側ワイヤ4aが左側に寄った状態となる。これにより、摺接部64が、上昇側ワイヤ4aの周面における、プーリ31と接触する面(左側の面)に対し、確実に摺接する構成となっている。
【0029】
また、図6に示すように、摺接部64の上側の角は、R面取りがされていることが好ましい。これにより、摺接部64の角によって、上昇側ワイヤ4aが損傷するのを防止することができる。
【0030】
図5に示すように、左捕集部45は、円錐台形状に形成された本体部71と、本体部71に形成され、上昇側ワイヤ4bを挿通する挿通孔72と、本体部71の左端から挿通孔72にかけて形成され、上昇側ワイヤ4bを挿通孔72に導入する導入スリット73と、を有している。
【0031】
図6及び図7(b)に示すように、挿通孔72は、上側を先側とし下側を底側とする円錐台形状に形成されており、挿通孔72の上端が上昇側ワイヤ4bと略同一の径を有している。そして、挿通孔72上端の縁が、上昇側ワイヤ4bの略全周を覆い、上昇側ワイヤ4bに摺接する摺接部74となっており、挿通孔72の内周面が、摺接部74の摺接によって上昇側ワイヤ4bから捕集したグリスGを貯留する貯留部75となっている。すなわち、左捕集部45は、摺接部74及び貯留部75を有している。
【0032】
具体的には、摺接部74は、プーリ31の左ワイヤ繰出し位置P2に向かって移動する上昇側ワイヤ4bに摺接してグリスGを捕集する。すなわち、図8(b)に示すように、窓ガラスWの下降動作において、プーリ31の左ワイヤ繰出し位置P2と駆動部6との間の上昇側ワイヤ4bが、プーリ31側に移動するとき、左捕集部45の摺接部74が、移動する上昇側ワイヤ4bの表面に摺接して、上昇側ワイヤ4bの表面に塗布されたグリスGが捕集される。これにより、プーリ31に向かう上昇側ワイヤ4bのグリスGが捕集され、当該グリスGがプーリ31周りに蓄積するのを防止することができる。
【0033】
一方、貯留部75は、挿通孔72の内側において上昇側ワイヤ4bに面してグリスGを貯留することで、プーリ31の左ワイヤ繰出し位置P2から駆動部6に向かって移動する上昇側ワイヤ4aに、捕集したグリスGを塗布する構成を有している。すなわち、図8(a)に示すように、窓ガラスWの上昇動作において、プーリ31の左ワイヤ繰出し位置P2と駆動部6との間の上昇側ワイヤ4bが、駆動部6側に(下方に)向かって移動するとき、左捕集部45の貯留部75に貯留されたグリスGが、移動する上昇側ワイヤ4bに塗布される。これにより、プーリ31から離間した上昇側ワイヤ4bについて、グリスGが十分塗布された状態にすることができる。
【0034】
なお、図7に示すように、摺接部74の右端の位置は、左ワイヤ繰出し位置P2におけるガイド溝31aの溝底の位置と、左右方向(車幅方向及び昇降方向に直交する方向)で一致している。これによって、上昇側ワイヤ4bと摺接部74との遊びの中で、上昇側ワイヤ4bが右側に寄った状態となる。これにより、摺接部74が、上昇側ワイヤ4bの周面における、プーリ31と接触する面(右側の面)に対し、確実に摺接する構成となっている。
【0035】
また、図6に示すように、摺接部74の上側の角は、R面取りがされていることが好ましい。これにより、摺接部74の角によって、上昇側ワイヤ4bが損傷するのを防止することができる。
【0036】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、捕集部43、45を備えたことで、上昇側ワイヤ4に塗布されたグリスGが、プーリ31周りに蓄積するのを抑制することができる。
【0037】
すなわち、グリスGが塗布されたワイヤ4、5を用いるウインドレギュレータ1において、捕集部43、45がない構成では、図9(a)に示すように、窓ガラスWの昇降動作の繰返しによって、上昇側ワイヤ4に塗布されたグリスGが、プーリ31周り(特にワイヤ繰出し位置P1、P2周り)に蓄積する。そして、プーリ31周りにグリスGが蓄積した状態で、プーリ31の回転に伴ってプーリ31から上昇側ワイヤ4を繰り出すと、図9(b)に示すように、プーリ31周りからグリスGが引き出されて、グリスGの膜が、プーリ31とプーリ31から繰り出された上昇側ワイヤ4a、4bとの間に張る現象が生じる。プーリ31とプーリ31から繰り出された上昇側ワイヤ4a、4bとの間にグリスGの膜が張った状態で、更に上昇側ワイヤ4a、4bが繰り出されていくと、グリスGの膜が薄くなっていき、最終的にグリスGの膜が破れてグリスGが糸状になる。この糸状になったグリスGが、図9(c)に示すように、静電気等によって窓ガラスWに引き寄せられ、窓ガラスWに付着してしまう。特に、本実施形態のように、窓ガラスWの表面(車室外側)に撥水コーティングが施され、窓ガラスWの裏面(車室内側)に紫外線カットコーティングが施されている場合には、窓ガラスW上に静電気が帯電しやすいため、このような問題が生じやすい。
これに対し、上記実施形態に構成によれば、捕集部43、45を備えたことで、プーリ31に向かう上昇側ワイヤ4に塗布されたグリスGが捕集されるため、当該グリスGが、プーリ31周りに蓄積するのを抑制することができる。これにより、プーリ31とプーリ31から繰り出された上昇側ワイヤ4a、4bとの間にグリスGの膜が張るのを抑制することができるため、グリスGが糸状になり、窓ガラスWに付着してしまうのを防止することができる。
【0038】
また、捕集部43、45が、少なくとも、上昇側ワイヤ4a、4bの周面における、プーリ31に接触する面に摺接する構成であるため、上昇側ワイヤ4a、4bの、プーリ31に接触する面に付着したグリスGを捕集することができる。これにより、上昇側ワイヤ4a、4bとプーリ31との接触によって、上昇側ワイヤ4a、4b上のグリスGがプーリ31に転移するのを抑制することができる。これによって、グリスGがプーリ31周りに蓄積するのをより抑制することができる。
【0039】
また、捕集部43、45が、プーリ31から他の部材(キャリアプレート3又は駆動部6)に向かって移動する上昇側ワイヤ4a、4bに対し、捕集したグリスGを塗布する構成であるため、上昇側ワイヤ4a、4b上のグリスGが枯渇するのを抑制することができる。すなわち、プーリ31の近傍の位置では、上昇側ワイヤ4a、4bに塗布されたグリスGの量が少なく、プーリ31から離間した位置では、上昇側ワイヤ4a、4bに塗布されたグリスGの量が多くすることができる。そのため、上昇側ワイヤ4a、4bとガイドレール2等の他の部材との接触に伴う異音の発生や、上昇側ワイヤ4a、4b及び当該他の部材の摩耗を抑制できるという機能を維持しつつ、グリスGがプーリ31周りに蓄積するのを抑制することができる。
【0040】
(その他の実施形態について)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0041】
例えば、図10(a)及び(b)に示すように、グリス捕集部材34において、各捕集部43,45が、本体部61、71から上方に延出する円筒状の延出部66、76を更に有する構成であっても良い。かかる構成によれば、延出部66、76によって、腕部42、44に対する捕集部43、45の取付け面積を大きくすることができるため、腕部42、44に対する捕集部43、45の取付け強度を向上させることができる。
【0042】
また、上記実施形態においては、グリス捕集部材34において、各捕集部43、45が、導入スリット63、73を有する構成であったが、図10(c)及び(d)に示すように、各捕集部43、45において、導入スリット63、73を省略し、上昇側ワイヤ4a、4bの全周が捕集部43、45に覆われるようにする構成であっても良い。
【0043】
また、上記実施形態においては、グリス捕集部材34が、プーリ31とプーリブラケット32との間に取り付けられる構成であったが、図11に示すように、グリス捕集部材34をガイドレール2に取り付ける構成であっても良い。かかる場合、グリス捕集部材34は、ガイドレール2に取り付けられる取付け部81と、取付け部81から右斜め上に延びる右腕部82と、右腕部82の先端に取り付けられた右捕集部43と、取付け部81から左斜め上に延びる左腕部83と、左腕部83の先端に取り付けられた左捕集部45と、を一体として有している。また、取付け部81は、例えば、クリップ止めでガイドレール2に取り付けられる。
【0044】
また、上記実施形態においては、グリス捕集部材34に、右捕集部43及び左捕集部45を設ける構成であったが、右捕集部43及び左捕集部45を、プーリブラケット32やガイドレール2に直接固定する構成であっても良いし、右捕集部43及び左捕集部45を、プーリブラケット32やガイドレール2に設ける構成であっても良い。
【0045】
また、上記実施形態においては、捕集部43、45が上昇側ワイヤ4a、4bに摺接してグリスGを捕集すると記載したが、捕集部43、45が、上昇側ワイヤ4a、4bの表面に近接(接近)していれば、上昇側ワイヤ4a、4bの表面に摺接していなくても、上昇側ワイヤ4a、4bの表面に塗布されたグリスGを捕集することができる。そのため、捕集部43、45が上昇側ワイヤ4a、4bに摺接せずに近接することで、グリスGを捕集する構成であっても良い。
【0046】
また、上記実施形態においては、捕集部43、45を、上昇側ワイヤ4a、4bを挿通する挿通孔62、72を有する部材で構成し、捕集部43、45が、上昇側ワイヤ4a、4bの略全周を覆い、略全周に近接して略全周のグリスGを捕集する構成であったが、これに限るものではない。例えば、上昇側ワイヤ4とプーリ31との接触によって、グリスGが上昇側ワイヤ4からプーリ31に転移することを考慮し、上昇側ワイヤ4の周面における、プーリ31に接触する面のみに捕集部43、45が近接してグリスGを捕集する構成であっても良い。
【0047】
また、上記実施形態においては、捕集部43、45を、プーリ31とキャリアプレート3との間の上昇側ワイヤ4aと、プーリ31と駆動部6との間の上昇側ワイヤ4bとの両方に対して配設する構成であったが、これらの一方のみに捕集部43、45を配設する構成であっても良い。
【0048】
また、上記実施形態においては、プーリ31が、ガイドレール2の上端部のみに配設されたウインドレギュレータ1に、本発明を適用したが、プーリ31が、ガイドレール2の上端部及び下端部の両方に配設されたウインドレギュレータ(デルタ式ウインドレギュレータ、バンジョー式ウインドレギュレータ、ダブルレール式ウインドレギュレータ等)に、本発明を適用しても良い。かかる場合、ガイドレール2の上端部及び下端部のプーリ31それぞれに対し、その近傍のワイヤ4、5に面して捕集部43、45を配設する構成とする。
【0049】
さらに言えば、ガイドレール2を有さないレールレスのウインドレギュレータに、本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0050】
1:ウインドレギュレータ、 3:キャリアプレート、 4:上昇側ワイヤ、 6:駆動部、 31:プーリ、 43:右捕集部、 45:左捕集部、 64:摺接部、 65:貯留部、 74:摺接部、 75:貯留部、 D:車両用ドア、 D13:格納部、 D14:ドアサッシ、 D16:アウターウェザーストリップ、 G:グリス、 P1:右ワイヤ繰出し位置、 P2:左ワイヤ繰出し位置、 W:窓ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11