(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191934
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】電動運搬車
(51)【国際特許分類】
B60L 7/08 20060101AFI20221221BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221221BHJP
B60L 7/06 20060101ALI20221221BHJP
H02P 3/22 20060101ALI20221221BHJP
H02P 3/26 20060101ALI20221221BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60L7/08
B60L50/60
B60L7/06
H02P3/22 B
H02P3/26 E
B62B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100461
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸市
【テーマコード(参考)】
3D050
5H125
5H530
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB03
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG06
3D050JJ02
3D050JJ07
3D050JJ09
3D050KK14
5H125AA17
5H125AB01
5H125AC12
5H125CB01
5H125CB08
5H125EE08
5H125EE41
5H125EE51
5H530AA07
5H530BB21
5H530CD10
5H530CD23
5H530CD32
5H530CD34
5H530CE02
5H530CE15
5H530CE26
5H530CF02
5H530DD03
5H530EE07
5H530EF01
(57)【要約】
【課題】電動運搬車における短絡ブレーキを適正に制御できるようにする。
【解決手段】本開示の1つの局面における電動運搬車は、モータと、制御回路とを備える。モータは、複数の端子を備える。制御回路は、モータの駆動条件が成立していないことに応じて、複数の端子のうちの2以上を互いに短絡させる短絡ブレーキによってモータに制動力を発生させる。制御回路は、駆動条件が成立していない状態から駆動条件が成立している状態に変化することに応じて、短絡ブレーキによる制動力を徐々に低下させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動運搬車であって、
前記電動運搬車が走行する地面に立って前記電動運搬車を使用する使用者により把持されるように構成されたハンドルと、
バッテリを収容するように構成されたバッテリ収容部と、
前記バッテリ収容部に収容された前記バッテリの電力によって回転するように構成されたモータであって、複数の巻線、及び前記複数の巻線に接続された複数の端子を有するモータと、
前記モータにより駆動されるように構成された車輪と、
前記モータの駆動を制御するように構成された制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記モータの駆動条件が成立していないことに応じて、前記複数の端子のうちの2以上を互いに短絡させる短絡ブレーキによって前記モータに制動力を発生させる第1の処理と、
前記駆動条件が成立していない状態から前記駆動条件が成立している状態に変化する状態変化が発生したことに応じて、前記短絡ブレーキによる制動力を徐々に低下させる第2の処理と、
を実行するように構成されている、電動運搬車。
【請求項2】
請求項1に記載の電動運搬車であって、
前記制御回路は、さらに、
前記状態変化が発生し且つ第1の条件が成立していることに応じて、前記短絡ブレーキを解除する第3の処理、
を実行するように構成されている、電動運搬車。
【請求項3】
請求項2記載の電動運搬車であって、
前記第1の条件は、前記モータの単位時間あたりの回転数が第1回転数閾値以上であることを含む、電動運搬車。
【請求項4】
請求項2記載の電動運搬車であって、
前記第1の処理は、前記モータの回転中に、前記駆動条件が成立している状態から前記駆動条件が成立していない状態に変化したことに応じて、前記短絡ブレーキによる制動力を徐々に増加させることを含み、
前記第1の条件は、前記モータの単位時間あたりの回転数が第1回転数閾値以上であって、且つ現在発生している前記短絡ブレーキによる制動力が制動力閾値よりも小さいことを含む、
電動運搬車。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電動運搬車であって、
前記制御回路は、さらに、
前記状態変化が発生した後、第2の条件が成立することに応じて、前記短絡ブレーキを解除する第4の処理、
を実行するように構成されている、電動運搬車。
【請求項6】
請求項5に記載の電動運搬車であって、
前記第2の条件は、第3の条件が成立することに応じて成立し、
前記第3の条件は、前記状態変化が発生した後における第1タイミングから第1時間継続して、前記モータの単位時間あたりの回転数が第2回転数閾値以下を維持することに応じて成立する、
電動運搬車。
【請求項7】
請求項6に記載の電動運搬車であって、
前記第2回転数閾値はゼロである、電動運搬車。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の電動運搬車であって、
前記第2の条件は、第4の条件が成立した後にさらに前記第3の条件が成立することに応じて成立し、
前記第4の条件は、前記状態変化が発生した後における第2タイミングから第2時間が経過することに応じて成立し、
前記第1タイミングは、前記第4の条件の成立以後に到来する、
電動運搬車。
【請求項9】
請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の電動運搬車であって、
前記制御回路は、さらに、
前記モータの回転方向を設定する方向設定処理と、
前記方向設定処理により設定された前記回転方向である設定回転方向に前記モータが回転するように前記モータを制御するモータ制御処理と、
を実行するように構成されており、
前記第2の条件は、第5の条件が成立することに応じて成立し、
前記第5の条件は、前記設定回転方向とは逆の方向へ前記モータが回転していることに応じて成立する、
電動運搬車。
【請求項10】
請求項9に記載の電動運搬車であって、
前記第2の条件は、第4の条件が成立した後にさらに前記第5の条件が成立することに応じて成立し、
前記第4の条件は、前記状態変化が発生した後における第2タイミングから第2時間が経過することに応じて成立する、
電動運搬車。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の電動運搬車であって、
さらに、前記電動運搬車の使用者による第1の手動操作を受けることに応じて、前記モータを駆動するように前記制御回路に指令するように構成された第1の手動操作受付部を備え、
前記駆動条件は、前記第1の手動操作受付部によって前記第1の手動操作が受けられることに応じて成立する、
電動運搬車。
【請求項12】
請求項11に記載の電動運搬車であって、
さらに、
前記電動運搬車の使用者による第2の手動操作を受け、前記第2の手動操作の操作量に応じて前記車輪の回転を直接制動するように構成された機械ブレーキと、
を備え、
前記駆動条件は、前記第1の手動操作受付部によって前記第1の手動操作が受けられること、及び前記機械ブレーキによる制動が解除されること、に応じて成立する
電動運搬車。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の電動運搬車であって、
さらに、電磁石を備え、前記電磁石が発生する磁力によって前記モータを制動または前記モータの制動を解除するように構成された電磁ブレーキを備え、
前記制御回路は、さらに、
前記駆動条件が成立していないことに応じて、前記電磁ブレーキにより前モータを制動する電磁ブレーキ処理、
を実行するように構成されている電動運搬車。
【請求項14】
請求項13に記載の電動運搬車であって、
前記電磁ブレーキ処理は、前記駆動条件が成立しておらず、且つ前記モータの単位時間あたりの回転数が第3回転数閾値以下であることに応じて、前記電磁ブレーキにより前モータを制動することを含む、
電動運搬車。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の電動運搬車であって、
前記制御回路は、さらに、
前記状態変化が発生することに応じて、前記電磁ブレーキによる前記モータの制動を解除する制動解除処理、
を実行するように構成されている電動運搬車。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の電動運搬車であって、
前記複数の端子は、3つの端子を備え、
前記モータは、前記3つの端子に三相電力が供給されることにより回転するように構成されており、
停止中の前記モータに対する前記短絡ブレーキは、前記3つの端子を互いに短絡させることにより前記モータに制動力を発生させる三相短絡ブレーキを含む、
電動運搬車。
【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の電動運搬車であって、
前記複数の端子は、3つの端子を備え、
前記モータは、前記3つの端子に三相電力が供給されることにより回転するように構成されており、
回転中の前記モータに対する前記短絡ブレーキは、前記3つの端子のうちの2つを互いに短絡させることにより前記モータに制動力を発生させる二相短絡ブレーキを継続的または断続的にかけること、前記3つの端子を互いに短絡させることにより前記モータに制動力を発生させる三相短絡ブレーキを断続的にかけること、及び/または、前記二相短絡ブレーキ及び前記三相短絡ブレーキを選択的に切り替えながらかけることを含む、
電動運搬車。
【請求項18】
モータを備えた電動運搬車において用いられる、モータの制御方法であって、
前記電動運搬車は、前記電動運搬車が走行する地面に立って前記電動運搬車を使用する使用者により把持されるように構成されたハンドルと、前記モータにより駆動されるように構成された車輪とを備え、
前記モータの制御方法は、
前記モータの駆動条件が成立していないことに応じて、前記モータにおける複数の端子のうちの2以上を互いに短絡させる短絡ブレーキによって前記モータに制動力を発生させることと、
前記駆動条件が成立していない状態から前記駆動条件が成立している状態に変化することに応じて、前記短絡ブレーキによる制動力を徐々に低下させることと、
を備える、モータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モータにより車輪が駆動されるように構成された手押し式電動運搬車を開示している。この手押し式電動運搬車は、摩擦力により車輪に直接制動力を付与する機械式ブレーキ装置に加え、短絡ブレーキを備える。短絡ブレーキは、モータの巻線を短絡させることによってモータに制動力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械式ブレーキの制動力は、手押し式電動運搬車の使用者の手動操作によって調整可能である。一方、短絡ブレーキの制動力は、マイクロコンピュータにより制御される。そのため、使用者が手押し式電動運搬車を安定して使用できるようにするためには、短絡ブレーキの制御が適正に行われることが望まれる。
【0005】
本開示の一局面は、電動運搬車における短絡ブレーキを適正に制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面における電動運搬車は、ハンドルを備える。ハンドルは、電動運搬車の使用者により把持される。使用者は、電動運搬車が走行する地面に立って電動運搬車を使用する。電動運搬車は、バッテリ収容部を備える。バッテリ収容部は、バッテリを収容する。電動運搬車は、モータを備える。モータは、バッテリ収容部に収容されたバッテリの電力によって回転する。モータは、複数の巻線及び複数の端子を有する。複数の端子は、複数の巻線に接続されている。電動運搬車は、モータにより駆動される車輪を備える。電動運搬車は、モータの駆動を制御するように構成された制御回路を備える。
【0007】
制御回路は、第1の処理を実行する。第1の処理は、モータの駆動条件が成立していないことに応じて、前記複数の端子のうちの2以上を互いに短絡させる短絡ブレーキによってモータに制動力を発生させることを含む。
【0008】
制御回路は、第2の処理を実行する。第2の処理は、駆動条件が成立していない状態から駆動条件が成立している状態に変化する状態変化が発生したことに応じて短絡ブレーキによる制動力を徐々に低下させることを含む。
【0009】
このような電動運搬車は、短絡ブレーキを適正に制御することができる。
本開示の別の一局面におけるモータの制御方法は、モータを備えた電動運搬車において用いられる。電動運搬車は、ハンドルを備える。ハンドルは、電動運搬車の使用者により把持される。使用者は、電動運搬車が走行する地面に立って電動運搬車を使用する。電動運搬車は、モータにより駆動されるように構成された車輪を備える。モータの制御方法は、モータの駆動条件が成立していないことに応じて、モータにおける複数の端子のうちの2以上を互いに短絡させる短絡ブレーキによって、モータに制動力を発生させることを備える。モータの制御方法は、駆動条件が成立していない状態から駆動条件が成立している状態に変化することに応じて、短絡ブレーキによる制動力を徐々に低下させることを備える。
【0010】
このようなモータ制御方法は、上記の電動運搬車と同様の効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】荷台が取り外された電動運搬車の底面図である。
【
図4】電動運搬車の電気系統の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5Aは操作装置の電気系統の詳細を示すブロック図であり、
図5Bはバッテリボックスの電気系等の詳細を示すブロック図である。
【
図7】制御モード設定処理の一部のフローチャートである。
【
図8】制御モード設定処理の他の一部のフローチャートである。
【
図10】制御モード設定処理の残りのフローチャートである。
【
図11】
図11Aは第2解除判定処理のフローチャートであり、
図11Bはブレーキ開始判定処理のフローチャートである。
【
図12】電磁ブレーキ制御処理のフローチャートである。
【
図14】モータ出力制御処理のフローチャートである。
【
図15】待機ブレーキ処理のフローチャートである。
【
図16】第1ブレーキ処理のフローチャートである。
【
図17】第2ブレーキ処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の総括]
ある実施形態における電動運搬車は、ハンドルを備えてもよい。ハンドルは、電動運搬車の使用者により把持されるように構成されてもよい。使用者は、電動運搬車が走行する地面に立って電動運搬車を使用してもよい。使用者は、ハンドルを把持しながら地面に立って電動運搬車を使用してもよい。ここでいう「地面に立つ」、とは、歩かずに一定位置に止まることと、地面上を歩行若しくは走ることと、を含む。加えて/あるいは、電動運搬車は、バッテリ収容部を備えてもよい。バッテリ収容部は、バッテリを収容するように構成されてもよい。加えて/あるいは、電動運搬車は、モータを備えてもよい。モータは、バッテリ収容部に収容されたバッテリの電力によって回転するように構成されてもよい。加えて/あるいは、モータは、複数の巻線及び複数の端子を有していてもよい。複数の端子は、複数の巻線に接続されていてもよい。加えて/あるいは、電動運搬車は、モータにより駆動されるように構成された車輪を備えてもよい。加えて/あるいは、電動運搬車は、モータの駆動を制御するように構成された制御回路を備えてもよい。
【0013】
制御回路は、第1の処理を実行してもよい。第1の処理は、モータの駆動条件が成立していないことに応じて、前記複数の端子のうちの2以上を互いに短絡させる短絡ブレーキによってモータに制動力を発生させることを含んでもよい。
【0014】
加えて/あるいは、制御回路は、第2の処理を実行してもよい。第2の処理は、状態変化が発生したことに応じて、短絡ブレーキによる制動力を徐々に低下させることを含んでもよい。状態変化は、駆動条件が成立していない状態から駆動条件が成立している状態に変化することに対応する。第2の処理は、状態変化が発生したことに応じて、短絡ブレーキによる制動力を、状態変化が発生した時の制動力から徐々に低下させることを含んでもよい。加えて/あるいは、制御回路は、短絡ブレーキによる制動力を指令するブレーキ制御量を取得または算出するように構成されていてもよい。制御回路は、第1の処理及び/または第2の処理において、短絡ブレーキによる制動力を、ブレーキ制御量に応じて発生させてもよい。加えて/あるいは、制御回路は、第2の処理において、短絡ブレーキによる制動力が、状態変化が発生した時の制動力から徐々に低下するように、ブレーキ制御量を設定(または変化)させてもよい。
【0015】
第2の処理において、短絡ブレーキの制動力はどのように低下してもよい。例えば、短絡ブレーキの制動力は、段階的に低下してもよいし、連続的に低下してもよい。段階的に低下する期間と連続的に低下する期間が混在してもよい。制動力の低下率(即ち変化率)はどのように決定されてもよい。制動力の低下率は例えば一定であってもよいし、変化してもよい。
【0016】
ある実施形態における電動運搬車が、上記のハンドル、上記のバッテリ収容部、上記のモータ、上記の車輪、及び上記の制御回路を備え、制御回路が、第1の処理及び第2の処理を実行するのであれば、このような電動運搬車は、短絡ブレーキを適正に制御することができる。
【0017】
加えて/あるいは、制御回路は、第3の処理を実行するように構成されてもよい。第3の処理は、状態変化が発生した時(または駆動条件が成立した時)に第1の条件が成立していることに応じて、短絡ブレーキを解除することを含んでもよい。加えて/あるいは、制御回路は、第3の処理において、短絡ブレーキが解除されるようにブレーキ制御量を設定してもよい。ある実施形態における電動運搬車が上記の制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、短絡ブレーキを適切なタイミングで解除できる。
【0018】
第1の条件は、モータの単位時間あたりの回転数が第1回転数閾値以上であることを含んでもよい。なお、一般に、モータが回転する要因には、例えば、第1の要因、第2の要因及び第3の要因がある。第1の要因は、モータ自らが発するトルクである。第2の要因は、惰性による回転力(換言すれば慣性力)である。即ち、モータがトルクを発生して回転している状態からトルクの発生を停止しても、通常、直ちには停止せずに惰性で(即ち慣性力により)回転する。第3の要因は、モータに加わる外力である。即ち、モータ自身はトルクを発生していなくてもモータに外力が加わるとモータは受動的に回転し得る。ある実施形態における電動運搬車が、上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、次のような効果を発揮できる。即ち、電動運搬車は、例えば前述の第2の要因または第3の要因によってモータが第1回転数閾値以上の回転数で回転しているときに、駆動条件が成立した場合、短絡ブレーキを迅速に解除することができる。
【0019】
加えて/あるいは、第1の処理は、モータの回転中に、駆動条件が成立している状態から駆動条件が成立していない状態に変化したことに応じて、短絡ブレーキによる制動力を徐々に増加させてもよい。ここでいう「モータの回転中」とは、前述の第1の要因、第2の要因及び第3の要因のうちのいずれかによって回転中であること、を含み得る。
【0020】
加えて/あるいは、制御回路は、第1の処理において、短絡ブレーキによる制動力を、駆動条件が成立している状態から駆動条件が成立していない状態に変化した時の制動力から徐々に増加させてもよい。加えて/あるいは、制御回路は、第1の処理において、短絡ブレーキによる制動力が、駆動条件が成立している状態から駆動条件が成立していない状態に変化した時の制動力から徐々に増加するように、ブレーキ制御量を設定(または変化)させてもよい。加えて/あるいは、制御回路は、第1の処理における短絡ブレーキによる制動力を、徐々に増加させることを基本としつつ、モータの回転数を考慮して増加度合いを変化させたり状況に応じて減少させたりしてもよい。あるいは、制御回路は、第1の処理における短絡ブレーキによる制動力を、モータの回転数に応じて変化(増加または減少)させてもよい。例えば、現在の回転数よりも低い回転数を制動時目標回転数に設定し、現在の回転数と制動時目標回転数との差に応じた制動力を発生させてもよい。そして、制動時目標回転数を徐々に低下させていくことで、回転数を低下させていってもよい。このようにモータの回転数に応じて短絡ブレーキの制動力を変化させる方法により結果的に短絡ブレーキの制動力が徐々に増加し得る。
【0021】
加えて/あるいは、第1の条件は、回転数が第1回転数閾値以上であって、且つ現在発生している短絡ブレーキによる制動力が制動力閾値よりも小さいことを含んでもよい。
ある実施形態における電動運搬車が、上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、駆動条件が成立した状態と駆動条件が成立していない状態とが互いに切り替わったときの回転数の変動を抑制できる。
【0022】
加えて/あるいは、制御回路は、第4の処理を実行するように構成されてもよい。第4の処理は、状態変化が発生した後(または駆動条件が成立した後)、第2の条件が成立することに応じて、短絡ブレーキを解除することを含んでもよい。加えて/あるいは、制御回路は、第4の処理において、短絡ブレーキが解除されるように(または短絡ブレーキによる制動力がゼロとなるように)ブレーキ制御量を設定(または変化)させてもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記の制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、駆動条件の成立後、適切なタイミングで短絡ブレーキを解除できる。
【0023】
第2の条件は、第3の条件が成立することに応じて成立してもよい。第3の条件は、状態変化が発生した後(または駆動条件が成立した後)における第1タイミングから第1時間継続して回転数が第2回転数閾値以下を維持することに応じて成立してもよい。第2回転数閾値はゼロであってもよい。第3の条件が成立するということは、例えば、電動運搬車が平地または傾斜が緩い場所に存在していることが想定され得る。このような場合、短絡ブレーキが解除されたときに電動運搬車が意図せず加速する可能性は、無いか若しくは低い。そのため、ある実施形態における電動運搬車が、上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、電動運搬車の状態に応じた適切なタイミングで短絡ブレーキを解除できる。
【0024】
加えて/あるいは、前記第2の条件は、第4の条件が成立した後にさらに第3の条件が成立することに応じて成立してもよい。第4の条件は、状態変化が発生した後(または駆動条件が成立した後)における第2タイミングから第2時間が経過することに応じて成立してもよい。第1タイミングは、第4の条件の成立以後に到来してもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、第3の条件が成立するか否かを適切に判断できる。
【0025】
加えて/あるいは、制御回路は、モータの回転方向を設定する方向設定処理を実行してもよい。加えて/あるいは、制御回路は、モータ制御処理を実行してもよい。モータ制御処理は、設定回転方向にモータが回転するようにモータを制御することを含んでもよい。設定回転方向は、方向設定処理により設定された回転方向であってもよい。加えて/あるいは、第2の条件は、第5の条件が成立することに応じて成立してもよい。第5の条件は、設定回転方向とは逆の方向へモータが回転していることに応じて成立してもよい。第5の条件が成立するということは、例えば、電動運搬車が上り坂に存在していて、短絡ブレーキが解除された後にその上り坂を上ろうとしている状況が想定され得る。そして、短絡ブレーキの制動力の低下に伴って電動運搬車が重力により下り方向へ動き出している状況が想定され得る。このような場合、短絡ブレーキを早めに解除して、モータが設定回転方向へ回転するようにモータを制御することが望まれ得る。そのため、ある実施形態における電動運搬車が、上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、電動運搬車の状態に応じた適切なタイミングで短絡ブレーキを解除できる。
【0026】
加えて/あるいは、第2の条件は、第4の条件が成立した後にさらに第5の条件が成立することに応じて成立してもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、第5の条件が成立するか否かを適切に判断できる。
【0027】
加えて/あるいは、電動運搬車は、手動操作受付部を備えてもよい。手動操作受付部は、使用者による第1の手動操作を受けることに応じて、モータを駆動するように制御回路に指令するように構成されてもよい。駆動条件は、手動操作受付部によって第1の手動操作が受けられることに応じて成立してもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記の手動操作受付部を備え、且つ上記特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、モータを駆動させようとする使用者の意思に応じた適切なタイミングで、短絡ブレーキの制動力を徐々に低下することを開始できる。
【0028】
加えて/あるいは、電動運搬車は、モータにより駆動されるように構成された車輪を備えてもよい。加えて/あるいは、電動運搬車は、機械ブレーキを備えてもよい。機械ブレーキは、使用者による第2の手動操作を受けてもよい。加えて/あるいは、機械ブレーキは、第2の手動操作の操作量に応じて車輪の回転を直接制動するように構成されてもよい。加えて/あるいは、駆動条件は、手動操作受付部によって第1の手動操作が受けられること、及び機械ブレーキによる制動が解除されること、に応じて成立してもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記の機械ブレーキを備え、且つ上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、使用者の意思に応じたより適切なタイミングで、短絡ブレーキの制動力を徐々に低下することを開始できる。
【0029】
加えて/あるいは、電動運搬車は、電磁ブレーキを備えてもよい。電磁ブレーキは、電磁石を備えていてもよい。加えて/あるいは、電磁ブレーキは、電磁石が発生する磁力によってモータを制動またはモータの制動を解除するように構成されてもよい。加えて/あるいは、制御回路は、電磁ブレーキ処理を実行してもよい。電磁ブレーキ処理は、駆動条件が成立していないことに応じて、電磁ブレーキによりモータを制動することを含んでもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記の電磁ブレーキ及び制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、駆動条件が成立していないときにおける電動運搬車の制動をより適切に行うことができる。
【0030】
加えて/あるいは、電磁ブレーキ処理は、駆動条件が成立しておらず、且つモータの単位時間あたりの回転数が第3回転数閾値以下であることに応じて、電磁ブレーキによりモータを制動することを含んでいてもよい。第3回転数閾値はどのような値であってもよい。第3回転数閾値は、例えば、0近傍の値であってもよいし、0であってもよい。
【0031】
加えて/あるいは、制御回路は、さらに、制動解除処理を実行してもよい。制動解除処理は、状態変化が発生する(または駆動条件が成立する)ことに応じて、電磁ブレーキによるモータの制動を解除することを含んでもよい。ある実施形態における電動運搬車が上記の制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、電磁ブレーキが解除された直後の電動運搬車の意図しない挙動を抑制できる。
【0032】
複数の端子は、3つの端子を備えてもよい。加えて/あるいは、モータは、3つの端子に三相電力が供給されることにより回転するように構成されてもよい。停止中のモータに対する短絡ブレーキは、3つの端子を互いに短絡させることによりモータに制動力を発生させる三相短絡ブレーキを含んでもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記のモータを備え、且つ上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、短絡ブレーキによる制動力を高めることができる。なお、制御回路は、モータが停止しているときの三相短絡ブレーキを、例えば連続的にかけてもよいし断続的にかけてもよい。
【0033】
加えて/あるいは、回転中のモータに対する短絡ブレーキは、3つの端子のうちの2つを互いに短絡させることによりモータに制動力を発生させる二相短絡ブレーキを継続的または断続的にかけること、3つの端子を互いに短絡させることによりモータに制動力を発生させる三相短絡ブレーキを断続的にかけること、及び/または、二相短絡ブレーキ及び三相短絡ブレーキを選択的に切り替えながらかけること、を含んでもよい。ある実施形態における電動運搬車が、上記の特徴を有する制御回路を備えている場合は、このような電動運搬車は、短絡ブレーキによる制動力の制御を効率よく行うことができる。なお、モータが回転しているときの短絡ブレーキにおいては、例えば、二相短絡ブレーキのみを連続的または断続的にかけてもよいし、三相短絡ブレーキと二相短絡ブレーキとを交互に切り替えながらかけてもよい。三相短絡ブレーキと二相短絡ブレーキとの切り替えの過程でブレーキをかけない期間が存在していてもよい。
【0034】
ある実施形態におけるモータの制御方法は、モータを備えた電動運搬車において用いられてもよい。電動運搬車は、ハンドルを備えてもよい。ハンドルは、電動運搬車の使用者により把持されるように構成されてもよい。使用者は、電動運搬車が走行する地面に立って電動運搬車を使用してもよい。加えて/あるいは、電動運搬車は、モータにより駆動されるように構成された車輪を備えていてもよい。モータの制御方法は、モータの駆動条件が成立していないことに応じて、モータにおける複数の端子のうちの2以上を互いに短絡させる短絡ブレーキによってモータに制動力を発生させることを備えていてもよい。加えて/あるいは、モータの制御方法は、駆動条件が成立していない状態から前記駆動条件が成立している状態に変化することに応じて、短絡ブレーキによる制動力を徐々に低下させることを備えてもよい。
【0035】
ある実施形態におけるモータの制御方法が上記手順の全てを備えている場合は、このようなモータの制御方法は、電動運搬車の短絡ブレーキを適正に制御することができる。
ある実施形態では、上記の特徴はどのように組み合わされてもよい。ある実施形態では、上記の特徴いずれかは除外されてもよい。
【0036】
[特定の例示的な実施形態]
(1)運搬車の概要
図1,
図2に示すように、本実施形態の電動運搬車1は、本体部2と、1以上の前輪と、1以上の後輪とを備える。本実施形態では、1以上の前輪は例えば2つの前輪8,9を備え、1以上の後輪は例えば2つの後輪10,11を備える。つまり、本実施形態の電動運搬車1は四輪車の形態を有する。
【0037】
本実施形態では、例えば、前輪8,9がそれぞれ駆動輪に対応し、後輪10,11がそれぞれ従動輪に対応する。即ち、前輪8,9は、後述するモータ25(
図4参照)により駆動(即ち回転)される。
【0038】
本体部2は、荷台3が固定されている。荷台3は、本体部2から取り外し可能である。荷台3は、各種の荷物を載せることができる。電動運搬車1の使用者は、荷物を荷台3に載せて電動運搬車1を走行させることにより荷物を運搬することができる。使用者は、複数種類の荷台3のうちの1つを選択的に本体部2に固定することができる。
【0039】
電動運搬車1は、さらに、
図2,
図3に示すように、モータユニット20を備える。モータユニット20には、モータ25(
図3,
図4参照)が収容されている。電動運搬車1は、さらに、
図3,
図4に示すように、電磁ブレーキ30が設けられている。本実施形態では、電磁ブレーキ30は例えばモータユニット20に収容されている。
【0040】
図3に示すように、モータ25は、モータステータ26と、モータロータ27と、モータシャフト28とを備える。モータロータ27は例えば永久磁石を備える。モータシャフト28は、モータロータ27に固定されている。モータロータ27が回転すると、その回転に伴ってモータシャフト28が回転する。
【0041】
モータ25は、さらに、
図4に示すように、第1端子25u、第2端子25v及び第3端子25wを備える。本実施形態のモータ25は、例えば三相ブラシレスモータである。モータステータ26は、第1巻線25a、第2巻線25b及び第3巻線25cを備える。第1~第3巻線25a~25cは互いに例えばデルタ結線されている。第1~第3巻線25a~25cは互いにどのように結線されていてもよい。第1~第3巻線25a~25cは例えば互いにスター結線されていてもよい。
【0042】
第1~第3巻線25a~25cは、第1~第3端子25u~25wと電気的に接続されている。第1~第3端子25u~25wを介して第1~第3巻線25a~25cに電力が供給されることにより、モータロータ27が回転(ひいてはモータシャフト28が回転)する。そのモータシャフト28の回転が、伝達機構21に伝達される。本実施形態において、モータ25について「回転」とは、詳しくはモータシャフト28が回転することを意味する。
【0043】
電動運搬車1は、さらに、伝達機構21を備える。伝達機構21は、モータ25の回転を前輪8,9に伝達する。より具体的には、伝達機構21は、モータ25の回転を、右駆動軸22を介して右側の前輪8に伝達すると共に、左駆動軸23を介して左側の前輪9に伝達する。伝達機構21は、例えばディファレンシャルギアを備えていてもよい。
【0044】
電動運搬車1は、さらに、
図2に示すように、機械ブレーキ24を備える。機械ブレーキ24は、摩擦力により前輪8,9の回転を制動する。機械ブレーキ24は、本実施形態では例えば、右ディスクブレーキ24aと左ディスクブレーキ24bとを備える。右ディスクブレーキ24aは右側の前輪8の回転を制動する。即ち、右ディスクブレーキ24aは、右側の前輪8と一体的に回転するブレーキディスクを備える。左ディスクブレーキ24bは、左側の前輪9と一体的に回転するブレーキディスクを備える。機械ブレーキ24が作動すると、各ブレーキディスクがブレーキパッドにより挟み込まれることにより、前輪8,9が制動される。
【0045】
図3に示すように、本実施形態の電磁ブレーキ30は、例えば、ブレーキステータ31と、ブレーキプレート32と、アーマチュア33と、ブレーキロータ34とを備える。ブレーキステータ31には、不図示の電磁コイルが内蔵されている。ブレーキステータ31及びブレーキプレート32は、モータユニット20内において固定されている。
【0046】
ブレーキロータ34は、モータシャフト28に固定されている。モータシャフト28が回転すると、ブレーキロータ34も回転する。アーマチュア33は、ブレーキロータ34の回転面に垂直な方向(即ちモータシャフト28の軸方向に平行な方向)に移動可能に弾性支持されている。
【0047】
電磁ブレーキ30がオンされると、アーマチュア33がブレーキプレート32に向かって変位する。これにより、ブレーキロータ34がアーマチュア33とブレーキプレート32とによって挟まれ、ブレーキロータ34の回転が制動される。つまり、モータシャフト28の回転が制動される。
【0048】
電磁ブレーキ30がオフ(即ち解除)されると、アーマチュア33がブレーキプレート32から離れる方向へ変位する。これにより、ブレーキロータ34がアーマチュア33及びブレーキプレート32と接触しなくなり、モータシャフト28に対する電磁ブレーキ30による制動力がかからなくなる。
【0049】
本実施形態では、例えば、ブレーキステータ31内の電磁コイルに電力が供給されることにより、電磁コイルが電磁石として機能する。これにより電磁ブレーキ30がオフされ、制動力がかからなくなる。一方、電磁コイルへの電力の供給が遮断されると、電磁ブレーキ30がオンされ、制動力がかかるようになる。
【0050】
本実施形態では、電動運搬車1の走行を、前述の機械ブレーキ24及び電磁ブレーキ30の他、短絡ブレーキによっても制動可能である。短絡ブレーキは、三相短絡ブレーキと二相短絡ブレーキを含む。
【0051】
三相短絡ブレーキは、モータ25における第1~第3端子25u~25wを互いに短絡することに対応する。
二相短絡ブレーキは、第1~第3端子25u~25wのうちのいずれか2つを互いに短絡することに対応する。二相短絡ブレーキにおいて互いに短絡される2つの端子は、第1~第3巻線25a~25cのうちモータロータ27の回転によって誘起電圧が発生している巻線により定まる。即ち、誘起電圧が発生している巻線にその誘起電圧に基づく電流が流れるように(ひいてはその電流とモータロータ27との電磁気作用によってモータロータ27に制動トルクが発生するように)2つの端子が短絡される。誘起電圧が発生している巻線から2つの端子を介して流れる、誘起電圧に基づく電流のことを、以下、「二相短絡電流」と称する。
【0052】
三相短絡ブレーキの制動力は、二相短絡ブレーキの制動力よりも大きい。二相短絡ブレーキの制動力は、2つの端子を短絡する時間を調整すること、換言すれば二相短絡電流の実効値を調整することにより制御可能である。
【0053】
本体部2は、右ハンドルバー12と、左ハンドルバー13とを備える。右ハンドルバー12及び左ハンドルバー13はそれぞれ、例えばL字状に屈曲された棒状の形状を有する。右ハンドルバー12の第1端は、右グリップ12aが設けられている。左ハンドルバー13の第1端は、左グリップ13aが設けられている。右グリップ12aは例えば使用者の右手により把持される。左グリップ13aは例えば使用者の左手により把持される。
【0054】
本体部2は、ブレーキレバー13bを備える。ブレーキレバー13bは、例えば、左ハンドルバー13における、左グリップ13aの近傍に設けられている。使用者は、例えば、左グリップ13aを左手で把持した状態で、その左手でブレーキレバー13bを操作することができる。ブレーキレバー13bが操作されると、機械ブレーキ24が作動し、機械ブレーキ24による制動力が前輪8,9に付与される。機械ブレーキ24による制動力は、使用者によるブレーキレバー13bの操作量に応じて変化する。
【0055】
本体部2は、操作装置14を備える。操作装置14は、例えば、右ハンドルバー12における、右グリップ12aの近傍に設けられている。操作装置14の電気的構成については
図5Aを参照して後述する。
【0056】
本体部2は、駆動レバー14aを備える。駆動レバー14aは、本実施形態では例えば操作装置14に設けられている。使用者は、例えば、右グリップ12aを右手で把持した状態で、その右手で駆動レバー14aを操作(例えば引き操作)することができる。
【0057】
本体部2は、バッテリボックス15を備える。バッテリボックス15は、例えば、右ハンドルバー12と左ハンドルバー13との間に配置されている。バッテリボックス15は、複数のバッテリパックが離脱可能に装着される。本実施形態のバッテリボックス15は、例えば、第1バッテリパック61及び第2バッテリパック62(
図4参照)を個別に装着可能である。バッテリボックス15の他の電気的構成については、
図5Bを参照して後述する。
【0058】
使用者は、電動運搬車1を自力で押すか若しくは引くことで、前輪8,9及び後輪10,11を回転させて電動運搬車1を走行させることができる。また、使用者は、駆動レバー14aを操作することで、モータ25により前輪8,9を駆動させ、その駆動力により電動運搬車1を走行させることができる。
【0059】
(2)電動運搬車の電気的構成
図4に示すように、電動運搬車1は、第1コントローラ50を備える。第1コントローラ50は、モータ25の駆動を制御する。電動運搬車1は、さらに、第2コントローラ70を備える。第2コントローラ70は、電磁ブレーキ30を制御する。
【0060】
第1コントローラ50は、制御回路51を備える。制御回路51は、例えば、CPU51a及びメモリ51bを備える。メモリ51bは、例えばROM、RAM、NVRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリを有していてもよい。即ち、本実施形態の第1コントローラ50は、マイクロコンピュータを備えている。
【0061】
制御回路51は、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。本実施形態では、メモリ51bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。本実施形態では、メモリ51bには、後述するメイン処理(
図6参照)のプログラムが格納されている。
【0062】
制御回路51により実現される各種機能の一部または全部は、プログラムの実行によって(即ち、ソフトウェア処理によって)達成されてもよいし、一つあるいは複数のハードウェアによって達成されてもよい。例えば、制御回路51は、マイクロコンピュータに代えて、またはマイクロコンピュータに加えて、複数の電子部品を含むロジック回路を備えていてもよいし、ASIC及び/またはASSPなどの特定用途向け集積回路を備えていてもよいし、任意の論理回路を構築可能な例えばFPGAなどのプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。
【0063】
図4は、バッテリボックス15に前述の第1バッテリパック61及び第2バッテリパック62の両方が装着されている状態を例示している。第1バッテリパック61及び第2バッテリパック62はそれぞれ、電動運搬車1の電源として機能する。第1バッテリパック61は、第1バッテリ61aを備える。第2バッテリパック62は、第2バッテリ62aを備える。第1バッテリ61a及び/または第2バッテリ62aは、例えば二次電池であってもよい。
【0064】
電動運搬車1は、バッテリ切替スイッチ81を備える。バッテリ切替スイッチ81は、本実施形態では例えばバッテリボックス15に設けられている。バッテリ切替スイッチ81は、使用者により操作されることに応じて、モータ25の電源を、第1バッテリパック61及び第2バッテリパック62のいずれか一方に設定する。バッテリ切替スイッチ81は、バッテリ切替スイッチ信号を制御回路51に出力する。バッテリ切替スイッチ信号は、バッテリ切替スイッチ81により選択されているバッテリパックを示す。
【0065】
電動運搬車1は、キー挿入部63を備える。キー挿入部63は、バッテリ切替スイッチ81及び第1コントローラ50(詳しくは後述するトリガスイッチ102)に接続されている。キー挿入部63は、キーが離脱可能に挿入されるように構成されている。
【0066】
キー挿入部63にキーが挿入されると、キー挿入部63は、キー挿入部63を介してバッテリ切替スイッチ81と第1コントローラ50とを電気的に接続する。この場合、第1バッテリパック61及び第2バッテリパック62のうちバッテリ切替スイッチ81により選択された何れか一方からの電力が、バッテリ切替スイッチ81及びキー挿入部63を介して第1コントローラ50に入力される。この電力のことを、以下、「モータ駆動電力」と称する。
【0067】
キー挿入部63にキーが挿入されていない場合、キー挿入部63は、バッテリ切替スイッチ81と第1コントローラ50との、キー挿入部63を介した電気的接続を、遮断する。この場合、第1コントローラ50にはモータ駆動電力は入力されない。なお、以下の説明では、キー挿入部63にキーが挿入されていること、即ち第1コントローラ50にモータ駆動電力が入力される状態であることを前提としている。
【0068】
第1コントローラ50は、第1ゲート回路53を備える。制御回路51は、複数のモータ制御信号を第1ゲート回路53に出力する。モータ制御信号は、モータ25の回転を制御する信号である。モータ制御信号の各々は、本実施形態では、例えばパルス幅変調信号(PWM信号)である。トリガスイッチ102がオンされている間、第1ゲート回路53にはトリガスイッチ102を介してモータ駆動電力が入力される。第1ゲート回路53は、モータ駆動電力を用いて、モータ制御信号のそれぞれに対応した複数の駆動信号を生成する。駆動信号は、例えば、モータ制御信号をモータ駆動電力を用いて昇圧することにより生成される。
【0069】
第1コントローラ50は、駆動回路52を備える。第1ゲート回路53で生成された駆動信号は駆動回路52に入力される。駆動回路52には、トリガスイッチ102を介してモータ駆動電力が入力される。より詳しくは、本実施形態の第1コントローラ50は回生抑制回路54を備えており、駆動回路52には、トリガスイッチ102及び回生抑制回路54を介してモータ駆動電力が入力される。
【0070】
駆動回路52は、モータ25における第1~第3端子25u~25wに接続されている。駆動回路52は、入力されたモータ駆動電力から、モータ25を駆動するための三相駆動電力を生成して、モータ25(詳しくは第1~第3端子25u~25w)に供給する。
【0071】
本実施形態の駆動回路52は、三相フルブリッジ回路を備える。三相フルブリッジ回路は、第1スイッチ素子Q1と、第2スイッチ素子Q2と、第3スイッチ素子Q3と、第4スイッチ素子Q4と、第5スイッチ素子Q5と、第6スイッチ素子Q6とを備える。第1~第6スイッチ素子Q1~Q6の各々はどのようなスイッチ素子であってもよい。本実施形態では、第1~第6スイッチ素子Q1~Q6の各々は、例えばnチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
【0072】
第1ゲート回路53から出力された駆動信号はそれぞれ第1~第6スイッチ素子Q1~Q6に入力される。第1~第6スイッチ素子Q1~Q6はそれぞれ、入力される駆動信号に従ってオンまたはオフする。本実施形態のモータ制御信号は、前述の通り、PWM信号である。そのため、第1~第6スイッチ素子Q1~Q6のそれぞれは、対応する駆動信号のデューティ比(ひいては対応するモータ制御信号のデューティ比)に従って周期的にオンされる。
【0073】
前述の三相短絡ブレーキは、例えば、第1~第6スイッチ素子Q1~Q6のうちのいわゆるローサイド側の3つ(第4~第6スイッチ素子Q4~Q6)をオンしてハイサイド側の他の3つ(第1~第3スイッチ素子Q1~Q3)をオフすることにより行われる。
【0074】
前述の二相短絡ブレーキは、例えば、ローサイド側の第4~第6スイッチ素子Q4~Q6のうちのいずれか2つをオンして他の4つのスイッチ素子をオフすることにより行われる。二相短絡ブレーキにおいてオンされる2つのスイッチ素子は、当該2つのスイッチ素子を介して前述の二相短絡電流が流れるように設定される。
【0075】
回生抑制回路54は、トリガスイッチ102から駆動回路52に到る、モータ駆動電力の供給経路に設けられている。回生抑制回路54は、モータ25から駆動回路52を介して選択バッテリへ回生電流が流れるのを抑制する。なお、選択バッテリとは、第1バッテリパック61及び第2バッテリパック62のうちバッテリ切替スイッチ81により選択されているいずれか一方に対応する。
【0076】
本実施形態の回生抑制回路54は、互いに直列接続された2つのスイッチ素子Q7,Q8を備える。スイッチ素子Q7,Q8は例えばnチャネルMOSFETである。スイッチ素子Q7,Q8の各々は、ゲートとソースとが互いに短絡されている。モータ25からの回生電流は、スイッチ素子Q7,Q8それぞれが備える寄生ダイオードによって抑制される。
【0077】
また、第1コントローラ50は、電流検出回路55を備えている。電流検出回路55は、モータ25に流れている電流の値(以下、「モータ電流値」と称する)を検出する。電流検出回路55は、電流検出信号を制御回路51に出力する。電流検出信号は、モータ電流値を示す情報を含む。本実施形態の電流検出回路55は、駆動回路52とグランドラインとの間に設けられている。グランドラインは、第1,第2バッテリ61a,62aの負極に接続されている。
【0078】
図4に示すように、モータ25には、回転センサ64が設けられている。回転センサ64は、モータ25の回転を示す回転検出信号を第1コントローラ50(詳しくは制御回路51)に出力する。本実施形態における回転センサ64は、例えばホールセンサを備えている。回転検出信号は、パルス信号を含む。回転センサ64は、モータ25が一定角度回転する度にパルス信号を出力する。制御回路51は、パルス信号を受信することに応じて、モータ25が回転していることを検出できる。また、制御回路51は、パルス信号の受信間隔に基づいて、モータ回転数を検出できる。モータ回転数は、モータ25の単位時間あたりの回転数である。即ち、モータ回転数はモータ25の速度(回転速度)に対応する。また、制御回路51は、パルス信号の受信タイミングの変化に基づいて、モータ25の回転方向を検出できる。
【0079】
図4に示すように、電動運搬車1は、機械ブレーキスイッチ60を備える。機械ブレーキスイッチ60は、ブレーキレバー13bと連動してオンまたはオフされる。具体的には、機械ブレーキスイッチ60は、ブレーキレバー13bが操作されている間、オンされる。機械ブレーキスイッチ60は、機械ブレーキスイッチ信号を制御回路51に出力する。機械ブレーキスイッチ信号は、機械ブレーキスイッチ60がオンされているか否かを示す。
【0080】
図4に示すように、電動運搬車1は、前述の操作装置14を備える。操作装置14は、第1コントローラ50(詳しくは制御回路51)と電気的に接続されている。電動運搬車1は、前述のバッテリボックス15を備える。バッテリボックス15は、第1コントローラ50(詳しくは制御回路51)と電気的に接続されている。バッテリボックス15は、さらに、第1バッテリパック61及び第2バッテリパック62と電気的に接続されている。
【0081】
操作装置14について、
図5Aを参照して具体的に説明する。操作装置14は、主電源スイッチ101を備える。主電源スイッチ101は、使用者によってオン(例えば押下)されるように構成されている。主電源スイッチ101は例えばタクトスイッチであってもよい。主電源スイッチ101は、主電源スイッチ信号を制御回路51に出力する。主電源スイッチ信号は、主電源スイッチ101がオンされているか否かを示す。
【0082】
操作装置14は、トリガスイッチ102を備える。トリガスイッチ102は、駆動レバー14aと連動してオンまたはオフされる。具体的には、トリガスイッチ102は、駆動レバー14aが操作されている間、オンされる。トリガスイッチ102は、トリガスイッチ信号を制御回路51に出力する。トリガスイッチ信号は、トリガスイッチ102がオンされているか否かを示す。なお、
図4には、説明の便宜上、第1コントローラ50を示す破線枠内にトリガスイッチ102が図示されている。
【0083】
操作装置14は、引き量検出部103を備える。引き量検出部103は、駆動レバー14aの引き量を検出する。引き量検出部103は、引き量検出信号を制御回路51に出力する。引き量検出信号は、引き量検出部103が検出した引き量を示す。
【0084】
操作装置14は、方向切替スイッチ104を備える。方向切替スイッチ104は、電動運搬車1の進行方向を前進及び後退の何れかに設定するために使用者によりオン(例えば押下)される。方向切替スイッチ104は、方向切替スイッチ信号を制御回路51に出力する。方向切替スイッチ信号は、方向切替スイッチ104がオンされているか否かを示す。制御回路51は、方向切替スイッチ104がオンされる度(詳しくはオフからオンに変化する度)に、電動運搬車1の進行方向(詳しくはモータ25の回転方向)を交互に切り替える。方向切替スイッチ信号に応じて制御回路51により設定されるモータ25の回転方向のことを、以下、設定回転方向と称する。
【0085】
操作装置14は、方向表示部106を備える。制御回路51は、設定されている進行方向を示す方向表示信号を方向表示部106に出力する。方向表示部106は、制御回路51から入力された方向表示信号に従って、電動運搬車1の進行方向を表示する。
【0086】
操作装置14は、速度切替スイッチ105を備える。速度切替スイッチ105は、モータ25の速度モードを複数種類のモードのいずれかに設定するために使用者によりオン(例えば押下)される。本実施形態では、速度モードは、例えば、高速モード、中速モード及び低速モードのうちのいずれかに設定される。速度切替スイッチ105は、速度切替スイッチ信号を制御回路51に出力する。速度切替スイッチ信号は、速度切替スイッチ105がオンされているか否かを示す。制御回路51は、速度切替スイッチ105がオンされる度(詳しくはオフからオンに変化する度)に、速度モードを順次切り替える。
【0087】
操作装置14は、速度表示部107を備える。制御回路51は、設定されている速度モードを示す速度表示信号を速度表示部107に出力する。速度表示部107は、制御回路51から入力された速度表示信号に従って、電動運搬車1の速度モードを表示する。
【0088】
バッテリボックス15について、
図5Bを参照して具体的に説明する。バッテリボックス15は、前述のバッテリ切替スイッチ81を備える。
さらに、バッテリボックス15は、残量表示スイッチ82を備える。制御回路51は、第1バッテリ61a及び第2バッテリ62aのそれぞれの電力の残量を検出するように構成されている。残量表示スイッチ82は、第1バッテリ61a及び第2バッテリ62aのそれぞれの残量を表示させるために使用者によりオン(例えば押下)される。残量表示スイッチ82は、残量表示スイッチ信号を制御回路51に出力する。残量表示スイッチ信号は、残量表示スイッチ82がオンされているか否かを示す。
【0089】
また、バッテリボックス15は、第1残量表示部83及び第2残量表示部84を備える。制御回路51は、残量表示スイッチ信号に基づいて残量表示スイッチ82がオンされたことを認識する度に、第1バッテリ61aの残量を第1残量表示部83に表示し、第2バッテリ62aの残量を第2残量表示部84に表示する。
【0090】
また、バッテリボックス15は、第1電圧検出部85を備える。第1電圧検出部85は、第1バッテリパック61から出力された電圧、即ち第1バッテリ61aの出力電圧V1を検出する。第1電圧検出部85は、第1電圧信号を制御回路51に出力する。第1電圧信号は、出力電圧V1を示す情報を含む。
【0091】
また、バッテリボックス15は、第2電圧検出部86を備える。第2電圧検出部86は、第2バッテリパック62から出力された電圧の値、即ち第2バッテリ62aの出力電圧V2を検出する。第2電圧検出部86は、第2電圧信号を制御回路51に出力する。第2電圧信号は、出力電圧V2を示す情報を含む。
【0092】
また、バッテリボックス15は、第1通信部87を備える。第1通信部87は、第1バッテリパック61と制御回路51との通信を中継する。第1通信部87は、第1バッテリパック61から受信したデータを示す第1通信情報を制御回路51に出力する。
【0093】
また、バッテリボックス15は、第2通信部88を備える。第2通信部88は、第2バッテリパック62と制御回路51との通信を中継する。第2通信部88は、第2バッテリパック62から受信したデータを示す第2通信情報を制御回路51に出力する。
【0094】
図4に示すように、第1コントローラ50は、第1レギュレータ57を備えている。第1レギュレータ57には、第1バッテリパック61の出力電圧V1が、第1ダイオードD1を介して入力される。第1レギュレータ57には、さらに、第2バッテリパック62の出力電圧V2が、第2ダイオードD2を介して入力される。
【0095】
第1レギュレータ57は、当該第1レギュレータ57に入力される出力電圧V1及び/または出力電圧V2から、第1制御電圧Vc1を生成する。第1制御電圧Vc1は、制御回路51及びその周辺回路へ供給される。
【0096】
第1レギュレータ57は、制御回路51から電源制御信号が入力される。電源制御信号は、オンまたはオフを示す。第1レギュレータ57は、オンを示す電源制御信号が入力されることに応じて、第1制御電圧Vc1を生成する。第1レギュレータ57は、オフを示す電源制御信号が入力されることに応じて、第1制御電圧Vc1の生成を停止する。そのため、制御回路51は、オフを示す電源制御信号を出力することによって、第1レギュレータ57からの第1制御電圧Vc1の出力を停止させて制御回路51自身の動作を停止させることができる。
【0097】
第1レギュレータ57は、第1制御電圧Vc1の生成を停止しているときに起動トリガを受けることに応じて、第1制御電圧Vc1を生成する。起動トリガは、例えば、主電源スイッチ101がオンされること、及び/または残量表示スイッチ82がオンされることを含む。起動トリガによって電源電圧Vccが生成されると、制御回路51が起動する。
【0098】
第2コントローラ70には、第1バッテリパック61の出力電圧V1及び/または第2バッテリパック62の出力電圧V2が入力される。また、第2コントローラ70は、制御回路51及び電磁ブレーキ30に接続されている。
【0099】
第2コントローラ70は、スイッチ素子Q9を備える。スイッチ素子Q9は本実施形態では例えばnチャネルMOSFETである。スイッチ素子Q9のドレインには、出力電圧V1及び/または出力電圧V2が入力される。スイッチ素子Q9のソースは、電磁ブレーキ30に接続されている。より詳しくは、スイッチ素子Q9のソースは、電磁ブレーキ30における前述の電磁コイルの第1端に接続されている。電磁コイルの第2端は、グランドラインに接続されている。第2コントローラ70は、さらに、第5ダイオードD5を備える。第5ダイオードD5のアノードはグランドラインに接続されている。第5ダイオードD5のカソードはスイッチ素子Q9のソースに接続されている。
【0100】
スイッチ素子Q9がオンされている場合、出力電圧V1及び/または出力電圧V2が、スイッチ素子Q9を介して電磁ブレーキ30に出力される。これにより、電磁ブレーキ30がオフされ、電磁ブレーキ30によるモータ25の制動が解除される。スイッチ素子Q9がオフされている場合は、出力電圧V1及び出力電圧V2はいずれも電磁ブレーキ30に出力されない。この場合、電磁ブレーキ30がオンされ、モータ25が制動される。
【0101】
第2コントローラ70は、信号判定回路71を備える。信号判定回路71には、制御回路51から電磁ブレーキ制御信号が入力される。電磁ブレーキ制御信号は、本実施形態では例えば二値信号である。即ち、電磁ブレーキ制御信号は、電磁ブレーキ30をオンまたはオフのどちらにすべきかを示す。信号判定回路71は、電磁ブレーキ制御信号がオン及びオフのどちらを示しているか判定し、判定結果を示す判定信号を出力する。
【0102】
第2コントローラ70は、第2ゲート回路72を備える。第2ゲート回路72は、信号判定回路71から判定信号が入力される。第2ゲート回路72は、入力された判定信号に従って、スイッチ素子Q9をオンまたはオフする。具体的には、電磁ブレーキ30のオンを判定信号が示している場合は、第2ゲート回路72は、スイッチ素子Q9をオフして電磁ブレーキ30への給電を阻止する。一方、電磁ブレーキ30のオフを判定信号が示している場合は、第2ゲート回路72は、スイッチ素子Q9をオンして電磁ブレーキ30による制動を解除する。
【0103】
第2コントローラ70は、第2レギュレータ73を備えている。レギュレータ73には、第1バッテリパック61の出力電圧V1が、第3ダイオードD3を介して入力される。レギュレータ73には、さらに、第2バッテリパック62の出力電圧V2が、第4ダイオードD4を介して入力される。
【0104】
レギュレータ73は、当該レギュレータ73に入力される出力電圧V1及び/または出力電圧V2から、第2制御電圧Vc2を生成する。第2制御電圧Vc2は、信号判定回路71及び第2ゲート回路72へ供給される。
【0105】
図4は、モータ25の回転が伝達機構21を介して前輪8,9に伝達されることを模式的に示している。
図4は、さらに、モータ25の回転が電磁ブレーキ30により制動され得ること、及び前輪8,9の回転が機械ブレーキ24により制動され得ることを模式的に示している。
【0106】
(3)モータ制御の概要
制御回路51によるモータ25の制御方法の概要を説明する。本実施形態の制御回路51は、例えば、5種類の制御モードを備える。制御回路51は、制御回路51を5種類の制御モードのうちの1つに設定する。5種類の制御モードは、初期モード、待機モード、第1ブレーキモード、第2ブレーキモード及び駆動モードを備える。なお、以下の説明において「ブレーキモード」とは、第1ブレーキモード及び/または第2ブレーキモードを意味する。
【0107】
電動運搬車1が停止していて且つモータ駆動条件が成立していない場合は、制御回路51は基本的には制御モードを待機モードに設定する。モータ駆動条件はどのような場合に成立してもよい。本実施形態では、モータ駆動条件は、例えば、トリガスイッチ102がオンし(つまり駆動レバー14aが操作され)、且つ機械ブレーキスイッチ60がオフする(つまりブレーキレバー13bが操作されない)ことに応じて成立する。なお、モータ駆動条件は、例えばトリガスイッチ102がオンすることに応じて成立してもよい。また例えば、モータ駆動条件は、トリガスイッチ102がオンし且つ機械ブレーキスイッチ60がオフすることに加えて、さらに1以上の別の条件が成立することに応じて、成立してもよい。
【0108】
待機モードに設定された制御回路51は、電磁ブレーキをオンし、且つ三相短絡ブレーキをかける。即ち、制御回路51は、三相短絡ブレーキを作動させる(つまり第1~第3端子25u~25wを互いに短絡する)ことによりモータ25を制動する。
【0109】
なお、制御回路51は、電動運搬車1が走行しているとき(即ちモータ25が回転しているとき)に制御モードを待機モードに設定することがある。この場合、制御回路51は、電磁ブレーキをオフし、二相短絡ブレーキをかける。
【0110】
待機モードに設定された制御回路51は、モータ駆動条件が成立することに応じて、制御モードをブレーキモードに設定する。ブレーキモードでは、制御回路51は、電磁ブレーキをオフし、短絡ブレーキを二相短絡ブレーキに切り替える。更に、制御回路51は、二相短絡ブレーキの制動力を徐々に低下させていく。電磁ブレーキがオフされる一方で短絡ブレーキが維持されることにより、例えば電動運搬車1が下り坂に存在している場合に電動運搬車1が重力により下り方向へ加速することが抑制される。
【0111】
ただし、制御回路51は、リトリガ操作された時の使用者の使用感(再起動性)を良くするために、モータ駆動条件が成立したときに第1の条件が成立している場合は、短絡ブレーキをすぐに解除する。具体的には、制御モードをすぐに駆動モードに切り替えることにより、短絡ブレーキを速やかに解除する。この場合、制御回路51は、制御モードを待機モードからブレーキモードに切り替えることなく駆動モードに切り替えてもよいし、一時的にブレーキモードに設定した後に速やかに駆動モードに切り替えてもよい。
【0112】
駆動モードに設定された制御回路51は、モータ25へ三相駆動電力を供給することによりモータ25を駆動する。駆動モードに設定された制御回路51は、モータ回転数を監視し、モータ回転数が目標回転数に一致するようにモータ25を制御する。制御回路51は、モータ回転数に加えてモータ電流値も監視し、その監視結果に応じてモータ25を制御してもよい。制御回路51は、監視結果に応じて、制御モードを駆動モードからブレーキモードに切り替えることがある。
【0113】
第1の条件は、どのような場合に成立してもよい。本実施形態では、第1の条件は、例えば、モータ回転数が第1回転数閾値R1以上であって、且つブレーキ制御量が制御量閾値M1[%]以下であることに応じて成立する。
【0114】
ブレーキ制御量は、二相短絡ブレーキの制動力を決定付ける。ブレーキ制御量は本実施形態では例えば0%~100%の範囲内の値をとり得る。制御回路51は、モータ回転数及び後述するブレーキ指令回転数などに基づいてブレーキ制御量を算出する。制御回路51は、算出したブレーキ制御量に従って二相短絡ブレーキをかける。ブレーキ制御量が0%の場合、制御回路51は二相短絡ブレーキの制動力をゼロにする。つまりこの場合は二相短絡ブレーキを作動させない。ブレーキ制御量が100%の場合、制御回路51は二相短絡ブレーキの制動力を最大にする。制御回路51は、ブレーキ制御量が大きいほど二相短絡ブレーキの制動力が大きくなるように二相短絡ブレーキをかける。
【0115】
制御量閾値M1は、どのように設定されてもよい。制御量閾値M1は、例えば、50%以下の任意の値に設定されてもよい。制御量閾値M1は、例えば、25%に設定されてもよい。
【0116】
ブレーキモードに設定された制御回路51は、第2の条件が成立することに応じて、制御モードを駆動モードに設定する。第2の条件は、どのような場合に成立してもよい。本実施形態では、第2の条件は、例えば、条件Aが成立した後にさらに条件Bまたは条件Cが成立することに応じて成立する。
【0117】
条件A(本開示における第4の条件の一例に相当)は、モータ駆動条件の成立以後、即ち制御モードが待機モードからブレーキモードに切り替わった以後の、判定開始タイミング(本開示における第2タイミングの一例に相当)から、待機時間Ta(本開示における第2時間の一例に相当)が経過することに応じて成立する。判定開始タイミングはどのように設定されてもよい。判定開始タイミングは例えば、駆動条件の成立時でもよいし、制御モードがブレーキモードに設定された時であってもよいし、電磁ブレーキ30がオンされた時であってもよいし、待機モードからブレーキモードに移行した後の最初の第1解除判定処理(詳細は後述。
図9参照。)の開始時であってもよい。
【0118】
条件B(本開示における第3の条件の一例に相当)は、条件Aが成立した以後の計測開始タイミング(本開示における第1タイミングの一例に相当)から回転数判定時間Tb(本開示における第1時間の一例に相当)継続してモータ回転数が第2回転数閾値R2以下の状態を維持することに応じて成立する。第2回転数閾値R2はどのように設定されてもよい。第2回転数閾値R2は例えばゼロであってもよい。計測開始タイミングはどのように設定されてもよい。計測開始タイミングは例えば、待機モードからブレーキモードに移行した後に初めて条件Aが成立した時であってもよい。
【0119】
条件C(本開示における第5の条件の一例に相当)は、モータ25が設定回転方向とは逆の方向へ回転していることに応じて成立する。条件Cは、例えば、電動運搬車1が上り坂で停止している状態で駆動レバー14aが操作されたときに電動運搬車1が重力により下降することによって成立し得る。
【0120】
駆動モード中に、例えば駆動レバー14aの操作が解除されるなどして、モータ駆動条件が成立しなくなると、制御回路51は、制御モードを待機モードに切り替える。この場合、制御回路51は、二相短絡ブレーキの制動力を徐々に強くしていくことにより電動運搬車1の速度を低下させる。そして、モータ25の回転が停止したら、制御回路51は、電磁ブレーキ30及び三相短絡ブレーキをかける。
【0121】
(4)メイン制御処理
上記のようなモータ25の制御を実現するために制御回路51(より詳しくはCPU51a)が実行するメイン制御処理について、
図6を参照して説明する。制御回路51(より詳しくはCPU51a)は、起動すると、
図8に示すメイン処理を実行する。
【0122】
制御回路51は、メイン処理を開始すると、S110で、制御周期が経過したか否か判断する。制御周期は例えば予め設定されていてもよい。制御周期が経過していない場合(S110:NO)、制御回路51は、制御周期が経過するまでS110の処理を繰り返す。制御周期が経過した場合(S110:YES)、制御回路51は、S120で、スイッチ情報取得処理を実行する。
【0123】
スイッチ情報取得処理では、制御回路51は、例えば、トリガスイッチ102、機械ブレーキスイッチ60、主電源スイッチ101、速度切替スイッチ105、方向切替スイッチ104及びバッテリ切替スイッチ81などの各種スイッチから制御回路51に入力されるそれぞれの前述の信号を取得する。また、制御回路51は、スイッチ情報取得処理で、引き量検出部103から入力される引き量検出信号を取得する。
【0124】
スイッチ情報取得処理が完了すると、制御回路51は、S130で、電源制御処理を実行する。電源制御処理では、制御回路51は、S120で取得した主電源スイッチ信号に基づいて、電源制御信号をオンまたはオフに設定する。具体的には、電源制御信号をオフに設定しているときに主電源スイッチ101がオンされた場合は、制御回路51は電源制御信号をオンに設定する。電源制御信号をオンに設定しているときに主電源スイッチ101がオンされた場合は、制御回路51は電源制御信号をオフに設定する。
【0125】
電源制御処理が完了すると、制御回路51は、S140で、バッテリ情報取得処理を実行する。バッテリ情報取得処理では、制御回路51は、第1電圧検出部85から入力される第1電圧信号、及び第2電圧検出部86から入力される第2電圧信号を取得する。また、制御回路51は、バッテリ情報取得処理で、第1通信部87から入力される第1通信情報、及び第2通信部88から入力される第2通信情報を取得する。
【0126】
バッテリ情報取得処理が完了すると、制御回路51は、S150で、制御モード設定処理を実行する。制御モード設定処理の詳細は、
図7に示す通りである。制御回路51は、制御モード設定処理を開始すると、S201で、モータ駆動条件を判定する。制御回路51は、さらに、モータ回転数を検出する。現在の制御周期期間中における以後の処理においては、S201で得られたモータ駆動条件の判定結果及びモータ回転数が用いられる。
【0127】
制御回路51は、S202で、モータ駆動条件が成立しているか否か判断する。モータ駆動条件が成立している場合(S202:YES)、制御回路51は、S203で、駆動時間の計測を開始すると共に停止時間をリセットする。駆動時間の計測が既に開始されている場合はその計測を継続する。モータ駆動条件が成立していない場合(S202:NO)、制御回路51は、S204で、駆動時間をリセットすると共に停止時間の計測を開始する。停止時間の計測が既に開始されている場合はその計測を継続する。
【0128】
S203またはS204の処理を完了した制御回路51は、S205で、現在の制御モードを判断する。なお、メイン制御処理が開始された直後の初期状態では、制御モードは例えば初期モードに設定されている。現在の制御モードが初期モードである場合、制御回路51は、S211で、モータ25の制御に用いる各種変数を初期化する。各種変数には、後述する各種フラグ、後述するブレーキ解除の可否、速度モード、設定回転方向、ブレーキ指令回転数などが含まれる。S211では、制御回路51は例えば、各種フラグをクリアし、ブレーキ解除を不許可にし、速度モードを低速モードに設定し、設定回転方向を第1の方向(電動運搬車1が前進する方向)に設定し、ブレーキ指令回転数を0に設定する。
【0129】
S212では、制御回路51は、制御モードを待機モードに設定する。S213では、制御回路51は、現在設定されている制御モードの継続時間を計算する。S213の処理後は、本処理はS160(
図6参照)に進む。
【0130】
S205で、現在の制御モードが待機モードである場合、制御回路51は、S221の処理を実行する。S221では、制御回路51は、S202と同様に、モータ駆動条件が成立しているか否か判断する。モータ駆動条件が成立している場合(S221:YES)、制御回路51は、S222で、制御モードを第1ブレーキモードに設定する。つまり、制御回路51は、モータ駆動条件が成立した場合、すぐに駆動モードに移行するのではなく、短絡ブレーキがかかった状態を維持させるために、第1ブレーキモードに移行する。S222の処理を完了した制御回路51は、S213の処理を実行する。S221で、モータ駆動条件が成立していない場合(S221:NO)、制御回路51は、S213の処理に移行する。
【0131】
S205で、現在の制御モードが第1ブレーキモードである場合、制御回路51は、
図8に示すS301の処理を実行する。S301では、制御回路51は、S202と同様に、モータ駆動条件が成立しているか否か判断する。モータ駆動条件が成立していない場合(S301:NO)、制御回路51は、S307で、制御モードを待機モードに設定する。S307の処理を完了した制御回路51は、S213(
図7参照)の処理に移行する。
【0132】
S301でモータ駆動条件が成立している場合(S301:YES)、制御回路51は、S302で、第1解除判定処理を実行する。第1解除判定処理は、短絡ブレーキを解除してもよいか否かを判定する処理である。第1解除判定処理の詳細は
図9に示す通りである。
【0133】
制御回路51は、第1解除判定処理に移行すると、S311で、当該第1解除判定処理の開始直後であるか否か、即ち、待機モードから第1ブレーキモードに移行した後の最初の第1解除判定処理を実行中であるか否かを判断する。
【0134】
当該第1解除判定処理の開始直後である場合(S311:YES)、制御回路51は、S312で、モータ回転数が第1回転数閾値R1以上であって且つ現在算出されているブレーキ制御量が制御量閾値M1未満であるか否か判断する。つまり、制御回路51は、前述の第1の条件が成立するか否か判断する。
【0135】
モータ回転数が第1回転数閾値R1以上であって且つ現在算出されているブレーキ制御量が制御量閾値M1未満である場合(つまり第1の条件が成立している場合)(S312:YES)、制御回路51は、S313で、ブレーキ解除処理を実行する。具体的には、制御回路51は、ブレーキ解除を許可する。なお、ここでいうブレーキ解除とは、短絡ブレーキを解除することを意味する。S313の処理を完了した制御回路51は、S303(
図8参照)の処理に移行する。
【0136】
S312で、モータ回転数が第1回転数閾値R1未満、及び/または現在算出されているブレーキ制御量が制御量閾値M1以上である場合(S312:NO)、制御回路51は、ブレーキ解除を許可することなく、S303の処理に移行する。
【0137】
S311で、当該第1解除判定処理の開始直後ではない場合、即ち、待機モードから第1ブレーキモードに移行した後の2回目以降の第1解除判定処理を実行中である場合(S311:NO)。制御回路51は、S314の処理に移行する。
【0138】
S314では、制御回路51は、前述の判定開始タイミングから前述の待機時間Taが経過したか否か判断する。つまり、制御回路51は、前述の条件Aが成立するか否かを判断する。なお、S314の処理の目的の1つは、例えば、待機モードから第1ブレーキモードに移行した直後の過渡期にS315及びS316の処理が実行されることを回避することにある。
【0139】
判定開始タイミングから待機時間Taが経過していない場合(つまり条件Aが成立していない場合)(S314:NO)、制御回路51は、本第1解除判定処理を終了してS303(
図8参照)の処理に移行する。
【0140】
判定開始タイミングから待機時間Taが経過している場合(つまり条件Aが成立している場合)(S314:YES)、制御回路51は、S315の処理を実行する。S315では、制御回路51は、モータ回転数が第2回転数閾値以下の状態が回転数判定時間Tb継続しているか否か判断する。つまり、制御回路51は、前述の条件Bが成立するか否かを判断する。
【0141】
S315では、より具体的には、制御回路51は、計測開始タイミングから回転数判定時間Tb継続してモータ回転数が第2回転数閾値R2以下であるか否かを判断する。計測開始タイミングは例えば、待機モードからブレーキモードに移行した後に初めてS314で条件Aが成立したことが判断された時であってもよい。
【0142】
モータ回転数が第2回転数閾値以下の状態が回転数判定時間Tb継続している場合(つまり条件Bが成立している場合)(S315:YES)、制御回路51は、S317で、S313と同様にブレーキ解除処理を実行する。ブレーキ解除処理を完了した制御回路51は、S303(
図8参照)の処理に移行する。なお、S315で条件Bが成立しているということは、例えば、電動運搬車1が平地に存在していてモータ25が回転していないか若しくはごく低速で回転している状態が想定され得る。
【0143】
モータ回転数が第2回転数閾値以下の状態が回転数判定時間Tb継続していない場合(つまり条件Bが成立していない場合)(S315:NO)、制御回路51は、S316の処理を実行する。S316では、制御回路51は、モータ25の現在の回転方向が設定回転方向と異なるか否か判断する。つまり、制御回路51は、前述の条件Cが成立するか否かを判断する。
【0144】
モータ25の現在の回転方向が設定回転方向に一致する場合(つまり条件Cが成立しない場合)(S316:NO)、制御回路51は、S303(
図8参照)の処理に移行する。モータ25の現在の回転方向が設定回転方向と異なる場合(つまり条件Cが成立している場合)(S316:YES)、制御回路51は、S317で、ブレーキ解除処理を実行する。
【0145】
図8に戻って説明を続ける。S302の第1解除判定処理を完了した制御回路51は、S303で、ブレーキ解除が許可されているか否か判断する。ブレーキ解除が許可されている場合(S303:YES)、制御回路51は、S304で、制御モードを駆動モードに設定する。S304の処理を完了した制御回路51は、S213(
図7参照)の処理に移行する。
【0146】
S303で、ブレーキ解除が許可されていない場合(S303:NO)、制御回路51は、S305の処理を実行する。S305では、制御回路51は、モータ回転数が第3回転数閾値R3以上であるか否か判断する。第3回転数閾値R3は、例えば、第1回転数閾値R1よりも大きい。なお、第2回転数閾値R2は、例えば、前述の通りゼロであってもよいし、0より大きく第1,第3回転数閾値R1,R3のいずれよりも小さくてもよい。
【0147】
S305で、モータ回転数が第3回転数閾値R3未満である場合(S305:NO)、制御回路51は、第1ブレーキモードを維持したまま、S213(
図7参照)の処理に移行する。モータ回転数が第3回転数閾値R3以上である場合(S305:YES)、制御回路51は、S306の処理を実行する。S306では、制御回路51は、制御モードを第2ブレーキモードに設定する。S306の処理を完了した制御回路51は、S213(
図7参照)の処理に移行する。
【0148】
S205(
図7参照)で、現在の制御モードが第2ブレーキモードに設定されている場合、制御回路51は、
図10に示すS401の処理を実行する。第2ブレーキモードに設定されているということは、例えば、二相短絡ブレーキの制動力が調整されつつ下り坂を下っている状況が想定され得る。
【0149】
S401では、制御回路51は、S202と同様に、モータ駆動条件が成立しているか否か判断する。モータ駆動条件が成立していない場合(S401:NO)、制御回路51は、S405で、制御モードを待機モードに設定する。S405の処理を完了した制御回路51は、S213(
図7参照)の処理に移行する。
【0150】
S401でモータ駆動条件が成立している場合(S401:YES)、制御回路51は、S402で、第2解除判定処理を実行する。第2解除判定処理は、短絡ブレーキを解除してもよいか否かを判定する処理である。第2解除判定処理の詳細は
図11Aに示す通りである。
【0151】
制御回路51は、第2解除判定処理に移行すると、S411で、モータ回転数が第4回転数閾値R4未満であるか否か判断する。第4回転数閾値R4は、例えば、現在設定されている目標回転数に応じて設定される。具体的には、第4回転数閾値R4は、目標回転数よりも小さい値に設定されている。第4回転数閾値R4は、例えば、目標回転数の1/2、もしくは、目標回転数の1/2を含む所定の範囲内の値であってもよい。目標回転数は、後述する目標回転数設定処理(
図13参照)で設定される。
【0152】
S411で、モータ回転数が第4回転数閾値R4未満である場合(S411:YES)、モータ回転数が目標回転数よりも低い状態であることから、制御回路51は、S413で、S313と同様にブレーキ解除処理を実行する。ブレーキ解除処理を完了した制御回路51は、S403(
図10参照)の処理に移行する。
【0153】
S411で、モータ回転数が第4回転数閾値R4以上である場合(S411:NO)、制御回路51は、S412で、現在設定されているブレーキ制御量が制御量閾値M1未満であるか否か判断する。ブレーキ制御量が制御量閾値M1未満である場合(S412:YES)、大きな制動力が要求されていない状況であることから、制御回路51は、S413でブレーキ解除処理を実行する。ブレーキ制御量が制御量閾値M1以上である場合(S412:NO)、制御回路51は、S403(
図10参照)の処理に移行する。
【0154】
S403では、制御回路51は、ブレーキ解除が許可されているか否か判断する。ブレーキ解除が許可されている場合(S403:YES)、制御回路51は、S404で、制御モードを駆動モードに設定する。S404の処理を完了した制御回路51は、S213(
図7参照)の処理に移行する。
【0155】
S403で、ブレーキ解除が許可されていない場合(S403:NO)、制御回路51は、第2ブレーキモードを維持したまま、S213(
図7参照)の処理に移行する。
S205(
図7参照)で、現在の制御モードが駆動モードに設定されている場合、制御回路51は、
図10に示すS501の処理を実行する。駆動モードに設定された制御回路51は、短絡ブレーキを解除し(つまりブレーキ制御量を0に設定し)、モータ25へ三相駆動電力を供給してモータ25を駆動している。
【0156】
S501では、制御回路51は、モータ駆動条件が成立しているか否か判断する。モータ駆動条件が成立していない場合(S501:NO)、制御回路51は、S505で、制御モードを待機モードに設定する。S505の処理を完了した制御回路51は、S213(
図7参照)の処理に移行する。
【0157】
S501でモータ駆動条件が成立している場合(S501:YES)、制御回路51は、S502で、ブレーキ開始判定処理を実行する。ブレーキ開始判定処理は、短絡ブレーキをかけるべき状況になったか否かを判定する処理である。ブレーキ開始判定処理の詳細は
図11Bに示す通りである。
【0158】
制御回路51は、ブレーキ開始判定処理に移行すると、S511で、モータ回転数が第5回転数閾値R5より大きいか否か判断する。第5回転数閾値R5は、例えば、現在設定されている目標回転数に応じて設定される。具体的には、第5回転数閾値R5は、目標回転数よりも大きい値に設定されている。第5回転数閾値R5は、例えば、目標回転数よりも所定回転数高い値であってもよい。
【0159】
S511で、モータ回転数が第5回転数閾値R5以下である場合(S511:NO)、制御回路51は、S503(
図10参照)の処理に移行する。
S511で、モータ回転数が第5回転数閾値R5より大きい場合(S511:YES)、制御回路51は、S512で、現在検出されているモータ電流値が電流閾値未満であるか否か判断する。モータ電流値が電流閾値以上である場合(S512:NO)、制御回路51は、S503(
図10参照)の処理に移行する。
【0160】
モータ電流値が電流閾値未満である場合(S512:YES)、例えば、モータ25が軽負荷で比較的高速で回転している状況が想定され得る。より具体的には、例えば、平地を走行していた電動運搬車1が下り坂にさしかかったことにより重力によって速度が上昇した状況が想定され得る。
【0161】
そこで、モータ電流値が電流閾値未満である場合(S512:YES)、制御回路51は、短絡ブレーキをかけるために、S513で、ブレーキ開始要求フラグをセットするする。S513の処理を完了した制御回路51は、S503(
図10参照)の処理に移行する。なお、S512の判断処理は省かれてもよい。
【0162】
S503では、制御回路51は、ブレーキ開始要求フラグがセットされているか否か判断する。ブレーキ開始要求フラグがセットされている場合(S503:YES)、制御回路51は、S504で、制御モードを第2ブレーキモードに設定する。S504では、制御回路51は、さらに、ブレーキ開始要求フラグをクリアする。S504の処理を完了した制御回路51は、S213(
図7参照)の処理に移行する。
【0163】
図7の制御モード設定処理を完了した制御回路51は、S160(
図6参照)の処理に移行する。S160では、制御回路51は、電磁ブレーキ制御処理を実行する。電磁ブレーキ制御処理の詳細は
図12に示す通りである。
【0164】
制御回路51は、電磁ブレーキ制御処理に移行すると、S601で、現在の制御モードを判断する。現在の制御モードが初期モードである場合、制御回路51は、S602で、電磁ブレーキ処理関連の初期化を実行する。そして、S603で、制御回路51は、電磁ブレーキ30をオンして電磁ブレーキ30による制動力を発生させる。S603で電磁ブレーキ30をオンした制御回路51は、S170(
図6参照)の処理に移行する。
【0165】
S601で、現在の制御モードが待機モードである場合、制御回路51は、S604で、モータ停止状態を判定する。即ち、モータ25が停止している(無回転状態である)か否か判断する。モータ25が停止していない場合(S604:NO)、制御回路51は、S170(
図6参照)の処理に移行する。モータ25が停止している場合(S604:YES)、制御回路51は、S605で、S603と同様に電磁ブレーキ30をオンする。S605で電磁ブレーキ30をオンした制御回路51は、S170(
図6参照)の処理に移行する。なお、S604における「モータ25が停止している」とは、モータ25が完全に停止している(即ち回転数が0)であることに限定されてもよいし、限定されなくてもよい。例えば、モータ25が所定の閾値(本開示における第3回転数閾値の一例に想到)以下で回転している状態もここでいう「モータ25が停止している」状態に含まれてもよい。所定の閾値は、例えば、0近傍の値であってもよいし、0であってもよい。
【0166】
S601で、現在の制御モードが第1ブレーキモード、第2ブレーキモード及び駆動モードのいずれかである場合、制御回路51は、S606で、電磁ブレーキ30をオフして電磁ブレーキ30による制動を解除する。S606で電磁ブレーキ30をオフした制御回路51は、S170(
図6参照)の処理に移行する。
【0167】
S170では、制御回路51は、モータ制御処理を実行する。モータ制御処理の詳細は
図13に示す通りである。
制御回路51は、モータ制御処理に移行すると、S171で、目標回転数設定処理を実行する。具体的には、制御回路51は、速度モード設定処理と設定回転方向設定処理とを実行する。速度モード設定処理は、S120で取得した速度切替スイッチ信号に基づいて、速度モードを切り替えまたは現状維持することを含む。設定回転方向設定処理は、S120で取得した方向切替スイッチ信号に基づいて、設定回転方向を切り替えまたは現状維持することを含む。S171では、制御回路51はさらに、速度モード設定処理で設定された速度モードと、設定回転方向設定処理により設定された設定回転方向と、駆動レバー14aの引き量とに基づいて、目標回転数および目標デューティ比を設定する。目標デューティ比は、モータ制御信号のデューティ比の目標値である。
【0168】
S171の処理を完了した制御回路51は、S172で、モータ出力制御処理を実行する。モータ出力制御処理の詳細は、
図14に示す通りである。制御回路51は、モータ出力制御処理に移行すると、S611で、現在の制御モードを判断する。現在の制御モードが初期モードである場合は、制御回路51は、S612で、モータ駆動処理の初期化を実行する。モータ駆動処理は、S651で実行される処理である。モータ駆動処理では、後述するように、駆動レバー14aの引き量に応じた速度で電動運搬車1が走行するようにモータ25を制御する処理である。S612では、そのモータ駆動処理で算出される各種変数、フラグ、カウンタ等を初期化する。これにより、モータ制御信号の出力が停止され、駆動回路52からモータ25へ三相駆動電力が供給されない。
【0169】
S613では、制御回路51は、ブレーキ処理の初期化を実行する。具体的には、制御回路51は、ブレーキ制御量を0に設定し、ブレーキ指令回転数を0に設定する。これにより、短絡ブレーキ及び電磁ブレーキ30がいずれもオフされる。
【0170】
S611で、現在の制御モードが待機モードである場合、制御回路51は、S621で、S612と同様にモータ駆動処理の初期化を実行する。S621の処理を完了した制御回路51は、S622で、待機ブレーキ処理を実行する。待機ブレーキ処理の詳細は
図15に示す通りである。
【0171】
制御回路51は、待機ブレーキ処理に移行すると、S701で、当該待機ブレーキ処理の実行直後であるか否か、即ち、待機モード以外のモードから待機モードに切り替わった後の最初の当該待機ブレーキ処理の実行中であるか否かを判断する。待機ブレーキ処理の実行直後である場合(S701:YES)、制御回路51は、S702の処理を実行する。
【0172】
S702では、制御回路51は、現在設定されているブレーキ指令回転数が0であるか否か判断する。なお、ブレーキ指令回転数の初期値は前述の通り0である。ブレーキ指令回転数は、二相短絡ブレーキにおける、二相短絡ブレーキによって低下させるべきモータ25の回転数の目標値である。後述するように、ブレーキ制御量は、モータ回転数がブレーキ指令回転数に一致(または近づく)ように、ブレーキ指令回転数と実際のモータ回転数とに基づいて算出される。
【0173】
ブレーキ指令回転数が0でない場合(S702:NO)、制御回路51は、S704の処理に移行する。ブレーキ指令回転数が0に設定されている場合(S702:YES)、制御回路51は、S703の処理を実行する。S703では、制御回路51は、ブレーキ指令回転数を、現在のモータ回転数に基づいて初期設定する。S703におけるブレーキ指令回転数の初期設定はどのような方法で行われてもよい。例えば、現在のモータ回転数よりも第1の規定回転数だけ低い回転数をブレーキ指令回転数に設定してもよい。また例えば、現在のモータ回転数のP%(例えば50<P<100)をブレーキ指令回転数に設定してもよい。
【0174】
S704では、制御回路51は、三相ブレーキフラグをクリアする。本実施形態では、三相ブレーキフラグをクリアすることは、三相短絡ブレーキを解除すること、即ち三相短絡ブレーキによる制動力を発生させないことを意味する。S704の処理を完了(即ちS170のモータ制御処理を完了)した制御回路51は、S110(
図6参照)に移行する。
【0175】
S701で、待機ブレーキ処理の実行直後ではない場合(S701:NO)、制御回路51は、S706で、モータ25が停止しているか否か判断する。モータ25が回転している場合(S706:NO)、制御回路51は、S708の処理に移行する。モータ25が停止している場合(S706:YES)、制御回路51は、S707で、三相ブレーキフラグをセットする。なお、ここではまだ三相短絡ブレーキを作動しない。
【0176】
S708では、制御回路51は、三相ブレーキフラグがセットされているか否か判断する。三相ブレーキフラグがセットされている場合(S708:YES)、制御回路51は、S709の処理に移行する。S709では、制御回路51は、ブレーキ指令回転数を0に設定する。次に、S710で、制御回路51は、ブレーキ制御量を100%に設定する。次に、S711で、制御回路51は、三相短絡ブレーキを出力する。即ち、三相短絡ブレーキを作動させ、三相短絡ブレーキによる制動力を発生させる。S711の処理を完了した制御回路51は、S110(
図6参照)に移行する。なお、S710で二相短絡ブレーキのブレーキ制御量が100%に設定されるが、S711で第1~第3端子25U~25Wが互いに短絡されるため、二相短絡ブレーキは実際には行われない。
【0177】
S708で、三相ブレーキフラグがセットされていない場合(S708:NO)、制御回路51は、S712の処理に移行する。S708からS712に移行することは、モータ25が惰性でまたは外力を受けて回転していることを意味する。
【0178】
S712~S714の処理は、その回転しているモータ25の回転数を徐々に低下させて(換言すれば二相短絡ブレーキの制動力を徐々に増加させて)最終的にモータ25を停止させるための処理である。
【0179】
S712では、制御回路51は、ブレーキ指令回転数の演算処理を実行する。具体的には、制御回路51は、ブレーキ指令回転数を、最終的な目標である0にはすぐには設定せず、現在設定されている値から低下(例えば微減)させる。制御回路51は、S712で低下させる量はどのように算出されてもよい。例えば、現在のブレーキ指令回転数から第2の規定回転数を減算した値を新たなブレーキ指令回転数に設定してもよい。また例えば、現在のブレーキ指令回転数のQ%(例えば0<Q<30)を現在のブレーキ指令回転数から減算した値を新たなブレーキ指令回転数に設定してもよい。
【0180】
S713では、制御回路51は、S712で算出したブレーキ指令回転数と現在のモータ回転数との差分に基づき、ブレーキ制御量を算出する。具体的には、モータ回転数をブレーキ指令回転数まで低下させるために、モータ回転数がブレーキ指令回転数よりも大きいほどブレーキ制御量が大きく(つまり制動力が大きく)なるようにブレーキ制御量を算出する。
【0181】
S714では、制御回路51は、S713で算出したブレーキ制御量に従って二相短絡ブレーキをかける。即ち、制御回路51は、ブレーキ制御量に対応した制動力が発生するように、駆動回路52を制御して、短絡する2つの端子及び短絡期間を調整する。
【0182】
このようなS712~S714の処理が制御周期毎に繰り返し実行されることにより、ブレーキ指令回転数が徐々に低下していき、これによりモータ回転数が徐々に低下していく。S714の処理を完了した制御回路51は、S110(
図6参照)に移行する。
【0183】
図14に戻って説明を続ける。S611で、現在の制御モードが第1ブレーキモードである場合、制御回路51は、S631で、S612と同様にモータ駆動処理の初期化を実行する。
【0184】
S631の処理を完了した制御回路51は、S632で、第1ブレーキ処理を実行する。第1ブレーキ処理は、停止中のモータ25を回転させる際に、すぐに短絡ブレーキを解除せず短絡ブレーキの制動力を徐々に弱めていくための処理である。より具体的には、第1ブレーキ処理は、短絡ブレーキを三相短絡ブレーキから二相短絡ブレーキに切り替えると共に、二相短絡ブレーキの制動力を徐々に弱めていくための処理である。第1ブレーキ処理の詳細は
図16に示す通りである。
【0185】
制御回路51は、第1ブレーキ処理に移行すると、S811で、当該第1ブレーキ処理の実行直後であるか否か、即ち、第1ブレーキモード以外のモードから第1ブレーキモードに切り替わった後の最初の当該第1ブレーキ処理の実行中であるか否かを判断する。第1ブレーキ処理の実行直後である場合(S811:YES)、制御回路51は、S812の 処理を実行する。S812では、制御回路51は、三相ブレーキフラグをクリアする。
【0186】
S813では、制御回路51は、現在設定されているブレーキ指令回転数が0であるか否か判断する。ブレーキ指令回転数が0でない場合(S813:NO)、制御回路51は、S110(
図6参照)に移行する。ブレーキ指令回転数が0に設定されている場合(S813:YES)、制御回路51は、S814の処理を実行する。S814では、制御回路51は、ブレーキ指令回転数を、現在のモータ回転数に基づいて初期設定する。
【0187】
S814におけるブレーキ指令回転数の初期設定は、S703とは異なる。S814では、例えば、現在のモータ回転数よりも第3の規定回転数だけ高い回転数をブレーキ指令回転数に設定してもよい。また例えば、現在のモータ回転数のL倍(L>1)をブレーキ指令回転数に設定してもよい。さらに、S814で設定S814の処理を完了した制御回路51は、S110(
図6参照)に移行する。
【0188】
S811で、第1ブレーキ処理の実行直後ではない場合(S811:NO)、制御回路51は、S815の処理に移行する。S815では、制御回路51は、ブレーキ指令回転数の加算または減算を行う。具体的には、制御回路51は、ブレーキ指令回転数の最終目標を定める。例えば、制御回路51は、現在設定されている目標回転数のG%(G<100)を最終目標に設定する。G%は、100%未満のどのような値でもよい。G%は例えば50%以上(例えば80%)であってもよい。
【0189】
制御回路51は、ブレーキ指令回転数を、設定した最終目標にはすぐには設定しない。制御回路51は、ブレーキ指令回転数が、現在の現在のブレーキ指令回転数よりもより最終目標に近くなるように、現在のブレーキ指令回転数よりも低下(例えば微減)、または現在のブレーキ指令回転数よりも増加(例えば微増)させる。つまり、S815では、制御回路51は、このS815の処理が制御周期毎に繰り返し実行されることによってブレーキ指令回転数が最終目標に徐々に近づいていくように、ブレーキ指令回転数を調整する。
【0190】
S815で低下または増加させる量はどのように算出されてもよい。例えば、現在のブレーキ指令回転数から第4の規定回転数を減算または加算した値を新たなブレーキ指令回転数に設定してもよい。また例えば、現在のブレーキ指令回転数のJ%(例えば0<J<30)を現在のブレーキ指令回転数から減算または加算した値を新たなブレーキ指令回転数に設定してもよい。
【0191】
S816では、制御回路51は、S815で算出したブレーキ指令回転数と現在のモータ回転数との差分に基づき、ブレーキ制御量を算出する。具体的には、モータ回転数をブレーキ指令回転数まで増加させるために、モータ回転数がブレーキ指令回転数よりも小さいほどブレーキ制御量が小さく(つまり制動力が小さく)なるようにブレーキ制御量を算出する。
【0192】
S817では、制御回路51は、S816で算出したブレーキ制御量に従って二相短絡ブレーキをかける。
例えばこのようなS815~S817の処理が制御周期毎に繰り返し実行されることにより、ブレーキ指令回転数が徐々に増加していく。そして、電動運搬車1が例えば平地に存在していて停止している場合、ブレーキ指令回転数の増加に伴ってブレーキ制御量が低下していっても電動運搬車1は動かない(よってモータ25は回転しない)ことが予想される。そのため、この場合は、前述のS315からS317に移行する状況が生じて短絡ブレーキが解除されることが一例として予想される。
【0193】
また例えば、電動運搬車1が下り坂で停車している場合、モータ駆動条件が成立して電磁ブレーキ30が解除されると、重力により電動運搬車1が少しずつ動き始める(つまりモータ25が少しずつ回転し始める)ことが予想される。ただし、二相短絡ブレーキがかかるため、モータ回転数は急上昇しない。そして、ブレーキ指令回転数の増加に伴ってブレーキ制御量が低下していくことにより、電動運搬車1の速度がある程度上昇していくと、後述する第2ブレーキ処理(
図17参照)が実行されて引き続き二相短絡ブレーキが維持される状況になることが一例として予想される。
【0194】
図14に戻って説明を続ける。S611で、現在の制御モードが第2ブレーキモードである場合、制御回路51は、S641で、S612と同様にモータ駆動処理の初期化を実行する。
【0195】
S641の処理を完了した制御回路51は、S642で、第2ブレーキ処理を実行する。第2ブレーキ処理は、一例として下り坂を重力によって下っている状況を想定し、そのような状況において二相短絡ブレーキによってモータ25の加速を抑えることを目的とした処理である。
【0196】
制御回路51は、第2ブレーキ処理に移行すると、S901で、当該第2ブレーキ処理の実行直後であるか否か、即ち、第2ブレーキモード以外のモードから第2ブレーキモードに切り替わった後の最初の当該第2ブレーキ処理の実行中であるか否かを判断する。第2ブレーキ処理の実行直後である場合(S901:YES)、制御回路51は、S902の 処理を実行する。S902では、制御回路51は、三相ブレーキフラグをクリアする。
【0197】
S903では、制御回路51は、現在設定されているブレーキ指令回転数が0であるか否か判断する。ブレーキ指令回転数が0でない場合(S903:NO)、制御回路51は、S905に移行する。ブレーキ指令回転数が0に設定されている場合(S903:YES)、制御回路51は、S904の処理を実行する。S904では、制御回路51は、S814と同様に、ブレーキ指令回転数を、現在のモータ回転数に基づいて初期設定する。
【0198】
S905では、制御回路51は、ブレーキ制御量が初期化されているか否か判断する。なお、ブレーキ制御量は、前述のS613と、後述するS652において初期化(例えば0に設定)される。ブレーキ制御量が初期化されていない場合(S905:NO)、制御回路51は、S110(
図6参照)に移行する。ブレーキ制御量が初期化されている場合(S905:YES)、制御回路51は、S906の処理を実行する。S906では、制御回路51は、現在のモータ回転数を基に、ブレーキ制御量の初期値を設定する。例えば、モータ回転数が高いほどブレーキ制御量が大きくなるようにブレーキ制御量の初期値を設定する。S906の処理を完了した制御回路51は、S110(
図6参照)に移行する。
【0199】
S901で、第2ブレーキ処理の実行直後ではない場合(S901:NO)、制御回路51は、S907~S909の処理を実行する。S907~S909の処理は、本実施形態では例えば、
図16に示したS815~S817の処理と同じである。そのため、S907~S909の説明を省略する。
【0200】
図14に戻って説明を続ける。S611で、現在の制御モードが駆動モードである場合、制御回路51は、S651で、モータ駆動処理を実行する。モータ駆動処理は、S171で設定された目標回転数及び目標デューティ比に基づいてモータ25の駆動を制御する処理である。本実施形態では、制御回路51は、例えば、まず定デューティ制御を行い、その後に定回転制御に切り替える。定デューティ制御では、目標デューティ比に基づいてモータ25を制御する。定回転制御では、目標回転数に基づいてモータ25を制御する。
【0201】
ここで、S171における目標回転数及び目標デューティ比の設定方法について補足説明する。S171では、制御回路51は、駆動レバー14aの引き量に応じて、目標デューティを設定する。例えば、引き量が引き量閾値以下の場合(以下、小操作時と称する)は、制御回路51は、目標デューティ比を第1目標デューティ比に設定する。例えば、引き量が引き量閾値より大きい場合(以下、大操作時と称する)は、制御回路51は、目標デューティ比を第2目標デューティ比に設定する。第2目標デューティ比は、第1目標デューティ比よりも大きい。
【0202】
S171では、制御回路51は、さらに、初期デューティ比及び初期出力期間を、引き量に応じて設定する。具体的には、小操作時は、制御回路51は、初期デューティ比を第1初期デューティ比に設定する。第1初期デューティ比は第1目標デューティ比よりも小さい。例えば、大操作時は、制御回路51は、初期デューティ比を第2初期デューティ比に設定する。第2初期デューティ比は、第2目標デューティ比より小さく、且つ第1初期デューティ比より大きい。また、小操作時は、制御回路51は、初期出力期間を第1初期出力期間に設定する。例えば、大操作時は、制御回路51は、初期出力期間を第2初期出力期間に設定する。第2初期出力期間は、第1初期出力期間より短い。
【0203】
制御回路51は、モータ駆動処理の開始時は、モータ制御信号のデューティ比を初期デューティ比に設定してモータ25を駆動する。例えば、小操作時は、第1初期デューティ比のモータ制御信号を出力する。制御回路51は、初期デューティ比のモータ制御信号を、初期出力期間継続して出力する。例えば、大操作時は、第2初期デューティ比のモータ制御信号を第2初期出力期間継続して出力する。
【0204】
初期出力期間が経過したら、制御回路51は、モータ制御信号のデューティ比を、初期デューティ比から目標デューティ比に向けて徐々に増加させていく。デューティ比の増加のさせ方は、引き量によって異なる。例えば、小操作時は、大操作時よりも時間をかけて目標デューティ比へ増加させる。大操作時におけるデューティ比の増加傾向は、例えば直線的であってもよい。小操作時におけるデューティ比の増加傾向は、例えば、指数関数的であってもよい。
【0205】
定デューティ制御を実行している制御回路51は、制御切替条件が成立することに応じて、制御方法を定回転制御に切り替える。制御切替条件は、例えば、下記の第1~第3状態が同時に第1規定時間継続することに応じて成立する。第1状態は、モータ制御信号のデューティ比が目標デューティ比のK%(K<100)に到達している状態に対応する。第2状態は、モータ回転数が第6回転数閾値R6より大きい状態に対応する。第3状態は、初期デューティ比のモータ制御信号の出力開始から第2規定時間が経過していることに対応する。
【0206】
制御方法を定回転制御に切り替えた制御回路51は、モータ回転数が目標回転数に一致するように、モータ制御信号のデューティ比のPI(比例・積分)制御を行う。PI制御で用いる制御ゲインは、小操作時よりも大操作時の方が大きい。
【0207】
駆動モード中における上述のようなモータ25の制御は、S651のモータ駆動処理が制御周期毎に繰り返し実行されることによって実現される。なお、駆動モード中は、S651~S652が制御周期毎に繰り返し実行される。S652では、S613と同様にブレーキ処理が初期化される。そのため、駆動モード中は、電磁ブレーキ30及び短絡ブレーキはいずれも解除される。
【0208】
(5)実施形態と本開示との対応関係
駆動レバー14aは本開示における手動操作受付部の一例に相当する。ブレーキレバー13bは、機械ブレーキ24と共に本開示における機械ブレーキの一例に相当する。
【0209】
S313が実行されることに応じてS304が実行され、これによりS652が実行されることは、本開示における第3の処理の一例に相当する。S317が実行されることに応じてS304が実行され、これによりS652が実行されることは、本開示における第4の処理の一例に相当する。Sの処理は本開示における処理の一例に相当する。S605の処理は本開示における電磁ブレーキ処理の一例に相当する。S606の処理は本開示における制動解除処理の一例に相当する。S709~S713の処理は本開示における第1の処理の一例に相当する。S816~S817の処理は本開示における第2の処理の一例に相当する。
【0210】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0211】
(1)モータ25が停止しているときに作動させる短絡ブレーキは、二相短絡ブレーキであってもよいし、三相短絡ブレーキと二相短絡ブレーキとを選択的に切り替えてもよい。モータ25が回転しているときに、一時的に三相短絡ブレーキを作動させてもよい。
【0212】
(2)電動運搬車1は、1つ、2つまたは3つの車輪を備えていてもよいし、5つ以上の車輪を備えていてもよい。複数の車輪を備える電動運搬車において、モータにより駆動される駆動輪はいくつあってもよい。
【0213】
(3)電動運搬車1は、一つのバッテリパックのみ装着可能であってもよいし、3つ以上のバッテリパックを装着可能であってもよい。
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0214】
1…電動運搬車、2…本体部、3…荷台、8,9…前輪、10,11…後輪、12a…右グリップ、13a…左グリップ、13b…ブレーキレバー、14a…駆動レバー、15…バッテリボックス、24…機械ブレーキ、25…モータ、25U~25W…第1~第3端子、25a~25c…第1~第3巻線、27…モータロータ、28…モータシャフト、30…電磁ブレーキ、50…第1コントローラ、51…制御回路、51a…CPU、51b…メモリ、52…駆動回路、61…第1バッテリパック、62…第2バッテリパック、64…回転センサ、70…第2コントローラ、86…第2電圧検出部、87…第1通信部、87…第2電圧検出部、88…第2通信部、89…第1通信部、90…第2通信部、101…主電源スイッチ、102…トリガスイッチ、103…引き量検出部、104…方向切替スイッチ。