(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191935
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】運転モード制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20221221BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221221BHJP
B60G 17/016 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60L50/60
B60G17/016
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100466
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】波間 惇
(72)【発明者】
【氏名】小和田 稔
【テーマコード(参考)】
3D301
5H125
【Fターム(参考)】
3D301BA20
3D301EB40
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA04
5H125CA02
5H125CA08
5H125CA18
5H125EE01
5H125EE08
5H125EE09
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE57
5H125EE61
5H125EE62
(57)【要約】
【課題】複数のモータを備える電気自動車において、モータシステムの効率の向上を可能とする。
【解決手段】運転モード制御装置10は、駆動させるモータの系統数を各々規定した複数の運転モードから、走行ルートの運転における運転モードを決定する装置であって、走行ルートの走行における時系列の走行駆動力を取得する走行駆動力情報取得部と、走行ルートの走行における時系列の車速を取得する車速情報取得部と、時系列の走行駆動力及び車速に基づいて、モータの時系列のトルク及び回転数を推定するモータ動作推定部と、時系列のトルク及び回転数に基づいて各運転モードの時系列の効率値を取得し、時系列の効率値に基づいて総効率値を算出する効率算出部と、総効率値が最も高い運転モードをデフォルト運転モードに決定する運転モード決定部と、デフォルト運転モードにより運転制御する運転制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、複数系統のモータとを備える電気自動車における、駆動させるモータの系統数を各々規定した複数の運転モードから、所定の走行ルートの運転における運転モードを決定する運転モード制御装置であって、
前記走行ルートの走行に必要とされる時系列の走行駆動力を示す走行駆動力情報を取得する走行駆動力情報取得部と、
前記走行ルートの走行において予定する時系列の車速の情報を車速情報として取得する車速情報取得部と、
前記走行駆動力情報及び前記車速情報に基づいて、前記走行ルートの走行において前記モータに求められる時系列のトルク及び回転数を推定するモータ動作推定部と、
前記モータのトルク及び回転数と、前記モータの効率値とを関連付けたモータ効率情報を参照して、前記推定されたモータの時系列のトルク及び回転数の情報であるモータ動作推定情報に基づいて、各運転モードにより前記走行ルートを走行した場合における時系列の効率値を取得し、取得した前記時系列の効率値に基づいて、各運転モードの総効率値を算出する効率算出部と、
前記総効率値に示される効率が最も高い運転モードをデフォルト運転モードに決定する運転モード決定部と、
前記デフォルト運転モードにより前記電気自動車を制御する運転制御部と、
を備える運転モード制御装置。
【請求項2】
前記走行駆動力情報取得部は、少なくとも前記電気自動車の車両重量及び前記走行ルートの勾配を用いて算出された時系列の走行抵抗に基づいて前記走行駆動力を算出する、
請求項1に記載の運転モード制御装置。
【請求項3】
前記車速情報取得部は、
前記走行ルートに関連付けられた法定速度を前記車速情報として取得し、
前記走行ルートを走行した車両の車速の情報が蓄積された走行履歴情報を参照して、前記車速情報を取得し、または、
前記走行ルートにおける交通量の現況を示す情報及び前記走行ルートを走行する車両の所要時間の現況を示す情報のうちの少なくとも一方の情報に基づいて算出された、前記走行ルートを走行する車両の車速を前記車速情報として取得する、
請求項1または2に記載の運転モード制御装置。
【請求項4】
前記走行ルートの走行中において、予め設定された特定事象を検出する特定事象検出部、を更に備え、
前記効率算出部は、前記特定事象が検出されたときに、該特定事象に該当する特定事象区間における時系列の効率値である特定区間総効率値を前記運転モードごとに算出し、
前記運転モード決定部は、前記特定区間総効率値が最も高い運転モードを、前記特定事象区間を走行するための特定事象区間運転モードに決定し、
前記運転制御部は、前記特定事象区間の走行において、前記特定事象区間運転モードにより前記電気自動車を制御する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の運転モード制御装置。
【請求項5】
前記電気自動車は、第1の車軸及び第2の車軸のうちの一方の車軸の車輪を接地させないように浮上制御し、他方の車軸の車輪を接地させるように接地制御することが可能なリフトアクスル機構を有し、
前記モータの系統数は2系統であり、
前記運転モードは、1系統のモータにより駆動する第1運転モードと、2系統のモータにより駆動する第2運転モードとを含み、
前記運転モード制御装置は、
前記第1の車軸及び前記第2の車軸を前記浮上制御及び前記接地制御のいずれかに制御する駆動軸制御部であって、前記運転制御部により前記第1運転モードにより前記電気自動車が制御されている場合に、前記第1の車軸及び前記第2の車軸のうちのいずれか一方を浮上制御する、車軸状態制御部、を更に備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の運転モード制御装置。
【請求項6】
前記車軸状態制御部は、
前記第1の車軸及び前記第2の車軸のそれぞれの、前記浮上制御及び前記接地制御された回数及び時間の少なくともいずれかを制御履歴情報として記憶しており、
前記運転制御部により、前記第1運転モードにより前記電気自動車が制御されている場合において、前記接地制御された回数または時間において偏りが小さくなるように、前記第1の車軸及び前記第2の車軸から前記浮上制御させる車軸を選択する、
請求項5に記載の運転モード制御装置。
【請求項7】
前記車軸状態制御部は、
前記第1の車軸及び前記第2の車軸のそれぞれに対する荷重を示す荷重情報を取得し、
前記運転制御部により、前記第1運転モードにより前記電気自動車が制御されている場合において、前記第1の車軸及び前記第2の車軸のうちの、前記荷重情報に示される荷重が小さい車軸を、前記浮上制御させる車軸として選択する、
請求項5に記載の運転モード制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモータを備える電気自動車において、駆動させるモータの系統数を各々規定した複数の運転モードから、走行ルートの走行における運転モードを決定する運転モード制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリと、バッテリの出力電力によって作動する複数のモータと、を備える電気自動車がある。また、複数のモータにより駆動される車両に関して、モータの熱負荷及び車両の安定性を考慮して、駆動力の配分を制御する制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの動作効率は、発生させるトルク及び回転数により異なる。例えば、一般的なモータの一例では、トルクと回転数との組み合わせを一の動作点とすると、効率的な動作点は、トルクが中程度から高程度であり、且つ、回転数が中程度である領域に存在する傾向がある場合がある。複数の系統(例えば2系統)のモータを含むモータシステムを備える電気自動車において、走行に際して大きな駆動力を必要とする場合には、複数(例えば、2系統中の2系統)のモータを作動させる場合があるが、2系統のモータの作動により各モータが低回転且つ低負荷で動作することとなった場合には、モータシステムとしての効率が低下する場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、複数のモータを備える電気自動車において、モータシステムの効率が向上されることにより燃費及び電費並びに航続距離の向上を可能とする運転モード制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転モード制御装置は、バッテリと、複数系統のモータとを備える電気自動車における、駆動させるモータの系統数を各々規定した複数の運転モードから、所定の走行ルートの運転における運転モードを決定する運転モード制御装置であって、走行ルートの走行に必要とされる時系列の走行駆動力を示す走行駆動力情報を取得する走行駆動力情報取得部と、走行ルートの走行において予定する時系列の車速の情報を車速情報として取得する車速情報取得部と、走行駆動力情報及び車速情報に基づいて、走行ルートの走行においてモータに求められる時系列のトルク及び回転数を推定するモータ動作推定部と、モータのトルク及び回転数と、モータの効率値とを関連付けたモータ効率情報を参照して、推定されたモータの時系列のトルク及び回転数の情報であるモータ動作推定情報に基づいて、各運転モードにより走行ルートを走行した場合における時系列の効率値を取得し、取得した時系列の効率値に基づいて、各運転モードの総効率値を算出する効率算出部と、総効率値に示される効率が最も高い運転モードをデフォルト運転モードに決定する運転モード決定部と、デフォルト運転モードにより電気自動車を制御する運転制御部と、を備える。
【0007】
この運転モード制御装置では、走行ルートの走行において必要とされる時系列の走行駆動力及び予定される時系列の車速の情報に基づいて、時系列のモータのトルク及び回転数が推定される。推定されたモータのトルク及び回転数に基づいて、各運転モードにおける時系列の効率値が取得され、時系列の効率値に基づいて各運転モードの総効率値が算出される。そして、最も総効率値が高い運転モードがデフォルト運転モードとして決定される。従って、モータの動作においてより効率が高い運転モードにより走行ルートを走行することが可能となる。
【0008】
また、運転モード制御装置において、走行駆動力情報取得部は、少なくとも電気自動車の車両重量及び走行ルートの勾配を用いて算出された時系列の走行抵抗に基づいて走行駆動力を算出することとしてもよい。
【0009】
この運転モード制御装置によれば、電気自動車の車両重量及び走行ルートの勾配に基づいて走行抵抗が算出されるので、モータのトルクの推定に好適な走行駆動力の情報を取得できる。
【0010】
また、運転モード制御装置において、車速情報取得部は、走行ルートに関連付けられた法定速度を車速情報として取得し、または、走行ルートを走行した車両の車速の情報が蓄積された走行履歴情報を参照して、車速情報を取得し、または、走行ルートにおける交通量の現況を示す情報及び走行ルートを走行する車両の所要時間の現況を示す情報のうちの少なくとも一方の情報に基づいて算出された、走行ルートを走行する車両の車速を車速情報として取得することとしてもよい。
【0011】
この運転モード制御装置によれば、走行ルートの法定速度、走行ルートを走行した車両の車速の履歴、または、走行ルートを走行する車両の現況を示す情報が取得されることにより、モータの回転数の推定に好適な車速情報を取得できる。
【0012】
また、運転モード制御装置において、走行ルートの走行中において、予め設定された特定事象を検出する特定事象検出部、を更に備え、効率算出部は、特定事象が検出されたときに、該特定事象に該当する特定事象区間における時系列の効率値である特定区間総効率値を運転モードごとに算出し、運転モード決定部は、特定区間総効率値が最も高い運転モードを、特定事象区間を走行するための特定事象区間運転モードに決定し、運転制御部は、特定事象区間の走行において、特定事象区間運転モードにより電気自動車を制御することとしてもよい。
【0013】
この運転モード制御装置によれば、予め設定された特定事象が検出された場合に、特定事象区間の走行において総効率値が最も高い運転モードが、特定事象区間運転モードに決定される。従って、モータの動作においてより効率が高い運転モードにより特定事象空間を走行することが可能となる。
【0014】
また、運転モード制御装置において、電気自動車は、第1の車軸及び第2の車軸のうちの一方の車軸の車輪を接地させないように浮上制御し、他方の車軸の車輪を接地させるように接地制御することが可能なリフトアクスル機構を有し、モータの系統数は2系統であり、運転モードは、1系統のモータにより駆動する第1運転モードと、2系統のモータにより駆動する第2運転モードとを含み、運転モード制御装置は、第1の車軸及び第2の車軸を浮上制御及び接地制御のいずれかに制御する駆動軸制御部であって、運転制御部により第1運転モードにより電気自動車が制御されている場合に、第1の車軸及び第2の車軸のうちのいずれか一方を浮上制御する、車軸状態制御部、を更に備えることとしてもよい。
【0015】
この運転モード制御装置によれば、1系統のモータにより駆動する第1運転モードにより制御されている場合に、第1の車軸及び第2の車軸のうちの一方が浮上制御される。従って、走行抵抗を減少させることが可能となり、燃費の向上を図ることができる。
【0016】
また、運転モード制御装置において、車軸状態制御部は、第1の車軸及び第2の車軸のそれぞれの、浮上制御及び接地制御された回数及び時間の少なくともいずれかを制御履歴情報として記憶しており、運転制御部により、第1運転モードにより電気自動車が制御されている場合において、接地制御された回数または時間において偏りが小さくなるように、第1の車軸及び第2の車軸から浮上制御させる車軸を選択することとしてもよい。
【0017】
この運転モード制御装置によれば、第1の車軸及び第2の車軸のうちの一方を浮上制御するに際して、接地制御された回数又は時間の偏りが小さくなるように、浮上制御される車軸が選択されるので、接地制御時のタイヤの損耗等による、各車軸からなるユニットの寿命の偏りが防止される。
【0018】
また、運転モード制御装置において、車軸状態制御部は、第1の車軸及び第2の車軸のそれぞれに対する荷重を示す荷重情報を取得し、運転制御部により、第1運転モードにより電気自動車が制御されている場合において、第1の車軸及び第2の車軸のうちの、荷重情報に示される荷重が小さい車軸を、浮上制御させる車軸として選択することとしてもよい。
【0019】
この運転モード制御装置によれば、第1の車軸及び第2の車軸のうちの荷重が小さい車軸が浮上制御される。これにより、両車軸に分散していた荷重を一方の車軸に偏らせることができるので、接地制御されている車軸におけるトラクションを向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数のモータを備える電気自動車において、モータシステムの効率が向上されることにより燃費及び電費並びに航続距離の向上を可能とする運転モード制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運転モード制御装置が搭載された電気自動車の構成を示す概略図である。
【
図2】運転モード制御装置の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】運転モード制御装置における運転モード制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(a)は、走行ルートの走行において予定する時系列の車速を示す車速情報の例を示す図である。
図4(b)は、走行ルートの走行に必要とされる時系列の走行駆動力を示す走行駆動力情報の例を示す図である。
【
図5】モータのトルク及び回転数からなるモータの動作点とモータの効率値とを関連付けたモータ効率情報の例を示す図である。
【
図6】特定事象と当該特定事象が検出された時における運転モード制御とを関連付けた特定事象検出時制御情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、実施形態に係る運転モード制御装置が搭載された電気自動車の構成を示す概略図である。
図1に示されるように、運転モード制御装置10は、電気自動車Vに搭載されている。電気自動車Vは、バッテリ1、モータシステム3を備える。
【0024】
なお、本実施形態の電気自動車Vの一例は、バッテリ1等に電力を供給する発電機を有さないこととしているが、発電機を備えていてもよい。即ち、電気自動車Vは、発電機を有さないEV(Electric Vehicle)であってもよいし、発電機を有するFCV(Fuel Cell Vehicle)及びPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)等であってもよい。電気自動車Vが発電機を有する場合には、発電機は、燃料電池であってもよいし、エンジンであってもよい。
【0025】
バッテリ1は、モータを駆動するための電力を蓄える。バッテリ1は、外部から供給される電力を蓄えてもよい。電気自動車Vが発電機を有する場合には、バッテリ1は、発電機により発電された電力を蓄えてもよい。また、バッテリ1は、電気自動車Vに備えられた回生ブレーキ等で生成された電力を蓄えることもできる。
【0026】
モータシステム3は、バッテリ1の出力電力によって作動する。モータシステム3は、電気自動車Vに備えられた車輪6を駆動することによって、電気自動車Vを走行させる。
【0027】
本実施形態のモータシステム3は、第1のモータ3A及び第2のモータ3Bからなる2系統のモータを含む。電気自動車Vは、第1のモータ3A及び第2のモータ3Bのうちのいずれか1系統のモータにより駆動されてもよいし、第1のモータ3A及び第2のモータ3Bの2系統のモータにより駆動されてもよい。
【0028】
運転モード制御装置10は、駆動させるモータの系統数を各々規定した複数の運転モードから、所定の走行ルートの運転における運転モードを決定する装置である。本実施形態では、モータシステム3は第1のモータ3A及び第2のモータ3Bからなる2系統のモータを含むので、運転モード制御装置10は、1系統のモータにより駆動する第1運転モード及び2系統のモータにより駆動する第2運転モードのうちのいずれかの運転モードを選択制御する。なお、本実施形態の電気自動車Vは2系統のモータを備えることとしているが、モータの系統数は2系統に限定されない。即ち、運転モード制御装置10は、3以上の系統のモータのうちの、駆動に用いられるモータの系統数を選択制御することとしてもよい。
【0029】
電気自動車Vは、車重センサ7を更に備えてもよい。車重センサ7は、各車軸に設けられ、各車軸の軸重を検知する。運転モード制御装置10は、車重センサ7から車重の情報を取得できる。また、運転モード制御装置10は、車重センサ7から、車軸ごとの軸重の情報を取得できる。
【0030】
図2は、運転モード制御装置10の機能的構成を示す機能ブロック図である。運転モード制御装置10は、ECU(Electronic Control Unit)100を備えている。ECU100は、CPU、ROM、RAMなどを有する電子制御ユニットである。ECU100は、例えば、ROMに記録されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU100は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0031】
図2に示されるように、運転モード制御装置10は、機能的には、走行ルート情報取得部11、車速情報取得部12、走行駆動力情報取得部13、モータ動作推定部14、効率算出部15、運転モード決定部16、運転制御部17、特定事象検出部18及び車軸状態制御部19を備える。
【0032】
図3は、運転モード制御装置10における運転モード制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
図2及び
図3を参照しながら、運転モード制御処理について説明する。
【0033】
ステップS1において、走行ルート情報取得部11は、予定される走行ルートに関する種々の情報である走行ルート情報を取得する。走行ルート情報取得部11は、走行ルート情報を予め記憶している外部サーバまたは運転モード制御装置10に設けられた記憶装置から、走行ルート情報を取得する。走行ルート情報は、走行ルートの位置を示す情報の他に、走行ルートの勾配を示す勾配情報を含む。勾配情報は、後述されるように走行抵抗の取得に供される。勾配情報等を含む走行ルート情報は、当該走行ルートを走行した車両の走行履歴(走行時の走行抵抗)に基づいて生成されてもよい。
【0034】
ステップS2において、車速情報取得部12は、走行ルートの走行において予定する時系列の車速の情報を車速情報として、外部サーバまたは運転モード制御装置10に設けられた記憶装置から取得する。車速情報は、モータ3A,3Bの回転数の推定に供される。
図4(a)は、走行ルートの走行において予定する時系列の車速を示す車速情報の例を示す図である。車速情報取得部12は、
図4(a)に示されるような、所定の時間分解能(例えば、1sec)の時系列の車速の情報を取得する。
【0035】
具体的には、車速情報取得部12は、走行ルートの区間ごとに関連付けられた法定速度を車速情報として取得してもよい。また、車速情報取得部12は、走行ルートを走行した車両の車速の情報が蓄積された走行履歴情報を参照して、車速情報を取得してもよい。また、車速情報取得部12は、走行ルートにおける交通量の現況を示す情報及び走行ルートを走行する車両の所要時間の現況を示す情報のうちの少なくとも一方の情報に基づいて算出された、走行ルートを走行する車両の車速を車速情報として取得してもよい。走行ルートを走行する車両の現況を示す情報は、例えば、VICS(登録商標)を介して取得されてもよい。
【0036】
ステップS3において、走行駆動力情報取得部13は、走行ルートの走行に必要とされる時系列の走行駆動力を示す走行駆動力情報を取得する。
図4(b)は、走行ルートの走行に必要とされる時系列の走行駆動力を示す走行駆動力情報の例を示す図である。走行駆動力情報取得部13は、
図4(b)に示されるような、所定の時間分解能(例えば、1sec)の時系列の走行駆動力の情報を取得する。
【0037】
具体的には、走行駆動力情報取得部13は、例えば、電気自動車Vが当該走行ルートを走行するのに必要とされる時系列の走行駆動力のデータを予め記憶している記憶装置から取得してもよい。
【0038】
また、走行駆動力情報取得部13は、時系列の走行抵抗に基づいて走行駆動力を算出してもよい。走行駆動力情報取得部13は、少なくとも車重センサ7から取得した電気自動車Vの車両重量及び走行ルートの勾配を用いて走行抵抗を算出することができる。電気自動車Vは、発生させる走行駆動力が走行抵抗に均衡しているときに定速で走行できるので、走行駆動力情報取得部13は、電気自動車Vにおける車速情報、車両重量、転がり抵抗、空気抵抗及び走行ルートの勾配等に基づく時系列走行抵抗に基づいて、時系列の必要とされる走行駆動力を算出できる。走行駆動力情報取得部13は、車速が加速変化する場合には、加速抵抗分を更に加味することにより走行駆動力を算出する。また、走行駆動力情報取得部13は、車速が減速変化する場合には、走行抵抗の余剰分を制動力或いは回生トルク及び回生エネルギーとして算出する。走行駆動力情報取得部13は、既知の手法により走行抵抗及び走行駆動力を算出してもよい。
【0039】
ステップS4において、モータ動作推定部14は、走行駆動力情報及び車速情報に基づいて、走行ルートの走行においてモータ3A,3Bに求められる時系列のトルク及び回転数を推定する。
【0040】
具体的には、モータ動作推定部14は、走行駆動力をモータのトルクに換算し、車速をモータの回転数に換算する。モータのトルク及び回転数の組み合わせを、モータの動作点として定義すると、モータ動作推定部14は、時系列のモータの動作点を推定する。時系列のモータの動作点からなる情報をモータ動作推定情報として定義して、モータ動作推定部14は、モータ動作推定情報を推定する。
【0041】
なお、モータ動作推定部14は、車速情報(車速の時系列の遷移)及び走行駆動力情報(走行駆動力の時系列の遷移)に基づいて動作点の遷移を推定しているが、ある一定の走行駆動力及び車速に達するまでの遷移状態は、ドライバのアクセル操作により異なるので、モータ動作推定部14は、ドライバごとのアクセル操作の特徴を更に考慮してモータの動作点の推移を推定してもよい。
【0042】
具体的には、運転モード制御装置10は、アクセル操作に応じた動作点の遷移の履歴を示す操作履歴情報をドライバごとに所定の記憶装置に記憶及び蓄積する。モータ動作推定部14は、携帯端末との連携、顔認証等の周知の手法によりドライバを特定し、特定されたドライバの操作履歴情報を参照しながら、車速情報及び走行駆動力情報に基づくモータの動作点の推移を推定する。
【0043】
ステップS5において、効率算出部15は、モータのトルク及び回転数の組み合わせからなる動作点とモータの効率値とを関連付けたモータ効率情報を参照して、モータ動作推定情報に基づいて、各運転モードにより走行ルートを走行した場合における時系列の効率値を取得する。
【0044】
図5は、モータの回転数及びトルクの組み合わせからなるモータの動作点とモータの効率値とを関連付けたモータ効率情報の例を模式的に示す図である。モータの効率は、回転数及びトルクに依存する。
図5に示される例において、例えば、動作点(r1,t1)の効率値は、95%である。このように、効率算出部15は、モータ効率情報を参照することにより、回転数及びトルクからなる動作点に基づいて、一意に効率値を取得できる。
【0045】
効率が高い動作点である高効率点は、一般に、回転数においては中程度の回転数領域に存在する傾向があり、トルクにおいては中程度から高程度のトルク(負荷)領域に存在する傾向がある。従って、低回転数及び低トルクの動作点での運転頻度が高い場合には、燃費及び電力効率が悪化する傾向となる。
【0046】
本実施形態の電気自動車Vの例では、2系統のモータ3A,3Bにより駆動される第2運転モードでは、1系統のモータで駆動される第1運転モードのときより1系統あたりに要求されるトルクが小さいので、効率が低い場合がある。本実施形態の運転モード制御装置10は、このようなモータの効率特性を考慮しながら、要求される駆動力を満たしつつ、より効率が高い運転を実現させるために運転モードを決定及び制御する。
【0047】
なお、電気自動車Vが発電機を備える場合には、
図5に例示されるモータ効率情報において、各動作点に関連付けられる効率値は、発電機の効率が考慮された値であってもよい。例えば、FCスタックからなる燃料電池により発電機が構成される場合において、FCスタックでは、濃度過電圧及び抵抗過電圧の影響により、電流が多いほど損失は大きい。また、FCスタックの補機である、全体の消費電力のうちの多くの消費電力を占めるエアコンプレッサでは、出力が大きいほど損失(消費)電力が大きい。従って、FCスタックは、低負荷であるときの方が高効率となる傾向を示すが、極低負荷である場合には、FCスタックの状態制御のための補機作動が行われることがあるため、低負荷側に高効率点が存在する場合がある。また、
図5に例示されるモータ効率情報において、各動作点に関連付けられる効率値は、回生エネルギー効率の大きさが考慮された値であってもよい。
【0048】
そして、効率算出部15は、時系列の動作点の遷移を表すモータ動作推定情報に基づいて取得された時系列の効率値に基づいて、各運転モードの総効率値を算出する。
具体的には、効率算出部15は、時系列の効率値を集計した値を総効率値として算出する。例えば、効率算出部15は、時系列の効率値の総和を総効率値として算出してもよいし、時系列の効率値の平均を総効率値として算出してもよい。
【0049】
ステップS6において、運転モード決定部16は、総効率値に示される効率が最も高い運転モードをデフォルト運転モードに決定する。本実施形態では、運転モード決定部16は、第1運転モード及び第2運転モードのいずれかを、デフォルト運転モードとして決定する。
【0050】
ステップS7において、運転制御部17は、ステップS6において決定されたデフォルト運転モードにより電気自動車Vを制御及び運行する。
【0051】
以上説明したステップS1~S7の処理が、本実施形態の運転モード制御方法における必須の処理である。ステップS8以降の処理内容は非必須のオプション処理である。
【0052】
ステップS8において、特定事象検出部18は、走行ルートの走行中において、予め設定された特定事象を検出したか否かを判定する。
図6は、特定事象と当該特定事象が検出された時における運転モード制御とを関連付けた特定事象検出時制御情報の例を示す図である。特定事象検出時制御情報は、例えば外部サーバまたは運転モード制御装置10が備える記憶装置に記憶されている。即ち、本実施形態では、特定事象検出部18は、特定事象検出時制御情報に含まれている特定事象の検出を試みる。特定事象検出部18は、ECUが管理している各種の走行状態を示す制御情報の取得、位置情報の取得、走行ルートの情報と位置情報との突合、ドライバによる入力情報の参照等に基づく既知の手法により、各種の特定事象を検出できる。
【0053】
例えば、特定事象検出部18は、所定値以上の速度変化、トルクの変化率の大きさ、及び、各車軸の荷重の差等の情報の取得により、電気自動車の停車状態からの再発進を検出できる。また、例えば、特定事象検出部18は、GPS装置により取得された位置情報と地図情報に含まれる勾配データとの突合、加速度センサ、及び、ジャイロセンサ等により登坂路または降坂路への進入を検出できる。
【0054】
また、例えば、特定事象検出部18は、目的地の変更入力がされたこと、及び、走行ルートのナビゲーションシステムによる走行ルートの再検索が行われたこと等の情報の取得により、走行ルート変更の事象を検出できる。また、例えば、特定事象検出部18は、車軸に設けられた車重センサ7により検出された車重の変化等の情報の取得により、車重変化の事象を検出できる。
【0055】
特定事象が検出された場合には、処理はステップS9に進む。一方、特定事象が検出されなかった場合には、処理はステップS16に進む。
【0056】
ステップS9において、特定事象検出部18は、検出した特定事象に関連付けられた特定の運転モードがあるか否かを判定する。
図6に示される例によれば、ステップS8において、走行しているルートが「登坂路」であることが検出された場合には、特定事象「登坂路」に、特定の運転モードである「第2運転モード」が運転モード制御として関連付けられているので、特定事象検出部18は、検出した特定事象に関連付けられた特定の運転モードがあると判定する。また、電気自動車Vの制御状態が「停車状態からの再発進」であることが検出された場合には、特定事象「停車状態からの再発進」に、運転モード制御において特定の運転モードが関連付けられていないので、特定事象検出部18は、検出した特定事象に関連付けられた特定の運転モードがないと判定する。
【0057】
検出した特定事象に関連付けられた特定の運転モードがあると判定された場合には、処理はステップS10に進む。一方、検出した特定事象に関連付けられた特定の運転モードがあると判定されなかった場合には、処理はステップS11に進む。
【0058】
なお、
図6に示される例において、特定事象「走行ルート変更」及び「車重変化」には、運転モード制御「再判定」が関連付けられている。特定事象検出部18により、特定事象「走行ルート変更」及び「車重変化」が検出された場合には、運転モード制御装置10は、残余の走行ルートに対して、ステップS1~S6に示されるデフォルト運転モードの決定処理を実施し、決定されたデフォルト運転モードにより電気自動車Vを制御し、残余の走行ルートの運行を実施してもよい。
【0059】
ステップS10において、運転制御部17は、検出された特定事象に関連付けられている運転モードにより電気自動車Vを制御する。
【0060】
ステップS11において、効率算出部15は、特定事象に該当する走行ルートの区間である特定事象区間における時系列の効率値である特定区間総効率値を運転モードごとに算出する。即ち、効率算出部15は、特定事象区間を走行ルートとして、ステップS1~S5の処理と同様の処理により、特定事象区間の走行における運転モードごとの総効率値を算出する。
【0061】
ステップS12において、運転モード決定部16は、ステップS11において算出された特定事象区間の走行において総効率値が最も高い運転モードである特定事象区間運転モードが、デフォルト運転モードと異なるか否かを判定する。特定事象区間運転モードがデフォルト運転モードと異なると判定された場合には、処理はステップS13に進む。一方、特定事象区間運転モードがデフォルト運転モードと異なると判定された場合には、処理はステップS16に進む。
【0062】
ステップS13において、運転制御部17は、特定事象区間の走行において、特定事象区間運転モードにより電気自動車Vを制御する。なお、特定事象区間運転モードが、1系統のモータにより駆動する第1運転モードである場合には、第1運転モードにおける最大の走行駆動力が当該特定事象区間の走行に必要な駆動力を充足する場合に限り、第1運転モードへの運転モードの変更が実施されることとしてもよい。
【0063】
ステップS14において、特定事象検出部18は、特定事象区間の走行が終了したか否かを判定する。例えば、特定事象検出部18は、所定値以上の速度変化、トルクの変化率の大きさ、及び、各車軸の荷重の差等の情報の取得により、発進加速中の特定事象区間の終了を検出できる。また、例えば、特定事象検出部18は、GPS装置により取得された位置情報と地図情報に含まれる勾配データとの突合、加速度センサ、及び、ジャイロセンサ等により登坂路または降坂路の終了を検出できる。
【0064】
特定事象区間の走行が終了したと判定された場合には、処理はステップS15に進む。一方、特定事象区間の走行が終了したと判定されなかった場合には、ステップS14の判定処理を繰り返す。
【0065】
ステップS15において、運転制御部17は、変更された運転モードからデフォルト運転モードに復帰して、電気自動車Vを制御する。なお、ステップS15において、デフォルト運転モードに復帰することに代えて、運転モード決定部16は、残余の走行ルートの走行ルート情報に基づいて、ステップS1~S6に示されるデフォルト運転モードの決定処理と同様の処理を実施し、残余の走行ルートに対するデフォルト運転モードを決定してもよい。そして、運転制御部17は、残余の走行ルートに対して決定されたデフォルト運転モードにより電気自動車Vを制御してもよい。
【0066】
ステップS16において、運転制御部17は、走行ルートの運行が終了したか否かを判定する。走行ルートの運行が終了したと判定された場合には、処理は終了する。一方、走行ルートの運行が終了したと判定されなかった場合には、処理はステップS8に戻る。
【0067】
次に、電気自動車Vがリフトアクスル機構を有する場合における、運転モードの制御に伴う車軸の制御について説明する。リフトアクスル機構は、電気自動車Vが有する第1の車軸及び第2の車軸のうちの一方の車軸の車輪を接地させないように浮上制御し、他方の車軸の車輪を接地させるように接地制御する機構である。
【0068】
車軸状態制御部19は、第1の車軸及び第2の車軸を浮上制御及び接地制御のいずれかに制御する機能部である。具体的には、車軸状態制御部19は、各車軸を浮上または接地させるための昇降制御バルブに対して、指示信号を送出することにより、リフトアクスル機構を実現させる。
【0069】
車軸状態制御部19は、運転制御部17により、1系統のモータにより駆動する第1運転モードにより電気自動車Vが制御されている場合に、第1の車軸及び前記第2の車軸のうちのいずれか一方を浮上制御してもよい。このように、第1の車軸及び前記第2の車軸のうちのいずれか一方が浮上制御されることにより、タイヤの転がり抵抗に起因する走行抵抗を減少させることが可能となり、燃費の向上を図ることができる。また、車軸状態制御部19は、運転制御部17により、2系統のモータにより駆動する第2運転モードにより電気自動車Vが制御されている場合に、第1の車軸及び前記第2の車軸を共に接地制御することとしてもよい。
【0070】
また、車軸状態制御部19は、第1の車軸及び第2の車軸のそれぞれの、浮上制御及び接地制御された回数及び時間の少なくともいずれかを制御履歴情報として記憶していてもよい。かかる場合において、車軸状態制御部19は、運転制御部17により第1運転モードにより電気自動車Vが制御されている場合において、接地制御された回数または時間において偏りが小さくなるように、第1の車軸及び前記第2の車軸から浮上制御させる車軸を選択してもよい。このように浮上制御される車軸が選択されることにより、接地制御時のタイヤの損耗等による、各車軸からなるユニットの寿命の偏りが防止される。
【0071】
また、車軸状態制御部19は、第1の車軸及び前記第2の車軸のそれぞれに対する荷重を示す荷重情報を車重センサ7から取得してもよい。かかる場合において、車軸状態制御部19は、運転制御部17により第1運転モードにより電気自動車Vが制御されている場合において、第1の車軸及び第2の車軸のうちの、荷重情報に示される荷重が小さい車軸を、浮上制御させる車軸として選択してもよい。このように浮上制御される車軸が選択されることにより、第1及び第2の両車軸に分散していた荷重を一方の車軸に偏らせることができるので、接地制御されている車軸におけるトラクションを向上させることが可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の運転モード制御装置10では、走行ルートの走行において必要とされる時系列の走行駆動力及び予定される時系列の車速の情報に基づいて、時系列のモータのトルク及び回転数が推定される。推定されたモータのトルク及び回転数に基づいて、各運転モードにおける時系列の効率値が取得され、時系列の効率値に基づいて各運転モードの総効率値が算出される。そして、最も総効率値が高い運転モードがデフォルト運転モードとして決定される。従って、モータの動作においてより効率が高い運転モードにより走行ルートを走行することが可能となる。
【0073】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…バッテリ、3…モータシステム、3A,3B…モータ、6…車輪、7…車重センサ、10…運転モード制御装置、11…走行ルート情報取得部、12…車速情報取得部、13…走行駆動力情報取得部、14…モータ動作推定部、15…効率算出部、16…運転モード決定部、17…運転制御部、18…特定事象検出部、19…車軸状態制御部、V…電気自動車。