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特開2022-191939生産計画作成装置、学習装置及び推論装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191939
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】生産計画作成装置、学習装置及び推論装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20221221BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20221221BHJP
【FI】
G06Q10/06 302
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100476
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一季
(72)【発明者】
【氏名】荒木 敬夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄太
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】作業者各個人に寄り添った適切な作業目標を設定することを可能とし、各作業者のモチベーションを維持する。
【解決手段】生産計画作成装置100は、作業中の作業者の生体データを取得する生体データ取得部21と、作業者のモチベーションに関わる生体データと、作業者の作業目標と、を含む学習用データを用いて、作業者のモチベーションを維持する作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを生成する学習部23と、作業者のモチベーションを維持する作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを用いて、作業者のモチベーションを維持する作業者の作業目標を出力する推論部24と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業中の作業者の生体データを取得する生体データ取得部と、
前記作業者のモチベーションに関わる生体データと、前記作業者の作業目標と、を含む学習用データを用いて、前記作業者のモチベーションを維持する前記作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを生成する学習部と、
前記作業者のモチベーションを維持する前記作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを用いて、前記作業者のモチベーションを維持する前記作業者の作業目標を出力する推論部と、
を備える生産計画作成装置。
【請求項2】
前記作業者のモチベーションに関わる生体データは、前記作業者の視線のばらつき、あくびの有無、高アルファ波又は低ベータ波の脳波のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の生産計画作成装置。
【請求項3】
前記作業目標は、前記作業者の製品1台あたりの作業時間である、
請求項1又は2に記載の生産計画作成装置。
【請求項4】
前記推論部から出力された前記作業者の作業目標に基づいて生産計画を作成する生産計画立案部を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の生産計画作成装置。
【請求項5】
作業者のモチベーションに関わる生体データと、前記作業者の作業目標と、を含む学習用データを取得するデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記作業者のモチベーションを維持する前記作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を備える学習装置。
【請求項6】
作業者のモチベーションに関わる生体データを含む学習用データを取得するデータ取得部と、
前記作業者のモチベーションを維持する前記作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを用いて、前記作業者のモチベーションを維持する前記作業者の作業目標を出力する推論部と、
を備える推論装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産計画作成装置、学習装置及び推論装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場では、各受注の納期、各生産ラインの生産能力、各作業者の作業効率等を勘案して作業日程が作成される。作成された作業日程を遵守するためには、作業者が常に一定の作業速度を保つことが必要であり、各作業者の生産目標を設定し、作業者のモチベーションを維持することが重要である。「○○[s/台]の作業ペース」などの生産目標は、作業者自身の周辺環境、特性により「過度に目標が高い」と作業者に感じさせることがあり、モチベーションの低下により作業効率が低下する一因となる。
【0003】
作業者のモチベーションを維持する方法として、例えば特許文献1に、個人の作業効率、不具合発生状況をディスプレイに表示し、迅速に作業者へ知らせることにより作業者のモチベーションを維持させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-5212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、作業者の作業結果をモニタリングし、迅速に伝えることで作業者のモチベーションを維持しているだけであり、各作業者のモチベーションを維持できる作業目標を設定することについて開示していない。
【0006】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、作業者各個人に寄り添った適切な作業目標を設定することを可能とし、各作業者のモチベーションを維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の生産計画作成装置は、作業中の作業者の生体データを取得する生体データ取得部と、作業者のモチベーションに関わる生体データと、作業者の作業目標と、を含む学習用データを用いて、作業者のモチベーションを維持する作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを生成する学習部と、作業者のモチベーションを維持する作業者の作業目標を推論するための学習済モデルを用いて、作業者のモチベーションを維持する作業者の作業目標を出力する推論部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、センサ類により収集した作業者各個人の情報をAI(Artificial Intelligence)によって処理することで作業者各個人に寄り添った適切な作業目標を設定することを可能とし、各作業者のモチベーションを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に係る生産計画作成システムの構成を示す図
図2】本開示の実施の形態に係る生産計画作成装置の機能構成を示す図
図3】本開示の実施の形態に係る生産計画作成装置のハードウェア構成を示す図
図4】本開示の実施の形態に係る学習部の構成を示す図
図5】本開示の実施の形態に係る学習処理の動作を示すフローチャート
図6】本開示の実施の形態に係る推論部の構成を示す図
図7】本開示の実施の形態に係る出力を得る処理の動作を示すフローチャート
図8】本開示の実施の形態に係る生産計画を作成するまでの処理の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の生産計画作成装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1を参照しながら、実施の形態に係る生産計画作成システム1を説明する。生産計画作成システムは、生産ラインとして工程A、工程B、工程Cを備え、これらの工程A、工程B、工程Cには、それぞれ作業者2A、作業者2B、作業者2C(以下、作業者2A、作業者2B、作業者2Cのそれぞれを限定しない場合には、適宜「作業者2」と称する)が配置される。
【0012】
工程A、工程B、工程Cには、それぞれディスプレイ装置3A、ディスプレイ装置3B、ディスプレイ装置3C(以下、ディスプレイ装置3A、ディスプレイ装置3B、ディスプレイ装置3Cのそれぞれを限定しない場合には、適宜「ディスプレイ装置3」と称する)が配置される。これらのディスプレイ装置3A、ディスプレイ装置3B、ディスプレイ装置3Cには、それぞれ作業者2A、作業者2B、作業者2Cに対する生産目標A、生産目標B、生産目標Cが表示される。
【0013】
工程A、工程B、工程Cには、それぞれ作業者2A、作業者2B、作業者2Cを撮影するためのカメラ4A、カメラ4B、カメラ4C(以下、カメラ4A、カメラ4B、カメラ4Cのそれぞれを限定しない場合には、適宜「カメラ4」と称する)が配置される。これらのカメラ4A、カメラ4B、カメラ4Cで撮影された画像は、それぞれ作業者2A、作業者2B、作業者2Cの目の動き、あくびの有無についての生体データを取得するために用いられる。カメラ4A、カメラ4B、カメラ4Cは、それぞれの工程における作業空間の上方に固定配置されてもよいし、作業者が身に付ける帽子、眼鏡等に備え付けてもよい。
【0014】
工程A、工程B、工程Cには、それぞれ作業者2A、作業者2B、作業者2Cの脳波を測定するための脳波センサ5A、脳波センサ5B、脳波センサ5C(以下、脳波センサ5A、脳波センサ5B、脳波センサ5Cのそれぞれを限定しない場合には、適宜「脳波センサ5」と称する)が配置される。これらの脳波センサ5A、脳波センサ5B、脳波センサ5Cは、それぞれ作業者2A、作業者2B、作業者2Cの生体データである脳波を取得するために用いられる。脳波センサ5A、脳波センサ5B、脳波センサ5Cは、作業者の頭部に電極を貼り付けるタイプであってもよく、作業者が身に付ける帽子、眼鏡等に備え付けてもよい。
【0015】
生産ライン上のディスプレイ装置3A、ディスプレイ装置3B、ディスプレイ装置3C、カメラ4A、カメラ4B、カメラ4C、脳波センサ5A、脳波センサ5B、脳波センサ5Cは、ネットワークを介して生産計画作成装置100に接続されている。
【0016】
次に、生産計画作成装置100の構成について、図2を参照して説明する。生産計画作成装置100は、インタフェース部10と、制御部20と、記憶部30とを備える。
【0017】
インタフェース部10は、図示しないネットワークを介して、カメラ4、脳波センサ5から有線又は無線通信により送信されたデータを受信するとともに、生成された作業者2の作業目標のデータをディスプレイ装置3に送信する。
【0018】
記憶部30は、パーソナリティDB31と、作業目標実績DB32と、学習済モデル記憶部33と、生産情報DB34と、設備情報DB35とを備える。
【0019】
パーソナリティDB31は、作業者2のモチベーションに関わるデータを計測することができるセンサ類、すなわちカメラ4及び脳波センサ5が観測した作業者2のモチベーションに関わるデータを作業者2の個人情報と対応付けて記憶するデータベースである。
【0020】
作業目標実績DB32は、作業者2各個人の現在の作業目標時間と作業効率に関するデータを記憶するデータベースである。パーソナリティDB31に記憶された作業者2のモチベーションに関わるデータと作業目標実績DB32に記憶された作業者2各個人の作業目標及び作業実績との相関関係から作業者2各個人に寄り添った適切な作業目標を設定する。
【0021】
学習済モデル記憶部33は、作業者2毎に生成される作業目標の推定に使用する学習データを記憶するために使用される。
【0022】
生産情報DB34は、製造工程における作業量を算出する際に必要とする情報である工程に関する情報、部品に関する情報、作業原単位に関する情報、生産完了期日に関する情報、生産計画の対象範囲、数量及び加工情報等が記憶されているデータベースである。
【0023】
設備情報DB35は、各工程で使用する製造設備の種類、型名、性能、稼働状態、使用状況等の製造設備に関する情報を記憶するデータベースである。生産情報DB34及び設備情報DB35に基づいて生産計画を作成することにより、作業者2の作業効率悪化による生産計画の見直しが発生しにくい生産計画を作成する。
【0024】
制御部20は、生体データ取得部21と、特徴量抽出部22と、学習部23と、推論部24と、生産計画立案部25とを備える。
【0025】
生体データ取得部21は、カメラ4から送信される画像データ及び脳波センサ5から送信される脳波の観測データをインタフェース部10を介して取得する。取得したデータは、パーソナリティDB31に記憶される。
【0026】
特徴量抽出部22は、カメラ4で撮影された画像データ及び脳波センサ5で観測された脳波データをパーソナリティDB31から読み出し、それぞれについて作業者2のモチベーションに関わる特徴量を抽出する。特徴量抽出部22は、画像データから作業者2の口の動きを表すデータ及び目の動きを表すデータを抽出する。特徴量抽出部22は、作業者2の口の動きからあくびの有無を特徴量として抽出する。また、特徴量抽出部22は、作業者の目の動きから視線の位置、視線の移動速度等の変化を特徴量として抽出する。また、特徴量抽出部22は、脳波センサ5で観測された脳波データから一般的に集中している際に観測される高アルファ波、低ベータ波等の脳波を特徴量として抽出する。
【0027】
学習部23は、作業者2の作業目標である製品1台あたりの作業時間を自動決定するために、カメラ4で撮影した作業者2の画像及び脳波センサ5の観測データから、作業者2の目の動き、あくびの有無、脳波データ等を学習する。学習は、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の機械学習によって行う。学習したデータは、学習済モデルとして学習済モデル記憶部33に記憶される。
【0028】
推論部24は、学習部23により生成されて学習済モデル記憶部33に記憶された学習済モデルを利用して、作業者2の作業目標を推論する。
【0029】
生産計画立案部25は、推論部24で推論された作業者2の作業目標と生産情報DB34から読み出した生産情報と設備情報DB35から読み出した設備情報に基づいて生産計画を立案する。
【0030】
生産計画作成装置100は、ハードウェア的には、図3に示すように、制御プログラムにしたがってデータを処理するプロセッサ41と、プロセッサのワークエリアとして機能する主記憶部42と、データを長期間にわたって記憶するための補助記憶部43と、データ入力を受け付ける入力部44と、データを出力する出力部45と、他の装置と通信する通信部46とこれらの要素を相互に接続するバスと、を備える。補助記憶部43には、プロセッサが実行する生産計画作成処理の制御プログラムが記憶されている。入力部44は、カメラ4及び脳波センサ5から送信されてくる生体データを受信し、プロセッサ41に提供する。プロセッサ41は、補助記憶部43に記憶されたプログラムを主記憶部42に読み出して実行することにより、図2に示した生体データ取得部21、特徴量抽出部22、学習部23、推論部24、生産計画立案部25として機能する。また、補助記憶部43は、パーソナリティDB31、作業目標実績DB32、学習済モデル記憶部33、生産情報DB34、設備情報DB35として機能する。
【0031】
次に、作業者2の生体データに基づいて学習データを生成し、作業者2個人に寄り添った目標を推定する、作業者2のモチベーション維持目標設定に関し、学習データを生成する学習部23と作業目標を推定する推論部24について説明する。
【0032】
図4は、生産計画作成装置100に関する学習部23の構成図である。学習部23は、データ取得部201、モデル生成部202を備える。学習は、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の機械学習によって行うが、ここでは強化学習(Q学習)を例に挙げて説明する。
【0033】
データ取得部201は、行動Aとして作業者2の作業目標である製品1台あたりの作業時間、状態Sとしてカメラ4で撮影した作業者2の画像及び脳波センサ5の観測データから得られた、作業者2の目の動き、あくびの有無、脳波データを学習用データとして取得する。
【0034】
モデル生成部202は、行動Aとして作業者2の作業目標である製品1台あたりの作業時間を含むとともに、状態Sとして作業者2の目の動き、あくびの有無、脳波データのうちの少なくとも1つを含む学習用データに基づいて、最適な行動Aとして作業者2のモチベーションを維持する作業者2各個人に寄り添った適切な作業目標を設定するための「作業者2の作業目標である製品1台あたりの作業時間」を学習する。すなわち、生産計画作成装置100の状態Sから最適な行動Aを推論する学習済モデルを生成する。
【0035】
モデル生成部202が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、強化学習(Reinforcement Learning)を適用した場合について説明する。強化学習では、ある環境内におけるエージェント(行動主体)が、現在の状態(環境のパラメータ)を観測し、取るべき行動を決定する。エージェントの行動により環境が動的に変化し、エージェントには環境の変化に応じて報酬が与えられる。エージェントはこれを繰り返し、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られる行動方針を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-learning)、TD学習(TD-learning)が知られている。例えば、Q学習の場合、行動価値関数Q(s,a)の一般的な更新式は式(1)で表される。
【0036】
【数1】
【0037】
式(1)において、sは時刻tにおける環境の状態を表し、aは時刻tにおける行動を表す。行動aにより、状態はst+1に変わる。rt+1はその状態の変化によってもらえる報酬を表し、γは割引率を表し、αは学習係数を表す。なお、γは0<γ≦1、αは0<α≦1の範囲とする。行動Aが行動aとなり、状態Sが状態sとなり、時刻tの状態sにおける最良の行動aを学習する。
【0038】
式(1)で表される更新式は、時刻t+1における最もQ値の高い行動aの行動価値Qが、時刻tにおいて実行された行動aの行動価値Qよりも大きければ、行動価値Qを大きくし、逆の場合は、行動価値Qを小さくする。換言すれば、時刻tにおける行動aの行動価値Qを、時刻t+1における最良の行動価値に近づけていき、行動価値関数Q(s,a)を更新する。それにより、ある環境における最良の行動価値が、それ以前の環境における行動価値に順次伝播していく。
【0039】
上記のように、強化学習によって学習済モデルを生成する場合、モデル生成部202は、報酬計算部203と、関数更新部204と、を備えている。
【0040】
報酬計算部203は、行動A、状態Sに基づいて報酬を計算する。報酬計算部203は、報酬基準として作業者2の視線のばらつき量、あくびの発生量、脳波について高アルファ波又は低ベータ波の発生量に基づいて、報酬rを計算する。作業者2のモチベーションを維持する作業者2各個人に寄り添った適切な作業目標を設定するための「作業者2の作業目標である製品1台あたりの作業時間」が正しく得られないと、作業者2にとって適切でない作業目標が設定され、作業者2のモチベーションが低下するので、作業者2の視線のばらつき、あくびの発生、脳波について高アルファ波又は低ベータ波の増大が起こると考えられる。したがって、作業者2の視線のばらつき量、あくびの発生量、脳波について高アルファ波又は低ベータ波の発生量を報酬基準とする。作業者2の視線のばらつき量、あくびの発生量が減少、脳波について高アルファ波又は低ベータ波の発生量が増大する場合には報酬rを増大させ(例えば「1」の報酬を与える。)、他方、作業者2の視線のばらつき量、あくびの発生量が増大、脳波について高アルファ波又は低ベータ波の発生量が低下する場合には報酬rを低減する(例えば「-1」の報酬を与える。)。
【0041】
関数更新部204は、報酬計算部203によって計算される報酬に従って、最適な行動Aを決定するための関数を更新し、学習済モデル記憶部33に出力する。例えばQ学習の場合、式(1)で表される行動価値関数Q(s,a)を最適な行動Aを算出するための関数として用いる。
【0042】
以上のような学習を繰り返し実行する。学習済モデル記憶部33は、関数更新部204によって更新された行動価値関数Q(s,a)、すなわち、学習済モデルを記憶する。
【0043】
次に、図5を用いて、学習部23が学習する処理について説明する。図5は学習部23の学習処理に関するフローチャートである。
【0044】
ステップS101において、データ取得部201は行動A、状態Sを学習用データとして取得する。
【0045】
ステップS102において、モデル生成部202は行動A、状態Sに基づいて報酬を計算する。具体的には、報酬計算部203は、行動A、状態Sを取得し、予め定められた報酬基準に基づいて報酬を増加させるか又は報酬を減じるかを判断する。
【0046】
報酬計算部203は、報酬を増大させると判断した場合(ステップS102:Yes)に、ステップS103において報酬を増大させる。一方、報酬計算部203は、報酬を減少させると判断した場合(ステップS102:No)に、ステップS104において報酬を減少させる。
【0047】
ステップS105において、関数更新部204は、報酬計算部203によって計算された報酬に基づいて、学習済モデル記憶部33が記憶する式(1)で表される行動価値関数Q(s,a)を更新する。
【0048】
学習部23は、以上のステップS101からS105までのステップを繰り返し実行し、生成された行動価値関数Q(s,a)を学習済モデルとして記憶する。
【0049】
図6は生産計画作成装置100に関する推論部24の構成図である。推論部24は、データ取得部301、作業目標推論部302を備える。
【0050】
データ取得部301は状態Sを取得する。
【0051】
作業目標推論部302は、学習済モデルを利用して最適な行動Aを推論する。すなわち、この学習済モデルにデータ取得部301が取得した状態Sを入力することで、状態Sに適した最適な行動Aを推論することができる。なお、ここで入力される状態Sはカメラ4で撮影した作業者2の画像及び脳波センサ5の観測データから得られた、作業者2の目の動き、あくびの有無、脳波データのうちの少なくとも1つを含むデータである。
【0052】
なお、本実施の形態では、生産計画作成装置100に関する学習部23のモデル生成部202で学習した学習済モデルを用いて最適な行動Aを出力するものとして説明したが、他の生産計画作成装置100から学習済モデルを取得し、この学習済モデルに基づいて最適な行動Aを出力してもよい。
【0053】
次に、図7を用いて、学習部23を使って最適な行動Aを得るための処理を説明する。
【0054】
ステップS201において、データ取得部301は状態Sを取得する。
【0055】
ステップS202において、作業目標推論部302は学習済モデル記憶部33に記憶された学習済モデルに状態Sを入力し、最適な行動Aを得る。作業目標推論部302は得られた最適な行動Aを出力する(ステップS203)。
【0056】
なお、本実施の形態では、作業目標推論部302が用いる学習アルゴリズムに強化学習を適用した場合について説明したが、これに限られるものではない。学習アルゴリズムについては、強化学習以外にも、教師あり学習、教師なし学習、又は半教師あり学習等を適用することも可能である。
【0057】
また、モデル生成部202に用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)を用いることもでき、他の公知の方法、例えばニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
【0058】
本実施の形態に係る学習部23は、生産計画作成装置100の制御部20に設けられ、学習済モデル記憶部33は、生産計画作成装置100の記憶部30に設けられており、生産計画作成装置100に内蔵されている。ただし、これに限らず、学習部23を外部に設けられた学習装置とし、例えば、ネットワークを介して生産計画作成装置100に接続され、この生産計画作成装置100とは別個の装置であってもよい。また、学習済モデル記憶部33を学習装置の内部に備えてもよいし、外部に備えていてもよい。さらに、学習装置は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。同様に、生産計画作成装置100の制御部20に設けられた推論部24を外部に設けられた推論装置とし、ネットワークを介して生産計画作成装置100に接続され、この生産計画作成装置100とは別個の装置であってもよい。さらに、推論装置は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0059】
また、モデル生成部202は、複数の生産計画作成装置100から取得される学習用データを用いて、最適な行動Aを学習してもよい。なお、モデル生成部202は、同一のエリアで使用される複数の生産計画作成装置100から学習用データを取得してもよいし、異なるエリアで独立して動作する複数の生産計画作成装置100から収集される学習用データを利用して最適な行動Aを学習してもよい。また、学習用データを収集する生産計画作成装置100を途中で対象に追加したり、対象から除去することも可能である。さらに、ある生産計画作成装置100に関して最適な行動Aを学習した学習部23あるいは学習装置を、これとは別の生産計画作成装置100に適用し、当該別の生産計画作成装置100に関して最適な行動Aを再学習して更新してもよい。
【0060】
次に、生産計画作成装置100が生産計画を作成するまでの処理を、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0061】
生産ラインに設けられたセンサ類であるカメラ4、脳波センサ5が作業者2のモチベーションに関わる生体データを収集し、ネットワークを介して生産計画作成装置100のパーソナリティDB31へ送信する(ステップS301)。
【0062】
パーソナリティDB31は、センサ類であるカメラ4、脳波センサ5から受信した作業者2のモチベーションに関わる生体データを、日次で入力される作業者2の勤怠に関わるデータ、昼食時間等の個人情報のデータと統合し、制御部20へ送信する(ステップS302)。ここで、パーソナリティDB31への勤怠に関わるデータ、昼食時間等の個人情報のデータ入力は正しくデータが入力される手法であればどのような手段でもよい。
【0063】
作業目標実績DB32は、作業者2各個人の作業実績、作業実績と作業目標との差異を取得し、制御部20へ送信する(ステップS303)。
【0064】
制御部20内の学習部23及び推論部24は、生体データに基づく機械学習を活用し、作業者個人に寄り添った新しい作業目標を設定する(ステップS304)。学習部23は、作業者2の作業目標である製品1台あたりの作業時間を自動決定するために、生体データから、作業者2の目の動き、あくびの有無、脳波データ等を機械学習し、学習済モデルとして学習済モデル記憶部33に記憶する。推論部24は、学習部23により生成されて学習済モデル記憶部33に記憶された学習済モデルを利用して、作業者2の作業目標を推論し、新しい作業目標が設定される。
【0065】
制御部20は、推論部24により設定された新しい作業目標に基づいて生産計画を作成するために、生産情報DB34と設備情報DB35から生産計画の作成に必要なデータを要求する(ステップS305)。
【0066】
生産情報DB34は、制御部20からデータ要求を受信すると、制御部20に対して生産計画の対象範囲、数量及び加工情報等の生産を行うのに必要なデータを読み出して送信する(ステップS306)。
【0067】
また、設備情報DB35は、制御部20からデータ要求を受信すると、制御部20に対して、設備の稼働状態、使用状況等のデータを送信する(ステップS307)。
【0068】
制御部20内の生産計画立案部25は、推論部24から得られた作業目標と生産情報DB34から受信したデータと設備情報DB35から受信したデータとに基づき、作業者2の作業効率によって見直しの発生しにくい生産計画を作成する(ステップS308)。
【0069】
生産計画作成装置100は、作成された生産計画と各作業者2の作業目標をネットワークを介してディスプレイ装置3に送信し、ディスプレイ装置3は、受信した生産計画を基に、作業者2各個人に寄り添った適切な作業目標を画面へ表示し、作業者2へ明示する(ステップS309)。
【0070】
本実施の形態では、作業者2のモチベーションを維持する生体データとして、作業者2の視線のばらつき、あくびの有無、高アルファ波又は低ベータ波の脳波を用いたが、これに限らず、例えば心拍データを用いてもよい。
【0071】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。つまり、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0072】
1 生産計画作成システム、2A,2B,2C 作業者、3A,3B,3C ディスプレイ装置、4A,4B,4C カメラ、5A,5B,5C 脳波センサ、10 インタフェース部、20 制御部、21 生体データ取得部、22 特徴量抽出部、23 学習部、24 推論部、25 生産計画立案部、30 記憶部、31 パーソナリティDB、32 作業目標実績DB、33 学習済モデル記憶部、34 生産情報DB、35 設定情報DB、41 プロセッサ、42 主記憶部、43 補助記憶部、44 入力部、45 出力部、46 通信部、100 生産計画作成装置、201,301 データ取得部、202 モデル生成部、203 報酬計算部、204 関数更新部、302 作業目標推論部。
図1
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図8