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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191956
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】構造体の転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20221221BHJP
   A47B 91/06 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A47B97/00 A
A47B91/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100498
(22)【出願日】2021-06-16
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(71)【出願人】
【識別番号】515148985
【氏名又は名称】株式会社インターオフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 昌平
【テーマコード(参考)】
3B069
【Fターム(参考)】
3B069CA03
3B069HA04
(57)【要約】
【課題】本体底部が複数の支持体に支持されて該支持体が床面上に配置される構造体の転倒を防止する。
【解決手段】転倒防止装置1は、本体底部103が複数の支持体108に支持されて支持体108が床面F上に配置される構造体100の転倒を防止する装置である。転倒防止装置1は、構造体100の下方で床面F上に配置されて支持体108が載置される平板部材2と、構造体108の本体底部103と平板部材2とを支持体108とは異なる箇所で連結する連結部材3と、を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体底部が複数の支持体に支持されて前記支持体が床面上に配置される構造体の転倒を防止する装置であって、
前記構造体の下方で前記床面上に配置されて前記支持体が載置される平板部材と、
前記構造体の本体底部と前記平板部材とを前記支持体とは異なる箇所で連結する連結部材と、を備えている、
構造体の転倒防止装置。
【請求項2】
前記支持体はキャスターである、
請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記平板部材の互いに離間した部位を前記構造体の本体底部に連結する複数の前記連結部材を備えている、
請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項4】
前記連結部材は、前記平板部材に固着したナット部材と、前記ナット部材にねじ込まれて上下方向に延びるボルト部材とを備えている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の転倒防止装置。
【請求項5】
前記ボルト部材は、両端にねじ部を有する両ねじボルトと、前記ナット部材にねじ込まれるボルト端部とは反対側の端部にねじ込まれるナットとを備えている、
請求項4に記載の什器用転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体底部が複数の支持体に支持されて前記支持体が床面上に配置される構造体の転倒を防止する装置に関するものである。ここで、構造体としては、複数のキャスター(支持体の一例)を有する可搬式のブースが代表例として挙げられるが、他に、複数のキャスター又はアジャスター付きのキャビネットや棚(ラック)のような家具、複合機や冷蔵庫等の電気(電子)製品、商品等の陳列装置、美術品などの展示装置、パソコン用サーバ、分電盤など、本体底部に設けた複数の支持体が床面上に載置されるものであって地震に際して転倒するおそれがあるもの全般を広く含んでいる。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスやショールーム、展示会場等において、防音機能の高い1人用又は2人用のブースが設置されることがある(例えば特許文献1参照)。このようなブースは、静寂性を高めるために前後左右の四方、天井及び床面が囲われた箱型になっており、火災対策等の観点からキャスター等によって可搬式にすることが求められている。このような可搬式の箱型ブースには、キャスターの転動による移動可能な状態(移動モード)に対して移動不能な状態(設置モード)にするためのアジャスターがブース本体の底部に設けていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6764107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可搬式の箱型ブースでは、ブース本体が複数のキャスター又はアジャスター(キャスター等と言う)で支持されることで、ブース本体の荷重がキャスター等に集中するので、地震等で床面が揺れた際にキャスター等が床面に引っ掛かり、ブースが転倒するおそれがある。このような問題は、箱型ブースだけでなく、本体底部がキャスターやアジャスターなどの複数の支持体に支持されて床面から浮いている構造体でも起こり得る。
【0005】
本発明はこのような現状を契機として成されたものであり、本体底部が複数の支持体に支持されて該支持体が床面上に配置される構造体の転倒を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構造体の転倒防止装置は、本体底部が複数の支持体に支持されて前記支持体が床面上に配置される構造体の転倒を防止する装置であって、前記構造体の下方で前記床面上に配置されて前記支持体が載置される平板部材と、前記構造体の本体底部と前記平板部材とを前記支持体とは異なる箇所で連結する連結部材と、を備えているものである。
【0007】
本発明の転倒防止装置によれば、構造体本体から支持体にかかる荷重が平板部材によって分散されて床面に伝わるので、荷重の集中を防止できる。これにより、地震等で床面が揺れたときに、平板部材は、床面に固定されていないことで、床面上を引っ掛かることなくスライド移動できるので、構造体の傾斜を抑制し、ひいては構造体の転倒を防止できる。さらに、構造体の支持体を平板部材に固着せずに、構造体の本体底部と平板部材とを支持体とは異なる箇所で連結部材によって連結することで、地震等で床面が揺れたときに床面から構造体本体に伝わる揺れを連結部材が吸収できるので、構造体の傾斜を確実に抑制し、構造体の転倒を防止できる。
【0008】
本発明の転倒防止装置において、例えば、前記支持体はキャスターである。
【0009】
このような態様によれば、構造体の本体底部と平板部材とを連結部材によって連結する際に、キャスターの転動によって平板部材上での構造体の移動及び位置合わせが容易になるので、作業性が向上する。
【0010】
また、本発明の転倒防止装置において、前記平板部材の互いに離間した部位を前記構造体の本体底部に連結する複数の前記連結部材を備えているようにしてもよい。
【0011】
このような態様によれば、構造体本体と平板部材とを確実に連結できるとともに、平板部材に対する構造体本体の移動を規制して、構造体の支持体が平板部材の外側へ脱落するのを防止できる。なお、この実施態様は、例えば構造体の本体底部の平面視中央部を平板部材に連結する1つの連結部材を備えている構成を排除するものではない。
【0012】
また、本発明の転倒防止装置において、前記連結部材は、前記平板部材に固着したナット部材と、前記ナット部材にねじ込まれて上下方向に延びるボルト部材とを備えているようにしてもよい。
【0013】
このような態様によれば、低コストで連結部材を構成できるとともに、ボルト部材の締結作業という簡単な作業で構造体本体を平板部材に連結でき、作業性が向上する。
【0014】
さらに、前記ボルト部材は、両端にねじ部を有する両ねじボルトと、前記ナット部材にねじ込まれるボルト端部とは反対側の端部にねじ込まれるナットとを備えているようにしてもよい。
【0015】
このような態様によれば、平板部材に固着したナット部材に両ねじボルトの一端部を十分にねじ込む一方、両ねじボルト他端にナットを十分にねじ込んだ上で、ナット部材とナットとの間隔を調整できるので、構造体本体底部と平板部材との間の間隔の広狭に対応して、構造体本体底部と平板部材とを確実に連結できる。
【0016】
また、本発明の転倒防止装置において、前記連結部材は前記構造体の内部から操作可能に構成されているようにしてもよい。
【0017】
このような態様によれば、構造体の本体底部と平板部材とを連結部材によって連結又は解除する際に、作業者は床面に伏せて作業することなく構造体内部から連結部材を操作できるので、連結部材による連結又は解除作業の作業性及び迅速性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構造体の転倒防止装置は、本体底部が複数の支持体に支持されて該支持体が床面上に配置される構造体の転倒を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の概略正面図である。
図2】同実施形態の概略側面図である。
図3】同実施形態の概略平面図である。
図4図1のIV-IV位置に沿った横断面図である。
図5図4のV-V位置に沿った縦断面図である。
図6】第2実施形態の要部を示す概略図であり、(A)はブース下部を示す横断面図、(B)は(A)のVI-VI位置に沿った縦断面図である。
図7】第3実施形態の要部を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1).第1実施形態の概要
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1図6に示す第1実施形態を説明する。本実施形態は、内部に人が1人入ることができる程度の大きさで遮音性に優れた箱型ブースの転倒防止に適用している。このような箱型ブースは、本体底部が複数の支持体に支持されて支持体が床面上に配置される構造体の一例であり、建物の広いスペースに設置してweb会議や、通常の執務、仮眠などの各種の用途に使用できる。スモールオフィスとしても好適である。
【0021】
図1図4に示すように、箱型ブース100は、木材、金属、樹脂などの部材からなり、内部に人が入ることができる空間100aを有する略直方体箱型の形態を有する。箱型ブース100は、空間100aを囲う4つのブース側面部101と、ブース側面部101の上端側開口を塞ぐブース天井部102と、ブース側面部101の下端側開口を塞ぐブース底部103を有している。1つのブース側面部101に出入口104を設けており、出入口104には水平回動式のドア105を配置している。
【0022】
ドア105を有するブース側面部101及びそれに対向するブース側面部101は角部が丸みを帯びた上下方向に長手の角丸長方形の形態を有している。ブース天井部102には、箱型ブース100内の空間100aを換気するための換気装置106と、空間100a内で火災が発生したときに動作する消火装置107とが設けられている。
【0023】
なお、ブース側面部101、ブース天井部102、ブース底部103及びドア105は構造体本体と呼ぶことも可能である。また、ブース側面部101及びドア105のうち一部又は全部にガラス窓を設けることも可能である。
【0024】
図5にも示すように、ブース底部103の底面平坦部位103aの四隅部と中央部2箇所にキャスター108が設けられている。箱型ブース100は、ブース底部103が6つのキャスター108に支持され、キャスター108が床面Fの上に配置される。各キャスター108は、例えば水平旋回可能なものである。箱型ブース100の設置者は、キャスター108を使用して箱型ブース100を所望の設置場所に移動させることができる。
【0025】
本実施形態では、箱型ブース100のブース底部103は木材で形成されている。図5では、ブース底部103を概略的に一体物として図示しているが、ブース底部103は一体物に限らず、例えば複数のフレーム材や板材が組み合わされて構成されたものであってもよい。
【0026】
図1図5に示すように、箱型ブース100は、その高さに比べて床面F上に設置される面積(キャスター配置領域109の面積)が小さい。その上、箱型ブース100は本体が複数のキャスター108で支持される構成なので、箱型ブース100の荷重がキャスター108に集中する。これらにより、地震等で床面Fが揺れた際にキャスター108が床面に引っ掛かり、箱型ブース100が転倒する可能性がある。そこで、転倒防止装置1が使用される。
【0027】
なお、キャスター配置領域109は、図4では平面視ですべてのキャスター108の配置領域を囲う矩形で表示しているが、すべてのキャスター108の中心部同士を直線で結んだときに当該直線で囲まれる領域として定義することも可能である。
【0028】
(2).転倒防止装置の構成
転倒防止装置1は、床面Fと箱型ブース100との間に設置されて、箱型ブース100の転倒を防止する。転倒防止装置1は、箱型ブース100の下方で床面F上に配置されてキャスター108が載置される平板部材2と、箱型ブース100のブース底部103と平板部材2とをキャスター108とは異なる箇所で連結する連結部材3とを備えている。
【0029】
平板部材2は金属製であり、図4に示すように、平面視でキャスター配置領域109よりも大きく設けられている。本実施形態では、平板部材2は、平面視で、その縁部が箱型ブース100本体に対して外側へ少しはみ出す程度の大きさの略正方形に設けられている。平面視でブース側面部101と平板部材2の辺とが略平行になるようにして、平板部材2上に箱型ブース100のキャスター108が載置される。
【0030】
連結部材3は、ブース底部103の底面平坦部位103aの四隅部に対応する位置に設けられている。すなわち、本実施形態では4つの連結部材3が設けられている。各連結部材3は、平板部材2の一表面(箱型ブース100側の表面)に例えば溶接接合にて固着したナット部材4と、ナット部材4に上方からねじ込まれて上下方向に延びるボルト部材5とを備えている。本実施形態では、図4に示すように、連結部材3は、平面視でキャスター配置領域109の外側に配設されている。
【0031】
箱型ブース100のブース底部103には、連結部材3に対応する位置に、ボルト部材5を挿通する挿通穴103bが上下方向に貫通して設けられている。挿通穴103bは、ボルト部材5の両ねじボルト51の軸径よりも少し大きい内径を有する。挿通穴103bの上部は、ブース底部103の上面に設けた凹部103cに開口している。
【0032】
ボルト部材5は、両端部にねじ部を有する両ねじボルト51と、両ねじボルト51とねじ接合するナット52とを有する。両ねじボルト51は、例えば六角穴付きのものであり、箱型ブース100内の空間100a側から挿通穴103bに挿通されて一端部がナット部材4にねじ込まれる。両ねじボルト51の一端部は、ナット部材4に十分にねじ込まれ、例えば両ねじボルト51の一端部が平板部材2表面に当接するまでナット部材4に目いっぱいねじ込まれる。
【0033】
両ねじボルト51は、一端部がナット部材4にねじ込まれた状態で他端部が箱型ブース100のブース底部103表面の凹部103cに露出する長さに設けられる。両ねじボルト51の他端部に、箱型ブース100内の空間100a側から、平座金6とばね座金7をその順に挿通した上でナット52をねじ込んで、平座金6を凹部103cの底部に向けて押圧し、平板部材2とブース底部103とを連結する。
【0034】
ナット52を十分に締め込むことで、平板部材2とブース底部103との間隔が狭まる方向の力が加わり、連結部材3によって平板部材2とブース底部103とが強固に連結される。これにより、箱型ブース100と平板部材2との相対移動が制限される。そして、アジャスターを使用しなくても、可搬式の箱型ブース100を移動不能な状態にできる。
【0035】
また、連結部材3は、平板部材2に固着したナット部材4に両ねじボルト51の一端部を十分にねじ込む一方、両ねじボルト51の他端にナット52を十分にねじ込んだ状態で、ナット部材4とナット52との間隔を調整できる。したがって、ブース底部103と平板部材2との間の間隔の広狭に対応して、ブース底部103と平板部材2とを確実に連結できる。
【0036】
本実施形態では、複数の連結部材3を設けることで、箱型ブース100本体と平板部材2とを確実に連結できるとともに、平板部材2に対する箱型ブース100の移動を規制して、キャスター108が平板部材2の外側へ脱落するのを防止できる。
【0037】
なお、連結部材3は、ばね座金7を使用しない構成であってもよいし、平座金6を使用せずにばね座金7が凹部103cの底部に接触する構成であってもよいし、平座金6及びばね座金7を使用せずにナット52が凹部103cの底部に接触する構成であってもよい。
【0038】
図5に示すように、両ねじボルト51の他端部及びナット52は凹部103cに収容され、ブース底部103表面の表面上に配設されるカーペット等の床材110で目隠しされる。平板部材2とブース底部103とを連結を解除する際には、床材110を取り外し、両ねじボルト51を緩む方向へ回転させてナット部材4から引き抜く。
【0039】
このように、箱型ブース100のブース底部103と平板部材2とを連結部材3によって連結又は解除する際に、作業者は床面Fに伏せて作業することなく箱型ブース100の内部から連結部材3を操作できる。したがって、本実施形態の転倒防止装置1は、連結部材3による連結又は解除作業の作業性及び迅速性に優れている。
【0040】
(3).第1実施形態のまとめ
箱型ブース100の下方に転倒防止装置1を配置することで、箱型ブース100から複数のキャスター108にかかる荷重が平板部材2によって分散されて床面Fに伝わるので、荷重の集中を防止できる。そして、平板部材2は、床面Fに固定されていないので、地震等で床面Fが揺れたときに床面F上を引っ掛かることなくスライド移動できる。これにより、箱型ブース100の傾斜を抑制し、ひいては箱型ブース100の転倒を防止できる。
【0041】
さらに、箱型ブース100本体を支持するキャスター108を平板部材2に固着せずに、キャスター108とは異なる箇所でブース底部103と平板部材2とを連結部材3によって連結しているので、地震等で床面Fが揺れたときに床面Fから箱型ブース100本体に伝わる揺れの一部を連結部材3が吸収し、箱型ブース100の傾斜を確実に抑制し、構造体の転倒を防止できる。このように、本実施形態の転倒防止装置1は、構造が簡単で施工も容易で実用性・汎用性に優れた構造体転倒防止技術を提供できる。
【0042】
本実施形態では、連結部材3がキャスター108とは異なる箇所に設けられているので、連結部材3には箱型ブース100の荷重がかかっていない。そして、床面Fから箱型ブース100に伝わる水平方向の揺れは、平板部材2から連結部材3を介して箱型ブース100に伝わる。例えば、両ねじボルト51や、平板部材2とナット部材4との接合箇所が破断しない程度に変形(弾性変形もしくは塑性変形)することで、連結部材3が床面Fから箱型ブース100に伝わる水平方向の揺れの一部を吸収できる。
【0043】
なお、本実施形態では、図5から明らかなように、連結部材3は、ブース底部103が平板部材2から離れる方向への移動(ブース底部103の上向き移動)は規制するが、ブース底部103が平板部材2に近づく方向への移動(ブース底部103の下向き移動)は規制していない。つまり、平板部材2とブース底部103は、相対的に近づくような変位が許容されているので、地震等で床面Fが揺れた際に箱型ブース100に伝わる揺れの一部を、平板部材2が弾性変形もしくは塑性変形したり、ブース底部103が撓んだりすることで吸収可能になっている。
【0044】
本実施形態では、キャスター108及び連結部材3は、平面視で箱型ブース100の外周部よりも中央部寄りの底面平坦部位103aに設けられており、箱型ブース100を転倒防止装置1上に設置した際にキャスター108及び連結部材3が使用者等から見え難い構成になっているので、見栄えが良い。ただし、本発明において、キャスター108及び連結部材3の配置は、本実施形態での配置に限定されるものではなく、例えばキャスター108及び連結部材3がブース底部103の周縁部近傍に配置されて、それらの一部が使用者の視野に入る構成であってもよい。
【0045】
(4).第2~第3実施形態
図6に示す第2実施形態では、転倒防止装置1の平板部材2の縁部が平面視で箱型ブース100のブース側面部101外壁面よりも内側に位置しており、平板部材2が使用者の視野に入り難いので見栄えが良い。なお、平板部材2の平板サイズは、すべてのキャスター108を載置可能な大きさであればよく、例えば平板部材2の平板サイズは、箱型ブース100の平面サイズと同じであってもよい。
【0046】
図7に示す第3実施形態では、転倒防止装置1の連結部材3のボルト部材5は、頭部付きのボルト53で構成されている。ボルト53は、例えば六角穴付きのものであり、箱型ブース100の空間100a内から挿通穴103bに下向きに挿通してナット部材4にねじ込むことで、平板部材2と箱型ブース100とを連結できる。
【0047】
(5).その他
以上、実施形態を説明したが、本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば、前述した実施形態及び変形例(尚書き等)で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【0048】
例えば、ブース底部103のキャスター108取付箇所及び挿通穴103b形成箇所とは異なる箇所に、ブース底部103を支持するアジャスターを取り付けてもよい。この場合、キャスター108の転動によって箱型ブース100を平板部材2の所定位置に配置した後、アジャスターを平板部材2上面に接触させて箱型ブース100を移動不能な状態とし、そして、連結部材3にてブース底部103と平板部材2とを連結する。アジャスター(及びキャスター108)は平板部材2に固着しないので、地震等によって床面Fが揺れた際に連結部材3が揺れの一部を吸収し、箱型ブース100の転倒を防止できる。
【0049】
また、連結部材3は、平面視でキャスター配置領域109内に配置されていても構わない。また、ブース底部103にアジャスターが取り付けられる場合には、連結部材3は、アジャスターに対して箱型ブース100の平面視中央部寄りに配置されてもよいし、外部側寄りに配置されてもよい。
【0050】
また、構造体の支持体は、必ずしもキャスターやアジャスターである必要はなく、例えば高さ調節機能を持たない下向き突起であってもよい。
【0051】
また、本発明の転倒防止装置が適用される構造体は、箱型ブース100に限らず、本体底部が複数の支持体に支持されて支持体が床面上に配置される構造体に適用可能である。例えば、キャスター付きのワゴンや、アジャスター付きのキャビネットなど、本体底部がキャスターやアジャスターなどの複数の支持体に支持されて床面から浮いている構造体に適用できる。また、技術分野の欄で触れたとおり、電気・電子機器、自販機、冷蔵庫、商品陳列棚なども対象になる。
【0052】
また、本発明の転倒防止装置の変形例について説明すると、平板部材の少なくとも前記端部の下面に滑り材が設けられているようにしてもよい。このような態様によれば、平板部材と床面との間の摩擦を小さくすることで免震させて、構造体の傾斜を抑制することで構造体の転倒を防止できる。仮に、地震の揺れに際して構造体が揺動して傾斜姿勢になったとしても、平板部材の端部下面に設けた滑り材が構造体の傾斜方向に向かって床面を滑ることで、構造体の揺動を抑制できるとともに、平板部材の端部が床面にひっかかって構造体が転倒するのを防止できる。
【0053】
また、本願発明の転倒防止装置において、平板部材の端部は、先端側ほど床面から離れるように上向きに傾斜しているようにしてもよい。このような態様によれば、地震の揺れ等によって構造体が動くときに平板部材の端部が床面に引っ掛かるのを確実に防止して構造体の揺動(傾斜)を抑制できる。
【0054】
なお、平板部材の端部下面に滑り材を設ける構成と、平板部材の端部が上向きに傾斜している構成とを組み合わせても構わない。このような態様によれば、構造体が傾斜姿勢になったときに、上向きに傾斜した平板部材端部に設けた滑り材が床面に接触する面積を大きくでき、構造体の転倒をより確実に防止できる。
【0055】
また、平板部材の端部が略水平な形状を有する場合は、平板部材の端部の下角部を滑り材が覆っていて、滑り材の端部が平板部材の端部下面よりも上側に設けられているようにしてもよい。これにより、滑り材の端部が床面に接触してひっかかるのを防止でき、平板部材の端部が床面にひっかかって構造体が転倒するのを防止できる。
【0056】
また、前記滑り材は、前記平板部材の中間部の下面にも設けられているようにしてもよい。ここで、「平板部材の中間部」とは、平板部材の一方の端部と他方の端部の間の部位を意味する。このような態様によれば、滑り材の面積が大きくなることで免震機能を向上でき、構造体に対する揺動抑制機能及び転倒防止機能を向上できる。なお、平板部材の下面において滑り材が設けられる部位は、平板部材の下面のうちの一部分であってもよいし、全面であってもよい。
【0057】
なお、本願発明では、構造体が転倒防止装置の他に緩衝装置などの他の機能を有することは排除しない。転倒防止装置を補助する装置を併有させることは、構造体の地震対策として好ましい。
【符号の説明】
【0058】
1 転倒防止装置
2 平板部材
3 連結部材
4 ナット部材
5 ボルト部材
51 両ねじボルト
52 ナット
53 ボルト
100 箱型ブース(構造体の一例)
100a 空間
103 ブース底部(本体底部の一例)
108 キャスター(支持体の一例)
F 床面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7