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特開2022-191978水蒸気改質器、水蒸気改質器の運転方法、水素ガス製造装置及び水素ガス製造方法
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  • 特開-水蒸気改質器、水蒸気改質器の運転方法、水素ガス製造装置及び水素ガス製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191978
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】水蒸気改質器、水蒸気改質器の運転方法、水素ガス製造装置及び水素ガス製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
C01B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100541
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB12
4G140EB23
4G140EB32
4G140EB37
(57)【要約】
【課題】本発明は、改質路の損傷などを抑制しつつ短時間で触媒を加熱できる水蒸気改質器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、炭化水素を含有する原料ガスに水分を混合した混合ガスを水蒸気改質する水蒸気改質器であって、上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、上記触媒に反応しない不活性ガスを上記改質路に供給する不活性ガス供給手段と、上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、上記外管内の触媒を通過する上記不活性ガスの温度を測定する第三温度測定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含有する原料ガスに水分を混合した混合ガスを水蒸気改質する水蒸気改質器であって、
上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、
上記触媒に反応しない不活性ガスを上記改質路に供給する不活性ガス供給手段と、
上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、
上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、
上記外管内の触媒を通過する上記不活性ガスの温度を測定する第三温度測定部と
を備える水蒸気改質器。
【請求項2】
上記改質路が上記触媒加熱手段の周囲に配され、
上記第一温度測定部が、上記触媒加熱手段が配置されている側における上記外管の側壁の外面に配置されている請求項1に記載の水蒸気改質器。
【請求項3】
上記水分を加熱する水分加熱手段をさらに備え、
この水分加熱手段が、上記触媒加熱手段の熱が上記水分に伝達されるように上記反応部の周囲に配されている請求項1又は請求項2に記載の水蒸気改質器。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の水蒸気改質器の運転方法であって、
上記改質路に上記不活性ガスを供給する工程と、
上記改質路を加熱する工程と、
上記不活性ガスの供給を停止して上記改質路に上記混合ガスを供給する工程と
を備え、
上記改質路加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が下記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する水蒸気改質器の運転方法。
T1-T2 > T2-T3 ・・・・(1)
【請求項5】
炭化水素を含有する原料ガスに水分を混合した混合ガスを水蒸気改質する水蒸気改質器の運転方法であって、
上記水蒸気改質器が、
上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、
上記水分を加熱する水分加熱手段と、
上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、
上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、
上記外管内の触媒を通過する上記水分の温度を測定する第三温度測定部と
を有し、
上記改質路に加熱した上記水分を供給する工程と、
上記改質路を加熱する工程と、
上記改質路に上記混合ガスを供給する工程と
を備え、
上記改質路加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が下記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する水蒸気改質器の運転方法。
T1-T2 > T2-T3 ・・・・(1)
【請求項6】
上記式(1)で、T1-T2が300℃未満、かつT2-T3が200℃未満である請求項4又は請求項5に記載の水蒸気改質器の運転方法。
【請求項7】
上記改質路の加熱の停止、及び上記混合ガスの供給を停止する工程と、
上記改質路に上記不活性ガス又は上記水分を供給する工程と
をさらに備える請求項4、請求項5又は請求項6に記載の水蒸気改質器の運転方法。
【請求項8】
上記改質路内が常圧になるように上記不活性ガス又は上記水分を供給する請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の水蒸気改質器の運転方法。
【請求項9】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の水蒸気改質器と、
上記水蒸気改質器が改質した上記改質ガスから不純物を吸着する吸着塔と
を備える水素ガス製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の水素ガス製造装置を用いた水素ガスの製造方法であって、
上記改質路に上記不活性ガスを供給する工程と、
上記改質路を加熱する工程と、
上記不活性ガスの供給を停止して上記改質路に上記混合ガスを供給する工程と、
供給された上記混合ガスを水蒸気改質する工程と、
水蒸気改質した上記混合ガスから不純物を吸着する工程と
を備え、
上記触媒加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が下記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する水素ガス製造方法。
T1-T2 > T2-T3 ・・・・(1)
【請求項11】
水蒸気改質器と、この水蒸気改質器が改質した改質ガスから不純物を吸着する吸着塔とを備える水素ガス製造装置用いた水素ガスの製造方法であって、
上記水蒸気改質器が、
上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、
上記水分を加熱する水分加熱手段と、
上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、
上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、
上記外管内の触媒を通過するガスの温度を測定する第三温度測定部と
を有し、
上記改質路に加熱した上記水分を供給する工程と、
上記改質路を加熱する工程と、
上記改質路に上記混合ガスを供給する工程と、
供給された上記混合ガスを水蒸気改質する工程と、
水蒸気改質した上記混合ガスから不純物を吸着する工程と
を備え、
上記改質路加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が下記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する水素ガス製造方法。
T1-T2 > T2-T3 ・・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気改質器、水蒸気改質器の運転方法、水素ガス製造装置及び水素ガス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を製造する方法として水蒸気改質法が知られている。水蒸気改質法では、天然ガス等の原料ガスと水蒸気との混合ガスを加熱した触媒の存在下で改質して改質ガスを生成し、この改質ガスから一酸化炭素、メタン、二酸化炭素等の不純物を除去することで高純度水素ガスが得られる。得られた高純度水素ガスは、例えば燃料電池車等に利用される。
【0003】
水蒸気改質法では、上記触媒が所定の温度に加熱されていることで、上記混合ガスを効率的に改質できる。触媒を効率的に昇温する改質器の起動方法が公知である(特許第5433892号公報)。この改質器では、改質路の出口側に第一の触媒、入口側に第一の触媒より活性温度の低い第二の触媒を充填している。上記改質器の起動時に改質路の出口側から燃焼ガスを供給し、入口温度が所定温度に達すると上記改質路に水蒸気を供給することで上記第一の触媒及び上記第二の触媒を適温まで加熱している。このようにすることで、急速な加熱による触媒の劣化を防止できるとしている。
【0004】
また、改質器を短時間で昇温する方法が発案されている(特許第4973080号公報)。この改質器は、一定の燃焼量で改質器の加熱を開始し、所定の温度に達すると燃焼量を増大しながらさらに加熱している。このようにすることで、起動時間の短縮と燃焼排ガス中の有害物質の低減とを図ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5433892号公報
【特許文献2】特許第4973080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2では、加熱を二段階で行っているため、短時間で起動することができないおそれがある。また、改質路は、急速に加熱されて熱応力が発生することで損傷などをすることがある。しかし、この点については、特許文献1及び特許文献2では触れられていない。
【0007】
上述のような事情に鑑み、本発明は、改質路の損傷などを抑制しつつ短時間で起動することができる水蒸気改質器、及び水蒸気改質器の運転方法と、効率的に水素ガスを生産できる水素ガス製造装置、及び水素ガス製造方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、炭化水素を含有する原料ガスに水分を混合した混合ガスを水蒸気改質する水蒸気改質器であって、上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、上記触媒に反応しない不活性ガスを上記改質路に供給する不活性ガス供給手段と、上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、上記外管内の触媒を通過する上記不活性ガスの温度を測定する第三温度測定部とを備える。
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様は、当該水蒸気改質器の運転方法であって、上記改質路に上記不活性ガスを供給する工程と、上記改質路を加熱する工程と、上記不活性ガスの供給を停止して上記改質路に上記混合ガスを供給する工程とを備え、上記改質路加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が下記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する。
T1-T2 > T2-T3 ・・・・(1)
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに他の一態様は、当該水蒸気改質器と、当該水蒸気改質器が改質した上記改質ガスから不純物を吸着する吸着塔とを備える水素ガス製造装置である。
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに別の一態様は、当該水素ガス製造装置を用いた水素ガスの製造方法であって、上記改質路に上記不活性ガスを供給する工程と、上記改質路を加熱する工程と、上記不活性ガスの供給を停止して上記改質路に上記混合ガスを供給する工程と、供給された上記混合ガスを水蒸気改質する工程と、水蒸気改質した上記混合ガスから不純物を吸着する工程とを備え、上記触媒加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が上記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水蒸気改質器、及びこの水蒸気改質器の運転方法は、改質路の損傷などを抑制しつつ短時間で起動することができる。本発明の水素ガス製造装置、及び水素ガスの製造方法は、当該水蒸気改質器を用いているため、高純度な水素ガスを効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態である水蒸気改質器の構成を示す模式的側面図である。
図2図2は、図1の水蒸気改質器の模式的断面図である。
図3図3は、図2のA部の拡大図側面図である。
図4図4は、本発明の他の一実施形態である水素ガス製造装置の構成を示す概念図である。
図5図5は、本発明のさらに他の一実施形態である水蒸気改質器の構成を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施態様の説明]
以下、本発明の実施態様について説明する。
【0015】
本発明の一態様は、炭化水素を含有する原料ガスに水分を混合した混合ガスを水蒸気改質する水蒸気改質器であって、上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、上記触媒に反応しない不活性ガスを上記改質路に供給する不活性ガス供給手段と、上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、上記外管内の触媒を通過する上記不活性ガスの温度を測定する第三温度測定部とを備える。
【0016】
当該水蒸気改質器は、改質路の外表面の温度を測定する第一温度測定部、及び上記改質路の内表面の温度を測定する第二温度測定部を有する。上記外表面及び内表面の温度差を所定の範囲にすることで、上記改質路に発生する熱応力を抑制できる。また、当該水蒸気改質器は、上記改質路に充填されている触媒を通過する不活性ガスの温度を測定する第三温度測定部を有する。上記不活性ガスの温度を測定することで、上記改質路に発生する熱応力を抑制しつつ上記触媒の急速加熱を図ることができる。このため、上記改質路の損傷などを抑制しつつ、当該水蒸気改質器を短時間で起動することができる。
【0017】
上記改質路が上記触媒加熱手段の周囲に配され、上記第一温度測定部が、上記触媒加熱手段が配置されている側における上記外管の側壁の外面に配置されていることが好ましい。上記第一温度測定部が、最も高温になる箇所に配置されることで、上記改質路に発生する熱応力の予測精度を向上できる。
【0018】
上記混合ガスを生成するための水分を加熱する水分加熱手段をさらに備え、この水分加熱手段が、上記触媒加熱手段の熱が上記水分に伝達されるように上記反応部の周囲に配されていることが好ましい。このようにすることで、水分の加熱と触媒の加熱とを一つの加熱手段で行うことができるため、効率的に当該水蒸気改質器の起動と運転とをすることができる。
【0019】
本発明の他の一態様は、当該水蒸気改質器の運転方法であって上記改質路に上記不活性ガスを供給する工程と、上記改質路を加熱する工程と、上記不活性ガスの供給を停止して上記改質路に上記混合ガスを供給する工程とを備え、上記改質路加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が下記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する。
T1-T2 > T2-T3 ・・・・(1)
【0020】
本発明のさらに他の一態様は、炭化水素を含有する原料ガスに水分を混合した混合ガスを水蒸気改質する水蒸気改質器の運転方法であって、上記水蒸気改質器が、上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、上記水分を加熱する水分加熱手段と、上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、上記外管内の触媒を通過する上記水分の温度を測定する第三温度測定部とを有し、上記改質路に加熱した上記水分を供給する工程と、上記改質路を加熱する工程と、上記改質路に上記混合ガスを供給する工程とを備え、上記改質路加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が上記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する。
【0021】
当該運転方法では、不活性ガス又は水分を上記改質路に供給しつつ加熱するため、上記改質路が急速に加熱されることを抑制できる。このため、上記改質路が損傷などすることを抑制できる。また、上記三つの測定部における測定値を、上記式1を満たすように制御しているため、上記改質路が損傷などすることを抑制しつつ、当該水蒸気改質器を短時間で起動することができる。
【0022】
上記式(1)で、T1-T2が300℃未満、かつT2-T3が200℃未満であることが好ましい。このようにすることで、上記改質路の損傷などをより抑制し、当該水蒸気改質器をより短時間で起動することができる。
【0023】
当該運転方法が、上記改質路の加熱の停止、及び上記混合ガスの供給を停止する工程と、上記改質路に上記不活性ガス又は上記水分を供給する工程とをさらに備えることが好ましい。このようにすることで、当該水蒸気改質器の運転を停止した際に、上記改質路の熱が他の部材に伝導することを抑制できる。
【0024】
上記改質路内が常圧になるように上記不活性ガス又は上記水分を供給することが好ましい。このようにすることで、上記改質路が損傷などすることをより抑制できる。
【0025】
本発明の別の一態様は、水蒸気改質器と、上記水蒸気改質器が改質した上記改質ガスから不純物を吸着する吸着塔とを備える水素ガス製造装置である。
【0026】
当該水素ガス製造装置は、当該水蒸気改質器が短時間で起動するため、高純度水素ガスを効率的に生産することができる。
【0027】
本発明のさらに別の一態様は、当該水素ガス製造装置を用いた水素ガスの製造方法であって、上記改質路に上記不活性ガスを供給する工程と、上記改質路を加熱する工程と、上記不活性ガスの供給を停止して上記改質路に上記混合ガスを供給する工程と、供給された上記混合ガスを水蒸気改質する工程と、水蒸気改質した上記混合ガスから不純物を吸着する工程とを備え、上記触媒加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が上記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する。
【0028】
本発明のさらに他の一態様は、水蒸気改質器と、この水蒸気改質器が改質した改質ガスから不純物を吸着する吸着塔とを備える水素ガス製造装置用いた水素ガスの製造方法であって、上記水蒸気改質器が、上記混合ガスを改質する触媒を含み、上記混合ガスが供給される外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された上記混合ガスを排出する内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段とを有する反応部と、上記水分を加熱する水分加熱手段と、上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、上記外管内の触媒を通過するガスの温度を測定する第三温度測定部とを有し、上記改質路に加熱した上記水分を供給する工程と、上記改質路を加熱する工程と、上記改質路に上記混合ガスを供給する工程と、供給された上記混合ガスを水蒸気改質する工程と、水蒸気改質した上記混合ガスから不純物を吸着する工程とを備え、上記改質路加熱工程で、上記第一温度測定部で測定される温度T1、上記第二温度測定部で測定される温度T2、及び上記第三温度測定部で測定される温度T3の関係が上記式(1)を満たすように上記改質路を加熱する。
【0029】
当該水素ガス製造方法は、当該水素ガス製造装置が有する水蒸気改質器が短時間で起動するため、高純度水素ガスを効率的に生産することができる。
【0030】
なお、「外管の外面」とは、外管における混合ガスが流通しない側の面であり、「外管の内面」とは、混合ガスが流通する側(触媒が充填されている側)の面を意味する。
【0031】
[本発明の実施形態の詳細]
以下では、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、図は、構成を模式的に示したものであり、各構成(各部材)の縮尺などは実際のものと異なることがある。
【0032】
[第一実施形態]
[水蒸気改質器]
本発明の一実施形態である水蒸気改質器1(以下、単に「改質器1」ともいう)は、炭化水素を含有する原料ガスRに水分W(水蒸気S)を混合した混合ガスRを水蒸気改質する。改質器1は、図1で示すように、混合ガスRを改質する反応部2と、水分加熱手段3とを備える。
【0033】
<反応部>
反応部2は、図2で示すように、改質路21と、この改質路21の触媒を加熱するための触媒加熱手段22とを有する。改質路21は、触媒(不図示)を含む。改質路21は、混合ガスRが供給される外管211、及びこの外管211の内部に配置され、混合ガスRを改質した改質ガスMを排出する内管212を有する。図2では、一対の改質路21を示しているが、反応部2は、さらに複数の改質路を有してもよい。
【0034】
(改質路)
改質路21は、原料ガスRに水蒸気Sを混合した混合ガスRを改質して改質ガスMを生成する。改質路21は、混合ガスRが混合ガス供給路81から改質ガス排出路4へと流通する際に上述のような改質を行う。この改質路21には、上述のような改質を行う触媒が介在されている。
【0035】
上記触媒としては、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えば、酸化改質部分とシフト反応部分とを有するものとすることができる。酸化改質部分は、混合ガスR中の炭化水素を酸化(燃焼)させて上記触媒を加熱し、触媒加熱手段22と共に水蒸気改質反応に必要な温度を得るための酸化触媒と、炭化水素を水蒸気改質させて水素を生成するための改質触媒とを含むものとすることができる。シフト反応部分は、シフト触媒が充填される高温シフト触媒及び低温シフト触媒を含むものとすることができる。シフト反応部分は、生成中の改質ガスに残存する水蒸気と一酸化炭素との混合物を上記シフト触媒の存在下で水素と二酸化炭素とにシフト変換して水素を発生させ、生成中の改質ガス中の水素濃度を向上し、これに応じて一酸化炭素濃度を低減する。
【0036】
内管212は、外管211内に挿入されている。内管212と外管211とは、底部で連通している。混合ガスRは、外管211の上部に供給され、外管211の底部に向かって流れつつ、充填されている触媒を通過して改質される。外管211の上記触媒を通過した混合ガスRは、底部から内管212の上部に向かって流れつつ、内管212に充填されている触媒を通過してさらに改質され、改質ガスMとして改質ガス排出路4に排出される。
【0037】
〔温度測定部〕
改質器1は、図3で示すように、第一温度測定部24、第二温度測定部25、及び第三温度測定部26を備える。第一温度測定部24は、外管211の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する。第二温度測定部25は、外管211の側壁を挟んで第一温度測定部24と対向するように外管211の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する。第三温度測定部26は、外管211内の触媒を通過するガスの温度を測定する。上記三つの温度測定部としては、高温まで測定できるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、白金系の熱電対を用いることができる。
【0038】
本実施形態では、改質路21が触媒加熱手段22の周囲に配されている。第一温度測定部24は、触媒加熱手段22が配置されている側における外管211の側壁の外面に配置されている。すなわち、第一温度測定部24が、外管211の外面が触媒加熱手段22に近接している箇所に配置されている。このように、最も高温になる箇所に第一温度測定部24を配置することで、外管211が受ける熱の影響を予測する精度が向上できる。このため、第一温度測定部24が、触媒加熱手段22から放出される火炎Bに近接している箇所における外管211の外面に配置されることが好ましい。
【0039】
第三温度測定部26は、改質路21の長手方向で、第一温度測定部24及び第二温度測定部25と同一の位置(高さ)に配置されることが好ましい。このようにすることで、各温度差を容易に把握できる。また、第三温度測定部26は、上記触媒のサイズ以下の目開きを有するメッシュで囲われていることが好ましい。このようにすることで、上記触媒と接触することを抑制できる。また、改質路21に充填されている触媒の不均一化、及びこの不均一化による触媒反応の低下を抑制し、改質路21内を流通する不活性ガスNの温度の測定精度を向上できる。
【0040】
(触媒加熱手段)
触媒加熱手段22は、改質路21を加熱する。改質路21が加熱されることで、改質路21内の上記触媒が加熱される。触媒加熱手段22は、燃料供給路221を介して供給される燃料F、及び酸素供給路222を介して供給される酸素A(空気)を燃焼室で燃焼するバーナーである。触媒加熱手段22としては、特に限定されるものでなく、他の公知のものを用いてもよい。上記バーナーの上記燃料としては、当該改質器1で使用される原料ガスRの一部、又は当該改質器1を含む水素製造装置から排出されるオフガスを用いるのが好ましい。上記バーナーの上記燃料としては、特に限定されるものでなく、他の公知の燃料が用いられてもよい。
【0041】
<水分加熱手段>
水分加熱手段3は、供給される水分Wを加熱して水蒸気Sとして排出する。水分加熱手段3は、例えば、ボイラである。水分加熱手段3は、触媒加熱手段22の熱が水分Wに伝達されるように反応部2の周囲に配されている。換言すれば、反応部2の少なくとも一部が、水分加熱手段3内に収容されるように一体的に構成されている。このようにすることで、加熱された反応部2の熱を水分加熱手段3に伝導することができる。また、触媒加熱手段22は、燃料の燃焼によって発生する排ガスを加熱ガスとして水分加熱手段3に供給する。この加熱ガスで水分加熱手段3は加熱される。換言すれば、水分加熱手段3は、反応部2の余熱と排ガスの熱とで加熱され、供給される水分Wを加熱して水蒸気Sとして排出する。
【0042】
具体的には、水分加熱手段3は、加熱管31と、この加熱管31及び改質路21の一部を内蔵しているケーシング32とを含む。加熱管31は、ケーシング32内の改質路21の外周を跨ぐように螺旋状に巻かれている。ケーシング32内には、触媒加熱手段22の排ガスEが一時的に滞留する。排ガスEは、加熱管31を介して水分Wを加熱し、排ガス排出路33から排出される。
【0043】
反応部2及び水分加熱手段3が一体的に構成されることで、改質器1を簡易な構成とすることができ、小型化を図ることができる。また、一つの触媒加熱手段22で触媒及び水分Wを効率的に加熱することができ、反応部2及び水分加熱手段3それぞれに加熱手段を用意する必要がないため、改質器1のコスト、及び消費される燃料のコストを低減することができる。また、触媒加熱手段22によって触媒と水分Wとが加熱されるため、改質器1、及び当該改質器1を含む水素製造装置の起動時間の短縮を図ることができる。このため、当該改質器1を備える水素製造装置は、起動と停止とを毎日行うDSS(Dairy Start and Stop)タイプの水素ステーションとして好適である。
【0044】
<改質ガス排出路>
改質ガス排出路4は、改質ガスMを反応部2から排出する。反応部2から排出された改質ガスMは、水素製造装置に供給される。
【0045】
<水分供給手段>
改質器1は、水分加熱手段3に水分Wを供給する水分供給手段5を有する。水分供給手段は、水分供給装置51、及び水分供給装置51と水分加熱手段3とを連通する水分供給路52を含む。水分供給装置51は、水分Wを水分供給路52に供給するポンプである。水分Wは、例えば、純水である。
【0046】
改質器1は、改質ガスMと水分Wとが熱交換する凝縮器6を備える。具体的には、混合改質ガス排出路4の一部及び水分供給路52の一部が、凝縮器6の内部に配置される。高温の混合改質ガスM及び低温の水分Wは、凝縮器6内で熱交換する。凝縮器6は、上記熱交換によって、改質ガスMを冷却すると共に、水分加熱手段3に供給する水分Wを予熱する。また、改質ガスMに水分が含まれる場合は、改質ガスM中の水分を凝縮させ、この凝縮水を廃液として排出し、水素製造装置に供給する改質ガスMの品質を向上できる。
【0047】
<水分排出路>
改質器1は、水分加熱手段3から排出される加熱された水分W(水蒸気S)を排出する水分排出路7を有する。水分加熱手段3から排出された水蒸気Sは、少なくとも一部が混合部8で原料ガスRに混合される。原料ガスRと水蒸気Sとが混合された混合ガスRは、混合ガス供給路81を介して改質路21に供給される。
【0048】
<原料ガス供給手段>
改質器1は、混合部8に原料ガスRを供給する原料ガス供給手段9を有する。原料ガス供給手段9は、原料ガス供給装置91、及び原料ガス供給装置91と混合部8とを連通する原料ガス供給路92を含む。原料ガス供給装置91は、原料ガスRを原料ガス供給路92に供給するポンプである。
【0049】
原料ガスRとしては、炭化水素を含み、水蒸気改質法により改質ガスが得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然ガス、ナフサ、灯油、メタノール、又はLPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)を用いることができる。
【0050】
<不活性ガス供給手段>
改質器1は、上記触媒に反応しない不活性ガスNを改質路21に供給する不活性ガス供給手段10を備える。不活性ガスNは、改質器1の起動時及び停止時に改質路21に供給され、運転時には供給されない。不活性ガス供給手段10は、不活性ガス供給装置11、及び不活性ガス供給装置11と混合ガス供給路81とを連通する不活性ガス供給路12を含む。混合ガス供給路81と不活性ガス供給路12との合流部には、混合ガスのR流通と不活性ガスNの流通とを切り替え可能な三方バルブVが配置される。
【0051】
不活性ガスNとしては、上記触媒に反応しないものであれば特に限定されないが、窒素(N)、二酸化炭素(CO)、水素(H)、水蒸気(HO)、若しくはこれらの混合物、又はこれらを含む気体を用いることが好ましい。
【0052】
[水蒸気改質器の運転方法]
当該改質器1の運転方法は、起動方法として、改質路21に不活性ガスNを供給する工程と、触媒加熱手段22で改質路21を加熱する工程と、不活性ガスNの供給を停止して改質路21に混合ガスRを供給する工程とを備える。上記改質路加熱工程では、第一温度測定部24で測定される温度T1、第二温度測定部25で測定される温度T2、及び第三温度測定部26で測定される温度T3の関係が下記式(1)を満たすように改質路21を加熱する。
T1-T2 > T2-T3 ・・・・(1)
【0053】
また、当該改質器1の運転方法は、停止方法として、改質路21の加熱の停止、及び混合ガスRの供給を停止する工程と、改質路21に不活性ガスNを供給する工程とを備える。
【0054】
<起動方法>
(不活性ガス供給工程)
不活性ガス供給工程では、改質路21に不活性ガスNを供給する。具体的には、三方バルブVを不活性ガスNが流通するように切り替えて、不活性ガス供給装置11を起動して不活性ガスNを改質路21に供給する。
【0055】
(改質路加熱工程)
改質路加熱工程では、改質路21を加熱する。具体的には、触媒加熱手段22を起動して改質路21を加熱し、上記触媒を加熱する。不活性ガスNが改質路21内を流通するため、改質路21が急速に加熱されることが緩和され、改質路21が損傷などすることを抑制できる。
【0056】
不活性ガス供給工程及び改質路加熱工程は、同時に行ってもよいし、いずれか一方を行った後に他方を行ってもよい。
【0057】
上記改質路加熱工程では、第一温度測定部24で測定される温度T1、第二温度測定部25で測定される温度T2、及び第三温度測定部26で測定される温度T3の関係が上記式(1)を満たすように改質路21を加熱する。
【0058】
改質器1を短時間で起動するために触媒加熱手段22によって改質路21の急速な加熱を行うと、改質路21の、特に外管211の外表面に、急激な熱変化による熱応力が大きく発生する。この熱応力は、加熱による外管211の材料の延びに起因するものであるが、外管211外表面と内表面との温度差が大きいと、より大きい熱応力が発生する。当該改質器1は、外管211の外表面の温度を測定する第一温度測定部24と、外管211の内表面の温度を測定する第二温度測定部25とを備えるため、外管211の外表面と内表面の温度差を確認することができる。また、当該改質器1は、上記触媒を通過する不活性ガスNの温度を測定する第三温度測定部26を備えるため、上記触媒の加熱状況を確認し、混合ガスRの供給を開始するタイミングを図ることができる。さらに、上記式(1)を満たすように触媒加熱手段22による加熱を制御するため、熱応力による改質路21の損傷を抑制しつつ、短時間で起動することができる。
【0059】
上記式(1)で、T1-T2が300℃未満、かつT2-T3が200℃未満であることが好ましい。T1-T2が上記上限を超えた場合、又はT2-T3が上記上限を超えた場合、改質路21の損傷等を効果的に抑制できないおそれがある。
【0060】
(混合ガス供給工程)
混合ガス供給工程では、不活性ガスNの供給を停止して改質路21に混合ガスRを供給する。具体的には、不活性ガス供給装置11を停止し、三方バルブVを混合ガスRが流通するように切り替える。混合部8に原料ガスRと水蒸気Sとを供給し、混合ガス供給路81を介して混合ガスRを改質路21に供給する。混合ガス供給工程は、改質器1の運転状態である。
【0061】
<停止方法>
(混合ガス供給停止工程)
混合ガス供給停止工程では、改質路21の加熱の停止、及び混合ガスRの供給を停止する。具体的には、触媒加熱手段22、水分供給装置51、及び原料ガス供給装置91それぞれの運転を停止することにより、改質器1による水蒸気改質を停止する。
【0062】
(停止後不活性ガス供給工程)
停止後不活性ガス供給工程では、改質路21に不活性ガスNを供給する。具体的には、三方バルブVを不活性ガスNが流通するように切り替えて、不活性ガス供給装置11を起動して不活性ガスNを改質路21に供給する。
【0063】
改質器1の運転を停止した後にも改質路21は蓄熱をしている。改質器1の運転停止後に改質路21が急速に冷却されることで熱応力が発生し、改質路21が損傷などすることがある。改質器1の運転停止後に改質路21に不活性ガスNを供給することで、改質路21の急激な温度変化を緩和し、改質路21が損傷などすることを抑制できる。
【0064】
また、改質器1の運転を停止すると、温度バランスは触媒加熱手段22を最高温度とした温度分布から、徐々に均一化する。これは、運転時は低温であった部分が徐々に昇温されていくことに繋がる。改質器1の運転停止後にも蓄熱している改質路21の熱が、改質路21に接続されている部材、例えば、三方バルブV、凝縮器6等、に伝導し、上記部材が耐熱温度を超える高温になって損傷などするおそれがある。改質器1の運転を停止すると共に改質路21に不活性ガスNを供給することで、不活性ガスNに改質路21の熱が伝導され、上記部材が耐熱温度を超える温度になることを抑制できる。
【0065】
上記不活性ガス供給工程及び上記停止後上記不活性ガス供給工程では、改質路21内が常圧になるように不活性ガスNを供給することが好ましい。水蒸気改質が行われる通常運転では、改質路21の内部圧力は、概ね0.6MPaG以上0.8MPaG以下の加圧状態とされる。改質器1の起動、停止時に、不活性ガスNを供給して加圧状態にすると、改質路21の内部に過剰な圧力が発生し、この内部圧力によるクリープ破断が発生するおそれがある。起動、停止時に改質路21内を常圧とすることで、クリープ破断を抑制することができる。
【0066】
[水素製造装置]
本発明の水素製造装置100は、図4で示すように、改質器1と、この改質器1によって改質されたガスから不純物を吸着する吸着塔101とを主に備える。また、当該水素製造装置100は、改質ガスMを一時貯蔵する改質ガスバッファタンク102、製品となる高純度水素ガスEを貯蔵する製品ガスバッファタンク103、吸着塔101に含まれる吸着剤を再生する際に排出されるオフガスFを貯蔵するオフガスバッファタンク104、これらのバッファタンクと吸着塔101等とを連通する複数の流通路105、この複数の流通路105に配置される複数のバルブ106を備える。当該水素製造装置100は、吸着塔101を複数備える。水素製造装置が備える吸着塔の数は、一つであってもよい。
【0067】
<吸着塔>
吸着塔101は、改質ガスM中の不純物を圧力スウィング吸着法により吸着除去する。吸着塔は、TSA(Temperature swing adsorption)法又はPSA(Pressure Swing Adsorption)法で再生可能な吸着剤が充填され、この吸着剤で改質ガスM中の水素以外の上記不純物を吸着して高純度の水素ガスを排出する。上記不純物としては、例えば、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素等である。
【0068】
吸着塔101に充填される吸着剤としては、上記不純物を吸着し、水素を吸着しないものであれば特に限定されるものではない。また、上記不純物に応じて種類の異なる複数の吸着剤を吸着塔に充填してもよい。
【0069】
[高純度水素ガスの製造方法]
当該水素ガス製造装置100を用いた水素ガス製造方法は、上記改質路器1の運転方法における起動方法と、起動した改質器1が供給された混合ガスRを反応部2で水蒸気改質する工程と、水蒸気改質した混合ガスRから吸着塔101で不純物を除去する工程とを備える。
【0070】
<水蒸気改質工程>
水蒸気改質工程では、反応部2で混合ガスRを水蒸気改質する。改質器1は、混合ガスRを改質した改質ガスMを排出して改質ガスバッファタンク102に供給する。
【0071】
<不純物除去工程>
不純物除去工程では、改質した混合ガスRから吸着塔101で不純物を除去する。具体的には、改質ガスバッファタンク102から吸着塔101に供給された改質ガスM中の不純物を、吸着塔101に含まれる吸着剤が吸着する。吸着塔101は上記不純物が除去された高純度な水素ガスEを排出する。吸着塔101から排出される高純度水素ガスEは、製品ガスバッファタンク103に供給され、製品ガスとして利用される。
【0072】
当該水素製造装置が複数の吸着塔101を備え、この複数の吸着塔101が、吸着、減圧、洗浄及び均圧、昇圧、並びに吸着の一連の工程を順次切り替えて運転されることが好ましい。具体的には、上記不純物を上記吸着剤で吸着する吸着工程の終了後、一の吸着塔内の圧力を減圧する工程、及び得られた高純度水素ガスEで吸着剤を洗浄する工程により、吸着した上記不純物を除去し、上記吸着剤を再生する。その後、上記吸着剤を再生した上記一の吸着塔を昇圧して高純度水素ガスEの精製に再び供する。水素ガス製造装置100の稼働中に、少なくとも一の吸着塔が吸着工程となるように上記一連の工程のタイミングを上記複数の吸着塔でずらして行うことで、吸着と再生とを異なる吸着塔で同時に行うことが可能となり、連続的に高純度水素ガスEを製造できる。
【0073】
不純物除去工程では、改質ガスMを冷媒により冷却しながら精製を行うのが好ましい。このように吸着時に吸着塔101内部に流通する改質ガスMを冷却することで、上記吸着剤による不純物の有効吸着量が増加し、上記吸着剤の必要量を低減することができ、当該水素製造装置を小型化することができる。
【0074】
[利点]
当該改質器1は、起動時に不活性ガスNを改質路21に供給する不活性ガス供給手段10を備えるため、改質路21の急速な温度上昇を緩和することができる。このため、改質路21が損傷などすることを抑制できる。また、当該改質器1は、改質路21の外表面及び内表面と、触媒を通過する不活性ガスNの温度とを測定する三つの温度測定部を備え、これらの温度差を制御して起動するため、改質路21の損傷などを抑制しつつ、短時間で起動できる。
【0075】
当該水素ガス製造装置100は、当該改質器1を備えるため、短時間で起動でき、高純度な水素ガスEを効率的に製造することができる。
【0076】
[第二実施形態]
図5に、本発明の他の実施形態である改質器200を示す。上述の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0077】
[水蒸気改質器]
改質器200は、混合ガスRを改質する触媒を含む外管、及びこの外管の内部に配置され、改質された混合ガスRを排出するための内管を有する改質路と、この改質路の触媒を加熱するための触媒加熱手段22とを有する反応部2と、上記混合ガスを生成するための水分Wを加熱する水分加熱手段3と、上記外管の側壁の外面に配置され、この外面の温度を測定する第一温度測定部と、上記外管の側壁を挟んで上記第一温度測定部と対向するように上記外管の側壁の内面に配置され、この内面の温度を測定する第二温度測定部と、上記外管内の触媒を通過するガスの温度を測定する第三温度測定部とを備える。改質器200は、不活性ガス供給手段及び三方バルブを有していない。
【0078】
[水蒸気改質器の運転方法]
改質器200の運転方法は、起動方法として、改質路21に加熱した水分Wを供給する工程と、改質路21を加熱する工程と、改質路21に混合ガスRを供給する工程とを備え、上記改質路加熱工程で、第一温度測定部24で測定される温度T1、第二温度測定部25で測定される温度T2、及び第三温度測定部25で測定される温度T3の関係が上記式(1)を満たすように改質路21を加熱する。
【0079】
また、改質器200の運転方法は、停止方法として、改質路21の加熱の停止、及び混合ガスRの供給を停止する工程と、改質路21に水分Wを供給する工程とを備える。
【0080】
<起動方法>
(水蒸気供給工程)
水蒸気供給工程では、改質路21に水分Wを供給する。具体的には、触媒加熱手段22と水分供給装置51とを起動し、水分Wを加熱しつつ改質路21に供給する。
【0081】
(改質路加熱工程)
改質路加熱工程では、触媒加熱手段22で改質路21を加熱する。具体的には、水分Wを改質路21に供給しつつ、改質路21を介して上記触媒を加熱する。水蒸気Sが改質路21内を流通するため、改質路21は急速な温度上昇が緩和され、改質路21が損傷などすることを抑制できる。
【0082】
本実施形態では、水蒸気供給工程及び改質路加熱工程は、同時に行われる。
【0083】
上記改質路加熱工程では、第一温度測定部24で測定される温度T1、第二温度測定部25で測定される温度T2、及び第三温度測定部26で測定される温度T3の関係が上記式(1)を満たすように改質路21を加熱する。
【0084】
(混合ガス供給工程)
混合ガス供給工程では、改質路21に混合ガスRを供給する。具体的には、原料ガス供給装置91を起動して混合部8に原料ガスRを混合部8に供給する。混合部8で水蒸気Sと原料ガスRとが混合された混合ガスRを、混合ガス供給路81を介して改質路21に供給する。混合ガス供給工程は、改質器200の運転状態である。
【0085】
<停止方法>
(混合ガス供給停止工程)
混合ガス供給停止工程では、改質路21の加熱の停止、及び混合ガスRの改質路21への供給を停止する。具体的には、触媒加熱手段22及び原料ガス供給装置91の運転を停止することにより、改質器1による水蒸気改質を停止する。
【0086】
(停止後水分供給工程)
停止後水分供給工程では、改質路21に水分W供給する。触媒加熱手段22を停止した後であっても、触媒加熱手段22を含む反応部2及び水分加熱手段3の蓄熱によって水分Wを加熱することができる。このため、改質器1を停止するときも、加熱した水分Wを改質路21に供給することができる。
【0087】
[利点]
当該改質器200は、不活性ガス供給装置を備えないため、簡易な構成にすることができる。
【0088】
当該改質器200の運転方法は、改質器200の起動時に水分Wを改質路21に供給しつつ、改質路21の外表面及び内表面と、触媒を通過する不活性ガスNの温度とを制御しているため、改質路21の損傷などを抑制しつつ、短時間で起動できる。
【0089】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0090】
上述の実施形態の改質器1では、混合ガス供給路81が三方バルブVを有するもので説明したが、混合ガス供給路81及び不活性ガス供給路12それぞれが、流路を開閉可能なバルブを有し、この2つのバルブによって、混合ガスRの供給と不活性ガスNの供給とを切り替えてもよい。
【0091】
改質器1,200は、反応部と水分加熱手段とが別体に構成されるものであってもよい。すなわち、改質器は、反応部と水分加熱手段とが離間して配置されるものであってもよい。また、水分加熱手段は、それ自体が燃焼部を有し、この燃焼部の熱で水分を加熱するものであってもよい。
【0092】
第二実施形態の改質器200では、水蒸気供給工程及び改質路加熱工程を同時に行うもので説明したが、水分加熱手段が燃焼部を有するものである場合、この水分加熱手段で加熱した水分を改質路に供給した後に、改質路加熱工程を行ってもよい。
【0093】
改質器1,200は、凝縮器6を備えるもので説明したが、凝縮器6は必須の構成ではない。又は、凝縮器6に換えて、例えば、熱媒体などで水分Wの加熱と、改質ガスMの冷却とをしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る改質器及び水素製造装置は、高純度な水素ガスを製造する水素ガスステーション等に特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1,200 水蒸気改質器
2 反応部
21 改質路
211 外管
212 内管
22 触媒加熱手段
221 燃料供給路
222 酸素供給路
24 第一温度測定部
25 第二温度測定部
26 第三温度測定部
3 水分加熱手段
31 加熱管
32 ケーシング
33 排ガス排出路
4 改質ガス排出路
5 水分供給手段
51 水分供給装置
52 水分供給路
6 凝縮器
7 水分排出路
8 混合部
81 混合ガス供給路
9 原料ガス供給手段
91 原料ガス供給装置
92 原料ガス供給路
10 不活性ガス供給手段
11 不活性ガス供給装置
12 不活性ガス供給路
100 水素ガス製造装置
101 吸着塔
102 改質ガスバッファタンク
103 製品ガスバッファタンク
104 オフガスバッファタンク
105 流通路
106 バルブ
A 酸素(空気)
B 火炎
E 排ガス
F 燃料
M 改質ガス
N 不活性ガス
R 原料ガス
混合ガス
S 水蒸気
V 三方バルブ
W 水分
図1
図2
図3
図4
図5