(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191988
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】エネルギービーム検出装置と検出方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20221221BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01J37/244
G01J1/02 L
G01J1/02 K
G01J1/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154004
(22)【出願日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】202110665783.5
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 科
(72)【発明者】
【氏名】陳 果
(72)【発明者】
【氏名】柳 鵬
(72)【発明者】
【氏名】姜 開利
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【テーマコード(参考)】
2G065
5C101
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AA10
2G065AA11
2G065AB02
2G065AB09
2G065BA01
2G065BC35
2G065DA02
5C101GG15
5C101GG31
5C101HH04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カーボンナノチューブ構造体を使ったエネルギービーム検出装置及びエネルギービームの検出方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ構造体100と、支持構造体200と、赤外線検出器300と、を含むエネルギービーム検出装置であって、カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブの延伸方向は測定されるエネルギービームの方向に平行し、カーボンナノチューブ構造体100は支持構造体200に設置され、支持構造体200によってカーボンナノチューブ構造体100の一部が懸架され、赤外線検出器300は、支持構造体200と接触するカーボンナノチューブ構造体100の表面と間隔をあけて設置され、赤外線検出器300はカーボンナノチューブ構造体100の温度を検出し温度分布を画像化するために使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ構造体と、支持構造体と、赤外線検出器と、を含むエネルギービーム検出装置であって、
前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブの延伸方向は測定されるエネルギービームの方向に平行し、
前記カーボンナノチューブ構造体は前記支持構造体に設置され、前記支持構造体によって前記カーボンナノチューブ構造体の一部が懸架され、
前記赤外線検出器は、前記支持構造体と接触する前記カーボンナノ構造体の表面と間隔をあけて設置され、前記赤外線検出器は前記カーボンナノチューブ構造体の懸架される部分の温度を検出し、前記カーボンナノチューブ構造体の温度分布によって画像化するために使用されることを特徴とするエネルギービーム検出装置。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体は、一つのカーボンナノチューブアレイであることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギービーム検出装置。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブアレイを積層して形成された構造体であることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギービーム検出装置。
【請求項4】
前記赤外線検出器は、赤外線プローブ、信号プロセッサ、および画像ディスプレイを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエネルギービーム検出装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの前記エネルギービーム検出装置を提供する第一ステップと、
測定されるエネルギービームがカーボンナノチューブ構造体の表面の一部に照射され、エネルギービームが熱を生じ、カーボンナノチューブ構造体の温度分布を変化させる第二ステップと、
赤外線検出器は、前記カーボンナノチューブ構造体の温度分布によって画像化し、前記エネルギービームのビームスポット画像及び移動軌跡を獲得する第三ステップと、
を含むことを特徴とするエネルギービームの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギービーム検出装置と検出方法に関し、さらにカーボンナノチューブ構造体を備えるエネルギービーム検出装置と検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実生活や科学研究では、電子ビームやレーザービームなどのエネルギービームのビームスポットサイズや移動軌跡を検出する必要がある。従来のエネルギービーム検出装置は、一般に、低エネルギービームの検出にのみ使用でき、高エネルギービームを正確に検出することはできない。例えば、低エネルギービームの電子ビーム検出は、一般的に蛍光スクリーンを使用して検出(表示)する。その原理は、電子が蛍光物質に当たって蛍光を発するときに、電子ビームの位置と外観を見ることができるということである。しかし、高エネルギービームが発生する熱は大きく、熱の影響で蛍光物質が破壊されて使用できなくなる。
【0003】
したがって、高エネルギービームを正確に検出できる検出装置および検出方法を提供することは非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許第101239712号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これによって、高エネルギービームを正確に検出できる検出装置および検出方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
カーボンナノチューブ構造体と、支持構造体と、赤外線検出器と、を含むエネルギービーム検出装置であって、前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブの延伸方向は測定されるエネルギービームの方向に平行し、前記カーボンナノチューブ構造体は前記支持構造体に設置され、前記支持構造体によって前記カーボンナノチューブ構造体の一部が懸架され、前記赤外線検出器は、前記支持構造体と接触する前記カーボンナノ構造体の表面と間隔をあけて設置され、前記赤外線検出器は前記カーボンナノチューブ構造体の懸架される部分の温度を検出し、前記カーボンナノチューブ構造体の温度分布によって画像化するために使用される。
【0007】
前記カーボンナノチューブ構造体は、一つのカーボンナノチューブアレイである。
【0008】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブアレイを積層して形成された構造体である。
【0009】
前記赤外線検出器は、赤外線プローブ、信号プロセッサ、および画像ディスプレイを含む。
【0010】
エネルギービームの検出方法は前記エネルギービーム検出装置を提供する第一ステップと、測定されるエネルギービームがカーボンナノチューブ構造体の表面の一部に照射され、エネルギービームが熱を生じ、カーボンナノチューブ構造体の温度分布を変化させる第二ステップと、赤外線検出器は、前記カーボンナノチューブ構造体の温度分布によって画像化し、前記エネルギービームのビームスポット画像及び移動軌跡を獲得する第三ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明が提供するエネルギービーム検出装置は、以下の有益効果を有する。本発明のエネルギービーム検出装置は、カーボンナノチューブ構造体を含み、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの延伸方向は、エネルギービームの方向と平行である。カーボンナノチューブの横方向の熱伝導率は非常に低いため、エネルギービームがカーボンナノチューブ構造体の表面に衝突すると、エネルギービームが発生した熱は、カーボンナノチューブ構造体で非常にゆっくりと放散される。これにより、エネルギービームが照射されたカーボンナノチューブ構造体の部分の温度が上昇し、エネルギービームが照射されていないカーボンナノチューブ構造体の部分の温度は基本的に変化しない。赤外線検出器はカーボンナノチューブ構造体の温度変化によって、エネルギービームのビームスポットサイズを得ることができる。エネルギービームがカーボンナノチューブ構造体に移動すると、赤外線検出器はカーボンナノチューブ構造体の温度変化に応じてエネルギービームの移動軌跡を取得することもできる。この検出方法は簡単であり、検出精度は高くなる。また、カーボンナノチューブの横方向の熱伝導率は0.1~0.2Wm-1K-1であるため、高エネルギービームを検出する際にエネルギービーム検出装置が焼損しにくく、エネルギービームはカーボンナノチューブ構造体の辺縁に散乱が発生せず、エネルギービーム検出装置は高エネルギーを正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のエネルギービーム検出装置の構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施例のカーボンナノチューブの横方向熱伝導率とエネルギービームのエネルギー密度の関係曲線を示す図である。
【
図3】本発明の一つ例のカーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【
図4】本発明のもう一つ例のカーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【
図5】本発明の別の例のカーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【
図6】本発明の実施例の赤外線検出器の構造を示す図である。
【
図7】本発明の実施例のエネルギービーム検出装置を用いて電子ビームを検出して得られたビームスポット画像及び電子ビームスポットの理論計算図を示す図である。
【
図8】本発明の実施例のエネルギービーム検出装置を使用して電子ビームを検出する際、カーボンナノチューブ構造のさまざまな位置及び電流強度の変化曲線を示す図である。
【
図9】本発明の実施例のエネルギービーム検出装置を使用して電子ビームを検出する際、カーボンナノチューブ構造体の温度上昇及び電子ビームの出力密度の変化曲線を示す図である。
【
図10】本発明の実施例のカーボンナノチューブ構造体の昇温の感度及び電子ビームパワー密度の変化曲線を示す図である。
【
図11】本発明の実施例のエネルギービーム検出装置を使用して電子ビームを検出する際、カーボンナノチューブ構造体の温度が時間の変化とともに変化する図である。
【
図12】本発明の実施例のエネルギービーム検出装置を使用して電子ビームの移動軌跡を検出する際、赤外線検出器が獲得する画像である。
【
図13】本発明の実施例のエネルギービーム検出装置を使用してレーザービームの移動軌跡を検出する際、赤外線検出器が獲得する画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0014】
図1を参照すると、本発明の一実施形態はエネルギービーム検出装置10を提供する。エネルギービーム検出装置10は、カーボンナノチューブ構造体100と、支持構造体200と、赤外線検出器300と、を含む。カーボンナノチューブ構造体100は、支持構造体200の表面に設置され、カーボンナノチューブ構造体100の一部が支持構造体200によって懸架される。エネルギービーム入口及び赤外線検出器300はそれぞれカーボンナノ構造体100の両側に設置され、且つカーボンナノ構造体100と間隔をあけて設置される。エネルギービーム入口は、カーボンナノ構造体100の上方向に設置されることを定義する。それに対して、赤外線検出器300はカーボンナノ構造体100の下方向に設置される。
【0015】
カーボンナノチューブ構造体100は、複数のカーボンナノチューブ102を含む。複数のカーボンナノチューブ102の延伸方向は、エネルギービームの方向に平行である。複数のカーボンナノチューブ102は、分子間力によって互いに接続されて一つの完全な構造体が形成される。エネルギービームがカーボンナノチューブ構造体100の表面に衝突すると、カーボンナノチューブ構造体100に熱が発生する。カーボンナノチューブの横方向(カーボンナノチューブの長さ方向に垂直する方向)の熱伝導率が非常に悪い。
図2を参照すると、さまざまなエネルギー密度で、カーボンナノチューブの横方向の熱伝導率は0.1~0.2Wm
-1K
-1である。エネルギービームがカーボンナノチューブ構造体100に照射されると、エネルギービームによって生成される熱はカーボンナノチューブ構造体100に非常にゆっくりと広がる。したがって、エネルギービームが照射されたカーボンナノチューブ構造体100の温度が上昇し、エネルギービームが照射されないカーボンナノチューブ構造体100の温度は基本的に変化しない。赤外線検出器300は、カーボンナノチューブ構造体100の温度の分布変化によって、エネルギービームのビームスポットサイズを得ることができる。エネルギービームがカーボンナノチューブ構造体100の上を移動するとき、赤外線検出器300はカーボンナノチューブ構造100の温度の分布変化に従ってエネルギービームの移動軌道を取得することができる。カーボンナノチューブの軸方向(長さ方向)の熱伝導率は特に大きく、カーボンナノチューブ構造体100は支持構造体に懸架されるため、カーボンナノチューブ構造体100の軸方向における熱は瞬時に空気に伝わり且つ放散され、カーボンナノチューブの横方向の熱伝導に影響を与えず、エネルギービーム検出装置10の精度をさらに改善する。本実施例には、エネルギービームは、カーボンナノチューブ構造体100の表面に垂直方向に照射され、カーボンナノチューブ構造体100におけるカーボンナノチューブ102は垂直に配列され、且つ支持構造体200の表面に対して垂直である。
【0016】
カーボンナノチューブ構造体100は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブ構造体100を独立して利用することができる形態のことである。カーボンナノチューブ構造体100を対向する両側から支持して、カーボンナノチューブ構造体100の構造を変化させずに、カーボンナノチューブ構造体100を懸架させることができることを意味する。具体的に、カーボンナノチューブ構造体100が、間隔をあける二つの支持構造体200に設置されると、二つの支持構造体200の間に設置されたカーボンナノチューブ構造体100を懸架させ、その自身が完全な状態を維持することができる。二つの支持構造体200の間の距離は必要に応じて選択できる。カーボンナノチューブ構造体100の懸架される部分の最大直径は、エネルギービームの最大直径よりも大きい。好ましくは、カーボンナノチューブ構造100の懸架される部分の最大直径は、エネルギービームの最大直径の1.5倍を超える。さらに好ましくは、カーボンナノチューブ構造体100の懸架される部分の最大直径は、エネルギービームの最大直径の1.5から3倍である。カーボンナノチューブ構造体100の懸架される部分の直径が大きすぎる場合、例えば、エネルギービームの最大直径の3倍を超えると、カーボンナノチューブ構造体100の懸架される部分が容易に損傷し、コストを浪費する。カーボンナノチューブ構造体100の懸架される部分の直径が小さすぎる場合、例えば、エネルギービームの最大直径の1.5倍未満であると、エネルギービームを完全に検出することができず、検出精度に影響を与える。
【0017】
一つの例において、
図3に示されるように、カーボンナノチューブの延伸方向(軸方向)に平行する方向に、カーボンナノチューブ構造体100は一つのカーボンナノチューブ102のみを有する。すなわち、カーボンナノチューブ構造体100は、カーボンナノチューブアレイである。もう一つの例において、
図4に示されるように、カーボンナノチューブ構造体100は、複数のカーボンナノチューブアレイを積層して形成された構造体であってもよい。すなわち、カーボンナノチューブの延伸方向に平行する方向に、複数のカーボンナノチューブは端と端が接続されている。別の例において、
図5に示されるように、カーボンナノチューブの延伸方向に平行する方向に、カーボンナノチューブ構造体100は相互に交差して設置される複数のカーボンナノチューブ102を含む。
【0018】
カーボンナノチューブ構造体100は、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes)である。超配列カーボンナノチューブアレイは、互いに平行であり、垂直方向に延伸する複数のカーボンナノチューブを含む。一つの例において、超配列カーボンナノチューブアレイは、互いに平行であり、垂直方向に延伸する複数のカーボンナノチューブからなる。超配列カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブは、分子間力によって互いに密接に接触してアレイを形成する。超配列カーボンナノチューブアレイは、少数のランダムなカーボンナノチューブを含む。しかし、大部分のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列されているので、このランダムなカーボンナノチューブの延伸方向は、大部分のカーボンナノチューブの延伸方向には影響しない。超配列カーボンナノチューブアレイは、基本的にアモルファスカーボンや残留触媒金属粒子などの不純物を含まない。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体100は超配列カーボンナノチューブアレイであり、超配列カーボンナノチューブアレイ100は化学気相蒸着方法によって製造される。超配列カーボンナノチューブアレイ及びその製造方法は特許文献1に掲載されている。
【0019】
カーボンナノチューブ構造体100の厚さは必要に応じて選択できる。本実施例では、カーボンナノチューブ構造体100の厚さは、200マイクロメートル~400マイクロメートルである。
【0020】
支持構造体200は、カーボンナノチューブ構造体100を支持するために使用され、且つカーボンナノチューブ構造体100が懸架されることを維持することができる。好ましくは、支持構造体200は、カーボンナノチューブ構造体100のエッジ位置にのみ接触する。例えば、支持構造体200は、中空フレームであってもよく、または間隔をあけて設置された複数の柱であってもよい。支持構造200がカーボンナノチューブ構造100の熱を吸収し、検出精度に影響を与えるのを防ぎ、支持構造体200の材料は断熱材料であることが好ましい。支持構造体200の材料は、例えば、ガラス、プラスチック、シリコンウエハー、二酸化ケイ素ウエハー、石英ウエハー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコン、酸化物層を有するシリコン、石英などのいずれかの一種である。本実施例において、支持構造体200は中空フレームである。
【0021】
図6を参照すると、赤外線検出器300は、赤外線プローブ302、信号プロセッサ304、および画像ディスプレイ306を含む。カーボンナノチューブ構造体100の温度分布が異なるため、カーボンナノチューブ構造体100の異なる位置での赤外線放射分布も異なる。赤外線検出器300は、カーボンナノチューブ構造体100における赤外線熱放射を対応する電気信号に変換する。次に、電気信号が増幅され、画像処理によって裸眼で観察できる画像が形成される。具体的には、赤外線プローブ302は、カーボンナノチューブ構造体100における赤外線熱放射を検出し、電気信号を形成する。電気信号は、信号プロセッサ304によって処理され、次に画像化され、画像ディスプレイ306に表示される。赤外線検出器300によって形成された画像は、カーボンナノチューブ構造体100の表面の温度分布状態を反映することができる。赤外線検出器300が形成された画像によって、カーボンナノチューブ構造体100の表面に照射されるエネルギービームのビームスポットおよび移動軌跡が得られる。
【0022】
カーボンナノチューブ構造体100の温度分布によって画像化を実行できる限り、赤外線検出器300のモデルおよびタイプは限定されない。本実施例において、赤外線検出器300は赤外線熱画像カメラである。
【0023】
エネルギービーム検出装置10は、電子ビーム、光ビームなど、熱を発生することができる任意のエネルギービームを検出するために使用することができる。
【0024】
本発明の一実施形態はエネルギービーム検出装置10を使用してエネルギービームの検出方法を提供する。エネルギービームの検出方法は、以下のステップを含む。
ステップ(S1)、エネルギービーム検出装置10を提供する。
ステップ(S2)、測定対象のエネルギービームがカーボンナノチューブ構造体100の表面の一部に照射され、エネルギービームが熱を生じ、カーボンナノチューブ構造体100の温度分布を変化させる。
ステップ(S3)、赤外線検出器300は、カーボンナノチューブ構造体100の温度分布によって画像化し、エネルギービームのビームスポット画像及び移動軌跡を獲得する。
【0025】
ステップ(S2)において、好ましくは、エネルギービームは、カーボンナノチューブ構造体100の懸架される部分の表面に照射される。
【0026】
図7を参照すると、
図7aは、本実施例のエネルギービーム検出装置10を採用して検出される電子ビームスポットの形状およびサイズを示す図であり、
図7bは、電子ビームスポットの理論計算図である。
図7に示すように、本実施例のエネルギービーム検出装置10を用いて得られた電子ビームスポットの形状およびサイズは、電子ビーム理論により計算されたビームスポットの形状およびサイズと基本的に一致していることが分かる。
図8は、この実施例のエネルギービーム検出装置10を用いて電子ビームを検出する場合の、赤外線検出器300の電流強度とカーボンナノチューブ構造体100の位置との関係を示す曲線図である。曲線には、電流強度の最大点は電子ビームの中心位置であり、電流強度が増加し始める位置と電流強度が減少しなくなる位置との間の距離は、電子の最大直径である。
図8に示すように、エネルギービーム検出装置10によって得られた電子ビームの曲線は、理論曲線と基本的に一致していることが分かる。
図7および
図8は、本発明のエネルギービーム検出装置10が、電子ビームスポットを検出するときに高精度を有することを示している。
【0027】
図9は、エネルギービーム検出装置10を用いて異なる出力密度の電子ビームを検出した場合に、カーボンナノチューブ構造体100の温度上昇は、電子ビームの出力密度によって変化する曲線を示す図である。
図9に示すように、カーボンナノチューブ構造体100の温度上昇は、電子ビーム出力密度の増加とともに基本的に線形に変化することが分かる。
図10には、電子ビーム出力密度の変化に伴うカーボンナノチューブ構造体100の感度は、異なる電子ビーム出力密度で基本的に変化しないままである。
図9および
図10は、本発明のエネルギービーム検出装置10の試験感度は、基本的にエネルギービームの出力密度の影響を受けないことを示している。したがって、エネルギービーム検出装置10は、高エネルギービームの検出に対して高精度を有する。
【0028】
図11は、エネルギービーム検出装置10を用いて電子ビームを検出した場合に、時間の変化に伴うカーボンナノチューブ構造体100の温度上昇曲線を示す図である。
図11に示すように、カーボンナノチューブ構造体100は、1.07秒間で初期温度から瞬時に最高温度まで上昇し、この最高温度で35秒間維持され、その後、1.13秒間で最高温度から瞬時に初期温度まで低下することが分かる。これは、カーボンナノチューブ構造体100が電子ビームに対してより速い応答速度を有し、且つカーボンナノチューブの横方向の熱伝導率が低いため、電子ビームによって生成された熱がカーボンナノチューブ構造体100の全体に散在されるのに長い時間がかかることが分かる。したがって、エネルギービーム検出装置10は、エネルギービームに対して高い検出精度を有する。
【0029】
図12は、エネルギービーム検出装置10を使用して電子ビームを検出する場合に、赤外線検出器300から得られた画像を示す図である。
図12に示すように、画像における軌跡は、電子ビームの実際の移動軌跡と一致していることが分かる。
図13は、エネルギービーム検出装置10がレーザービームを検出する場合に、赤外線検出器300から得られた画像を示す図である。
図13に示すように、画像における軌道はレーザービームの実際の移動軌道と一致していることが分かる。
図12および
図13は、本発明のエネルギービーム検出装置10を使用してエネルギービームの運動軌道を検出する場合、検出精度が比較的高いことを示している。
【0030】
本発明により提供されるエネルギービーム検出装置は、カーボンナノチューブ構造体および赤外線検出器のみを採用してエネルギービームの検出を実現し、構造が簡単であり、コストが低い。カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの延伸方向は、エネルギービームの方向と平行である。カーボンナノチューブの横方向の熱伝導率は非常に低いため、エネルギービームがカーボンナノチューブ構造体の表面に衝突すると、エネルギービームが発生した熱は、カーボンナノチューブ構造体で非常にゆっくりと放散される。これにより、エネルギービームが照射されたカーボンナノチューブ構造体の温度が上昇し、エネルギービームが照射されていないカーボンナノチューブ構造体の温度は基本的に変化しない。赤外線検出器はカーボンナノチューブ構造体の温度変化によって、エネルギービームのビームスポットサイズを得ることができる。エネルギービームがカーボンナノチューブ構造体の上に移動すると、赤外線検出器はカーボンナノチューブ構造体の温度変化に応じてエネルギービームの移動軌跡を取得することもできる。この検出方法は簡単であり、検出精度は高くなる。また、カーボンナノチューブの横方向の熱伝導率は0.1~0.2Wm-1K-1であるため、高エネルギービームを検出する際にエネルギービーム検出装置が焼損しにくく、エネルギービームはカーボンナノチューブ構造体の辺縁に散乱が発生しなく、エネルギービーム検出装置は高エネルギーを正確に検出できる。カーボンナノチューブの軸方向の熱伝導率は非常に大きく、カーボンナノチューブ構造体は支持構造体によって懸架されるため、カーボンナノチューブ構造体の軸方向の熱は瞬時に空気に伝わり、放散され、カーボンナノチューブの横方向の熱伝導に影響を与えず、エネルギービーム検出装置の精度をさらに向上させる。
【符号の説明】
【0031】
10 エネルギービーム検出装置
100 カーボンナノチューブ構造体
102 カーボンナノチューブ
200 支持構造体
300 赤外線検出器
302 赤外線プローブ
304 信号プロセッサ
306 画像ディスプレイ
【手続補正書】
【提出日】2022-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ構造体と、支持構造体と、赤外線検出器と、を含むエネルギービーム検出装置であって、
前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブの延伸方向は測定されるエネルギービームの方向に平行し、
前記カーボンナノチューブ構造体は前記支持構造体に設置され、前記支持構造体によって前記カーボンナノチューブ構造体の一部が懸架され、
前記赤外線検出器は、前記支持構造体と接触する前記カーボンナノチューブ構造体の表面と間隔をあけて設置され、前記赤外線検出器は前記カーボンナノチューブ構造体の懸架される部分の温度を検出し、前記カーボンナノチューブ構造体の温度分布によって画像化するために使用されることを特徴とするエネルギービーム検出装置。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体は、一つのカーボンナノチューブアレイであることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギービーム検出装置。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブアレイを積層して形成された構造体であることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギービーム検出装置。
【請求項4】
前記赤外線検出器は、赤外線プローブ、信号プロセッサ、および画像ディスプレイを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエネルギービーム検出装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの前記エネルギービーム検出装置を提供する第一ステップと、
測定されるエネルギービームがカーボンナノチューブ構造体の表面の一部に照射され、エネルギービームが熱を生じ、カーボンナノチューブ構造体の温度分布を変化させる第二ステップと、
赤外線検出器は、前記カーボンナノチューブ構造体の温度分布によって画像化し、前記エネルギービームのビームスポット画像及び移動軌跡を獲得する第三ステップと、
を含むことを特徴とするエネルギービームの検出方法。