(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022192001
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】開き扉の開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 13/02 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
E05F13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000034
(22)【出願日】2022-01-03
(31)【優先権主張番号】P 2021099877
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造であり、簡単な操作により自開閉が可能となる開き扉の開閉装置を提供する。
【解決手段】
ペダル21と、ペダル支持体31と、ペダル21の動作と連動して、往復動作自在であるスライド体40と、下部端面カム体53と、下側部材回動手段60と、ドアパネルDに取り付けられ、下部端面カム体53の傾斜カム面53aに沿って従動する上部転動ローラ81と、ペダル21を初期状態の位置に復帰させることを遅延させるための上昇遅延手段90とを備え、下側部材回動手段60は、スライド体40の往復動作と連動して、下部端面カム体53を回動させることが可能となるように構成されている開き扉開閉装置Hとした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き扉を開閉するための開き扉の開閉装置において、
足操作体と、
前記足操作体が初期状態の位置から動作可能となるように、前記足操作体を支持する足操作体支持部材と、
前記足操作体の動作と連動して、往復動作自在であるスライド体と、
傾斜カム面が周縁部に形成された下部端面カム体を備える下側部材と、
前記下側部材の回動手段と、
前記開き扉に取り付けられ、前記下部端面カム体の傾斜カム面に沿って従動する上部従動部材と、
前記足操作体の動作時において、前記足操作体を前記初期状態の位置に復帰させることを遅延させるための復帰遅延手段と、を備え、
前記下側部材における前記下部端面カム体は、前記傾斜カム面が上側となるようにして、回動自在に軸支されるとともに、
前記下側部材の回動手段は、前記スライド体の往復動作と連動して、前記下側部材を回動させることが可能となるように構成されていること、を特徴とする開き扉の開閉装置。
【請求項2】
前記上部従動部材は、傾斜カム面が周縁部に形成された上部端面カムとして構成されており、
前記上部端面カム体と前記下部端面カム体とは同一形状に形成され、
前記上部端面カム体と前記下部端面カム体とは、相互に前記傾斜カム面を対向させ、重ね合わせられた状態で回動自在に軸支されていること、を特徴とする請求項1に記載の開き扉の開閉装置。
【請求項3】
開き扉を開閉するための開き扉の開閉装置において、
前記開き扉に取り付けられている、傾斜カム面が周縁部に形成された上部端面カム体と、
足操作体と、
前記足操作体が初期状態の位置から動作可能となるように、前記足操作体を支持する足操作体支持部材と、
前記足操作体の動作と連動して、往復動作自在であるスライド体と、
前記上部端面カム体の傾斜カム面に沿って従動する下部従動部材を備える下側部材と、
前記下側部材の回動手段と、
前記足操作体の動作時において、前記足操作体を初期状態の位置に復帰させることを遅延させるための復帰遅延手段と、を備え、
前記上部端面カム体は、前記傾斜カム面が下側となるようにして、回動自在に軸支されているとともに、
前記下側部材の回動手段は、前記スライド体の往復動作と連動して、前記下側部材を回動させることが可能となるように構成されていること、を特徴とする開き扉の開閉装置。
【請求項4】
前記足操作体の動作開始時における前記下側部材に作用する回動力を助勢するための回動力助勢手段を備えること、を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の開き扉の開閉装置。
【請求項5】
前記下側部材の回動手段は、
前記足操作体の動作と前記スライド体の往復動作を連動させるための連動機構と、
前記スライド体に設けられているラックと、
前記下側部材に取り付けられており、前記ラックと歯合するピニオンギアと、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の開き扉の開閉装置。
【請求項6】
前記連動機構は、
前記足操作体支持部材に一端部が取り付けられている第1リンク部材と、前記スライド体に一端部が取り付けられている第2リンク部材と、
前記スライド体に対し、前記足操作体の動作開始時における前記スライド体のスライド動作に抗する向きに付勢力を付与する付勢手段と、を有しており、
前記第1リンク部材は、前記足操作体により押圧操作可能であるとともに、
前記第1リンク部材の他端部と前記第2リンク部材の他端部が回動自在に連結されていること、を特徴とする請求項5に記載の開き扉の開閉装置。
【請求項7】
前記連動機構は、カム部材を有しており、
前記カム部材は、軸支部において、前記足操作体支持部材に回動自在に軸支されるとともに、前記カム部材の少なくとも一部が、前記スライド体を押圧可能であり、
前記カム部材は、前記足操作体により押圧操作可能であること、を特徴とする請求項5に記載の開き扉の開閉装置。
【請求項8】
前記復帰遅延手段は、
前記下側部材に追従して昇降するストッパ部材を有し、
前記ストッパ部材は、下端部が所定高さより低い高さに位置した場合において、前記スライド体の動作を規制可能であるとともに、前記下端部が上記所定高さより高い高さに位置した場合には、前記スライド体の動作の規制が解除可能となるように構成されていること、を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の開き扉の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足踏み操作により開き扉の開閉が可能となる開き扉の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トイレ等の扉の開き扉は、手で開閉することが想定されている。しかし、近年、ウイルスや細菌等の付着を防止すること、あるいは、手が使用できない状況における対策として、足で操作する装置の開発が望まれている。
【0003】
このような装置に関連して、足で操作するトイレ扉用施錠装置が知られている(特許文献1)。また、動作させた開き扉を現状に復帰させるための機構(例えば、グレビティヒンジ)が存在している(引用文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-131586号公報
【特許文献2】特開2004-346719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コスト面及びトイレブース等の設置スペース等、諸般の事情から、足踏み操作により、静止状態である開き扉を開閉する実用的な装置はほとんど存在しておらず、その開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、簡易な構造であり、簡単な操作により自閉及び自開が可能となる開き扉の開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、開き扉を開閉するための開き扉の開閉装置において、足操作体と、上記足操作体が初期状態の位置から動作可能となるように、上記足操作体を支持する足操作体支持部材と、上記足操作体の動作と連動して、往復動作自在であるスライド体と、傾斜カム面が周縁部(近傍であればよい、以下同様)に形成された下部端面カム体を備える下側部材と、上記下側部材の回動手段と、上記開き扉に取り付けられ、上記下部端面カム体の傾斜カム面に沿って従動する上部従動部材と、上記足操作体の動作時において、上記足操作体を上記初期状態の位置に復帰させることを遅延させるための復帰遅延手段と、を備え、上記下側部材における上記下部端面カム体は、上記傾斜カム面が上側となるようにして、回動自在に軸支されるとともに、上記下側部材の回動手段は、上記スライド体の往復動作と連動して、上記下側部材を回動させることが可能となるように構成されていること、を特徴としている(以下、本発明を「本開き扉の開閉装置」という場合がある。)。
【0008】
また、本開き扉の開閉装置において、上記上部従動部材は、傾斜カム面が周縁部に形成された上部端面カム体として構成されており、上記下部端面カム体と上記上部端面カム体とは同一形状に形成され、上記上部端面カム体と上記下部端面カム体とは、相互に上記傾斜カム面を対向させ、重ね合わせられた状態で回動自在に軸支されていることとするものであってもよい。
【0009】
また、本発明は、開き扉を開閉するための開き扉の開閉装置において、上記開き扉に取り付けられている、傾斜カム面が周縁部に形成された上部端面カム体と、足操作体と、上記足操作体が初期状態の位置から動作可能となるように、上記足操作体を支持する足操作体支持部材と、上記足操作体の動作と連動して、往復動作自在であるスライド体と、上記上部端面カム体の傾斜カム面に沿って従動する下部従動部材を備える下側部材と、上記下側部材の回動手段と、上記足操作体の動作時において、上記足操作体を上記初期状態の位置に復帰させることを遅延させるための復帰遅延手段と、を備え、上記上部端面カム体は、上記傾斜カム面が下側となるようにして、回動自在に軸支されているとともに、上記下側部材の回動手段は、上記スライド体の往復動作と連動して、上記下側部材を所定角度回動させ、上記上部端面カム体の上記傾斜面の上側(上部端面カム体における傾斜カム面を上向きにした場合における傾斜面の下部に相当する位置の近傍)に上記下部従動部材を位置させることが可能となるように構成されていること、を特徴としている。
【0010】
ここで、本開き扉の開閉装置において、上部従動部材は、上記下部端面カム体の上記傾斜カム面を摺動するローラ体として構成することができ、下部従動部材は、上部端面カム体の上記傾斜カム面を摺動するローラ体として構成することができる。
【0011】
また、各本開き扉の開閉装置において、上部端面カム体又は下部端面カム体における上記傾斜カム面は、最高頂部と最低谷部が回動中心に対して点対称の位置にあり、上記最高頂部と上記最低谷部に至るまで、連続勾配となるように形成されていることとすれば、効果的にその作用を奏させることができるため好適である。
【0012】
なお、上部端面カム体及び上部従動部材(ローラ体等)は、適宜な取付部材を介して開き扉に取り付けられることを前提としている。
【0013】
上部端面カム体又は下部端面カム体(以下、両者を総称して、単に「端面カム体」という場合がある。)は、立体カムの一種であり、筒状部材又は円柱部材の断面中心である回動軸に対して、回動可能である形状に形成されていればよく、円筒状(円柱状)及び正六角形以上の正多角形(特に、正六角形、正八角形、正十二角形等が好ましい)筒状(正多角形柱状)等に形成することができる。
また、端面カム体を使用する場合において、当該端面カム体の傾斜カム面は、最高頂部と最低谷部が一か所づつ形成されていればよく、種々の態様とすることが可能である。
【0014】
また、上部端面カム体又は下部端面カム体を併用する場合には、同一形状とすることで、相互に傾斜カム面を対向させて配置した際に、一体的な筒体形状(柱体形状)とすることが可能となることから、効果的に目的動作を奏させ、コンパクトに形成できるため好適である。
また、上部端面カム体又は下部端面カム体を併用する場合には、双方の端面カム体に関して、同心状に複数の円周帯を設けて、それぞれの円周帯に最高頂部及び最低谷部が形成されるものとすることもできる。
【0015】
また、上部端面カム体又は下部端面カム体を併用する場合には、本開き扉開閉装置の自閉動作を行うことが可能となるように、両端面カム体の傾斜面の角度、最高頂部及び最低谷部の位置等を適切に定める必要がある。
【0016】
また、足操作体は、足による上下方向、左右方向及び前後方向への操作に基づいて動作が可能であるペダル等の部材であり、その形態及び位置等は適切に定めることができる。
さらに、足操作体の移動(動作)とは、上下方向の昇降動作、左右方向のスライド動作及び前後方向のスライド動作等を意味するものであり、足操作体の態様により異なることとなる。なお、足操作体は、一度、動作を開始すると、操作開始前の状態に復帰するように構成されている。
【0017】
また、復帰遅延手段は、上記足操作体の動作時において、上記足操作体を初期状態の位置に復帰させることを遅延させるための要素であり、直接的に足操作体に作用して、その動作を遅延、減速又は動作の一時的な停止等行わせることの他、足操作体の動作に影響を与える他の構成要素(足操作体と連動して動作する要素であり、例えば、スライド体(後記スライド体の連動機構(第1リンク部材及び後記第2リンク部材の少なくとも一方、並びに後記カム部材を含む))を介して、間接的に足操作体の動作を遅延等させるものであってもよい。
【0018】
また、復帰遅延手段は、初期状態の位置から足操作体を操作し、当該初期状態の位置に復帰させるまでに必要となる操作時間を確保することができるように、他の構成要素との形態に応じて、適切に定める必要があり、例えば、球体等である突設体(突状体)と、当該突設体に付勢力を付与するための付勢手段等を用いることができる。
【0019】
また、復帰遅延手段は、下側部材に追従して昇降するストッパ部材(ロッド部材として構成することが好適である)を有し、上記ストッパ部材は、下端部が所定高さより低い高さに位置した場合において、上記スライド体の動作を規制可能であるとともに、上記先端部が上記所定高さより高い高さに位置した場合には、上記スライド体の動作の規制が解除可能となるようにすれば、簡易かつ効果的に構成することができる。
【0020】
ここで、ストッパ材は、下端部(先端部)が所定高さより低い高さに位置した場合において、スライド体の動作を規制可能に構成される必要があるが、スライド体と当接することにより、動作を妨げることの他、スライド体の所定位置に設けられている孔部又は溝部に挿入され、当該ストッパ部材とスライド体が係止することにより、動作を妨げること等、種々の態様とすることができる。
【0021】
さらに、本開き扉の開閉装置において、足操作体と、上記足操作が移動自在となるように、上記足操作体を支持する足操作体支持部材と、上記足操作体の動作と連動して、往復動作自在であるスライド体と、下部ローラ体を備える下側部材と、上記下側部材の回動手段と、上記開き扉に取り付けられている摺動する上部ローラ体と、を備え、上記下部ローラ体と上記上部ローラ体は、各々の回動軸が所定角度交差するようにして(例えば、上面視した場合における各回動軸の延長方向が所定角度交差するようにして)、摺動可能に配置されているとともに、上記下側部材の回動手段は、上記スライド体の往復動作と連動して、上記下側部材を回動させることが可能となるように構成されているものであってもよい。
【0022】
なお、上記場合には、下部ローラ体の回動軸と上部ローラ体の回動角度は、下部ローラ体を回動させた後に生じる当該下部ローラ体の復元(復帰)方向への回転動作、及び、それに伴う開き扉に取り付けられている上部ローラ体の従動動作が適切に行われるように定められる必要がある。
【0023】
また、下部ローラ体及び上部ローラ体における各ローラの当接面は、平坦面、両端部から幅方向の中心に向かい高さが漸増する傾斜面(平坦面状、曲面状のいずれでもよい)を有するタイヤ状、一方の端部から幅方向に向かい高さが漸減する傾斜面を有する傘状、並びに、上記各形状を組み合わせる形状等、下部ローラ体と上部ローラ体の転動が円滑に行われるように定めることが好ましい。
【0024】
本開き扉の開閉装置は、足操作体の動作と連動して、往復動作自在であるスライド体と、当該スライド体の往復動作と連動して、下側部材を回動させることが可能となるように構成されている下側部材の回動手段を備えている。そのため、足操作体を動作させ、下側部材の回動手段により、スライド体の往復スライド動作を介して、下側部材を回動(所定方向への回転及び反対方向への回転)させて、下側部材を適宜位置に移動させることができる。そして、開き扉に取り付けられている上部従動部材又は上部端面カム体を、下側部材の下部端面カム体又は下部従動部材に沿って移動させることにより、開き扉を自開及び自閉させることができる。
【0025】
また、開き扉の重量が重くなるほど、当該開き扉の回動速度は遅くなる。そのため、開き扉の重量が一定重量以上であると、当該開き扉が閉まりきる前に、開き扉を開放する向きに回転方向が切り替わってしまう可能性がある、しかし、本開き扉の開閉装置によれば、上記足操作体の動作時において、上記足操作体を初期状態の位置に復帰させることを遅延させるための復帰遅延手段が設けられている。そのため、初期状態の位置から足操作体を操作し、当該初期状態の位置に復帰させるまでに必要となる操作時間を確保することができるため、開き扉が完全に閉まりきる前に、当該開き扉が開放する向きに回転方向が切り替わり、開き扉が開放されるという不具合を防止することができる。
【0026】
さらに、本開き扉の開閉装置において、上記足操作体の動作開始時における上記下側部材に作用する回動力を助勢するための回動力助勢手段を備えることとすることができる。
特に、下側部材の回動軸により、開き扉を支持する構造とすれば、上部端面カム体、下部端面カム体、上部従動部材、下部従動部材、上部ローラ体及び下部ローラ体に作用するドアパネル等の重量に起因する荷重を減ずることができるため好適である。
【0027】
回動力助勢手段は、例えば、下部端面カム体又は下部従動部材の上方又は下方から常時、開き扉に近接させる向きに付勢力を付与するバネ等の付勢手段を用いることができる。
但し、回動力助勢手段は、開き扉の重量が重い場合において特に有益であり、本開き扉開閉装置を軽量である開き扉に使用する場合には必ずしも設ける必要はない。
【0028】
本開き扉の開閉装置によれば、下側部材に対して、足操作体の動作開始時における下側部材の回動力を助勢するための回動力助勢手段を備えているため、開き扉の重量が重い場合であっても、下側部材の回転力を助勢して、円滑に回転させることが可能となる。
【0029】
また、本開き扉の開閉装置において、上記足操作体支持部材は傾斜面を有し、上記傾斜面の頂部に上記足操作体の基端部が軸支されているとともに、上記下側部材の回動手段は、上記足操作体の動作と上記スライド体の往復動作を連動させるための連動機構と、上記スライド体に設けられているラックと、上記下側部材に取り付けられており、上記ラックと歯合するピニオンギアと、を有することとすれば、簡易に構成することができるため好適である。
【0030】
また、本開き扉の開閉装置において、上記連動機構は、上記足操作体支持部材に一端部が取り付けられている第1リンク部材と、上記スライド体に一端部が取り付けられている第2リンク部材と、上記スライド体に対し、上記足操作体の下降時における上記スライド体のスライド動作に抗する向きに付勢力を付与する付勢手段と、を有しており、上記第1リンク部材は、上記足操作体により押圧操作可能(直接的又は他の部材を介して間接的であってもよい)であるとともに、上記第1リンク部材の他端部と上記第2リンク部材の他端部が回動自在に連結されていることとすれば、簡易な構成で、スライド体をスライド動作させることができるため好適である。
【0031】
ここで、第1リンク部材及び第2リンク部材はリンク機構を構成可能であればよく、その形態は、適宜、定めることができる。例えば、第1リンク部材及び第2リンク部材には、三日月形状片、矩形形状片、ロッド部材等を使用することができる。
【0032】
また、本開き扉の開閉装置において、上記連動機構は、カム部材を有しており、上記カム部材は、軸支部において、上記足操作体支持部材に回動自在に軸支されるとともに、上記カム部材の一部が、上記スライド体を押圧可能(直接的又は他の部材を介して間接的であってもよい)であり、さらに、上記カム部材は、上記足操作体により押圧操作可能であることとすれば、簡易な構成で、スライド体をスライド動作させることができるため好適である。
【0033】
ここで、カム部材は、板カムであることが好適である。板カムは、扇形、卵形、及び偏心した円形等に形成された板状(但し、所望の運動を実現させることができる構造であれば、形状に制限はない)のカム体である。
また、カム部材は、少なくとも一部(板カムの場合には、周縁部)が、スライド体と当接しながら、押圧力を伝達できるようになっていることが必要となる(スライド体の一部と摺動しながら、当該摺動部を押圧するものであってもよい)。
【0034】
さらに、本開き扉の開閉装置において、上記付勢手段の付勢力を調節するための付勢力調節手段を備えることとすれば、装置全体を取り外すことなく、簡易に付勢手段の付勢力を調節することにより、開き扉の開閉速度を調節することができる。また、開き扉の重量に応じて、付勢力を調節することができるため、汎用性を高めることができる。
【0035】
また、本開き扉の開閉装置において、足操作体の動作開始時の状態への復帰動作を行う際に、スライド体、下部端面カム体、上部端面カム体、下部従動部材、上部従動部材又は各ローラ体の少なくとも一方に対して(両方でもよい)制動力を作用させるための制動手段を備えることとすれば、足操作体の上昇時において、スライド体のスライド動作及び端面カム体の回転を制動し、閉ドア時において、開き扉の閉ドア動作を緩やかに行わせることができるため、利用者が開き扉に衝突等することを防止できるため好適である。
なお、制動手段は、各種ダンパ(直線式ダンパ、ロータリーダンパ等の別を問わない)を用いることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、簡易な構造であり、簡単な操作により自閉及び自開が可能となる開き扉の開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)が取付けられているドアパネル(開ドア時)の斜視図である。
【
図2】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)を上方(前側)から見た分解斜視図である。
【
図3】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)を下方(前側)から見た分解斜視図である。
【
図4】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)の足操作部のペダル支持体を示す図であり、(a)は、斜視図であり、(b)は、底面図である。
【
図5】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)のスライド体を示す図であり、(a)は、斜視図であり、(b)は、底面図である。
【
図6】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)を下方から見た斜視図(カバー及びペダル支持体を省略し、主要部のみを図示)であり、(a)は、ペダルの最上昇時を示し、(b)は、ペダルの最下降時を示す。
【
図7】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)のドアパネルへの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【
図8】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)を後方から見た斜視図(カバー及びペダル支持体は省略)であり、(a)は、ペダルの最上昇時を示し、(b)は、ペダルの最下降時を示す。
【
図9】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)のペダル上昇時を示し、(a)は、底面図(カバーは省略)、(b)は、同(a)図におけるX-X断面図である。
【
図10】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)のペダル下降時を示す、
図9(b)に対応する断面図である。
【
図11】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)の動作を示す斜視図(開ドア時におけるペダルの最上昇時)である。
【
図12】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)の動作を示す斜視図(開ドア時におけるペダルの最下降時)である。
【
図13】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)の動作を示す斜視図(開ドア時におけるペダルの上昇時)である。
【
図14】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)の動作を示す斜視図(開ドア動作の終了時)である。
【
図15】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)が取付けられている開き扉(閉ドア時)を示す斜視図である。
【
図16】本発明の開き扉の開閉装置(第1実施形態)の動作を説明するための前面図であり、(a)は、ペダルの最上昇時であり、(b)は、ペダルの最下降時である。
【
図17】本発明の開き扉の開閉装置(第2実施形態)のドアパネルへの取り付け構造を示す一部分解斜視図である。
【
図18】本発明の開き扉の開閉装置(第2実施形態)のペダルの最上昇時における図(カバ―及びペダル支持体は省略)であり、(a)は、前方から見た斜視図であり、(b)は側面図である。
【
図19】本発明の開き扉の開閉装置(第2実施形態)のペダルの最下降時における図(カバ―及びペダル支持体は省略)であり、(a)は、前方から見た斜視図であり、(b)は側面図である。
【
図20】本発明の開き扉の開閉装置(第3実施形態)を上方(前側)から見た分解斜視図である。
【
図21】本発明の開き扉の開閉装置(第3実施形態)の足操作部のペダル支持体及びカム部材を示す斜視図である。
【
図22】本発明の開き扉の開閉装置(第3実施形態)のスライド体を示す斜視図である。
【
図23】本発明の開き扉の開閉装置(第4実施形態)の下側部材とストッパ部材を示す斜視図である。
【
図24】本発明の開き扉の開閉装置(第3実施形態)の側断面図(
図9(b)に対応する側断面図)であり、(a)は、ペダルの最上昇時を示し、(b)は、ペダルの最下降時を示す。
【
図25】本発明の開き扉の開閉装置(第3実施形態)の動作を説明するための側面図であり、(a)は、ペダルの最上昇時であり、(b)は、ペダルの最下降時である。
【
図26】本発明の開き扉の開閉装置の構成要素である上昇遅延手段の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図27】本発明の開き扉の開閉装置の構成要素である上昇遅延手段のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ、本開き扉開閉装置の一実施形態について、詳細に説明する。図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、以下の説明において、前後左右方向という場合には、
図1を基準とする。その場合において、前後方向とは、上枠Wに沿う右パネルRの方向が前方向、左パネルLの方向が後方向となる方向とし、左右方向とは、紙面手前方向が左方向、紙面奥方向が右方向となる方向とする。
また、各構成要素は適宜、変更が可能であり、本発明に直接的に関係しない細部の構造については、その説明を省略する。
【0039】
[本開き扉開閉装置の取付箇所]
本実施形態では、本開き扉開閉装置Hは、トイレブースに設けられることを想定している(
図1)。
【0040】
このトイレブースは、壁から垂直方向に設置されている2枚の横仕切りパネル(図示せず)と、入口部を形成するために所定の開口を設けた状態で、当該横仕切りパネルと直交する向きに設置されている左右のパネルL,R(支持部材)により、平面視で長方形形状の一区画のスペースに区切られている。また、左パネルLと右パネルRの上面には、上枠Wが横架されている。そして、入口部において、開き扉であるドアパネルD(開閉体)が、戸尻側の上端部において、公知のヒンジCを用いて上枠Wに支持されることにより、回動自在に取り付けられている。
【0041】
なお、ドアパネルDは、トイレブースの内側(便器側)に開くタイプであり、入口部が閉まる以上に外側に開放されないように、すなわち、ドアパネルDは、約90度の範囲で回動するように構成されている。
【0042】
また、右パネルRの戸先側であり、トイレブースの内側の面における下隅角部には、公知の足操作錠Jが取り付けられている。足操作錠Jは、ペダル部J1を足踏みし、施錠体J2のドアパネルD側への突出と退出(右パネルR側への移動)を切り替えることにより、当該ドアパネルDの施解錠が可能となっている。
【0043】
[本開き扉開閉装置の構成]
<第1実施形態>
第1実施形態の本開き扉開閉装置Hは、カバー10と、足操作部20と、スライド体40と、回動部50と、下側部材回動手段60を主要部としている(
図2,
図3)。
【0044】
(カバー)
カバー10は、上板11、底板12及び一側面のみに設けられている側板13から形成されている。上板11は、L字形状であり、開口部側の突出部には、下部端面カム体53の取付孔11aが形成されている。また、底板12は、上板11と同一形状の部分に台形形状の部分が設けられている形状となっており、上面視で、上板11と底板12の一部が重なった状態となるように、矩形形状の側板13が取り付けられている。なお、底板12にも、上板11の取付孔11aに対応する位置に、回動軸55の取付孔12aが形成されている。
【0045】
(足操作部)
足操作部20は、ペダル21(足操作体)と、先端部が昇降自在(往復動作自在)となるように当該ペダル21を支持するペダル支持体31(足操作体支持部材)と、復帰遅延手段である上昇遅延手段90と、を主要部としている。
【0046】
ペダル支持体31は、前方に傾斜している傾斜部32と、当該傾斜部32の後部に設けられている直方体部36と、傾斜部32の側面に設けられている下側部材取付部37から形成されている(
図4(a),(b))。
【0047】
傾斜部32は、略半円形状に形成されている先端部33と長方形部34とを備えるとともに、先端部33の側方に設けられており略三角形状である三角形部35が一体的となっており、先端部33と長方形部34は、ペダル21と近似する形状に形成されている。また、長方形部34の長手方向の全体には、第1リンク部材62及び第2リンク部材63を装着するためのリンク部材装着溝34aが形成されている。
【0048】
リンク部材装着溝34aは、中央部が幅広であるクランク状に形成されており、先端部33の近傍における両側には、第1リンク部材62を係止するための係止溝34bが、直方体部36の近傍における両側には、第2リンク部材63を取り付けるための取付長溝34dが、それぞれ鉛直方向に設けられている。また、リンク部材装着溝34aの側面における取付長溝34dから直方体部36側の端部に至る部分は開口している(図示せず)。
なお、直方体部36の上面の2箇所には、開口部36bが形成されている。
【0049】
下側部材取付部37における中央の前方寄りの箇所には、円柱孔37aが高さ方向の全体に設けられている。なお、円柱孔37aにおける内側部には孔壁がなく、下記ピニオンギア72を取り付けたときに、当該ピニオンギア72が露出するようになっている。
また、下側部材取付部37の側縁部の近傍には、カバー10の上板11の取付孔37bが形成されており、後端部には、鉛直板89の取付孔37cが形成されている。
【0050】
また、下側部材取付部37における円柱孔37aの後方の幅方向には、上昇遅延手段90を挿設するための横溝37dが形成されている。横溝37dにおける両端部には壁面が存在しているが、下側部材取付部37における傾斜部32の長方形部34側の端部には、U字形状の開口部37eが形成されている。横溝37dにおける開口部37e側の端部には、直方体形状の球体支持体93が挿設されている。球体支持体93には、長手方向に貫通する円柱孔93aが形成されており、当該円柱孔93aと開口部37eは連通している。そして、開口部37e及び円柱孔93aの端部からは、後記球体91の半球部分が、長方形部34側に出没自在となっている。
【0051】
さらに、傾斜部32と直方体部36は、下記スライド体40の形状に対応した幅寸法であり、かつ、スライド範囲の長さに対応した形状である中空部38が形成されており、当該中空部38に、スライド体40を挿着可能となっている。この中空部38の内側における長手方向の後壁面には、下記付勢力調節手段65を取り付けるための2つの円孔36aが並設されている。
【0052】
ペダル21は、略山形食パン形状であり、前方の円弧部21aと対向する端辺の両端における突出部21bが、ペダル支持体31の傾斜部32における長方形部34の左右の後端上部に形成されている係止部32aに軸支されている。ペダル21は、円弧部21aを足踏み操作することで、左右の係止部32aを支点として上下に回動自在であり、昇降動作できるようになっている。
【0053】
上昇遅延手段90は、球体91と付勢バネ92を備えている。
球体91は、横溝37dに設けられている球体支持体93の円柱孔93aの内部に収容されている。球体91と、下側部材取付部37における横溝37dの壁面との間には、付勢バネ92が介装されている。付勢バネ92の一方の端部は、円柱孔93aに挿設されており、常時、球体91に押圧力を付与するように付勢している。そのため、球体91は、球体支持体93の円柱孔93a及び下側部材取付部37における開口部37eから出没自在となっている。
【0054】
(スライド体)
スライド体40は、基体部41とラック取付部42を備えている((
図5(a),(b))。
基体部41は、上面視で左右対称であり、前面には、傾斜面41aが設けられている。そして、傾斜面41aの後面における長手方向には、2つのバネ取付部41bが並設されている。このバネ取付部41bは、付勢バネ64(付勢手段)の形状である円筒形状に対応した曲面部を備えている。
【0055】
基体部41における長手方向の中央部には、第1リンク部材62及び第2リンク部材63を設けるためのスリット41cが形成されており、当該スリット41cの中央部における後ろ寄りの両側には、第2リンク部材63を係止するための係止溝41dが形成されている。
また、基体部41の右側部における先端に、傾斜面41aと連続して、直方体形状のラック取付部42が設けられている。
【0056】
ラック取付部42の外側面部には、長手方向の全体にラック71が設けられている。
また、基体部41及びラック取付部42の下面には、長手方向に連続して、第1ダンパ取付溝43が形成されており、他方の基体部41における長手方向には、第2ダンパ取付溝44が形成されている。
【0057】
スライド体40は、ペダル支持体31のリンク部材装着溝34aと、スリット41cの位置とを合致させ、ペダル支持体31の中空部38において、付勢バネ64を介装させた状態でスライド自在に装着されている。この付勢バネ64の基端部には、付勢力調節手段65が設けられている。
【0058】
付勢力調節手段65は、付勢バネ64の後端部に設けられており、十字形状部66と、当該十字形状部66の後部に設けられているネジ部67とを備えている(
図6(a),(b),
図8(a),(b))。この付勢力調節手段65は、ペダル支持体31における直方体部36の円孔36aに十字形状部66が挿通されており、ネジ部67により取り付けられている。
そして、2体の各付勢バネ64の基端部は、十字形状部66に中空部が挿通され、ネジ部67を操作することで、押圧体66の位置を変化させ、付勢バネ64の長さを調節して、当該付勢バネ64の付勢力の大きさを適切に設定することができるようになっている。
【0059】
(回動部)
回動部50は、下部端面カム体53及び円筒部52を備える下側部材51と、当該下部端面カム体53の回動軸55と、ドアパネルDに取り付けられ、下部端面カム体53の傾斜カム面53aに沿って従動する上部転動ローラ81(上部従動部材,ローラ体)を主要部としている。
【0060】
下側部材51は、円筒部52と、当該円筒部52の上部の下部端面カム体53を備えている。下部端面カム体53は、扁平であり、円筒部52と比較して小径である円筒を斜め方向に切断した変形筒状に形成されている傾斜カム面53aを上面に有している。傾斜カム面53aは、最高頂部53bと最低谷部53cが回動中心に対して点対称の位置にあり、当該最高頂部53bと最低谷部53cに至るまで、連続勾配となるように形成されている(
図8(a),(b))。
【0061】
また、下部端面カム体53の下端部には、スライド体40のラック71と歯合するピニオンギア72が設けられている(
図6(a),(b))。ピニオンギア72は、円筒体73の下縁の周面に形成されており、当該円筒体73が、下部端面カム体53の円筒部52に挿設されることにより一体となっている。
【0062】
なお、傾斜カム面53aの傾斜角度は、下記付勢バネ64の付勢力の大きさ及び第1ダンパ68の減衰力の大きさにより定められるものであり、閉ドア動作時において、下記上部転動ローラ81が傾斜カム面53aを転動する際に、下部端面カム体53の最高頂部53bの回転位置が、当該上部転動ローラ81の位置を追い越し、前方に達することがないように適切に設定される必要がある。
また、下部端面カム体53の回転角度は、ラック71及びピニオンギア72の仕様により異なるが、本実施形態では、スライド体40の一方向へのスライド動作により、下部端面カム体53が約120度、回転するようになっている。
【0063】
下部端面カム体53は、傾斜カム面53aが上向きとなるように配置され、ペダル支持体31における下側部材取付部37の円柱孔37aに挿設されている。
そして、カバー10の底板12における取付孔12aの位置に、下側部材取付部37の円柱孔37aの中心が一致するようにして、回動軸55が底板12に垂設されており、スラスト軸受54を介して、下部端面カム体53が、回動軸55に対して回動自在に軸支されている。
なお、回動軸55は、端部に設けられている取付金具56により、底板12の下側からボルト91を用いて取り付けられている。
【0064】
また、下部端面カム体53の下面には、ペダル21の下降時に、当該下部端面カム体53の回動力を付加するための助勢バネ57(回動力助勢手段)が設けられている。助勢バネ57は、中空部に回動軸55が挿通され、上端部が下部端面カム体53の下面に当接するように設けられており、下部端面カム体53に対して常時上向きに付勢力を付与することができるようになっている。
【0065】
ドアパネル取付部80は、上部転動ローラ81と、取付金具82と、スラスト軸受87と、軸受取付枠88を備えている(
図7)。
取付金具82は、側面視で山高帽形状に形成されており、凸部83と、両側のドアパネル取付部84,85と、凸部83の対向する2辺に付設されている側板86を備えている。取付金具82の各側板86には、軸受取付枠88が設けられている。
【0066】
軸受取付枠88は、中空の直方体箱体であり、底面に球冠孔88aが形成されている。軸受取付枠88の内部には、スラスト軸受87が中央部が球冠孔88aの位置に合致するように、回動自在に設けられている。また、取付金具82の凸部83の戸尻側における内側面には、上部転動ローラ81が、水平方向に回動軸を有するようにして、回動可能に軸支されている。下部端面カム体53が挿通されている回動軸55の先端部は、軸受取付枠88の球冠孔88aに挿通され、スラスト軸受87の下面に接しており、当該回動軸55により、ドアパネルDを支持できるようになっている。
【0067】
ドアパネルDの下面端縁部には、長円柱形状の孔部D1が形成されており、当該孔部D1に、ドアパネル取付部80における取付金具82の凸部83が挿設され、ドアパネル取付部84,85においてネジ止めされることにより、ドアパネルDの下面に取り付けることができるようになっている。
【0068】
また、上部転動ローラ81は、下部端面カム体53の傾斜カム面53aの傾斜に沿って、転動可能となっている。そして、上部転動ローラ81の動作に伴い、当該上部転動ローラ81が取り付けられているドアパネルDが、上部転動ローラ81とともに動作することができるようになっている。
【0069】
(下側部材回動手段)
下側部材回動手段60は、スライド体40の往復動作と連動して、下側部材51(特に、下部端面カム体53)を回動させるための手段であり、ペダル21の昇降動作とスライド体40の往復動作を連動させるための連動機構61と、既説であるラック71及び当該ラック71と歯合するピニオンギア72とを備えている。
【0070】
連動機構61は、第1リンク部材62及び第2リンク部材63と、付勢バネ64と、第1ダンパ68及び第2ダンパ69(制動手段)と、を備えている。
第1リンク部材62と第2リンク部材63は、略三日月状である同一形状に形成されており、一方の端部には、取付孔62a,63aが形成されているとともに、他方の端部には、薄環状の突部62b,63bが設けられている。
【0071】
同一形状である第1リンク部材62と第2リンク部材63は、表裏を反対にして、裏面同士を対向させて、双方の突部62b,63bに形成されている孔部に連結ピン58が挿通されることで、連結されている。また、第1リンク部材62は、取付孔62aに取付ピン59が挿通され、当該取付ピン59がペダル支持体31の両側の係止溝34bに摺動自在に懸架されている。また、第2リンク部材63は、取付孔63bに取付ピン59が挿通され、当該取付ピン59がスライド体40の両側の係止溝41dに摺動自在に懸架されている。そして、第1リンク部材62の上縁部は、ペダル21の下面に当接しながら、所定範囲で摺動可能となるように設けられている。
【0072】
付勢バネ64は、スライド体40に対し、ペダル21の下降時におけるスライド体40のスライド動作に抗する向きに付勢力を付与するための部材であり、上記のとおり、付勢バネ64は、一端がバネ取付部41bの先端に取り付けられるとともに、他端がペダル支持体31における直方体部36の円孔36aに取り付けられている。この付勢バネ64により、スライド体40には、常時、スライド体40の傾斜面41a側(ペダル21の下降時におけるスライド体40のスライド動作に抗する向き)に付勢力が付与されている。
【0073】
上記構成により、第1リンク部材62と第2リンク部材63は、突部62b,63bの位置を支点とするとともに、連結ピン58を支軸として、回動自在に連結(軸支)されており、ペダル21とスライド体40の相互の動作に関し、一方の動作を他方の動作に追従させ、両部材の動作を連動させることができるようになっている。
【0074】
スライド体40は、足操作部20のペダル21の上昇時に作用するスライド力及び付勢力に抗する制動力を付与するための第1ダンパ68と、足操作部20のペダル21の踏込み時に作用する第2ダンパ69を備えている。
【0075】
すなわち、上記場合において、下部端面カム体53が回動軸55に対して、反時計回りに回転した場合には、ピニオンギア72及びラック71により、回転力から変化したスライド力がスライド体40に作用することになる。第1ダンパ68は、下部端面カム体53に作用する上記回転力及びスライド体40のスライド力に抗する制動力をスライド体40に付与するために設けられる要素であり、ロッドがスライド体40における後面に接する向きに配置され、第1ダンパ取付溝43に挿設されている。
【0076】
第2ダンパ69は、ペダル21を踏み込む際に緩やかに踏み込むことができるように設けられている。そのため、ペダル21の下降力に抗する抵抗力が付与されるように、ロッドがスライド体40における傾斜面41aの後面に接する向きに配置され、第2ダンパ取付溝44に挿設されている。なお、第2ダンパ69は、場合によっては設ける必要はない。
【0077】
(取付態様等)
上記各構成要素は、所定位置に配設されており、カバー10の上板11から底板12の間の所定箇所に設けられているボルト94及びナット95(
図7,
図9(a),(b),
図10)により挟持されている。
そして、本開き扉開閉装置Hは、足操作部20のペダル支持体31における後面に取り付けられる鉛直板89により、左パネルLの下部隅角部に取り付けられている。
【0078】
上記構成である本開き扉開閉装置Hは、第1リンク部材62、第2リンク部材63及び付勢バネ64の作用により、ペダル21の昇降動作と連動して、スライド体40が前後方向にスライド自在(往復動作自在)となっている。
【0079】
すなわち、第1リンク部材62は、ペダル21の下面と当接し、当該ペダル21により押圧操作可能であり、当該ペダル21を踏んだ場合に、下方への押圧力が作用することにより、付勢バネ64が縮退し、第1リンク部材62がペダル21の下面と摺動しながら下方に移動することで、突部62b,63bの位置を支点として、第2リンク部材63も下方に移動することができるようになっている(
図8(b),
図10)。また、ペダル21から足を離すことにより、付勢バネ64が伸長して、第2リンク部材63が上方に移動し、突部62b,63bの位置を支点として、第1リンク部材62が上方に移動することにより前方に復帰して、ペダル21が上昇できるようになっている(
図8(a),
図9(b))。
【0080】
さらに、スライド体40のラック71と歯合するピニオンギア72の動作により、当該ラック71が後面にスライド移動した場合には、下部端面カム体53が時計回りに回転し、ラック71が前面にスライド移動した場合には、下部端面カム体53が反時計回りに回転することになる。そして、下部端面カム体53の傾斜カム面53aに沿って、上部転動ローラ81が転動し、当該上部転動ローラ81と一体となっているドアパネルDも同時に回転することになるため、下部端面カム体53の動作に連動して、本開き扉開閉装置Hが取り付けられているドアパネルDが開閉されるようになっている。
【0081】
[本開き扉開閉装置の動作]
続いて、本開き扉開閉装置Hの動作について説明する。
なお、本開き扉開閉装置Hは、左パネルLにおける右パネルR側の下部隅角部に取り付けられている。
【0082】
以下の説明において、開ドア状態(最大の開ドア角度)におけるドアパネルDは、入口に対して、トイレブースの内側に90度回転した位置となっていることを前提とする(
図11)。この場合において、下部端面カム体53の最高頂部53bは、ドアパネルDを確実に動作させるために、作動時における余裕角度を見込み、右パネルRの側であり、当該右パネルRと平行となる方向から、わずかに外側に離間する方向(平面視において、上部転動ローラ81との当接部と、下部端面カム体53の最高頂部53bのなす角が鈍角となる方向)となっている。
【0083】
また、上部転動ローラ81は、左パネルLに直行する方向であり、かつ、トイレブースの内側方向において、下部端面カム体53の傾斜カム面53aと当接している。上記開ドア状態では、上部転動ローラ81は、傾斜カム面53aの最低谷部53cの近傍に位置しているため、上部転動ローラ81は回転動作しない状態となっている。
【0084】
(閉ドア時)
ドアパネルDを閉める場合について説明する。
本開き扉開閉装置Hの足操作部20のペダル21を踏むことにより下降させると、第1リンク部材62と第2リンク部材63の連結部がペダル21に押圧されて下方に移動する。それに連動して、第2リンク部材63の後端が後面に移動し、スライド体40が後方にスライド移動する。その際、スライド体40に設けられているラック71が後方に移動するため、当該ラック71に歯合するピニオンギア72も回転することになる(
図6(b),8(b),
図10)。そして、下部端面カム体53が回動軸55のまわりを約120度時計回りに回転し、当該下部端面カム体53における傾斜カム面53aの最高頂部53bの位置が、上部転動ローラ81における開ドア状態の位置を通過する(
図12)。
【0085】
このとき、下部端面カム体53の下側に設けられている助勢バネ57により、当該下部端面カム体53に上向きの付勢力が付与されているため、ドアパネルDの自重に抗して、下部端面カム体53がスムーズに回転することになる。
【0086】
この状態において、ペダル21から足を離して踏み込みをやめると、付勢バネ64の付勢力により、スライド体40が前面に押圧され、当該スライド体40のラック71が前方に移動する。それに伴い、ピニオンギア72が上記の場合と逆回転し、回動軸55を中心として、下部端面カム体53が反時計回りに回転を開始する。そして、スライド体40が前面に押圧されることに伴い、第2リンク部材63と第1リンク部材62の連結部が前方上方に移動し、ペダル21を下面から押し上げることになる。
【0087】
同時にドアパネルDの自重が作用することにより、上部転動ローラ81が、下方に傾斜している下部端面カム体53の傾斜カム面53aに沿って移動して、下部端面カム体53と同一方向に回転する。それに伴い、上部転動ローラ81と一体的に動作するドアパネルDが閉まる方向に回転することになる(
図13)。
その後、ドアパネルDが入口部を完全に閉塞した状態で(
図14)、足操作錠Jのペダル部J1を操作して、施錠体J2をドアパネルD側に突出させることにより施錠する。
【0088】
上記動作において、下部端面カム体53が、反時計回りに回転する場合には、第1ダンパ68の作用により、下部端面カム体53の回転力及びスライド体40のスライド力に対して制動力が作用するため、ペダル21の踏込み時(下降時)と比較して、緩やかな回転速度となる。したがって、下部端面カム体53の回転速度は、上部転動ローラ81の速度に依存するドアパネルDの回転速度と比較して遅い速度となる。
【0089】
なお、ドアパネルDは、回転限度である右パネルRと平行となる位置で移動が止まることになる。しかし、閉ドア後に、下部端面カム体53は、付勢バネ64の付勢力により、スライド体40がペダル21の踏込み前であった位置に復帰するため、傾斜カム面53aの最高頂部53bの位置は、上部転動ローラ81の位置を通過し、上記動作前の位置に復帰することになる。
【0090】
(開ドア時)
ドアパネルDが入口部を閉塞した状態で、足操作錠Jのペダル部J1を操作して、施錠体J2を右パネルR側に退出させて解錠する(
図15)。
【0091】
このとき、上部転動ローラ81は、下部端面カム体53の最高頂部53bと比べて、トイレブースの内側方向に位置しており、下部端面カム体53の最高頂部53bを乗り越えることができない。そのため、上部転動ローラ81は、下方に傾斜している、当該下部端面カム体53におけるトイレブースの内側方向の傾斜カム面53aに沿って移動し、時計回りに回転することになる。したがって、特段の操作を行うことなく、上部転動ローラ81が、開ドア状態の位置に復帰することになり、上部転動ローラ81と一体となっているドアパネルDが開放され、本開き扉開閉装置H上に復帰することになる。
【0092】
[本開き扉開閉装置の作用効果]
本開き扉の開閉装置Hは、ペダル21の昇降動作と連動して、往復動作自在であるスライド体40と、当該スライド体40の往復動作と連動して、下部端面カム体53を回動させることが可能となるように構成されている下側部材回動手段60を備えている。この下側部材回動手段60は、ペダル21の昇降動作とスライド体40の往復動作を連動させるための連動機構61と、スライド体40に設けられているラック71と、当該ラック71と歯合するピニオンギア72とを備えている。また、この連動機構61は、第1リンク部材62及び第2リンク部材63と、付勢バネ64とを備えている。
【0093】
そのため、ペダル21を下降させることで、第1リンク部材62及び第2リンク部材63の作用によりスライド体40をスライド移動させることができる。そして、スライド体40に設けられているラック71とピニオンギア72を歯合させて、下部端面カム体53を所定位置にまで回転させ、その傾斜カム面53aを適宜位置に移動させることができる。
また、ペダル21の押圧を解除することにより、付勢バネ64の作用により、スライド体40を上記と反対方向にスライドさせ、ラック71とピニオンギア72の動作により、下部端面カム体53を反対方向に回転させることができる。
【0094】
このとき、上部転動ローラ81は、傾斜カム面53aの最高頂部53bの近傍に位置しているため、ドアパネルDの自重により、当該ドアパネルDに取り付けられている上部転動ローラ81を、下部端面カム体53の傾斜カム面53aに沿って移動させることにより、ドアパネルDを自開又は自閉させることができる。
このように、本発明によれば、簡易な構造であり、ペダル21の簡単な操作により、自閉及び自開が可能となる本開き扉の開閉装置Hを提供することができる。
【0095】
また、本開き扉の開閉装置Hによれば、上端部が下部端面カム体53の下面に当接し、下部端面カム体53に対して常時上向きに付勢力を付与するための助勢バネ57が設けられている。そのため、下部端面カム体53に作用するピニオンギア72の回転力と、助勢バネ57の上向きの付勢力の合力により下部端面カム体53を回転させることができるため、ドアパネルDの重量が重い場合であっても、円滑に下部端面カム体53を回転させることが可能となる。
【0096】
また、本開き扉の開閉装置Hによれば、上記ペダル21の昇降時(往復動作時)において、ぺダル21を最上部(初期状態の位置)に復帰させることを遅延させるための上昇遅延手段90(復帰遅延手段)が設けられている。
【0097】
この上昇遅延手段90を構成する球体91は、ぺダル21が最上部に位置している場合には、球体支持体93の円柱孔93aの端部及び下側部材取付部37における開口部37eから傾斜部32の長方形部34側に突出している(以下、単に「突出している」という。)(
図16(a))。
この状態で、ペダル21を踏込み、下降させた場合には、球体91が球体支持体93の向きに押圧され、当該球体支持体93の円柱孔93aの内部に収納されることになる。その後、球体91は、付勢バネ92の付勢力により押圧され、球体支持体93の円柱孔93aの端部から突出した状態となる。
【0098】
続いて、ペダル21が上昇した場合には、当該ペダル21は、球体91の壁面と当接して、その移動が一時的に阻害されることになる(
図16(b))。このとき、ペダル21には、上昇力が作用し続けているため、球体91の壁面との間に摩擦力が作用する。この摩擦力が、球体91に作用する付勢バネ92の付勢力を上回ると、当該球体91は、球体支持体93の円柱孔93aの内部に収容されることになり、ペダル21は、最上部の位置に復帰することになる。
なお、その後、球体91は、付勢バネ92の付勢力により押圧され、球体支持体93の円柱孔93aの端部から突出することになる。
【0099】
このように、本開き扉の開閉装置Hによれば、上昇遅延手段90の作用により、最上部の位置からペダル21を操作し、初期状態の位置に復帰させるまでに必要となる操作時間を確保することができるため、ドアパネルDが完全に閉まりきる前に、当該ドアパネルDが開放する向きに回転方向が切り替わり、ドアパネルDが開放されるという不具合を防止することができる。
【0100】
また、本開き扉の開閉装置Hにおいて、ペダル21の上昇時(スライド体40の前方への移動時)において、スライド体40に対して、制動力を作用させるための第1ダンパ68を備えている。そのため、ペダル21の上昇時において、下部端面カム体53の回転動作及びスライド体40のスライド動作を抑制し、ドアパネルDの閉ドア動作を緩やかに行わせることができるため、利用者がドアパネルDに衝突等をすることを防止可能となる。
【0101】
また、本開き扉の開閉装置Hは、付勢力調節手段65を備えることにより、装置全体を取り外すことなく、簡易に付勢バネ64の付勢力を調節することにより、ドアパネルDの開閉速度を調節することができる。また、ドアパネルDの重量に応じて、付勢力を調節することができるため、汎用性を高めることが可能となる。
【0102】
また、本開き扉開閉装置Hによれば、別に取り付けられている足操作錠J(施錠装置)を使用して、ドアパネルD(開き扉)の施解錠を行う構造としている。そのため、故意に、何者かが本開き扉開閉装置Hを作動させて、トイレブースの外部から退出した等の場合であっても、ドアパネルDが自開することになり、意図しないドアパネルDの動作等を防止することができる。
【0103】
[本開き扉開閉装置の他の実施形態]
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態の本開き扉開閉装置H’について説明する。
第2実施形態の本開き扉開閉装置H’と、第1実施形態の本開き扉開閉装置Hは、回動力助勢手段と、スライド体40’と、上昇遅延手段90’とが異なっている。なお、以下の説明では、相違点を中心について説明し、その説明において、第1実施形態の本開き扉開閉装置H及びその構成要素を説明する場合には、各構成要素等に対して、「第1実施形態の」という呼称を付す場合がある(以下も同様)。
【0104】
(回動力助勢手段)
第1実施形態の回動力助勢手段は、下部端面カム体53の下面に設けられている助勢バネ57として構成されている。一方、本開き扉開閉装置H’の回動力助勢手段は、ドアパネル取付部80’に設けられている。なお、他の構成要素に関しては、第1実施形態の開き扉の開閉装置Hと同様であるため、相違点であるドアパネル取付部80’のみについて説明する(
図17中の符号50’は、回動部を示す)。
【0105】
ドアパネル取付部80’は、取付金具82’と、上部転動ローラ81’(上部従動部材、転動部材)と、スラスト軸受87’と、助勢バネ57’と、助勢バネ取付部材88’を備えている(
図17)。
取付金具82’は、側面視で山高帽形状に形成されており、凸部83’と、両側のドアパネル取付部84’,85’と、助勢バネ57’を巻装するための円筒部86’を備えている。
【0106】
取付金具82’の凸部83’は、第一実施形態の場合と比較して、鉛直方向の長さが長く形成されており、内側頂面の下方には、円筒部86’が設けられている。また、凸部83’の戸尻側における内側面には、上部転動ローラ81’を取り付けるための取付孔83a’が形成されている。
助勢バネ取付部材88’は、溝形形状であり、開口部を水平にした際のウェブ部には円孔88a’が形成されるとともに、一方のフランジ部には、上部転動ローラ81’の取付孔88b’が形成されている。
【0107】
上部転動ローラ81’の水平方向の回動軸81a’は、凸部83’の取付孔83a’と、助勢バネ取付部材88’の取付孔88b’を合致させた状態で、両孔にネジ99’で取り付けられている。上部転動ローラ81’は、回動軸81a’に回動可能に軸支されている。
【0108】
取付金具82’の円筒部86’には、助勢バネ57’が巻装されている。助勢バネ57’の下端部は、常に上向きの付勢力を付与できる態様で、助成バネ取付部材88’に取り付けられており、下部端面カム体53に対して、上向きの付勢力を作用させることができるようになっている。
また、円筒部86’の下端部には、スラスト軸受87’が取り付けられている。そして、回動軸55の上側の先端部が、当該スラスト軸受87’における中心部の下面に接しており、当該回動軸55により、ドアパネルDを支持できるようになっている。
【0109】
(スライド体及び上昇遅延手段)
スライド体40’の基体部41’におけるラック取付部42’側の前面は、傾斜面ではなく直方体形状に形成されており、その幅方向には、上昇遅延手段90’を挿設するための横溝41d’が形成されている(
図18(a),
図19(a))。横溝41d’のラック71と反対側の端面には、下記球体91’の先端を出没させるための円孔(図示せず)が形成されている。また、横溝41d’には、直方体形状の球体支持体93’が挿設されている。球体支持体93’は、後記球体91を出没自在に収容可能な円柱孔(図示せず)が形成されており、当該円柱孔は、上記円孔と連通している。
【0110】
上昇遅延手段90’は、第1リンク部材62の上昇を遅延させることにより、間接的にペダル21の上昇を遅延させるための手段であり、球体91’と付勢バネ92’を備えている。
球体91’は、横溝41d’に設けられている球体支持体93’の円柱孔の内部に収容されている。球体91’と、横溝41d’のラック71側の壁面との間には、付勢バネ92’が介装されている。付勢バネ92’の一方の端部は、円柱孔に挿設されており、常時、球体91’に押圧力を付与するように付勢している。そのため、球体91’は、横溝41d’の端部から、基体部41’の略中央部に形成されているスリット41c‘に向けて出没自在となっている。
【0111】
(本開き扉開閉装置の作用効果)
第2実施形態の本開き扉開閉装置H’によっても、助勢バネ57’により、下部端面カム体53に対して、常時上向きの付勢力を作用させることができるため、第1実施形態の本開き扉開閉装置Hと同様の作用効果を奏させることができる。
【0112】
また、本開き扉の開閉装置H’の上昇遅延手段90’の球体91’は、ぺダル21が最上部に位置している場合には、横溝41d’からスリット41c’側に突出している(
図18(a),(b))。
その状態から、ペダル21を踏込み、下降させた場合には、球体91’が球体支持体93’の向きに押圧され、当該球体支持体93’の円柱孔の内部に収容されることになる。その後、球体91’は、付勢バネ92’の付勢力により押圧され、スリット41c’に向けて突出した状態となる(
図19(a),(b))。
【0113】
続いて、ペダル21が上昇した場合には、連動機構61の第1リンク部材62は、球体91’の壁面と当接して上部への移動が一時的に阻害されることになり、これに伴い、間接的にペダル21の移動が一時的に阻害される。このとき、ペダル21には上昇力が作用し続けているため、球体91’の壁面と、第1リンク部材62の間に摩擦力が作用する。この摩擦力が、球体91’に作用する付勢バネ92’の付勢力を上回ると、当該球体91’は、球体支持体93’の円柱孔の内部に収容されることになり、第1リンク部材62が移動し、それに伴いペダル21は、最上部の位置に復帰することになる。
なお、その後、球体91’は、付勢バネ92’の付勢力により押圧され、球体支持体93’の端部から突出することになる。
【0114】
このように、本開き扉開閉装置H’によっても、上昇遅延手段90’の作用により、連動機構61の第1リンク部材62の移動を遅延させ、間接的に、最上部の位置からペダル21を操作し、初期状態の位置に復帰させるまでに必要となる操作時間を確保することができる。そのため、ドアパネルDが完全に閉まりきる前に、当該ドアパネルDが開放する向きに回転方向が切り替わり、ドアパネルDが開放されるという不具合を防止することができる。
【0115】
<第3実施形態>
さらに、第3実施形態の本開き扉開閉装置H”について説明する。
第3実施形態の本開き扉開閉装置H”と、第1実施形態の本開き扉開閉装置Hとは、下側部材回動手段60”の連動機構61”と、上昇遅延手段90”とが異なっている。そして、連動機構61”の相違から、ペダル支持体31”及びスライド体40”の形態が異なっており、上昇遅延手段90”の相違から回動部50”を構成する下側部材51”の円筒部52”の形状が異なっている(
図20)。
【0116】
なお、第1実施形態の上昇遅延手段90は、スライド体40の連動機構61の動作を規制することにより、スライド体40の動作を間接的に規制していたが、第3実施形態の上昇遅延手段90”は、スライド体40”の動作を直接的に規制している点で、両者は相違している。
【0117】
(ペダル支持体及びスライド体)
ペダル支持体31”には、第1実施形態のペダル支持体31のリンク部材装着溝34aのかわりに、傾斜部34”において、連動機構61”を形成する後記板カム部材62”を装着するためのカム部材装着溝34a”が形成されている。カム部材装着溝34a”における上側端部の近傍には、板カム部材62”の軸支部62a”の係止溝34b”が形成されており、略中間部には、板カム部材62”のガイド凸部62c”をスライド移動させるための、ガイド溝34c”が形成されている(
図21)。
【0118】
カム体装着溝34a”は、ペダル支持体31”を貫通しており、装着された板カム部材62”がスライド体40”のラック取付部42”と近接しない左側の前面において当接可能となっている(
図24(a),(b))。
【0119】
スライド体40”の基本形状は、第1実施形態のスライド体40とほぼ同様である(
図22)。但し、本開き扉開閉装置H”では、第1実施形態の本開き扉開閉装置Hに設けられていた第1リンク部材62、第2リンク部材63が不要となるため、スリットは形成されてない。また、第2ダンパ69も設けられていない。
また、第1実施形態における付勢力調節手段65は設けられておらず、スライド体440の後面に、突出して設けられている付勢力取付部66”に、付勢バネ64”が取り付けられている。
また、スライド体40”のラック取付部42”の前面には、後記ストッパ部材91”の先端部を係合させるための半円柱状の係止溝部42a”が形成さている。
【0120】
(連動機構)
連動機構61”は、扇形形状の板カム部材62”を有している。板カム部材62”の中心角は、約90度である。板カム部材62”の要部(かなめぶ)の両面には、軸支部62b”が突出するように形成されており、扁平である両面の中間部には、周縁部(円弧)と平行となるように、ガイド凸部62c”が円弧状に形成されている(
図21)。
【0121】
板カム部材62”は、回動自在となるように、ペダル支持体31”のカム部材装着溝34a”において、ガイド溝34c”にガイド凸部62c”が位置するようにして、係止溝34b”に軸支部62b”が取り付けられている。板カム部材62”は、周縁部の先端部62d”がスライド体40”の前面部を押圧可能であり、他端部62e”は、ペダル21の下面と当接して押圧可能となっている。上記構造により、板カム部材62”は、軸支部62b”において、ペダル支持体31”に回動自在に軸支されるとともに、板カム部材62”の周縁部の先端部62d”が、上記スライド体40”を押圧可能であり、かつ、ペダル21により押圧操作可能となっている。
【0122】
(上昇遅延手段及び下側部材)
上昇遅延手段90”は、下側部材51”に追従して昇降するストッパ部材91”と付勢バネ92”を有している。ストッパ部材91”は、頭部91b”が設けられているロッドであり、本体部91a”と頭部91b”の境界には、円環状のフランジ91c”が形成されている。
また、下側部材51”の円筒部52”における下方の外周壁に沿って、円環形状の鍔部52a”が形成されている(
図20,
図23)。
なお、ストッパ部材91”のブランジ91c”と、の円筒部52”の顎部52a”は係合可能な寸法に形成されている。
【0123】
ストッパ部材91”の頭部91b”には、常時、下向きに付勢力を作用させる付勢バネ92”が巻装されている、付勢バネ92”の上端部は、カバー10の上板11における下面に当接しており、当該付勢バネ92”の作用により、ストッパ部材91”は、円筒部52”の顎部52a”と当接して一体となり、下側部材51”に追従して昇降することができるようになっている。
【0124】
また、ストッパ部材91”は、先端部がスライド体40”のラック取付部42”の通過位置において昇降自在に配置されており、上記係止溝部42a”に沿って摺動自在となっている。そのため、ストッパ部材91”の先端部が、ラック取付部42”の上面高さより低い高さに位置した場合には、スライド体40”の前面に突出して、その動作を規制可能であり、先端部がラック取付部42”の上面高さより高くなった場合には、スライド体40”の動作の規制が解除されるようになっている。
なお、ストッパ部材92”の昇降動作、すなわち、下側部材51”の昇降動作と、スライド体40”のスライド動作は、ストッパ部材91”による上記スライド体40”の動作を適切に規制できるように設定されている。
【0125】
(本開き扉開閉装置の作用効果)
本開き扉開閉装置H”における足操作部20”のペダル21は、初期状態において、板カム部材62”の他端部62e”と当接している。この状態で、ペダル21を踏むことにより下降させると、板カム部材62”の他端部62e”がペダル21の下面により押圧されて下方に移動する。そして、板カム部材62”が、軸支部62b”を支軸として回転し、先端部62d”がスライド体40”に当接して押圧力を付与し、当該スライド体40”は、押圧力の作用方向である後方に移動する。その後、第1実施形態の本開き扉開閉装置Hと同様に、下側部材51”(下部端面カム体53”)等を動作させることになる(
図24(a))。
【0126】
一方、この状態において、ペダル21から足を離して踏み込みをやめると、第1実施形態の本開き扉開閉装置Hと同様に、付勢バネ64”によりスライド体40”が前面に押圧されることに伴い、板カム部材62”が、軸支部62b”を支軸として上記の場合と逆方向に回転し、ペダル21を下面から押し上げて、板カム部材62”及びペダル21が初期状態に復帰することになる(
図24(b))。
このように、本開き扉開閉装置H”によれば、部品点数を少なくし、簡易な構造により、第1実施形態の本開き扉開閉装置Hと同様の作用効果を奏させることができる。
【0127】
また、本開き扉の開閉装置H”の上昇遅延手段90”では、ぺダル21が最上部に位置している場合には、回動部50”の下側部材51”も、最上部に位置している(
図25(a))。
その状態から、ペダル21を踏込み、下降させた場合には、スライド体40”は後方に移動する。それに伴い、回動部50”の下側部材51”が下降する。そして、下側部材51”の動作に追従して、当該下側部材51”と一体的に動作可能となっているストッパ部材91”も下降し、スライド体40”のラック取付部42”の上面高さより下方にまで至ることになる。
【0128】
その後、ペダル21が上昇した場合には、スライド体40”は前方に移動する。それに伴い、回動部50”の下側部材51”が上昇する。このとき、ストッパ部材91”の先端がラック取付部42”の係止溝部42a”に当接する位置に至っている場合には、当該ストッパ部材91”が当該ラック取付部42”と当接して、前方への移動が一時的に阻害されることになる。このとき、下側部材51”は上昇し続けているため、当該下側部材51”の動作に追従して、下側部材51”と一体的に動作可能となっているストッパ部材91”も徐々に上昇する。そして、ストッパ部材91”の先端部がラック取付部42”の上面高さより高くなった場合には、スライド体40”の動作の規制が解除され、前方へ移動できるようになる(
図25(b))。
【0129】
このように、本開き扉開閉装置H”によっても、上昇遅延手段90”の作用により、スライド体40”の移動を遅延させ、最上部の位置からペダル21を操作し、初期状態の位置に復帰させるまでに必要となる操作時間を確保することができる。特に、開き扉開閉装置H”’の上昇遅延手段90”によれば、部品点数を減少させ、簡易な構造で構成することができる。
【0130】
<上昇遅延手段の他の実施形態>
本開き扉開閉装置は、上昇遅延装手段(復帰遅延手段)を備えることが主要な特徴の一つとなっている。上昇遅延手段の他の実施形態として、下記の態様が考えられる。
すなわち、ペダル支持体131における下側部材取付部137において、略半球形状の弾性体である突設体191を設ける構成とした上昇遅延手段190とすることもできる(
図26)。突設体191は、作用する力に応じて弾性変形するため、ペダル21の昇降時に、当該ペダル21の昇降動作を一時的に阻害する作用を奏することになる。
なお、上記ペダル支持体131の基本態様は、第1実施形態のペダル支持体31とほぼ同様であり、下側部材取付部137のみが異なっている。
【0131】
また、スライド体240の基体部241におけるラック取付部242側の前面であり、スリット241c側の端面に、略半球形状の弾性体である突設体291を設ける構成とした上昇遅延手段290とすることもできる(
図27)。突設体291は、作用する力に応じて弾性変形する。そのため、ペダル21の昇降時に、連動機構61の第1リンク部材62の昇降動作を一時的に阻害する作用を奏することになり、間接的にペダル21の移動を一時的に阻害する作用を奏することになる。
なお、上記スライド体240の基本態様は、第2実施形態のスライド体40’とほぼ同様であり、上昇遅延手段290に関係する構成のみが異なっている。
【0132】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能である。
【0133】
特に、本開き扉の開閉装置の取付個所に制限はなく、取付を行う場所及び開き扉等に応じて、操作性(操作時において邪魔にならないこと、あるいは、操作者と開き扉が衝突しないこと等を含む)を考慮して、適切に定めることができる。
【0134】
また、取り付けを行う開き扉の形態についても制限はなく、個室の外側に開放されるタイプの開き扉であってもよい。なお、その場合には、本開き扉の開閉装置の足操作体は、個室の外側に突出した状態で取り付けられる必要がある。
【0135】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態の本開き扉の開閉装置では、上部従動部材にローラ体を使用した構成とした。しかし、上部従動部材に、下部端面カム体と同一形状である一対の上部端面カム体を使用する構成とすることも可能である。この場合には、傾斜カム面が端面に形成された筒状部を有する形状とし、相互に傾斜カム面を対向させ、重ね合わせられた状態で回動自在に軸支されるように配置することが好ましいものである。
【0136】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態の本開き扉の開閉装置では、開き扉にローラ体を設け、下側部材に下部端面カム体を設ける構成とした。しかし、開き扉に上部端面カム体を設け、下側部材にローラ体を設ける構成とすることも可能である。
【0137】
また、下側部材の主要構成要素として、下部端面カム体のかわりに、下部ローラ体を用けるとともに、開き扉に、上部ローラ体を設ける構成とすることも可能である。
【0138】
さらに、請求項に記載する、足操作体、足操作体支持部材、スライド体、上部端面カム体、下部端面カム体、下側部材の回動手段(連動機構(第1リンク部材、第2リンク部材、カム部材、付勢手段、付勢力調節手段)、復帰遅延手段、制動手段及び回動力助勢手段)は、基本的な構成を備え、その作用効果を奏するものであれば、種々の構成要素を用いることができる。
【符号の説明】
【0139】
H,H’,H” 開き扉開閉装置
D ドアパネル
J 足操作錠
10 カバー
20,20” 足操作部
21 ペダル(足操作体)
31,31”,131 ペダル支持体(足操作体支持部材)
32 傾斜部
32a 係止部
33 先端部
34a リンク部材装着溝
34a” カム部材装着溝
37,137 下側部材取付部
37d,41d’ 横溝
40,40’,40”,240 スライド体
41,241 基体部
42,42”,242 ラック取付部
50,50’,50” 回動部
51,51” 下側部材
52 円筒部
53,53” 下部端面カム体
53a 傾斜カム面
53b 最高頂部
53c 最低谷部
54 スラスト軸受
55 回動軸
57,57’ 助勢バネ(回動力助勢手段)
60,60’,60” 下側部材回動手段
61 連動機構
62 第1リンク部材
62” 板カム部材
63 第2リンク部材
62a,63a 取付孔
62b,63b 突部
64,64” 付勢バネ(付勢手段)
65 付勢力調節手段
68 第1ダンパ
69 第2ダンパ
71 ラック
72 ピニオンギア
80,80’ ドアパネル取付部
81,81’ 上部転動ローラ(上部従動部材)
82,82’ 取付金具
88 軸受取付枠
90,90’,90”,190,290 上昇遅延手段(復帰遅延手段)
91,91’ 球体
91” ストッパ部材
191,291 突設体
92,92’,92” 付勢バネ
93,93’ 球体支持体