(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022192011
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】電子写真用ベルト、電子写真画像形成装置、定着装置及びワニス
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221221BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/00 552
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080270
(22)【出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2021099881
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022043956
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】浅香 明志
(72)【発明者】
【氏名】渡部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 遊磨
(72)【発明者】
【氏名】河村 英孝
(72)【発明者】
【氏名】西馬 聡
(72)【発明者】
【氏名】田谷 彰大
(72)【発明者】
【氏名】川原 龍之介
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA25
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA26
2H033BA31
2H033BB03
2H033BB05
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2H033BB14
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2H033CA07
2H033CA30
2H171FA19
2H171FA24
2H171FA26
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2H171FA30
2H171GA01
2H171GA09
2H171PA05
2H171PA08
2H171PA09
2H171QA02
2H171QA08
2H171QA23
2H171QB03
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2H171QB33
2H171QB52
2H171QC03
2H171QC37
2H171QC39
2H171QC40
2H171TA04
2H171TA12
2H171TA17
2H171UA03
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2H171UA10
2H171UA20
2H171VA02
2H171VA04
2H171VA06
2H171XA03
(57)【要約】
【課題】厚さ方向に高い熱伝導率を有し、かつ、周方向及び周方向に直交する方向に高い引張強度を有する電子写真用ベルトの提供。
【解決手段】エンドレス形状の電子写真用ベルトであって、基材を有し、該基材は、ポリイミド樹脂及びカーボンナノチューブを含み、該基材における該カーボンナノチューブの含有量が、ポリイミド樹脂の全体積に対し、15体積%以下であり、該基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度が、200MPa以上であり、かつ、該基材の厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレス形状の電子写真用ベルトであって、
基材を有し、
該基材は、ポリイミド樹脂及びカーボンナノチューブを含み、
該基材における該カーボンナノチューブの含有量が、ポリイミド樹脂の全体積に対し、15体積%以下であり、
該基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度が、200MPa以上であり、かつ、
該基材の厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上であることを特徴とする電子写真用ベルト。
【請求項2】
前記基材の表面を反射X線回折法で測定したとき、
前記カーボンナノチューブの(100)結晶面に由来する回折ピークの強度をI(100)とし、前記カーボンナノチューブの(002)結晶面に由来する回折ピークの強度をI(002)としたとき、I(002)/I(100)が35以下である請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブのラマン分光スペクトルにおけるGバンドの強度gと、Dバンドの強度dとの比(g/d)が、10以上である請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項4】
前記基材が、ポリアミック酸と、該ポリアミック酸の溶媒と、前記カーボンナノチューブと、該溶媒との表面張力差が4mN/m以上17mN/m以下である化合物とを含むワニスの硬化物を含む請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項5】
前記化合物が、前記ワニスの全質量に対し、0.1質量%以上6.0質量%以下の割合で配合されている請求項4に記載の電子写真用ベルト。
【請求項6】
前記ポリアミック酸の溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒である請求項4に記載の電子写真用ベルト。
【請求項7】
前記化合物が、エチレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-ブタノール、ジイソブチルアミン、3’-ニトロアセトフェノン、5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール、フルフリルアルコール、o-クロロフェノール、2-ヒドロキシエチルメチルスルフォン、2,4-ジメチル-3-ペンタノンからなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物である請求項4に記載の電子写真用ベルト。
【請求項8】
前記基材の厚さが40μm以上150μm以下である請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項9】
前記基材の外周面上に離型層としてのフッ素樹脂層を有する請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項10】
前記基材と前記離型層との間に弾性層を更に有する請求項9に記載の電子写真用ベルト。
【請求項11】
前記電子写真用ベルトが定着ベルトである請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項12】
エンドレス形状を有する定着ベルトと、該定着ベルトに対向して配置された加圧用回転体とを具備する定着装置であって、
該定着ベルトは、エンドレス形状の基材を有する、エンドレス形状の電子写真用ベルトであり、
該基材は、ポリイミド樹脂及びカーボンナノチューブを含み、
該基材における該カーボンナノチューブの含有量が、ポリイミド樹脂の全体積に対し、15体積%以下であり、
該基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度が、200MPa以上であり、かつ、該基材の厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上である、ことを特徴とする定着装置。
【請求項13】
電子写真画像形成装置であって、請求項12に記載の定着装置を具備する、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項14】
ポリアミック酸と、該ポリアミック酸の溶媒と、カーボンナノチューブと、該溶媒との表面張力差が4mN/m以上17mN/m以下である化合物とを含むことを特徴とするワニス。
【請求項15】
前記ワニスが、前記ワニスの全質量に対し、前記化合物を、0.1質量%以上6.0質量%以下の割合で含む請求項14に記載のワニス。
【請求項16】
前記ポリアミック酸の溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒である請求項14に記載のワニス。
【請求項17】
前記化合物が、エチレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-ブタノール、ジイソブチルアミン、3’-ニトロアセトフェノン、5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール、フルフリルアルコール、o-クロロフェノール、2-ヒドロキシエチルメチルスルフォン、2,4-ジメチル-3-ペンタノンからなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物である請求項14に記載のワニス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真用ベルト、電子写真画像形成装置、定着装置及びワニスに関する。
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた機械的強度・耐熱性・絶縁性などを有するため、電子写真画像形成装置におけるトナーを紙などの被記録材に転写する中間転写ベルトや、中間転写ベルトから被記録材に転写されたトナー像を加熱定着させる定着ベルトなどに好適に用いられている。
【0003】
例えば、ベルト(フィルム)加熱方式の定着装置として、以下のような構成を有するものがある。すなわち、エンドレス形状の定着ベルトと、該定着ベルトに対向配置されてなり、該定着ベルトと共に定着ニップ部を形成する加圧部材を具備する定着装置がある。このような定着装置においては、該定着ベルトは、該定着ベルトの内側に配置されたヒータから該定着ベルトに供給される熱を、定着ニップ部において被記録材上のトナーへと伝え、該トナーを溶融させて被記録材に定着させる機能を奏する。
【0004】
上記したように、定着ベルトは、電子写真画像の形成工程においては、常に加熱され、また、定着ニップ部を通過するたびに屈曲される。そのため、定着ベルトの基材には、高い機械的強度(例えば、繰り返しの屈曲によってもクラックが生じない高い耐屈曲性)と、十分な耐熱性とが求められる。そして、十分な耐熱性と、高い機械的強度とを兼ね備えた基材を与える樹脂として、ポリイミド樹脂がある。しかしながら、樹脂は、金属やセラミックスに比べて熱伝導率が数桁低い。そのため、ポリイミド樹脂製の基材を備えた定着ベルトは、ヒータからの熱をトナーに効率よく伝えるという点では金属製やセラミック製の基材を備えた定着ベルトと比較して不利といえる。すなわち、ポリイミド樹脂製の基材を備えた定着ベルトにおいては、プリント速度のより一層の高速化やヒータへの熱供給に要する消費電力のより一層の低減(省エネ化)、及び、定着装置のより一層の小型化といった要求を満たすためには、その厚さ方向の熱伝導性を向上させることが重要となる。
【0005】
ポリイミド樹脂を基材とする定着ベルトの熱伝導性を高めることにより、消費電力の低減、定着速度の高速化、定着温度の低温化等を達成させるために、熱伝導性に優れた無機フィラーを含有させることが開示されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、高い熱伝導率を有する基材を得るためには、基材中の当該フィラーの含有量を高める必要がある。そして、当該フィラーの基材中の含有量を高めた場合、強度に優れるポリイミド樹脂をバインダー樹脂として用いたとしても、基材の機械的強度が低下することがある。すなわち、特許文献2の各実施例に示されているように、ポリイミド基材中の、カーボンナノチューブの含有率を高めた場合、当該ポリイミド基材の機械的強度が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-80580号公報
【特許文献2】特開2004-123867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の一態様は、厚さ方向に高い熱伝導率を有し、かつ、周方向及び周方向に直交する方向に高い引張強度を有するエンドレス形状の電子写真用ベルトの提供に向けたものである。また、本開示の一態様は、高品位な電子写真画像を形成することができる定着装置及び電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。更に、本開示の一態様は、厚さ方向に高い熱伝導率を有し、かつ、周方向及び周方向の直交する方向に高い引張強度を示すエンドレス形状のポリイミド膜を与え得るワニスの提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、基材を具備しているエンドレス形状の電子写真用ベルトであって、基材を有し、該基材は、ポリイミド樹脂及びカーボンナノチューブを含み、該基材における該カーボンナノチューブの含有量が、ポリイミド樹脂の全体積に対し、15体積%以下であり、該基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度が、200MPa以上であり、かつ、該基材の厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上である電子写真用ベルトが提供される。
【0010】
本開示の他の一態様によれば、定着ベルトと、該定着ベルトに対向して配置された加圧用回転体とを具備し、該定着ベルトが、上記の電子写真用ベルトである定着装置が提供される。本開示の他の一態様によれば、上記の定着装置を具備する電子写真画像形成装置が提供される。本開示の更に他の一態様によれば、ポリアミック酸と、ポリアミック酸の溶媒と、カーボンナノチューブと、該溶媒との表面張力差が4mN/m以上17mN/m以下である化合物とを含むワニスが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、厚さ方向に高い熱伝導率を有し、かつ、周方向及び周方向に直交する方向に高い引張強度を有するエンドレス形状の電子写真用ベルトを得ることができる。また、本開示の一態様によれば、高品位な電子写真画像を形成することができる定着装置及び電子写真画像形成装置を得ることができる。更に、本開示の一態様は、厚さ方向に高い熱伝導率を有し、かつ、周方向及び周方向の直交する方向に高い引張強度を示すエンドレス形状のポリイミド膜を与えるワニスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施例に用いた定着ベルトの概略断面図である。
【
図2】本実施例に用いた定着装置の概略断面図である。
【
図3】本実施例に用いた電子写真画像形成装置の概略断面図である。
【
図4】本実施例の一例に係る基材のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態は本開示を実施するための一例であって、本開示は本実施形態に限定されるものではない。
本開示の一態様に係る電子写真用ベルトは、エンドレス形状を有する、ポリイミド樹脂を含む基材を有する。該基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度が、200MPa以上であり、より好ましくは230MPa以上である。このような引張強度を備えることにより、電子写真用ベルトとして使用される際の屈曲に対する耐久性が十分となる。
また、該基材はカーボンナノチューブ(以降、「CNT」と記載する場合がある。)を含み、該ポリイミド樹脂の全体積に対するCNTの占める割合は、15体積%以下である。基材中におけるCNTの量を15体積%以下に抑えることで、ポリイミド樹脂を含む基材に上記の引張強度を担持させ得る。
【0014】
一方、基材は、その厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上であり、より好ましくは1.0W/m・K以上である。基材の厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上であることにより、電子写真用ベルト、特に定着ベルトとして使用される際に、ヒータからの熱を効率的に被加熱対象である未定着トナーに伝えることができる。
【0015】
ここで、本開示の一態様に係る基材は、周方向及び周方向に直交する方向の引張強度を200MPa以上とする観点から、CNTの含有量をポリイミド樹脂に対して15体積%以下に抑制している。通常、この程度のCNTの含有量では、基材の厚み方向の熱伝導率を上記の範囲内とすることが困難である。しかしながら、本発明者らの検討の結果、CNTを配合したポリイミド基材の反射X線回折法によって検出されるX線回折ピーク強度比I(002)/I(100)が35以下とした場合、CNTのポリイミド樹脂に対する含有割合が15体積%以下でありながら、厚さ方向の熱伝導率が0.9W/m・K以上であるような基材が得られることを見出した。ここで、I(002)はCNTの(002)結晶面に由来する回折ピークの強度であり、I(100)はCNTの(100)結晶面に由来する回折ピークの強度である。
【0016】
基材の表面を反射X線回折法で測定したときに、カーボンナノチューブの(100)結晶面に由来する回折ピークの強度をI(100)とし、前記カーボンナノチューブの(002)結晶面に由来する回折ピークの強度をI(002)としたとき、I(002)/I(100)が35以下であることで、基材の厚さ方向の熱伝導率を0.9W/m・K以上とすることができる理由を本発明者らは以下に推測している。
CNTを含むポリイミド基材においては、CNTは基材の面内方向に並びやすい。CNTは自身の長手方向に熱を伝えやすい性質を持っており、CNTが面内方向に並んだ基材では、熱伝導率は面内方向には高く、基材の厚さ方向には低い。そして、X線回折ピーク強度I(002)は、面内方向に並んだCNT量に比例する。そのため、X線回折ピーク強度I(002)が強い基材は、CNTの多くが面内方向に並んでいることとなる。そのため、基材の厚さ方向の熱伝導率は低くなる。反対に、CNTの向きが基材の厚さ方向に向くほど、X線回折ピーク強度I(002)は弱くなる。そのため、X線回折ピーク強度I(002)は弱いほど、基材の厚さ方向の熱伝導率は高くなる。
【0017】
ところで、I(002)はCNTの配合量や基材厚みの影響を受ける可能性がある。一方で、I(100)はCNTを構成する炭素六員環構造に由来するため、基材中のCNTの配向方向には影響を受けにくい。よって、I(100)を基準としたI(002)のX線回折ピーク強度比I(002)/I(100)をとることで、CNTの配合量や基材厚みの影響を排除したかたちでCNTの基材中での配向状態の指標とすることができる。
【0018】
以上から、X線回折ピーク強度比I(002)/I(100)が35以下であるポリイミド基材は、基材の面内方向に並びやすいCNTが厚さ方向に向いた状態になっていると言える。そのため、X線回折ピーク強度比I(002)/I(100)が35以下であるポリイミド基材は、X線回折ピーク強度比I(002)/I(100)が35より大きいポリイミド基材と比較して、厚さ方向に高い熱伝導率を持つこととなる。
【0019】
ここで、本開示におけるCNTは、そのラマン分光スペクトルにおけるGバンドの強度gと、Dバンドの強度dとの比(g/d)が10以上であり、より好ましくは、15以上である。詳細については後述するが、g/d比が小さいCNTは、sp2炭素から構成されるグラファイト構造に欠陥を多く含むため、格子振動が阻害されてCNT自身の熱伝導率が低くなる。したがって、基材中のCNTの配向状態、すなわちX線回折ピーク強度比I(002)/I(100)の値によらず、熱伝導率を上記の範囲内とすることができない。
【0020】
次にCNTがポリイミド基材の厚さ方向に向いた状態を得る方法について説明する。具体的には、CNTを分散させたワニス(「ポリイミド前駆体溶液」とも呼ぶ。)に、予め特定の有機化合物を少量配合する。ワニスの膜を加熱により脱水環化(イミド化)させてポリイミド樹脂を成膜させる際に、膜の面内方向に並びやすいCNTが、有機化合物によって厚さ方向に効果的に乱された状態で固化されるため、少ないCNTの配合割合でも厚さ方向に高い熱伝導率を付与できる。より具体的には、CNTを分散させたワニスに、予め2,4-ジメチル-3-ペンタノンや2-メチルスルホニルエタノール、o-クロロフェノール等の有機化合物を少量配合する。そのメカニズムは定かではないが、以下のようではないかと考えられる。ワニスの膜を加熱して溶媒を蒸発させる過程において、これら有機化合物の蒸発により溶液の気液界面に微視的な表面張力差が生じ対流を生み出す。この対流により膜の面内方向に並んでいたCNTが厚さ方向に配向されるものと考えられる。
【0021】
すなわち、本開示におけるポリイミド樹脂を含む基材は、ポリアミック酸と、ポリアミック酸の溶媒と、CNTと、溶媒との表面張力差が4mN/m以上17mN/m以下である化合物と、を含むワニスの膜をイミド化することによって得ることができる。
【0022】
本開示におけるポリイミド樹脂を含む基材の厚みは、40μm以上150μm以下が好ましく、より好ましくは、70μm以上100μm以下である。40μm以上であることで、CNTの面内配向が抑制でき、厚さ方向の熱伝導率を高めやすくなる。また、150μm以下であることで、屈曲に対して十分な耐久性を有し得る。
【0023】
[ポリイミド樹脂]
本実施形態に係る電子写真用ベルトの基材として使用するポリイミド樹脂は、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの等モル量を非プロトン系の極性有機溶媒中で反応させることにより、前駆体樹脂としてのポリアミック酸(以下、「ポリイミド前駆体」とも呼ぶ。)を生成して、この可溶性の前駆体溶液の段階で所望の形状に加工した後、これを加熱により脱水環化(イミド化)することによって製造できる。
【0024】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、これらに限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が挙げられる。これら例示の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、いずれか1種の化合物を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
芳香族ジアミンとしては、これらに限定されないが、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。これら例示の芳香族ジアミンは、いずれか1種の化合物を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
なかでも、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンとのポリイミド前駆体を用いて得られるポリイミド樹脂は、特に高い引張強度と靭性を有し得ることから好ましい。
【0027】
極性有機溶媒としては、その官能基が芳香族テトラカルボン酸二無水物又は芳香族ジアミンとほとんど反応しない双極子を有するものが挙げられる。例えば、これらに限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでもNMP及びDMFからなる群より選択される少なくとも1種の場合が好ましい。
【0028】
[カーボンナノチューブ]
ポリイミド樹脂の熱伝導性を向上させる熱伝導性粒子(フィラー)としては、カーボンナノチューブが最も好ましい。カーボンナノチューブは、グラフェンシートを円筒状に丸めた構造をもつ、ナノサイズの円筒状カーボンである。グラフェンはベンゼン環がsp2結合によって隙間なく敷き詰まった構造であり、更にカーボンナノチューブは円筒構造という端のない特徴的な構造を有することから、熱伝導のキャリアである格子振動(フォノン)の散乱が抑制されることで非常に高い熱伝導性を示す。そのため、高熱伝導性の無機フィラーに比べて、少量の添加で樹脂の熱伝導性を向上することが可能となる。
【0029】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも呼ぶ。)の製造法は限定されないが、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学気相成長法などの中でも、収率が高く大量合成が可能な点や不純物が少ないなどといった面で化学気相成長法が最も好ましく用いられ得る。
【0030】
より好適に用いられるCNTは、熱伝導性に優れる点から、化学気相成長法(CVD法)によって製造されたマルチウォールカーボンナノチューブである。その理由としては、CNTの表面に欠陥が少ないためである。CNTの表面は、ベンゼン環がすべて隣り合うように結合されたシート構造(グラファイト構造)であり、理論的にはsp2炭素から構成される。しかし、製造法によってsp2炭素だけでなく、一部分がsp3炭素を有する場合がある。sp3炭素には水素、酸素、窒素などの原子が結合しているが、該部分が欠陥と呼ばれている。熱はCNT上では前記グラファイト構造を伝導するため、欠陥が多い場合には、熱の伝達が阻害されることになる。
【0031】
欠陥が少ないCNTと欠陥が多いCNTを見分ける方法として、ラマン分光スペクトルのg/d比を相対的に比較する手法がある。g/d比のgとは、ラマン分光スペクトルにおけるGバンド(1590cm-1付近)のピーク強度であり、前記グラファイト構造に由来するピーク強度である。また、dとは、Dバンド(1350cm-1付近)のピーク強度であり、欠陥由来のピーク強度である。g/d比が大きい(Dバンドの強度に対するGバンドの強度が大きい)場合、そのCNTは欠陥が少ないCNTと決定することが出来る。本発明の好ましいCNTは、g/d比が10以上であり、更に好ましいCNTは、g/d比が15以上である。
【0032】
CNTの平均繊維径は10nm以上200nm以下が好ましい。平均繊維径が10nm以上であることにより、CNTの比表面積の過度の増加を抑え、CNT同士が凝集することを防止し得る。その結果、CNTをポリイミド樹脂中により良く分散させ得る。その結果、基材の厚さ方向にCNTによる熱伝導パスをより確実に形成することができる。また、基材中にCNTの凝集物が混入することを抑制できるため、当該凝集物に応力が集中することによる基材の破断を防止し得る。一方、平均繊維径が200nm以下であることにより、基材中のCNTの含有量を15体積%以下とした場合においても、十分な本数のCNTを基材中に存在させ得る。その結果、基材の厚さ方向にCNTによる熱伝導パスをより確実に形成し得る。
【0033】
また、CNTの繊維長さは、好ましくは30μm以下である。繊維長さが30μm以下のCNTを用いることで、基材の厚みが例えば100μmと薄い場合であっても、基材の表面性に影響を与えることを防止し得る。
【0034】
[有機化合物]
本実施形態では、ポリイミド樹脂の膜(ベルト基材)中においてCNTが膜の面方向に配向しやすいことを鑑み、それを抑制して膜の厚さ方向にCNTが向きやすくなるように、ポリイミド前駆体溶液に特定の有機化合物を加える。より具体的には、該溶媒との表面張力差が4mN/m以上17mN/m以下の有機化合物である。この化合物は、前記ワニスの全質量に対し、0.1質量%以上6.0質量%以下の割合で配合されている場合が好ましい。化合物としてはこれらに限定されないが、エチレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-ブタノール、ジイソブチルアミン、3’-ニトロアセトフェノン、5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール、フルフリルアルコール、o-クロロフェノール、2-ヒドロキシエチルメチルスルフォン、2,4-ジメチル-3-ペンタノンなどが挙げられる。これらの化合物はいずれか1種で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
該有機化合物は、ポリイミド前駆体溶液の膜の焼成中には膜中に残存し対流を生じさせる必要があるが、焼成後は蒸発し膜中に残らず膜強度を低下させないことが好ましい。本発明者らの検討によれば、当該有機化合物としては、その沸点が120℃以上350℃以下のものが好ましく、特には、沸点が140℃以上300℃以下のものが好ましい。沸点が上記の温度範囲内にある有機化合物は、ポリイミド前駆体溶液の膜の焼成の初期段階において当該膜から蒸発することを防止することができる。その結果として、当該膜中におけるCNTの面内方向の配向をより確実に乱すことが可能となる。また、沸点が350℃以下の有機化合物を用いることで、焼成後のポリイミド膜中に当該有機化合物が過度に残留することを防止し得る。
【0036】
[定着ベルト]
図1は、本実施形態に係る定着ベルトの概略断面図である。定着ベルト1においては、上記により説明したポリイミド樹脂からなる基材1aと、少なくとも基材1aの外周面側にフッ素樹脂からなる離型層1cとを有している。
【0037】
離型層1cはフッ素樹脂で構成されており、フッ素樹脂の有する低い表面エネルギーによってトナーの付着を防止する役割を果たす。離型層としてのフッ素樹脂層として、例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの樹脂をチューブ状に成形したものが用いられる。上記例示列挙した材料中、成形性やトナー離型性の観点からPFAが好ましい。フッ素樹脂層の厚みは、50μm以下とするのが好ましい。積層した際に下層のシリコーンゴム弾性層の弾性を維持し、定着ベルトとしての表面硬度が高くなりすぎることを抑制できるからである。フッ素樹脂チューブの内面は、予め、ナトリウム処理やエキシマレーザ処理、アンモニア処理等を施すことで、接着性を向上させることが出来る。本実施例においては、押し出し成形で得られた厚み20μmのPFAチューブを使用した。チューブ内面は、後述する接着剤との濡れ性を向上させるためアンモニア処理が施されている。
【0038】
更に、基材1aと離型層1cの中間層としてシリコーンゴムからなる弾性層1bを付加的に設けてもよい。シリコーンゴム弾性層1bは、定着時にトナー画像と用紙の凹凸に対して均一な圧力を与えるために定着部材に担持させる弾性層として機能する。かかる機能を発現させる上で、シリコーンゴム弾性層1bの材料としては、加工が容易である、高い寸法精度で加工できる、加熱硬化時に反応副生成物が発生しないなどの理由から、付加反応架橋型の液状シリコーンゴムを用いるのが好ましい。また、後述するフィラーの種類や添加量に応じて、その架橋度を調整することで、弾性を調整することができるからである。
【0039】
一般に、付加反応架橋型の液状シリコーンゴムは、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン、及び架橋触媒として白金化合物が含まれている。
ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンは白金化合物の触媒作用により、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン成分のアルケニル基との反応によって架橋構造を形成させる。
【0040】
シリコーンゴム弾性層1bは、定着ベルトに熱伝導性の向上、補強、耐熱性の向上等のためにフィラーを含んでいてもよい。
【0041】
特に、熱伝導性を向上させる目的では、フィラーとしては高熱伝導性であることが好ましい。具体的には、無機物、特に金属、金属化合物等を挙げることができる。
高熱伝導性フィラーの具体例は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO2)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。
これらは単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。高熱伝導性フィラーの平均粒径は、取り扱い上、及び分散性の観点から1μm以上50μm以下が好ましい。
また、形状は球状、粉砕状、板状、ウィスカ状などが用いられるが、分散性の観点から球状のものが好ましい。
【0042】
定着ベルトの表面硬度への寄与、及び定着時の未定着トナーへの熱伝導の効率から、シリコーンゴム弾性層1bの厚みの好ましい範囲は、100μm以上500μm以下、特に、200μm以上400μm以下が好ましい。
【0043】
本実施例においては、高熱伝導性フィラーとしてアルミナを使用し、弾性層1bの熱伝導率は1.0W/mK、厚みは300μmとした。
【0044】
[電子写真用定着装置]
この定着ベルトを用いた電子写真用定着装置の例を以下に説明する。
図2は、本開示の一態様に係る定着装置100の概略断面図である。定着装置100は、エンドレス形状の定着ベルト1と、該定着ベルトに対向配置され、該定着ベルトと共に定着ニップ部14を形成する加圧ローラ(加圧用回転体)6を有する。そして、定着ベルト1として、本開示の一態様に係る電子写真用ベルトが装着されている。
【0045】
2は加熱体としての定着ヒータであり、4は耐熱性を有するフィルムガイド兼ヒータホルダである。定着ヒータ2は、フィルムガイド兼ヒータホルダ4の下面に該フィルムガイド兼ヒータホルダ4の長手に沿って固定されており、定着ベルト1とその加熱面が摺動可能な構成とされている。そして、定着ベルト1はこのフィルムガイド兼ヒータホルダ4に若干の自由度を持って外嵌されている。フィルムガイド兼ヒータホルダ4は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂で形成されており、定着ヒータ2を保持するとともに定着ベルト1を記録材Pと分離させるための形状にする役割を果たしている。加圧ローラ6は、ステンレス製の芯金上に、厚み約3mmのシリコーンゴム層、更に厚み約40μmのPFA樹脂チューブが順に積層された多層構造とされている。この加圧ローラ6の芯金の両端部が装置フレーム13の不図示の奥側と手前側の側板間に回転可能に軸受保持されている。この加圧ローラ6の上側に、定着ヒータ2、フィルムガイド兼ヒータホルダ4、定着ベルトステイ5、定着ベルト1を備えた定着ユニットが設置される。この定着ユニットは、定着ヒータ2側を下向きにして加圧ローラ6に平行に設置されている。定着ベルトステイ5の両端部は不図示の加圧機構によりその一端側が156.8N(16kgf)、総圧313.6N(32kgf)の力で加圧ローラ6に付勢されている。その結果、定着ヒータ2の下面(加熱面)を、定着ベルト1を介して加圧ローラ6の弾性層に抗して所定の押圧力をもって圧接させ、ガイド部材7にガイドされ導入された記録材P上における、トナー画像tの定着に必要な所定幅の定着ニップ部14が形成されている。定着ニップ部14を出た記録材Pは定着ベルト1から曲率分離して定着排紙ローラ対8により定着装置100の外へ送出される。
3は、温度検知手段としてのサーミスタである。サーミスタ3(ヒータ温度センサ)は、熱源である定着ヒータ2の裏面(加熱面とは反対側の面)に設置され、定着ヒータ2の温度を検知する機能を担っている。加圧ローラ6は矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。これと圧接された関係にある定着ベルト1は加圧ローラ6によって従動し所定の速度で回転する。このとき、定着ベルト1の内面が定着ヒータ2の下面に密着して摺動しながらフィルムガイド兼ヒータホルダ4の外回りを矢印の方向に従動回転状態になる。
【0046】
定着ベルト1内面には後述する半固形状潤滑剤が塗布され、フィルムガイド兼ヒータホルダ4と定着ベルト1内面との摺動性を確保している。サーミスタ3は、定着ヒータ2の裏面に接触するよう配置され、A/Dコンバータ9を介して制御手段としての制御回路部(CPU)10に接続されている。この制御回路部(CPU)10はそれぞれのサーミスタからの出力を所定の周期でサンプリングしており、このように得られた温度情報を温度制御に反映させる構成となっている。つまり、制御回路部(CPU)10は、サーミスタ3の出力をもとに、定着ヒータ2の温調制御内容を決定し、電力供給部であるヒータ駆動回路部11によって、定着ヒータ2の温度が目標温度(設定温度)となるように定着ヒータ2への通電を制御する役割を果たしている。また、制御回路部(CPU)10は、後述する定着ベルト寿命見積もりシーケンスの制御をする役割も果たしており、加圧ローラ6の駆動モータ12とA/Dコンバータ9を介して接続されている。定着ヒータは、アルミナの基板と、この上に、銀・パラジウム合金を含んだ導電ペーストをスクリーン印刷法によって均一な10μm程度の厚さの膜状に塗布された抵抗発熱体を有している。更に、この上に、耐圧ガラスによるガラスコートが施された、セラミックヒータとされている。
【0047】
[電子写真画像形成装置]
上記定着ベルトを用いた定着装置を備える電子写真画像形成装置の例を以下に説明する。
図3は、本実施形態に係る電子写真画像形成装置の概略断面図である。101は像担持体としての感光ドラムであり、矢印の反時計方向に所定のプロセス速度(周速度)で回転駆動される。感光ドラム101はその回転過程で帯電ローラ等の帯電装置102により所定極性に帯電処理される。次いで、その帯電処理面にレーザ光学系110から出力されるレーザ光103により、入力された画像情報に基づき露光処理される。レーザ光学系110は不図示の画像読み取り装置等の画像信号発生装置からの目的画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調(オン/オフ)したレーザ光103を出力して感光ドラム101面を走査露光するものである。その結果、この走査露光により感光ドラム101面には画像情報に対応した静電潜像が形成される。109はレーザ光学系110からの出力レーザ光103を感光ドラム101の露光位置に偏向させるミラーである。そして、感光ドラム101上に形成された静電潜像は、現像装置104のうちのイエロー現像器104Yによりイエロートナーにて可視像化される。このイエロートナー像は感光ドラム101と中間転写ドラム105との接触部である1次転写部T1において中間転写ドラム105面に転写される。なお、感光ドラム101面上に残留するトナーはクリーナ107によりクリーニングされる。上記のような帯電・露光・現像・一次転写・清掃のプロセスサイクルが、マゼンタトナー像(現像器104Mが作動)、シアントナー像(現像器104Cが作動)、ブラックトナー像(現像器104Kが作動)を形成すべく、同様に繰り返される。このようにして中間転写ドラム105上に順次重ねて形成された各色のトナー像は、転写ローラ106との接触部である二次転写部T2において、記録材P上に一括して二次転写される。中間転写ドラム105上に残留するトナーはトナークリーナ108によりクリーニングされる。なお、このトナークリーナ108は、中間転写ドラム105に対し接離可能とされており、中間転写ドラム105をクリーニングする時に限り中間転写ドラム105に接触した状態となるように構成されている。また、転写ローラ106も、中間転写ドラム105に対し接離可能とされており、二次転写時に限り中間転写ドラム105に接触した状態となるように構成されている。二次転写部T2を通過した記録材Pは、画像加熱装置としての定着装置100に導入され、その上に担持した未定着トナー像の定着処理(画像加熱処理)を受ける。そして、定着処理を受けた記録材Pは、機外に排出されて、一連の画像形成動作が終了する。
【実施例0048】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例によって限定されるものではない。
まず、物性評価方法について説明する。
【0049】
[熱伝導率]
ポリイミド基材の膜厚方向の熱伝導率の測定には、周期加熱法(温度波熱分析法)熱拡散率測定装置(商品名:FTC-1、アドバンス理工社製)を用いて25℃における熱拡散率を測定した。ここで熱伝導率は、得られた熱拡散率と、別途測定した密度と比熱とを掛け合わせることによって算出した。
【0050】
[引張強度]
ポリイミド基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度は、日本産業規格(JIS K)-K-7161:2014に基づき、精密万能試験機(商品名:オートグラフAG-X、島津製作所社製)を用いて、引張速度5mm/min、つかみ具間距離40mm、23℃にて測定した。
【0051】
[g/d比]
カーボンナノチューブのラマン分光スペクトルにおいて、グラファイト構造に起因する1590cm-1のバンド(Gバンド)のピークの高さ(強度)gと、グラファイト構造の欠陥に起因する1350cm-1のバンド(Dバンド)のピーク高さ(強度)dの比g/dを算出した。ラマン分光測定には、3D顕微レーザーラマン分光装置(商品名:Nanofinder30、東京インスツルメンツ社製)を用いて、励起レーザ光源532nm、波数範囲900~2000、回折格子1200/mm、露光時間30sの条件にて、カーボンナノチューブのラマン分光スペクトルを取得した。
【0052】
[反射X線回折法]
ポリイミド基材中のカーボンナノチューブの配向性の評価は、X線回折装置(商品名:MiniFlex600、リガク社製)を用いて、反射法による試料からのX線回折パターンとその回折強度を測定することにより行った。X線回折の測定条件は、以下の通りとした。
管電圧/電流出力:40kV/15mA
X線源:CuKα(0.154184nm)
Kβフィルター:Niフィルター
走査軸:θ/2θ連動
2θ走査範囲:3°~60°
θ/2θ軸ステップ角度:0.005°(2θ)
図4は上記の測定により得られるX線回折パターンの一例である。2θ=25~30°に現れるカーボンナノチューブの(002)結晶面に由来する回折ピークの最大強度をI(002)とし、2θ=40~45°に現れるカーボンナノチューブの(100)結晶面に由来する回折ピークの最大強度をI(100)として、それらの比であるI(002)/I(100)をポリイミド基材中のカーボンナノチューブの配向性の指標とした。なお、I(002)及びI(100)は、ベースラインの影響を排除するため、2θ=59~60°におけるX線回折強度を基準として差し引いた値を用いることとした。
【0053】
次に、実施例と比較例について具体的に説明する。
[実施例1]
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p-フェニレンジアミンと、を、等モル量N-メチル-2-ピロリドン(NMP、表面張力33.8mN/m)中で反応させて、固形分濃度18質量%、粘度6Pa・sのポリイミド前駆体(ポリアミック酸)のNMP溶液(以降、「ポリイミド前駆体溶液」ともいう)を調製した。得られたポリイミド前駆体溶液に、カーボンナノチューブ(商品名:VGCF-H;昭和電工社製、平均繊維径=150nm、平均繊維長=8μm、g/d=10~18)を固形分体積比率で15体積%となるように添加した。更に有機化合物として、2,4-ジメチル-3-ペンタノン(表面張力22.9mN/m)をポリイミド前駆体溶液に対して3質量%となるように添加した。そして、プラネタリーミキサーにて60分間分散させて、本実施例に係るワニスを得た。
【0054】
得られたワニスを、外径70mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒状芯体の表面にリングコート法を用いて塗布した。この円筒状芯体には、表面に予めセラミックスコーティングを施すことで、ベルト成形後の脱型がしやすいようにしておいた。
【0055】
乾燥工程として、該円筒状芯体を回転速度60rpmで回転させながら、その外表面を近赤外線ヒータにて温度120℃になるように保ちながら30分間加熱した。更に、温度150℃で20分間、温度200℃で30分間加熱することでNMPをほぼ完全に揮発させて、ワニスの塗膜を固化させた。
【0056】
続いて、該塗膜中のポリイミド前駆体のイミド化工程として、熱風循環炉内に静置して温度250℃で30分間、引き続いて温度350℃で30分間加熱してイミド化反応を進行させ、硬化物であるポリイミド膜を形成した。次いで、温度25℃まで冷却した後、ポリイミド膜を円筒状芯体から脱型し、厚さ80μmのエンドレス形状の基材を得た。
【0057】
得られた基材について、前記した方法に従って引張強度、厚さ方向の熱伝導率、及びX線回折ピーク強度比を測定した。その結果、表2に示す通り、引張強度は、209MPa、厚さ方向の熱伝導率は、1.64W/m・K、であったX線回折ピーク強度比は、22.3であった。
【0058】
更に、以下の基準に基づき、総合的なランクの評価を行った。
(評価)
・ランクA:機械強度(引張強度)200MPa以上、熱伝導率1.0W/m・K以上のいずれの項目も満たす基材であった。
・ランクB:機械強度(引張強度)200MPa以上、熱伝導率0.9W/m・K以上のいずれの項目も満たす基材であった。
・ランクC:前記項目のいずれかの項目を満たさない基材であった。
【0059】
[実施例2~11]
CNTの添加量、有機化合物の種類及び該有機化合物の添加量の少なくとも一つを表1に記載したように変更した以外は実施例1に係るワニスと同様にして各実施例に係るワニスを調製した。そして、各実施例に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0060】
[実施例12~14]
有機化合物の種類及びその添加量を表1に記載したように変更した以外は実施例1に係るワニスと同様にして各実施例に係るワニスを調製した。そして、各実施例に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0061】
[比較例1~2]
有機化合物は添加せず、CNTの添加量を表1に記載したように変更した以外は、実施例1に係るワニスと同様にして比較例1及び比較例2に係るワニスを調製した。そして、比較例1又は比較例2に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0062】
CNTを固形分体積比率で16体積%添加した比較例1では、熱伝導率は0.9W/m・Kを上回っていた。しかしながら、基材中のCNTの含有量が多いことにより、引張強度が200MPa未満となった。比較例2ではCNTの添加量を13体積%としたことで引張強度が200MPaを上回った。しかしながら、CNTが基材の面内方向に配向していたため、基材の厚さ方向の熱伝導率は0.9W/m・K未満となった。
【0063】
[比較例3~5]
実施例1に係るワニスにおける有機化合物を、表1に記載の化合物とし、また、当該化合物の添加量を表1に記載したように変更した。それら以外は、実施例1に係るワニスと同様にして、比較例3~5に係るワニスを調製した。そして、比較例3、4又は5に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0064】
表2に示すように、比較例3~5に係る基材はいずれも、熱伝導率が0.9W/m・K未満となった。比較例3~4に係る基材については、ワニスに含まれる化合物(グリセリン又はジシクロプロピルケトン)と、溶媒であるNMPとの表面張力差が17mN/mを超えていたためそれらの相溶性が悪く、ワニスの塗膜を加熱して硬化させる際の溶媒を蒸発過程において、当該塗膜中に微視的な表面張力差による対流が生じにくかったものと考えられる。その結果、塗膜の面内方向に並びやすいCNTの向きを、塗膜の膜厚方向に乱す効果が得られにくかったものと推測される。また、比較例5に係る基材については、化合物(ブチルセロソルブ)とNMPとの表面張力差が4mN/mよりも小さかったために、ワニスの塗膜の硬化に際に、当該塗膜中に微視的な表面張力差による対流が生じにくかったものと考えられる。その結果として、塗膜の面内方向に配向してなるCNTの配向方向を、塗膜の厚さ方向に乱す効果が得られにくかったものと推測される。
【0065】
[比較例6]
実施例1に係るワニスにおいて、有機化合物を添加せず、ポリイミド粒子(商品名:P84NT;ダイセル・エボニック社製、粒子径1~10μm)を固形分体積比率で表1に記載の量となるように添加した。それら以外は実施例1に係るワニスと同様にして比較例6に係るワニスを調製した。そして、本比較例に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。表2に示したように、本比較例に係る基材は、厚さ方向の熱伝導率は、0.9W/(m・K)を超えていた。これは、ポリイミド樹脂粒子が、CNTの面内での配向を阻害し、その結果として、CNTが一定程度厚み方向に配向したためであると考えられる。一方、引張強度は、200MPa未満となった。このような引張強度の低下は、基材中の熱伝導性のフィラー(CNT及びポリイミド樹脂粒子)の総量が25体積%(15体積%+10体積%)と多かったことによると考えられる。
【0066】
[比較例7]
実施例1に係るワニスにおいて、有機化合物を添加せず、ボロンナイトライド(商品名:MBN-010T;三井化学社製、平均粒径0.9um)を固形分体積比率で表1に記載の量となるように添加した。それら以外は実施例1に係るワニスと同様にして比較例7に係るワニスを調製した。そして、本比較例に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。表2に示すように、本比較例に係る基材は、厚さ方向の熱伝導率は0.9W/m・Kを大きく上回っているものの、引張強度が200MPa未満となった。このような引張強度の低下は、基材中の熱伝導性のフィラー(CNT及びボロンナイトライド)の総量が30体積%(15体積%+15体積%)と多かったことによると考えられる。
【0067】
[比較例8]
実施例1に係るワニスにおいて、有機化合物を添加せず、かつ、CNTを「VGCF-H」から「TNIM-8」(商品名、Timesnano社製、平均繊維=30~80nm、平均繊維長=10μm以下、g/d=1.6~2.2)に変更した。また、固形分体積比率を表1に記載の量とした。これら以外は、実施例1に係るワニスと同様にして、比較例8に係るワニスを調製した。そして、本比較例に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。表2に示した通り、引張強度は200MPaを上回ったものの、厚さ方向の熱伝導率は、0.9W/(m・K)を大きく下回っていた。
【0068】
[比較例9]
実施例1に係るワニスにおいて、有機化合物を添加せず、かつ、CNTを「VGCF-H」から「Multi-wall L-MWNT-1020」(商品名、NTP社製、平均繊維径=10~20nm、平均繊維長=5μm以上、g/d=1.4~2.4)に変更した。また、固形分体積比率を表1に記載の量とした。これら以外は、実施例1に係るワニスと同様にして、比較例9に係るワニスを調製した。そして、本比較例に係るワニスを用いたこと、及び、焼成後のポリイミド膜の厚さが表2に記載した厚さとなるようにした以外は実施例1と同様にして基材を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。表2に示した通り、引張強度は200MPaを上回ったものの、厚さ方向の熱伝導率は、0.9W/(m・K)を大きく下回っていた。
【0069】
【0070】
【0071】
[定着ベルトとしての評価]
実施例1~14に係る各基材の外周面上にシリコーンゴムからなる弾性層と更にその外周面上にフッ素樹脂からなる離型層を形成することで定着ベルトを作製した。これらの定着ベルトを
図2に係る定着装置に装着し、更に当該定着装置を
図3に係る電子写真画像形成装置に組み込んだ。そして、当該電子写真画像形成装置を用いて、60万枚の電子写真画像の形成を行った。その結果、高品位な電子写真画像を安定的に形成することができた。また、60万枚の電子写真画像の形成の過程で、定着ベルトの基材に亀裂が生じることはなかった。
【0072】
比較例1,6,及び7に係る基材を用いた以外は上記と同様にして定着ベルトを作製した。これらの定着ベルトを用いた以外は上記と同様にして電子写真画像形成装置に組み込んだ。そして、当該電子写真画像形成装置を用いて60万枚の電子写真画像の形成を行った。その結果、画像形成枚数が60万枚に至る前に、定着ベルトの基材には、屈曲疲労により亀裂が生じた。
また、比較例2、3、4、5、8及び9に係る基材を用いた以外は上記と同様にして定着ベルトを作製した。これらの定着ベルトを用いた以外は上記と同様にして電子写真画像形成装置に組み込んだ。そして、当該電子写真画像形成装置を用いて60万枚の電子写真画像の形成を行った。その結果、いずれの定着ベルトについても、60万枚の画像形成の過程で基材に亀裂が生じることはなかった。しかしながら、厚み方向の熱伝導率が低かったため、電子写真画像の定着性が不十分であった。
【0073】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
[構成1]
エンドレス形状の電子写真用ベルトであって、
基材を有し、
該基材は、ポリイミド樹脂及びカーボンナノチューブを含み、
該基材における該カーボンナノチューブの含有量が、ポリイミド樹脂の全体積に対し、15体積%以下であり、
該基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度が、200MPa以上であり、かつ、
該基材の厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上であることを特徴とする電子写真用ベルト。
[構成2]
前記基材の表面を反射X線回折法で測定したとき、
前記カーボンナノチューブの(100)結晶面に由来する回折ピークの強度をI(100)とし、前記カーボンナノチューブの(002)結晶面に由来する回折ピークの強度をI(002)としたとき、I(002)/I(100)が35以下である構成1に記載の電子写真用ベルト。
[構成3]
前記カーボンナノチューブのラマン分光スペクトルにおけるGバンドの強度gと、Dバンドの強度dとの比(g/d)が、10以上である構成1又は2に記載の電子写真用ベルト。
[構成4]
前記基材が、ポリアミック酸と、該ポリアミック酸の溶媒と、前記カーボンナノチューブと、該溶媒との表面張力差が4mN/m以上17mN/m以下である化合物とを含むワニスの硬化物を含む構成1~3のいずれかに記載の電子写真用ベルト。
[構成5]
前記化合物が、前記ワニスの全質量に対し、0.1質量%以上6.0質量%以下の割合で配合されている構成4に記載の電子写真用ベルト。
[構成6]
前記ポリアミック酸の溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒である構成4又は5に記載の電子写真用ベルト。
[構成7]
前記化合物が、エチレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-ブタノール、ジイソブチルアミン、3’-ニトロアセトフェノン、5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール、フルフリルアルコール、o-クロロフェノール、2-ヒドロキシエチルメチルスルフォン、2,4-ジメチル-3-ペンタノンからなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物である構成4~6のいずれかに記載の電子写真用ベルト。
[構成8]
前記基材の厚さが40μm以上150μm以下である構成1~7のいずれかに記載の電子写真用ベルト。
[構成9]
前記基材の外周面上に離型層としてのフッ素樹脂層を有する構成1~8のいずれかに記載の電子写真用ベルト。
[構成10]
前記基材と前記離型層との間に弾性層を更に有する構成9に記載の電子写真用ベルト。
[構成11]
前記電子写真用ベルトが定着ベルトである構成1~10のいずれかに記載の電子写真用ベルト。
[構成12]
エンドレス形状を有する定着ベルトと、該定着ベルトに対向して配置された加圧用回転体とを具備する定着装置であって、
該定着ベルトは、エンドレス形状の基材を有する、エンドレス形状の電子写真用ベルトであり、
該基材は、ポリイミド樹脂及びカーボンナノチューブを含み、
該基材における該カーボンナノチューブの含有量が、ポリイミド樹脂の全体積に対し、15体積%以下であり、
該基材の周方向及び周方向に直交する方向の引張強度が、200MPa以上であり、かつ、該基材の厚さ方向の熱伝導率が、0.9W/m・K以上である、ことを特徴とする定着装置。
[構成13]
電子写真画像形成装置であって、構成12に記載の定着装置を具備する、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
[構成14]
ポリアミック酸と、該ポリアミック酸の溶媒と、カーボンナノチューブと、該溶媒との表面張力差が4mN/m以上17mN/m以下である化合物とを含むことを特徴とするワニス。
[構成15]
前記ワニスが、前記ワニスの全質量に対し、前記化合物を、0.1質量%以上6.0質量%以下の割合で含む構成14に記載のワニス。
[構成16]
前記ポリアミック酸の溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒である構成14又は15に記載のワニス。
[構成17]
前記化合物が、エチレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-ブタノール、ジイソブチルアミン、3’-ニトロアセトフェノン、5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール、フルフリルアルコール、o-クロロフェノール、2-ヒドロキシエチルメチルスルフォン、2,4-ジメチル-3-ペンタノンからなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物である請求項14~16のいずれかに記載のワニス。