(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022192014
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】接着型ベイパーチャンバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
F28D15/02 106G
F28D15/02 106B
F28D15/02 106C
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083802
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】63/211,156
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】111102092
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517224908
【氏名又は名称】盟立自動化股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 進昌
(72)【発明者】
【氏名】呂 峻杰
(72)【発明者】
【氏名】蔡 季剛
(57)【要約】
【課題】従来のベイパーチャンバーの製造方法では、プロセスが複雑であると共に、内部の空間を十分に減圧しにくい。
【解決手段】第1の金属シートの内面にリング状ゲル体を形成する塗布ステップと、前記第1の金属シートの内面と前記リング状ゲル体とで画定される空間に作動液を充填する充填ステップと、真空チャンバー内でリング状ゲル体を介して第1の金属シートと第2の金属シートとを接着し、密閉された熱流空間を形成することで、その熱流空間に作動液が配置される半製品を形成する接着ステップと、半製品を固化環境に置き、リング状ゲル体を固化させて封止枠を形成する固化ステップとを含む。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属シートの内面にリング状ゲル体を形成する塗布ステップと、
前記リング状ゲル体と前記第1の金属シートの内面とで囲まれた空間に、作動液を充填する充填ステップと、
前記作動液を収容する密閉された熱流空間を共同で画定するように、リング状ゲル体を用いて、前記第1の金属シートと第2の金属シートとを真空チャンバー内で接着し、半製品を形成する、接着ステップと、
前記半製品を固化環境に置いてリング状ゲル体を固化させ、封止枠を形成する固化ステップと、
を含む、ことを特徴とする、接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項2】
前記塗布ステップの前に、前記第1金属シートの内面に表面処理加工を施すことにより、内面に活性領域を形成する表面処理ステップをさらに含み、前記塗布ステップでは、前記リング状ゲル体が前記活性領域の少なくとも一部を囲み、前記充填ステップでは、前記作動液が前記活性領域と接触している、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項3】
前記表面処理ステップでは、前記表面処理加工がプラズマ表面処理ステップである、請求項2に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項4】
充填ステップにおいて、活性領域に接触することで作動液が平坦化された状態となり、作動液の液面が、リング状ゲル体における第1の金属シートから離間したリング状接続面より低くなる、請求項2に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項5】
前記第1の金属シートの内面には、リング状に配置されている支持枠が配置され、前記塗布ステップでは、リング状ゲル体が前記支持枠に沿って前記内面に形成される、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項6】
前記塗布ステップでは、前記リング状ゲル体は、最後に開始端部と結末端部が接合されるように等量の接着剤を途切れることなく出力する、接着操作を施すことにより形成されるものである、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項7】
前記充填ステップにおいて、作動液の充填態様が、噴霧(spray)態様、ブレード態様、またはスリット塗布態様である、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項8】
前記接合ステップでは、前記リング状ゲル体は、互いに対向面となる2つのリング状接続面が含まれ、前記2つのリング状接続面が、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートにそれぞれ隙間なく接続される、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項9】
前記接合ステップでは、前記真空チャンバーは50Pa以下となる所定の真空度を有し、前記熱流空間が前記所定の真空度を有する、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項10】
前記接合ステップにおいて、前記第1の金属シートは前記第1の押圧機構に配置され、前記第2の金属シートは前記第1の金属シートのリング状ゲル体の方を向くように第2の押圧機構上に配置され、前記第1の押圧機構と前記第2の押圧機構を互いに接続しその内部でガス吸引ステップを行って真空室を形成し、そして、前記第1の金属シートと前記第2の金属シートは、前記第1の押圧機構と前記第2の押圧機構によって互いに押し付けることで、互いに接合されて半製品とされる、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項11】
前記接合ステップにおいて、前記第1の押圧機構および前記第2の押圧機構の内部は、前記ガス吸引ステップにより大気圧値から所定の真空値まで低下する圧力値を有し、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、所定の真空値を有する真空室内に位置して互いに押圧される、請求項10に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項12】
前記接合ステップでは、前記ガス吸引ステップが、互いに異なる複数の吸引速度を有する、請求項11に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項13】
前記接合ステップでは、前記第1の押圧機構および前記第2の押圧機構の少なくとも一方が位置合わせモジュールを含み、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記位置合わせモジュールを介して所定の相対位置に調整されてから、互いに接合される、請求項10に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項14】
前記固化ステップでは、熱固化処理を行うことにより、前記リング状ゲル体を固化して前記封止枠を形成する、請求項1に記載の接着型ベイパーチャンバーの製造方法。
【請求項15】
第1の金属シートと、
前記第1の金属シートに対向し、かつ前記第1の金属シートから間隔をあけて配置された第2の金属シートと、
リング状であり、その対向する2つの側面にそれぞれ配置される2つのリング状接続面を有する密封フレームであって、2つの前記リング状接続面がそれぞれ前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートに隙間なく接続され、密封フレーム、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートが共同で密閉となる熱流空間を規定する、密封フレームと、
前記熱流空間内に配置された作動液と、
を含むことを特徴とする、ベイパーチャンバー。
【請求項16】
前記ベイパーチャンバーは、平坦な形状を呈する、請求項15に記載のベイパーチャンバー。
【請求項17】
前記第1の金属シートと前記第2の金属シートとの間に位置し、封止枠と相まって、第1の金属シートと第2の金属シートとの間の距離を維持する支持構造と、
前記熱流空間内に配置された毛細管構造体と、
を含む、請求項15に記載のベイパーチャンバー。
【請求項18】
前記支持構造は、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの少なくとも一方の内面に配置され、前記支持構造は、前記熱流空間に配置された複数の突起と、前記突起を囲む支持枠とを含み、前記封止枠は前記支持枠に形成される、請求項17に記載のベイパーチャンバー。
【請求項19】
前記第1の金属シートの内面は活性領域を有し、前記封止枠は前記活性領域の少なくとも一部を囲み、前記作動液は前記活性領域と接触している、請求項15に記載のベイパーチャンバー。
【請求項20】
前記第1の金属シートは、前記第2の金属シートと接触しておらず、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートには、貫通孔が形成されていない、請求項15に記載のベイパーチャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベイパーチャンバーに関し、より詳細には、接着型構成を有するベイパーチャンバー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のベイパーチャンバーは、その構成や製造方法が既存技術によって制限されているため、これらの面でさらなる改良を加えることが困難であった。従来のベイパーチャンバーの製造方法は、例えば、大気環境下で2枚の金属板を互いにはんだ付けし、2枚の金属板の一方にガス孔を形成し、このガス孔を通して、2枚の金属板の間の空間からガスを吸引するガス吸引を行い、その後、注入管を通して液体を空間に注入し、ガス孔と注入管とを密閉して空間を封止することにより、従来のベイパーチャンバーを構成する。しかし、従来のベイパーチャンバーの製造方法では、プロセスが複雑であると共に、内部の空間を十分に減圧しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記技術的不備に対して、従来のベイパーチャンバーが有する課題を効果的に改善するために、接着型ベイパーチャンバー及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一態様において、第1の金属シートの内面にリング状ゲル体を形成する塗布ステップと、前記リング状ゲル体と前記第1の金属シートの内面とで囲まれた空間に、作動液を充填する充填ステップと、前記作動液を収容する密閉された熱流空間を共同で画定するように、リング状ゲル体を用いて、前記第1の金属シートと第2の金属シートとを真空チャンバー内で接着し、半製品を形成する、接着ステップと、前記半製品を固化環境に置いてリング状ゲル体を固化させ、封止枠を形成する固化ステップと、を含む接着型ベイパーチャンバーの製造方法を提供する。
【0005】
本発明は、別の態様において、第1の金属シートと、前記第1の金属シートに対向し、かつ前記第1の金属シートから間隔をあけて配置された第2の金属シートと、リング状であり、その対向する2つの側面にそれぞれ配置される2つのリング状接続面を有する密封フレームであって、2つの前記リング状接続面がそれぞれ前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートに隙間なく接続され、密封フレーム、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートが共同で密閉となる熱流空間を規定する、密封フレームと、前記熱流空間内に配置された作動液と、を含むベイパーチャンバーを提供する。
【0006】
そこで、本発明が提供する接着型ベイパーチャンバーの製造方法は、真空チャンバー内でリング状ゲル体を用いて第1の金属シートと第2の金属シートとを接着することにより、熱流空間を低い圧力値(例えば、50Pa以下の値)に維持することができる。そして、ベイパーチャンバーの熱流空間においてガス吸引を行う必要がなく、従来のベイパーチャンバーに関するステップおよび構造を効果的に簡略化することができる。
【0007】
また、本発明が提供する接着型ベイパーチャンバーでは、第1の金属シートと第2の金属シートとが封止枠に対して隙間なく接続されることによって接合され得るので、既存の構造を簡素化し、材料コストおよび製造コストを効果的に低減し、その生産効果を向上させることができる。
【0008】
発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る接着型ベイパーチャンバーの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図1の表面処理ステップを示す透視図である。
【
図6】
図5の線VI-VIに沿ってとられた断面図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る接着型ベイパーチャンバーの透視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る製造方法の塗布ステップを示す透視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る接着型ベイパーチャンバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記より、具体的な実施例で本発明が開示する「接着型ベイパーチャンバー及びその製造方法」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
なお、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」等の用語で各種の部品又は信号を説明する場合があるが、これらの部品又は信号はこれらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は、主として一つの部品と別の部品、又は一つの信号と別の信号を区分するためのものであることが理解されたい。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
[第1の実施形態]
【0011】
図1~
図11を参照して、本発明の第1の実施形態は、接着型ベイパーチャンバー100と、その製造方法S100とを提供するものである。本実施形態に係るベイパーチャンバー100は、製造方法S100を実施することにより製造されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態において、ベイパーチャンバー100は、他の方法を実施することによって製造することができる。
【0012】
さらに、本実施形態を明確に説明するために、以下の説明では、製造方法S100について説明した後、ベイパーチャンバー100の各構成要素の構造および接続関係について説明する。
【0013】
図1ないし
図10に示すように、製造方法S100は、表面処理ステップS110、塗布ステップS130、充填ステップS150、接合ステップS170、および固化ステップS190を順次含む。なお、本実施形態における製造方法S100は、上記ステップS110~S190を実施することにより説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
例えば、本発明の他の実施形態において、ステップS110~S190のいずれか1つは、設計要件に従って調整又は変更され得る(例えば、表面処理ステップS110は省略され得る)。以下の説明では、本実施形態の製造方法S100のステップS110~S190の各々について説明する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、表面処理ステップS110は、第1の金属シート1の内面11に表面処理加工を行うことで、内面11に活性領域12を形成し、活性領域12を介して内面11の親水性を高めることにより実施される。第1金属シート1は平板形状を有し、内面11に対する活性領域12の割合は設計要件に応じて調整または変更可能であり、表面処理ステップは、好ましくはプラズマ表面処理ステップに限定され得るが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態において、表面処理ステップは、プラズマ表面処理ステップとは異なる他のステップを用いて実施することができる。
【0016】
図1及び
図3に示すように、塗布処理ステップS130は、第1金属シート1の内面11にリング状ゲル体3aを形成することにより実施される。リング状ゲル体3aは、好ましくは、活性領域12の少なくとも一部を取り囲む。すなわち、
図3に示すように、リング状ゲル体3aは、活性領域12の全体を囲むことができ、あるいは、
図4に示すように、リング状ゲル体3aは、活性領域12の一部を囲み、活性領域12の別の一部は、リング状ゲル体3aの外側に位置していることができる。
【0017】
具体的には、リング状ゲル体3aは、その対向する2面にそれぞれ配置され、それぞれ第1リング状接続面311及び第2リング状接続面312(
図6に示す)として規定される2つのリング状接続面31を有している。第1のリング状接続面311は、第1の金属シート1の内面11に隙間なく接続されている。なお、2つのリング状接続面31は、実質的に同じ大きさ又は形状を有することができ、本実施形態の用語「リング状」又は「リング形状」は、図面では矩形のリング形状を示し、設計要件に従って変更又は調整することができる。
【0018】
本実施形態の塗布ステップS130では、ゲル体の対向する2つの端部を接続してリング状ゲル体3aを形成するように、ゲル体を同量で連続的に塗布する塗布ステップを実施する。リング状ゲル体3a(または粘着剤)の材料は、高分子連鎖作用を利用して常温下でシール効果を確立できる粘性ポリマーであり、粘性ポリマーは一剤型であっても多剤型であってもよい。さらに、リング状ゲル体3a(又はゲル体)は、放熱面から金属粉を集めて接続できるように、粘性ポリマーに埋め込まれた複数の金属粉(又は第1金属シート1と同一の金属材料)をさらに含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
具体的には、リング状ゲル体3a(またはゲル体)の材料は、好ましくは、はんだを一切含まない、言い換えれば、はんだを用いる、またははんだ付けステップを有する蒸気室の製造方法は、本実施の形態の製造方法S100と異なるものである。
【0020】
図1、
図5、
図6に示すように、充填ステップS150は、リング状ゲル体3aと第1金属シート1の内面11とで共同して囲まれた空間に、作動液4を充填することにより実施される。作動液4は、リング状ゲル体3aの内側に配置され、親水性を有する活性領域12に接触している。具体的には、作動液4は、親水性の活性領域12と接触して平坦化となり、作動液4の外周面は、内面11に対して第1の金属シート1から離れて配置されたリング状ゲル体3aのリング状接続面31(例えば、第2のリング状接続面312)より低くなっている。
【0021】
本実施形態の充填ステップS150では、作動液4をスプレー方式、ブレード方式、またはスリットコーティング方式で充填することにより、作動液4を平坦化(例えば、作動液4の外面が第1金属シート1の内面11と実質的に平行)できるように促進できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1、
図7、
図8に示すように、接合ステップS170は、リング状ゲル体3aを用いて、第1の金属シート1と第2の金属シート2とを真空チャンバー200内で接合することにより、半製品100aを形成し、そこに作動液4を収容する密閉熱流空間Fを共同で画成することにより実施される。
【0023】
なお、本実施形態の接合ステップS170では、リング状ゲル体3aの2つのリング状接続面31を用いて、第1金属シート1および第2金属シート2にそれぞれ隙間なく接続することにより、第1金属シート1と第2金属シート2との間の接続が確立されることに留意すべきである。すなわち、第2の金属シート2は、リング状ゲル体3aの第2のリング状接続面312に隙間なく接続される。
【0024】
さらに、接合ステップS170は、真空チャンバー200内で実施される(例えば、第1金属シート1と第2金属シート2とは、所定の真空値を有する真空チャンバー200内に配置され、互いに押し付けられる)ので、半製品100aの熱流空間Fは所定の真空値を有し、追加的にガス吸引が必要なことはない。真空チャンバー200の所定の真空値は、好ましくは50Pa以下(例えば、所定の真空値は15Pa以下とすることができる)であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の他の実施形態では、真空チャンバー200の所定の真空値は、設計要件に従って調整又は変更することができる。
【0025】
具体的には、本実施形態の真空チャンバー200は、様々な構成で提供可能であり、以下の説明では、本実施形態を明確に説明するために、好ましい一の構成を有する真空チャンバー200について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態の真空チャンバー200は、以下のように提供することができる。第1押圧機構201と第2押圧機構202とが互いに向き合って接続され、その内部がガス吸引処理を行うことで真空チャンバー200が形成されるように実施される。すなわち、第1の押圧機構201および第2の押圧機構202の内部は、ガス吸引ステップを経て、大気圧値から所定の真空値(例えば、圧力値が15Pa以下)へと減少する圧力値を有している。
【0026】
また、ガス吸引ステップは、互いに異なる複数の吸引速度を有し、第1押圧機構201及び第2押圧機構202の少なくとも一方は、位置合わせモジュール203(例えば、水平変位機構)を含むことが好ましく、これにより、第1押圧機構201と第2押圧機構202との相対位置を精密に制御できるようになるが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態において、ガス吸引ステップは、吸引速度の一方のみを有することができ、又は、位置合わせモジュール203を省略することができ、又は、他の構成要素に置き換えることができる。
【0027】
具体的には、本実施形態の接合ステップS170では、第1金属シート1およびその上の部品は第1押圧機構201上に配置され、第2金属シート2は第2押圧機構201上に配置されて第1金属シート1上のリング状ゲル体3aに向かうように配置されている。第1押圧機構201と第2押圧機構202とを接続し、その内部でガス吸引処理を行って真空室200を形成すると、第1押圧機構201と第2押圧機構202とによって第1金属シート1と第2金属シート2が互いに押圧されて接着され、半製品100aを形成することができる。さらに、第1金属シート1と第2金属シート2とは、互いに接合される前に、位置合わせモジュール203を介して所定の相対位置に調整されることが好ましい。
【0028】
図1及び
図9~
図11に示すように、固化ステップS190は、半製品100aを固化環境下に置いてリング状ゲル体3aを固化させ、封止枠3を形成することにより実施される。リング状ゲル体3aの固化においては、第1金属シート1と第2金属シート2とをリング状ゲル体3aに突き当たるように連続して押圧してもよいし、リング状ゲル体3aに接触しているだけであってもよい。本実施形態の固化ステップS190では、熱固化処理を行うことにより、リング状ゲル体3aを固化して封止枠3を形成したが(例えば、第1押圧機構201又は第2押圧機構202は、そこにヒーターを設けることができる)、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態では、半製品100aは、真空チャンバー200から取り出された後、オーブンに入れられ、焼成及び硬化される。又は、固化ステップS190は、熱固化ステップとは異なる他のステップ(例えば、水と酸素とを反応させて硬化するステップ)を行うことにより実施することが可能である。
【0029】
以上、製造方法S100のステップS110~S190を実施した後、接着型ベイパーチャンバー100を製造することができる。したがって、製造方法S100の接着ステップS170を真空チャンバー200内で実施することにより、ベイパーチャンバー100の熱流空間Fを所定の真空度にして、熱流空間Fに配置された作動液4の沸点を下げやすくして、ベイパーチャンバー100の放熱性能を効果的に高めることができる。
【0030】
また、以下の説明では、好ましい一態様を有するベイパーチャンバー100について説明するが、ベイパーチャンバー100の構造設計は、上記製造方法S100の説明を参照することができる。
【0031】
本実施形態のベイパーチャンバー100は、平面形状を有し、第1金属シート1と、第1金属シート1の方を向く第2金属シート2と、第1金属シート1及び第2金属シート2に接続された封止枠3と、第1金属シート1と第2金属シート2との間に位置する支持構造5と、第1金属シート1と第2金属シート2との間に位置する毛管構造6と、作動液4とを備えるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の他の実施形態では、ベイパーチャンバー100の支持構造体5及び/又は毛細管構造体6は省略することができ、又は他の構成要素で置き換えることができる。
【0032】
具体的には、第1金属シート1と第2金属シート2とは互いに間隔をあけて配置され(例えば、第1金属シート1は第2金属シート2に接触していない)、第1金属シート1および第2金属シート2には貫通孔が形成されていない。すなわち、ガス孔や注入孔を有する金属板を含むベイパーチャンバーであれば、本実施形態の接着型ベイパーチャンバー100とは異なるものである。
【0033】
本実施形態では、支持構造体5と封止枠3とが共同して、第1の金属シート1と第2の金属シート2との間隔を確保するために、第1の金属シート1と第2の金属シート2とが互いに離間するように構成されている。支持構造5は、第1金属シート1及び第2金属シート2の少なくとも一方の内面11,21に配置された複数の突起51を含む。さらに、封止枠3はリング状であり、封止枠3の対向する2面にそれぞれ配置された2つのリング状接続面31は、第1金属シート1および第2金属シート2にそれぞれ隙間なく接続されており、封止枠3、第1金属シート1および第2金属シート2が共同して密閉型の熱流空間Fを規定する。熱流空間Fは、50Pa以下の真空値を有することが好ましいが、本発明はこれに制限されない。
【0034】
さらに、活性領域12は、第1の金属シート1の内面11に配置され、封止枠3は、活性領域12の少なくとも一部を取り囲んでいる。熱流空間Fには、突起51、毛細管構造体6、及び作動液4が配置され、突起51は毛細管構造体6に突き当たり、作動液4は活性領域12に接触している。
[第二の実施形態]
【0035】
図12及び
図13を参照して、本発明の第1の実施形態と同様の本発明の第2の実施形態を提供する。本発明の第1実施形態と第2実施形態とで同一の構成要素については、説明を簡潔にするために、本明細書では説明を省略し、以下の説明では、第1実施形態と第2実施形態との間で異なる特徴のみを発明する。
【0036】
本実施形態では、第1金属シート1の内面11に、リング状に配置されている支持枠52が配置されている。すなわち、本実施形態に係る支持構造体5は、熱流空間Fに配置された突起部51と、突起部51を囲む支持枠52とを含んでいる。具体的には、支持枠52は、単一のリング状の枠であってもよいし、図面に示されていない本発明の他の実施形態において、支持枠52は、複数のリブがリング状に配置されているものを含むことができるが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
また、本実施形態の塗布ステップS130におけるリング状ゲル体3aは、支持枠52に沿って第1金属シート1の内面11に形成されている。したがって、封止枠3が支持枠52に形成されている(例えば、支持枠52が封止枠3に埋め込まれている)ので、リング状ゲル体3a又は封止枠3が支持枠52を介してより安定した構造を有することができるが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態では、リング状ゲル体3a又は封止枠3は、支持枠52と第2金属シート2との間に挟まれるように、支持枠52の上面に接続されていてもよい。
[実施形態の有益な効果]
【0038】
以上より、本発明が提供する接着型ベイパーチャンバーの製造方法は、リング状ゲル体を用いて、真空チャンバー内で第1の金属シートと第2の金属シートとを接着することにより実施されるので、熱流空間を低い圧力値(例えば、50Pa以下の値)で維持することができる。したがって、ベイパーチャンバーの熱流空間においてガス吸引を行う必要がなく、従来のベイパーチャンバーに関するステップおよび構造を効果的に簡略化することができる。
【0039】
また、本発明が提供する接着型ベイパーチャンバーでは、第1の金属シートと第2の金属シートとが封止枠に対して隙間なく接続されることによって接合され得るので、既存の構造を簡素化し、材料コストおよび製造コストを効果的に低減し、その生産効果を向上させることができる。
【0040】
本発明の例示的な実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的のためにのみ提示されており、網羅的であること、または発明された正確な形態に限定することを意図していない。多くの修正および変形が、上記の教示に照らして可能である。
【0041】
以上に開示された内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0042】
100:ベイパーチャンバー
100a:半製品
1:第1の金属シート
11:内面
2:第2の金属シート
21:内面
3:封止枠
3a:リング状ゲル体
311:第1リング状接続面
312:第2リング状接続面
4:作動液
51:突起部
52:支持枠
6:毛細管構造体
20:真空チャンバー
201:第1押圧機構
202:第2押圧機構
203:位置合わせモジュール
S100:製造方法
S110:表面処理ステップ
S130:塗布ステップ
S150:充填ステップ
S170:接合ステップ
S190:固化ステップ