(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022192016
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 75/58 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
B65D75/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088712
(22)【出願日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2021100114
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】坂口 梨紗
(72)【発明者】
【氏名】松永 直也
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067BA05A
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA24
3E067EA08
3E067EB11
3E067EB18
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD10
(57)【要約】
【課題】開口部を有する容器と、この開口部を閉塞するように開口部周縁にシールされた蓋材とで構成され、開口と閉塞とを何度も繰り返すことができる包装体であって、タンパーエビデント機能を有する包装体を提供すること。
【解決手段】本発明に係る包装体は、開口部21を有する容器と、開口部21の周縁22にシールされ、ヒートシール性を有する基材シート11と、粘着剤層12と、シーラント層13と、を有し、基材シート11と、粘着剤層12と、シーラント層13とをこの順に積層して構成された蓋材と、を備え、蓋材は、周縁22に形成されたシール線から外方に突出したタブ10aを有しており、粘着剤層12とシーラント層13とは、剥離と再接着とを繰り返し可能であり、タブ10aの少なくとも一部の領域には、基材シート12とシーラント層13とが溶着されたタブ溶着部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器と、
前記開口部の周縁にシールされて、前記開口部を閉塞し、
ヒートシール性を有する基材シートと、
粘着剤層と、
シーラント層と、
を有し、前記基材シートと、前記粘着剤層と、前記シーラント層とをこの順に積層して構成された蓋材と、
を備え、
前記蓋材は、前記開口部の前記周縁に形成されたシール線から外方に突出したタブを有しており、
前記粘着剤層と前記シーラント層とは、この両者の間で剥離と再接着とを繰り返し可能であり、
前記タブの少なくとも一部の領域には、前記基材シートと前記シーラント層とが前記粘着剤層を介することなく溶着されたタブ溶着部が設けられていることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記シーラント層と前記容器とは、前記タブ溶着部において溶着されていることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記開口部の前記周縁において、前記蓋材の中心を挟んで前記蓋材の一方側に備えられた前記タブと反対側の少なくとも一部の領域には、前記基材シートと前記シーラント層とが前記粘着剤層を介することなく溶着された終端側溶着部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記開口部は、2つの面に跨った前記容器に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項5】
前記開口部は、前記開口部の前記周縁にフランジを設けており、
前記蓋材は、前記フランジにシールされることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項6】
前記開口部は、前記開口部の前記周縁に胴部を構成するシートを前記開口部の外側に巻き締めて形成されたフランジを設けており、
前記蓋材は、前記フランジにシールされることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項7】
前記粘着剤層は熱可塑性であり、
前記蓋材は、前記粘着剤層を前記基材シート及び前記シーラント層に圧着させる押し出しラミネートによって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の開口部の周縁に蓋材をシールしてこの開口部を塞ぎ、蓋材の接着と剥離とを繰り返すことにより、開口部の開口と閉塞とを何度も繰り返すことができる包装体は公知であり、例えば、ウェットティッシュ等の内容物を収容するものとして広く利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
包装体を構成する蓋材は、基材シートと、粘着剤層と、シーラント層とをこの順に積層して構成されており、粘着剤層とシーラント層との両者の間で剥離と再接着とを繰り返すことができるように積層されている。そして、蓋材は容器の開口部を閉塞するように開口部周縁にシールされている。また、蓋材は、その外方に向けて突出したタブを有している。
【0004】
包装体においては、タブを摘まみ片としてこれを摘まんで上方に引き上げると、まず、開口部周縁のシール位置においては、シーラント層と容器とは強固にシールされているため、粘着剤層とシーラント層との間で剥離して、蓋材は粘着剤層が表面に露出するように容器から分離される。次に、開口部の位置においては、シーラント層と容器とはシールされていないため、シーラント層は粘着剤層に接着したまま容器から分離され、この結果、包装体が開口する。そして、容器から分離された蓋材は、その開口部周縁のシール位置においては、粘着剤層が表面に露出しているため、これを容器の残存したシーラント層に再接着することにより、容器の開口部を再度閉塞することができる。そして、この開口と閉塞とは、何度も繰り返して実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の包装体は、開口と閉塞とを繰り返すことができるため、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別できる機能(タンパーエビデント機能)を持っていない。このため、この包装体を市販する場合には、この包装体をさらに外装袋に収容密封して、この包装体が未開封であることを保証していた。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、開口部を有する容器と、この開口部を閉塞するように開口部周縁にシールされた蓋材とで構成され、開口と閉塞とを何度も繰り返すことができる包装体であって、タンパーエビデント機能を有する包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る包装体は、開口部を有する容器と、前記開口部の周縁にシールされて、前記開口部を閉塞し、ヒートシール性を有する基材シートと、粘着剤層と、シーラント層と、を有し、前記基材シートと、前記粘着剤層と、前記シーラント層とをこの順に積層して構成された蓋材と、を備え、前記蓋材は、前記開口部の前記周縁に形成されたシール線から外方に突出したタブを有しており、前記粘着剤層と前記シーラント層とは、この両者の間で剥離と再接着とを繰り返し可能であり、前記タブの少なくとも一部の領域には、前記基材シートと前記シーラント層とが前記粘着剤層を介することなく溶着されたタブ溶着部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第二の態様によれば、第一の態様に係る包装体は、前記シーラント層と前記容器とは、前記タブ溶着部において溶着されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第三の態様によれば、第一の態様又は第二の態様に係る包装体は、前記開口部の前記周縁において、前記蓋材の中心を挟んで前記蓋材の一方側に備えられた前記タブと反対側の少なくとも一部の領域には、前記基材シートと前記シーラント層とが前記粘着剤層を介することなく溶着された終端側溶着部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第四の態様によれば、第一の態様又は第二の態様に係る包装体は、前記開口部は、2つの面に跨った前記容器に形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の第五の態様によれば、第一の態様又は第二の態様に係る包装体は、前記開口部は、前記開口部の周縁にフランジを設けており、前記蓋材は、前記フランジにシールされることを特徴とする。
【0013】
本発明の第六の態様によれば、第一の態様又は第二の態様に係る包装体は、前記開口部は、前記開口部の周縁に胴部を構成するシートを前記開口部の外側に巻き締めて形成されたフランジを設けており、前記蓋材は、前記フランジにシールされることを特徴とする。
【0014】
本発明の第七の態様によれば、第一の態様又は第二の態様に係る包装体は、前記粘着剤層は熱可塑性であり、前記蓋材は、前記粘着剤層を前記基材シート及び前記シーラント層に圧着させる押し出しラミネートによって形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る包装体によれば、蓋材端部のタブの一部領域に蓋材の基材シートとシーラント層とが溶着されたタブ溶着部が設けられているため、蓋材が容器から剥離されて開口する際に、このタブ溶着部の位置で、基材シートとシーラント層と、あるいはシーラント層と容器とを分離しなくてはならない。そして、分離した部分は元に戻すことができず、しかも、その痕跡が残るので、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る包装体の説明用斜視図、(b)は同包装体の説明用要部断面図である。
【
図2】(a)は、開口時の同包装体の説明用斜視図、
図2(b)は開口時の同包装体の説明用要部断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る包装体の説明用斜視図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る包装体の説明用斜視図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る包装体の説明用斜視図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態に係る包装体の説明用斜視図である。
【
図8】開口時の同包装体の説明用要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1から
図2を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る包装体Aの説明用斜視図、
図1(b)は、包装体Aの説明用要部断面図である。
図2(a)は、開口時の包装体Aの説明用斜視図、
図2(b)は、開口時の包装体Aの説明用要部断面図である。
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る包装体Aは、
図1又は
図2に示すように、容器20と、蓋材10とを備える。
【0019】
第1の実施形態に係る包装体Aは、開口部21を有する容器20としてピロー袋を用いた例である。
【0020】
このピロー袋を構成する包装材料は、表裏両表面にヒートシール性の樹脂層を配置したものである。ピロー袋は、ヒートシール性の樹脂層単層でこの包装材料を構成してもよいし、その間に基材となる層を介在させてもよい。ヒートシール性樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂があげられる。また、包装材料基材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、アクリル系樹脂等を有する多層構造である。また、包装材料基材は、その層構成中に、金属箔、金属蒸着フィルム、無機酸化物等の無機蒸着膜を有する蒸着フィルム等を有するものであってもよい。各層は、熱溶融によって接着積層されていてもよいし、接着剤で接着積層されていてもよい。
【0021】
容器20には、内容物の取り出し口となる開口部21が設けられている。この例では、開口部21は、背シール線のない面に矩形状に形成されている。内容物としては、例えば、ティッシュペーパーが例示できる。また、内容物は、グミやチョコレート等の菓子であってもよい。なお、
図1及び
図2においては、内容物の図示は省略している。
【0022】
次に、蓋材10は、基材シート11と、粘着剤層12と、シーラント層13とをこの順に積層して構成されている。粘着剤層12とシーラント層13とは、この両者の間で剥離と再接着とを繰り返すことができるように積層されている。粘着剤層12の厚みは薄い。このため、蓋材10に対して強く熱圧を掛けると、熱圧を掛けた部位の粘着剤層12は、その周囲に移動する。そのため、基材シート11とシーラント層13とは、直接接触して溶着する。
【0023】
基材シート11は任意の樹脂層によって形成される。基材シート11は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。また、基材シート11は、形成された複数の樹脂層の間に、金属や樹脂等の材質以外の材質の層を介在させたものであってもよい。基材シート11を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、アクリル系樹脂等を例示できる。樹脂以外の材質の層としては、例えば、アルミニウム箔等の金属箔、金属蒸着膜、無機酸化物等の無機蒸着膜紙を例示できる。
【0024】
粘着剤層12は、公知の粘着剤を塗付して形成することができる。粘着剤層12は、例えば、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系などの粘着剤を単独で使用してもよい。また、粘着剤層12は、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマーなどの凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリルなどに代表される改質成分、又は、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤などの添加剤等を適宜添加することも可能である。
【0025】
また、シーラント層13は、容器20を構成するヒートシール性樹脂として例示したポリオレフィン樹脂を使用することができる。すなわち、シーラント層13は、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等である。
【0026】
本発明においては、粘着剤層12と、シーラント層13とをこの順に含んで積層して構成された複合材を、リシール性を有するシーラント(リシールシーラント)として使用することもできる。例えば、三菱ケミカル(株)から市販されている「ダイアミロン(登録商標)MF RE」を使用できる。
また蓋材10は、基材シート11の粘着剤層12側に印刷層を形成したり、他のフィルム等を積層したりしてもよい。
【0027】
本実施形態では、蓋材10は、開口部21を閉塞するように容器開口部周縁(周縁)22にシールされている。しかし、蓋材10は、蓋材10によってシールされた状態の容器20との位置関係に応じて、幾つかの領域に分けることができる。
【0028】
まず、容器開口部周縁22に形成されたシール線から外方に突出したタブ10aである。タブ10aは、蓋材10に備えられる。タブ10aは、蓋材10を容器20から剥離して開口する際の摘まみ片となるものであり、剥離開始端となる容器開口部周縁22の一方側に形成されたシール線から外方に突出した位置に配置されている。このタブ10aの領域においては、少なくともその一部で、蓋材10に対して強い熱圧が掛けられている。このため、基材シート11とシーラント層13との間の粘着剤層12は、この部位において、その周囲に移動する。すると、基材シート11とシーラント層13とは、粘着剤層12を介することなく直接接触して溶着する。基材シート11とシーラント層13とが溶着している部位を「タブ溶着部10x」と呼ぶとき、このタブ溶着部10xにおいては、基材シート11とシーラント層13とが溶着されているだけでなく、シーラント層13と容器20ともシールされている。そのため、基材シート11、シーラント層13及び容器20の三者が一体に溶着されている。蓋材10が容器20から剥離されて開口するためには、基材シート11、シーラント層13及び容器20の三者が一体に溶着されたタブ溶着部10xを破断しなくてはならない。そして、破断した部分は元に戻すことができず、しかも、その痕跡が残る。
【0029】
次に、タブ10aに隣接して、蓋材10が容器開口部周縁22にシールされた周縁シール領域10bである。そして、これに続いて、容器開口部21を覆ってこれを閉塞した開口部対応領域10cが位置している。なお、容器開口部周縁22は、開口部対応領域10cを囲む閉曲線状に設けられている。このため、蓋材10の剥離を進行させると、剥離は、開口部対応領域10cに続いて、再度、周縁シール領域10bに到達する。周縁シール領域10bは、容器開口部周縁22において、蓋材10の中心を挟んで蓋材10の一方側に備えられたタブ10aと反対側に備えられる。説明の便宜上、このように開口部対応領域10cに続く周縁シール領域10bを二分して説明する。
【0030】
まず、開口部対応領域10cに続くこの周縁シール領域10bには、基材シート11とシーラント層13とが、粘着剤層12を介することなく直接接触して溶着している部位が設けられている。この部位を「終端側溶着部10y」と呼ぶとき、この終端側溶着部10yは、タブ溶着部10xと同様に、蓋材10に対して強い熱圧が掛けられた部位である。このため、終端側溶着部10yにおいては、基材シート11、シーラント層13及び容器20の三者が一体に溶着されている。終端側溶着部10yは、タブ溶着部10xと同様に基材シート11、シーラント層13及び容器20の三者が一体に溶着された部位であるため、強い力で蓋材10を引っ張ると破断して蓋材10を剥離できる。破断した部分は元に戻すことができず、しかも、その痕跡が残る。
【0031】
開口部対応領域10cに続く周縁シール領域10bは、終端側溶着部10yを基準として、開口部対応領域10c側に位置する開口部側周縁シール領域10b1と、その反対側に位置する終端側周縁シール領域10b2の2つの領域に区分できる。蓋材10を剥離して開口するとき、開口部側周縁シール領域10b1は蓋材10が剥離される領域である。それに対して、終端側周縁シール領域10b2は蓋材10が剥離されず、容器20とつながったまま残る領域である。
【0032】
次に、この包装体Aは次のように開口することができる。
図2に示すように、蓋材10は、タブ10aを摘まんで上方に引き上げられると、タブ10aの領域において、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離する。もっとも、タブ10aの領域内であっても、タブ溶着部10xには粘着剤層12が存在しない。そのため、蓋材10は、基材シート11とシーラント層13との溶着、あるいは、シーラント層13と容器20との溶着のうち、いずれか一方を破壊されて、容器20から剥離する。基材シート11とシーラント層13との溶着の破断に要する力、あるいは、シーラント層13と容器20との溶着の破断に要する力は、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離に要する力よりも大きいものである。また、前述のように、基材シート11とシーラント層13との溶着、又はシーラント層13と容器20との溶着を破断した場合には、これを元に戻すことができず、痕跡が残る。なお、基材シート11とシーラント層13との溶着が破断するのか、シーラント層13と容器20との溶着が破断するのか、という点については、両溶着の破断強度の大小による。どちらが破断してもよいが、
図2(b)には、蓋材10が基材シート11とシーラント層13との溶着の破断に要する力よりも大きな力で上方に引き上げられたときに、基材シート11とシーラント層13との溶着を破断され、基材シート11がシーラント層13から剥離した場合を例として図示している。
【0033】
そして、蓋材10が粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離に要する力よりも大きい力で上方に引き上げられると、蓋材10と容器20との剥離は進行する。蓋材10は、周縁シール領域10bにおいて、
図2(b)に示すように、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離する。シーラント層13は容器20側に残り、粘着剤層12は基材シート11と共に剥離される。
図2(b)において、符号「13
2」は、容器20側に残ったシーラント層13を示しており、符号「12
2」は基材シート11と共に剥離された粘着剤層12を示している。そして、剥離された蓋材10の表面であって、容器20に向かい合った面(容器側表面)には粘着剤層12
2が露出しているため、粘着剤層12
2をシーラント層13
2に再接着することによって蓋材10を再封することが可能である。
【0034】
次に、蓋材10と容器20との剥離が開口部対応領域10cまで進行する。開口部対応領域10cは、容器20にシールされていないため、周縁シール領域10bと開口部対応領域10cとの境界においてシーラント層13が破断する。シーラント層13は、開口部対応領域10cにおいて、基材シート11及び粘着剤層12と共に容器20から剥離する。こうして容器20から剥離したシーラント層13について、
図2(b)では符号「13
1」を付けて示している。
【0035】
さらに蓋材10と容器20との剥離が進行すると、この剥離は再び周縁シール領域10bに到達する。開口部側周縁シール領域10b
1である。この開口部側周縁シール領域10b
1においては、蓋材10のシーラント層13と容器20とが互いにシールされている。そのため、再びシーラント層13は、開口部対応領域10cと開口部側周縁シール領域10b
1との境界において破断する。粘着剤層12は、開口部側周縁シール領域10b
1において、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離して、基材シート11と共に剥離され、シーラント層13は容器20側に残る。
図2(b)において、符号「13
2」は、容器20側に残ったシーラント層13を示している。そして、剥離された蓋材10の表面であって、容器20に向かい合った面(容器側表面)には粘着剤層12が露出している。
【0036】
なお、前述のように、容器開口部周縁22は、開口部対応領域10cを囲む閉曲線状に設けられているため、開口部側周縁シール領域10b1を含めて、周縁シール領域10bは開口部対応領域10cを囲む閉曲線状に構成されている。
【0037】
次に、蓋材10と容器20との剥離は、終端側溶着部10yに到達する。終端側溶着部10yにおいては、蓋材10の基材シート11、シーラント層13及び容器20の三者が一体に溶着されている。なお、基材シート11とシーラント層13との溶着又はシーラント層13と容器20との溶着を破断して蓋材10を剥離するのに要する力は、開口部側周縁シール領域10b1において粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離するのに要する力より大きい。蓋材10を上方に引き上げる力が、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離に要する力よりも大きい力であり、基材シート11とシーラント層13との溶着又はシーラント層13と容器20との溶着の破断に要する力よりも小さい力の場合に、蓋材10と容器20との剥離はここで終了し、これ以上進行しない。すなわち、蓋材10は、終端側周縁シール領域10b2において剥離されず、容器20とつながったまま残る。
【0038】
そして、開口された開口部21から内容物を取り出すことが可能である。
【0039】
ところで、
図2(a)及び(b)から分かるように、こうして剥離された蓋材10は、終端側周縁シール領域10b
2を回動軸として回動した場合と同じ状態になる。そこで、元に戻すように蓋材10を回動させ、開口部側周縁シール領域10b
1を含む周縁シール領域10bに露出した粘着剤層12
2を容器20側に残ったシーラント層13
2に再接着することにより、容器20を再度閉塞することができる。この開口と閉塞とは、何度も繰り返すことが可能である。
【0040】
そして、この包装体Aにおいては、蓋材10を容器20から剥離して開口するためには、基材シート11、シーラント層13及び容器20の三者が一体に溶着されたタブ溶着部10xを破断しなくてはならない。破断した部分は元に戻すことができず、しかも、その痕跡が残るため、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することができるのである。
【0041】
なお、この包装体Aについて、終端側周縁シール領域10b2から蓋材10を剥離して開口しようとしても、この終端側周縁シール領域10b2には終端側溶着部10yが配置されており、この終端側溶着部10yにおいても、タブ溶着部10xと同じく、基材シート11、シーラント層13及び容器20の三者が一体に溶着されているため、破断した部分は元に戻すことができず、しかも、その痕跡が残るため、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することができる。
【0042】
以上、本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態及び以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、
図3は、容器として、その開口部が2つの面に跨った容器30を使用した第2の実施形態を示している。この場合にも、蓋材10がこの開口部を閉塞するように開口部周縁にシールされることにより、第1の実施形態と同様に開口と閉塞と繰り返すことができる。また、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することも可能である。
【0044】
(第3の実施形態)
また、
図4は、容器として、真空成型法等の絞り成形法によって成形された容器40を使用した第3の実施形態を示している。容器40はその上面に開口部をする。開口部は、この開口部周縁(周縁)にフランジを設けている。この場合にも、蓋材10がこの開口部を閉塞するように開口部周縁のフランジにシールされることにより、第1の実施形態と同様に開口と閉塞と繰り返すことができる。なお、図示のように、タブ10aは、容器40の胴部に沿うように折り曲げてシールしておけばよい。そして、この例でも、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することも可能である。
【0045】
(第4の実施形態)
そして、
図5は、容器として紙カップ50を使用した第4の実施形態を示している。紙カップ50もその上面に開口部を有しており、胴部を構成するシートを開口部の外側に巻き締めることにより、開口部周縁にフランジを設けている。そして、この場合にも、蓋材10がこの開口部を閉塞するように開口部周縁のフランジにシールされることにより、第1の実施形態と同様に開口と閉塞と繰り返すことができる。なお、図示のように、タブ10aは、紙カップ50の胴部に沿うように折り曲げてシールしておけばよい。そして、この例でも、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することも可能である。
【0046】
(第5の実施形態)
次に、
図6は、容器として角型カップ状容器60を使用した第5の実施形態の包装体Eを示している。角型カップ状容器60としては、ポリスチレンやポリプロピレン等の樹脂製容器や、紙カップや牛乳パック、酒パック同様、カップ原紙や板紙に合成樹脂フィルムや金属箔を貼り合わせた合成樹脂加工紙を成型した紙製容器が使用できる。
【0047】
角型カップ状容器60は、上面に略矩形状の開口部61を有する。開口部61の周縁62には、フランジ63が設けられている。
【0048】
角型カップ状容器60には、内容物として、例えばヨーグルト等の液状物(不図示)が充填される。ただし、内容物は、本実施形態に限定されず、その他の発酵乳製品や発酵乳、コーヒー等の飲料等であってもよい。
【0049】
蓋材10pは、周縁62のフランジ63に例えば熱シール加工され、開口部61を閉塞する。蓋材10pは、第1の実施形態と同様に基材シート11と、粘着剤層12と、シーラント層13とをこの順に積層して構成されている。本実施形態では、内容物として、ヨーグルトが充填された角型カップ状容器60に対して蓋材10pを用いる。そのため、角型カップ状容器60および蓋材10pは、乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、昭和二十六年十二月二十七日厚生省令第五十二号)に適合したものが使用できる。
例えば、角型カップ状容器60としては、ポリスチレンやポリプロピレン等の樹脂製容器や、合成樹脂加工紙を成型した紙製容器が使用できる。また、蓋材10pとしては、アルミニウム(AL)等を含む材料により構成される。
【0050】
粘着剤層12は、本実施形態では、熱可塑性ポリマーを主成分とするホットメルト接着剤等であってもよい。ホットメルト接着剤を使用する場合には、例えば蓋材10pは、溶解した熱可塑性の粘着剤層12をTダイより押し出し、基材シート11及びシーラント層13に圧着させる押し出しラミネートによって形成される。
【0051】
蓋材10pは、第1の実施形態と同様に、角型カップ状容器60との位置関係に応じて、幾つかの領域に分けることができる。
図6及び
図7に示すように、タブ10aは、第4の実施形態と同様に、蓋材10に周縁62から外方に突出して備えられ、角型カップ状容器60の胴部に沿うように折り曲げてシールされる。ただし本実施形態においては、タブ10a全体は角型カップ状容器60にシールされておらず、タブ溶着部10xのみが角型カップ状容器60に対して強い熱圧によりシールされている。
【0052】
また、
図7に示すように、蓋材10pには、第1の実施形態と同様に、蓋材10pの周縁62において、蓋材10pの中心を挟んで蓋材10pの一方側に設けられたタブ10aから、反対側に向けて、周縁シール領域10b、開口部対応領域10c、周縁シール領域10bと、の領域がこの順に設けられている。また、蓋材10pの周縁62において反対側に備えられた周縁シール領域10bには、タブ溶着部10xと同様に、蓋材10pに対して強い熱圧が掛けられた終端側溶着部10yが設けられる。包装体Eは、第1の実施形態と同様の開口方法で蓋材10を角型カップ状容器60から剥離して開口することができる。なお、本実施形態では、周縁シール領域10bは、1つの領域であるが、第1の実施形態と同様に、開口部側周縁シール領域10b
1と、終端側周縁シール領域10b
2との2つの領域に区分してもよい。
【0053】
本実施形態では、蓋材10pが開口部61を閉塞するように周縁62のフランジ63に熱シール加工される。そのため、内容物である液状のヨーグルトが、開口部61から液漏れしてしまうのを防ぐことができる。
【0054】
本実施形態においては、タブの10aの領域のうち、タブ溶着部10xには粘着剤層12が存在しないため、基材シート11とシーラント層13との溶着又はシーラント層13と容器20との溶着のうち、いずれか一方が破壊されて、蓋材10pが角型カップ状容器60から剥離する。本実施形態では、
図8に示すように、基材シート11とシーラント層13との溶着が破断して、蓋材10pが角型カップ状容器60から剥離する。すると、包装体Eは、シーラント層13の剥離部分を元に戻すことができず、痕跡が残る。そのため、包装体Eは、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することができる。なお、剥離部分は特に限定されず、シーラント層13と角型カップ状容器60との溶着が破断した場合であってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、蓋材10は、周縁シール領域10bにおいて、
図8に示すように、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離する。シーラント層13は角型カップ状容器60側に残り、粘着剤層12は基材シート11と共に剥離される。角型カップ状容器60に向かい合った蓋材10pの表面には粘着剤層12
2が露出しているため、粘着剤層12
2をシーラント層13
2に再接着することによって蓋材10pを再封することが可能である。そのため、例えば、ヨーグルト用容器において、従来、蓋材10pの上方に備えられ、内容物が外部に出てしまうのを防いでいた被せ蓋等を無くすことができる。
【0056】
また、本実施形態では、開口部対応領域10cにおいて、シーラント層13が基材シート11及び粘着剤層12と共に、角型カップ状容器60から剥離する。その後、蓋材10pと角型カップ状容器60との剥離は、周縁シール領域10bに設けられた終端側溶着部10yに到達する。しかし、終端側溶着部10yには、蓋材10pに対して強い熱圧が掛けられている。終端側溶着部10yにおいては、第1の実施形態と同様に、蓋材10の基材シート11、シーラント層13及び角型カップ状容器60の三者が一体に溶着されている。なお、基材シート11とシーラント層13との溶着又はシーラント層13と角型カップ状容器60との溶着を破断して蓋材10を剥離するのに要する力は、周縁シール領域10bにおいて粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離するのに要する力より大きい。蓋材10pを上方に引き上げる力が、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離に要する力よりも大きい力であり、基材シート11とシーラント層13との溶着又はシーラント層13と容器20との溶着の破断に要する力よりも小さい力の場合に、蓋材10pと角型カップ状容器60との剥離は、終端側溶着部10yにおいて終了し、これ以上進行しない。そのため蓋材10pは剥離されず、蓋材10pと角型カップ状容器60とをつなげたまま残すことができる。ここで、蓋材10pを上方に引き上げる力が、基材シート11とシーラント層13との溶着又はシーラント層13と容器20との溶着の破断に要する力よりも大きな力の場合は、蓋材60は、終端側溶着部10yにおいて破断して剥離される。破断した部分は元に戻すことができず、しかも、その痕跡が残るため、包装体Eは、一旦使用開口したものと一度も開口されていない未開封のものとを区別することができる。
【0057】
いずれの上記形態においても、本発明に係る包装体によれば、開口部を有する容器と、この開口部を閉塞するように開口部周縁にシールされた蓋材とで構成され、開口と閉塞とを何度も繰り返すことができる包装体であって、タンパーエビデント機能を有する包装体を提供することができる。
【0058】
(実験)
次に、第5の実施形態に係る包装体Eの蓋材10pの周縁シール領域10bとタブ溶着部10xとのそれぞれの領域における剥離強度を計測して、基材シート11とシーラント層13との溶着の破断に要する力又はシーラント層13と角型カップ状容器60との溶着の破断に要する力が、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離に要する力よりも大きいことを確認する実験を行った。なお、タブ溶着部10xは、タブ溶着部10xと同様に蓋材10pに対して強い熱圧が掛けられた終端側溶着部10yの領域を計測してもよい。
【0059】
実験者は、第1の実施形態と同様に、蓋材10pのタブを摘まんで蓋材10pを上方に引き上げ、包装体を開口する。実験者は、互いに溶着している方向から反対側の方向に引っ張り力(300mm/min)を与え、角型カップ状容器60と蓋材10pとを剥離させる。このとき、周縁シール領域10bとタブ溶着部10xとに対して必要な剥離強度(N/15mm)をそれぞれ計測する。得られた計測結果は、表1に示す。ここで、剥離強度とは、角型カップ状容器60と蓋材10pとが剥離されるときの溶着部分の強度のことであり、基材シート11とシーラント層13との溶着、シーラント層13と角型カップ状容器60との溶着又は粘着剤層12とシーラント層13との間の溶着部分の強度である。
【0060】
【0061】
今回、蓋材10pは、表1に記載の構成材料により構成されたものを用いた。
具体的には、一方の面に印刷層(ink)をグラビア印刷により設けた厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)と、厚さ7μmのアルミニウム箔(AL)と、粘着剤層と、シーラント層とをこの順に含む厚さ60μmの共押出しフィルムからなる複合材(リシールシーラント:ダイアミロン(登録商標)MF RE)を、それぞれポリエステルウレタン接着剤を用いたドライラミネート法により積層した積層材を用いて実験を行った。表1に示すように、周縁シール領域10bの領域において必要な剥離強度は、8.6N/15mmであった。またタブ溶着部10xの領域において必要な剥離強度は、11.7N/15mmであった。
【0062】
以上の結果より、タブ溶着部10xの領域において必要な剥離強度は、周縁シール領域10bの領域において必要な剥離強度よりも高いことが分かった。タブ溶着部10xは、蓋材10pに対して強い熱圧が掛けられ、粘着剤層12が薄膜化された部位である。すなわち、基材シート11とシーラント層13とが溶着又はシーラント層13と角型カップ状容器60とが溶着したタブ溶着部10xの領域の破断に要する力は、周縁シール領域10bの領域において粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離に要する力よりも大きいことを確認した。そのため、角型カップ状容器60と蓋材10pとは、タブ溶着部10xにおいて、基材シート11とシーラント層13との溶着の破断、もしくは、シーラント層13と角型カップ状容器60との溶着の破断(紙剥け)によって剥離され、開封されると考察できる。また、角型カップ状容器60と蓋材10pとは、周縁シール領域10bの領域において、粘着剤層12があるため、粘着剤層12とシーラント層13との間で剥離すると考察できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る包装体によれば、開口部を有する容器と、この開口部を閉塞するように開口部周縁にシールされた蓋材とで構成され、開口と閉塞とを何度も繰り返すことができるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
A:第1の実施形態に係る包装体
10:蓋材 11:基材シート 12:粘着剤層 13:シーラント層
10a:タブ 10b:周縁シール領域 10c:開口部対応領域
10x:タブ溶着部 10y:終端側溶着部
20:容器(ピロー袋)
B:第2の実施形態に係る包装体
30:容器(ピロー袋)
C:第3の実施形態に係る包装体
40:容器(絞り成形容器)
D:第4の実施形態に係る包装体
50:容器(紙カップ)
E:第5の実施形態に係る包装体
10p:蓋材
60:容器(角型カップ状容器)