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特開2022-192017活性エネルギー線硬化性組成物及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022192017
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 222/38 20060101AFI20221221BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20221221BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20221221BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C08F222/38
C08F220/10
C08F2/46
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090281
(22)【出願日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2021100198
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千野 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻村 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴士
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA18
4J011QA46
4J011QB20
4J011SA61
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J100AL08R
4J100AL66Q
4J100AL74S
4J100AM21P
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA02R
4J100BA03Q
4J100BC43R
4J100BC45Q
4J100CA06
4J100CA21
4J100CA23
4J100DA49
4J100FA03
4J100FA18
4J100JA01
4J100JA32
4J100JA43
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB211
4J127BD172
4J127BD181
4J127BE341
4J127BE342
4J127BE34Y
4J127BF292
4J127BF301
4J127BG051
4J127BG052
4J127BG101
4J127BG102
4J127BG10Z
4J127BG171
4J127BG172
4J127BG17Z
4J127CB151
4J127CB153
4J127CB154
4J127CB162
4J127CB284
4J127CC023
4J127CC024
4J127CC114
4J127CC291
4J127EA13
4J127FA01
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】硬化物の曲げ強度に優れる活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)からなる単官能モノマー(A1)と、芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)と、一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)と、芳香環を有する2官能モノマー(B)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)からなる単官能モノマー(A1)と、芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)と、下記一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)と、芳香環を有する2官能モノマー(B)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
【化1】
[式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の1価の脂肪族炭化水素からなる有機基であり、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6の脂肪族炭化水素からなる有機基である。]
【請求項2】
前記(A1)と前記(B)との重量比率[A1/B]が1~4.5である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
25℃における粘度が50~150mPa・sである請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)がα-アリルオキシメチルアクリル酸メチルである請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に用いられる部材として高い曲げ強度を有する材料の要求が高まってきている。
例えば、スマートフォン等に使用されるタッチパネルの薄型軽量化、透過率の向上、部材のコストダウンのため、カバーガラスにITO等のタッチセンサを直接形成するカバー一体型タッチパネルが開発されている。ガラスは弾性率が高い、すなわち表面硬度が高く傷つきにくいという利点があるが、脆いため割れやすく、割れてしまうとタッチパネルを操作できなくなってしまう問題を有する。
ガラスに代わるカバーの材料として、アクリル樹脂系やポリカーネート系の樹脂シートが使用されてきたが、表面硬度が低いため傷つき易く、又、脆い場合があり外部からの衝撃力で割れる可能性がある。
弾性率が高く脆くない材料、すなわち高い曲げ強度を有する材料が求められているが、十分な曲げ強度を有する材料の開発には至っていない。
例えば、特許文献1においては、シルセスキオキサン誘導体及び脂環式骨格含有エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化物が開示されている。
また、特許文献2においては、アダマンタン誘導体を含有する樹脂組成物を光硬化して得られる硬化物が開示されている。特許文献1及び2に開示された硬化物はいずれも十分な曲げ強度を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2016-076257号公報
【特許文献2】特開2012-246264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化物の曲げ強度に優れる活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)からなる単官能モノマー(A1)と、芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)と、下記一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)と、芳香環を有する2官能モノマー(B)とを含有する活性エネルギー線硬化性組成物;前記硬化性組成物の硬化物である。
【化1】
[式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の1価の脂肪族炭化水素からなる有機基であり、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6の脂肪族炭化水素からなる有機基である。]
【発明の効果】
【0006】
本発明における活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物は、曲げ強度に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(以下において、単に硬化性組成物と記載する場合がある)は、4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)からなる単官能モノマー(A1)と、芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)と、下記一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)と、芳香環を有する2官能モノマー(B)とを含有する硬化性組成物である。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」の表記は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」の表記は、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル基」の表記は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0008】
本発明の硬化性組成物は、必須成分として、4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)からなる単官能モノマー(A1)を含む。
4-(メタ)アクリロイルモルホリン及びN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドのうち、硬化物の曲げ強度の観点から、好ましくは4-アクリロイルモルホリンである。
【0009】
本発明の硬化性組成物は、必須成分として、芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)を含む。前記単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)のホモポリマーのガラス転移温度(以下Tgとも表記する)は、硬化物の曲げ強度の観点から、好ましくは0~50℃であり、更に好ましくは5~35℃である。
【0010】
前記単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)のホモポリマーのTgとは、そのモノマーを単独重合させた硬化物の動的粘弾性を、下記の方法で測定した際の、損失正接(tanδ)が最大値を示す温度のことである。なお、後記する一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)のホモポリマーのTgについても同様である。
【0011】
<ホモポリマーのTgの測定方法>
開始剤として、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASF社製]を、モノマーに対して3重量%添加した後、紫外線照射装置により、紫外線を1000mJ/cm照射して、硬化させ、縦幅40mm、横幅5mm、厚み1mmのテストピースを作成する。
このテストピースを用いて、動的粘弾性測定装置(例えば、Rheogel-E4000、(株)ユービーエム製)により、周波数:10Hz、昇温速度:4℃/分の条件で測定し、ホモポリマーの損失正接(tanδ)が最大値を示す温度(ホモポリマーのTg)を求める。
【0012】
前記単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート及びフルオレン骨格含有モノ(メタ)アクリル酸エステル等の単官能(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0013】
前記芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)のうち、硬化物の曲げ強度の観点から、好ましくはベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートであり、更に好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0014】
本発明の硬化性組成物は、必須成分として、下記一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)を含む。前記ラジカル重合性モノマー(A3)のホモポリマーのTgは、硬化物の曲げ強度の観点から、好ましくは50~150℃であり、更に好ましくは75~140℃である。
【0015】
前記ラジカル重合性モノマー(A3)のホモポリマーのTgとは、前記単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)のホモポリマーのTgで定義したものと同様である。
【0016】
前記ラジカル重合性モノマー(A3)は、下記一般式(1)で表されるラジカル重合性を有するα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートである。
【0017】
【化1】
【0018】
一般式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の脂肪族炭化水素からなる有機基を表す。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6の脂肪族炭化水素からなる有機基である。
【0019】
上記Rが炭素数1~30の脂肪族炭化水素からなる有機基の場合、当該有機基としては、直鎖状であっても分岐鎖状であっても、環状であってもよい。硬化物の曲げ強度の観点から上記有機基の好ましい炭素数は1~18であり、より好ましくは1~12、更に好ましくは1~8である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基及びジシクロペンテニル基などが挙げられる。
【0020】
、R、R、R及びRが炭素数1~6の脂肪族炭化水素からなる有機基の場合、該炭素数1~6の脂肪族炭化水素からなる有機基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ネオペンチル基及びヘキシル基などが挙げられる。
【0021】
一般式(1)で表わされるα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの好ましい態様は、硬化物の曲げ強度の観点から、R及びRが水素原子である、下記一般式(2)で表わされる化合物であり、さらに好ましい態様は、R、R、R、R及びRのいずれもが水素原子であるα-アリルオキシメチルアクリレートの場合である。
【0022】
【化2】
【0023】
上記一般式(2)中のR、R、R及びRは、一般式(1)中のそれぞれR、R、R及びRと同様である。
【0024】
前記ラジカル重合性モノマー(A3)としては、ホモポリマーのTgが50℃~150℃のものであり、具体的には、α-アリルオキシメチルアクリル酸、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸i-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ペンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ペンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-ペンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘプチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-オクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-オクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-オクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-エチルヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メリシル等の鎖状飽和炭化水素基含有α-(アリルオキシメチル)アクリレート、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチルメチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルメチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸4-メチルシクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニル等の脂環式炭化水素基含有α-アリルオキシメチルアクリレート等が挙げられる。
【0025】
前記ラジカル重合性モノマー(A3)は、例えば、国際公開第2010/114077号に開示されている方法により製造することができる。
【0026】
前記ラジカル重合性モノマー(A3)のうち、硬化物の曲げ強度の観点から、好ましくは前記一般式(2)で表わされる化合物であり、更に好ましくはα-アリルオキシメチルアクリル酸メチルである。
【0027】
本発明の硬化性組成物は、必須成分として、芳香環を有する2官能モノマー(B)を含む。芳香環を有する2官能モノマー(B)は、芳香環を有する多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル及び/又は芳香環を有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである。
芳香環を有する2官能モノマー(B)は、2個の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。
【0028】
芳香環を有する2官能モノマー(B)の具体例としては、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物及び9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
これらのうち、硬化物の曲げ強度の観点から、好ましくはビスフェノールAのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物及び9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物であり、更に好ましくはビスフェノールAのジグリシジルエーテルのジメタクリル酸付加物である。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)からなる単官能モノマー(A1)、芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)、ラジカル重合性モノマー(A3)並びに芳香環を有する2官能モノマー(B)以外のモノマーを含有してもよい。
(A1)、(A2)、(A3)及び(B)以外のモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0030】
本発明の硬化性組成物は、アシルホスフィン光重合開始剤(C)を含有してもよい。
アシルホスフィン光重合開始剤(C)としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド、2,4-ジエチルチオキサントン及び2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、アシルホスフィン光重合開始剤(C)以外の光重合開始剤を更に含有してもよく、例えばベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物及びオキシムエステル化合物等からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有してもよい。ベンゾイン化合物は、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。アセトフェノン化合物は、例えばアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。アントラキノン化合物は、例えば2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。チオキサントン化合物は、例えば2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン及び2-クロロチオキサントン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。ケタール化合物は、例えばアセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。ベンゾフェノン化合物は、例えばベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド及び4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。α-アミノアルキルフェノン化合物は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロ-ブタノン-1及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン]等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。オキシムエステル化合物は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]及びエタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
これらのアシルホスフィン光重合開始剤(C)は、1種単独で又は2種以上を併用できる。これらのうち、硬化性の観点から好ましくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキシド、2,4-ジエチルチオキサントン及び2-イソプロピルチオキサントンであり、更に好ましくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドである。
【0031】
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりその他の添加剤を含有させることができる。
添加剤としては、金型離型剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、着色剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤、界面活性剤、可塑剤、分散剤及びチクソトロピー性付与剤(増粘剤)等が挙げられる。
【0032】
本発明の硬化性組成物の25℃における粘度は、光学部材用樹脂シート等として使用する場合の塗布性の観点から、好ましくは50~150mPa・s以下である。粘度は、粘度測定装置[株式会社東機産業株式会社製「VISCOMETER TV-25」]を使用し、回転数50rpm、温度25℃の条件で測定する。
【0033】
本発明の4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)からなる単官能モノマー(A1)の含有量は、硬化物の曲げ弾性率及び曲げ強度を高い水準で両立する観点から(A1)、(A2)、(A3)及び(B)の合計重量に基づいて好ましくは35~65重量%であり、更に好ましくは40~60重量%である。
本発明の芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)の含有量は、硬化物の曲げ弾性率及び曲げ強度を高い水準で両立する観点から(A1)、(A2)、(A3)及び(B)の合計重量に基づいて好ましくは1~10重量%であり、更に好ましくは5~10重量%である。
本発明のラジカル重合性モノマー(A3)の含有量は、硬化物の曲げ弾性率及び曲げ強度の観点から(A1)、(A2)、(A3)及び(B)の合計重量に基づいて好ましくは1~10重量%であり、更に好ましくは5~10重量%である。
本発明の芳香環を有する2官能モノマー(B)の含有量は、硬化物の曲げ強度の観点から(A1)、(A2)、(A3)及び(B)の合計重量に基づいて好ましくは15~45重量%であり、更に好ましくは15~40重量%である。
本発明の硬化性組成物が、(A1)、(A2)、(A3)及び(B)以外のモノマーを含む場合、(A1)、(A2)、(A3)及び(B)以外のモノマーの含有量の合計は、硬化物の曲げ弾性率及び曲げ強度の観点から(A1)、(A2)、(A3)及び(B)の合計重量に基づいて好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以下である。
【0034】
本発明における(A1)と(B)との重量比率[A1/B]は硬化物の曲げ弾性率及び曲げ強度の観点から好ましくは1~4.5であり、更に好ましくは2~3である。
【0035】
本発明における光重合開始剤(C)の含有量は、(A1)、(A2)、(A3)及び(B)の合計重量に基づいて硬化物の曲げ弾性率及び曲げ強度の観点から好ましくは1~10重量%であり、更に好ましくは2~5重量%である。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、4-(メタ)アクリロイルモルホリン(A11)及び/又はN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド(A12)である単官能モノマー(A1)、芳香環を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(A2)、一般式(1)で示されるラジカル重合性モノマー(A3)並びに芳香環を有する2官能モノマー(B)と、必要に応じて、光重合開始剤(C)及び前記のその他の添加剤とを、公知の機械的混合方法(メカニカルスターラー及びマグネティックスターラー等を用いる方法)を用いて均一混合することで、製造することができる。
【0037】
以下に、本発明の硬化性組成物を硬化させて、硬化物を製造する方法について説明する。
本発明の硬化性組成物を用いた硬化物の製造方法は、特に限定されないが、金型を用いて硬化性組成物を硬化させ金型から離型することにより得ることができる。
より具体的な硬化物の製造方法としては、以下の方法等が挙げられる。
ガラス上にシリコンスペーサー(厚み2mm)で作成した枠をのせ得られた硬化性組成物をそこに注型した後、活性エネルギー線を照射して、硬化させる。本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化に用いる活性エネルギー線は、光重合開始剤の選択により調整することができる。
前記アシルホスフィン光重合開始剤(C)を用いた場合には200~700nmの波長を有する紫外線の照射で光硬化でき、200~400nmの波長を持つ光(紫外線)の照射により硬化することが好ましい。紫外線を発する光源としては、高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)及びLEDが使用できる。硬化物の曲げ強度の観点から好ましくはメタルハライドランプである。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を光硬化するときの活性エネルギー線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは1000~5000mJ/cm、更に好ましくは2500mJ/cmである。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を光硬化するときの活性エネルギー線の照度は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは500~1000mJ/cm、更に好ましくは600mW/cmである。
活性エネルギー線の照射時の温度は組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは20~30℃であり、更に好ましくは22~27℃である。
【0038】
本発明の硬化性組成物の硬化物は、曲げ強度に優れるため、光学部材及び電気・電子部材としての各種コーティング材、注型材及び成型材として有用である。
具体的には、タッチパネル用カバー材料として有用である。
【実施例0039】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1~11及び比較例1~4
表1に記載の配合組成(重量部)に従って、一括で配合し、ディスパーサーで均一になるまで撹拌し、活性エネルギー線硬化性組成物(X-1)~(X-11)及び比較用の硬化性組成物(Z-1)~(Z-4)を得た。それらを評価した結果を表1に示す。
【0041】
<曲げ試験片の作製>
ガラス上にシリコンスペーサーで作成した厚み2mm、縦幅60mm、横幅20mmの枠をのせ、その枠の中にそれぞれ得られた活性エネルギー線硬化性組成物を注型した。紫外線照射装置により、22~27℃、30~60%RH、メタルハライドランプにて照度600mW/cm、積算光量2500mJ/cmの条件下で照射して活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させ、型より取り出し硬化物を得た。
【0042】
<曲げ強度試験(曲げ弾性率及び曲げ強度)>
曲げ強度試験用の試験片は、上記作製条件で作製した硬化物を厚み2mm、縦幅50mm、横幅5mmに加工して作製した。曲げ強度試験は支点間距離30±0.5mm、曲げ速度10mm/分とした以外は、JIS K 6911:2006に準じて行った。得られた硬化物の曲げ強さ及び曲げ弾性率を表1に示した。
硬化性組成物の硬化物の曲げ弾性率は4000MPa以上であると良好であり、前記の硬化物の曲げ強度は200MPa以上であると良好である。
【0043】
[粘度評価]
本発明における粘度は、粘度測定装置[東機産業株式会社製「VISCOMETER TV-25」]を使用し、回転数50rpm、温度25℃の条件で測定した。粘度が60~100mPa・sであると低粘度で好適である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1中の記号で表した原料の詳細は以下のとおりである。
(A11-1):4-アクリロイルモルホリン[ACMO:KJケミカルズ(株)製]
(A12-1):N,N-ジメチルジメチルアクリルアミド[DMAA:KJケミカルズ(株)製]
(A1’-1):イソボルニルアクリレート[IBXA:大阪有機化学工業(株)製]
(A2-1):フェノキシエチルアクリレート[PO-A:共栄社化学(株)製]、ホモポリマーのTg:7℃
(A2-2):フェニルフェノキシエチルアクリレート[OPPEA:新中村化学工業(株)製]、ホモポリマーのTg:33℃
(A3-1):α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル[「AOMA(登録商標)」:(株)日本触媒製](Rはメチル基、R、R、R、R及びRは水素原子)、ホモポリマーのTg:84℃
(B―1):Bis-GMA(ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物)[エポキシエステル 3000MK:共栄社化学(株)製]
(B―2):Bis-GA(ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物)[エポキシエステル 3000A:共栄社化学(株)製]
(B-3):FGDA(9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物)
(B’-1):ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート[DCP-A:共栄社化学(株)製]
【0046】
表1の結果より、本発明の実施例1~11の活性エネルギー線硬化性組成物は、低粘度であり、かつその硬化物は曲げ強度に優れていた。
一方、比較例1~4の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物は曲げ強度に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の硬化性組成物の硬化物は、曲げ強度に優れるため、光学部材及び電気・電子部材としての各種コーティング材、注型材及び成型材として有用である。具体的には、タッチパネル用カバー材料として有用である。