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特開2022-192032道路車両の運転体験を改善するために運転者の心理物理的状態を処理する方法及び関連する車両用システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022192032
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】道路車両の運転体験を改善するために運転者の心理物理的状態を処理する方法及び関連する車両用システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/18 20060101AFI20221221BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221221BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61B5/18
G08G1/00 D
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022096182
(22)【出願日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】102021000015695
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミハエラ ネアグ キヴ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア セコンディ
【テーマコード(参考)】
4C038
5H181
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ03
4C038PS00
4C038PS01
4C038PS05
5H181AA17
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF10
5H181FF27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】運転者によって運転される道路車両の運転体験を改善する。
【解決手段】運転者(DR)の心理物理的状態を処理する方法であって、車両用システム(1)内に設置された1つ以上の第1のセンサ(4)によって、運転者(DR)の1つ以上の客観的生体パラメータを周期的に検出するステップと、検出された上記の1つ以上の客観的生体パラメータに従って、生体状態指標の値を処理するステップと、車両用システム(1)内に設置された1つ以上の第2のセンサ(5)によって、運転者(DR)の1つ以上の主観的パラメータを周期的に検出するステップと、客観的生体パラメータから開始して、主観的パラメータに従って、運転者(DR)の心理物理的状態を処理するステップと、を含む方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者(DR)によって運転される道路車両(2)の運転体験を改善するために、前記運転者(DR)の心理物理的状態を処理する方法であって、
車両用システム(1)内に設置された1つ以上の第1のセンサ(4)を介して、前記運転者(DR)の1つ以上の客観的生体パラメータ(OP)を周期的に検出するステップと、
検出された前記1つ以上の客観的生体パラメータ(OP)に従って、生体状態指標(SI)の値を処理するステップと、
前記車両用システム(1)内に設置された1つ以上の第2のセンサ(5)によって前記運転者(DR)の1つ以上の主観的パラメータ(SP)を周期的に検出するステップであって、前記運転者(DR)の前記1つ以上の主観的パラメータ(SP)は、表情(FEX)及び/又は声色である、ステップと、
前記客観的生体パラメータ(OP)から開始して、前記主観的パラメータ(SP)に従って、前記運転者(DR)の前記心理物理的状態を処理するステップと、を含み、
前記状態指標の前記値の記号が、前記主観的パラメータ(SP)に応じて、維持又は変更されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
特に前記車両(2)が静止しているときに、前記運転者(DR)の、静止状態における前記客観的生体パラメータ(OP)を記録する調整ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の客観的生体パラメータ(OP)は、心拍数(HR)、心電図(ECG)、呼吸数(RR)、汗腺活動、体温(BT)、酸素飽和度(OS)、及びそれらの組み合わせのいずれか1つからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体状態指標(SI)の前記値は、検出された前記客観的生体パラメータ(OP)の加重平均によって処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生体状態指標(SI)の値は、1つ以上の境界因子(BC)、特にプロファイリングデータ、前記車両(2)の高さ、人体測定データ、又はそれらの任意の組み合わせに従って補正される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記境界因子(BC)の少なくとも一部は、インターフェース装置(8)を介して前記運転者(DR)に応答させることによって検出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表情(FEX)は光学センサ(7)によって検出され、かつ/又は前記声色はマイクロフォン(M)によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記客観的パラメータ(OP)及び前記主観的パラメータ(SP)の両方について、適切な暗号化アルゴリズムを使用して、前記運転者(DR)のプライバシーを保護するさらなるステップを含み、特に、どの前記客観的パラメータ(OP)、及び/又はどの前記主観的パラメータ(SP)、及び/又はどの前記境界因子を車両用システム(1)に提供するかを、前記運転者(DR)が選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
走路に沿って運転している間に、前記運転者(DR)の前記心理物理的状態の関数として、運転能力を推定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記心理物理的状態及び前記推定された運転能力に応じて、専用のコンディション情報を前記運転者(DR)に示唆する教示ステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記運転能力の前記推定に続いて、走路の周回中に前記運転者(DR)に修正措置(CA)を提案するさらなるステップを含み、前記提案された修正措置(CA)の質及び/又は量は、前記推定された運転能力に従ってフィルタリングされる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
運転者(DR)によって運転される道路車両(2)の運転体験を向上させるための車両用システム(1)であって、
使用中に、前記運転者(DR)の1つ以上の客観的生体パラメータ(OP)を検出するように構成された、1つ以上の第1のセンサ装置と、
使用中に、前記運転者(DR)の1つ以上の主観的パラメータ(SP)を検出するように構成された、1つ以上の第2のセンサ装置と、
検出された前記1つ以上の客観的生体パラメータ(OP)の関数として、生体状態指標(SI)の値を処理し、前記客観的生体パラメータ(OP)から開始して、前記主観的パラメータ(SP)の関数として、前記運転者(DR)の心理物理的状態を処理するように構成された処理ユニット(6)と、を備える車両用システム。
【請求項13】
前記第1のセンサ装置が、1つ以上のウェアラブル要素(WE)、具体的には、ヘルメット(E)、及び/又はグローブ、及び/又はスーツの一部を備える、請求項12に記載の車両用システム(1)。
【請求項14】
前記第1のセンサ装置が、前記運転者(DR)を収容するように構成された座席に設置された1つ以上の要素を備える、請求項12に記載の車両用システム。
【請求項15】
前記第2のセンサ装置が、少なくとも1つのマイクロフォン(M)、及び/又は1つの光学センサ(7)、特にカメラ(C)又は温度カメラ(C)を備える、請求項13に記載の車両用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2021年6月16日に出願されたイタリア特許出願第102021000015695号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、道路車両の運転体験を改善するために、運転者の心理物理的状態を処理する方法、及び関連する車両用システムに関する。特に、本発明は、高性能道路車両に非排他的に応用できるが、とりわけ、走路上での運転中に有利であり、このことは一般性を失うことなく、以下の説明において明示的に言及される。
【背景技術】
【0003】
一般的に言えば、道路車両、特に高性能道路車両の様々な機能は、車両自体の挙動(動的パラメータ)、その状態(消耗)、及び運転者がそれとどのように相互作用するか(運転スタイル)に基づいて、調整することができる。
【0004】
実際のところ、今日では、運転体験及び運転者/操縦者のコンディションは、一般的な標準を通じて改善されている。これは、一般的な満足感、又は走路での性能の客観的管理を達成することを目的とし、専ら車両パラメータをフィードバックとして使用するものである。
【0005】
しかしながら、運転体験の向上に対処する最先端の技術は、運転体験及び性能関連の感覚を、他の運転者とは異なって独自に知覚する、個々の運転者の主観を考慮していない。
【0006】
最近では、運転者が車両に搭乗するとき、及び/又は運転しているときの運転者の心理物理的状態を分析、特に(血中アルコール含有量テストによって)酩酊状態である可能性をチェックして、必要に応じて車両の起動を防止する、若しくは、運転者の疲労を監視して、休憩を提案するように設計されたシステムが開発された。後者の場合、これらのシステムには通常、例えば運転者の瞼の開度を判定するために、例えばカメラなどの光学センサが備えられる。
【0007】
しかしながら、これらのシステムは、交通車両に開放された道路での安全性にのみ焦点を当てており、決して運転者の運転体験を改善することを目的としていない。さらに、これらのシステムでは、概して運転者の外観を評価することに限定され、今のところ、様々な運転者の主観は考慮していない。例えば、運転者が瞼を部分的に閉じていても完全に集中できるのと同様に、瞼の開度が変わらなくても運転者は疲労している可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、道路車両の運転体験を改善するために運転者の心理物理的状態を処理する方法、及び関連する車両用システムを提供することである。これらは、少なくとも部分的に上述した欠点がなく、同時に、実行及び製造が簡単で、経済的なものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載の、道路車両の運転体験を改善するために運転者の心理物理的状態を処理する方法、及び関連する車両用システムが提供される。
【0010】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を説明し、説明の不可欠な部分を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による車両用システムの一部、特に背面の、第1の概略斜視図である。
図2】本発明による車両用システムの一部の、第2の概略斜視図である。
図3】本発明による車両用システムを装備することができる、高性能道路車両を外部から見た図である。
図4】本発明の方法による心理物理的状態の処理の、実現可能な概略図である。
図5図4で使用される複数の客観的生体パラメータ、主観的パラメータ、及び境界条件の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の、非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して、以下に説明を行う。
【0013】
図1において、番号1は、全体として、運転者DRによって運転され、2つの前輪W及び2つの後輪(特に、駆動輪)を備えた道路車両2の、運転体験を改善するための車両用システムを示す。車両2には、運転者DR及び可能性のある同乗者を収容するように設計された、車室3が設けられている。「運転体験」という用語は、車両内の快適性に関する体験と、性能、すなわち走路における性能面での、車両の管理に関する体験の、両方を包含する。後者の場合、性能を改善するか、あるいは、何にせよ、運転者に自身の能力を大いに意識させる場合に、体験が改善されたことになる。
【0014】
特に、車両用システム1は、運転者DRの心理物理的状態を処理して、運転体験、より正確には、走路Tでの運転者の能力(すなわち、ラップタイム)を向上させるように構成される。「心理物理的状態」とは、運転者DRが感じる感情/感覚、又は一連の感情/感覚に関する、あらゆる状態を意味する。例えば、心理物理的状態とは、緊張、不安、不幸、疲労、冷静(中間状態)、幸福、歓喜、驚愕、恐怖などである。
【0015】
車両用システム1は、(特に、車両2に加えて)使用中に運転者DRの、1つ以上の客観的生体パラメータOP(例えば、図5参照)を検出するように構成された、1つ以上のセンサ装置4を備える。運転者DRの客観的生体パラメータOPとは、適切なシステムによって測定することができ、運転者DRの状態について有用な表示を提供し得る、身体の物理的/化学的状態に関する、すべてのパラメータである。これらのパラメータは、個人ごとに正常値、及び(正常値より高い、又は低い)異常値を有するために、客観的であると考えられる。
【0016】
生体パラメータOPは、これらが必須ではないが、有利には、心拍数HR、及び/又は心電図ECG、及び/又は呼吸数RR、及び/又は体温BT、及び/又は酸素飽和度OSを含む。代わりに、又は加えて、客観的生体パラメータOPは、動脈圧、及び/又は酸素消費量、及び/又は(例えば、基礎代謝測定器による)エネルギー消費、及び/又は皮膚電気活動(EDA)、及び/又は汗腺活動PEを含む。いくつかの非限定的な事例では、生体パラメータOPは、心拍変動、すなわち2つの連続する心拍の時間間隔の差を、さらに含む(これは一般に、緊張又は疲労に基づく変動に有用である)。
【0017】
図1及び図2に示すような、いくつかの好ましい非限定的な事例では、センサ装置4は、運転者DR(図2)によって装着され得る、1つ以上のウェアラブル要素WEを備える。特に、例えば、図1及び図2の非限定的な実施形態では、センサ装置4は、ヘルメットE、及び/又はグローブGL、及び/又はレーシングスーツRSの一部(又はその下の衣服のアイテム)、及び/又はスマートウォッチWT(特に、既知のスマートウォッチであって、したがって詳細には説明されず、HR、ECG、OSなどを検出するように構成されたもの)を備える。好ましくは、グローブGLは、特に運転者DRの指先の領域に配置された、パルスオキシメータPOを備える。
【0018】
少なくとも1つのグローブGLは、これが必須ではないが、有利には、手のひら、及び/又は少なくとも1つの指の領域に配置された、圧力センサを備える。
【0019】
センサ装置4は、これが必須ではないが、有利には、皮膚の電気伝導度(皮膚電気反応)を測定するように構成された、GSR(ガルバニック皮膚反応)センサを備える。特に、GSRセンサは、運転者DRの手首の領域に配置されるように構成される。より具体的には、センサGSRはグローブGLに一体化されている。強い感情は、神経系に緊張を引き起こし得るものであり、その結果、汗腺の活動が増加する。この場合、GSRセンサにより、運転者DRに関する、汗腺活動PEを監視することが可能となる。
【0020】
いくつかの好ましいが非限定的な実施形態によれば、グローブGLは(特に、F1選手権で現在承認されているタイプの)生体測定グローブである。このようにして、今のところ安全目的のみのために(衝突時に運転者の生体パラメータを監視するために)使用されている生体測定グローブGLは、それとは異なり、運転者DRの運転体験(快適性及び能力)を改善するために、有効活用される。
【0021】
レーシングスーツRSは、これらが必須ではないが、有利には、温度センサ、及び/又は圧電センサ、及び/又は(近くに設置された、又は遠隔式の心電計のための)電極、及び/又は心拍数モニタを備えた、少なくとも1つの(特に、胸部を覆う)衣類を備える。
【0022】
代わりに、又は加えて、センサ装置4は、運転者DRを収容するように構成された座席Sの領域、又はステアリングホイールSWの領域、又は車両2に内蔵された他の構成要素(例えば、遠方温度センサなどの無線センサ)に設置される、1つ以上の固定要素FE(図2)を備える。
【0023】
ステアリングホイールSWは、これが必須ではないが、有利には、(グローブGLに内蔵されていない場合)心電図ECGを処理するための、導電センサを備える(同時に、これが心拍数HRを検出する)。特に、ステアリングホイールSWは、それがグローブGLに内蔵されていない場合、運転者DRの血液量の変化を検出するための光電脈波計(PPGセンサ)を備える。
【0024】
センサ装置4は、これが必須ではないが、有利には、固定要素FEの中で、特に座席Sの領域、好ましくは運転者DRの背後に配置された、レーダセンサを備える。
【0025】
さらに、車両用システム1は、使用中に運転者DRの1つ以上の主観的パラメータSPを検出するように構成された、1つ以上のセンサ装置5を備える。「主観的パラメータ」という用語は、他人とは異なる個人の特徴を位置づけ、運転者の心理物理的状態に基づいて変化するパラメータを示す(したがって、指紋などの、バイオメトリックパラメータの特徴を位置づけることは除外されなければならない)。具体的には、主観的パラメータSPは、表情FEX及び声色VEXである(図4及び図5)。実際、これらのパラメータは、運転者DRを別の運転者に対して特徴付け、同時に、運転者の心理物理的状態に応じて変化する。したがって、主観的パラメータSPは好ましいものである。
【0026】
センサ装置5は、これが必須ではないが、有利には、運転者DRの声色VEXを検出するように構成された、少なくとも1つのマイクロフォンM、及び/又は、運転者DRの表情FEXを検出するように構成された、光学センサ7、特にカメラ及び/又は温度カメラCを備える。特に、カメラC及びマイクロフォンMは、それぞれ既知の顔追跡/顔解析、及び音声追跡/音声解析アルゴリズムに基づいて、表情FEX(悲しみ、泣き顔、瞼の開閉頻度、微笑み、笑いなど)、及び声色VEX(声のトーン、高揚感など)を検出するように構成されており、したがって、本明細書では詳細な説明は行わない。
【0027】
さらに、車両用システム1は、装置4及び5に接続された、処理ユニット6を備える。処理ユニット6は、検出された前述の1つ以上の客観的生体パラメータOPの関数として、生体状態指標SIの値を処理(すなわち、数値的に計算)し、客観的生体パラメータOPから開始して、かつ主観的パラメータSPの関数として、運転者DRの心理物理的状態ESを処理(すなわち、決定)するように構成される。詳細には、処理ユニット6はまた、上述したアルゴリズムを実行するように構成される。
【0028】
本発明のさらなる非限定的な実施形態によれば、特に走路Tで運転するときに、運転者DRによって運転される道路車両2の運転体験を改善するために、運転者DRの心理物理的状態を処理する方法が提供される。
【0029】
本方法は、車両用システム1(言い換えれば、固定要素FE及びウェアラブル要素WEの両方)内に設置された上述のセンサ4によって、(運転中に)運転者DRの1つ以上の客観的生体パラメータOPを周期的に検出するステップを含む。
【0030】
本方法は、検出された客観的生体パラメータOPの関数として、生体状態指標SIの値を(処理ユニット6を介して)処理するステップを、さらに含む。
【0031】
好ましいが非限定的な実施形態によれば、生体状態指標SIの値は、絶対値又は平均値(特に、加重平均)である。特に、客観的生体パラメータOPは極めて様々な間隔で変化するため、この方法は、単一の比較可能な尺度でそれらを標準化するために、各客観的生体パラメータOPに、相対的な補正重み付け、α、β、γ、δを適用することを伴う。詳細には、生体状態指標SIの値は、現在の客観的生体パラメータOPが、中間的な基準パラメータからどの程度離れているかを示す。言い換えれば、生体状態指標SIの値は、測定された客観的生体パラメータOPと、(実質的に中間的な心理物理的条件下における)基準とされる客観的生体パラメータOPとの間の、差の尺度である。
【0032】
本方法は、これが必須ではないが、有利には、本明細書に記載の(前述した)周期的なステップを行う前、特に車両2が駐車しているときに、運転者の客観的生体パラメータOPを休止(中間的)状態で記録する、調整ステップをさらに含む。具体的には、調整ステップ中に検出された客観的生体パラメータOPは、生体状態指標SIの算出における、基準として使用される。より正確には、生体状態指標SIの算出には、調整ステップ中に検出された客観的生体パラメータOPと、運転中に周期的に検出された客観的生体パラメータOPとの差が使用される。
【0033】
非限定的な実施形態によれば、(簡略化された)例として、パラメータOPとして、心拍数HR、呼吸数RR、体温BT、及び酸素飽和度OSのみを使用して、指標SIの値は、各基準パラメータOPと(運転中に周期的に検出された)相対的測定パラメータOPとの間の差の、(重み付けされた)平均として計算される。相対的測定パラメータOPは、基準パラメータOPと測定パラメータOPとの間の差を百分率で定量化するために、すべてがそれぞれの基準パラメータで除算される。特に、この例によれば、指標SIの値は、以下の式に従って計量される。
【数1】

ここで、α、β、γ、δはそれぞれ、(例えば、経験的に、又は基準表を用いて計算される)加重値である。下付き文字Nは、(例えば調整ステップの間に記録された、運転者DRの中立的な心理物理的状態における)基準パラメータOPを示し、下付き文字Mは、測定パラメータOPを示す。明らかに、この式は、上記のすべてのパラメータOPを含み、それらの基準値との差を考慮するために、再調整することができる。
【0034】
このようにして得られた指標SIの値は、基準パラメータOPと測定されたパラメータとの間の、差の分数を処理ユニット6に提供する。このことは、車両用システム1が、運転者DR及び運転者の快適性を保護する動作を実行する閾値、又は、(特定の領域において、過剰な緊張又は準備不足が検出された場合に)運転者の能力を改善するための入力を与える閾値を、経験的又は理論的に決定することにつながる。しかし、運転者DRの心理物理的状態ESを完全に定義するために、客観的パラメータでは十分でない状況が存在する。例えば、高い心拍数及び呼吸数は、心臓不整脈と共に、不安/心配についての心理物理的状態、及び驚き/喜びについての心理物理的状態、の両方の症状であり得る。言い換えれば、客観的パラメータOPだけでは、運転者の心理物理的状態ESが、(図4のレ(チェックマーク)で示す、幸福、歓喜寄りの)ポジティブなものであるか、(図4の×で示す、混乱、不安、恐怖寄りの)ネガティブなものであるかを、定義することができない。基準パラメータOPと測定パラメータOPとの差の強度が大きいほど、生体状態指標SIの値は大きくなる。
【0035】
したがって、さらに、本方法は、車両用システム1内に設置されたセンサ5によって、運転者DRの1つ以上の主観的(心理物理的)パラメータを、(運転中に)周期的に検出するステップを含む。このステップは、これが必須ではないが、有利には、運転者DRの心理物理的状態がポジティブであるかネガティブであるかを規定するために、運転者の表情FEX又は声色VEXを分析することを伴う。
【0036】
図1に示すような、いくつかの非限定的な実施形態によれば、運転者DRの主観的パラメータSPは、具体的には光学センサ7によって検出される、表情FEXである。
【0037】
代わりに、又は加えて、図1の非限定的な実施形態に示すように、運転者DRの主観的パラメータSPは、特にマイクロフォンによって検出される、声色VEXである。
【0038】
いくつかの非限定的な実施形態によれば、本方法は、表情FEXを検出する第1のサブステップと、第1のサブステップの下位にある、第2のサブステップとを含む(すなわち、第1のサブステップで、運転者の心理物理的状態ESを決定するのに有用な表現を正確に理解できない場合)。具体的には、第2のサブステップでは、予め設定された質問を運転者DRに尋ね、マイクロフォンMを介して聴取することによって、声色VEXを検出する。
【0039】
好ましくは、本方法は、客観的パラメータOP及び主観的パラメータSPの両方に適切な暗号化アルゴリズムを使用して、運転者DRのプライバシーを保護する、さらなるステップを含む。
【0040】
いくつかの好ましいが非限定的な事例では、どの客観的パラメータOP、及び/又はどの主観的パラメータSP、及び/又はどの境界因子を車両用システム1に提供するかを、運転者DRが選択する。
【0041】
特に、センサ4及び5での検出、並びに生体状態指標SIの処理に続いて、本方法は、客観的生体パラメータOPから開始して、主観的パラメータSPの関数として、運転者の心理物理的状態ESを処理することを伴う。
【0042】
いくつかの非限定的な実施形態によれば、図5に示すものと同様に、客観的生体パラメータOPは、心拍数HR、心電図ECG、呼吸数RR、汗腺活動PE、体温BT、酸素飽和度OS、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
本方法は、これが必須ではないが、有利には、図4の非限定的な実施形態に概略的に示されているように、センサ装置5によって検出された主観的パラメータSPの関数として、状態指標SIの値の記号を維持又は変更することを伴う。このように、ポジティブ又はネガティブの記号に基づいて、心理物理的状態ESが規定される。
【0044】
車両用システム1の柔軟性及び信頼性を向上させるために、生体状態指標SIの値(特に、基準値)は、これが必須ではないが、有利には、1つ以上の境界因子、特に運転者のプロファイリングデータ、車両の高さ、人体測定データ、又はそれらの任意の組み合わせの関数として補正される(所定の補正係数を加算又は減算する)。このようにして、例えば、プロファイル及び特徴が異なる運転者の正常値又は異常値を区別して、より正確な分析を実行することができる。特に、いくつかの好ましい非限定的な実施形態によれば、運転者DRは、車両用システム1に提供したい境界因子を選択することで、監視の精度を自律的に選択する。
【0045】
「人体測定データ」という用語は、例えば、手足の長さ及び/又は厚さ、身長、体の関節の位置など、運転者DRの身体に関する、すべての可能な測定値を特定するものである。
【0046】
いくつかの非限定的な実施形態によれば、前述の境界因子の少なくとも一部は、インターフェース装置8を介して運転者DRに応答させることによって検出される。言い換えると、処理ユニット6は、インターフェース装置8から受信したデータに基づいて、境界因子の少なくとも一部を受信するように構成される。特に、インターフェース装置8は、運転者DRの画像、及び/又は人体測定データを検出するように構成される。
【0047】
いくつかの非限定的な事例、及び図3の非限定的な実施形態によれば、インターフェース装置8はスマートフォン9である。他の非限定的な事例では、代わりに、又は加えて、インターフェース装置は、車両2内部のPC、タブレット、バーチャルアシスタント、又は制御パネルである。
【0048】
本方法は、これが必須ではないが、有利には、走路Tを運転中の、運転者DRの心理物理的状態ESの関数として、運転者DRの運転能力を推定する、さらなるステップを含む。
【0049】
いくつかの非限定的な事例では、本方法は、(以前に検出された)心理物理的状態ES、及び推定された運転能力の関数として、運転者DRに専用のコンディション情報を示唆する、さらなるステップを含む。特に、運転者DRは、インターフェース装置8に表示される自身の能力に関する情報、例えば、走路Tのいくつかの部分によりよく取り組むための、(身体的及び精神的の両面からの)特定のコンディション情報を受け取る。
【0050】
特に、本方法は、運転能力の推定に続いて行われる走路の周回中に、運転者DRに修正措置CAを提案するさらなるステップを含む。提案された修正措置CAの質及び/又は量は、推定された運転能力に従ってフィルタリングされる。
【0051】
車両用システム1は、これが必須ではないが、有利には、これまでに開示された方法を実行するように構成される。
【0052】
上述した本発明は、特定の実施形態の例に関するものであるが、例えば、運転者DRのパラメータSP及びOPを検出するための様々な方法、様々なタイプの車両(例えば、二輪車又は前輪駆動車)、様々なパラメータOP及びSP、指標SIを計算するための様々な方法など、添付の特許請求の範囲が対象とする、すべての変形、変更、又は簡略化が、その保護範囲に含まれるため、上記の実施形態の例に限定されると考えるべきではない。
【0053】
本発明は、多くの利点を提供する。
【0054】
まず、本明細書に記載の方法及び車両用システムは、ユーザが車両の状態を理解することだけでなく、運転者の心理物理的状態を監視することも可能にし、修正措置を提案することによって、特に走路上での運転体験を改善する。
【0055】
さらに、経験の浅い運転者の場合、運転者の身体状態を改善することも目的とした、専用のコンディション情報を示唆することができる。
【0056】
本発明のさらなる利点は、測定されたパラメータOPが基準パラメータOPとは極端に異なり、パラメータの正常範囲を定める所定の閾値を超える場合に、運転者に警告し得る点にある。
【0057】
さらに、本発明では、心理物理的な準備及び管理手順の観点から、運転者の反応及びそこからの利点を特定し、運転者の運転能力に見合った示唆及び/又は修正措置を提供するために、運転者のパラメータOP及びSPのリアルタイム分析が可能となる。
【0058】
加えて、この方法は、プロの運転者の準備として、走路に臨む前であっても運転者を最良に訓練するために、シミュレータで使用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用システム
2 車両
3 車室
4 センサ装置
5 センサ装置
6 処理ユニット
7 光学センサ
8 インターフェース装置
9 スマートフォン
AD 人体測定データ
BC 境界因子
BT 体温
C カメラ
CA 修正措置
DR 運転者
E ヘルメット
ECG 心電図
ES 心理物理的状態
FE 固定要素
FEX 表情
GL グローブ
HR 心拍数
M マイクロフォン
OP 客観的生体パラメータ
OS 酸素飽和度
PE 汗腺活動
PO パルスオキシメータ
RR 呼吸数
RS レーシングスーツ
S 座席
SI 生体状態指標
SP 主観的パラメータ
SW ステアリングホイール
T 走路
VEX 声色
WE ウェアラブル要素
WT スマートウォッチ
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】