IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テイ・エス テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-衝撃吸収体 図1
  • 特開-衝撃吸収体 図2
  • 特開-衝撃吸収体 図3
  • 特開-衝撃吸収体 図4
  • 特開-衝撃吸収体 図5
  • 特開-衝撃吸収体 図6
  • 特開-衝撃吸収体 図7
  • 特開-衝撃吸収体 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022192069
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】衝撃吸収体
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/04 20060101AFI20221221BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20221221BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20221221BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60R21/04 320
B60J5/00 P
B60J5/00 A
F16F7/00 J
F16F7/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164155
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2017149791の分割
【原出願日】2017-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 達樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 淳
(57)【要約】
【課題】 衝撃吸収体において、変形時の吸収荷重の変動を抑制する。
【解決手段】 車両のドアパネル2とドアパネルの側面を覆うトリム3との間において、トリムからドアパネルに向けて突出した筒形の衝撃吸収体30であって、トリム側の基端からドアパネル側の先端に向う突出方向に複数配列され、先端側に配置されたものほど突出方向と直交する方向に狭い幅を有する筒形の複数の周壁と、隣り合う周壁の縁部を互いに接続する複数の連結壁と、最も先端側の周壁の端部を閉じる端壁36とを有し、周壁は、先端側から順に第1周壁31、第2周壁32、及び第3周壁33を含み、連結壁は第1連結壁34及び第2連結壁35とを含み、第1周壁、第2周壁、及び第3周壁のそれぞれは、突出方向において互いに等しい長さを有し、第2周壁及び第3周壁は互いに等しい体積を有し、第1周壁は第2周壁よりも小さい体積を有する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアパネルと前記ドアパネルの側面を覆うトリムとの間において、前記トリムから前記ドアパネルに向けて突出した筒形の衝撃吸収体であって、
前記トリム側の基端から前記ドアパネル側の先端に向う突出方向に複数配列され、先端側に配置されたものほど前記突出方向と直交する方向に狭い幅を有する筒形の複数の周壁と、
隣り合う前記周壁の縁部を互いに接続する複数の連結壁と、
最も先端側の前記周壁の端部を閉じる端壁とを有し、
前記周壁は、前記先端側から順に第1周壁、第2周壁、及び第3周壁を含み、
前記連結壁は、前記第1周壁と前記第2周壁とを接続する第1連結壁、及び前記第2周壁と前記第3周壁とを接続する第2連結壁とを含み、
前記第1周壁、前記第2周壁、及び前記第3周壁のそれぞれは、前記突出方向において互いに等しい長さを有し、
前記第2周壁及び前記第3周壁は互いに等しい体積を有し、前記第1周壁は前記第2周壁よりも小さい体積を有することを特徴とする衝撃吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアパネルとトリムとの間に配置される衝撃吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアにおいて、側突時にドアパネルから乗員に加わる衝撃を軽減するべく、ドアパネルとドアパネルの車室側面を覆うドアトリムとの間に衝撃吸収体を配置した構成が公知である。このような衝撃吸収体において、ドアトリムからドアパネルに向けて延びる樹脂製の筒体を、ドアパネルに向けて段階的に幅を狭くし、階段状に形成したものがある(例えば、特許文献1)。この衝撃吸収体は、変位(変形量)に応じて各段部が段階的に変形するため、荷重(反力)の急激な増加を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-315076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような階段状の衝撃吸収体は、先端側の段部の方が基端側の段に比べて幅が狭いため変形し易い。そのため、変形の初期において先端側の段部が変形し、変形の後期において基端側の段部が変形する。これにより、各段の変形に起因する荷重のピークが発生し、衝撃吸収体の変形量に応じて荷重が変動する。また、基端側の段部は変形に要する荷重が大きいため、変形の後期においては荷重(反力)が大きくなり、乗員に荷重が伝達され易くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、衝撃吸収体において、変形時の吸収荷重の変動を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、車両のドアパネル(2)と前記ドアパネルの側面を覆うトリム(3)との間において、前記トリムから前記ドアパネルに向けて突出した筒形の衝撃吸収体(30)であって、前記トリム側の基端から前記ドアパネル側の先端に向う突出方向に複数配列され、先端側に配置されたものほど前記突出方向と直交する方向に狭い幅を有する筒形の複数の周壁(31、32、33)と、隣り合う前記周壁の縁部を互いに接続する複数の連結壁(34、35)と、最も先端側の前記周壁の端部を閉じる端壁(36)とを有し、前記周壁は、前記先端側から順に第1周壁(31)、第2周壁(32)、及び第3周壁(33)を含み、前記連結壁は、前記第1周壁と前記第2周壁とを接続する第1連結壁(34)、及び前記第2周壁と前記第3周壁とを接続する第2連結壁(35)とを含み、前記第1周壁、前記第2周壁、及び前記第3周壁のそれぞれは、前記突出方向において互いに等しい長さを有し、前記第2周壁及び前記第3周壁は互いに等しい体積を有し、前記第1周壁は前記第2周壁よりも小さい体積を有することを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、第2周壁及び第3周壁が等しい体積を有するため、第2周壁及び第3周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。第1周壁は端壁に接続されているため、体積が同一である場合第1周壁は第2周壁より吸収荷重が大きくなる。そのため、第1周壁の体積を第2周壁の体積よりも小さくすることによって、第1周壁及び第2周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収体における変形量に対する吸収荷重の変動を抑制することができ、乗員への荷重の伝達を抑制することができる。
【0008】
上記の第1の態様において、前記第1周壁は前記第2周壁よりも小さい厚みを有するとよい。
【0009】
この態様によれば、第1周壁及び第2周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。
【0010】
上記の第1の態様において、前記第1周壁は前記第3周壁よりも大きい厚みを有するとよい。
【0011】
この態様によれば、第1周壁及び第3周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、車両のドアパネル(2)と前記ドアパネル(3)の側面を覆うトリムとの間において、前記トリムから前記ドアパネルに向けて突出した筒形の衝撃吸収体(30)であって、前記トリム側の基端から前記ドアパネル側の先端に向う突出方向に複数配列され、先端側に配置されたものほど前記突出方向と直交する方向に狭い幅を有する筒形の複数の周壁(31、32、33)と、隣り合う前記周壁の縁部を互いに接続する複数の連結壁(34、35)と、最も先端側の前記周壁の端部を閉じる端壁(36)とを有し、前記周壁は、前記先端側から順に第1周壁(31)、第2周壁(32)、及び第3周壁(33)を含み、前記連結壁は、前記第1周壁と前記第2周壁とを接続する第1連結壁、及び前記第2周壁と前記第3周壁とを接続する第2連結壁とを含み、前記第1周壁は前記第2周壁よりも大きい厚みを有し、前記第2周壁は前記第3周壁よりも大きい厚みを有することを特徴とする。
【0013】
この態様によれば、先端側に配置された周壁の剛性が増加するため、各周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収体における変形量に対する吸収荷重の変動を抑制することができ、乗員への荷重の伝達を抑制することができる。
【0014】
上記の第2の態様において、前記第1周壁、前記第2周壁、及び前記第3周壁のそれぞれは、前記突出方向において互いに等しい長さを有し、かつ互いに等しい体積を有するとよい。
【0015】
この態様によれば、各周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。
【0016】
上記の第1及び第2態様において、前記第1周壁、前記第2周壁、及び前記第3周壁のそれぞれは、円筒形の横断面を有し、かつ前記基端側の直径に対して前記先端側の直径が小さいとよい。
【0017】
この態様によれば、荷重を受けたときに、衝撃吸収体は軸線方向(突出方向)に円滑に変形して、収縮することができる。
【0018】
上記の第1及び第2態様において、前記第1連結壁及び前記第2連結壁は、互いに等しい厚みを有するとよい。前記第1連結壁の内周縁から外周縁までの長さと、前記第2連結壁の内周縁から外周縁までの長さは、互いに等しいとよい。
【0019】
この態様によれば、衝撃吸収体の構造を簡素にすることができる。
【0020】
上記の第1及び第2態様において、前記第1連結壁の内周縁から外周縁までの長さ、及び前記第2連結壁の内周縁から外周縁までの長さのそれぞれは、前記第1周壁、前記第2周壁、及び前記第3周壁のそれぞれの前記突出方向における長さのいずれよりも小さいとよい。
【0021】
この態様によれば、各周壁を変形し易くすることができると共に、各連結壁を変形し難くすることができる。
【0022】
上記の第1及び第2の態様において、前記第1周壁は、前記端壁に接続され、前記第3周壁の端部には、前記第3周壁の外方に延びたフランジ(41)が設けられているとよい。
【0023】
この態様によれば、フランジによって衝撃吸収体とトリムとの接触面積が増加するため、骨格部材から荷重を受ける衝撃吸収体がトリムから安定性良く反力を受けることができる。これにより、骨格部材から衝撃吸収体に荷重が確実に伝達され、衝撃吸収体は効率良く荷重を吸収することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、第2周壁及び第3周壁が等しい体積を有するため、第2周壁及び第3周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。第1周壁は端壁に接続されているため、体積が同一である場合第1周壁は第2周壁より吸収荷重が大きくなる。そのため、第1周壁の体積を第2周壁の体積よりも小さくすることによって、第1周壁及び第2周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収体における変形量に対する吸収荷重の変動を抑制することができ、乗員への荷重の伝達を抑制することができる。
【0025】
第1の態様において、第1周壁が第2周壁よりも小さい厚みを有する態様によれば、第1周壁及び第2周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。
【0026】
第1の態様において、第1周壁が前記第3周壁よりも大きい厚みを有する態様によれば、第1周壁及び第3周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、先端側に配置された周壁の剛性が増加するため、各周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収体における変形量に対する吸収荷重の変動を抑制することができ、乗員への荷重の伝達を抑制することができる。
【0028】
第2の態様において、第1周壁、第2周壁、及び第3周壁のそれぞれが突出方向において互いに等しい長さを有し、かつ互いに等しい体積を有する態様によれば、各周壁の変形量に対する吸収荷重の差を小さくすることができる。
【0029】
第1及び第2態様において、第1周壁、第2周壁、及び第3周壁のそれぞれが、円筒形の横断面を有し、かつ基端側の直径に対して先端側の直径が小さい態様によれば、荷重を受けたときに、衝撃吸収体は軸線方向(突出方向)に円滑に変形して、収縮することができる。
【0030】
第1及び第2態様において、第1連結壁及び前記第2連結壁が、互いに等しい厚みを有する態様や、第1連結壁の内周縁から外周縁までの長さと、第2連結壁の内周縁から外周縁までの長さが互いに等しい態様によれば、衝撃吸収体の構造を簡素にすることができる。
【0031】
第1及び第2態様において、第1連結壁の内周縁から外周縁までの長さ、及び第2連結壁の内周縁から外周縁までの長さのそれぞれが、第1周壁、第2周壁、及び第3周壁のそれぞれの前記突出方向における長さのいずれよりも小さい態様によれば、各周壁を変形し易くすることができると共に、各連結壁を変形し難くすることができる。
【0032】
第1及び第2の態様において、前記第3周壁の端部に第3周壁の外方に延びたフランジが設けられた態様によれば、フランジによって衝撃吸収体とトリムとの接触面積が増加するため、骨格部材から荷重を受ける衝撃吸収体がトリムから安定性良く反力を受けることができる。これにより、骨格部材から衝撃吸収体に荷重が確実に伝達され、衝撃吸収体は効率良く荷重を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る衝撃吸収体が設けられたドアを示す側面図
図2図1のII-II断面図
図3】ドアトリムの車外側面を示す側面図
図4】衝撃吸収体の斜視図
図5】衝撃吸収体の断面図
図6】衝撃吸収体の変形態様を示す説明図
図7】衝撃吸収体の変位量に対する荷重特性を示すグラフ
図8】変形例に係る衝撃吸収体の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明に係る衝撃吸収体を自動車の右前席のドアに適用した実施形態を説明する。
【0035】
(ドアの全体構成)
図1及び図2に示すように、自動車の右前席のドア1は、骨格部材としてのドアパネル2と、ドアパネル2の車内側面を覆うように設けられたドアトリム3とを有する。ドアパネル2は、鋼板から形成されたインナパネル4及びアウタパネル5を有する。インナパネル4は、車体の外面をなすアウタパネル5の車内側(車室側)に配置されている。インナパネル4及びアウタパネル5は、上縁を除く、前縁、下縁、及び後縁においてアウタパネル5に結合され、中央部に空間を形成している。
【0036】
インナパネル4の外側面及び内側面には、複数の補強部材7が設けられている。補強部材7は、インナパネル4の前縁から後縁に略前後に延びている。補強部材7は、溝形材やパイプ材等から形成されている。補強部材7は、例えば横断面が溝形に形成され、インナパネル4と共に閉断面を形成してもよい。
【0037】
インナパネル4及びアウタパネル5の間には、ウインドウガラス11及びその昇降装置(不図示)が配置される。ウインドウガラス11は、インナパネル4及びアウタパネル5の上縁間に形成された開口を通過して上下に移動する。
【0038】
ドアトリム3は、樹脂材料から形成されている。ドアトリム3は、面が左右を向き、インナパネル4の車内側に配置されたトリム本体部13と、トリム本体部13の周縁からインナパネル4側に突出し、インナパネル4の車内側面における縁部に当接するトリム縁壁部14とを有する。トリム縁壁部14は、トリム本体部13の周縁に沿って延びている。
【0039】
トリム本体部13の上下方向における中央部には、車内側に膨出したアームレスト部15が設けられている。アームレスト部15は、トリム本体部13の中央から後縁かけて前後に延びている。アームレスト部15の上面には、昇降装置を操作するためのスイッチが設けられている。
【0040】
トリム本体部13の前下部には、スピーカ16が設けられている。トリム本体部13の下部であってスピーカ16の後方に位置する部分には、車内側に膨出したポケット部17が設けられている。ポケット部17は、上方に向けて開口した凹部を形成する。ポケット部17は、アームレスト部15の前部の下方に配置されている。
【0041】
トリム本体部13の後下部には、車内側に膨出した膨出部18が設けられている。膨出部18は、アームレスト部15の後部の下方かつポケット部17の後方に配置されている。膨出部18の車内側面は、左右方向を向く平面を形成し、アームレスト部15の後部下部及びポケット部17の後部に滑らかに連続している。膨出部18の車外側部分は、車内側に向けて凹み、インナパネル4との間に空間19を形成する。膨出部18の車外側面は、左右方向を向く平面に形成されている。
【0042】
膨出部18とインナパネル4との間の空間19には、衝撃吸収体30が配置されている。衝撃吸収体30は、ドアトリム3及びインナパネル4のいずれに支持されてもよい。本実施形態では衝撃吸収体30は、膨出部18の車外側面(インナパネル4側を向く面)に支持されている。
【0043】
(衝撃吸収体:第1実施形態)
第1実施形態に係る衝撃吸収体30は、樹脂材料や金属材料等の様々な材料から形成することができる。樹脂材料は、例えばポリプロピレンやポリエチレン、炭素やガラス、ナノセルロース等の繊維を含む繊維強化樹脂であってよい。繊維強化樹脂を使用した場合、材料の弾性率及び引張り強度が向上するため、衝撃吸収体30の薄肉化や小型化が可能になる。その結果、軽量化が可能になる。樹脂材料を材料とする場合、衝撃吸収体30は、射出成形等の公知の成形手法によって形成することができる。
【0044】
ナノセルロースを含む繊維強化樹脂を材料とする場合、母材は、ポリエチレンや、ポリプロピレン等であってよい。また、母材がラメラ層を形成し、ラメラ層がナノセルロースの繊維長の方向と異なる方向に積層していることが好ましい。
【0045】
図2及び図3に示すように、衝撃吸収体30は、ドアトリム3からインナパネル4に向けて突出した筒形の部材であり、ドアトリム3側の基端に対してインナパネル4側の先端の幅が階段状に狭く形成されている。図4及び図5に示すように、衝撃吸収体30は、複数の周壁31~33と、複数の連結壁34、35と、端壁36とを有する。複数の周壁31~33は、基端から先端に向う突出方向(車幅方向)に複数配列され、突出方向において互いにオフセットして配置されている。複数の周壁31~33は、先端側に配置されたものほど突出方向と直交する方向に狭い幅を有する。連結壁34、35は、隣り合う周壁31~33の縁部を互いに接続している。端壁36は、最も先端側の前記周壁31~33の端部を閉じるように設けられている。端壁36は、突出方向に対して直交している。このように、衝撃吸収体30は、先端側に向けて幅が段階的に狭くなるピラミッド形をなす。
【0046】
本実施形態では、周壁31~33は、先端側から順に設けられた第1周壁31、第2周壁32、及び第3周壁33を含み、連結壁34、35は、第1周壁31と第2周壁32との間に設けられた第1連結壁34と、第2周壁32と第3周壁33との間に設けられた第2連結壁35とを含む。第1周壁31及び端壁36は第1段部37を構成し、第2周壁32及び第1連結壁34は第2段部38を構成し、第3周壁33及び第2連結壁35は第3段部39を構成する。
【0047】
第1~第3周壁31~33のそれぞれは、円筒形の横断面を有し、かつ基端側の直径に対して先端側の直径が小さく形成されている。すなわち、第1~第3周壁31~33のそれぞれは、先端側が細い円錐台形に形成されている。第1~第3周壁31~33は、互いに等しい高さ(軸線Xに沿った方向における長さ)を有する。第1周壁31の厚みT1、第2周壁32の厚みT2、及び第3周壁33の厚みT3は、互いに異なる値に設定されている。
【0048】
第2周壁32及び第3周壁33は、互いに等しい体積を有する。これにより、第2周壁32は、第3周壁33よりも大きい厚みを有する。
【0049】
第1周壁31は、第2周壁32よりも小さい体積を有する。第2周壁32及び第3周壁33に対して第1周壁31は任意の厚みを有してよい。例えば、第1周壁31は第2周壁32よりも小さい厚みを有してもよい。また、第1周壁31は第3周壁33よりも大きい厚みを有してもよい。
【0050】
第1連結壁34は、第1周壁31の基端側縁と第2周壁32の先端側縁とを接続する。第1連結壁34は、第1周壁31の基端側縁及び第2周壁32の先端側縁に沿って延び、円環形に形成されている。第2連結壁35は、第2周壁32の基端側縁と第3周壁33の先端側縁とを接続する。第2連結壁35は、第2周壁32の基端側縁及び第3周壁33の先端側縁に沿って延び、円環形に形成されている。
【0051】
第1連結壁34及び第2連結壁35は、面が軸線Xと垂直な板状に形成されている。第1連結壁34及び第2連結壁35は、互いに等しい厚みを有する。第1連結壁34の内周縁から外周縁までの長さと、第2連結壁35の内周縁から外周縁までの長さは、互いに等しく形成されている。第1連結壁34の内周縁から外周縁までの長さ、及び第2連結壁35の内周縁から外周縁までの長さのそれぞれは、第1周壁31、第2周壁32、及び第3周壁33のそれぞれの高さのいずれよりも小さく形成されている。
【0052】
図2図4に示すように、第3周壁33の基端側縁には、第3周壁33の外方に延びたフランジ41が設けられている。フランジ41は、突出方向と略直交する板状に形成され、第3周壁33の基端側縁に沿って全周に形成されている。
【0053】
フランジ41が膨出部18の車外側面に結合されることによって、衝撃吸収体30はドアトリム3に結合されている。フランジ41と膨出部18との結合は、接着剤や両面テープ等による接着や、ねじによる締結、係止爪による係止等によってなされるとよい。
【0054】
図1に示すように、フランジ41が膨出部18に結合された状態において、衝撃吸収体30はアームレスト部15の下方に配置される。
【0055】
端壁36は、インナパネル4の車内側面に空隙を介して対向してもよく、インナパネル4の車内側面に接触してもよい。軸線Xに沿った方向から見て、端壁36は少なくとも一部が補強部材7と重なる位置に配置される。
【0056】
(衝撃吸収体:第2実施形態)
第2実施形態に係る衝撃吸収体30は、第1実施形態に係る衝撃吸収体30と比べて、第1~第3周壁31~33の厚み及び体積のみが異なり、他の構成は同様である。
【0057】
第2実施形態に係る衝撃吸収体30では、第1周壁31は第2周壁32よりも大きい厚みを有し、第2周壁32は第3周壁33よりも大きい厚みを有する。より好ましくは、第1~第3周壁31~33のそれぞれは、互いに等しい体積を有するように、それぞれの厚みが設定されているとよい。
【0058】
(作用・効果)
以上のように構成した衝撃吸収体30の作用及び効果について説明する。車両の側突によってドア1が車内側に移動し、インナパネル4と乗員又は乗員が着座したシートとの間で衝撃吸収体30が軸線Xに沿った方向に圧縮される。
【0059】
図6に示すように、衝撃吸収体30の圧縮変形の一態様では、図6(A)に示す初期状態から図6(B)、(C)に示すように第1周壁31及び第1連結壁34が変形して第1周壁31が第2周壁32の内側に移動する。次に、図6(D)に示すように、第2周壁32及び第2連結壁35が変形して第2周壁32が第3周壁33の内側に移動する。他の態様では、最初に、第2周壁32及び第2連結壁35が変形して第2周壁32が第3周壁33の内側に移動し、次に第1周壁31及び第1連結壁34が変形して第1周壁31が第2周壁32の内側に移動する。望ましい態様では、第1周壁31及び第1連結壁34の変形と、第2周壁32及び第2連結壁35の変形とが同時に発生する。各周壁31~33及び各連結壁34、35が変形することによって荷重が吸収され、乗員への荷重伝達を抑制することができる。
【0060】
図7は、実施例1、実施例2、及び比較例に係る衝撃吸収体30の変位量に対する荷重特性を示すグラフである。図7では、実施例1、実施例2、及び比較例に係る衝撃吸収体30を軸線Xに沿って圧縮し、各変位量において衝撃吸収体が生じる荷重(反力)を測定した結果を示している。
【0061】
実施例1は、上記の第1実施形態に係る衝撃吸収体30であり、第1周壁31の厚みT1が1.8mm、第2周壁32の厚みT2が2.0mm、第3周壁33の厚みT3が1.6mm、第1連結壁34、第2連結壁35、端壁36、及びフランジ41の厚みが2.0mmである。第1周壁31は、第2周壁32よりも小さい厚みを有し、かつ第3周壁33よりも大きい厚みを有する。第2周壁32及び第3周壁33は互いに等しい体積を有し、第1周壁は第2周壁よりも小さい体積を有する。
【0062】
実施例2は、上記の第2実施形態に係る衝撃吸収体30であり、第1実施形態に係る衝撃吸収体30と比較して各周壁31~33の厚み及び体積のみが異なる。実施例2では、第1周壁31の厚みT1が2.6mm、第2周壁32の厚みT2が2.0mm、第3周壁33の厚みT3が1.6mmである。第1周壁31は第2周壁32よりも大きい厚みを有し、第2周壁32は第3周壁33よりも大きい厚みを有する。また、第1周壁31、第2周壁32、及び第3周壁33のそれぞれは、互いに等しい体積を有する。
【0063】
比較例は、第1実施形態に係る衝撃吸収体30と比較して各周壁31~33の厚み及び体積のみが異なる。実施例2では、第1周壁31の厚みT1が2.0mm、第2周壁32の厚みT2が2.0mm、第3周壁33の厚みT3が2.0mmであり、第1~第3周壁31~33は互いに等しい厚みを有する。第1周壁31は第2周壁32よりも小さい体積を有し、第2周壁32は第3周壁33よりも小さい体積を有する。
【0064】
比較例では、第1周壁31の剛性に対して第2周壁32の剛性の方が高いため、最初に第1周壁31及び第1連結壁34が主に変形し、次に第2周壁32及び第2連結壁35が変形する。そのため、図6に示すように、第2周壁32及び第2連結壁35が変形を開始するタイミング(変位が45~50mmの範囲)で、荷重が急激に増加する。
【0065】
実施例2では、第1~第3周壁31~33の体積を同一にし、第1周壁31が第2周壁32よりも大きい厚みを有するため、最初に第2周壁32及び第2連結壁35が主に変形し、次に第1周壁31及び第1連結壁34が変形する。この場合、図6に示すように、第1周壁31及び第1連結壁34が変形を開始するタイミング(変位が45~50mmの範囲)で、荷重が増加する。しかし、実施例2における荷重の増加量は、比較例よりも小さくなる。
【0066】
実施例1では、第2周壁32及び第3周壁33の体積を同一にし、第1周壁31の体積を第2周壁32の体積よりも小さくしている。その結果、図6に示すように、第1周壁31及び第1連結壁34の変形と、第2周壁32及び第2連結壁35の変形とが同時に発生し、変位が45~50mmの範囲における荷重の急激な増加が消失する。第1周壁31は端壁36に接続しているため、第2周壁32と同じ体積にすると、第2周壁32よりも剛性が高くなり、変形し難くなる。そのため、第1周壁31の体積を第2周壁32の体積よりも小さくすることによって、第1周壁31及び第2周壁32の変形を同時に発生させることができる。
【0067】
衝撃吸収体30は、フランジ41によってドアトリム3との接触面積を増加させることができる。これにより、インナパネル4から荷重を受ける衝撃吸収体30がドアトリム3から安定性良く反力を受けることができる。
【0068】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、他の実施形態では衝撃吸収体30は複数設けられてもよい。また、衝撃吸収体30の段部の数(周壁31~33の数)は、3以上の範囲で任意に変更してもよい。
【0069】
また、各周壁31~33の横断面の外形は、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形及び星形等の様々な形状とすることができる。図8に示すように、衝撃吸収体70の各周壁31~33の横断面の外形は、四角形(四角筒形)であってもよい。この場合、各連結壁34、35の形状は、各周壁31~33の形状に合わせて四角形枠形になる。各周壁31~33及び各連結壁34、35の厚みは、上記の第1実施形態又は第2実施形態での関係を満たすように設定されている。衝撃吸収体70の他の構成は、衝撃吸収体30の構成と同様にするとよい。
【符号の説明】
【0070】
1 :ドア
2 :ドアパネル(骨格部材)
3 :ドアトリム
15 :アームレスト部
30 :衝撃吸収体
31 :第1周壁
32 :第2周壁
33 :第3周壁
34 :第1連結壁
35 :第2連結壁
36 :端壁
37 :第1段部
38 :第2段部
39 :第3段部
41 :フランジ
X :軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8