(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019225
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20220120BHJP
E01D 19/06 20060101ALI20220120BHJP
E01D 19/08 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01D19/06
E01D19/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122944
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】592061854
【氏名又は名称】ヒートロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】白石 英治
【テーマコード(参考)】
2D051
2D059
【Fターム(参考)】
2D051AC04
2D051FA10
2D051FA12
2D051FA18
2D059AA13
2D059GG02
2D059GG37
2D059GG45
(57)【要約】
【課題】 経年劣化し難くかつ十分な止水効果を備えた、遊間に設けられる機能性伸縮材を提供する。
【解決手段】
橋梁または高架道路の橋桁の床版(3)の遊間に設けられ、雨水の落下を防止するようになっている機能性伸縮材(1)を、発泡ゴムからなる略直方体状の発泡体(6)と、一対の側板(7)とから構成する。発泡ゴムは天然ゴムまたは合成ゴムを不活性ガスによって発泡させたものとする。このような発泡体(6)は、アスファルトに所定時間浸し、その表面から所定深さ、例えば5mm~40mmまで含浸させるようにする。アスファルトが含浸された発泡体(6)に対し、一対の側面に側板(7)を貼合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水、防水、防音を目的として、橋梁または構造物の目地間隙あるいは伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材であって、
前記機能性伸縮材は発泡ゴムから略直方体状に形成された発泡体を備え、該発泡体はその表面から所定深さまでアスファルトが含浸されていることを特徴とする、構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性伸縮材において、前記発泡体のアスファルトの含浸の深さは5mm~40mmであることを特徴とする、構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の機能性伸縮材において、前記機能性伸縮材は前記発泡体と、その発泡体の一対の面に貼合されている一対の側板とからなることを特徴とする、構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材に関するものであり、限定するものではないが、橋梁や高架道路において、橋桁の遊間に設けられる止水材として好適な構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁や高架道路、所定の建築物に近接して設けられている構造物等には、いわゆる伸縮遊間部が形成されている。橋梁を例として説明すると、橋梁は橋脚の上に設置された橋桁とこの橋桁の上に敷設されたアスファルト合材とから構成されている。そしてこれら隣り合う橋桁同士には、所定の隙間すなわち遊間が形成されている。遊間は温度変化の熱膨張による橋桁の伸縮を逃がしたり、地震や震動による影響を緩和するために設けられ、本明細書においては伸縮する遊間部、つまり伸縮遊間部と呼んでいる。橋桁同士の遊間には、例えば特許文献1、2において提案されているような所定の止水構造が設けられ、道路上に降った雨水が下方に落下しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-56544号公報
【特許文献2】実公昭46-35554号公報
【0004】
ところで従来、止水構造として発泡ゴムからなる止水材が採用されることが多い。あるいは発泡ゴムからなる止水材が、他の止水構造と併用されることもある。発泡ゴムからなる止水材は、不活性ガス等により発泡させた天然ゴムまたは発泡させたウレタン等の合成ゴムからなり、道路幅方向に長い直方体状に形成されている。このような止水材が遊間に挿入されている。止水材は発泡ゴムからなり弾性を備えているので、季節毎の気温変化による遊間の大きさの変動も、あるいは車両走行によって生じる瞬間的な遊間の大きさの変動も、適切に吸収できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
橋桁間の雨水の落下は、従来の発泡ゴムからなる止水材によっても防止できるが、このような止水材には解決すべき問題も見受けられる。まず、劣化の問題がある。発泡させた天然ゴムから止水材を形成すると、初期には弾性力が大きく遊間の大きさの変動を吸収できるが、所定期間を経過すると劣化が進行して弾性力が無くなってしまう。また発泡させた合成ゴムから止水材を形成すると、劣化による弾性力の喪失の程度は比較的少ないが、紫外線等に対する耐性つまり耐候性に問題があり、やはり所定期間を経過すると劣化してしまう。いずれにしても、劣化が進行すると遊間の変動に対応することができなくなり、止水効果が喪失してしまう。他の問題もある。劣化していない止水材においても止水効果が必ずしも十分でないという問題である。発泡ゴムからなる止水材において内部の気泡は所定の割合で連続している。つまり止水材内部には所定の割合で連泡が形成されている。ほとんど雨水は止水材によって止水されるが、一部の雨水は止水材内部に形成されてえいる連泡を伝って落下してしまう。
【0006】
ところで、伸縮遊間部には橋桁間の遊間の他にも色々あり、建造物の壁同士、あるいは建造物の壁と他の構造物との間にも所定の隙間が形成され、これらも伸縮遊間部である。このような伸縮遊間部にも、雨水の落下、止水を目的とし、あるいは防音を目的として目地材を設ける場合がある。しかしながら、特許文献1、2に記載の止水構造は、橋桁間の遊間に設けられることは想定されているが、他の伸縮遊間部に設けられることは想定されていない。
【0007】
本発明は、上記したような問題点を解決した、伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材を提供することを目的とし、具体的には、橋桁の遊間に設けられ場合には経年劣化し難く十分な止水効果を備えた止水材として使用することができ、他の構造物の目地間隙に設けられる場合いは、止水、防水できるだけでなく防音の作用も奏する機能性伸縮材をを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、止水、防水、防音を目的として、橋梁または構造物の目地間隙あるいは伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材であって、前記機能性伸縮材は発泡ゴムから略直方体状に形成された発泡体を備え、該発泡体はその表面から所定深さまでアスファルトが含浸されていることを特徴とする、構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の機能性伸縮材において、前記発泡体のアスファルトの含浸の深さは5mm~40mmであることを特徴とする、構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の機能性伸縮材において、前記機能性伸縮材は前記発泡体と、その発泡体の一対の面に貼合されている一対の側板とからなることを特徴とする、構造物の伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材として構成される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明は、止水、防水、防音を目的として、橋梁または構造物の目地間隙あるいは伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材を対象としている。そして本発明によると、機能性伸縮材は発泡ゴムからなる略直方体状の発泡体を備え、該発泡体はその表面から所定深さまでアスファルトが含浸されている。そうすると、発泡体の表面がアスファルトによって保護されることになるので、紫外線の影響を受けにくくなり、内部の劣化が防止される。またアスファルトにより水の浸透が防止されるので、止水効果は実質的に完全になる。そしてアスファルトは発泡体の内部には浸透していないので、発泡体の弾性力、つまり反発力は十分に維持される。従って遊間の大きさが変動しても適切に変動を吸収することができる。さらには、アスファルトが発泡体の内部にまで浸透していないので、発泡体が強く圧縮されてもアスファルトが発泡体から外部にはみ出すこともない。つまり、本発明に係る止水材は長期間に渡って劣化しにくく弾性力が維持されることになると共に、実質的に完全な止水効果が維持される。さらに振動を吸収するので防音効果も得られる。そして本発明の機能性伸縮材は橋梁以外の他の構造物の伸縮遊間部にも設けることもでき、止水、防水、防音の効果を奏することになる。他の発明によると、アスファルトの含浸の深さは5mm~40mmになっている。アスファルトの含浸の深さはこのように十分に浅くて済み、このような含浸深さがあれば十分に発泡体、つまり機能性伸縮材の劣化の進行を抑制することが保証され、十分な止水効果が得られることになる。さらに他の発明によると、機能性伸縮材は発泡体と、発泡体の一対の側面に貼合されている一対の側板とからなる。橋桁の遊間に設けられる場合、側板を介して床版に接続されるので、発泡ゴムが保護されることになり、さらに劣化の進行が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】橋梁または高架道路の隣り合う橋桁と、それぞれの橋桁の床版の遊間に設けられる本発明の実施の形態に係る機能性伸縮材を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る機能性伸縮材1は、
図1に示されているように、橋桁を構成している床版3、3の遊間に設けられるようになっている。機能性伸縮材1は、
図1に示されているように、遊間に単独で設けられるようにしてもよいし、あるいは樋構造等の他の止水構造と併用されるようにしてもよい。床版3、3の上面は所定の舗装材により舗装されているが、床版3、3間の継目部分には、例えばフィンガージョイントからなる継手構造5が設けられている。本実施の形態に係る機能性伸縮材1はこのような継手構造5の下方に設けられるようになっている。
【0012】
本実施の形態に係る機能性伸縮材1は、道路方向に長い直方体状に形成されており、略直方体状の発泡体6と、この発泡体6の一対の側面に貼合されている一対の側板7、7とから構成されている。発泡体7は、天然ゴム、またはウレタン等の合成ゴムからなり、これが不活性ガス等により発泡されている。つまり発泡ゴムからなる。発泡体7において、気泡は個々に独立した独立泡だけでなく、気泡同士が連続した連泡が多数含まれている。つまり発泡ゴムは多孔質のスポンジ状になっている。このように連泡を含む多数の空隙が内部に形成されているので、発泡体7は圧縮により容易に変形することができ、適切な弾性、つまり反発力を備えている。
【0013】
本実施の形態に係る機能性伸縮材1は、発泡体6についてその表面が所定深さだけアスファルトに含浸されている点に特徴がある。含浸させるアスファルトは、常温で粘度が150~500mPa・sの低粘度アスファルトが好ましい。このような低粘度アスファルトは、狭い空隙にも浸透し易いので容易に含浸させることができる。発泡体6は低粘度アスファルトに所定時間浸されることによって、その表面から5mm~40mm程度の深さアスファルトに含浸されることになる。このときアスファルトは、発泡体6の表面から100cm2あたり2.5ml~10mlの量が含浸されることになる。なお、さらに低粘度の低粘度アスファルトを使用すると、含浸量が多くなって発泡体6の内部まで浸透して含浸深さが深くなりすぎる。そうすると圧縮時に反発力が小さくなってしまうし、圧縮するときアスファルトが外部にはみ出す原因になる。また粘度の大きいアスファルトでは、発泡体6に適切に含浸させることが困難になる。
【0014】
側板7、7は、合成樹脂、ゴム、鋼板等の金属板から形成することができる。あるいは硬質な発泡樹脂から構成することもできる。このような側板7、7は、アスファルトが含浸された発泡体6の一対の側面に貼合されている。
【0015】
本実施の形態に係る機能性伸縮材1は、発泡体6を圧縮させて側板7、7間の距離を小さくし、そして床版3、3の遊間に挿入される。発泡体6は弾性により膨張し、側板7、7は床版3、3の端面に押しつけられ、機能性伸縮材1は遊間に所定の押圧力で設けられることになる。つまり機能性伸縮材1は隙間無く床版3、3に密着し、これによって雨水の下方への落下が防止される。必要に応じて側板7、7は床版3、3の端面に接着してもよい。
【符号の説明】
【0016】
1 機能性伸縮材 3 床版
5 継手構造 6 発泡体
7 側板