(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019233
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】固体撮像素子および固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20220120BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H01L27/146 D
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122955
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 智寛
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA06
4M118CA02
4M118FA06
4M118GC07
4M118GD05
4M118GD20
(57)【要約】
【課題】半円筒状のマイクロレンズが延伸する方向に直交する方向の半円筒状のマイクロレンズのピッチが10μm~20μmであっても、マイクロレンズの断面形状の乱れが無い半円筒状のマイクロレンズからなるレンズアレイを備えた固体撮像素子を提供する。
【解決手段】複数のフォトダイオード4をXYマトリクス状に形成した固体撮像素子用半導体基板と、該フォトダイオードと平面視で重なる様に形成された複数の半円筒状のマイクロレンズ1からなるレンズアレイ8と、を備えた固体撮像素子であって、レンズアレイの各半円筒状のマイクロレンズは、XYマトリクス状に形成されたフォトダイオードに対応して延伸し、互いに平行に、一定のピッチで備えられており、該マイクロレンズのY方向またはX方向における形成ピッチは、10μm~20μmであり、高さが1.5μm~3.0μmである事を特徴とする固体撮像素子10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向および前記X方向と直交する方向であるY方向からなるXYマトリクス状に複数の光電変換素子を配置した固体撮像素子用半導体基板と、該光電変換素子と平面視で重なる様に配置した複数の半円筒状のマイクロレンズからなるレンズアレイと、を備えた固体撮像素子であって、
前記レンズアレイを構成する各々の前記半円筒状のマイクロレンズは、XYマトリクス状に形成された前記光電変換素子のX方向またはY方向に沿って延伸し、前記半円筒状のマイクロレンズの長手方向が互いに平行であり、
該半円筒状のマイクロレンズの幅は10μm以上20μm以下であり、高さが1.5μm以上3.0μm以下である事を特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記半円筒状のマイクロレンズで覆われた透明層からなるパターンを有し、
前記透明層からなるパターンの幅は該半円筒状のマイクロレンズの30%以上50%以下であり、
前記透明層からなるパターンの高さは該半円筒状のマイクロレンズの50%以上70%以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記透明層からなるパターンの幅の中心を通り長手方向に延伸する中心線と、前記半円筒状のマイクロレンズの幅の中心を通り長手方向に延伸する中心線とが平面視で重なる事を特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記半円筒状のマイクロレンズの屈折率は前記透明層からなるパターンの屈折率以上である事を特徴とする請求項2または3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
請求項1に記載の固体撮像素子の製造方法であって、
前記半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層を形成する工程と、
透明層からなるパターンを形成する工程と、
前記半円筒状のマイクロレンズの母型となる感光性樹脂パターンを形成する工程と、
該感光性樹脂パターンを加熱処理する事により前記半円筒状のマイクロレンズの母型を形成する工程と、
前記半円筒状のマイクロレンズの母型と透明層からなるパターンをドライエッチングにより除去し、前記マイクロレンズとなる樹脂層に前記半円筒状のマイクロレンズを転写する工程と、を備えていることを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項6】
前記透明層からなるパターンの幅の中心を通り長手方向に延伸する中心線と、前記半円筒状のマイクロレンズの幅の中心を通り長手方向に延伸する中心線とが平面視で重なる事を特徴とする請求項5に記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項7】
請求項2から4のいずれか一項に記載の固体撮像素子の製造方法であって、
前記半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層を形成する工程と、
透明層からなるパターンを形成する工程と、
前記半円筒状のマイクロレンズとなる感光性樹脂パターンを形成する工程と、
該感光性樹脂パターンを加熱処理する事により前記半円筒状のマイクロレンズを形成する工程と、を備えていることを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項8】
前記透明層からなるパターンの幅は該半円筒状のマイクロレンズの30%以上50%以下であり、
前記透明層からなるパターンの高さは該半円筒状のマイクロレンズの50%以上70%以下であることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の固体撮像素子の製造方
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズを使用した固体撮像素子に関する。更に詳しくは、半円筒状のマイクロレンズを使用した固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子は、レンズ系を通して固体撮像素子面に結像させた画像を、フォトダイオードなどの光電変換素子を用いて電気信号に変換する半導体装置である。固体撮像素子は、シリコンウェハをウェハ加工して作製された半導体デバイスであり、マトリクス状に光電変換素子が配列されている。それらの光電変換素子の上方の周囲には多層配線層が形成されている。その様な半導体素子の表面の最上層はパッシベーション膜で被覆され、水分などが半導体素子に侵入されない様な構造となっている。その様な固体撮像素子の表面には、色分解用のオンチップカラーフィルタが形成されており、更にその上層に、光電変換素子の周囲の光も光電変換素子に取り込んで感度を向上させるためのマイクロレンズが形成されているのが通常である。
【0003】
マイクロレンズの形態は、通常は半球状であるが、固体撮像デバイスの形態によっては、かまぼこ状のマイクロレンズが使用される事がある。かまぼこ状のマイクロレンズとは、長尺状のレンズが互いに平行に隣接した状態で、長手方向に延伸しているマイクロレンズであり、1本のかまぼこ状のマイクロレンズの長手方向に直交する平面における断面形状は半円状であるが、非球面を形成できる特徴がある。以後、かまぼこ状のマイクロレンズを、半円筒状のマイクロレンズ、または単にマイクロレンズとも記す事にする。
【0004】
この半円筒状のマイクロレンズは、非球面レンズとする事ができる為、レンズとしての集光効率が高いマイクロレンズを作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-62692号公報
【特許文献2】特開2008-015395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この様な半円筒状のマイクロレンズは、半円筒状のマイクロレンズの長手方向に直交する方向に、複数の半円筒状のマイクロレンズが平行に連接して備えられている。
図3(a)は、マイクロレンズ1-1が延伸する方向に直交する面における固体撮像素子10-1の断面図の一例を示したものである。長手方向に直交する方向のピッチ(半円筒状のマイクロレンズの幅と同程度の寸法)が10μm未満の場合には、半円筒状のマイクロレンズ1-1の断面形状は半円筒状の正常な断面形状となる。この場合、マイクロレンズ1-1に入射した光(入射光)5は、平坦化層2とカラーフィルタ3-1を通り、設計通りにフォトダイオード4の表面に集光される。
【0007】
しかしながら、長手方向に直交する方向のピッチが10μm~20μmの場合、
図3(b)に固体撮像素子10´の断面図を例示した様に、マイクロレンズ1´の断面における中央部において、レンズ形状の乱れ部6が形成される場合が出てくる場合があった。レンズ形状の乱れ部6とは、マイクロレンズ1´の断面において、中央部に凹みが発生する現象である。この様なレンズの表面形状の乱れが発生すると、レンズとしての正常な機能を失う。その為、入射光5´として例示した様に、レンズによる集光が乱れ、正常にフォトダイオード4の表面に集光されなくなる。なお、平坦化層2とフォトダイオード4は
図3(a)と同じであるが、マイクロレンズ1´は、
図3(a)におけるカラーフィルタ3-1のピッチ(10μm未満)より大きなピッチ(10μm~20μm)で形成されたカラーフィルタ3´に対応して形成された大きな半円筒状のマイクロレンズである。
【0008】
この様な半円筒状のマイクロレンズの問題点を解決する技術に最も近い先行技術としては、例えば、特許文献1に、カラーフィルタを用いない液晶表示装置が開示されている。この技術は、半円筒状のマイクロレンズに、それぞれ赤色、緑色、青色となる角度を備えたプリズム構造を備えておく事により、プリズムの作用によってそれらのプリズム構造に入射した光を分光し、カラーフィルタを使用する事無く赤色、緑色、青色を作り出す技術である。
【0009】
また、特許文献2には、半円筒状のマイクロレンズを使用した立体画像表示装置が開示されている。この技術においては、立体感を作り出すのに必要な両眼に入る画像の視差を作り出す手段として、焦点距離が異なる2枚のマイクロレンズシートを、半円筒状のマイクロレンズの長手方向を異なる方向にして、一定の角度をなす様に、配置する事で作り出す事を特徴としている。
【0010】
これらの技術は、半円筒状のマイクロレンズに関連する技術であるが、半円筒状のマイクロレンズが延伸する方向に直交する方向の半円筒状のマイクロレンズのピッチが10μm~20μmの場合に、マイクロレンズの断面形状の中央部に発生するレンズ形状の乱れ(凹み)を解決する技術とは異なる。
【0011】
上記の事情に鑑み、本発明は、半円筒状のマイクロレンズが延伸する方向に直交する方向の半円筒状のマイクロレンズのピッチが10μm~20μmであっても、マイクロレンズの断面形状の乱れが無い半円筒状のマイクロレンズからなるレンズアレイを備えた固体撮像素子を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第一態様は、複数のフォトダイオードをXYマトリクス状に形成した固体撮像素子用半導体基板と、該フォトダイオードと平面視で重なる様に形成された複数の半円筒状のマイクロレンズからなるレンズアレイと、を備えた固体撮像素子であって、
レンズアレイを構成する各半円筒状のマイクロレンズは、XYマトリクス状に形成されたフォトダイオードのXまたはY方向に対応して延伸し、互いに平行に、一定のピッチで備えられており、
該半円筒状のマイクロレンズの幅方向における形成ピッチは、10μm~20μmであり、高さが1.5μm~3.0μmである事を特徴とする固体撮像素子である。
【0013】
また、複数のフォトダイオードをXYマトリクス状に形成した固体撮像素子用半導体基板と、該フォトダイオードと平面視で重なる様に形成された複数の半円筒状のマイクロレンズからなるレンズアレイと、を備えた固体撮像素子であって、
レンズアレイを構成する各半円筒状のマイクロレンズは、XYマトリクス状に形成されたフォトダイオードのXまたはY方向に対応して延伸し、互いに平行に、一定のピッチで備えられており、
前記半円筒状のマイクロレンズの幅方向における形成ピッチは、10μm~20μmであり、高さが1.5μm~3.0μmであり、
前記半円筒状のマイクロレンズと前記半導体基板の間には、前記半円筒状のマイクロレンズの幅の中点を通り、長手方向に延伸する中心線と重なる位置に、該半円筒状のマイクロレンズの、30%~50%の幅で、且つ50%~70%の高さの、透明層からなるパタ
ーンが備えられている事を特徴とする固体撮像素子である。
【0014】
また、前記透明層の屈折率は、前記半円筒状のマイクロレンズの屈折率より低い事を特徴とする。
【0015】
また、本発明の第二態様は、
固体撮像素子のレンズアレイの製造方法であって、
前記半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層を形成する工程と、
透明層からなるパターンを形成する工程と、
前記半円筒状のマイクロレンズの母型となる感光性樹脂パターンを形成する工程と、
該感光性樹脂パターンを加熱処理する事により前記半円筒状のマイクロレンズの母型を形成する工程と、
前記半円筒状のマイクロレンズの母型と透明層からなるパターンをドライエッチングにより除去し、前記マイクロレンズとなる樹脂層に前記半円筒状のマイクロレンズを転写する工程と、を備えており、
前記半円筒状のマイクロレンズの幅の中点を通り長手方向に延伸する中心線は、前記透明層からなるパターンの幅の中点を通り長手方向に延伸する中心線と平面視で重なる位置に形成される事を特徴とするレンズアレイの製造方法である。
【0016】
また、前記半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層を形成する工程と、
透明層からなるパターンを形成する工程と、
前記半円筒状のマイクロレンズとなる感光性樹脂パターンを形成する工程と、
該感光性樹脂パターンを加熱処理する事により前記半円筒状のマイクロレンズを形成する工程と、を備えており、
前記半円筒状のマイクロレンズの幅の中点を通り長手方向に延伸する中心線は、前記透明層からなるパターンの幅の中点を通り長手方向に延伸する中心線と平面視で重なる位置に形成される事を特徴とするレンズアレイの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の固体撮像素子によれば、複数のフォトダイオードがXYマトリクス状に形成された固体撮像素子用半導体基板のX方向またはY方向に形成されたフォトダイオードに沿って延伸し、互いに平行に、連接して備えられた半円筒状のマイクロレンズを備えている。それらの半円筒状のマイクロレンズのY方向またはX方向における形成ピッチは、10μm~20μmであり、高さが1.5μm~3.0μmである。これらの事により、半円筒状のマイクロレンズの長手方向に直交する平面における断面の最も高い部位を中心としたレンズ形状の乱れが発生することが無い。その為、半円筒状のマイクロレンズの集光性能が劣化することが無い。
【0018】
また、本発明の固体撮像素子によれば、半円筒状のマイクロレンズと半導体基板の間には、X方向またはY方向に沿って、該半円筒状のマイクロレンズの幅の30%~50%の幅で、半円筒状のマイクロレンズの50%~70%の高さの透明層が備えられている。その為、半円筒状のマイクロレンズの長手方向に直交する平面における断面の最も高い部位を中心としたレンズ形状の乱れが発生することが無い。その為、半円筒状のマイクロレンズの集光性能が劣化することが無い。
【0019】
本発明のレンズアレイの製造方法によれば、樹脂の熱フロー工程の見直しをせず、パターンの形成工程を1工程増やすだけで、本発明の固体撮像素子を提供可能とする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の固体撮像素子の半円筒状のマイクロレンズを説明する断面説明図。
【
図2】本発明の固体撮像素子の半円筒状のマイクロレンズの製造方法を説明する断面説明図。
【
図3】従来の固体撮像素子の半円筒状のマイクロレンズの問題点を説明する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第一の実施形態>
本発明の第一の実施形態における固体撮像素子について
図1(a)を用いて説明する。(固体撮像素子)
本発明の固体撮像素子10は、複数のフォトダイオード4をXYマトリクス状に形成した固体撮像素子用半導体基板と、該フォトダイオード4と平面視で重なる様に形成された複数の半円筒状のマイクロレンズ1からなるレンズアレイ8と、を備えた固体撮像素子である。
【0022】
ここで、半円筒状のマイクロレンズ1は、1本1本の半円筒状のマイクロレンズを指す。また、レンズアレイ8は、複数の半円筒状のマイクロレンズ1が、マイクロレンズ1が形成されている平面上で、その長手方向に直交する方向に、一定のピッチで備えられているものを指す。1本1本の半円筒状のマイクロレンズ1は、互いに端部で重なっていても良いし、分離し離間した状態で、一定のピッチで配置されたものであっても良い。また、隣接するマイクロレンズ1の長辺同士が並行に配列されてもよい。
【0023】
各半円筒状のマイクロレンズ1からなるレンズアレイ8は、XYマトリクス状に形成されたフォトダイオード4のX方向かY方向の何れかに沿って延伸し、互いに平行に、一定のピッチで備えられている。即ち、印刷物の立体視などで使用されるレンチキュラーレンズより微細な寸法のレンチキュラーレンズがX方向およびY方向に形成されたフォトダイオード4に対応して備えられている。なお、レンチキュラーレンズとは、かまぼこ状または半円筒状のレンズが、その長手方向に直交する方向に、複数本、一定のピッチで形成されたシート状のレンズである。なお、印刷物の立体視や見る角度で画像が変化するチェンジングに使用する半円筒状のレンズの形成ピッチは、通常、15(Line/inch)~150(Line/inch)(約1.7mm~約17.0mm)である。
【0024】
本発明の固体撮像素子に使用される半円筒状のマイクロレンズ1からなるレンズアレイ8のY方向またはX方向における形成ピッチは10μm~20μmであり、高さは1.5μm~3.0μmである事が特徴である。この様なピッチと高さを備えた半円筒状のマイクロレンズ1からなるレンズアレイ8であっても、半円筒状のマイクロレンズ1の最も厚い部分を中心にして発生する凹部などのレンズ形状の乱れが発生していない。
【0025】
(半円筒状のマイクロレンズの製造方法)
上記で説明した固体撮像素子は、本発明の実施形態における半円筒状のマイクロレンズの製造方法によって得る事が可能である。以下に本発明の一実施形態における半円筒状のマイクロレンズの製造方法を説明する。なお、半円筒状のマイクロレンズ以外の構成としては、
図1(a)に示すように、フォトダイオード4がXYマトリクス状の形成された半導体基板上に平坦化層などの機能層が形成されている。機能層の表面にはカラーフィルタ3が形成され、更にカラーフィルタ3の表面に平坦化層2が形成されている。なお、機能層の形成は任意であり、
図1(a)においては不図示である。
【0026】
半円筒状のマイクロレンズの製造方法は、半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層を形成する工程と、透明層からなるパターンを形成する工程と、半円筒状のマイクロレンズの母型となる感光性樹脂パターンを形成する工程と、該感光性樹脂パターンを加熱処理する
事により前記半円筒状のマイクロレンズの母型を形成する工程と、半円筒状のマイクロレンズの母型と透明層からなるパターンをドライエッチングにより除去し、マイクロレンズとなる樹脂層に前記半円筒状のマイクロレンズを転写する工程と、を備えている。
【0027】
以下に、
図2(A)を用いて本発明の半円筒状のマイクロレンズの製造方法について説明する。
(半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層を形成する工程)
半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層を形成する工程では、まず、フォトダイオード4がXYマトリクス状に配置された半導体基板を用意し(
図2(A)(a)参照)、その半導体基板上にカラーフィルタ3をフォトダイオードに目合わせして形成する(
図2(A)(b)参照)。次に、カラーフィルタ3の上に平坦化層2を形成する(
図2(A)(c)参照)。次に、平坦化層2の表面にレンズ樹脂層9を形成する(
図2(A)(d)参照)。レンズ樹脂層9は、半円筒状のマイクロレンズ1となる樹脂層である。
【0028】
レンズ樹脂層9の材料は、透明な樹脂であれば特に限定する必要は無い。例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA、Polymethyl methacrylate)を好適に使用する事ができる。
レンズ樹脂層9の形成方法は、透明な樹脂とその溶剤などによって作製した塗工液を用い、各種の塗工方法を用いて塗工する事ができる。例えば、スピンコート法をはじめ、ロールコート法、オフセット転写法、スクリーン印刷法、などを挙げることができる。
【0029】
(透明層からなるパターンを形成する工程)
透明層からなるパターンを形成する工程では、まず、半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層(レンズ樹脂層9)の上に、透明層7からなるパターンを形成する(
図2(A)(e)参照)。
透明層7からなるパターンの幅は半円筒状のマイクロレンズの幅の30%~50%であり、パターンの高さ(または厚さ)は半円筒状のマイクロレンズの50%~70%である。透明層7からなるパターンの幅が、半円筒状のマイクロレンズの幅の30%未満である場合、凹状となったマイクロレンズ形状を改善するほどの影響を与えられなくなる可能性が高まる。一方、50%を超えた場合、凹状箇所だけでなく、マイクロレンズ全体の膜厚に影響を与えてしまいやすい。また、透明層からなるパターンの高さが、半円筒状のマイクロレンズの50%未満である場合、凹状となった分の膜厚を補填することが出来ず、凹状が残りうる。さらに、70%を超えた場合、マイクロレンズの一部のみ凸状となりやすい。
【0030】
フォトダイオード4などの光電変換素子が半導体基板にXYマトリクス状に形成されており、半円筒状のマイクロレンズはこれら光電変換素子に対応して形成される。例えば、半導体基板のX方向に形成された光電変換素子に対応して、半円筒状のマイクロレンズの長手方向をX方向と平行になるように形成される。Y方向には、同じ形態の半円筒状のマイクロレンズが、光電変換素子が形成されている位置に対応して、平行に、且つ連接して形成される。なお、X方向とY方向が入れ替わっても良い。
【0031】
透明層7からなるパターンと半円筒状のマイクロレンズとは長手方向(延伸する方向)が平行となる。且つ透明層からなるパターンは半円筒状のマイクロレンズが延伸する方向と直交する幅方向の略中点を通る。さらに、透明層からなるパターンの長手方向の中心線と半円筒状のマイクロレンズの長手方向の中心線が一致する方が好ましい。この様にする事により、最終的に形成される半円筒状のマイクロレンズの長手方向に直交する平面における断面形状が左右対称の形状となる。また、透明層7からなるパターンの厚さや幅が上述した数値範囲に入っている事により、大型の半円筒状のマイクロレンズであってもレンズ頂点付近の形状が乱れることを抑制でき、優れた集光性能を備えたレンズとなる。
【0032】
透明層7の材料は、下地の半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層と同じ材料である事が好ましいが、その樹脂層と同等の屈折率を持つ透明な樹脂であれば使用することができる。
【0033】
例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA、Polymethyl methacrylate)、ポリメチルペンテン(PMP、Polymethylpentene)、アリルジグリコールカーボネート(CR-39)、MS樹脂(メチルメタクリレート・スチレン共重合)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレン樹脂(PS)などを挙げる事ができる。
【0034】
透明層7からなるパターンを形成する方法としては、特に限定する必要は無い。例えば、上記したポリメタクリル酸メチル樹脂などの透明樹脂材料を使用した感光性透明樹脂塗液を作製し、その塗液を用いて、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする事により、透明層からなるパターンを形成する事ができる。透明層からなるパターンが延伸する方向に直交する方向である幅の中点が、半円筒状のマイクロレンズの幅の中点と、一致する様に形成する。しかしながら、この段階では半円筒状のマイクロレンズは形成されていない。その為、半導体基板にXYマトリクス状に配置されているフォトダイオードなどの光電変換素子に対応して形成すれば良い。
【0035】
(半円筒状のマイクロレンズの母型となる感光性樹脂パターンを形成する工程)
半円筒状のマイクロレンズの母型となる感光性樹脂パターンを形成する工程では、半円筒状のマイクロレンズとなる樹脂層と、その樹脂層の上に形成された透明層からなるパターンが形成された基板の上に、感光性樹脂層を形成し、その感光性樹脂層をフォトリソグラフィ法によってパターン化する。この状態では、ほぼ矩形の断面形状を備えた感光性樹脂層のパターンが形成される(図示省略)。
【0036】
次に、このパターン化された感光性樹脂層を加熱処理する事によって、半円筒状のマイクロレンズと同等の断面形状を備えた感光性樹脂層からなるレジストパターン11が得られる(
図2(A)(f)参照)。この様にして、半円筒状のマイクロレンズを形成する為のエッチングマスクパターン、即ち半円筒状のマイクロレンズの母型が形成される。
【0037】
この様にして形成された半円筒状のマイクロレンズの母型には、半円筒状のマイクロレンズの母型が延伸する方向に直交する方向における半円筒状のマイクロレンズの母型のピッチが10μm~20μmであっても、マイクロレンズの母型の断面形状の乱れ(凹み)が形成される事が無い。凹みは、通常はマイクロレンズの母型の断面形状の中央部に形成されるが、その部分には、透明層7からなるパターンが形成されており、透明層7からなるパターンの厚さに対応して厚くなっている。その透明層7からなるパターンの厚さは、マイクロレンズの母型の断面形状の乱れ(凹み)が形成されない厚さに調整されている為、母型の断面形状の乱れ(凹み)が形成される事が無い。この様にする為、半円筒状のマイクロレンズの幅の30%~50%の幅で、半円筒状のマイクロレンズの50%~70%の高さ(または厚さ)である透明層からなるパターンを形成する事が必要となる。
【0038】
(半円筒状のマイクロレンズの母型と透明層からなるパターンをドライエッチングにより除去し、レンズ樹脂層9に半円筒状のマイクロレンズを転写する工程)
半円筒状のマイクロレンズの母型(レジストパターン11)と透明層7からなるパターンをドライエッチングにより除去し、レンズ樹脂層9に半円筒状のマイクロレンズを転写する工程では、半円筒状のマイクロレンズの母型をエッチングマスクとして、その下地にある半円筒状のマイクロレンズとなるレンズ樹脂層9をドライエッチングする。
【0039】
ドライエッチングの種類としては、酸素ガスを含むガスを用いて樹脂のガス化によるドライエッチングが可能なものであれば特に限定されない。例えば、プラズマアッシャやオゾンアッシャと呼ばれる装置を使用する事ができる。装置の電極構成としては、平行平板型の装置であっても良いし、バレル型の装置であっても構わない。
【0040】
ドライエッチングを行う事によって、エッチングマスクでカバーされていない下地の半円筒状のマイクロレンズとなるレンズ樹脂層9はドライエッチングされて除去されて行く。同時に、エッチングマスクも除去されて行く。エッチングマスクがドライエッチングによって消失した段階で、エッチングマスクの形態が下地の半円筒状のマイクロレンズとなるレンズ樹脂層9に転写され、半円筒状のマイクロレンズ1からなるレンズアレイ8が形成される(
図2(A)(g)参照)。
【0041】
以上に説明した半円筒状のマイクロレンズの製造方法により、フォトダイオードなどの光電変換素子と対応する位置に、半円筒状のマイクロレンズの断面形状における乱れ(凹み)が形成されていない半円筒状のマイクロレンズからなるレンズアレイを形成する事ができる。その為、半円筒状のマイクロレンズの断面形状に乱れ(凹み)が形成されていない半円筒状のマイクロレンズからなるレンズアレイを備えた固体撮像素子を得る事ができる。
【0042】
<第二の実施形態>
次に、本発明の固体撮像素子の第二の実施形態について、第一の実施形態と異なる点を中心に、
図2(B)を用いて説明する。
【0043】
第二の実施形態における半円筒状のマイクロレンズの製造方法は、まず、フォトダイオード4がXYマトリクス状に配置された半導体基板を用意し(
図2(B)(a)参照)、その半導体基板上にカラーフィルタ3をフォトダイオードに目合わせして形成する(
図2(B)(b)参照)。次に、カラーフィルタ3の上に平坦化層2を形成する(
図2(B)(c)参照)。ここまでは、第一の実施形態と同様である。
次に、透明層からなるパターンを形成する工程(
図2(B)(d)参照)と、半円筒状のマイクロレンズとなる感光性レンズ樹脂層9-1を形成する工程(
図2(B)(e)参照)と、パターン化された感光性レンズ樹脂層12を形成する工程(
図2(B)(f)参照)と、加熱溶融する事で半円筒状のマイクロレンズ1を形成する工程(
図2(B)(g)参照)を実施する。
すなわち、第二の実施形態においては、ドライエッチングによる半円筒状のマイクロレンズを形成するのではなく、加熱溶融により半円筒状のマイクロレンズを形成する。
【0044】
まず、複数のフォトダイオード4がXYマトリクス状に形成された固体撮像素子用半導体基板上にカラーフィルタ3と平坦化層2を備えた基板上に、透明層7からなるパターンを形成する(
図2(B)(d)参照)。透明層7からなるパターンは、第一の実施形態における透明層7と同等である。
次に、半円筒状のマイクロレンズ1となる透明樹脂からなる感光性レンズ樹脂層9-1を形成する(
図2(B)(e)参照)。その形成方法は特に限定されない。例えば、スピンコート法によって透明樹脂からなる感光性樹脂塗液を、透明層7からなるパターンが形成された基板上に塗布する。
【0045】
次に、クリーンオーブンなどを使用して塗布された感光性レンズ樹脂層9-1を乾燥させる。所望のパターンを備えたフォトマスクを用いて露光し、現像する事によって、透明層7からなるパターンに目合わせされたパターン化感光性レンズ樹脂層12を形成する事ができる(
図2(B)(f)参照)。この目合わせとは、透明層7からなるパターンの幅の中心を通り長手方向に延伸する中心線と、半円筒状のマイクロレンズ1の幅の中心を通
り長手方向に延伸する中心線と、の位置を平面視で重ね合わせる、という意味である。
【0046】
以上の様にして形成されたパターン化感光性レンズ樹脂層12の形状は、ほぼ矩形状の端部を備えた直方体となっている。この様な形態のパターン化感光性レンズ樹脂層12を、パターン化感光性レンズ樹脂層12を構成する透明樹脂の軟化点以上に加熱処理する事により、透明樹脂を溶融させ、液体状にし流動させる事で、直方体だった透明樹脂パターンを半円筒状のマイクロレンズ1とする事ができる(
図2(B)(g)参照)。
【0047】
このパターン化感光性レンズ樹脂層12を溶融させた時に、半円筒状のマイクロレンズ1の断面形状において、最も厚い部分を中心に、凹部が形成される現象がある。この現象は、半円筒状のマイクロレンズ1の幅が10μm以上、厚さが1.5μm以上、である場合にみられる現象である。これは、パターン化感光性レンズ樹脂層12が液体状になる事で、液体状の透明樹脂の表面張力に基づく現象ではないかと推定される。その為、透明樹脂パターンの幅が10μm未満、厚さが1.5μm未満である場合は凹部が形成されないが、それらの値以上になると、凹部が形成される虞が出てくる。
【0048】
この凹部が形成される現象を防ぐ為、本発明においては、半円筒状のマイクロレンズ1の断面形状において、最も厚い部分を中心に、各半円筒状のマイクロレンズ1の下に、透明層7からなるパターンを形成する。この透明層7からなるパターンは、半円筒状のマイクロレンズ1の幅方向の中点を通り、長手方向に延伸する中心線に沿って、その半円筒状のマイクロレンズ1の、30%~50%の幅で、且つ50%~70%の高さを備え、且つ透明層7からなるパターンの幅方向の中点を通り、長手方向に延伸する中心線と重なる位置に形成されている事が特徴である点は、第一の実施形態と同じである。
【0049】
この様な半円筒状のマイクロレンズ1が延伸する方向に直交する方向に、複数の半円筒状のマイクロレンズ1が、互いに平行に、一定のピッチで備えられたものが、レンズアレイ8である。
【0050】
フォトダイオードなどの光電変換素子がXYマトリクス状に形成された固体撮像素子用半導体基板上に、この様なレンズアレイ8が形成される事により、本発明の第二の実施形態にかかる固体撮像素子20を得る事ができる。
【0051】
なお、透明層7からなるパターンの屈折率は、半円筒状のマイクロレンズ1と同等あるいは同等以下であっても良い。換言すると、半円筒状のマイクロレンズ1の屈折率は透明層7からなるパターンの屈折率以上であることが好ましい。屈折率がこの関係を満たせば、透明層7からなるパターンと半円筒状のマイクロレンズ1との界面における反射を抑えることができ、集光効率をより高めることができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・半円筒状のマイクロレンズ
2・・・平坦化層
3・・・カラーフィルタ
4・・・フォトダイオード
5・・・入射光
6・・・レンズの乱れ部
7・・・透明層(からなるパターン)
8・・・レンズアレイ
9・・・レンズ樹脂層
9-1・・・感光性レンズ樹脂層
10、10-1、10´、20・・・固体撮像素子
11・・・レジストパターン
12・・・パターン化感光性レンズ樹脂層