(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019281
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】水耕栽培用プレート及び水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20220120BHJP
【FI】
A01G31/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123038
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晋康
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直也
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NC07
2B314NC14
2B314NC24
2B314NC25
2B314NC55
2B314NC56
2B314NC58
2B314NC60
(57)【要約】
【課題】通気孔を設けてもたわみにくい水耕栽培用プレートを提供する。
【解決手段】水耕栽培用プレート5は、植物の育成に応じてY方向に移送して使用され、Y方向に対して垂直なX方向に幅を有する。水耕栽培用プレート5は、植物保持孔25及び通気孔27を有する平板部21を備える。通気孔27には、通気孔27をX方向に横断し且つ平板部21に接続される補強リブ50が設けられる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の育成に応じて第1方向に移送して使用され、前記第1方向に対して垂直な第2方向に幅を有する水耕栽培用プレートであって、
植物保持孔及び通気孔を有する平板部と、
前記通気孔を前記第2方向に横断し且つ前記平板部に接続される補強リブと
を備える、
水耕栽培用プレート。
【請求項2】
前記補強リブの厚さは、前記平板部の厚さよりも大きい、
請求項1に記載の水耕栽培用プレート。
【請求項3】
前記補強リブは、前記平板部の上面よりも上方に延びる第1立壁部を含む、
請求項2に記載の水耕栽培用プレート。
【請求項4】
前記第1立壁部における前記第2方向の側面に、前記平板部の上面よりも上方に延びると共に前記第1方向に延びる第2立壁部が接続される、
請求項3に記載の水耕栽培用プレート。
【請求項5】
前記第2立壁部は、前記第1立壁部における前記第2方向の両側にそれぞれ前記通気孔を挟むように設けられる、
請求項4に記載の水耕栽培用プレート。
【請求項6】
前記補強リブは、前記平板部の下面よりも下方に延びる第3立壁部を含み、
前記第3立壁部における前記第2方向の側面に、前記平板部の下面よりも下方に延びると共に前記第1方向に延びる第4立壁部が接続され、
前記第4立壁部は、前記第3立壁部における前記第2方向の両側にそれぞれ前記通気孔を挟むように設けられる、
請求項2~5のいずれか1項に記載の水耕栽培用プレート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水耕栽培用プレートと、
前記水耕栽培用プレートにおける前記植物保持孔の下側に配置された水耕栽培槽と、
前記水耕栽培用プレートを保持すると共に前記第1方向に移送する移送手段と
を備える、
水耕栽培装置。
【請求項8】
前記通気孔は、前記水耕栽培用プレートにおける前記第2方向の略中央部に配置され、
前記移送手段は、前記水耕栽培用プレートにおける前記第2方向の両端部の下側に配置される、
請求項7に記載の水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物を栽培するための水耕栽培用プレート、及び、その水耕栽培用プレートを用いた水耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内で光及び養分を供給しつつ温度管理を行うことで効率的に植物を栽培することができる水耕栽培装置が注目されている。水耕栽培装置では、土壌を用いる必要が無く、屋内の狭い空間において高密度な植物の生産が可能となる。また、水耕栽培装置では、天候の影響を受けることなく温度や湿度等を調整できると共に、雑菌や害虫等による汚染を除去しやすい。
【0003】
従来の水耕栽培装置は、主として、植物保持孔を有する水耕栽培用プレートと、植物保持孔の下側に配置された水耕栽培槽と、水耕栽培用プレートを移送する手段とを備える(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された水耕栽培装置では、上下方向に間隔をあけて水耕栽培用プレートが多段配置されると共に、各水耕栽培用プレートの上方に照明装置が設けられる。また、照明装置の光を有効利用するために、水耕栽培装置の栽培エリアは、光を反射するフィルムやシートを内壁に有する板等で覆われる。一方、栽培エリアに空気が滞留して各段の水耕栽培用プレートに温度差が生じないように、水耕栽培装置には換気設備が設けられると共に、各段の水耕栽培用プレートには上下に貫通する通気孔が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水耕栽培装置において上下方向の通気量を増大させるために水耕栽培用プレートに通気孔を形成すると、水耕栽培用プレートの強度が低下する。また、従来の水耕栽培装置に用いられる水耕栽培用プレートは、所定の方向に沿って配置された複数列の移送手段により支持されるため、移送手段同士の間の領域で水耕栽培用プレートがたわみやすくなる。その結果、植物の生育に悪影響が生じたり、水耕栽培用プレートの円滑な移送が困難になるという問題が生じる。
【0007】
前記に鑑み、本開示は、通気孔を設けてもたわみにくい水耕栽培用プレート、及び、その水耕栽培用プレートを用いた水耕栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本開示に係る第1の態様は、植物の育成に応じて第1方向に移送して使用され、前記第1方向に対して垂直な第2方向に幅を有する水耕栽培用プレートであって、植物保持孔及び通気孔を有する平板部と、前記通気孔を前記第2方向に横断し且つ前記平板部に接続される補強リブとを備える、水耕栽培用プレートである。
【0009】
第1の態様によると、水耕栽培用プレートの平板部に形成された通気孔には、当該プレートの移送方向(第1方向)に対して垂直な幅方向(第2方向)に通気孔を横断する補強リブが設けられる。このため、水耕栽培用プレートにおける通気孔の周辺部分の強度が増大するので、幅方向において水耕栽培用プレートが曲がってたわむことを抑制することができる。
【0010】
尚、本開示において、「通気孔を第2方向に横断する補強リブ」とは、「横断方向が第2方向と完全に一致する補強リブ」だけではなく、「横断方向が第2方向成分を含む補強リブ」も含むものとする。水耕栽培用プレートの幅方向(第2方向)のたわみを抑制するためには、補強リブの横断方向における第2方向成分が多いほどよく、特に、横断方向と第2方向との角度差が45°以下であることが好ましく、当該角度差が30°以下であることがより好ましく、当該角度差が15°以下であることがさらに好ましい。
【0011】
本開示に係る第2の態様は、第1の態様において、前記補強リブの厚さは、前記平板部の厚さよりも大きい、水耕栽培用プレートである。
【0012】
第2の態様によると、補強リブの厚さが平板部の厚さよりも大きいため、水耕栽培用プレートにおける通気孔の周辺部分の強度がさらに増大する。従って、水耕栽培用プレートのたわみをさらに抑制することができる。
【0013】
本開示に係る第3の態様は、第2の態様において、前記補強リブは、前記平板部の上面よりも上方に延びる第1立壁部を含む、水耕栽培用プレートである。
【0014】
第3の態様によると、第2の態様と同様の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。すなわち、水耕栽培用プレート同士を連結するために各プレートの移送方向の両端部に、平板部の上面よりも上方に延びるプレート連結用構造を設けた場合に、当該構造に第1立壁部を通じて補強リブを連結することが容易になる。これにより、水耕栽培用プレートのたわみをより一層抑制することができる。
【0015】
本開示に係る第4の態様は、第3の態様において、前記第1立壁部における前記第2方向の側面に、前記平板部の上面よりも上方に延びると共に前記第1方向に延びる第2立壁部が接続される、水耕栽培用プレートである。
【0016】
第4の態様によると、補強リブが第1立壁部を通じて第2立壁部に接続されることにより、水耕栽培用プレートにおける通気孔の周辺部分の強度がさらに増大する。また、第2立壁部及び第1立壁部を通じて補強リブをプレート連結用構造に連結することによって、水耕栽培用プレートのたわみをより一層抑制することができる。
【0017】
尚、本開示において、「第1方向に延びる第2立壁部」とは、「延長方向が第1方向と完全に一致する第2立壁部」だけではなく、「部分的に第1方向に延びる第2立壁部」及び「延長方向が第1方向成分を含む第2立壁部」も含むものとする。例えば、第2立壁部における第1立壁部との接続部分は第1方向に延びるが、第2立壁部における他の部分は、通気孔の周縁に沿って延びてもよい。また、第1立壁部つまり補強リブが第2方向との間に角度差を有して延びる場合、第2立壁部も第1方向との間に角度差を有して延びてもよい。
【0018】
本開示に係る第5の態様は、第4の態様において、前記第2立壁部は、前記第1立壁部における前記第2方向の両側にそれぞれ前記通気孔を挟むように設けられる、水耕栽培用プレートである。
【0019】
第5の態様によると、補強リブの第1立壁部が幅方向の両側から第2立壁部によって挟まれるので、水耕栽培用プレートにおける通気孔の周辺部分の強度がより一層増大する。
【0020】
本開示に係る第6の態様は、第2~第5の態様のいずれか1つにおいて、前記補強リブは、前記平板部の下面よりも下方に延びる第3立壁部を含み、前記第3立壁部における前記第2方向の側面に、前記平板部の下面よりも下方に延びると共に前記第1方向に延びる第4立壁部が接続され、前記第4立壁部は、前記第3立壁部における前記第2方向の両側にそれぞれ前記通気孔を挟むように設けられる、水耕栽培用プレートである。
【0021】
第6の態様によると、第2の態様と同様の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。すなわち、補強リブが第3立壁部を通じて第4立壁部に接続されることにより、水耕栽培用プレートにおける通気孔の周辺部分の強度がさらに増大する。また、補強リブの第3立壁部が幅方向の両側から第4立壁部によって挟まれるので、水耕栽培用プレートにおける通気孔の周辺部分の強度がより一層増大する。
【0022】
尚、本開示において、「第1方向に延びる第4立壁部」とは、「延長方向が第1方向と完全に一致する第4立壁部」だけではなく、「部分的に第1方向に延びる第4立壁部」及び「延長方向が第1方向成分を含む第4立壁部」も含むものとする。例えば、第4立壁部における第3立壁部との接続部分は第1方向に延びるが、第4立壁部における他の部分は、通気孔の周縁に沿って延びてもよい。また、第3立壁部つまり補強リブが第2方向との間に角度差を有して延びる場合、第4立壁部も第1方向との間に角度差を有して延びてもよい。
【0023】
本開示に係る第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つの水耕栽培用プレートと、前記水耕栽培用プレートにおける前記植物保持孔の下側に配置された水耕栽培槽と、前記水耕栽培用プレートを保持すると共に前記第1方向に移送する移送手段とを備える、水耕栽培装置である。
【0024】
第7の態様によると、本開示に係る第1~第6の態様のいずれか1つの水耕栽培用プレートを用いるため、水耕栽培用プレートにおける通気孔の周辺部分の強度が増大する。従って、水耕栽培用プレートを保持する移送手段が配置される移送方向(第1方向)に対して垂直な幅方向(第2方向)において水耕栽培用プレートが曲がってたわむことを抑制することができる。
【0025】
本開示に係る第8の態様は、第7の態様において、前記通気孔は、前記水耕栽培用プレートにおける前記第2方向の略中央部に配置され、前記移送手段は、前記水耕栽培用プレートにおける前記第2方向の両端部の下側に配置される、水耕栽培装置である。
【0026】
第8の態様によると、水耕栽培用プレートにおける通気孔が形成された幅方向の中央部に荷重がかかる構成でも、水耕栽培用プレートのたわみを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によると、通気孔を設けてもたわみにくい水耕栽培用プレート、及び、その水耕栽培用プレートを用いた水耕栽培装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態に係る水耕栽培装置におけるプレート幅方向(X方向)の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す水耕栽培装置に用いられる水耕栽培用プレート及びその近傍を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る水耕栽培装置におけるプレート移送方向(Y方向)の断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す水耕栽培装置の一部分を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す水耕栽培装置における植物培養液の供給配管を水耕栽培装置のY方向側面の方から見た図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る水耕栽培用プレートの表面を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す水耕栽培用プレートをY方向側面の方から見た図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す水耕栽培用プレートをX方向側面の方から見た図である。
【
図9A】
図9Aは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の平面構成の第1例を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の平面構成の第2例を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の平面構成の第3例を示す図である。
【
図9D】
図9Dは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の平面構成の第4例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の平面構成の第5例を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第1例を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第2例を示す図である。
【
図11C】
図11Cは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第3例を示す図である。
【
図11D】
図11Dは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第4例を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第5例を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第6例を示す図である。
【
図12C】
図12Cは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第7例を示す図である。
【
図12D】
図12Dは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第8例を示す図である。
【
図12E】
図12Eは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第9例を示す図である。
【
図12F】
図12Fは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第10例を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第11例を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、実施形態に係る水耕栽培用プレートに設けられる通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成の第12例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態)
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。また、各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合がある。
【0030】
<水耕栽培装置の概要>
本実施形態の水耕栽培装置1は、その内部に直方体状の栽培エリアを有し、当該栽培エリアが天候、外気温、さらには害虫等の種々の影響を受けないように、水耕栽培装置1の上面及び側面が板状体によって覆われる。板状体の内壁面は、光の効率を高めるための反射面を構成する。水耕栽培装置1の上下方向には水耕栽培用プレート5が多段に配置され、各水耕栽培用プレート5は、光を効率良く反射する材質から構成される。これにより、植物の光合成が促進され、安定した植物栽培が可能となる。
【0031】
水耕栽培装置1の下部及び上部にはそれぞれ吸気口及び排気口が設けられると共に、各水耕栽培用プレート5には貫通孔である通気孔27が設けられる。このため、水耕栽培装置1の栽培エリア内に空気の流れが生じるので、各段の水耕栽培用プレート5間で温度差が生じにくくなる。
【0032】
以上のように、本実施形態の水耕栽培装置1は、主として屋内で植物を栽培するための装置であって、植物の栽培に必要な養分、及び光合成に必要な光を植物に供給しつつ、水耕栽培装置1の下方より外部の空気(又は空調された空気)を栽培エリア内に取り込み、装置内部の温度を略均一にすることができる。
【0033】
<水耕栽培装置の詳細>
以下、本実施形態の水耕栽培装置1について、
図1~
図5を参照しながら詳しく説明する。尚、
図1~
図4において、水耕栽培装置1の側面を覆う板状体、及び、水耕栽培用プレート5に保持される植物の図示は省略する。また、以下の説明では、植物の育成に応じて水耕栽培用プレート5が移送される方向を移送方向(Y方向)と言い、移送方向に対して垂直な方向を幅方向(X方向)と言う。
【0034】
本実施形態では、一例として、水耕栽培装置1の各段において水耕栽培用プレート5が幅方向に2つ配置される。また、移送方向に複数(
図3では9個)の水耕栽培装置1が連結される。各水耕栽培装置1は、Y方向及びX方向の向きを揃えた状態で、Y方向において一直線となるよう配置される。本実施形態の水耕栽培装置1の寸法は、例えば、X方向に1.5m、Y方向に14.6m、高さ2.7mとすることができる。
【0035】
尚、水耕栽培装置1を単一の最小ユニットで使用する場合、植物の栽培完了まで水耕栽培用プレート5を移動させずに固定して使用してもよい。一方、本実施形態のように、複数の水耕栽培装置1を連結して使用する場合、各段の水耕栽培用プレート5が各水耕栽培装置1内をY方向に移動可能に構成してもよい。植物の育成状況に応じて水耕栽培用プレート5をY方向にスライドさせることによって、栽培作業を高効率化することができる。また、Y方向に隣り合う水耕栽培装置1の水耕栽培槽7の間では、段毎に培養液が流入出可能に構成してもよい。水耕栽培装置1同士の間で水耕栽培槽7を連結させることにより、培養液の濃度や温度などの管理を一括して行うことができる。水耕栽培槽7の連結は、当該水耕栽培槽7を長尺化して形成してもよいし、或いは、水耕栽培槽7同士を配管で接続してもよい。この場合、Y方向に隣り合う水耕栽培装置1では、互いに対面する側板に、水耕栽培槽7の形状や接続配管の形状に対応する開口が設けられてもよい。このように、複数の水耕栽培装置1を直列に配置した場合、水耕栽培槽7で使用される培養液は共通となるが、水耕栽培装置1毎に栽培エリアが区画されるので、各水耕栽培装置1内で排気、通気を確実に実行できる。また、水耕栽培装置1毎に独立して温度条件等を設定することもでき、これにより、各水耕栽培装置1間で異なる植物を栽培することもできる。
【0036】
水耕栽培装置1の栽培エリアは、全体として箱状の空間を形成しており、当該栽培エリアに他の部品が載置されることにより、水耕栽培装置1が構成される。栽培エリアは、天井板3Aと、栽培エリアの略4隅に配置されて水耕栽培装置1の重量を支える4本の支柱3Bと、移送方向(Y方向)の壁となる側板(図示省略)とから構成される。4本の支柱3Bはそれぞれ、所定の間隔で配置され、当該支柱3Bに天井板3A及び側板が取り付けられる。尚、天井板3Aと側板との当接部には、光が漏れる隙間が無いことが好ましい。
【0037】
天井板3A及び側板における内壁面は、光を反射する面となっており、これによって、栽培エリア内において光を反射させて拡散させることができる。側板は、栽培エリアの外側から支柱3Bに保持させてもよいし、或いは、栽培エリアの内側から支柱3Bに保持させてもよい。側板は、支柱3Bの高さ方向に一体としたものであってもよいし、或いは、水耕栽培装置1の各段の高さに対応して分割されたものであってもよい。各段の高さで分割された側板は、一体のものに比べて軽量になるので、取扱いが容易になる。また、側板は、柔軟性を有するロールカーテン等の面状部材であってもよい。側板が、柔軟性のある面状部材であれば、より軽量化できるので、水耕栽培装置1のX方向側面から水耕栽培用プレート5を回収する必要が生じた場合に、開閉操作を容易に行うことが可能になる。
【0038】
本実施形態では、側板の高さ方向における長さは、支柱3Bの長さよりも短く設定されるため、側板が床に当接することなく、支柱3Bの下端のみが床に当接する。これにより、水耕栽培装置1の下方にスリット状の開口が生じ、当該開口を通じて栽培エリアの内部と外部とが連通する。このため、水耕栽培装置1の下方より外部の空気(又は空調された空気)を栽培エリア内に容易に取り込むことができる。
【0039】
また、本実施形態では、栽培エリア内の空気を外部に排出させるために、例えば、天井板3Aに設けられた排気口(図示省略)に排気ファン11が設けられる。これにより、栽培エリア内において下方から上方に流れる気流を発生させることができ、その結果、栽培エリア内の環境(温度、湿度、炭酸ガス濃度など)を均一にすることが可能となる。排気ファン11としては、種々のタイプのものを使用できるが、例えば、電気機械装置等に用いられるケースファン等を用いてもよい。尚、排気ファン11及び排気口は、最上段の水耕栽培用プレート5付近よりも上方であれば、側板に配設してもよい。また、排気ファン11を排気口に直接取り付けてもよいし、或いは、ダクト等を介して排気ファン11を排気口の遠方に取り付けてもよい。
【0040】
水耕栽培装置1の内部には、上下方向に所定の間隔で例えば7段の棚13が設けられる。各棚13は、移送方向(Y方向)に配置される複数本の長手方向梁13Aと、X方向に配置され且つ各長手方向梁13Aを所定の間隔で繋ぐ複数本の短手方向梁13Bとから構成される梯子状のフレームである。栽培エリア内において棚13が所定の間隔で多段配置されると、栽培株数を多くすることができるが、栽培する植物の種類によっては棚13を単段で配置してもよい。また、棚13が多段配置される場合、例えば、最下段の棚13を育苗用途に用い、それ以外の棚13を定植用途に用いてもよい。尚、水耕栽培装置1の各段において幅方向に2つ配置される水耕栽培用プレート5の間には、移送方向(Y方向)に配置され且つ各段の棚13と接続される中間梁13Cが配置される。
【0041】
水耕栽培装置1の各棚13には、主として、植物を保持するための水耕栽培用プレート5と、植物に培養液を供給するための複数個の長尺状(樋状)の水耕栽培槽7と、水耕栽培用プレート5を保持し且つ移送方向(Y方向)へ移送する移送手段15と、植物の光合成を促す照明装置33とが設けられる。
【0042】
水耕栽培用プレート5は、複数の植物保持孔25及び複数の通気孔27を有する平板部21を備える。水耕栽培用プレート5(平板部21)の移送方向の両端部には、移送方向において水耕栽培用プレート5同士を連結するためのプレート連結用構造23が設けられる。プレート連結用構造23は、平板部21の上面よりも上方に延びる。水耕栽培用プレート5の構造の詳細については、後述する。
【0043】
尚、水耕栽培装置1における平面方向から見た栽培エリアの面積に対する水耕栽培用プレート5の面積の割合については、例えば50~95%程度の範囲で設定してもよく、単位面積あたりの栽培量を増やすために当該割合を高めに設定してもよい。当該割合を高くするために、水耕栽培用プレート5の面積を大きくすると、水耕栽培用プレート5と水耕栽培装置1の側板との隙間が小さくなるものの、本実施形態では、水耕栽培用プレート5に通気孔27が形成されているので、水耕栽培装置1の各段における熱の滞留を緩和することができる。また、天井板3Aに排気ファン11が設けられるため、水耕栽培装置1の各段における熱の滞留がさらに緩和され、各段(棚13)間に温度ムラが生じることを抑制することができる。
【0044】
また、水耕栽培装置1の栽培エリア内における温度、湿度、炭酸ガス濃度などを均一にするためには、栽培エリア内の通気量が多い方が好ましいものの、風速が大きくなりすぎると、植物へのストレスとなって光合成が抑制されてしまう。このため、本実施形態の水耕栽培装置1では、各段の水耕栽培用プレート5(通気孔27を除く閉鎖部)の面積に対する開口(通気孔27及びその他の開口)の割合は、例えば3~50%程度の範囲としてもよい。
【0045】
水耕栽培槽7は、水耕栽培用プレート5における植物保持孔25の下側に配置される。水耕栽培槽7は、略U字の断面形状を有する長尺状の水槽であり、例えば、合成樹脂製の住宅用の樋等を用いて構成してもよい。水耕栽培槽7は、植物の成長を促進させる培養液を貯留又は循環するものであるため、培養液が外部へ流出することを防止するために、水耕栽培槽7の長手方向の両端部には端部壁が設けられる。複数の水耕栽培槽7が移送方向(Y方向)に沿って略平行に配置されるように、各水耕栽培槽7は、棚13を構成する複数の短手方向梁13Bの上面に保持される。
【0046】
本実施形態では、1つの水耕栽培用プレート5が複数(例えば4つ)の水耕栽培槽7を跨ぐように、各水耕栽培用プレート5及び各水耕栽培槽7が設置される。これにより、水耕栽培用プレート5の各植物用保持孔25に保持された植物の根が水耕栽培槽7内の培養液に浸されると共に、1つの水耕栽培用プレート5において複数の植物の収穫等が実施できる。
【0047】
水耕栽培用プレート5及び水耕栽培槽7はそれぞれ、移送方向(Y方向)に対して略平行に配置されるため、水耕栽培用プレート5を移送方向(Y方向)にスライドすると、当該水耕栽培用プレート5と共に植物が水耕栽培槽7に沿って移動する。水耕栽培用プレート5に設けられた通気孔27は、隣り合う水耕栽培槽7同士の間の上方に位置し、当該位置関係は、水耕栽培用プレート5を移送方向(Y方向)にスライドしても維持される。
【0048】
移送手段15は、水耕栽培用プレート5におけるX方向の両端部の下側にそれぞれ配置される。移送手段15は、例えば、ローラ式コンベアである。棚13には、移送方向(Y方向)に沿って長尺状のレール31が設けられ、当該レール31に移送手段15が取り付けられる。水耕栽培用プレート5の下面側から移送手段15となるローラ式コンベアを当接させることによって、水耕栽培用プレート5を支持及びスライドさせることができる。レール41は、棚13を構成する短手方向梁13Bの上面に固定される。短手方向梁13Bの上面上には、レール41をX方向に挟むように一対のローラ保持部17が設けられる。移送手段15のローラ回転軸16は、各ローラ保持部17の軸受け18Aにより保持される。尚、中間梁13C近傍では、移送手段15のローラ回転軸16は、中間梁13Cに設けられた軸受け18Bと、ローラ保持部17の軸受け18Aとにより保持される。
【0049】
照明装置33は、水耕栽培装置1における最下段以外の各棚13の下部(水耕栽培槽7の下側)に設けられる。照明装置33は、栽培エリア内で発光して植物の光合成に必要な光を供給する照明器具である。照明装置33の光源としては、例えば長尺型のHF型蛍光管や蛍光管型LED等を用いてもよい。照明装置33は、水耕栽培槽7の下側において、X方向と略平行に長手方向梁13Aの下面に固定される。尚、水耕栽培装置1の栽培エリアの大きさや形状によっては、照明装置33をY方向と略平行に短手方向梁13Bの下面に固定してもよい。
【0050】
本実施形態では、水耕栽培装置1における最下段の棚13の下側に、肥料原液を貯留するタンク35と、肥料原液と水とを混合した培養液を貯留するタンク37と、水耕栽培装置1内で培養液を循環させるポンプ39とが設けられる。ポンプ39から送出された培養液は、主配管41を通って、最下段の棚13の下側から、Y方向の一端に位置する水耕栽培装置1(以下、上流側の水耕栽培装置1という)のY方向外側面まで移送され、各段の水耕栽培槽7へ供給される。各段の水耕栽培槽7を通過した培養液は、Y方向の他端に位置する水耕栽培装置1(以下、下流側の水耕栽培装置1という)のY方向外側面から主配管41に排出され、タンク37に回収される。
【0051】
主配管41は、
図3~
図5に示すように、上流側の水耕栽培装置1のY方向外側面に沿って垂直に延びると共に、各段(各棚13)の水耕栽培槽7の高さに位置する分岐部41aで、水平に延びる副配管42に枝分かれする。各副配管42は、水耕栽培槽7のX方向位置に分岐部43を有する。上流側の水耕栽培装置1のY方向外側面には、各水耕栽培槽7に接続する接続配管47が設けられ、当該接続配管47へは分岐部43からホース45を経由して培養液が供給される。
【0052】
また、主配管41は、
図5に示すように、下流側の水耕栽培装置1のY方向外側面に沿って垂直に延びると共に、下流側の水耕栽培装置1のY方向外側面には、各水耕栽培槽7に接続する接続配管49が設けられる。各段の水耕栽培槽7を通過した培養液は、接続配管49から、上流側の水耕栽培装置1と同様の構成(図示省略)を経由して、主配管41に排出され、タンク37に回収される。尚、
図3~
図5において、各配管等を流れる培養液を破線矢印で示している。
【0053】
<水耕栽培用プレートの構成>
以下、本実施形態の水耕栽培用プレート5について、
図6~
図8を参照しながら詳しく説明する。水耕栽培用プレート5は、植物を保持しつつ該植物の根を水耕栽培槽7内の培養液に浸し、植物栽培における土台となるものである。
【0054】
図6に示す水耕栽培用プレート5は、略四角形であるが、栽培物の種類、栽植密度等によっては、水耕栽培用プレート5は、三角形や五角形等の多角形の平面形状を有してもよい。水耕栽培用プレート5は、植物を保持する貫通孔で構成された植物保持孔25と、空気の移動路となる通気孔27とを、それぞれ所定の間隔で所定数具備する。水耕栽培用プレート5のX方向、Y方向の各寸法は、例えば600mm、450mmであり、平板部21の厚さは、例えば2mmであってもよい。植物保持孔25及び通気孔27は、水耕栽培用プレート5の平板部21を表面から裏面に貫通する。植物保持孔25の開口径は、例えば23mmであり、通気孔27のX方向、Y方向の各寸法は、例えば24mm、114mmであってもよい。尚、通気孔27は、単一の水耕栽培用プレート5において孔として認識されるものだけではなく、例えば、1つの水耕栽培用プレート5に半円の切欠きを形成して他の水耕栽培用プレート5と突合せ突き合わせたときに孔として機能するものも含む。すなわち、装置として組み立てた時に通気孔27として機能するものを含む。
【0055】
水耕栽培用プレート5において、通気孔27は、植物保持孔25の周辺に配置される。このようにすると、通気孔27を空気が通過する際に、植物保持孔25に保持された植物の葉の下面に空気が当たりやすくなり、葉に新鮮な空気を供給できるので、植物の育成が促進される。通気孔27と植物保持孔25との間の距離は、栽培する植物の種類にもよるが、なるべく小さくすることが好ましく、例えば、植物保持孔25同士の距離よりも短くしてもよい。
【0056】
植物保持孔25には、例えばウレタン樹脂等で構成された略スポンジ状の培地と共に植物が挿通され、これにより、当該植物が植物保持孔25により保持される。水耕栽培用プレート5の裏面(下面)には、植物保持孔25による植物の保持力を向上させるために、植物保持孔25の周縁に沿って突起21aが設けられる。植物保持孔25の数は、1枚の水耕栽培用プレート5における植物の同時栽培株数によって決定される。植物保持孔25は、植物の根が水耕栽培槽7内における培養液に浸されるように、水耕栽培槽7の長手方向(つまりY方向)に沿って所定数設けられる。
【0057】
通気孔27は、水耕栽培用プレート5の表面側と裏面側との間における空気の移動路である。通気孔27の数は、水耕栽培装置1の栽培エリアの全体容積及び各棚13間の容積によって決定される。通気孔27は、隣り合う水耕栽培槽7同士の間の領域に沿って所定数設けられる。
【0058】
本実施形態においては、多量の植物を栽培するために、継手などで連結長尺化された水耕栽培槽7の上に複数の水耕栽培用プレート5を並べて使用する。また、Y方向において水耕栽培用プレート5同士を突き合わせた状態で、移送手段15、例えばローラ式コンベアを駆動して水耕栽培用プレート5を移動させる。これにより、Y方向に複数の水耕栽培装置1を連結する場合でも、植物の出し入れは、上流側の水耕栽培装置1及び下流側の水耕栽培装置1の2か所で行えるので、作業性が向上する。尚、
図7に示すように、水耕栽培用プレート5の裏面(下面)には、移送手段15のガイドとなる突起21aがY方向に沿って設けられる。
【0059】
水耕栽培用プレート5のY方向の両端部には、水耕栽培用プレート5同士を連結すると共に平板部21の上面よりも上方に延びるプレート連結用構造23が設けられる。プレート連結用構造23は、水耕栽培用プレート5のY方向の両端でそれぞれ形状が異なる。例えば、水耕栽培用プレート5のY方向の一端では、プレート連結用構造23は入隅端部23aを有し、水耕栽培用プレート5のY方向の他端では、プレート連結用構造23は出隅端部23bを有する。入隅端部23aと出隅端部23bとは、互いに嵌合するように構成される。入隅端部23a及び出隅端部23bによって、Y方向に水耕栽培用プレート5同士を連結することができる。
【0060】
本実施形態の水耕栽培用プレート5では、一例として、
図6に示すように、Y方向に3つの植物保持孔25が所定のピッチで配列された植物保持孔列が、X方向に等間隔で4列配置される。隣り合う植物保持孔列の間では、各植物保持孔25は、千鳥配列される。これにより、植物が生育しやすくなって植物の生産性が向上すると共に、X方向の作業性が良くなる。植物保持孔列同士の間の中間領域には、Y方向に3つの通気孔27が所定のピッチで配列された通気孔列が配置される。すなわち、通気孔列は、X方向に等間隔で3列配置される。この場合、真ん中の通気孔列は、水耕栽培用プレート5におけるX方向の略中央部に配置される。尚、水耕栽培用プレート5におけるX方向の両端近傍に位置する植物保持孔列については、水耕栽培用プレート5とY方向側板との間、又はX方向に隣り合う水耕栽培用プレート5同士の間が、空気の上下方向の通り道となる。
【0061】
本実施形態の水耕栽培用プレート5の特徴の1つとして、通気孔27には、当該通気孔27をX方向に横断し且つ平板部27に接続される補強リブ50が設けられる。補強リブ50の幅(Y方向寸法)は、例えば2mmであってもよい。各通気孔27に設ける補強リブ50の数や位置は特に制限されないが、例えば、各通気孔27におけるY方向中央に補強リブ50を1つ設けてもよい。補強リブ50の厚さは、平板部21の厚さよりも大きくてもよい。
【0062】
尚、通気性の確保のため、補強リブ50のY方向寸法(1つの通気孔27に対して複数の通気孔27が設けられる場合はY方向の合計寸法)は、通気孔27のY方向寸法の1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましく、1/20以下であることがさらに好ましい。補強リブ50のY方向寸法は、補強リブ50(つまり水耕栽培用プレート5)の材質に依存して決めてもよいが、例えばABS樹脂等を用いる場合、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることがさらに好ましい。尚、強度の確保のため、補強リブ50における平板部21との接続箇所のY方向寸法を、補強リブ50の他の部分よりも大きくしてもよい。また、補強リブ50における平板部21との接続箇所を除く他の部分のY方向寸法については、例えばABS樹脂等を用いる場合、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。
【0063】
補強リブ50は、平板部21の上面よりも上方に延びる第1立壁部51を含んでもよい。第1立壁部51におけるX方向の側面に、平板部21の上面よりも上方に延びると共にY方向に延びる第2立壁部52が接続されてもよい。第2立壁部52は、第1立壁部51におけるX方向の両側にそれぞれ通気孔27を挟むように設けられてもよい。特に、水耕栽培用プレート5における最も撓みやすいX方向中央部の通気孔27に、第1立壁部51を含み且つ第2立壁部52が接続された補強リブ50を設けることにより、当該中央部付近での水耕栽培用プレート5の撓みを抑制することができる。この場合、各第2立壁部52をY方向に延長して一体化し、当該一体化された第2立壁部52を、水耕栽培用プレート5のY方向両端のプレート連結用構造23に接続してもよい。これにより、水耕栽培用プレート5の撓みをより一層抑制することができる。
【0064】
補強リブ50は、平板部21の下面よりも下方に延びる第3立壁部53を含んでもよい。第3立壁部53におけるX方向の側面に、平板部21の下面よりも下方に延びると共にY方向に延びる第4立壁部54が接続されてもよい。第4立壁部54は、第3立壁部53におけるX方向の両側にそれぞれ通気孔27を挟むように設けられてもよい。この場合、各第4立壁部54をY方向に延長して一体化し、当該一体化された第4立壁部54を、水耕栽培用プレート5のY方向両端のプレート連結用構造23に接続してもよい。これにより、水耕栽培用プレート5の撓みをより一層抑制することができる。
【0065】
尚、第1~第4立壁部51~54の高さはそれぞれ、例えば16mm、16mm、5mm、5mmであり、第2、第4立壁部52、54の幅(X方向寸法)はそれぞれ、例えば2mm、2mmであってもよい。
【0066】
第3立壁部53及び第4立壁部54は、全ての補強リブ50(つまり全ての通気孔27)に対して設けてもよい。一方、第1立壁部51及び第2立壁部52は、水耕栽培用プレート5におけるX方向中央部又はその近辺の補強リブ50(つまり通気孔27)に対して選択的に設けてもよい。このようにすると、水耕栽培用プレート5におけるX方向中央部からX方向の両端部までの領域において、植物保持孔25及び通気孔27の周縁及びその近傍が平板部1の表面と同一平面上に位置する。これにより、水耕栽培用プレート5におけるX方向中央部からX方向の両端部までの領域が平滑面を持つため、植苗等の支障が生じにくくなるので、作業性が向上する。
【0067】
ところで、栽培初期の苗が小さい状態では、苗同士の接触が少ないため、植物保持孔25が多い水耕栽培用プレート5によって、多くの苗を育てることができる。一方、苗が大きくなると、苗同士の接触が多くなるため、植物保持孔25が少ない水耕栽培用プレート5に苗を移し替える必要が生じる。この植え替えの際に、平板部21の上面よりも上方に延びる第1、第2立壁部51、52が、水耕栽培用プレート5におけるX方向中央近辺に選択的に配置されていると、第1、第2立壁部51、52が邪魔にならずに植え替え作業を円滑に行うことができる。尚、植え替えをオフライン(水耕栽培用プレート5を棚13から外した状態)で行うことにより、複数の水耕栽培用プレート5を連結することの影響を回避することができる。
【0068】
<水耕栽培用プレートにおける通気孔、補強リブ、立壁部の平面構成例>
以下、本実施形態の水耕栽培用プレート5における通気孔27、補強リブ50、立壁部51~54の平面構成例について、
図9A~D、
図10を参照しながら説明する。
【0069】
図6に示す水耕栽培用プレート5では、通気孔27の平面形状はトラック形状であったが、これに限定されず、例えば、
図9Aに示すような矩形状であってもよいし、
図9B~Dに示すような円形状であってもよい。或いは、
図10に示すように、通気孔27は、Y方向に連続する開口形状を有し、当該通気孔27をX方向に横断する複数の補強リブ50(第1立壁部51及び/又は第3立壁部53を含んでもよい)が設けられてもよい。
【0070】
また、第2立壁部52及び/又は第4立壁部54は、
図9A、
図9B、
図10に示すように、補強リブ50に対して垂直にY方向に延びてもよいし、
図9C、
図9Dに示すように、通気孔27の周縁に沿って湾曲して延びてもよい。さらに、
図9Dに示すように、第2立壁部52及び/又は第4立壁部54は、通気孔27を囲むように延びてもよい。
【0071】
尚、本開示において、「通気孔27をX方向に横断する補強リブ50」とは、「横断方向がX方向と完全に一致する補強リブ50」だけではなく、「横断方向がX方向成分を含む補強リブ50」も含むものとする。水耕栽培用プレート5のX方向のたわみを抑制するためには、補強リブ50の横断方向におけるX方向成分が多いほどよく、特に、横断方向とX方向との角度差が45°以下であることが好ましく、当該角度差が30°以下であることがより好ましく、当該角度差が15°以下であることがさらに好ましい。
【0072】
また、本開示において、「Y方向に延びる第2立壁部52」とは、「延長方向がY方向と完全に一致する第2立壁部52」だけではなく、「部分的にY方向に延びる第2立壁部52」や「延長方向がY方向成分を含む第2立壁部52」も含むものとする。例えば、第2立壁部52における第1立壁部51との接続部分はY方向に延びるが、第2立壁部52における他の部分は、通気孔27の周縁に沿って延びてもよい。また、第1立壁部51つまり補強リブ50がX方向との間に角度差を有して延びる場合、第2立壁部52もY方向との間に角度差を有して延びてもよい。
【0073】
また、本開示において、「Y方向に延びる第4立壁部54」とは、「延長方向がY方向と完全に一致する第4立壁部54」だけではなく、「部分的にY方向に延びる第4立壁部54」や「延長方向がY方向成分を含む第4立壁部54」も含むものとする。例えば、第4立壁部54における第3立壁部53との接続部分はY方向に延びるが、第4立壁部54における他の部分は、通気孔27の周縁に沿って延びてもよい。また、第3立壁部53つまり補強リブ50がX方向との間に角度差を有して延びる場合、第4立壁部54もY方向との間に角度差を有して延びてもよい。
【0074】
<水耕栽培用プレートにおける通気孔、補強リブ、立壁部の断面構成例>
以下、本実施形態の水耕栽培用プレート5における通気孔27、補強リブ50、立壁部51~54の断面構成例について、
図11A~D、
図12A~F、
図13A、Bを参照しながら説明する。
【0075】
最も簡単な構成として、
図11Aに示すように、補強リブ50は、水耕栽培用プレート5の平板部21と同じ厚さであってもよい。
【0076】
図11B~Dに示すように、補強リブ50が、平板部21の上面よりも上方に延びる第1立壁部51を含む場合、
図11Cに示すように、第1立壁部51のX方向の一側面だけに第2立壁部52を設けてもよいし、
図11Dに示すように、第1立壁部51のX方向の両側面に第2立壁部52を設けてもよい。
【0077】
図12A~Cに示すように、補強リブ50が、平板部21の上面よりも上方に延びる第1立壁部51と、平板部21の下面よりも下方に延びる第3立壁部53とを含む場合、
図12Bに示すように、第1立壁部51及び第3立壁部53におけるX方向の一側面だけに第2立壁部52及び第4立壁部54を設けてもよい。或いは、
図12Cに示すように、第1立壁部51及び第3立壁部53におけるX方向の両側面に第2立壁部52及び第4立壁部54を設けてもよい。
【0078】
また、
図12D~Fに示すように、補強リブ50が、平板部21の上面よりも上方に延びる第1立壁部51と、平板部21の下面よりも下方に延びる第3立壁部53とを含む場合、
図12Dに示すように、第1立壁部51のX方向の一側面だけに第2立壁部52を設けてもよい。或いは、
図12Eに示すように、第3立壁部53のX方向の一側面だけに第4立壁部54を設けてもよい。或いは、
図12Fに示すように、第1立壁部51のX方向の一側面だけに第2立壁部52を設け、第3立壁部53のX方向の他側面だけに第4立壁部54を設けてもよい。
【0079】
尚、
図13Aに示すように、補強リブ50は、平板部21の下面よりも下方に延びる第3立壁部53のみを含んでいてもよい。この場合、第3立壁部53のX方向の一側面だけに第4立壁部54を設けてもよいし、或いは、第3立壁部53のX方向の両側面に第4立壁部54を設けてもよい。
【0080】
また、
図13Bに示すように、補強リブ50が、平板部21の上面よりも上方に延びる第1立壁部51を含む場合、通気孔27のX方向外側から第1立壁部51を支持する補助部55をさらに設けてよい。補助部55は、第1立壁部51のX方向両側に設けてもよいし、補助部55と第1立壁部51との間に第2立壁部52が介在してもよい。
【0081】
同様に、補強リブ50が、平板部21の下面よりも下方に延びる第3立壁部53を含む場合、通気孔27のX方向外側から第3立壁部53を支持する補助部をさらに設けてよい。当該補助部は、第3立壁部53のX方向両側に設けてもよいし、当該補助部と第3立壁部53との間に第4立壁部54が介在してもよい。
【0082】
<実施形態の効果>
以上に説明した本実施形態によると、水耕栽培用プレート5の平板部21に形成された通気孔27に、移送方向(Y方向)に対して垂直な幅方向(X方向)に通気孔27を横断する補強リブ50が設けられる。このため、水耕栽培用プレート5における通気孔27の周辺部分の強度が増大するので、幅方向において水耕栽培用プレート5が曲がってたわむことを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態の水耕栽培用プレート5において、補強リブ50の厚さが、平板部21の厚さよりも大きいと、水耕栽培用プレート5における通気孔27の周辺部分の強度がさらに増大する。従って、水耕栽培用プレート5のたわみをさらに抑制できる。
【0084】
また、本実施形態の水耕栽培用プレート5において、補強リブ50が、平板部21の上面よりも上方に延びる第1立壁部51を含むと、プレート連結用構造23に第1立壁部51を通じて補強リブ50を連結することが容易になる。従って、水耕栽培用プレート5のたわみをより一層抑制することができる。
【0085】
第1立壁部51を設ける場合、第1立壁部51におけるX向の側面に、平板部21の上面よりも上方に延びると共にY方向に延びる第2立壁部52が接続されてもよい。このようにすると、補強リブ50が第1立壁部51を通じて第2立壁部52に接続されることにより、水耕栽培用プレート5における通気孔27の周辺部分の強度がさらに増大する。また、第2立壁部52及び第1立壁部51を通じて補強リブ50をプレート連結用構造23に連結することによって、水耕栽培用プレート5のたわみをより一層抑制できる。
【0086】
第2立壁部52を設ける場合、第2立壁部52は、第1立壁部51におけるX方向の両側にそれぞれ通気孔27を挟むように設けられてもよい。このようにすると、補強リブ50の第1立壁部51がX方向の両側から第2立壁部52によって挟まれるので、水耕栽培用プレート5における通気孔27の周辺部分の強度がより一層増大する。
【0087】
また、本実施形態の水耕栽培用プレート5において、補強リブ50は、平板部21の下面よりも下方に延びる第3立壁部53を含み、第3立壁部53におけるX方向の側面に、平板部21の下面よりも下方に延びると共にY方向に延びる第4立壁部54が接続され、第4立壁部54は、第3立壁部53におけるX方向の両側にそれぞれ通気孔27を挟むように設けられてもよい。このようにすると、補強リブ50が第3立壁部53を通じて第4立壁部54に接続されることにより、水耕栽培用プレート5における通気孔27の周辺部分の強度がさらに増大する。また、補強リブ50の第3立壁部53がX方向の両側から第4立壁部54によって挟まれるので、水耕栽培用プレート5における通気孔27の周辺部分の強度がより一層増大する。
【0088】
また、本実施形態の水耕栽培装置1によると、以上に説明した水耕栽培用プレート5と、水耕栽培用プレート5における植物保持孔25の下側に配置された水耕栽培槽7と、水耕栽培用プレート5を保持すると共にY方向に移送する移送手段15とを備える。このため、水耕栽培用プレート5における通気孔27の周辺部分の強度が増大するので、水耕栽培用プレート5を保持する移送手段15が配置されるY方向に対して垂直なX方向において水耕栽培用プレート5が曲がってたわむことを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態の水耕栽培装置1において、通気孔27は、水耕栽培用プレート5におけるX方向の略中央部に配置され、移送手段15は、水耕栽培用プレート5におけるX方向の両端部の下側に配置されてもよい。このようにすると、水耕栽培用プレート5における通気孔27が形成されたX方向中央部に荷重がかかる構成でも、水耕栽培用プレート5のたわみを抑制することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、水耕栽培用プレート5の移送手段15として、ローラ式コンベアを設けたが、これに代えて、例えば、ベルト式コンベア等を設けてもよい。
【0091】
また、前記実施形態では、通気孔27が水耕栽培用プレート5のX方向中央に配置される場合を例示したが、水耕栽培用プレート5における通気孔27の配置位置は特に制限されない。また、前記実施形態では、補強リブ50が通気孔27のY方向中央を横断する場合を例示したが、通気孔27における補強リブ50の配置位置は特に制限されない。また、前記実施形態では、全ての通気孔27に補強リブ50を設けたが、例えば、水耕栽培用プレート5における撓みが生じにくい端部近辺の通気孔27や、相対的に寸法が小さい通気孔27などには、補強リブ50を設けなくてもよい。
【0092】
また、前記実施形態の水耕栽培装置1に、栽培エリア内にミストを噴霧するミスト噴霧器や、栽培エリア内の温度を任意に調整可能な温調装置などをさらに設けてもよい。ミスト噴霧器を用いて、例えば液体肥料、液化炭酸ガス又は殺虫剤等の液体をミストに変えて噴霧することにより、植物の栽培効率を更に向上させることができる。温調装置を用いて、栽培エリア内を植物の育成に適した温度に調整することにより、植物の栽培効率を更に向上させることができる。
【0093】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。さらに、以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【符号の説明】
【0094】
1 水耕栽培装置
5 水耕栽培用プレート
7 水耕栽培槽
15 移送手段
21 平板部
25 植物保持孔
27 通気孔
50 補強リブ
51 第1立壁部
52 第2立壁部
53 第3立壁部
54 第4立壁部