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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019289
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】把持力計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20220120BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20220120BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220120BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20220120BHJP
   G01L 5/161 20200101ALI20220120BHJP
   G01L 5/18 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
A61B5/22 210
A61B5/11 230
A61B10/00 V
G01L5/00 101Z
G01L5/161
G01L5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123049
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲露▼
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】寺田 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩二
【テーマコード(参考)】
2F051
4C038
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB07
2F051AB09
2F051BA05
4C038VA04
4C038VB13
(57)【要約】
【課題】被押圧部の位置を正確に調節することが容易な把持力計測装置を提供する。
【解決手段】把持力計測装置は、本体部と、複数の被押圧部と、検出部と、位置決め機構と、を備える。複数の被押圧部のうちの少なくとも1つの被押圧部は、他の被押圧部に対する相対位置を変更可能に構成された可動式被押圧部となっている。位置決め機構は、凸部及び受け部を有し、本体部及び可動式被押圧部のうちのいずれか一方には凸部が設けられ、他方には受け部が設けられて、可動式被押圧部があらかじめ設定された複数の停止位置それぞれへ移動した際に、凸部が受け部に引っ掛かって、可動式被押圧部が停止位置に位置決めされるように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持力計測装置であって、
本体部と、複数の被押圧部と、検出部と、位置決め機構と、を備え、
前記複数の被押圧部は、前記本体部の外側に配置されていて、各被押圧部が被験者の五指のいずれかに対応しており、被験者が前記把持力計測装置を片手で把持する際に、各被押圧部に対応する指で各被押圧部を押圧可能に構成され、
前記検出部は、前記複数の被押圧部が押圧される際に各被押圧部に作用する押圧力を検出可能に構成され、
前記複数の被押圧部のうちの少なくとも1つの被押圧部は、他の被押圧部に対する相対位置を変更可能に構成された可動式被押圧部となっており、
前記位置決め機構は、凸部及び受け部を有し、前記本体部及び前記可動式被押圧部のうちのいずれか一方には前記凸部が設けられ、他方には前記受け部が設けられて、前記可動式被押圧部があらかじめ設定された複数の停止位置それぞれへ移動した際に、前記凸部が前記受け部に引っ掛かって、前記可動式被押圧部が前記停止位置に位置決めされるように構成されている、
把持力計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持力計測装置であって、
付勢部を備え、
前記凸部は、前記受け部に引っ掛かる第1位置と前記受け部に引っ掛からない第2位置とへ移動可能に構成されており、
前記付勢部は、弾性変形可能に構成され、前記凸部が前記第1位置から前記第2位置へ移動する際に弾性変形して、その弾性変形に伴って生じる弾性力で前記凸部を前記第1位置側へと付勢するように構成されている、
把持力計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の把持力計測装置であって、
前記凸部及び前記付勢部は、前記凸部に相当するボールと前記付勢部に相当するスプリングとを有するボールプランジャによって構成されている、
把持力計測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の把持力計測装置であって、
前記本体部には、レールが設けられ、
前記可動式被押圧部は、前記レールに沿ってスライドすることにより、前記他の被押圧部に対する相対位置を変更可能に構成されている、
把持力計測装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の把持力計測装置であって、
前記複数の被押圧部は、前記被験者の第1指に対応する第1被押圧部と、前記被験者の第2指に対応する第2被押圧部と、前記被験者の第3指に対応する第3被押圧部と、前記被験者の第4指に対応する第4被押圧部と、前記被験者の第5指に対応する第5被押圧部と、を含み、
前記本体部の両側のうち、一方側に前記第1被押圧部が配置され、他方側に前記第2被押圧部、前記第3被押圧部、前記第4被押圧部及び前記第5被押圧部が配置され、
前記検出部は、ロードセルと4つの感圧センサーとを含み、
前記ロードセルは、前記第1被押圧部が押圧された際に、前記第1被押圧部に作用する押圧力の大きさに換算可能な出力値を出力可能に構成され、
前記4つの感圧センサーは、前記第2被押圧部、前記第3被押圧部、前記第4被押圧部及び前記第5被押圧部が押圧された際に、前記第2被押圧部、前記第3被押圧部、前記第4被押圧部及び前記第5被押圧部に作用する押圧力の比率に換算可能な出力値を出力可能に構成されている、
把持力計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、把持力計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、手指の巧緻性や物体の操作能力を評価するために用いられる装置として、被験者が手指を使って加えた力及びトルクの多方向の成分を計測できる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005-503229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された装置では、被験者が複数の指を使って装置へ力を加えた場合であっても、各指から装置へ作用する力を指ごとに計測することはできない。これに対し、本件発明者らは、被験者が手を使って物体を把持する際に、複数の指それぞれから物体に作用する押圧力を計測可能な把持力計測装置を開発している。
【0005】
本件発明者らが開発中の把持力計測装置は、複数の被押圧部を備えている。被験者が把持力計測装置を把持した際には、複数の被押圧部それぞれに被験者の指が掛かり、各指から被押圧部に作用する押圧力の大きさを計測することができる。また、本件発明者らが開発中の把持力計測装置は、複数の被押圧部の位置を変更可能に構成された調節機構を備えている。このような調節機構を備えていれば、被験者ごとに手の大きさが異なっていても、被験者が把持力計測装置を把持する際に、各被押圧部に適切に指が掛かるように各被押圧部の位置を調節することができる。
【0006】
ところで、被験者が把持力計測装置での測定を定期的に実施し、手指の巧緻性の経時的変化を観察するような用途において、測定のたびに各被押圧部の位置が変わると、被押圧部の位置が変わったことに起因して測定結果に変化が生じることがある。この場合、測定結果に変化が生じても、その原因が手指の巧緻性の変化にあるのか、被押圧部の位置の変化にあるのかを判別することができない。したがって、手指の巧緻性の変化を適切に観察するには、初回の測定時に各被押圧部の位置を調節したら、2回目以降の測定時には各被押圧部の位置を初回と同一位置に調節することが重要となる。しかし、各被押圧部の位置を無段階に変更することができる場合、各被押圧部の位置が前回の測定時と同一位置となるように正確に調節することは容易ではない。
【0007】
本開示の一局面は、被押圧部の位置を正確に調節することが容易な把持力計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面における把持力計測装置は、本体部と、複数の被押圧部と、検出部と、位置決め機構と、を備える。複数の被押圧部は、本体部の外側に配置されていて、各被押圧部が被験者の五指のいずれかに対応しており、被験者が把持力計測装置を片手で把持する際に、各被押圧部に対応する指で各被押圧部を押圧可能に構成される。検出部は、複数の被押圧部が押圧される際に各被押圧部に作用する押圧力を検出可能に構成される。複数の被押圧部のうちの少なくとも1つの被押圧部は、他の被押圧部に対する相対位置を変更可能に構成された可動式被押圧部となっている。位置決め機構は、凸部及び受け部を有し、本体部及び可動式被押圧部のうちのいずれか一方には凸部が設けられ、他方には受け部が設けられて、可動式被押圧部があらかじめ設定された複数の停止位置それぞれへ移動した際に、凸部が受け部に引っ掛かって、可動式被押圧部が停止位置に位置決めされるように構成されている。
【0009】
このように構成された把持力計測装置によれば、可動式被押圧部を移動させることにより、他の被押圧部に対する相対位置を変更することができる。そのため、被験者ごとに手の大きさが異なっていても、被験者が把持力計測装置を把持する際に、各被押圧部に適切に指が掛かるように各被押圧部の位置を調節することができる。しかも、可動式被押圧部を移動させる際、可動式被押圧部があらかじめ設定された複数の停止位置それぞれへ移動すると、凸部が受け部に引っ掛かって、可動式被押圧部が停止位置に位置決めされる。したがって、被押圧部の位置を無段階に変更できる場合とは異なり、複数の停止位置のいずれかに可動式被押圧部を位置決めでき、可動式被押圧部の位置を正確かつ容易に前回の測定時と同一位置に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は把持力計測システムの構成を示すブロック図である。
図2図2Aは第1実施形態の把持力計測装置を左前上方から見た斜視図である。図2Bは第1実施形態の把持力計測装置を右後下方から見た斜視図である。
図3図3Aは第1実施形態の把持力計測装置の正面図である。図3Bは第1実施形態の把持力計測装置のIIIB-IIIB線断面図である。
図4図4Aは第1実施形態の把持力計測装置の正面図である。図4Bは第1実施形態の把持力計測装置のIVB-IVB線断面図である。図4Cは第1実施形態の把持力計測装置のIVC-IVC線断面図である。
図5図5Aは第1実施形態の把持力計測装置のVA部を拡大して示す図であり、被押圧部が停止位置にある状態を示す説明図である。図5Bは被押圧部が隣の停止位置へ移動中の状態を示す説明図である。図5Cは被押圧部が隣の停止位置への移動を完了した状態を示す説明図である。
図6図6Aは第1実施形態の把持力計測装置の正面図である。図6Bは第1実施形態の把持力計測装置のVIB-VIB線断面図である。図6Cは第1実施形態の把持力計測装置のVIC-VIC線断面図である。
図7図7は第1実施形態の把持力計測装置のVII部を示す拡大図である。
図8図8は把持力計測装置において実行される計測処理のフローチャートである。
図9図9Aはデータ処理装置において実行されるデータ受信圧力換算処理のフローチャートである。図9Bはデータ処理装置において実行される圧力値への換算処理のフローチャートである。
図10図10は4つの感圧センサーにかかる荷重の算出例を示す説明図である。
図11図11Aは第2実施形態の把持力計測装置の右側面図である。図11Bは第2実施形態の把持力計測装置のXIB-XIB線断面図である。図11Cは第2実施形態の把持力計測装置のXIC部の拡大図である。
図12図12Aは第3実施形態の把持力計測装置の背面図である。図12Bは第3実施形態の把持力計測装置のXIIB-XIIB線断面図である。図12Cは第3実施形態の把持力計測装置のXIIC部の拡大図である。
図13図13Aは第4実施形態の把持力計測装置の右側面図である。図13Bは第4実施形態の把持力計測装置のXIIIB-XIIIB線断面図である。図13Cは第4実施形態の把持力計測装置のXIIIC部の拡大図である。
図14図14Aは第5実施形態の把持力計測装置の正面図である。図14Bは第5実施形態の把持力計測装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1実施形態
次に、上述の把持力計測装置について、例示的な実施形態を挙げて説明する。
[把持力計測システム及び把持力計測装置の構成]
図1に示すように、把持力計測システム1は、把持力計測装置2及びデータ処理装置3を備える。把持力計測装置2は、制御・通信モジュール10、ロードセル11、4つの感圧センサー12A,12B,12C,12D、アンプモジュール13及び電池15等を備える。制御・通信モジュール10は、制御部20、第1取得部21、第2取得部22、通信部23及び電源部24等を備える。制御部20は、CPU201及びメモリ202等を備える。データ処理装置3は、パーソナルコンピュータ31(以下、PC31と略称する。)、ディスプレイ32及び受信モジュール33等を備える。
【0012】
把持力計測装置2は、図2A及び図2Bに示すように、本体部50、5つのボタン51A,51B,51C,51D,51E及びスイッチ53等を備える。本体部50は、本実施形態においては概ね円柱状(直径約58mm×高さ約155mm)に構成されている。5つのボタン51A~51Eは、本体部50の外側に配置されている。5つのボタン51A~51Eは、被験者の五指に対応し、被験者が把持力計測装置2を片手で把持する際に、各ボタン51A~51Eに対応する指が各ボタン51A~51Eに掛かるように構成されている。より詳しくは、ボタン51Aは本体部50の正面側(図中でいう前側。)に配置されている。ボタン51B~51Eは本体部50の背面側(図中でいう後側。)配置されている。ボタン51B~51Eは上下方向に一列に並べて配置されている。
【0013】
把持力計測装置2は、図3A及び図3Bに示すように、レール60、ロードセルモジュール61、感圧センサーモジュール62A,62B,62C,62D等を備える。ロードセルモジュール61は、上述のロードセル11及びボタン51Aを備え、更に台座66を備える。台座66は、レール60に対してスライド可能に取り付けられている。ロードセル11は、台座66に対して固定されている。ボタン51Aは、ロードセル11に対して固定されている。これにより、ロードセルモジュール61全体が、レール60に沿って図中でいう上下方向へ移動可能となっている。
【0014】
ロードセル11は、押圧力に比例して歪みが生じる金属製の起歪体と、その起歪体に生じる歪みに応じて抵抗値が変化する歪みゲージとを有する。被験者がボタン51Aを押圧すると、ロードセル11が押圧される。その際、ロードセル11には、ロードセル11に作用する押圧力の大きさに比例する歪みが生じ、その歪みに応じて歪みゲージの抵抗値が変化する。ロードセル11に作用する押圧力の大きさと歪みゲージの抵抗値とは既知の比例関係にあるため、歪みゲージの抵抗値に基づいて、ロードセル11に作用する押圧力の大きさを検出することができる。
【0015】
感圧センサーモジュール62Aは、上述の感圧センサー12A及びボタン51Bを備え、更にセンサーケース67A及び押し子69Aを備える。センサーケース67Aは、レール60に対してスライド可能に取り付けられている。センサーケース67Aの内側には、感圧センサー12A及び押し子69Aの一部が収容されている。ボタン51Bは、センサーケース67Aの外側で押し子69Aに対して固定されている。これにより、感圧センサーモジュール62A全体が、レール60に沿って図中でいう上下方向へ移動可能となっている。被験者がボタン51Bを押圧すると、押し子69Aによって感圧センサー12Aが押圧される。感圧センサー12Aは、押圧されると電極間の抵抗値が低下する抵抗型の感圧センサーである。
【0016】
感圧センサーモジュール62Bは、上述の感圧センサー12B及びボタン51Cを備え、更にセンサーケース67B及び押し子69Bを備える。センサーケース67Bは、レール60に対してスライド可能に取り付けられている。センサーケース67Bの内側には、感圧センサー12B及び押し子69Bの一部が収容されている。ボタン51Cは、センサーケース67Bの外側で押し子69Bに対して固定されている。これにより、感圧センサーモジュール62B全体が、レール60に沿って図中でいう上下方向へ移動可能となっている。被験者がボタン51Cを押圧すると、押し子69Bによって感圧センサー12Bが押圧される。感圧センサー12Bは、押圧されると電極間の抵抗値が低下する抵抗型の感圧センサーである。
【0017】
感圧センサーモジュール62Cは、上述の感圧センサー12C及びボタン51Dを備え、更にセンサーケース67C及び押し子69Cを備える。センサーケース67Cは、レール60に対してスライド可能に取り付けられている。センサーケース67Cの内側には、感圧センサー12C及び押し子69Cの一部が収容されている。ボタン51Dは、センサーケース67Cの外側で押し子69Cに対して固定されている。これにより、感圧センサーモジュール62C全体が、レール60に沿って図中でいう上下方向へ移動可能となっている。被験者がボタン51Dを押圧すると、押し子69Cによって感圧センサー12Cが押圧される。感圧センサー12Cは、押圧されると電極間の抵抗値が低下する抵抗型の感圧センサーである。
【0018】
感圧センサーモジュール62Dは、上述の感圧センサー12D及びボタン51Eを備え、更にセンサーケース67D及び押し子69Dを備える。センサーケース67Dは、レール60に対してスライド可能に取り付けられている。センサーケース67Dの内側には、感圧センサー12D及び押し子69Dの一部が収容されている。ボタン51Eは、センサーケース67Dの外側で押し子69Dに対して固定されている。これにより、感圧センサーモジュール62D全体が、レール60に沿って図中でいう上下方向へ移動可能となっている。被験者がボタン51Eを押圧すると、押し子69Dによって感圧センサー12Dが押圧される。感圧センサー12Dは、押圧されると電極間の抵抗値が低下する抵抗型の感圧センサーである。
【0019】
図4A図4B及び図4Cに示すように、レール60の背面側(図中でいう後側。)には、複数のボールプランジャ71が取り付けられている。図4B及び図4Cには、ボールプランジャ71が取り付けられている位置のみを図示してある。ボールプランジャ71のより具体的な構造については、図5Aに拡大して示す。ボールプランジャ71は、図5Aに示すように、バレル71A,コイルスプリング71B及びボール71Cを備える。
【0020】
バレル71Aの外周には、ねじ山が形成されている。すなわち、バレル71Aは、雄ねじとして構成されている。レール60にはねじ孔(雌ねじ)が形成され、このねじ孔にバレル71Aを螺合させることにより、ボールプランジャ71がレール60に取り付けられている。コイルスプリング71B及びボール71Cは、バレル71Aの内周側に配置されている。
【0021】
ボール71Cは、バレル71Aに対し回転可能かつバレル71Aの軸方向へ移動可能な状態でバレル71Aの内周側に保持されている。バレル71Aは、軸方向の一端は開口を有する開口端とされ、軸方向の他端は閉塞された閉塞端とされている。バレル71Aの一端にある開口の直径は、ボール71Cの直径よりも僅かに小さい径とされている。コイルスプリング71Bは、バレル71Aの閉塞端とボール71Cとの間に挟まれて、僅かに圧縮されている。これにより、ボール71Cは、バレル71Aの開口端側に向かって付勢されて、ボール71Cの一部がバレル71Aの開口端からバレル71Aの外部へ突出する状態にある。
【0022】
感圧センサーモジュール62Aには、図5Aに示すように、受け部73が設けられている。本実施形態の場合、受け部73は、センサーケース67Aに形成された凹部(すなわち、有底穴。)である。感圧センサーモジュール62Aが、図5Aに示す位置にある場合、ボールプランジャ71のボール71Cは、感圧センサーモジュール62Aに設けられた受け部73に嵌り込む。
【0023】
ボール71Cが受け部73に嵌り込んでいる状態において、ボール71Cは、受け部73に引っ掛かる凸部として機能し、感圧センサーモジュール62Aが図中でいう上下方向へ移動するのを妨げる。そのため、ボール71Cが受け部73に嵌り込んでいる状態にある限り、感圧センサーモジュール62Aが図5Aに示す位置に位置決めされた状態は維持される。すなわち、ボールプランジャ71及び受け部73は、感圧センサーモジュール62Aを図5Aに示す位置に位置決めする位置決め機構として機能する。
【0024】
一方、感圧センサーモジュール62Aに対し、ある程度以上の強い外力を加えれば、感圧センサーモジュール62Aを上下方向に移動させることができる。一例を挙げれば、例えば、感圧センサーモジュール62Aに対してある程度以上の強い外力を加えれば、感圧センサーモジュール62Aを、図5Aに示す位置から図5Bに示す位置を経て図5Cに示す位置へとスライドさせることができる。
【0025】
感圧センサーモジュール62Aが図5Aに示す位置から図5Bに示す位置へとスライドする際、ボールプランジャ71のボール71Cには、センサーケース67Aから力が作用する。その力を受けたボール71Cは、コイルスプリング71Bからの付勢力に抗して、コイルスプリング71Bを圧縮する方向へと移動する。これにより、ボール71Cは、受け部73に引っ掛かる第1位置(図5A参照。)から、受け部73に引っ掛からない第2位置(図5B参照。)へと待避し、感圧センサーモジュール62Aの移動を妨げない状態となる。
【0026】
さらに、感圧センサーモジュール62Aが図5Bに示す位置から図5Cに示す位置へとスライドすると、図5Cに示すように、再びボールプランジャ71のボール71Cが、感圧センサーモジュール62Aの受け部73に嵌り込む。このとき、ボール71Cは、コイルスプリング71Bからの付勢力により、受け部73に引っ掛からない第2位置(図5B参照。)から、受け部73に引っ掛かる第1位置(図5C参照。)へと復帰し、感圧センサーモジュール62Aの移動を妨げる状態となる。
【0027】
複数のボールプランジャ71は、上下方向に10mm間隔で配列されている。したがって、ボール71Cが受け部73に嵌り込む位置を頼りにして、感圧センサーモジュール62Aをスライドさせれば、感圧センサーモジュール62Aの位置を10mm単位で正確に調節することができる。なお、以上の説明では、感圧センサーモジュール62Aを例に挙げて細部の構造について詳述したが、感圧センサーモジュール62B~62Dも、感圧センサーモジュール62Aと全く同様に構成されている。すなわち、感圧センサーモジュール62B~62Dは、図中でいう上下方向へスライド可能に構成されおり、かつボールプランジャ71及び受け部73によって位置決め可能に構成されている。
【0028】
図6A図6B及び図6Cに示すように、レール60の正面側(図中でいう前側。)には、複数のボールプランジャ75が取り付けられている。図6B及び図6Cには、ボールプランジャ75が取り付けられている位置のみを図示してある。ボールプランジャ75のより具体的な構造については、図7に拡大して示す。ボールプランジャ75は、図7に示すように、バレル75A,コイルスプリング75B及びボール75Cを備える。バレル75A,コイルスプリング75B及びボール75Cは、上述したボールプランジャ71のバレル71A,コイルスプリング71B及びボール71Cと全く同様に構成されているので、ここでの説明は省略する。
【0029】
ロードセルモジュール61には、図7に示すように、受け部77が設けられている。本実施形態の場合、受け部77は、台座66に形成された凹部(すなわち、有底穴。)である。ボールプランジャ75は、上述のボールプランジャ71と同様に機能し、受け部77は、上述の受け部73と同様に機能する。すなわち、これらボールプランジャ75及び受け部77によって、ロードセルモジュール61の位置決め機構が構成されている。複数のボールプランジャ75は、上下方向に10mm間隔で配列されている。したがって、ボールプランジャ75のボール75Cが受け部77に嵌り込む位置を頼りにして、ロードセルモジュール61をスライドさせれば、ロードセルモジュール61の位置を10mm単位で正確に調節することができる。
【0030】
ロードセル11からの出力信号は、図1に示すように、アンプモジュール13で増幅されて、第1取得部21経由で制御部20へ入力される。感圧センサー12からの出力信号は、第2取得部22経由で制御部20へ入力される。第2取得部22には分圧回路が含まれ、感圧センサー12の抵抗値が低くなると、制御部20への出力電圧が大きくなるよう構成されている。制御部20は、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dから出力されるアナログ信号をデジタルデータに変換する。本実施形態の場合、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dからは、上記アナログ信号として0~3.3VIの電圧が出力される。また、本実施形態の場合、制御部20は、上記0~3.3VIの電圧値を0~1023のデジタルデータに変換する。制御部20は、通信部23を介して上記デジタルデータをデータ処理装置3へ無線伝送する。把持力計測装置2からは、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dそれぞれに対応する5つのデジタルデータが、約0.1秒ごとに繰り返し送信される。
【0031】
データ処理装置3では、受信モジュール33を介して把持力計測装置2から伝送されてくる情報(すなわち、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dそれぞれに対応するデジタルデータ。)を受信し、PC31においてデータ処理を実行する。データ処理の結果は例えばディスプレイ32に表示されればよい。あるいは、データ処理の結果は印刷又はファイルに出力されてもよい。
【0032】
[把持力計測装置において実行される処理]
次に、把持力計測装置2において実行される処理について、図8に基づいて説明する。この処理は、把持力計測装置2のスイッチ53がオンにされたことを契機として実行される処理である。また、この処理は、把持力計測装置2において、約0.1秒ごとに繰り返し実行される。この処理を開始すると、把持力計測装置2では、ボタン51Aに加えられた力の大きさをロードセル11によって検出する(S101)。また、S101と並行して、ボタン51B~51Eに加えられた力を感圧センサー12A~12Dによって検出する(S103)。ロードセル11からの出力信号は、アンプモジュール13で増幅する(S105)。アンプモジュール13で増幅されたロードセル11からの出力信号と感圧センサー12A~12Dからの出力信号はA/D変換されて(S107)、そのデータがメモリ202内に確保されたバッファに保存される(S109)。
【0033】
続いて、把持力計測装置2は、データ処理装置3に対してデータ送信要求を送信し(S111)、受信側の準備が完了したか否かを判断する(S113)。S113ではデータ処理装置3からの応答を待ち、所定時間待っても応答がない場合は(S113:NO)、S111へ戻る。これにより、データ処理装置3からの応答がない場合は、S111-S13を繰り返し実行する。一方、S113においてデータ処理装置3からの応答があった場合は(S113:YES)、バッファに保存されたデータを送信可能なサイズに分割して(S115)、分割したデータを送信して(S117)、計測を終了する。
【0034】
[データ処理装置において実行される処理]
次に、データ処理装置3において実行される処理について、図9A及び図9Bに基づいて説明する。この処理は、利用者がPC31において所定のアプリケーションを起動して、所定の操作を実行すると開始される処理である。この処理を開始すると、データ処理装置3は、図9Aに示すように、受信の準備をして(S201)、把持力計測装置2からのデータ送信要求を受信したか否かを判断する(S203)。
【0035】
S203では把持力計測装置2からの要求を待ち、所定時間待っても要求がない場合は(S203:NO)、S201へ戻る。これにより、把持力計測装置2からの要求がない場合は、S201-S203を繰り返し実行する。一方、S203においてデータ処理装置3からのデータ送信要求があった場合は(S203:YES)、データを受信して(S205)、分割されたデータを合成する(S207)。
【0036】
続いて、データ処理装置3は、受信したデータに対する圧力値への換算処理を実行する(S209)。S209は、詳しくは図9Bに示すような処理となる。この処理を開始すると、データ処理装置3は、ロードセル11での押圧開始から1秒後の出力値を取得する(S211)。より詳しく説明すると、把持力計測装置2は、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dからの出力信号をデジタルデータ化して、約0.1秒ごとにデータ処理装置3へと送信している。ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dに荷重が作用していない場合、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dの出力値は全て0となっている。一方、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dに荷重が作用した場合、ロードセル11及び4つの感圧センサー12A~12Dの出力値は0以外の値を示す。したがって、S211では、ロードセル11の出力値が0から0以外の値に切り替わった時点を押圧開始に相当する時点と想定し、その押圧開始時点から1秒後の時点におけるロードセル11の出力値を取得する。
【0037】
続いて、データ処理装置3は、ロードセル11の出力値を荷重(以下、ロードセル荷重とも称する。)に変換する(S213)。ロードセル11の場合は、ロードセル11の検出値と荷重の大きさとが精度よく比例する関係にあり、その関係があらかじめ特定されている。そのため、ロードセル11の検出値を荷重に換算することができる。図10に示す例の場合、ロードセル11の検出値が0.9Vであれば、このロードセル11の特性に基づき、ロードセル11に作用した荷重が33.2Nであることを特定できる。
【0038】
続いて、データ処理装置3は、感圧センサー12A~12Dの出力値の比率を感圧センサー12A~12Dの荷重(以下、感圧センサー荷重とも称する。)の比率に換算する(S215)。S215では、まずS211において取得したロードセル11での押圧開始から1秒後の出力値に基づいて、変換表又は変換式を選択する。変換表は、把持力計測装置2において、4つの感圧センサー12A~12Dにかかる荷重を0から測定上限まで変化させた際に、4つの感圧センサー12A~12Dからどのような出力値が出力されるのかを事前に測定し、それら荷重と出力値との関係を記憶させた配列データ(ルックアップテーブル)である。変換式は、変換表の場合と同様な荷重と出力値を事前に測定し、それら荷重と出力値との関係から最小二乗法等の手法で求められた近似式である。これら変換表又は変換式は、いずれか一方を用いればよい。
【0039】
ただし、本実施形態の場合、感圧センサー12A~12Dにかかる荷重の大きさが同じであっても、素早く荷重がかけられた場合とゆっくりと荷重がかけられた場合とで、感圧センサー12A~12Dの出力特性が変わる。そのため、上記変換表又は変換式としては、押圧速度を複数通りに変えて感圧センサー12A~12Dの出力特性を実測し、その複数通りの押圧速度に対応する複数の変換表又は変換式があらかじめ用意されている。
【0040】
S211において取得した出力値(すなわち、ロードセル11での押圧開始から1秒後の出力値。)は、押圧速度が速い場合ほど大きくなる。そこで、S215では、S211において取得した出力値に対応する変換表又は変換式を、上記複数の変換表又は変換式の中から選択する。これにより、押圧速度に対応する変換表又は変換式が選択されることになる。S215では、選択した変換表又は変換式を利用して、4つの感圧センサー12A~12Dの出力値(電圧値。本実施形態の場合、厳密には電圧値に対応するデジタルデータ。)の比率を、感圧センサー荷重の比率に変換する。
【0041】
図10に示す例の場合、ロードセル11での押圧開始から1秒後の出力値は0.3Vとなっている。そのため、S215では、出力値0.3Vに対応する変換表又は変換式が選択され、これにより、ロードセル11での押圧開始から1秒後の出力値が0.3Vとなるような押圧速度に対応する変換表又は変換式が選択される。その変換表又は変換式を利用して、例えば、4つの感圧センサー12A~12Dの出力値の比率1.5V:1.0V:0.7V:0.5Vが、感圧センサー荷重の比率17.64x:8.89x:7.71x:4.77xに変換される。
【0042】
続いて、データ処理装置3は、ロードセル荷重と感圧センサー荷重の比率から荷重係数xを算出する(S217)。図10に示す例の場合、4つの感圧センサー荷重の比率は、上述の通り、17.64:8.89:7.71:4.77となる。また、4つの感圧センサー荷重の総和17.64x+8.89x+7.71x+4.77xは、ロードセル荷重33.2Nに一致する。したがって、17.64x+8.89x+7.71x+4.77x=33.2という数式が成り立つ。この数式をxについて解くとx=0.85となる。すなわち、本実施形態の場合、荷重係数x=0.85となる。
【0043】
続いて、データ処理装置3は、ロードセンサ荷重と荷重係数xから各感圧センサーにかかる荷重を算出する(S219)。図10に示す例の場合、4つの感圧センサー12A~12Dにかかる荷重は、17.64×0.85≒15N、8.89×0.85≒7.6N、7.71×0.85≒6.5N、4.77×0.85≒4.1Nとなる。これにより、4つの感圧センサー12A~12Dにかかった荷重を求めることができる。なお、S217を終えたら図9A及び図9Bに示す処理を終了する。
【0044】
[効果]
以上説明したような把持力計測装置2によれば、ロードセルモジュール61及び感圧センサーモジュール62A~62Dそれぞれをスライドさせることにより、5つのボタン51A~51Eの相対位置を変更することができる。そのため、被験者ごとに手の大きさが異なっていても、被験者が把持力計測装置2を把持する際に、各ボタン51A~51Eに適切に指が掛かるように各ボタン51A~51Eの位置を調節することができる。
【0045】
しかも、ボタン51A~51Eを移動させる際、ボタン51A~51Eが所定の位置(以下、停止位置とも称する。)へ移動すると、ボールプランジャ71,75のボール71C,75Cが受け部73,77に引っ掛かる。これにより、ボタン51A~51Eが停止位置に位置決めされるので、ボタン51A~51Eの位置を無段階に変更できる場合とは異なり、複数の停止位置のいずれかにボタン51A~51Eを位置決めできる。したがって、被験者が定期的に把持力の計測を行う際に、ボタン51A~51Eの位置を正確かつ容易に前回の測定時と同一位置に調節することができる。
【0046】
なお、上記実施形態において、ボタン51A~51Eは、それぞれが本開示でいう被押圧部及び可動式被押圧部の一例に相当する。ボタン51Aは、本開示でいう第1被押圧部の一例に相当する。ボタン51Bは、本開示でいう第2被押圧部の一例に相当する。ボタン51Cは、本開示でいう第3被押圧部の一例に相当する。ボタン51Dは、本開示でいう第4被押圧部の一例に相当する。ボタン51Eは、本開示でいう第5被押圧部の一例に相当する。
【0047】
ロードセル11、感圧センサー12A~12D及び制御部20は、本開示でいう検出部の一例に相当する。ボールプランジャ71,75及び受け部73,77は、本開示でいう位置決め機構の一例に相当する。ボールプランジャ71,75が備えるボール71C,75Cは、本開示でいう凸部の一例に相当する。ボールプランジャ71,75が備えるコイルスプリング71B,75Bは、本開示でいう付勢部の一例に相当する。
【0048】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降の各実施形態は、第1実施形態で例示した構成の一部を変更しただけなので、第1実施形態との相違点を中心に詳述し、第1実施形態と同様な部分に関しては、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図11A図11B及び図11Cに示すように、第2実施形態の把持力計測装置81は、第1実施形態とは異なる位置決め機構を備えている。具体的には、第2実施形態の場合、センサーケース82に付勢部83及び凸部84が設けられている。また、本体部85に受け部86が形成されている。凸部84は、図中でいう左右方向へ変位可能に構成されている。凸部84が図中でいう右方へ変位すると、付勢部83が弾性変形し、その際に生じる弾性力で、凸部84を図中でいう左方へと付勢する。
【0050】
このような凸部84及び受け部86によって構成される位置決め機構を利用しても、第1実施形態同様に、ボタン87を移動させる際、ボタン87が停止位置へ移動すると、凸部84が受け部86に引っ掛かり、ボタン87が停止位置に位置決めされる。したがって、ボタン87の位置を無段階に変更できる場合とは異なり、複数の停止位置のいずれかにボタン87を位置決めできる。よって、被験者が定期的に把持力の計測を行う際に、ボタン87の位置を正確かつ容易に前回の測定時と同一位置に調節することができる。なお、図11A図11B及び図11Cでは、1つのボタン87だけを図示してあるが、第1実施形態同様、ボタン87と同等なボタンが4つ設けられていてもよいことはもちろんである。
【0051】
(3)第3実施形態
次に、第3実施形態について説明する。図12A図12B及び図12Cに示すように、第3実施形態の把持力計測装置91は、第1,第2実施形態とは異なる位置決め機構を備えている。具体的には、第3実施形態の場合、センサーケース92に付勢部93及び凸部94が設けられている。また、本体部95に受け部96が形成されている。凸部94は、図中でいう前後方向へ変位可能に構成されている。凸部94が図中でいう前方へ変位すると、付勢部93が弾性変形し、その際に生じる弾性力で、凸部94を図中でいう後方へと付勢する。
【0052】
このような凸部94及び受け部96によって構成される位置決め機構を利用しても、第1,第2実施形態同様に、ボタン97を移動させる際、ボタン97が停止位置へ移動すると、凸部94が受け部96に引っ掛かり、ボタン97が停止位置に位置決めされる。したがって、ボタン97の位置を無段階に変更できる場合とは異なり、複数の停止位置のいずれかにボタン97を位置決めできる。よって、被験者が定期的に把持力の計測を行う際に、ボタン97の位置を正確かつ容易に前回の測定時と同一位置に調節することができる。なお、図12A図12B及び図12Cでは、1つのボタン97だけを図示してあるが、第1実施形態同様、ボタン97と同等なボタンが4つ設けられていてもよいことはもちろんである。
【0053】
(4)第4実施形態
次に、第4実施形態について説明する。図13A図13B及び図13Cに示すように、第4実施形態の把持力計測装置101は、第1,第2,第3実施形態とは異なる位置決め機構を備えている。具体的には、第4実施形態の場合、センサーケース102に凸部104が設けられている。また、本体部105に受け部106が形成されている。凸部104は、可撓性を有する弾性変形可能な薄板状の部分であり、図中でいう右端側を基端として、基端から左方へ向かって片持ち梁状に延出している。凸部104を弾性変形させれば、凸部104が湾曲し、凸部104の延出方向先端(図中でいう左端。)は、図中でいう上下方向に揺動する。
【0054】
このような凸部104及び受け部106によって構成される位置決め機構を利用しても、第1,第2,第3実施形態同様に、ボタン107を移動させる際、ボタン107が停止位置へ移動すると、凸部104が受け部106に引っ掛かり、ボタン107が停止位置に位置決めされる。したがって、ボタン107の位置を無段階に変更できる場合とは異なり、複数の停止位置のいずれかにボタン107を位置決めできる。よって、被験者が定期的に把持力の計測を行う際に、ボタン107の位置を正確かつ容易に前回の測定時と同一位置に調節することができる。なお、図13A図13B及び図13Cでは、1つのボタン107だけを図示してあるが、第1実施形態同様、ボタン107と同等なボタンが4つ設けられていてもよいことはもちろんである。
【0055】
(5)第5実施形態
次に、第5実施形態について説明する。図14A及び図14Bに示すように、第5実施形態の把持力計測装置111は、本体部113に目盛115及び目盛117が設けられている。目盛115は、ボタン119Aの位置を示す印である。本実施形態の場合、目盛115は、ボタン119Aの位置を「1」~「8」の番号で示すように構成されている。ボタン119Aの位置を示す印は番号に限定されず、番号以外の符号(例えば、「A」,「B」,「C」…等。)でボタン119Aの位置が示されていてもよい。図14Aに示す例示の場合、ボタン119Aは、番号「3」に対応する位置にある。
【0056】
目盛117は、ボタン119B~119Eそれぞれの位置を示す印である。本実施形態の場合は、「1」~「12」の番号でボタン119B~119Eの位置を示すように構成されている。番号以外の符号でボタン119B~119Eの位置が示されていてもよい点は、目盛115と同様である。図14Bに示す例示の場合、ボタン119Bは、番号「1」に対応する位置にあり、ボタン119Cは、番号「4」に対応する位置にあり、ボタン119Dは、番号「7」に対応する位置にあり、ボタン119Eは、番号「10」に対応する位置にある。
【0057】
以上のように構成された把持力計測装置111によれば、被験者は、目盛115及び目盛117を見て、ボタン119A~119Eの位置を認識することができる。したがって、被験者が定期的に把持力の計測を行う際に、目盛115及び目盛117の番号でボタン119A~119Eの位置を覚えておけば、ボタン119A~119Eの位置を正確かつ容易に前回の測定時と同一位置に調節することができる。
【0058】
(6)他の実施形態
以上、把持力計測装置について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0059】
例えば、上記第1実施形態では、5つのボタン51A,51B,51C,51D,51Eの全てが可動式被押圧部として構成されていたが、5つのボタンのうちのいずれかについては、位置の変更ができない固定式被押圧部として構成されていてもよい。固定式被押圧部に相当するボタンの数が増えるほど、その分だけボタンの位置調節の自由度は低下するが、その点は、把持力計測装置の使用目的や製造コスト等も考慮して任意に選定されればよい。
【0060】
また、上記第1実施形態では、把持力計測装置2が、5つのボタン51A,51B,51C,51D,51Eを備える例を示したが、ボタンの数は任意である。例えば、把持力計測装置の使用目的により、第5指に対応するボタンが不要となる場合には、4つのボタンを設ければよい。あるいは、第3指~第5指が全て同一ボタンに掛かればよい場合には、3つのボタンを設ければよい。
【0061】
また、上記実施形態では、把持力計測装置2とデータ処理装置3とは、別体の装置として構成されていたが、データ処理装置3を小型化することができる場合には、データ処理装置3を把持力計測装置2に組み込んでもよい。すなわち、本開示の把持力計測システムが、単一の筐体内に組み込まれた構造となっていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、把持力計測装置2とデータ処理装置3とは、無線通信をするように構成されていたが、有線通信をするように構成されてもよい。特に、上述のようにデータ処理装置3を把持力計測装置2に組み込む場合には、把持力計測装置2とデータ処理装置3が有線通信をするように構成されていれば十分である。
【0063】
また、上記実施形態では、PC31を利用してデータ処理装置3が構成されていたが、PC31と同程度の処理能力がある機器であれば、PC31以外の機器(例えば、スマートフォンなど。)を利用してデータ処理装置3を構成してもよい。
【0064】
なお、上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される複数の機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される1つの機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される複数の機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した構成の一部を省略してもよい。上記実施形態のうち、1つの実施形態で例示した構成の少なくとも一部を、当該1つの実施形態以外の上記実施形態で例示した構成に対して付加又は置換してもよい。
【0065】
(7)補足
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示の把持力計測装置は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0066】
(A)本開示の把持力計測装置は、付勢部を備えてもよい。凸部は、受け部に引っ掛かる第1位置と受け部に引っ掛からない第2位置とへ移動可能に構成されていてもよい。付勢部は、弾性変形可能に構成され、凸部が第1位置から第2位置へ移動する際に弾性変形して、その弾性変形に伴って生じる弾性力で凸部を第1位置側へと付勢するように構成されていてもよい。
【0067】
(B)凸部及び付勢部は、凸部に相当するボールと付勢部に相当するスプリングとを有するボールプランジャによって構成されていてもよい。
(C)本体部には、レールが設けられてもよい。可動式被押圧部は、レールに沿ってスライドすることにより、他の被押圧部に対する相対位置を変更可能に構成されていてもよい。
【0068】
(D)複数の被押圧部は、第1被押圧部と、第2被押圧部と、第3被押圧部と、第4被押圧部と、第5被押圧部と、を含んでもよい。第1被押圧部は、被験者の第1指に対応する。第2被押圧部は、被験者の第2指に対応する。第3被押圧部は、被験者の第3指に対応する。第4被押圧部は、被験者の第4指に対応する。第5被押圧部は、被験者の第5指に対応する。本体部の両側のうち、一方側に第1被押圧部が配置され、他方側に第2被押圧部、第3被押圧部、第4被押圧部及び第5被押圧部が配置されてもよい。検出部は、ロードセルと4つの感圧センサーとを含んでもよい。ロードセルは、第1被押圧部が押圧された際に、第1被押圧部に作用する押圧力の大きさに換算可能な出力値を出力可能に構成されてもよい。4つの感圧センサーは、第2被押圧部、第3被押圧部、第4被押圧部及び第5被押圧部が押圧された際に、第2被押圧部、第3被押圧部、第4被押圧部及び第5被押圧部に作用する押圧力の比率に換算可能な出力値を出力可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…把持力計測システム、2,81,91,101,111…把持力計測装置、3…データ処理装置、10…制御・通信モジュール、11…ロードセル、12A,12B,12C,12D…感圧センサー、13…アンプモジュール、15…電池、20…制御部、201…CPU、202…メモリ、21…第1取得部、22…第2取得部、23…通信部、24…電源部、31…パーソナルコンピュータ、32…ディスプレイ、33…受信モジュール、50,85,95,105,113…本体部、51A,51B,51C,51D,51E,87,97,107,119A,119B,119C,119D,119E…ボタン、53…スイッチ、60…レール、61…ロードセルモジュール、62A,62B,62C,62D…感圧センサーモジュール、66…台座、67A,67B,67C,67D,82,92,102…センサーケース、69A,69B,69C,69D…押し子、71,75…ボールプランジャ、71A,75A…バレル、71B,75B…コイルスプリング、71C,75C…ボール、73,77,86,96,106…受け部、83,93…付勢部、84,94,104…凸部、115,117…目盛。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14