(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019307
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】呼吸が楽なマスクとそのための器具
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220120BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A41D13/11 A
A62B18/02 C
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123070
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】302068483
【氏名又は名称】森田 妙子
(72)【発明者】
【氏名】森田茂男
(72)【発明者】
【氏名】森田妙子
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】マスクが口や鼻の下辺に張り付いて呼吸し難い、発声し難い、つばで濡れる、不快などの問題を解決する。
【解決手段】マスク本体3に取り付ける可撓線1であって、前記可撓線1は略菱形の周りを形成し、向かい合う2つの角の1組をマスクの長手方向に、向かい合う他の2つの角の1組を前記マスク本体3の短手方向にして、前記可撓線1を前記マスク本体3の中央部分に取り付け、前記マスク本体3を顔に装着したときに口や鼻の下に相当する箇所に顔と前記マスク本体3の間に空間を生じるようにするため、前記略菱形の前記可撓線1を前記マスク本体3の短手方向の2つの向かい合う角の対角線を中心線として前記可撓線1の略菱形を山型に折り曲げるように構成した可撓線1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体3に取り付ける可撓線1であって、前記可撓線1は略菱形の周りを形成し、向かい合う2つの角の1組をマスクの長手方向に、向かい合う他の2つの角の1組を前記マスク本体3の短手方向にして、前記可撓線1を前記マスク本体3の中央部分に取り付け、前記マスク本体3を顔に装着したときに口や鼻の下に相当する箇所に顔と前記マスク本体3の間に空間を生じるようにするため、前記略菱形の前記可撓線1を前記マスク本体3の短手方向の2つの向かい合う角の対角線を中心線として前記可撓線1の略菱形を山型に折り曲げるように構成した可撓線1。
【請求項2】
前記可撓線1はさらに前記マスク本体3の長手方向の対向する2つの角のそれぞれの角度を変えられるように構成した請求項1に記載の可撓線1.
【請求項3】
前記可撓線1は、略菱形の4つの辺の部分では曲がり難くするために各辺が補強されている請求項1に記載の可撓線1.
【請求項4】
請求項1に記載の前記可撓線1が前記マスク本体3に一体化されているマスク。
【請求項5】
請求項1に記載の前記可撓線1が前記マスク本体3の左右の端部に生成される布間の接合点間または複数の接合点で構成するポケットに前記可撓線1の左右両端を挟み込むことで前記マスク本体3と一体化されているマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクが呼吸や会話の際に口や鼻の下に張り付かないように改良したマスクとそのための器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨てマスクや布マスクは、顔にフィットさせるために弾力性のある耳掛け紐で耳の両側からマスクを引っ張り、この力でマスクを顔に圧着する形式が多い。また、マスクの上部に可撓性のある針金入りのビニル線を配置し、マスクを装着後に鼻の周りの顔を押えてマスク上部を顔に密着させる形式の使い捨てマスクが販売されている。平面型の使い捨てマスクや、布マスクでは、口や鼻のまわりまで密着することが多く、呼吸や発声の際にマスクの不織布や布まで吸い込み、または唇や鼻の穴に不織布や布が張り付いてしまい、呼吸が苦しい、発声がおかしくなり会話ができない、つばや液体が不織布、布に張り付いて不潔、不快などの問題が発生する。立体成型され、鼻から口にかけて空間が生じるように生成されたマスクも販売されているが、やはり強い呼吸に対しては十分にこの空間を保持することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマスクでは口や鼻の穴がマスクの不織布、布で覆われ、密着するため呼吸し難い、会話が難しい、つばや水分が不織布、布について不潔、不快などの問題がある。引用文献1ではこのような課題を解決するため、マスクの縦方向(短手方向)の中間点にマスクの横方向(長手方向)に1本の芯材を渡し、湾曲させることで鼻、口の前に空間を保つことが記載されている。しかし、この構成では顔の形状に合わせて芯材を密着させることはできても、顔面からこの芯材を浮かせるように手で芯材を成型することは容易ではなく、例え一部の芯材を顔面から浮かせられたとしても、マスクプリーツの開き具合により、この芯材が口の位置からずれてマスクの布が口に当たったり、芯材の上下方向のマスクの布が息を強く吸うと口に当たってしまう。また、芯材は顔の両側から常に耳掛け紐で引っ張られるため形状を維持することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、口や鼻が当たる位置に相当するマスクの縦方向(短手方向)および横方向(長手方向)の中央部分に略菱形の周りの形状の可撓線(銅や鉄の針金、ワイヤ、ビニルコートされた針金(ビニタイ)や合成樹脂)を略菱形の前記可撓線の2つの対向する頂点の1組をマスクの横方向(長手方向)に水平に設置し、向かい合う他の2つの角の1組をマスクの縦方向(短手方向)に設置し、マスクを顔へ装着時に手で両側からこの可撓線を押えるだけで、マスクの中央部分を顔面の縦方向に凸型にして口や鼻の下に空間を形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマスクを使用することにより、容易に口、鼻の穴の前に空間を設けることが可能となり、従来のマスクに見られた呼吸し難い、発声し難い、つばでマスクが汚れて不潔、不快になるという課題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明のマスクであり、中央部に略菱形に成型された可撓線が1組の対向する2つの頂点が水平となる位置で設置され、他の1組の対向する2つの頂点が垂直方向となる位置に設置されている状態を示すものである。
【
図2】
図2は本発明で使用する略菱形の可撓線1の構成を示すものである。
【
図3】
図3は本発明で使用する略菱形の可撓線1の4辺に被覆を具備した構成を示す。
【
図4】
図4は
図2に示した本発明で使用する略菱形の可撓線1を左右両側から押えて(または上下方向に引っ張って)縦方向に広く変形させてところを示す図である。
【
図5】
図5は本発明で使用する略菱形の可撓線1を上方から見たところである。
【
図6】
図6は
図5の略菱形の可撓線1を紙面内の下方から左右両端を押えて変形させ、中央部分に凸部を設けた状態を示す図である。
【
図7】
図7は本発明のマスクを顔に装着した状態を横から見た図である。
【
図8】
図8はプリーツがついた使い捨てマスクに本発明の略菱形の可撓線1を配置した状態をマスクの断面で示した図である。
【
図9】
図9は本発明の略菱形の可撓線1の他の形状を示す図である。
【
図10】
図10は本発明の略菱形の可撓線1の他の形状を示す図である。
【
図11】
図11は本発明の略菱形の可撓線1の他の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の略菱形の器具(以下可撓線1)がマスク本体3に装着されている状態を示している。前記可撓線1は銅や鉄の針金、ワイヤ、ビニルコートされた針金(ビニタイ)や合成樹脂などの線であり、
図1では中央部分の菱形の周りの太線で示され、菱形の内側はマスク本体3の布地である。前記可撓線1は、マスク本体3の層間(使い捨てマスクでは表層の不織布とフィルタ布の間、布マスクでは布の層間)に設置し、耳掛け2により左右から前記マスク本体3を顔に圧着する。この際、前記可撓線1は前記マスク本体3の中央部分で、マスクを顔に装着後に、前記可撓線1を口の両サイド側から顔側に向けて前記可撓線1を手で押さえることで可撓線1の横方向の中央部分を三角の山型(
図1で紙面に垂直な方向)に盛り上げることができる。これは、略菱形の前記可撓線1を前記マスク本体3の短手方向の2つの角の対角線を中心線として、前記可撓線1の略菱形を山型に折り曲げることである。また、略菱形の可撓線1の左右の頂角を指で広げたり、左右方向から水平に2つの頂角を押さえることで、この2つの頂角を広げ、生成する三角の山型の縦方向の長さ(
図1の紙面内での菱形の高さ)を変え、また三角の山型の高さ(
図1の紙面に垂直な方向)を変えることができる。
典型的な前記マスク本体3は、高さ8cmから10cm、幅13cmから18cmであり、前記可撓線1の縦の可撓線の縦の長さ(高さ)は1cmから7cm(縦方向に広げた場合)、横の長さ(幅)は11cmから15cmである。
図1では、前記可撓線1を固定するために固定点5が4つ示されている。前記固定点5は可撓線1が自由にマスク内を動くことを制限できればどのような形態でも良く、マスクの層間の融着、縫込み、接着などで良い。また、前記固定点5の代わりに、前記可撓線1の左右の端にポケットをマスク面に取付て前記可撓線1を固定したり、マスクの左右の端部に生成される布の層間の接合点(例えば
図1でマスク本体3の左右の端部は不織布とフィルタ布がマスクの左右端部で層間の融着、縫合等により層間が接合されており、接合点間の隙間や複数の接合点でポケットを生成して、ここに物を挟み込んで固定することができる。同様に、布やガーゼ布の縫合により布間に生じた接合点も物の固定に使用できる。)に前記可撓線1の左右両端の角部分を挟み込むことで固定しても良い。顔面密着用ワイヤー4は、可撓性のある針金入りビニル線等であり、マスクの上部に配置され、マスクの上部を顔の形に密着するために使用されるもので、使い捨てマスクによく使用されている形式のものであるが、必須ではない。マスク本体3の横方向の直線4本はマスクに施された3段のプリーツを示すものであるがプリーツの数、有無は本発明には必須事項ではない。なお、前記可撓線1はマスク本端3の層間に設置することで説明したが、マスクの層が1つである場合などマスクに外付けで可撓線1を設置することも可能であり、可撓線1をマスク本体3に縫込み、接着、ポケットの設置などにより外付けで設置することも本発明の範囲である。また、製品としてのマスクに後付けで、不織布の一部を切って前記可撓線1をマスクに挿入して設置することも可能である。前記可撓線1をマスクに設置、固定することを前記可撓線1を前記マスク本体3と一体化すると記載する。
【0009】
図2は、本発明の前記可撓線1の構造を示している。可撓線1は略菱形の周りだけを形成し、略菱形の中央部分は空である。前記可撓線1の略菱形の左右の端を紙面上の左右から中央に向けて力を掛けることで、略菱形の高さ(紙面上で菱形の縦方向長さ)を高くすることができる。また、略菱形の左右の端を紙面上の垂直方向上側から下側方向にやや中央方向に向けて力を加えることで、この略菱形を山型(三角形の2辺)に折り曲げる(山側の深さを変える)ことができる。マスクを装着したときに唇がマスクに触れないように前記略菱形の高さ、山型の深さの両方または、一方を変えることができる。
【0010】
図3は、
図2に示した略菱形の可撓線1に可撓線1の4辺が曲がり難いように被覆を具備した状態を示している。本発明では可撓線1の略菱形の頂角を変化させること、可撓線1を山型に変形させること(紙面に垂直な方向)により、マスクの口、鼻付近に空間を形成することが目的であり略菱形の4辺は折り曲げて変化させなくとも良い。このため、4辺が曲がり難いようにプラスチックなどの樹脂、合成ゴムや金属、紙などで被覆を被せることができる。なお、可撓線1の太さ、幅を変える(4辺を太くまたは厚くする)ことでも実現できる。なお、
図3で被覆で覆われた部分の可撓線1は省略することができる。この場合4つの比較的固い線辺が4つの比較的柔らかい可撓線で接続されて略菱形の周りを形成することとなる。
図3では4辺に被覆を具備することで各辺が曲がり難くする例を示したが、ここに示すように各辺が曲がり難くする方策は可撓線の材質や量を変えたり、可撓線自体を置き換えることでも実現できるため、これら各辺の部分では曲がり難くすることを総称して各辺を補強すると記載する。
【0011】
図4は
図2の略菱形の可撓線1を上下方向(縦方向)に広げた状態を示している。左右の対向する頂角を水平方向に内側に押える、または指で上下の対向する頂角を上下に引く、左右の対向する頂角の内側に指を挟んで角度を広げる、など可撓線1を略菱形を保ったまま変形することは容易である。
図4のようにすることで、マスクの口、鼻に相当する部分の
図4での縦の幅を補正することができる。
【0012】
図5は
図2の略菱形の可撓線1を上方から見たところである。前記可撓線1はマスク本体3に設置されるた針金などの線であり細く、図では一直線であり、
図2で示した菱形の上側の辺13、辺14が示されている。
【0013】
図6は
図5の可撓線1を山型に変形した状態を示している。
図5の左右の両端を
図5の紙面の下から上にやや内側(中央)中央方向に手で力を加えると容易に
図6の形に変形できる。ここで形成された山の高さが口や鼻の前の空間の高さとなる。マスクを装着後に必要に応じてこの高さを手で調整する。激しい運動をするときなど、強く呼吸する場合はこの高さを高くする。
【0014】
図7は、本発明のマスクを顔に装着した状態を示している。変形して山型となった可撓線1が口、鼻の下の前で空間を生成し、マスクが直接口や鼻い触れないようにすることができる。可撓線1の縦方向角度(
図7の辺13と辺11が成す角度)を変えることで、適切な口、鼻の位置に対応して空間を形成することができる。また、可撓線1の山の高さ(
図7で辺13と辺11が交わる点からマスク面までの距離)を変えることで、口、鼻の下の空間の高さ(
図7で口からマスク面までの長さ)を変えることができる。
【0015】
図8は、典型的な使い捨てマスクのプリーツに可撓線1を配置した状況を横方向からの断面で示している。中央のプリーツ(
図8の最も右側に位置する)は口や鼻の位置に相当する箇所に設けられており、ここに前記可撓線1を収納した状況が示される。さらに中央のプリーツの上下に各1つのプリーツが形成されており、ここを伸ばす(上下方向に開く)ことでマスクが鼻から顎にかけて覆うようにするが、プリーツをどの程度まで伸ばすかはユーザ次第であり、ユーザの使用方法によっては、必ずしも中央のプリーツが口や鼻に位置するとは限らない。プリーツを伸ばすと、前記マスク本体3を構成する布間が前記マスク本体3の中央部分では接合されていないので、前記可撓線1は、略菱形の4つの角の角度を変え変形することが可能である。本発明では、
図4で示したように略菱形の開き(高さ)を広げることで口、鼻の下方向に略菱形の前記可撓線1の辺と頂点を広げることができる。なお、
図8で可撓線1はマスク本体3の内部として描かれているが、マスクの層の構成は一律ではなく、使い捨てマスクでも3層構造以外の構造を有するものがある。可撓線1はマスク本体3の内部でも良いし、外付けのポケットやマスク本体3の表面に直接貼り付けるような形態でも構わない。
【0016】
図9は本発明の略菱形の他の1つの形状を示している。
図2の菱形の上下の対向する頂角の部分を平らとしたものが
図9であり、図形としては6角形であるが、
図2の角を変形しただけであるから略菱形の1つとして理解できる。
【0017】
図10は
図2の菱形の4つの角を丸くしたものである。可撓線1を線を曲げて制作すると、程度の差はあれ実際には
図10の形状となる。菱形の角部分だけを丸くしたものは略菱形の1つである。菱形の対向する2つの角の2組の内1組だけ顕著に角を丸くしたり、1組の角を直線形状とし他の1組の角を顕著に丸くすることも本願の略菱形の1つとして理解できる。
【0018】
図11は
図2の略菱形の横方向の対向する2つの角を直線で置き換えたものであり、本願の略菱形の変形として略菱形の範囲に含まれる。
【0019】
図12は、
図4と
図6で示した変形を加えた後の可撓線1の形状を示している。
図7で顔の正面を斜め上から見たときの可撓線1の形状を示すものであり、可撓線1の4つの辺が
図12の形状となることで、口や鼻の下の空間を得るための高さを生成し、さらに顔の前の縦の中央線に沿って縦方向にこの空間の幅を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
マスク特に平面型の使い捨てマスクで息がし難い、会話がし難い、つばがマスクについて不潔、不快などの問題を解決する対策として本発明のマスクが使用できる。布マスク、立体マスクでも同様に利便性が向上する。
【符号の説明】
【0021】
1 可撓線
11 可撓線下辺左
12 可撓線下辺右
13 可撓線上辺左
14 可撓線上辺右
15 被覆
2 耳掛け
3 マスク本体
4 顔面密着用ワイヤー
5 固定点