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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019330
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】水素供給加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20220120BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220120BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20220120BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20220120BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
F24F6/00 Z
A61L9/01 F
A61L9/14
C02F1/461 Z
C02F1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123106
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】500101298
【氏名又は名称】有限会社 アクアサイエンス
(71)【出願人】
【識別番号】515098451
【氏名又は名称】株式会社厚生工学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河内 正一
【テーマコード(参考)】
3L055
4C180
4D061
4D624
【Fターム(参考)】
3L055BB00
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180CA01
4C180CB01
4C180CB08
4C180EA58X
4C180GG06
4C180GG08
4C180LL03
4D061DA01
4D061DB07
4D061DB09
4D061DB10
4D061EA02
4D061EB13
4D061EB14
4D061FA06
4D061FA11
4D624AA01
4D624AB11
4D624BA02
4D624BA11
4D624DB01
4D624DB09
(57)【要約】
【課題】食塩水を電気分解して得た水素水の霧化によって空気中に水素を放出するのみならず、電気分解により生ずる副産物である次亜塩素酸も有効に活用する。
【解決手段】食塩水を貯留する給水タンクと、前記食塩水を無隔膜電解により電気分解して、水素及び次亜塩素酸を含有する電気分解水とする電気分解部と、前記電気分解水から次亜塩素酸を除去して水素含有水とする濾過部と、前記電気分解水及び前記水素含有水を霧化する霧化部と、前記電気分解部の下流において、前記霧化部へ前記電気分解水が直接流れる第1流路と、前記濾過部へ前記電気分解水が流れる第2流路とに流路を切り替える流路切替部と、前記濾過部から前記霧化部へと前記水素含有水が流れる第3流路と、を備える、水素供給加湿器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食塩水を貯留する給水タンクと、
前記食塩水を無隔膜電解により電気分解して、水素及び次亜塩素酸を含有する電気分解水とする電気分解部と、
前記電気分解水から次亜塩素酸を除去して水素含有水とする濾過部と、
前記電気分解水及び前記水素含有水を霧化する霧化部と、
前記電気分解部の下流において、前記霧化部へ前記電気分解水が直接流れる第1流路と、前記濾過部へ前記電気分解水が流れる第2流路とに流路を切り替える流路切替部と、
前記濾過部から前記霧化部へと前記水素含有水が流れる第3流路と、
を備える、水素供給加湿器。
【請求項2】
前記電気分解部は前記給水タンク内に設けられている、請求項1に記載の水素供給加湿器。
【請求項3】
前記給水タンク中の食塩水はpH5~7.5に調整されている、請求項1又は請求項2に記載の水素供給加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に水素を供給可能な加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らにより発表された論文である下記の非特許文献1及び非特許文献2には、水に水素を溶存させた水素水に触れることで、皮膚の弾力性が向上したり、毛髪の滑らかさや毛髪の艶が増したり、深部体温を上昇させたりすることが開示されている。
【0003】
また、下記の特許文献1には、水素水のような還元水が皮膚の老化防止等に寄与することから、入浴剤に水素発生剤を用いた技術が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、水素水のような還元水を飲むと、胃腸症状の改善や活性酸素の除去といったアンチエイジング効果が期待されることから、水を電気分解して電解水を生成する技術が開示されている。
【0005】
さらに、下記の特許文献3には、水を電気分解して機能水を生成し、精製された機能水を霧化して大気中に放出する加湿器が開示されている。
【0006】
また、下記の特許文献4には、ミストを分子状水素が残存した状態で対象物に噴霧することができるミスト生成装置およびミスト生成方法が開示されている。
【0007】
一方、食塩水の電気分解で生じた次亜塩素酸を空気中へ放出して室内における殺菌及び消臭の効果を期待する製品も種々提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007/55146A1
【特許文献2】特許第5639724号公報
【特許文献3】特開2015-230108号公報
【特許文献4】特開2019-93357号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Y.Kurita, K.Umeda, S.Ikeda, O.Urushibata & S.Okouchi(栗田繕彰、梅田一輝、池田茂男、漆畑修、大河内正一), "Effects of Magnesium Hydride as a Reductive Bath Additive on the Skin(還元系水素入浴剤としての水素化マグネシウムの皮膚に及ぼす効果)", J.Hot Spring Sci.(温泉科学), Vol.63, No.4, p.317-327
【非特許文献2】大河内正一、大波英幸、庄司未来、大野慶晃、池田茂男、阿岸祐幸、萩原知明、鈴木徹、「電解還元系の人工温泉水の皮膚および髪に与える効果」、温泉科学、第55巻、第2号、p.55-63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の非特許文献1及び非特許文献2並びに特許文献1及び特許文献2で開示されているように、水素水が人体へ及ぼす好影響を考慮すると、水素水を霧化することで空気中に放出された水素を吸入することによっても人体への好影響が期待できる。
【0011】
そこで、本開示の水素供給加湿器は、食塩水を電気分解して得た水素水の霧化によって空気中に水素を放出するのみならず、電気分解により生ずる副産物である次亜塩素酸も有効に活用することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の水素供給加湿器は、食塩水を貯留する給水タンクと、前記食塩水を無隔膜電解により電気分解して、水素及び次亜塩素酸を含有する電気分解水とする電気分解部と、前記電気分解水から次亜塩素酸を除去して水素含有水とする濾過部と、前記電気分解水及び前記水素含有水を霧化する霧化部と、前記電気分解部の下流において、前記霧化部へ前記電気分解水が直接流れる第1流路と、前記濾過部へ前記電気分解水が流れる第2流路とに流路を切り替える流路切替部と、前記濾過部から前記霧化部へと前記水素含有水が流れる第3流路と、を備える。
【0013】
給水タンクに貯留される食塩水は、電気分解部において無隔膜電解により電気分解される。電気分解された食塩水は、水素及び次亜塩素酸を含有する電気分解水となる。この電気分解水の流れは第1流路と第2流路とに分岐し、どちらの流路を流れるかは流路切替部によって切り替えられる。
【0014】
第1流路は直接、霧化部へと連絡している。第1流路を流れる電気分解水は、霧化部により霧化され、水素及び次亜塩素酸を含有するミストが空気中に放出される。
【0015】
一方、第2流路は、濾過部に連絡し、そこから第3流路を介して霧化部へと連絡している。第2流路を流れる電気分解水は、濾過部により次亜塩素酸が除去され、電気分解産物としては水素のみを含有する水素含有水となる。水素含有水は第3流路を流れて霧化部にいたり、そこで霧化され、水素のみを含有するミストが空気中に放出される。
【0016】
すなわち、水素及び次亜塩素酸を含有するミストが空気中に放出されるか、又は、水素のみを含有するミストが空気中に放出されるかを、流路切替部により選択することが可能となる。たとえば、無人環境下においては、電気分解水の流れを第1流路に切り替えることで、水素とともに放出される次亜塩素酸によって、室内の殺菌及び消臭を図ることができる。一方、有人環境下においては、電気分解水の流れを第2流路に切り替えることで、次亜塩素酸が除去されることで、水素のみを含有し塩素臭のないミストが放出されることとなる。
【0017】
なお、前記電気分解部は前記給水タンク内に設けられていることとしてもよい。
【0018】
また、前記給水タンク中の食塩水はpH5~7.5に調整されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の水素供給加湿器によれば、食塩水を電気分解して得た水素水の霧化によって空気中に水素を放出するのみならず、電気分解により生ずる副産物である次亜塩素酸も有効に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る水素供給加湿器の概要を示す模式図である。
図2図1の水素供給加湿器において、電気分解水の流れが第1流路に切り替えられた状態を示す。
図3】次亜塩素酸の化学種とpHとの関係を示すグラフである。
図4図1の水素供給加湿器において、電気分解水の流れが第2流路に切り替えられた状態を示す。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る水素供給加湿器の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本開示の水素供給加湿器の実施形態を説明する。なお、以下の説明で言及する各図面は模式図であって、図中に示すサイズ及び形状は実際のサイズ及び形状を必ずしも反映していない。また、各図において共通して用いられている符号は、特段の説明がない限り同一の構成を指し示すものである。
【0022】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態の水素供給加湿器10の概要を示す模式図である。本実施形態の水素供給加湿器10は、食塩水100(図2及び図4参照)を貯留する給水タンク20と、前記食塩水100を無隔膜電解により電気分解して、水素及び次亜塩素酸を含有する電気分解水110(図2及び図4参照)とする電気分解部30と、前記電気分解水110から次亜塩素酸を除去して水素含有水120(図2参照)とする濾過部50と、前記電気分解水110及び前記水素含有水120を霧化する霧化部60と、前記電気分解部30の下流において、前記霧化部60へ前記電気分解水110が直接流れる第1流路41と、前記濾過部50へ前記電気分解水110が流れる第2流路42とに流路を切り替える流路切替部40と、前記濾過部50から前記霧化部60へと前記水素含有水120が流れる第3流路43と、を備える。第3流路43は、霧化部60の手前で合流部44を介して第1流路41と合流する。霧化部60としては、蒸気式、気化式、バブリング式、超音波式又はハイブリッド式等、加湿器として公知の機構を採用することができる。また、水素供給加湿器10は、空気清浄機の一部として構成されていてもよい。
【0023】
すなわち、本実施形態の水素供給加湿器10では、食塩水100は給水タンク20から電気分解部30に至り、電気分解に供され、電気分解水110となる。食塩水100の塩化ナトリウム濃度は、0.1~10質量%が望ましい。電気分解部30から霧化部60までの電気分解水110の流れは、流路切替部40で第1流路41と第2流路42とに分岐する。第1流路41と第2流路42との分岐部には流路切替部40が設けられている。この流路切替部40の手動制御又は自動制御により、電気分解水110の流れは第1流路41及び第2流路42のいずれかに切り替えられる。第1流路41は霧化部60と直接連絡している。一方、第2流路42は、濾過部50、第3流路43及び合流部44を介して霧化部60と連絡している。濾過部50には、活性炭又は亜硫酸カルシウム等の、塩素及び次亜塩素酸は吸着・分解するが水素は吸着・分解しない吸着剤が充填されている。
【0024】
図2は、本実施形態の水素供給加湿器10において、電気分解水110の流れが流路切替部40で第1流路41に切り替えられている状態を示す。給水タンク20に貯留されている食塩水100は、電気分解部30に至ると下記反応式にて電気分解に供されて水素及び次亜塩素酸ナトリウムを含有する電気分解水110となる。
【0025】
NaCl+HO→NaOCl+H
【0026】
なお、次亜塩素酸ナトリウムは水溶液中では下記式のようにイオン化して存在している。
【0027】
NaOCl→Na+OCl
【0028】
無隔膜電解では、食塩水を電解した場合、電解水のpHは、実際には多少アルカリ側に傾くが、電解前の食塩水と同じpHになる。次亜塩素酸は、pHにより優位となる化学種が異なる。すなわち、有効塩素比率(%)(化学種として有効な塩素化合物の比率)を縦軸とし、pHを横軸とした図3に示すように、pH7.5付近を境に酸性側では殺菌力の高い次亜塩素酸(HOCl)が優位となる一方、アルカリ性側では殺菌力が次亜塩素酸の100分の1程度と大幅に低下する次亜塩素酸イオン(OCl)が優位となる。しかし、pHが4以下になると猛毒の塩素が生成され安全性が損なわれる。そのため、殺菌力を強めたい場合は、給水タンク中の食塩水のpHを弱酸性から中性、具体的には5~7.5に調製することが望ましい。pHの調整には、塩酸又はクエン酸等の酸を添加することが望ましい。
【0029】
この第1流路41を通って霧化部60に至った電気分解水110は、水素及び次亜塩素酸を含有したまま霧化される。これにより、霧化されたミストとともに、水素及び次亜塩素酸は空気中に放出される。この次亜塩素酸により、室内の殺菌及び消臭効果が期待される。もちろん、水素による健康上のメリットも期待される。
【0030】
図4は、本実施形態の水素供給加湿器10において、電気分解水110の流れが流路切替部40で第2流路42に切り替えられている状態を示す。食塩水100が電気分解により水素及び次亜塩素酸を含有する電気分解水110となるのは図2の場合と同様である。この第2流路42を通って濾過部50に至った電気分解水110は、濾過部50内の吸着剤で次亜塩素酸が除去され、電気分解産物としては水素のみを含有する水素含有水120となる。水素含有水120は第3流路43を通って、合流部44を経て霧化部60に至る。霧化部60に至った水素含有水120は、水素を含有したまま霧化される。これにより、霧化されたミストとともに、水素は空気中に放出される。この水素により、健康上のメリットも期待される。
【0031】
以上のとおり、空気中から水素を容易に生活の中で体内に取り入れることができるとともに、流路切替部40で第1流路41が選択されている場合には、同時に室内の空気の殺菌及び消臭もできる。さらに、室内に人がいる際には流路切替部40で第2流路42を選択して次亜塩素酸が除去された水素のみを、塩素臭のないミストとともに空気中に放出することができる。一方、室内が無人の際には流路切替部40で第1流路41を選択して、水素とともに次亜塩素酸を空気中に放出して室内の空気の殺菌及び消臭を行っておくことも可能になる。
【0032】
以上のとおり、本実施形態の水素供給加湿器10は、流路切替部40による流路の切替により、次亜塩素酸が除去された水素を含んで健康効果が期待されるミストと、水素とともに次亜塩素酸を含むことで殺菌及び消臭効果が期待されるミストとの、性質の違うミストを場合に応じて選択することができる。
【0033】
(2)第2の実施形態
図5は、第2の実施形態の水素供給加湿器10の概要を示す模式図である。第2の実施形態は、給水タンク20の中に電気分解部30が設けられていて、給水タンク20の中で食塩水100が電気分解され、給水タンク20からは電気分解水110が直接流出する点で第1の実施形態と異なる。電気分解の機構、流路切替部40による第1流路41及び第2流路42の切替、濾過部50における次亜塩素酸の除去、及び霧化部60における電気分解水110及び水素含有水120の霧化については、第1の実施形態と同様であり、その作用効果についてもまた同様であるので、説明は割愛する。
【0034】
本実施形態では、給水タンク20の外部に電気分解部30を設ける必要がないため、装置全体をコンパクトに設計することができる、という利点がある。
【0035】
(3)その他
上記各実施形態においては、食塩水100の電気分解は無隔膜電解により行われる。この無隔膜電解には、電解槽においてイオン交換膜を隔てて陽極及び陰極を配し、電気分解を行った後、陽極水と陰極水とを互いに混合する方法を含むこととしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 水素供給加湿器 20 給水タンク 30 電気分解部
40 流路切替部 41 第1流路 42 第2流路
43 第3流路 44 合流部 50 濾過部
60 霧化部
100 食塩水 110 電気分解水 120 水素含有水
図1
図2
図3
図4
図5