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特開2022-19354磁気共鳴イメージング装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019354
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220120BHJP
   G01R 33/561 20060101ALI20220120BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 370
G01R33/561
G01N24/08 510Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123139
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕介
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB39
4C096AD06
4C096AD07
4C096AD23
4C096BA05
4C096BA07
4C096BA12
4C096BA13
4C096BA18
4C096BA41
4C096BB06
4C096BB07
4C096BB11
4C096DA13
4C096DB18
4C096EA05
(57)【要約】
【課題】撮像の中断があった場合にも、それまでに収集したデータを画像再構成に生かすことで、検査効率の向上を図ること。
【解決手段】所定の撮像法によりk空間データを収集する際に、高速撮像法による画像再構成が可能な一定の優先撮像データを設定しておく。撮像の中断があった時点でそれら一定の優先撮像データの収集が完了していれば、それを用いて画像再構成を実行する。優先撮像データは、実行中の撮像方法と優先撮像データ決定のもとになる高速撮像法との関係に基づき決定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像方法に従って、複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データを収集する計測部と、前記計測部が収集した前記k空間データを用いて画像を生成する画像生成部と、前記計測部及び前記画像生成部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記k空間データのうち、高速撮像法による画像再構成が可能な撮像データを優先撮像データとして決定する優先撮像データ決定部を有し、前記計測部が前記優先撮像データを先行して収集するように信号取得順序を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記計測部における信号取得状況を判断する状況判断部をさらに備え、前記計測部による計測中断時に前記優先撮像データが収集されていると前記状況判断部が判断したときに、前記画像生成部に前記優先撮像データを用いた画像再構成を実行させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記優先撮像データは、パラレルイメージング法の間引き率に従ってアンダーサンプリングしたk空間データであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記優先撮像データは、k空間の1次元方向にデータを間引いたk空間データであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記優先撮像データは、k空間の2次元方向にデータを間引いたk空間データであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記k空間の2次元方向のうち、データ数の少ない方向のk空間データを先行して収集するように信号取得順序を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の撮像方法は、k空間を複数の領域に分割して、各領域にそれぞれ同じエコー時間の信号が配置されるように信号取得順序を順次変更してk空間データを収集する高速スピンエコー法パルスシーケンスを用いた撮像方法であり、
前記制御部は、前記優先撮像データがk空間をパラレルイメージングの間引き率に従ってアンダーサンプリングしたデータとなるように各領域内の信号取得順序を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記優先撮像データ決定部は、k空間データを1つ置き以上間引いたデータを前記優先データとすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の撮像方法は、k空間を複数の領域に分割して、各領域にそれぞれ同じエコー時間の信号が配置されるように信号取得順序を順次変更してk空間データを収集する高速スピンエコー法パルスシーケンスを用いた撮像方法であり、
前記優先撮像データ決定部は、k空間を2分割した領域の一方に、ハーフスキャン再構成可能な優先撮像データを設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、高速スピンエコー法パルスシーケンスの複数のショットでそれぞれ収集されるエコートレインを2分割した領域に分けて格納し、その際、各領域の信号取得順序を、ショットによって異ならせるように制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の撮像方法は、k空間に内接する円の半径方向に沿って、複数の角度毎にk空間データを収集するラジアルスキャンシーケンスであり、
前記優先撮像データ決定部は、データ収集角度を黄金角で変化させて収集されるデータを前記優先撮像データとすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記ラジアルスキャンシーケンスは、同一の角度で、半径方向とそれに平行な複数の方向に沿って、ブレード状のk空間データを収集するシーケンスを含むことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記画像生成部は、前記優先撮像データを用いて繰り返し再構成により画像を生成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記状況判断部が判断した信号取得状況を表示装置に表示させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
所定の撮像方法に従って、複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データを収集する計測部と、前記計測部が収集した前記k空間データを用いて画像を生成する画像生成部と、を備えた磁気共鳴イメージング装置の制御方法であって、
前記撮像方法に基づいて、k空間データのうち優先して収集する優先撮像データを設定し、前記計測部が前記優先撮像データからk空間データを収集するように前記計測部を制御するとともに、前記優先撮像データの収集が完了した後に前記計測部により信号取得が中断されたときに、前記画像生成部が前記優先撮像データを用いて高速撮像方法に基づく画像再構成を行うように前記画像生成部を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に関し、特に信号取得の優先性を制御するMRI装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体,例えば人体の組織を構成する原子核に核磁気共鳴(以下、NMRとする)現象によるNMR信号を計測し、 2次元的に或いは3次元的に画像を生成する装置である。
【0003】
撮像においては、NMR信号に対し、傾斜磁場によって異なる位相エンコードを付与すると共に周波数エンコードを行い、TRと呼ばれる繰り返し時間で、繰り返しNMR信号を計測し、k空間と呼ばれるデータ空間に格納する。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0004】
撮像方法は、診断の目的や対象とする部位などによって異なるが、折り返しがなく高分解能の画像を得るために、基本的には、k空間のマトリクスサイズに合わせて、k空間のすべてのデータ点を計測する。これに対し、k空間のデータを間引いて計測する高速撮像技術が開発されている。この撮像方法は、パラレルイメージングと呼ばれ、受信コイルの感度分布を用いて折り返しのない画像を作成する。また、圧縮センシング等の繰り返し再構成と呼ばれる高速撮像技術も知られている。圧縮センシング等の繰り返し再構成はk空間を疎らに計測し、そのスパース性を利用してノイズを低減する再構成方法であり、通常より少ないデータで画像を復元することができる。
【0005】
撮像に際しては、上述した種々の手法から、目的に応じた撮像方法を選択し、その撮像方法を実行するためのパルスシーケンスと撮像パラメータを設定する。撮像時間は、撮像方法によっても異なるが、3次元画像を得る場合には、上述した高速撮像技術を用いた場合でも5~10分程度が必要とされる。この間に被検体の体動があると、画質を大きく劣化させる原因となるため、体動の影響を抑制する手法が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3510901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、撮像中に被検者が動いて位置が変化してしまった場合や、被検者の具合が悪くなって検査を続けられず撮像を中断する場合には、従来の体動抑制技術では対応することがないため、被検者の回復を待ってあるいは態勢を整えて、撮像空間への再配置をした後、再撮像してデータを取り直す必要があった。そのため撮像中断による検査効率の低下という問題に加えて、それまでに収集したデータは破棄されて無駄になるという問題があった。検査者側の理由で撮像を一時中断する場合もあり得るが、同様の問題がある。
【0008】
特許文献1には、撮像の中断があったときに、k空間データの半分以上のデータが取得できていれば、ハーフスキャン推定により、残りを推定して画像再構成することが記載されているが、この手法は、k空間データを端から連続して計測する撮像にしか適用することはできない。
【0009】
本発明は、撮像の中断があった場合にも、それまでに収集したデータを画像再構成に生かすことで、検査効率の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所定の撮像法によりk空間データを収集する際に、高速撮像法による画像再構成が可能な一定の優先撮像データを設定しておく。撮像の中断があった時点でそれら一定の優先撮像データの収集が完了していれば、それを用いて画像再構成を実行する。優先撮像データは、実行中の撮像方法と優先撮像データ決定のもとになる高速撮像法との関係に基づき決定される。
【0011】
すなわち、本発明のMRI装置は、所定の撮像方法に従って、複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データを収集する計測部と、前記計測部が収集した前記k空間データを用いて画像を生成する画像生成部と、前記計測部及び前記画像生成部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記k空間データのうち、高速撮像法による画像再構成が可能な撮像データを優先撮像データとする優先撮像データ決定部を有し、前記計測部が前記優先撮像データを先行して収集するように信号取得順序を制御することを特徴とする。
【0012】
また本発明のMRI装置の制御方法は、所定の撮像方法に従って、複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データを収集する計測部と、前記計測部が収集した前記k空間データを用いて画像を生成する画像生成部と、を備えた磁気共鳴イメージング装置の制御方法であって、前記所定の撮像方法に基づいて、k空間データのうち優先して収集する優先撮像データを設定し、前記計測部が前記優先撮像データからk空間データを収集するように前記計測部を制御するとともに、前記優先撮像データの収集が完了した後に前記計測部により信号取得が中断されたときに、前記画像生成部が前記優先撮像データを用いて高速撮像方法に基づく画像再構成を行うように前記画像生成部を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高速撮像法に基づく画像再構成によって画像生成可能なk空間データを優先撮像データとして設定し、その優先撮像データを先行して収集するので、撮像が中断された場合にも優先撮像データが収集されていれば、それを用いて画像を生成させることができるので、取得したデータを生かすことができる。また廃棄するデータがあるとしても極力少ない無駄に抑えることができる。また高速撮像法に基づいて生成された画像が、撮像の目的にかなった画質であれば、再撮像を省略することも可能であり、検査効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】MRI装置の機能ブロック図。
図2】MRI装置の動作を示すフロー図で、(A)は信号取得順序決定までのフロー、(B)は撮像時の制御フローである。
図3】MRI装置の全体構成を示す図。
図4】実施形態1のMRI装置における信号取得順序決定のフローチャート。
図5】表示部に表示される撮像条件設定のGUIの一例を示す図。
図6】実施形態1の優先撮像データを説明する図。
図7】実施形態1の撮像時の制御を示すフローチャート。
図8】表示部に表示される信号取得状況の一例を示す図。
図9】実施形態1の変形例のMRI装置における信号取得順序決定のフローチャート。
図10】実施形態1の変形例の撮像時の制御を示すフローチャート
図11】実施形態1の変形例の優先撮像データ及び取得順序を説明する図。
図12】実施形態2のパルスシーケンス(FSE)の一例を示す図。
図13】実施形態2の優先撮像データ及び取得順序の一例を説明する図。
図14】(A)、(B)は、それぞれ実施形態2の変形例の取得順序を説明する図。
図15】実施形態2の変形例の優先撮像データ決定のフローチャート。
図16】実施形態3の信号取得順序の一例を説明する図。
図17】実施形態3の信号取得順序の別の例を説明する図。
図18】実施形態4の撮像方法と信号取得順序を説明する図。
図19】実施形態5の画像再構成を説明する図。
図20】実施形態5の信号取得順序の一例を示す図。
図21】(A)、(B)はそれぞれ実施形態5の変形例の信号取得順序の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のMRI装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の特徴を備えたMRI装置100の概略構成を示す図であり、このMRI装置は、所定の撮像シーケンスに従って、複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データを収集する計測部10と、計測部10が収集した前記k空間データを用いて画像再構成等の演算を行う演算部20と、計測部10及び演算部20の動作を制御する制御部30と、を備える。MRI装置100は、さらにユーザーとのやり取りを行うためのUI装置190を備えている。UI装置190を介して、ユーザーは撮像条件の設定を行ったり、MRI装置100で取得した画像を確認したりすることができる。
【0017】
計測部10は、後に詳述するが、公知のMRI装置と同様の構成を有し、静磁場発生部、傾斜磁場発生部、高周波磁場発生部、NMR信号を受信する受信部、及び、これらを所定のパルスシーケンスに従って制御するシーケンサなどを備え、静磁場発生部が発生する静磁場空間に置かれた検査対象(被検体)からNMR信号を計測し、画像再構成用の計測データ(k空間データ)を収集する。k空間データの収集は、制御部30の制御下で行われ、制御部30が設定した優先撮像データを先行して計測する。
【0018】
演算部20は、k空間データに対し、フーリエ変換、パラレルイメージングに基づく演算、圧縮センシング等の繰り返し再構成に基づく演算、さらには画像間の演算などを行って、被検体の断層像や所望の計算画像などを生成する画像生成部21を含む。
【0019】
制御部30は、シーケンサを介して計測部10によるNMR信号の計測を制御するとともに、所定のデータ収集法や計測のタイミングに応じて画像生成するように画像生成部21を制御する。制御部30は、k空間データのうち、優先的に収集すべき優先撮像データを決定する優先撮像データ決定部31を含み、計測部10の制御において、計測部10が優先撮像データを先行して収集するように信号取得順序を制御する。また制御部30は、計測部10における信号取得状況を判断する状況判断部33をさらに備え、計測部10による計測中断時に優先撮像データが収集されていると判断部33が判断したときに、画像生成部21に前記優先撮像データを用いた画像再構成を実行させる。
【0020】
このMRI装置における撮像制御の流れを、図2(A)、(B)に示す。まず撮像に際し、撮像条件が設定されると(S21)、優先撮像データを先行して収集する機能が選択されているかを判断し(S22)、選択されていれば、優先撮像データを決定し(S23)、優先撮像データを含むk空間全体の信号取得順序を決定する(S24)。優先撮像データは、撮像条件で定められたk空間データよりデータ数が少ないデータであって、且つ高速撮像法による画像再構成が可能なデータである。優先撮像データの構成は高速撮像法によって異なり、どのような高速撮像法を選択するかは、撮像条件に含まれる撮像方法によって決めてもよいし、予め装置で実施可能な高速撮像方法を登録しておいてもよい。
【0021】
上記ステップS23及びS24で決定した優先撮像データと信号取得順序とに関する情報は、シーケンサに送られ、シーケンサはこの情報を用いてパルスシーケンスを計算し)、撮像を開始する(S25)。S22で機能が選択されていない場合には、最初に設定された撮像条件で撮像を開始する。
【0022】
撮像中に、撮像の中断があった場合には(S26)、そのときまでに優先撮像データが収集されていたかを判断し(S27)、収集されていた場合には、画像生成部21は、優先撮像データを用いて、高速撮像法による画像再構成演算を行い、画像を生成する(S28)。画像は必要に応じて記憶装置に格納され、あるいは、表示装置に表示される。中断時点で、収集されていない場合には、撮像を終了する。
【0023】
次に、上述した計測部10、演算部20(画像生成部21)及び制御部30を含むMRI装置の具体的な装置構成を説明する。
【0024】
図3は、MRI装置100の一実施形態を示すブロック図である。このMRI装置100は、静磁場を発生する静磁場発生装置120と、傾斜磁場発生装置130と、高周波パルス送信装置140と、高周波信号受信装置160と、演算部20及び制御部30の機能を有する制御装置170と、シーケンサ150と、被検体300を載置する天板を有する寝台装置110とを備えている。静磁場発生装置120、傾斜磁場発生装置130、高周波パルス送信装置140、高周波信号受信装置160及びシーケンサ150は、図1の計測部10に相当する。
【0025】
シーケンサ150は、制御装置170からの制御指令に基づいて、傾斜磁場発生装置130、高周波パルス送信装置140、及び高周波信号受信装置160の動作を制御する。
【0026】
静磁場発生装置120は、被検体300が配置された計測空間に被検体300の体軸方向または体軸と直行する方向に均一な静磁場を発生する静磁場発生磁石122とその駆動系(不図示)を備える。静磁場発生装置120の磁場発生方式として、永久磁石方式又は常電導方式あるいは超電導方式、などがあり、本発明はいずれの方式にも適用可能である。被検体300は寝台装置110の天板に載置され、計測空間に配置される。
【0027】
傾斜磁場発生装置130は、例えばX軸やY軸、Z軸の三軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル134と上記三軸方向の各コイルに傾斜磁場を発生するための駆動電流を供給する傾斜磁場電源132を有していて、傾斜磁場電源132は、シーケンサ150の制御指令に従って上述のX軸やY軸、Z軸の三軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル134に駆動電流を供給する。これにより傾斜磁場コイル134がX軸やY軸、Z軸の三軸方向の傾斜磁場GsやGp、Gfを発生し、これらの傾斜磁場が被検体300に印加される。
【0028】
傾斜磁場Gsが被検体300に印加されることにより撮像断面であるスライス面が設定される。さらにスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2方向に位相エンコードさせた傾斜磁場Gpと周波数エンコードされた傾斜磁場Gfが印加されることにより、被検体300のスライス面から生じるNMR信号に位置情報がエンコードされる。さらに図示していないが、静磁場の不均一を補正するためのシムコイルなどを備えていてもよい。
【0029】
高周波パルス送信装置140は、高周波発振器142と変調器144と高周波増幅器146と送信側高周波コイル148を備え、被検体300の生体組織を構成する原子の原子核スピンにNMR現象を起こさせるために、被検体300に高周波磁場パルス(以下、RFパルスと記す)を照射する。すなわち、高周波発振器142はRFパルスを生成してシーケンサ150からの制御指令に基づくタイミングで変調器144に出力する。変調器144は入力されたRFパルスを振幅変調し、該振幅変調されたRFパルスは、高周波増幅器146により増幅されて、被検体300に近接して配置された高周波照射.コイル148に供給される。高周波照射.コイル148は供給されたRFパルスに基づくRFパルスを被検体300に照射する。このRFパルスの照射により、被検体300の生体組織を構成する原子の原子核スピンにNMR現象が生じ、エコー信号であるNMR信号が放出される。
【0030】
高周波信号受信装置160は、被検体300の生体組織の原子核の核磁気共鳴現象により放出されるエコー信号であるNMR信号を検出する機能を有し、高周波受信コイル162と、増幅器164と、直交位相検波器166と、A/D変換器168と、を有している。高周波照射コイル148から被検体300に照射されたRFパルスにより被検体300からNMR信号が放出され、放出されたNMR信号は高周波受信コイル162により検出され、増幅器164で増幅された後、直交位相検波器166によりシーケンサ150からの指令によるタイミングに基づいて直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器168によりディジタル量に変換される。ディジタル量に変換された信号は画像生成部21へ送られ、ここでk空間と呼ばれるデータ空間(記憶領域)に格納されk空間データとなる。なお高周波受信コイル162は複数の受信コイルを有していてそれぞれの受信コイルでエコー信号であるNMR信号が受信される。
【0031】
制御装置170は、中央処理装置(以下、CPUと記す)171、入力装置192や出力装置194を備えた入出力装置(UI装置)190、光磁気ディスク176や磁気ディスク178などの記憶装置を備えており、図1の演算部20としての機能、MRI装置100の全体的な制御を行う制御部30としての機能、ユーザーによる情報の入力支援や撮像パラメータの設定の支援を行う機能を有している。ここでは、演算部20の機能のうち、画像生成に関する機能部をここでは画像生成部21とする。
【0032】
出力装置194は、操作室に設けられた表示装置やプリンタのほかに、MRI装置100のガントリに設けられた表示装置を含む。また入力装置192は、キーボードやトラックボールまたはマウスなどを含むポインティングデバイスや出力装置194に一体的に設けられたタッチパネルやキーボードなどの入力装置を含む。入力装置192により、検査の条件や必要な情報の入力が行われると共に検査を実行するための操作や処理のための指示などが行われる。出力装置194が有する表示装置には、上記検査の条件や必要な情報の入力するための、あるいは操作や処理のための指示を行うのをアシストするための情報や、実際に入力された情報あるいは操作状態を表す情報が表示される。さらに画像生成部21に処理された結果としてのMRI画像などが表示される。
【0033】
CPU171には、読み出し専用メモリ(以下、ROMと記す)172や随時書き込み読み出しメモリ(以下、RAMと記す)173などが付随しており、CPU171が実行するためのプログラム、例えば、経時的な画像解析処理及び計測を行うプログラムと、その実行において用いる不変のパラメータなどは、ROM172に記憶されている。また、前の計測で得た計測パラメータや計測データや関心領域を設定するためのパラメータなどはRAM173に記憶されている。CPU171はROM172からプログラムを読み込み、上述した制御部30や演算部20としての機能を実行する。
【0034】
制御部30は、操作者により入出力装置190から入力された撮像パラメータを含めた検査条件などに基づき、撮像に用いるパルスシーケンスを設定する。パルスシーケンスとは、例えばRFパルスや傾斜磁場パルスを設定された一定の規則に沿って時系列に並べたパルス列のことであり、撮像方法に応じて種々のパルスシーケンスが用意されている。このパルスシーケンスによって、NMR信号(ディジタル信号)からなる計測データのk空間における配列順序、すなわちNMR信号の取得順序が決まる。制御部30(図1:優先撮像データ決定部31)は、パルスシーケンスの設定において、k空間において優先的に取得する計測データ(優先撮像データ)を決定する。
【0035】
シーケンサ150は設定されたパルスシーケンスと決定された信号取得順序に基づいて、高周波パルス送信装置140、傾斜磁場発生装置130及び高周波信号受信装置160を動作させて、被検体300の生体組織を構成する原子の原子核にNMR現象を起こさせるRFパルスを被検体300に繰り返し印加すると共に発生したNMR信号(エコー信号)を検出してディジタル信号に変換する制御を行う。
【0036】
制御部30(図1:状況判断部33)は、さらに、撮像の中断等があったときに、それまでに収集した計測データに応じて、計測データを用いた画像再構成処理または計測データの廃棄を判断し、画像生成部21による画像再構成動作を制御する。
【0037】
演算部20は、高周波信号受信装置160が検出したNMR信号に基づく計測データ(k空間データ)に対してフーリエ変換や補正係数演算を行って画像の再構成を行い、再構成した画像を出力装置に表示するなどの機能を有する。画像生成部21が行う画像再構成には、パラレルイメージングや圧縮センシング等の繰り返し再構成などの高速撮像法に基づく画像再構成演算が含まれ、画像生成部21は、制御部30からの制御のもと、所定の演算手法を用いた画像再構成を行う。これら画像再構成のための演算は、上述したように予めプログラムとしてROM172等に組み込まれている。
【0038】
なお図3に示す例では、演算部20の機能は、制御装置170が実現するものとしているが、演算部20は制御装置170とは異なる独立した処理装置で実現することも可能である。制御装置170のCPU171が、MRI装置100を総合的に制御し、またシーケンサ150を制御し、さらに演算部20として機能する場合であっても、あたかもそれぞれの機能を有する独立の装置が、独立して存在するのと同じと考えることができ、これらの構成をどのようにするかによって本発明の適用の有無が変わるものではない。
【0039】
再構成された画像データなどは、光磁気ディスク176や磁気ディスク178などに格納されるとともに、これら記憶装置から読み出され、例えば断層像として出力装置(表示装置)194に表示される。
【0040】
以上、説明したMRI装置の構成を踏まえ、具体的な撮像方法に合わせた制御部30による計測部10及び画像生成部21の制御、特に優先撮像データの決定と信号取得順序の制御の実施形態を説明する。以下の実施形態において、基本的な装置構成及び制御のフローは図1図2及び図3に示すものと同様であり、以下、適宜これら図面を参照する。
【0041】
<実施形態1>
本実施形態では、撮像中断時の撮像データからパラレルイメージングを用いて画像を出力する。パラレルイメージングは、k空間を間引いて計測する高速撮像方法であり、パラレルイメージングの倍速数に応じて間引く割合が変わる。本実施形態では、パラレルイメージングの倍速数に応じた必要な撮像データを優先撮像データとし、優先撮像データを先に計測し、その後残りのk空間データを計測する撮像順番とする。この時、撮像中断がなければ、取得した全てのk空間データを用いて通常の画像再構成を実施する。撮像順番を変えているだけなので、撮像時間も変わることがなく、また画質劣化も発生しない。もし、撮像中断が発生した場合、優先撮像データを全て取得できていた場合は優先撮像データを用いてパラレルイメージングによる画像再構成を実施して画像生成を行う。優先撮像データ以外のデータに関しては、撮像中断直前は被検者の動きなどがあると想定されるデータのため使用しないで破棄する。
【0042】
本実施形態のMRI装置の具体的な動作例を図4図7を用いて説明する。図4は、撮像の際の制御に関するフローチャートである。始めに、制御部30は、入力装置192を介して入力された撮像条件をもとにパルスシーケンスを設定し(S41)、中断データからの画像出力機能を実施可能かどうかの判定を行う(S42)。中断データからの画像出力機能の判定は、中断時にその際計測されたデータから画像を生成する機能が選択されており、且つ、画像生成部20において、パラレルイメージングを行う演算機能すなわち演算のためのプログラムが備えられているとき、実施可能と判定する。
【0043】
S42において、実施可能と判定された場合には、中断データから画像再構成を実施するためのパラレルイメージング倍速数(k空間データの間引き率)を決定する(S43)。この倍速数が大きいと画像出力のためのデータ数が少なくなり、無駄にするデータを減らすことができるが、同時に倍速数が大きいことによるSNR低下やアーチファクトが発生する。倍速数の決定は、被検体の状況に応じてユーザーが設定しておいてもよいし、予め決められた値で行ってもよい。また制御部30で装置の条件、例えば受信コイルの数や配置に基づいて決定してもよい。
【0044】
実施判定S42やパラレルイメージングの倍速数の設定S43を、ユーザーが行う場合のGUI画面例500を、図5に示す。この例では、撮像のパルスシーケンスを選択し、撮像パラメータであるTR(繰返時間)、TE(エコー時間)などを設定する「Scan Parameter List」501の設定ブロックの他に、「Image Output(aborted scan)」502や「Parallel #」503などの入力ブロックが設けられており、「Image Output(aborted scan)」502を選択することで、中断データから画像再構成を実施する機能が選択され、「Parallel #」503により倍速数を入力することができる。
【0045】
S43で倍速数が決定すると、優先撮像データ決定部31は、決められた倍速数に基づいて、優先撮像データを決定し(S44)、k空間の信号取得順序を決定する(S45)。
【0046】
倍速数を2倍とした場合の信号取得順序の一例を図6に示す。この例では、簡略的にky方向のマトリクスサイズが16のk空間データ600を示している。図示するように、ky方向に沿った16の計測点から、1つ飛ばしの計測点を優先計測点(灰色)とする。優先する計測点を先に取得するように信号取得順序を決め、残った計測点をその後に取得するような信号取得順序とし、k空間にその信号取得順序で格納できるように位相エンコーディングする。図6中、k空間内の数字が計測する順番を示しており、優先撮像データが1~8番目の順番で撮像される。この例では、優先撮像データ、非優先撮像データともに、k空間のky方向の一端から他端に向かって連続的にデータを取得する順番としている、優先撮像データ及び非優先撮像データの、それぞれの中で撮像する順番は、どのよう撮像してもよい。
【0047】
また倍速数を2倍に固定するのではなく、複数の倍速数の組み合わせとし、多段的に優先撮像データを設定することも可能である。例えば、図6のk空間データの優先撮像データ1~8を、第1優先撮像データ[1,3,5,7]と第2優先撮像データ[2,4,6,8]の二つに分けて、一方を他方より先行する信号取得順序としてもよい。これにより、倍速数4倍の優先撮像データを取得することができる。この場合にも、一つの優先撮像データのグループ内でも信号取得順序は特に限定されないが、例えば、取得順序を、1→3→5→7の順に撮像し、その後2→4→6→8の順に撮像する。
【0048】
続いて、撮像開始後の制御のフローについて、図7を参照して説明する。
【0049】
撮像が開始され(S71)、撮像が中断せずに、またユーザーによる一時停止が行われる(S81)、正常に撮像が終了した場合は(S73)、通常の画像再構成を実施して画像を出力する(S74)。撮像の中断が発生した場合は(S72)、判断部33が、優先撮像データを全て取得できているか判断する(S75)。倍速数2倍が設定されている図6の例では、8個以上16未満のデータが取得できている場合は、1番目から8番目までに取得した優先撮像データを用いてパラレルイメージングによる画像再構成を実施して画像を出力する(S76)。もし、優先撮像データが全て取得できていない場合は撮像データを破棄して撮像を終了する(S73)。
【0050】
また複数の倍速数を組み合わせて、優先順位が異なる複数の優先撮像データが設定されている場合には、例えば、撮像が中断したときに、倍速数2倍の優先撮像データが全て取得できていなくても、倍速数4倍の優先撮像データが全て取得できていれば、画像生成部20は4倍のパラレルイメージングによる画像再構成を実施する(S72~S76)。これにより、破棄して無駄になるデータを減らすことができる。画像生成部20が生成した画像は、出力装置194に出力される。
【0051】
撮像の中断には、被検体の具合が悪くなったり、大幅に動いてしまったり等の理由による中断のほかに、被検者からのオペコールやユーザー側の理由などでユーザーの判断で一時停止する場合も含む。この場合にも、入力装置を介してユーザーの一時停止の指示を受け付け(S81)、中断時と同じように再構成可能か判定する(S82)。優先撮像データが全て取得できている場合は画像再構成を実施する(S83)。
【0052】
一時停止の場合、画像生成部20が生成した画像は、プレビュー画像として一時的に表示してもよい(S84)。ユーザーは被検者からのオペコールなど何かしらの理由で一時停止したときにプレビュー画像を確認することで再撮像可能かを判断することが可能になり、検査効率を向上することができる。一時停止後、撮像が再開されなければ(S84)、撮像を終了する(S73)。
【0053】
本実施形態において中断あるいは一時停止後に、中断データを用いて画像生成部20が生成した画像の表示例800を図8に示す。この例では、画像情報として、撮像中断時に画像出力したことを示す情報と撮像中断時のデータから画像再構成に用いたパラレルイメージングの倍速数等を画像データに付帯させ、この付帯情報(「Aborted Scan Prallel #」)802を撮像した画像801と同時に表示させる。これらの情報により撮像中断した時の画像であることがユーザーに示されるため、他の撮像画像と混在しても判別することが可能になる。また、画像再構成に用いたパラレルイメージングの倍速数等の情報を表示することで、ユーザーにどのように再構成された画像かを知らせることができるため、出力画像のほかに再撮像が必要かどうかの判断にも用いることができる。
【0054】
さらに図8に示すように、撮像時間とダウンカウント、プログレスバー803や、再構成可能となる時間とダウンカウント、プログレスバー804を表示してもよい。例えば、プログレスバー803の残り時間が数秒ならば、その時間を待ってから撮像中断することで、データを無駄にすることがなくなり撮像中断の判断に活用することができる。なお図示する例では、撮像時間(スキャン時間)のプログレスバーとしているが、総撮像時間を100とした%表示など、撮像の進捗状況を表示する手法は種々の形態を採りえる。
【0055】
本実施形態によれば、パラレルイメージングの倍速率に応じて優先撮像データを決定し、優先撮像データの計測点を優先的に計測することにより、中断や一時停止を行った場合にも撮像データの無駄を極力少なくすることができる。また倍速数を多段的に組み合わせて、高い倍速数で画像再構成可能なデータの取得を優先することで、さらに、廃棄しなければならないデータ数を減らすことができる。
【0056】
<実施形態1の変形例>
実施形態1では、撮像中断時に2次元のk空間データを間引いたパラレルイメージング再構成を行ったが、3D撮像の場合には、撮像中断時にky、kz方向の2次元のパラレルイメージングの再構成を実施するように優先撮像データを決定することも可能である。この場合の優先撮像データの決定手法について、以下、説明する。
【0057】
2次元のパラレルイメージングではそれぞれの軸に対してパラレルイメージングの倍速数により優先撮像データを求める。パラレルイメージング倍速数は、2次元方向(位相方向及びスライス方向)について、それぞれ決定する。決定の仕方は、実施形態1と同様に、システムで予め決められた値でも良いし、撮像者がGUIを介して設定してもよい。
【0058】
優先撮像データの決定では、まず、k空間のデータ領域をそれぞれの軸の倍速数で間引いたデータが交わる計測点を、最も優先性が高い第1優先撮像データとする。次いで、各軸での1次元のパラレルイメージングが可能になる計測点を優先撮像データとする。各軸の優先撮像データ(第1優先撮像データを除く)のうち、いずれの軸を優先させるかは任意であるが、各軸の計測点数により決定することができる。具体的には、1次元のパラレルイメージングが可能になるための計測点が少なくない軸の計測点を、第1優先撮像データの次に取得する第2優先撮像データとし、残る軸のパレレルイメージング可能な計測点を第3優先撮像データとする。各優先撮像データの計測点及びそれ以外の領域の計測点の信号取得順序は、k空間の一端から他端へ向かう順序、k空間中心から端部に向かう順序など任意である。
【0059】
撮像中断時に第1優先撮像データが取得できている場合は、ky方向、kz方向をそれぞれ設定したパラレルイメージングの倍速数で画像再構成を実施する。第1、第2の優先撮像データまで取得できている場合は、1次元のパラレルイメージングで画像再構成を実施する。この時、ky方向のデータが全て取得できている場合はkz方向のパラレルイメージングの倍速数で、kz方向のデータが全て取得できている場合はky方向のパラレルイメージングの倍速数で画像再構成を実施する。第1、第2、第3の優先撮像データまで取得できている場合は、ky、kz方向の1次元パラレルイメージングを実施するが、パラレルイメージングの倍速数が少ない軸で実施する。倍速数が少ないほうがSNR低下やアーチファクトを抑制できるためである。撮像が中断せずに全ての撮像データが取得できた場合は通常の画像再構成を実施して画像を出力する。
【0060】
以上が本変形例の基本的な考え方である。以下、優先撮像データ及び撮像順序の決定の具体例と、その決定に基づく撮像及び画像再構成制御の具体例を、図9図11を用いて説明する。
【0061】
図9は、2次元のパラレルイメージング(PI)の信号取得順番を決定するフローチャート、図10は、撮像と画像再構成のフローチャートである。図11は、倍速率をky方向3倍、kz方向2倍としたときのk空間(ky-kz区間)の優先撮像データの例を示す図である。図11中、灰色で示す計測点は、それぞれの軸の倍速率でパラレルイメージング再構成可能な計測点(以下、PI計測点という)を示し、ky方向は2つ飛ばし、kz方向に1つ飛ばしになっている。また各計測点に付した番号は、取得順序を表す。
【0062】
図9に示すように、優先撮像データ決定部31は、倍速率が決定されると、はじめに第1優先撮像データの計測点(優先計測点という)を決定する(S91)。第1の優先計測点は、図11のk空間1100において、それぞれky方向のPI計測点とkz方向のPI計測点との交点となる計測点1101である。図示する例では1~16番目までの計測点となる。
【0063】
続いて第2優先撮像データの計測点(第2の優先計測点)を決定する(S92~S96)。第2の優先計測点は、1次元のパラレルイメージングが可能なPI計測点の数が少ない方の軸のPI計測点1102とする。第2の優先計測点を決定する際に、第1優先撮像データ取得後に残るPI計測点が少ないほうを優先計測点とすることで1次元のパラレルイメージングを早く実施することが可能になる。図11の例では、第1優先撮像データ取得後に、1次元方向のみのパラレルイメージングを実施するためには必要なデータ点数は、ky方向では16点であるのに対し、kz方向では32点である。従って、ky方向のPI計測点を第2優先計測点とすることで、1次元パラレルイメージングをより早く実施することができる。ここでは、ky方向の17~32番目までのPI計測点(但し、第1優先撮像データの計測点を除く)とする。
【0064】
第3優先撮像データは、第1優先撮像データの計測点を除く、kz方向のPI計測点、即ち33~64番目まで計測点1103とする。PI計測点以外の計測点のデータは、65番目以降に取得する信号取得順序とする。
【0065】
なお図11に示す例では優先撮像データ内で連続的にデータを取得するような順番になっているが、優先撮像データ内ではどのような順番でデータを取得しても問題ない。また、端のデータを基準にパラレルイメージングの計測点を決定しているが、端のデータでなくてもかまわない。
【0066】
次に、撮像時の計測部10及び画像生成部21の動作の流れを説明する。まず計測部10は、図9のS92~S96で決定された信号取得順序に従って、計測部10は撮像を開始する。最初に、図11に示すky方向の2つ飛ばしのエンコードステップとkz方向の1つ飛ばしのエンコードステップとを組み合わせたエンコーディングでエコー信号を収集し、第1優先撮像データ(1~16番目までの優先計測点)を収集する。次いで、第1の優先計測点と同じ位相エンコーディングを行いながら残りのkz方向のスライスエンコーディングを行い、17~32番目までの優先撮像データ(第2優先撮像データ)を収集する。
【0067】
第2優先撮像データの収集後、1番目の優先計測点と同じkz方向のスライスエンコーディングを行いながら、残りのky方向のエンコーティングを行い、1番目の優先計測点以外のkz方向のPI計測点、すなわち33~64番目の計測点のデータ(第3優先撮像データ)を収集する。最後に残りの計測点を撮像する。本例では65~96番目のデータを取得する。
【0068】
続いて2次元パラレルイメージングを用いた撮像中断時の画像再構成について、状況判断部33と画像生成部21の動作の流れを、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
状況判断部33は、撮像中断があると、第3優先撮像データまで撮像データが取得できているか判定を行う(S101)。取得できている場合は、ky、kzの各方向の1次元のパラレルイメージングが可能になるため、ky、kz軸のパラレルイメージング倍速数を判定し(S102)、倍速数が少ない方向で1次元のパラレルイメージングを用いた画像再構成を実施する(S103、S104)。このように、パラレルイメージングの倍速数が小さい軸で実施する。そうすることで、SNR低下やアーチファクトの発生をより抑えた画像を出力することが可能になる。
【0070】
S101で第3優先撮像データまで取得できていないと判定した場合、第2優先撮像データまで撮像データが取得できているか判定する(S105)。取得できている場合は、1次元のパラレルイメージングが可能な軸、ここではky軸で1次元パラレルイメージングによる画像再構成を実施する(S106)。S106で第2優先撮像データまで取得できていないと判定した場合、第1優先撮像データまで撮像データが取得できているか判定する(S107)。取得できている場合は、ky、kz方向の2次元パラレルイメージングによる画像再構成を実施する(S108)。取得できたデータが、第1優先撮像データに満たない場合は撮像データを破棄する(S109)。
【0071】
本変形例によれば、3D撮像の場合には、k空間を各軸方向にパラレルイメージング再構成可能な計測点と、2次元パラレルイメージング再構成可能な計測点とを、それぞれ、優先撮像データとすることで、撮像中断の際に、取得した撮像データを無駄にせずに画像化できるチャンスを増やすことができる。特に、複数の優先撮像データを、より少ないデータ点数の優先撮像データを先行して取得するように、順番付けすることで、無駄になるデータの削減効果をより高めることができる。
【0072】
<実施形態2>
上述した実施形態1とその変形例では、k空間の計測順序に制約がない撮像法を基本とし、パラレルイメージングの倍速率を決定し、倍速率をもとに優先撮像データを決定する実施形態であったが、本実施形態では、k空間の計測順序に制約を伴う撮像方法に対し、その制約下で、パラレルイメージング等の高速撮影法による再構成可能なデータを優先撮像データとして決定する。
【0073】
k空間の計測順序に制約を伴う撮像方法としは、例えば、1回の励起後に、エコー時間が異なる複数のエコー信号を収集するパルスシーケンスを採用した撮像で、画像に求められる特性に応じて複数のエコー信号のk空間配置を制御する撮像がある。以下、そのような撮像方法の一つであるFSE(高速スピンエコー法)を例に本実施形態を説明する。
【0074】
FSEシーケンスは、図12に示すように、1回の励起RFパルス1201に対して複数のリフォーカスRFパルス1202によるエコートレインを形成してTEが異なる複数のエコー信号1203を取得する。ここで撮像点数を30、エコートレイン数を6とした場合は、k空間の6分割した計測点にそれぞれのエコー信号1203が充填されるように位相エンコーディングされる。その結果、各TEのエコー信号は、図13に示すようなk空間データ1300となる。図13において、太線で区切られた6つの領域は、それぞれ、1番目~6番目までのエコー信号が配置される領域を示しており、この例では、1番目のエコーから6番目のエコーまでをk空間の一端から他端に向かって配置している。
【0075】
このようにFSEシーケンスでは、ky方向に対して同時に取得した複数のエコー信号がk空間に分散して配置されるため、各TEのエコーごとに優先撮像データを取得できるように信号取得順序を決定する。
【0076】
パラレルイメージングの倍速数を2倍とした場合は、実施形態1と同様に1つ飛ばしに優先計測点が決められる(図13中、灰色で示す計測点)。FSEシーケンスではエコートレイン数のエコー信号を同時に取得することから、エコー毎に撮像点の順番を決める。例えば1番目のエコー信号1301では、3つの優先計測点があるため、3番目までに優先計測点を撮像するように決定する。2番目のエコー信号1312では優先計測点が2つであるため、2番目までに優先計測点を撮像するように決定する。同じように全てのエコー信号に毎に優先計測点を先に取得するように信号取得順序を決めた後、残りの計測点を取得するような撮像順番とし、k空間に決めた信号取得順序で格納できるようにエコー信号を位相エンコーディングする。この例では端から順番に信号取得順序を決めているが、優先撮像データと非優先撮像データ内では撮像する順番は変えてもよく、またエコー毎に順番を変えても問題ない。
【0077】
画像再構成に関するフローについては、図7に示す実施形態1のフローと同様であり、説明を省略する。また、3D FSEシーケンスの場合には、2次元パラレルイメージングを用いる実施形態1の変形例と同様に、複数の優先撮像データを決定し、撮像中断時に複数の優先撮像データがどこまで取得されているかに応じて、可能なパラレルイメージング再構成を行うことができる。
【0078】
本実施形態によれば、k空間配置に制約がある撮像方法においても、その制約に沿って優先撮像データを決定することができ、それにより、実施形態1やその変形例と同様に、取得したデータを最大限利用して画像生成に利用することができ、撮像中断時に廃棄するデータを削減できる。
【0079】
<実施形態2の変形例>
実施形態2では、k空間データの取得順序に制約がある撮像方法として、FSEを例に説明したが、体動の影響を抑制するために取得順序を調整する技術もあり(例えば、本出願人による出願:特願2019-031754号)、本変形例では、この体動補正技術に本発明を適用する。
【0080】
上述した先願の技術では、撮像したk空間データから体動位置を検出し、その周囲のデータを用いて合成信号を作成して置換する。体動の影響は繰り返し時間(TR)を跨いで影響を及ぼすことがあるため、図14(A)に示すように、位相エンコードが隣り合わないように奇数番目の計測点と偶数番目の計測点をインターリーブ計測で行うこととしている。この場合には、奇数番目の計測点と偶数番目の計測点のうち、先に取得する計測点のデータを優先撮像データとし、撮像中断時に優先撮像データが取得できていれば、2倍速のパラレルイメージングの画像再構成を行う。
【0081】
しかし、インターリーブ計測方法では、ある位相エンコードデータ(例えば7番目及び8番目の計測データ)1401、1402に体動が生じ、エコーデータ1401を隣り合うデータ(14番目と15番目の計測データ)1403、1404で補正する場合、これらデータ1403、1404は時間的に連続したデータとなる。そのため、仮に2回の体動が生じて、エコー信号1401だけでなく、エコー信号1401の補正に用いる両側のエコー信号1403、1404に体動の影響があった場合、周囲のデータを用いた補正が失敗する恐れがある。そこで、位相エンコードをより分散させるために、1つ飛ばしのデータ取得順ではなく、2つ以上離れた位置を計測する撮像方法を適用することが好ましい。例えば、図14(B)に示すように、2つ飛ばしのデータ取得順にする。この場合、先ほどと同じように、エコー信号1411、1413、1414が体動の影響を受けたデータとなっても、ky方向に連続して格納されないので体動の影響を分散させることが可能になり、体動補正の成功率を上げることができる。
【0082】
図14(B)に示す例では、一つ飛ばしのデータ取得順序になるので、1番目から6番目までの計測データを優先撮像データとしておくことで、撮像中断時にその優先撮像データが取得できていれば、3倍速のパラレルイメージングによる画像再構成が可能となる。
【0083】
本変形例における撮像順番決定のフローを図15に示す。まず、入力装置192(UI)を介して撮撮像条件を受け付ける(S151)。撮像条件には、体動補正機能の選択及び撮像部位の指定も含む。体動補正機能の初期設定は、例えば、インターリーブ計測方法による計測順序とする。S151で、体動補正機能が選択された場合には、制御部30は、ユーザーが指定し撮像部位から、その撮像部位が体動の発生しやすい部位かどうかを判定する(S152)。体動が発生しやすい部位は、経験的にわかって部位を予め登録しておいてもよいし、ユーザーが指定してもよい。体動が発生しやすい部位であると判定した場合は、撮像順番をデフォルトで設定されたインターリーブ計測方法による計測順序から、2つ以上離れた順番となる計測順序に変更する(S153)。
【0084】
撮像が開始されると、設定された計測順序に従ってk空間データの計測が行われ、撮像中断があったときは、計測順序がデフォルトの計測順序か、変更された計測順序であるかを判定し、そのときに、計測順序で決まる優先撮像データが取得できているかを判断し、取得できていれば、パラレルイメージングによる画像再構成を行う。すなわち図14(A)に示す計測順序の場合には、1番目~8番目のエコーデータを用いて2倍速のパラレルイメージング再構成を行い、図14(B)に示す計測順序の場合には、1番目~6番目のエコーデータを用いて3倍速のパラレルイメージング再構成を行う。
【0085】
本変形例も、2D撮像だけでなく、3D撮像のスライスエンコード方向にも同様の手法を適用することができる。また、位相方向及びスライス方向の併用も可能である。
【0086】
<実施形態3>
実施形態1、2では、優先撮像データを用いた高速撮像法による画像再構成法がパラレルイメージングであったが、本実施形態は、FSEシーケンスを用いた撮像において、ハーフスキャンの画像再構成する優先撮像データを決定することが特徴である。
【0087】
ハーフスキャンとは、一般的にk空間の端から半分より少し多めに計測したデータから、非計測領域のデータを補完して画像再構成する手法である。撮像中断時に、ハーフスキャンデータを用いて画像再構成する手法は知られているが(特許文献3)、実施形態2で説明したように、FSEシーケンスでは、ky方向に対して同時に取得した複数のエコー信号がk空間に分散して配置され、k空間を端から順番に充填することができないため、この手法を適用することはできない。
【0088】
本実施形態では、k空間を2つの領域にわけ、それぞれの領域を別々に計測することにより、ハーフスキャンデータによる撮像中断時の画像再構成を可能にする。以下、図16を参照して、本実施形態の優先撮像データと計測順序の決定手法を説明する。
【0089】
本実施形態でも撮像条件として、撮像中断時の画像再構成機能が選択されている場合には、まず、ハーフスキャンの割合を設定する。ハーフスキャンの割合についてはシステムで予め決められた割合でも良いし、ユーザーが設定してもよい。また、ハーフスキャンの割合は、優先撮像領域の割合を設定しても良いし、非計測領域を設定しても良い。
【0090】
次に設定したハーフスキャンの割合で、k空間を優先撮像領域とそれ以外の領域の2つに分割する。すなわち、FSEのショット数を同じ割合で分ける。例えば、優先撮像領域がk空間の2/3、残りの領域が1/3で、ショット数が6の場合、優先撮像領域のデータは最初の4ショットで収集し、残りの領域のデータは、その後の2ショットで収集する。さらに、それぞれの領域をエコートレイン数で分ける。1ショットで計測されるエコートレインの信号(エコーデータ)は、各領域をエコートレイン数で分割した小領域にそれぞれ配置される。すなわち、小領域には同じTEのエコーが配置される。
【0091】
また小領域のデータを収集する順序は、ky方向に隣接するエコーデータ間で強度差が少なくなるように、ショットによって、エコーデータを収集する向き(ky方向の)を異ならせた順序とする。エコーシフトとは、FSEシーケンスにおいて、所望のTEのエコー信号がk空間中心に位置するように、エコーをシフトして格納する手法である。エコーシフトの際に、全てのショットで同じ向きにエコートレインのエコーを配置した場合、1番目のエコーと最後のエコーとが隣接し、強度差が大きくなり、リンギング等のアーチファクトが発生する。本実施形態では、上述のように、ショットによってエコーデータを収集する向きを異ならせることで、隣接するエコーデータ間の強度差を少なくすることができる。
【0092】
具体的な計測順序を、図16を参照してさらに説明する。図16では、一例として、位相エンコード数24、エコートレイン4とし、優先撮像領域の割合を67%(2/3)とする。この割合で、優先撮像領域になるA領域1601とB領域1602に分ける。ショット数は、6(=位相エンコード数24/エコトレイン4)なので、4ショットで優先撮像領域1601のデータを収集し、2ショットでB領域1602のデータを収集する。
【0093】
所望のTEが1番目のエコー信号のTEである場合、優先撮像領域1601の撮像は、1ショット目及び2ショット目(1611,1612)でk空間中心のデータを1エコー目で取得するようにする。2番目~4番目のエコーデータは、順次、上側に向かって格納する。次に3ショット目及び4ショット目(1613,1614)は、1ショット目(1611)との間に信号強度差が生じないように、k空間中心から下側のデータを1エコー目で取得した後、2番目~4番目のエコーデータは、k空間の端部から中心に向かって格納する。これにより、隣接するエコーデータは、全て同じTEのエコーデータ又は隣接するTEのエコーデータとなる。
【0094】
B領域1602を取得する際にも同様に、5ショット目(1615)ではA領域との間に信号強度差が生じないように1番目のエコー信号がA領域との境目に格納されるようにシフトして信号を取得し、6ショット目(1616)では5ショット目(1615)との間に信号強度差が生じないように信号を取得する。このとき、A領域1601、B領域1602内ではショットの順番を変えても良い。
【0095】
画像再構成のフローについては、再構成手法がパラレルイメージングではなくハーフ推定処理を行った画像再構成であることが異なるだけで、実施形態1のフロー(図7)と同様である。すなわち、スキャン撮像中断時に優先撮像領域Aのデータが取得できていれば、非計測領域に対してハーフ推定処理を行い、画像を再構成する。
【0096】
なお図16では、k空間中心を取得するエコーが1番目のエコーである場合を示したが、2番目以降のエコーでk空間中心を取得するエコーシフトの場合にも、同様であり、ハーフスキャンの割合に従って、k空間を二つの領域に分け、所望のTEのエコーデータがk空間中心となるような撮像順序とする。この際、エコーデータ間の強度差を少なくするように、取得順序を異ならせる。
【0097】
図17に、エコーシフトのTEが3番目のエコー信号のTEである場合を示す。図16と同様に、優先撮像領域がk空間1700の2/3、それ以外の領域が1/3であり、位相エンコードが24、位相エンコード数24、エコートレイン4とする。この場合は、優先撮像領域を計測する4ショットのうち、最初の2ショット(1711、1712)でk空間の最も高域側の小領域を1番目のエコーで計測した後、2番目~4番目のエコーでk空間中心を含む領域を計測する。残りの2ショット(1713、1714)は、最初の2ショットで計測していないk空間の領域を計測する。その際、計測の順序を、最初の2ショットとは反対の向きとする。これによりショットとショットの境目において、番号が連続するエコーが隣り合うこととなり、エコーデータ間の強度差をなくすことができる。
【0098】
領域1702の計測についても同様であり、5ショット目(1715)と6ショット目(1716)で向きを異ならせて領域1702のデータを計測する。
【0099】
<実施形態4>(ラジアル等)
実施形態1~3及びそれらの変形例は、いずれも、k空間の格子点のデータを軸に沿って計測(リニアスキャン)する場合であったが、本実施形態では、軸に沿った計測方法以外の方法で撮像する場合に本発明を適用する。このような撮像方法としては、非直交方サンプリング法である、k空間を放射状にスキャンするラジアルスキャン、k空間を渦状にスキャンするスパイラルスキャンなどがある。以下、位相エンコーディングを追加したラジアルスキャンを例に、本実施形態を説明する。
【0100】
ラジアルスキャンは、図18に示すように、kx-ky平面のk空間1800を放射状にサンプリングする計測方法であり、ブレード1801と呼ばれる位相エンコードと周波数エンコードが直交した領域を回転させながらデータを収集する。基本的な収集順序は、例えば、kx軸に平行な位置を1番目の計測領域とすると、左あるいは右回転で順番に、ブレードを回転させて、k空間に内接する円内のデータを収集する。
【0101】
本実施形態では、撮像中断時のデータを用いて画像再構成する際に、撮像を中断した時のk空間のデータに偏りが無いようにブレードの撮像順番を変更して計測する。ブレードの撮像順番は、直交した位置を先に撮像するように決定しても良いし、黄金比となる角度(約137.5度)で満遍なくデータを収集するように決定しても良い。或いはブレードを一つ飛ばしの撮像順番としてデータを取得してもよい。すなわち取得予定のブレード間の角度に対し、角度を2倍にして得られるデータを優先撮像データとする。
【0102】
本実施形態における撮像中断時の画像出力機能の一例を、図18を用いて説明する。図中、各位置のブレード1811~1818の横に付した丸で囲った数字1~8は撮像順序を示している。本例ではk空間を8ブレードで取得する場合においてブレードが直交した位置を先に取得する。
【0103】
始めにkx、ky軸に直交するブレード1811、1812を優先して取得する。ブレード1811、1812はどちらを先に取得しても構わない。続いて取得するブレードはk空間に偏りが出ないようなブレードを取得することが好ましいため、本例では45度、135度に角度をつけたブレード1813、1814を取得する。こちらもどちらのブレードを先に取得しても構わない。残りのブレードも同じようにk空間に偏りが出ないように、ブレード1815、1816、1817、1818を取得する撮像順番とする。
【0104】
画像再構成については、撮像が中断せずに全ての撮像データを取得した時は、通常の画像再構成を実施して画像を出力し、撮像が中断した時は、中断するまでの撮像データを用いて画像再構成を実施する。ラジアルスキャンの画像再構成では、k空間の格子点のデータを、その格子点に近い位置にある複数の計測データから補間し、k空間データを作成する。撮像中断時の再構成も基本的には同様で、計測できていない格子点のデータを計測データから補間する。補間の精度は、全ブレードを計測した場合よりも落ちるが、計測データを生かして画像再構成できる。他の実施形態では、優先撮像データよりも多い計測データがあった場合に、それが次の優先撮像データあるいは全撮像データに満たない場合には、廃棄したが、本実施形態では、補間で格子点のデータを求めるため、それまでに計測したデータを全て利用することができる。従って、撮像順序を決定しておけば、図7のフローに示すような、撮像中断時における優先撮像データの取得状況を判断するステップ(S75等)は不要となる。
なお取得予定のブレードに対して、撮像中断時のデータがあまりにも少ない場合には画質の低下を引き起こす可能性があるため、ブレードデータの下限値を設けてもよい。
【0105】
なお本実施形態では、撮像方法が位相エンコード付きのラジアルスキャンである場合を説明したが、位相エンコーディングを伴わないラジアルスキャンにも同様に適用できるが、この場合は、再構成に必要な最小ライン数を決めておき、そのライン上のデータを優先撮像データとし、撮像中断時に優先撮像データが収集できているときに上述した画像再構成を行うようにしてもよい。
【0106】
<実施形態5>
本実施形態は、優先撮像データを用いた画像再構成法として、パラレルイメージングではなく、圧縮センシング(CS)等の繰り返し再構成を用いる実施形態である。
【0107】
圧縮センシング等の繰り返し再構成は、データの疎性を利用した画像再構成方法であり、例えば、図19に示すように、アンダーサンプリングしたデータ(計測空間データ)1900を入力とし、それを逆フーリエ変換(逆FT)によって画像データ1901に変換した後、さらにウェーブレット変換等のスパース化演算を行って、スパース画像1902のL1ノルム最小化を行う。L1ノルム最小化後のスパース画像1903を逆演算により画像データ1901と同じ実空間データ1904に戻し、FTによりk空間データ1905とする。このk空間データ1905を入力として、同じ処理を繰り返す。このような繰り返し演算により、少ないデータから本来の信号を高精度に復元して画像を生成することが可能である。
【0108】
CS等の繰り返し再構成では、インコヒーレンス性(ランダム性)のある撮像データを用いることで繰り返し再構成の倍速数を上げることができることが知られている。本実施形態では、優先撮像データとして、CS等の繰り返し再構成に利用できるインコヒーレンス性のある撮像データを優先的に収集する。繰り返し再構成に適したインコヒーレンス性を確保する撮像方法には様々な手法があるが、ここでは一例として、ky、kz軸に対して黄金角を用いたラジアルサンプリングを行う場合を説明する。
【0109】
黄金角を用いたラジアルサンプリングでは一般的に図20のようにk空間2000のky、kz平面の内接円の領域2001を、放射状のデータ取得ライン2002を黄金角で回転させながら、ライン上の撮像データを取得する。このとき、撮像中断がなければ黄金角で回転させて全ての計測点のデータを取得し、繰り返し再構成を用いずに通常の画像再構成、例えば、放射状に取得したデータからk空間の格子点のデータを補間によって求め、マトリクスデータとした後、フーリエ変換により画像再構成する手法を実施する。撮像中断が発生した場合は、それまでに取得した撮像データを用いてCS等の繰り返し演算による画像再構成を実施する。その時の倍速数は、全計測点数に対して取得したデータ点数の割合の逆数が倍速数になる。
【0110】
もしくは、実施形態1と同様に先に倍速数を決めておき、ラジアルサンプリングで倍速数を満たすデータ点数になるような計測点のデータを優先撮像データとし、優先撮像データを計測した後、残りの計測点を計測するような手法にしても良い。その場合は、撮像中断時に優先撮像データを取得できている場合は、設定した倍速数で画像再構成を実施し、撮像中断がない場合は通常の画像再構成を実施する。
【0111】
本実施形態によれば、画像再構成の手法として、圧縮センシング等の繰り返し再構成を用いているので、インコヒーレント性の高い優先撮像データとなるように信号取得順序を決定しておけば、撮像中断までに取得したデータが少なくても、画像の復元が可能であり、破棄するデータ量を減らすことができる。
【0112】
<実施形態5の変形例>
実施形態5では、インコヒーレンス性(ランダム性)のある撮像データを取得するための撮像方法として、黄金角でデータ取得ラインを回転させながら、データを収集するラジアルスキャン法を用いたが、本変形例では、スパイラルスキャンを用いる。
【0113】
本変形例の優先撮像データと信号取得順序の一例を図21(A)、(B)に示す。いずれもk空間に内接する円内の領域2100、2110を螺旋状に中心に向かってスキャン(anti-centric scan)して、データを収集する。図21(A)は、円の外側から中心に向かう弧状のデータ取得ライン2011上のデータを、1ショットで複数のエコー信号を取得する撮像シーケンス、例えばFSE(Fast Spin Echo)等で取得する。データ取得ラインを回転させながら撮像を繰り返し、複数ショットで全k空間のデータを収集する。図21(A)の場合には、ラインの回転のさせ方は、ラジアルスキャンと同様であり、各ショット間の角度を分散させることでランダムなデータ収集が可能となる。
【0114】
撮像中断の際に、所定ショット分のデータが収集されていれば、繰り返し演算による画像再構成を行う。所定ショット分は、パラレルイメージングの倍速率と同様に予め設定していてもよいし、ショット数の総数に対するデータ取得済のショット数の割合を倍速率として、その逆数を倍速数とする繰り返し演算を行ってもよい。
【0115】
図21(B)は、図21(A)と同様にEPIの複数ショットで全k空間のデータを収集するが、各ショットのデータ取得ライン2111、2112は、k空間の内接円2110の外からk空間中心に向かう螺旋状である。この場合も、画像中断時の画像再構成は、図21(A)と同様であるが、図21(A)に比べ、1ショット毎に得られるデータがk空間でランダムに分布するので、少ないデータでも、よりランダム性のあるデータとなり、繰り返し再構成による復元の精度が高い。
【符号の説明】
【0116】
10:計測部、20:演算部、21:画像生成部、30:制御部、100:MRI装置、110:寝台装置、120:静磁場発生装置、130:傾斜磁場発生装置、140:高周波パルス送信装置、150:シーケンサ、160:高周波信号受信装置、170:制御装置、171:CPU、190:入出力装置(UI)、192:入力装置、194:出力装置、300:被検体
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