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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019379
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】流体フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/11 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
B01D29/10 501C
B01D29/10 510C
B01D29/10 530B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123178
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000252252
【氏名又は名称】和興フィルタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池上 喜之
(72)【発明者】
【氏名】横山 慶二
(72)【発明者】
【氏名】家前 義宏
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA04
4D116AA05
4D116BB01
4D116BC27
4D116BC44
4D116BC47
4D116BC76
4D116DD05
4D116QA06C
4D116QA06D
4D116QA06E
4D116QB02
4D116QB05
4D116QB17
4D116QB22
4D116QB23
4D116QB32
4D116QB34
4D116QC04
4D116QC50
4D116UU09
4D116VV02
4D116VV05
(57)【要約】
【課題】フィルタエレメントの交換を容易に行うことができる流体フィルタを提供する。
【解決手段】中空円柱形状の濾材11を有するエレメント10と、円柱状の外観を有し、その先端が濾材11の一方の端面側から濾材11の内部に挿入され、濾材11を内側から支持するチューブ20と、を備え、チューブ20を濾材11の内部に挿入した状態で、チューブ20とエレメント10とを相対的に回動させると、チューブ20とエレメント10とが係合し、この係合によってエレメント10を固定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円柱形状の濾材を有するフィルタエレメントと、
円柱状の外観を有し、その先端が前記濾材の一方の端面側から前記濾材の内部に挿入され、前記濾材を内側から支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材を前記濾材の内部に挿入した状態で、前記支持部材と前記フィルタエレメントとを相対的に回動させると、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが係合し、前記係合によって前記フィルタエレメントを固定する
ことを特徴とする流体フィルタ。
【請求項2】
前記支持部材の中心軸を中心とする周方向における基準位置に設けられた基準位置部材と、
前記支持部材又は前記フィルタエレメントの周方向位置を、前記基準位置に対して特定の位置に位置決めし、かつ、前記特定の位置を維持した状態で、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが前記支持部材の中心軸に沿って相対的に移動するようにガイドする位置決めガイド部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の流体フィルタ。
【請求項3】
前記支持部材は、中心軸に対して直径方向に突出する係合凸部を有し、
前記フィルタエレメントは、内部に前記支持部材が挿入された状態で前記支持部材と相対的に回転する際に、前記係合凸部が前記支持部材の中心軸を中心として周方向へ回動するのをガイドするガイド片を有し、
前記ガイド片は、前記周方向に延在するとともに、前記支持部材の中心軸の方向に対して傾斜して形成され、
前記係合凸部が前記ガイド片に沿って回動するにつれて、前記フィルタエレメントの内部で前記支持部材が前記濾材の他方の端面側へ移動することで、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが係合する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体フィルタ。
【請求項4】
前記ガイド片は、
前記支持部材と前記フィルタエレメントとが一方向へ相対的に回動したときに、前記係合凸部をガイドする第1の傾斜面と、
前記支持部材と前記フィルタエレメントとが前記一方向の反対方向へ相対的に回動したときに、前記係合凸部をガイドする第2の傾斜面と、を有し、
前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との傾斜角度が異なる
ことを特徴とする請求項3に記載の流体フィルタ。
【請求項5】
前記濾材の内周面に、前記濾材の一方の端面側から他方の端面側に向かって前記濾材の内周の直径が徐々に小さくなるようにテーパを設け、
前記支持部材の外周面に、前記濾材の内周面との隙間が一定の間隔となるようにテーパを設けた
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の流体フィルタ。
【請求項6】
前記支持部材は、
前記フィルタエレメントの端面部が外部の圧力によって変形したときに、前記濾材の内部に挿入された前記支持部材の先端部によって、前記フィルタエレメントの端面部を内側から支持する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の流体フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油等の流体を濾過する流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用油圧機器の油圧回路に使用される流体フィルタには、作動油タンク内に装着され、油圧回路内を巡って作動油タンクに戻って来た作動油を濾過し、作動油に混入した不純物を取り除くものがある。このように、油圧回路から戻って来た作動油の濾過を行う流体フィルタをリターンフィルタとも言い、リターンフィルタによって濾過された作動油を作動油タンクから再び油圧回路に供給することで、作動油を繰り返し循環して使用している。この種のリターンフィルタには、例えば特許文献1に開示されているように、略円筒形の濾材を有するフィルタエレメントと、このフィルタエレメントを収容するフィルタケースとで構成されているものがある。
【0003】
上述したフィルタケースはフィルタエレメントを収容するケース筒体を有し、このケース筒体の下端にはケース筒体を保持する下部保持体が取り付けられている。また、ケース筒体の上端には、エレメント挿入口を有する上部保持体が取り付けられている。上部保持体のエレメント挿入口は、上部保持体にケース蓋をねじ止めすることによって封止される。このケース蓋の裏面(ケース筒体内を臨む面)には、圧縮コイルバネであるセットスプリングが取り付けられており、ケース蓋を上部保持体にねじ止めすると、セットスプリングの弾性力によって、ケース筒体に収容されたフィルタエレメントを下方へ付勢する。これにより、ケース筒体に収容されたフィルタエレメントが、下部保持体に押し付けられることで、ケース筒体内のフィルタエレメントのぐらつきが抑制され、フィルタエレメントを安定して保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-218253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した流体フィルタにおいては、フィルタケース内に装着したフィルタエレメントをケース蓋で封止する際に、セットスプリングの弾性力に抗してケース蓋を押えながら上部保持体にねじ止めしなくてはならないため、作業性が悪いという問題があった。また、差圧によって濾材が変形しないように、チューブやプロテクタを設ける必要があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、フィルタエレメントの交換作業を容易に行うことができる流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る流体フィルタは、中空円柱形状の濾材(例えば、実施形態における濾材11)を有するフィルタエレメント(例えば、実施形態におけるエレメント10)と、円柱状の外観を有し、その先端が前記濾材の一方の端面側(例えば、実施形態における下部プレート13側)から前記濾材の内部に挿入され、前記濾材を内側から支持する支持部材(例えば、実施形態におけるチューブ20)と、を備え、前記支持部材を前記濾材の内部に挿入した状態で、前記支持部材と前記フィルタエレメントとを相対的に回動させると、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが係合し、前記係合
によって前記フィルタエレメントを固定する。
【0008】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記支持部材の中心軸を中心とする周方向における基準位置に設けられた基準位置部材(例えば、実施形態における位置決め凸部303,303’)と、前記支持部材又は前記フィルタエレメントの周方向位置を特定の位置(例えば、実施形態における下部ガスケット15の変形部VPの位置と、ブラケット30に形成されたガスケット溝304の変形部BVPの位置とが一致する位置)に位置決めし、かつ、前記特定の位置を維持した状態で、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが前記支持部材の中心軸に沿って相対的に移動するようにガイドする位置決めガイド部(例えば、実施形態における位置決め凹部135,135’)を有することが好ましい。
【0009】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記支持部材は、中心軸に対して直径方向に突出する係合凸部(例えば、実施形態における係合凸部211)を有し、前記フィルタエレメントは、内部に前記支持部材が挿入された状態で前記支持部材と相対的に回転する際に、前記係合凸部が前記支持部材の中心軸を中心として周方向へ回動するのをガイドするガイド片(例えば、実施形態におけるガイド片131)を有し、前記ガイド片は、前記周方向に延在するとともに、前記支持部材の中心軸の方向に対して傾斜して形成され、前記係合凸部が前記ガイド片に沿って回動するにつれて、前記フィルタエレメントの内部で前記支持部材が前記濾材の他方の端面側へ移動することで、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが係合することが好ましい。
【0010】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記ガイド片は、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが一方向へ相対的に回動したときに、前記係合凸部をガイドする第1の傾斜面(例えば、実施形態におけるガイド片151の係合面ES)と、前記支持部材と前記フィルタエレメントとが前記一方向の反対方向へ相対的に回動したときに、前記係合凸部をガイドする第2の傾斜面(例えば、実施形態におけるガイド片151の離脱面WS)と、を有し、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との傾斜角度が異なることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記濾材の内周面に、前記濾材の一方の端面側から他方の端面側に向かって前記濾材の内周の直径が徐々に小さくなるようにテーパを設け、前記支持部材の外周面に、前記濾材の内周面との隙間が一定の間隔となるようにテーパを設けることが好ましい。
【0012】
さらに、上記構成の流体フィルタにおいて、前記支持部材は、前記フィルタエレメントの端面部(例えば、実施形態における上部プレート12)が外部の圧力によって変形したときに、前記濾材の内部に挿入された前記支持部材の先端部によって、前記フィルタエレメントの端面部を内側から支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る流体フィルタによれば、フィルタエレメントの交換作業において、新たなフィルタエレメントを支持部材に取り付ける場合は、新たなフィルタエレメントが備える濾材の一方の端面側から、支持部材を濾材内部に挿入し、支持部材とフィルタエレメントとを相対的に回動させるだけで、新たなフィルタエレメントを固定することができる。これにより、フィルタエレメントの交換作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、支持部材の中心軸を中心とする周方向における基準位置に設けられた基準位置部材と、支持部材又はフィルタエレメントの周方向位置を、基準位置に対して特定の位置に位置決めし、かつ、その特定の位置を維持した状態で、支持部材とフィルタエレメントとが、支持部材の中心軸に沿って相対的に移動するようにガイドする位置決めガイド部を有する。これにより、例えば支持部材及
びフィルタエレメントのうち、一方に支持部材の中心軸方向に突出した凸部が設けられ、他方がその凸部を収容可能な収容部を有していた場合、支持部材とフィルタエレメントとを相対的に回動させる際に、基準位置に対する支持部材又はフィルタエレメントの周方向位置の位置決めを行い、かつ、上記凸部を損傷することなく、容易かつ確実に他方の収容部に収容させることができる。
【0015】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、支持部材は、中心軸に対して直径方向に突出する係合凸部を有し、フィルタエレメントは、内部に支持部材が挿入された状態で支持部材と相対的に回転する際に、係合凸部が支持部材の中心軸を中心として周方向へ回動するのをガイドするガイド片を有し、ガイド片は、周方向に延在するとともに、支持部材の中心軸の方向に対して傾斜して形成され、係合凸部が前記ガイド片に沿って回動するにつれて、前記フィルタエレメントの内部で前記支持部材が濾材の他方の端面側へ移動することで、支持部材とフィルタエレメントとが係合する。これにより、支持部材とフィルタエレメントとを相対的に回動させると、係合凸部がガイド片に沿って回動し、支持部材とフィルタエレメントとが係合してフィルタエレメントを固定することができるので、フィルタエレメントの交換作業を容易に行うことができる。
【0016】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、ガイド片は、支持部材とフィルタエレメントとが一方向へ相対的に回動したときに係合凸部をガイドする第1の傾斜面と、支持部材とフィルタエレメントとが一方向の反対方向へ相対的に回動したときに係合凸部をガイドする第2の傾斜面と、を有し、第1の傾斜面と第2の傾斜面との傾斜角度が異なる。これにより、支持部材とフィルタエレメントとが相対的に回動する方向に応じて、係合凸部をガイドする傾斜面の角度が異なるため、係合凸部が傾斜面に沿って移動するときに、支持部材に対するフィルタエレメントの軸方向における移動量(フィルタエレメントに対する支持部材の軸方向における移動量ともいえる)に差が生じる。したがって、支持部材とフィルタエレメントとが係合するのか、それとも、支持部材とフィルタエレメントとの係合が解除されるのかを、フィルタエレメントの軸方向における移動量によって容易に判断することができる。
【0017】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、濾材の内周面に、濾材の一方の端面側から他方の端面側に向かって濾材の内周の直径が徐々に小さくなるようにテーパを設け、支持部材の外周面に、濾材の内周面との隙間が一定の間隔となるようにテーパを設ける。これにより、濾材の一方の端面側から支持部材の挿入させるのが容易になるとともに、濾材の内周面と支持部材の外周面との間隔を狭くすることができるので、支持部材は、濾材に外圧が付与された場合であっても、濾材を大きく変形させることなく、その内側から濾材を支持することができる。
【0018】
さらに、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、支持部材は、フィルタエレメントの端面部が外部の圧力によって変形したときに、フィルタエレメントの内部に挿入された支持部材の先端部によって、フィルタエレメントの端面部を内部から支持する。これにより、フィルタエレメントに付与された圧力によって端面部が撓むなどして変形した場合でも、支持部材によって端面部が支持されるので、フィルタエレメントの端面部の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る流体フィルタの外観を示す斜視図である。
図2】上記流体フィルタの分解斜視図である。
図3図1に示した流体フィルタのA-A’断面図である。
図4】上記流体フィルタが収容される作動油タンクのリターンフィルタ収容部を示す図である。
図5】上記流体フィルタを構成するエレメントの分解斜視図である。
図6】上記エレメントの下部プレートの形状を示す図であり、(a)は下部プレートの平面図、(b)は(a)に示すC-C’線における断面図である。
図7】上記流体フィルタを構成するチューブの分解斜視図である。
図8】上記チューブのBーB’断面図である。
図9】上記チューブが有するハンドルの外観を示す斜視図である。
図10】上記流体フィルタを構成するブラケットの外観を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
図11】上記ブラケットに形成された位置決め凸部と、上記エレメントに形成された位置決め凹部とが、係合する過程を示す図である。
図12】上記チューブに形成された係合凸部と、上記エレメントに形成されたガイド片とが、係合する過程を示す図である。
図13】上記エレメントの下部プレートの他の形状を示す図であり、(a)は下部プレートの平面図、(b)は(a)に示すD-D’線における断面図である。
図14】上記チューブに形成された係合凸部と、図13に示した下部プレートに形成されたガイド片とが、係合する過程を示す図である。
図15】上記チューブに形成された係合凸部により、図13に示した下部プレートが上昇する過程を示す図である。
図16】上記エレメントの上部プレートにガイド片を形成し、チューブのハンドル部に係合凸部を形成した場合を例示する図である。
図17】上記エレメントの上部プレート及びチューブに位置決め凹部及び位置決め凸部を形成した場合を例示する図である。
図18】上記エレメントを構成する下部プレートの他の形状を示す図である。
図19】上記チューブ及びエレメントの他の形状を示す図であり、(a)はチューブの外観図であり、(b)は(a)のチューブにエレメントが固定された状態を示す図であり、(c)は(b)に示したチューブとエレメントとの係合状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の流体フィルタ1の外観を示す斜視図、図2は流体フィルタ1の主要な構成を示す分解斜視図、図3は、図1に示したA-A’線における断面図である。
【0021】
流体フィルタ1は、図2に示すように、主にエレメント10と、円柱状の外観を有するチューブ20と、ブラケット30とによって構成されている。エレメント10は、戻り配管から流入した作動油を濾過する中空円柱形状の濾材11と、濾材11を上下から挟むように配置された上部プレート12及び下部プレート13とを有している。下部プレート13の底部には下方に延出する円筒部133が形成されており、円筒部133の外周面には、互いに同形状を有する複数(本実施形態では7つ)の誘導凸部134が所定の間隔で半径方向に突出形成されている。また、隣り合った2つの誘導凸部134の間に形成される位置決め凹部135は、ブラケット30の内部に形成されている位置決め凸部303と係合するようになっている。
【0022】
チューブ20は、流体フィルタ1の中心軸Cの方向に、複数の平板円環状の部材を所定の間隔おいて配設した格子状の部材であるチューブ本体21を有している。チューブ本体21は、エレメント10内の中空部に挿入され、後述する流入口57から流入する作動油の圧力によってエレメント10が中心軸Cに対してぐらつかないように内側から支持する。また、ハンドル22は、作動油の圧力によってエレメント10の上部プレート12が変形した(より具体的には、下方へ撓んだ)場合、内側から上部プレート12を支持する。チューブ本体21の下方には、3つの係合凸部211(図2においては2つのみ図示)が形成されており、下部プレート13の円筒部133の内周面に形成されているガイド片1
31(図5参照)と係合するようになっている。この係合凸部211とガイド片131とを係合させることで、エレメント10をチューブ20に固定することができる。チューブ本体21の底部には、複数の係止片212が下方に向かって突出形成されており、ブラケット30に形成されている段差S(図3において、係止片212が引っ掛かっている部分)と係合するようになっている。これにより、チューブ20を、中心軸Cを中心として回動可能としつつ、ブラケット30に固定することができる。
【0023】
図1図3に示した流体フィルタ1は、図4に示すように、産業用油圧機器の油圧回路を循環する作動油を蓄える作動油タンク50内に設けられたリターンフィルタ収容部55に収容される。作動油タンク50には、上述した油圧回路を循環させる作動油が貯留されており、貯留された作動油は、塵埃や鉄粉などのゴミが油圧回路へ流出するのを防ぐため、サクションフィルタ52によって濾過されたのち、作動油タンク50の底面に設けられた流出口51から油圧回路へ供給される。サクションフィルタ52は、作動油タンク50の上面に設けられたサクションフィルタ挿入口53から作動油タンク50内の流出口51に設置される。サクションフィルタ挿入口53は、通常は蓋54によって塞がれており、蓋54は複数のボルトBによって固定されている。
【0024】
リターンフィルタ収容部55は、作動油タンク50内において複数の壁によって区画形成され、作動油タンク50の空間から分離されている。リターンフィルタ収容部55の底面には、円筒状のリターンフィルタ出口56が穿設され、これによりリターンフィルタ収容部55と作動油タンク50とが連通する。リターンフィルタ出口56の内周面には雌ねじが形成されており、流体フィルタ1を構成するブラケット30の底面に設けられた突出部31(図1参照)の外周面に形成された雄ねじと螺合するようになっている。したがって、リターンフィルタ出口56に、流体フィルタ1を構成するブラケット30の突出部31を螺合して締結することで、流体フィルタ1がリターンフィルタ収容部55の内部に固定される。このとき、リターンフィルタ収容部55の底面と、ブラケット30の底面との隙間が、図3に示すOリング32によって封止される。
【0025】
また、リターンフィルタ収容部55には、油圧回路内を巡って戻ってきた作動油を受け入れるための流入口57が設けられている。これにより流体フィルタ1は、流入口57から流入した作動油を濾材11によって濾過し、濾過した作動油をブラケット30の突出部31の先端に設けられた排出孔301(図10(a)参照)から排出する。排出孔301から排出された作動油は、リターンフィルタ出口56から作動油タンク50に戻される。流体フィルタ1のリターンフィルタ収容部55内への設置や、濾過機能が低下したエレメント10の交換は、リターンフィルタ収容部55の上面に設けられたリターンフィルタ挿入口58を通して行われる。リターンフィルタ挿入口58は、通常は蓋59によって塞がれており、蓋59は複数のボルトBによって固定される。
【0026】
濾過機能が低下したエレメント10を交換する場合は、まずチューブ20のハンドル22を反時計回りに回すと、チューブ本体21の係合凸部211と下部プレート13のガイド片131との係合が解除され、エレメント10をチューブ20及びブラケット30から引き抜くことができる。そして、新たなエレメント10をチューブ20に差し込むと、自重によりエレメント10の円筒部133に形成された複数の位置決め凹部135(隣り合う誘導凸部134の間に形成された領域)のうちいずれかが、ブラケット30の位置決め凸部303と係合し、円筒部133がブラケット30の内部に挿入する。また、位置決め凹部135と位置決め凸部303とが係合することで、ブラケット30に対して、中心軸Cを中心としたエレメント10の回動が阻止される。この状態でハンドル22を時計回りに回すと、チューブ本体21の係合凸部211が下部プレート13のガイド片131と合係合して、エレメント10がチューブ20に固定される。
【0027】
次に、上述したエレメント10、チューブ20及びブラケット30の各構成について詳しく説明する。まず、図5及び図6を参照して、エレメント10の構成について説明する。図5はエレメント10の分解斜視図を示しており、濾材11については図示を簡略化するために中空円柱の図形で表している。図6は、下部プレート13の形状を表す図であり、図6(a)は、下部プレート13を下方から見上げたときの平面図を示し、図6(b)は、図6(a)に示すC-C’線における断面を示している。
【0028】
濾材11は、板状の濾紙を所定の幅で菊花状に折り畳んで中空円柱状の形状にしたものであり、濾材11の上方の端面(以下、「上面」ともいう。)における内周の直径D1は、下方の端面(以下、「下面」ともいう。)における内周の直径D2よりも小さくなっている。したがって、濾材11の内周面には、下面側から上面側に向かって内周の直径が小さくなっていくテーパが付与されている。濾材11の上面には上部プレート12が取り付けられ、上部プレート12の上面に設けられた円形の凹部DPに上部ガスケット14が嵌入される。上部ガスケット14は、上部プレート12とチューブ20のハンドル22との隙間を封止する(図3参照)。
【0029】
濾材11の下面には下部プレート13が取り付けられている。下部プレート13の中央部には開口部LOPが設けられ、下部プレート13の下面において、開口部LOPの周縁に沿って、円筒部133が下方に向かって延出形成されている。円筒部133の内径は、開口部LOPの直径よりも広くなっており、これにより、開口部LOPと円筒部133の接続部分には、図6(b)に示すように段差部LDが形成される。円筒部133の内周面には、周方向の全周に亘って3つのガイド片131a,131b,131c(図6(a)の網掛けで示す部分)が半径方向内側に向かって突出形成されている。以下、ガイド片131a,131b,131cを区別することなく参照する場合は、単にガイド片131と記す。
【0030】
ガイド片131a,131b,131cは、図6(a)に示すように、円筒部133の周方向において同じ長さを有し、等間隔に突出形成された線条の部材であり、例えば、図6(b)に示すガイド片131cのように、水平方向に対して右上がりに傾斜(換言すると、中心軸Cの方向において上面に向かって傾斜)しており、ガイド片131cの左端(係合凸部211との係合が開始される側)は、係合凸部211がガイド片131内へ進入し易くするために、テーパTPが設けられている。
【0031】
円筒部133の外周面には、同一形状を有する7つの誘導凸部134が全周に亘って一定の間隔で形成されており、隣り合う2つの誘導凸部134の間に形成される領域が位置決め凹部135(図11(a)のハッチング参照)となる。したがって、円筒部133の外周面の全周に亘って、7つの位置決め凹部135が一定の間隔で形成されることになる。また、詳しくは後述するが、誘導凸部134の傾斜部分は、下部プレート13がブラケット30に挿入されるときに、ブラケット30の位置決め凸部303を位置決め凹部135へ導く役割を果たす。
【0032】
下部プレート13の下面は、円筒部133がブラケット30に挿入されたときにブラケット30と当接する当接面LCS(図6(a),(b)参照)となる。当接面LCSには、下部プレート13とブラケット30との隙間を封止する下部ガスケット15を嵌入するためのガスケット溝136が形成されている。下部ガスケット15は、幅Wgを有する円環状の弾性部材からなり、円周方向において等間隔に、半径方向外側に向かって突出する楔形の変形部VPが7つ設けられている。ガスケット溝136は、下部ガスケット15の形状に合わせて形成されており、したがってガスケット溝136には、下部ガスケット15の各変形部VPに対応する位置に、変形部VPと同じ形状の変形部LVPが形成されている。この変形部LVPの位置において、ガスケット溝136の内周側壁面及び外周側壁
面は、いずれも外周側へ楔形に突出して形成されるため、例えば、変形部VPを持たない単なる円環状のガスケットを、ガスケット溝136へ嵌入するのは非常に困難となる。なお、ガスケット溝136は必ずしも形成する必要はなく、例えば下部プレート13の当接面LCSに直接、下部ガスケット15を接着してもよい。
【0033】
次に、図7図9を参照して、チューブ20の構成について説明する。図7は、チューブ20の分解斜視図であり、図8は、図3に示したB-B’線における断面図である。但し、チューブ本体21の部分だけを図示し、下部プレート13について図示を省略している。また、図9は、チューブ20を構成するハンドルの外観を示す斜視図である。図7に示すように、チューブ20は、チューブ本体21と、ハンドル22とによって構成されている。チューブ本体21は、多数の平板円環状のリング部材RGを所定の間隔をおいて配設した格子状の部材である。これらリング部材RGのうち、チューブ本体21の中心軸(図示略)の方向において最下部に位置するリング部材RGEの下側には、図8に示すように、係合凸部211a,211b,211cが、チューブ本体21の半径方向外側へ向かって突出形成されている。係合凸部211a,211b,211cは、チューブ本体20の周方向において120゜間隔で形成されている。なお、図8において符号Oはチューブ本体21の中心を示している。
【0034】
図7に示すように、チューブ本体21の下端部LEから複数の係止片212が、チューブ本体21の周方向に等間隔で、下方に向かって突出形成されており、各係止片212の間には、保持片213が突出形成されている。係止片212は、ブラケット30の内部に形成された段差S(図2参照)と係合し、チューブ本体21をブラケット30に係止する。これにより、チューブ本体21は、ブラケット30から容易に抜けることがなく、かつ周方向への回転が可能となる。保持片213は、ブラケット30の内周壁面PW(図10(a),(b)参照)に当接し、中心軸C(図2参照)に対するチューブ本体21のぐらつきを抑制する。
【0035】
ハンドル22には、係止爪ECが複数設けられており、これによりハンドル22がチューブ本体21の上端部UEに係止され、ハンドル22を回すとチューブ本体21が中心軸Cを中心として回転する。また、ハンドル22に対して時計回りの方向に所定値以上のトルクが付与された場合はハンドル22が空回りして、それ以上チューブ本体21が時計回りの方向に回転しないようになっている。図9に示すように、ハンドル22の頂部にはつまみ23が設けられており、前述した係合凸部211とガイド片131とを係合させるとき、又は係合を解くときに、作業者がチューブ本体21を回動させ易くなるようにしている。
【0036】
次に、図10を参照して、ブラケット30の構成について説明する。図10(a)は、上方からブラケット30を見下ろしたときの平面図であり、図10(b)は、ブラケット30の斜視図である。前述したように、ブラケット30の底面中心部からは、円柱状の突出部31が形成されており、濾材11により濾過され、チューブ本体21内へ流入した作動油を流出させるための排出孔301が、突出部31に設けられている。ブラケット30の上面は、下部プレート13の当接面LCS(図6参照)と当接する当接面BCSになっており、当接面BCSには、下部ガスケット15(図5参照)が挿入されるガスケット溝304が設けられている。
【0037】
このガスケット溝304の形状は、下部プレート13のガスケット溝136の形状と面対称となっており、ガスケット溝304において、ガスケット溝136に設けられた変形部LVPに対向する位置には変形部BVPが設けられている。また、ガスケット溝304には、下部プレート13のガスケット溝136に嵌入された状態の下部ガスケット15が挿入される。なお、下部プレート13のガスケット溝136の溝の深さをd1、ブラケッ
ト30のガスケット溝304の溝の深さをd2とした場合、下部ガスケット15の幅Wg(図5参照)は、深さd1とd2とを足した長さL(=d1+d2)よりも広くなっている。
【0038】
ブラケット30の開口部BOPの内側には、内周壁33が立設されており、内周壁33の外周面と、開口部BOPの内周面とに挟まれた領域(図10(a)のハッチングで示す領域)が、下部プレート13の円筒部133が挿入される挿入溝302となる。挿入溝302の中には位置決め凸部303が1つ設けられており、前述した7つの位置決め凹部135のうちいずれかと係合する。内周壁33の内周側には、チューブ本体21の下端部から突出形成された保持片213(図7参照)と接触する内周壁面PWが形成されている。また、内周壁面PWの下端は、チューブ本体21の下端部から突出形成された係止片212と係合する段差S(図2参照)に接続している。
【0039】
次に、図11を参照して、エレメント10をチューブ20及びブラケット30に装着する際に、エレメント10の(より詳細には、円筒部133の外周面に形成された)位置決め凹部135が、ブラケット30の位置決め凸部303と係合する過程について説明する。図11(a)~図11(d)は、下部プレート13の円筒部133を、展開した状態で示しており、かつ、位置決め凸部303の背後から円筒部133の外周面に形成された誘導凸部134を見た状態を示している。
【0040】
図11(a)に示すように、位置決め凸部303の形状は、先端が山形となっており、山形の左右から各々垂直壁が下方へ延び、さらに傾斜面へと転じている。誘導凸部134の形状は、円筒部133の周縁近傍を頂点として左右へ緩斜面が広がり、それぞれの緩斜面が急斜面に転じた後、垂直壁となり下部プレート13の当接面LCSまで続いている。誘導凸部134の頂部から右側の緩斜面、急斜面及び垂直壁と、当該誘導凸部134の右隣りにある誘導凸部134の頂部から左側の緩斜面、急斜面及び垂直壁とによって、位置決め凹部135の形状が形成される(ハッチング部分を参照)。位置決め凹部135の垂直壁部分の幅は、位置決め凸部303の垂直に突出した部分を受け入れることができる幅になっている。また、位置決め凹部135の急斜面の傾斜角度は、位置決め凸部303の急斜面の傾斜角度と一致する。なお、位置決め凹部135の緩斜面の部分は、位置決め凸部303の先端部分を上述した急斜面へ導く役割を果たす。
【0041】
エレメント10の下部プレート13に設けられた開口部LOPに、チューブ20の先端を挿入し、エレメント10をブラケット30側へ近づけていったときに、例えば、図11(a)に示すように、ブラケット30の位置決め凸部303の先端が、図11(a)の中央に示した誘導凸部134の頂部よりも右側の緩斜面に当接したとする。この場合、エレメント10は、自重により上述した緩斜面に沿って徐々に降下し、かつ時計回り(図11(a)中の矢印の方向)に回動し始める。したがって、位置決め凸部303は、図11(a)中、ハッチングで示す位置決め凹部135と係合することになる。
【0042】
そして、エレメント10が図11(a)の状態から時計回りの方向に回動していくと、図11(b)に示すように、位置決め凸部303の先端部の左側傾斜面と、誘導凸部134の急斜面とが当接し、エレメント10は、急斜面に沿って回動速度と降下速度とを増す。さらにエレメント10が回動して、図11(c)に示すように、位置決め凸部303の垂直に突出した部分が、隣り合う誘導凸部134の垂直壁に挟まれた領域の位置まで達すると、エレメント10の回動が阻止されて、下方へのみ移動して行く。このとき、下部プレート13の当接面LCSに形成されたガスケット溝136の変形部LVP及び下部ガスケット15における変形部VPと、ブラケット30の当接面BCSに形成されたガスケット溝304の変形部BVPとが対向する(すなわち、周方向における位置が一致する)ことになる。
【0043】
そして、図11(d)に示すように、下部プレート13の当接面LCS及びブラケット30の当接面BCSは、周方向における相対位置を保ったまま、エレメント10は降下する(換言すると、エレメント10とチューブ20とが中心軸Cに沿って相対的に移動する)。これにより、下部プレート13のガスケット溝136に嵌入されている下部ガスケット15が、ブラケット30のガスケット溝304に挿入されて、エレメント10の降下が停止する。ここで、前述したように下部ガスケット15の幅Wgは、ガスケット溝136及びガスケット溝304の深さを足した長さLよりも広くなっている。したがって、図11(d)に示した、エレメント10の降下が停止した状態において、下部プレート13の当接面LCSは、幅Wgと長さLとの差分だけ、ブラケット30の当接面BCSから浮いた状態になっている。
【0044】
なお、上述した例では、位置決め凸部303と位置決め凹部135とによって、下部プレート13の当接面LCSの表面から突出する下部ガスケット15の変形部VPと、ブラケット30の当接面BCSに形成されたガスケット溝304の変形部BVPとの位置合わせが行われてから、その状態を維持したままエレメント10が中心軸Cに沿って降下するようにガイドしていた。これに限らず、例えば、ブラケット30の当接面BCSに、上方へ向かって突出する棒状のセンサ(例えば圧力センサ)を設け、下部プレート13の当接面LCSに、上述したセンサを受け入れる挿入口を設けた場合、センサと挿入口との位置決めを行った後、センサが挿入口へ挿入されるように、エレメント10を降下させることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、図10(b)及び図6(a)に示したように、1つの位置決め凸部303に対して7つの誘導凸部134(位置決め凹部135ともいえる)を設け、位置決め凹部135を連続して等間隔(換言すると均等の角度間隔)に形成している。このため、エレメント10をチューブ20に装着する際、エレメント10の周方向における位置が如何なる位置であったとしても、自重によりいずれかの位置決め凹部135が位置決め凸部303に係合することとなる。なお、円筒部133の外周面に形成する位置決め凹部135の数は1つであってもよい。また、ブラケット30の挿入溝302内に形成する係合凸部の数は複数であってもよい。この場合、複数の係合凸部は、各々、複数の係合凹部のうち、いずれかと相対する位置に形成する必要があることはいうまでもない。
【0046】
次に、図12を参照して、ハンドル22を時計回りに回動させることで、チューブ本体21に形成された係合凸部211が、エレメント10の(より詳細には円筒部133の内周面に形成された)ガイド片131に係合する過程について説明する。ここで、図12(a)~(e)は、係合凸部211bがガイド片131aに係合する過程を示す図であり、これらの図における円筒部133の内周面は、展開した状態を図示している。また、図12(a)~(e)はチューブ20の回動に伴う係合凸部211bの動きを図示しているが、他の係合凸部211a,211cについても同様の動きをする。
【0047】
まず、図11(c)に示したように、エレメント10とチューブ20との周方向における位置決めが行われた後、エレメント10が降下する過程で、例えば図12(a)に示すように、チューブ20の係合凸部211bがガイド片131cの下面に当接すると、エレメント10の降下はその位置で停止する。この状態でハンドル22を時計回りに回すと、チューブ本体21も時計回りに回動し、係合凸部211bは図12(a)において右側(矢印の方向)へ移動して行く。ここで、チューブ本体20は、係止片212によってブラケット30の段差S(図3参照)に係止されているため中心軸Cの方向に動くことはなく、エレメント10がガイド片131cの傾斜角度に応じて少しずつ降下(ブラケット30に接近)していく。
【0048】
そして係合凸部211bがガイド片131cを通過すると、図12(b)に示すように、ガイド片131cが係合凸部211bの支持から脱することで、エレメント10が更に降下して、下部プレート13の当接面LCSの表面から突出した下部ガスケット15が、ブラケット30のガスケット溝304へ挿入される。この状態から引き続き係合凸部211bが右側へ移動し続けると、図12(c)に示すように、やがてガイド片131aに到達し、係合凸部211bは、ガイド片131aの上面に沿って移動することになる。
【0049】
そして、図12(d)に示すように、係合凸部211bがガイド片131aの上面を移動するにつれて、エレメント10は、ガイド片131aの傾斜角度に応じて少しずつ降下(ブラケット30に接近)していき、ガスケット溝136とガスケット溝304との間に介在する下部ガスケット15が徐々に圧縮されていく。これに従ってハンドル22を回すために要するトルクが増えていき、ハンドル22に所定値以上のトルクが付与されると、ハンドル22が空回りして図12(e)に示すように係合凸部211bの移動が停止し、エレメント10が固定される。
【0050】
なお、下部プレート13がブラケット30に接近したことによって下部ガスケット15が圧縮・変形し、その結果、下部プレート13とブラケット30との隙間を十分に封止できるのであれば、必ずしも下部プレート13の当接面LCSとブラケット30の当接面BCSとが当接する必要はない。また、ハンドル22に対して所定値以上のトルクが付与されるとハンドル22が空回りするため、係合凸部211やガイド片131を破損させることがない。
【0051】
上述したように、本実施形態では、ハンドル22に所定値のトルクが付与されるまで、チューブ20を回動させることで(チューブ20を1回転させるまでもなく)、エレメント10を装着することができるため、エレメント10の交換作業を容易にすることができる。また、本実施形態では、図6(a)及び図8に示したように、ガイド片131及び係合凸部211を、複数かつ等間隔(換言すると均等の角度間隔)で形成しているため、螺合させる係合凸部211と螺合凹部132とを任意に対応させることができる。
【0052】
次に、図13図15を参照して、上述したガイド片131とは異なる形状を有するガイド片151について説明する。なお、ガイド片151以外の構成については、上述した流体フィルタ1と同じ構成になっているものとする。図13は、ガイド片151を備えた下部プレート13’の形状を表す図であり、図13(a)は、下部プレート13’を下方から見上げたときの平面図を示し、図13(b)は、図13(a)に示すD-D’線における断面を示している。なお、図13において図6と同様の構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。図14は、ハンドル22を時計回りに回動させることで、チューブ本体21に形成された係合凸部211が、エレメント10の(より詳細には円筒部133の内周面に形成された)ガイド片151に係合する過程を示す図である。また、図15は、ハンドル22を反時計回りに回動させることで、固定されていたエレメント10が、チューブ20及びブラケット30から離脱する過程を示す図である。
【0053】
ガイド片151は、図13(a)に示すように、円筒部133の内周面に、周方向の全周に亘って3カ所に、半径方向内側に向かって突出形成されている。3つのガイド片151は、円筒部133の周方向において同じ長さで同じ形状を有しており、かつ周方向において等間隔に突出形成されている。また、各ガイド片151は、図13(b)に示すように、上面がなだらかな傾斜面となっており、下面が上面よりも角度が急な傾斜面となっている。以下、上面を係合面ESとも称し、下面を離脱面WSとも称する。また、ガイド片151は、中心軸Cの方向において、段差部LDから円筒部133の下方端に至るまで途切れることなく形成されている。
【0054】
次に、図14を参照して、ハンドル22を時計回りに回動させることで、チューブ本体21に形成された係合凸部211が、エレメント10の(より詳細には円筒部133の内周面に形成された)ガイド片151に係合する過程について説明する。ここで、図14(a)~(e)は、係合凸部211bがガイド片151に係合する過程を示す図であり、これらの図における円筒部133の内周面は、展開した状態を図示している。また、図14(a)~(e)はチューブ20の回動に伴う係合凸部211bの動きを図示しているが、他の係合凸部211a,211cについても同様の動きをする。
【0055】
図11(c)に示したように、エレメント10とブラケット30との周方向における位置決めが行われた後、エレメント10が降下する過程で、例えば図14(a)に示すように、チューブ20の係合凸部211bがガイド片151の離脱面WSに当接すると、エレメント10の降下はその位置で停止する。この状態でハンドル22を時計回りに回すと、チューブ本体21も時計回りに回動し、係合凸部211bは図14(a)において右側(矢印の方向)へ移動して行く。これにより、エレメント10はガイド片151に形成された離脱面WSの傾斜角度に応じて降下(ブラケット30に接近)していく。
【0056】
そして係合凸部211bがガイド片151の離脱面WSを通過すると、図14(b)に示すように、ガイド片151は係合凸部211bの支持から脱することで、エレメント10が更に降下して、下部プレート13’の当接面LCSの表面から突出した下部ガスケット15が、ブラケット30のガスケット溝304へ挿入される。この状態から引き続き係合凸部211bが右側へ移動し続けると、図14(c)に示すように、やがて隣りのガイド片151に到達し、係合凸部211bは、隣りのガイド片151の係合面ES上面に沿って移動することになる。
【0057】
そして、図14(d)に示すように、係合凸部211bがガイド片151の係合面ESを移動するにつれて、エレメント10は、係合面ESの傾斜角度に応じて少しずつ降下(ブラケット30に接近)していき、ガスケット溝136とガスケット溝304との間に介在する下部ガスケット15が徐々に圧縮されていく。これに従ってハンドル22を回すために要するトルクが増えていき、ハンドル22に所定値以上のトルクが付与されると、ハンドル22が空回りして図14(e)に示すように係合凸部211bの移動が停止し、エレメント10が固定される。
【0058】
次に、図15を参照して、ハンドル22を反時計回りに回動させることで、チューブ20及びブラケット30に固定されていたエレメント10が、チューブ20及びブラケット30から離脱する過程について説明する。ここで、図15(a)~(e)は、係合凸部211bがあるガイド片151との係合を脱して、隣りのガイド片151の離脱面WSに沿って移動する様子を示す図であり、これらの図における円筒部133の内周面は、展開した状態を図示している。また、図15(a)~(e)はチューブ20の回動に伴う係合凸部211bの動きを図示しているが、他の係合凸部211a,211cについても同様の動きをする。
【0059】
まず、図15(a)に示すように、チューブ20の係合凸部211bがガイド片151の係合面ESと係合している状態から、ハンドル22が反時計回りに回されると、チューブ本体21も反時計回りに回動し、係合凸部211bは図15(a)において左側(矢印の方向)へ移動して行く。そして、係合凸部211bが係合面ESを左側へ移動するにつれて、エレメント10を下方へ押さえつける力が弱まっていき、係合凸部211bが係合面ESを通過し、やがて図15(c)に示すように隣りのガイド片151へ到達する。この状態からハンドル22をさらに反時計回りに回すと、図15(d)に示すように係合凸部211bは、隣りのガイド片151の離脱面WSに沿って移動する。これにより、係合凸部211bがガイド片151の離脱面WSを移動するにつれて、離脱面WSの傾斜角度
に応じてエレメント10は上昇(ブラケット30から離間)していく。
【0060】
図15(d)に示す状態からさらに係合凸部211bが左側に移動すると、図15(e)に示すように、円筒部133の下方端まで続いているガイド片151の垂直部分に当接し、これにより、ハンドル22の反時計回り方向の回転が阻止される。ここで、ガイド片151の離脱面WSの傾斜角度は、係合面ESの傾斜角度よりも大きくなっている。従って、係合凸部211bがガイド片151の係合面ESに沿って移動するときにエレメント10が降下する距離よりも、係合凸部211bがガイド片151の離脱面WSに沿って移動するときにエレメント10が上昇する距離の方が大きくなる。これにより、エレメント10を取り外すために、ハンドル22を反時計回りに回すと、エレメント10が大きく上昇することとなり、エレメント10の係合が解けたことを明確に認識することができる。
【0061】
上記の流体フィルタ1においては、以下に記す各種の変更が可能であるとともに、各種の変更を、齟齬を来さない範囲で適宜組み合わせることも可能である。
(1)上記の流体フィルタ1において、チューブ本体21に形成する係合凸部211の数と、ガイド片131又は151の数とを、各々3つずつとしたが、形成する数は、1つであってもよいし3つ以外の複数であってもよい。また、係合凸部211の数と、ガイド片131又は151の数とは、同数である必要はなく、異なる数であってもよい。さらに、係合凸部211を複数設ける場合、各係合凸部211の周方向における間隔を、等間隔にする必要はない。同様に、ガイド片131又は151を複数設ける場合、各ガイド片の周方向における間隔を、等間隔にする必要はない。
【0062】
(2)ガイド片131又は151を複数設ける場合において、図6(a)及び図13(a)に示したように、全てのガイド片の周方向における長さを同じ長さに揃える必要はなく、いずれか1つ、又はいずれか複数のガイド片の長さを、他のガイド片の長さと異ならせてもよい。さらに、ガイド片の長さが全て異なっていてもよい(すなわち、同じ長さのガイド片が存在しない)。
【0063】
(3)上記の流体フィルタ1では、ガイド片131又は151を円筒部133の内周面に形成し、係合凸部211をチューブ本体21に形成していたが、ガイド片131又は151、及び、係合凸部211を形成する場所は、これらに限定されるものではない。例えば、図16(a)に示すように、ガイド片131と同様のガイド片131’を、上部プレート12’の内周面に形成してもよい。また、この場合、係合凸部211’を、図16(b)に示すように、ハンドル22’において、上部プレート12’の内周面と対向する面に形成するとよい。
【0064】
(4)上記の流体フィルタ1では、ブラケット30の挿入口302(図10(a)参照)の内部に位置決め凸部303を形成し、エレメント10の円筒部133の外周面に誘導凸部134(位置決め凹部135ともいえる)を形成していたが、位置決め凸部303及び誘導凸部134(位置決め凹部135)を形成する場所は、これらに限定されるものではない。例えば、図17(a)に示すように、チューブ本体21’の上部に挿入溝302’を形成し、この挿入溝302’の内部に位置決め凸部303’を形成してもよい。また、この場合、上部プレート12”の下面に挿入溝302’へ挿入される円筒部133’を突出形成し、この円筒部133’の外周面に誘導凸部134’を形成するとよい。なお、隣り合う誘導凸部134’の間に形成される領域(ハッチング部参照)が、位置決め凹部135’となる。
【0065】
(5)上記の流体フィルタ1では、円筒部133の外周面に誘導凸部134(位置決め凹部135)を形成するとともに、円筒部133の内周面にガイド片131又は151を形成していたが、円筒部133を有さない構成としてもよい。例えば、図18に示すように
下部プレート13”の開口部LOP’の周囲に、当接面LCS’から下方へ突出する7つの誘導凸部134”を等間隔で形成し、各誘導凸部134”の内周面に、ガイド片151’を形成するようにしてもよい。
【0066】
(6)上記の流体フィルタ1は、チューブ本体21を回動させることによってエレメント10を固定していたが、これとは逆に、エレメントを回転させることで、エレメントをチューブ本体に固定するようにしてもよい。例えば、図19(a)に示すように、チューブ本体61の格子状の部材のうち、円周方向の部材CCMをらせん状に形成する。一方、エレメント60の下部プレート63の内周面に、部材CCMと螺合する螺合凹部SCRを形成する。これにより、エレメント60の下部プレート63に形成された螺合凹部SCRを、チューブ本体61のらせん状の部材CCMに螺合させることで、エレメント60を回転させることにより、チューブ本体61に対する着脱が可能となる。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、上述した実施形態では、流体フィルタとして油圧回路中の作動油を濾過するオイルフィルタ(リターンフィルタ)に本発明を適用した場合を例示したが、これに限定されるものではなく、燃料等の他の流体の濾過を行うフィルタに適用しても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 流体フィルタ
10 エレメント
11 濾材
15 下部ガスケット
20 チューブ
22 ハンドル
30 ブラケット
131,151 ガイド片
133 円筒部
136,304 ガスケット溝
135 位置決め凹部
211,211a,211b,211c 係合凸部
301 排出口
302 挿入溝
303 位置決め凸部
LOP 開口部
LCS,BCS 当接面
VP,LVP,BVP 変形部
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