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▶ 株式会社日本スペリア社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019383
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】はんだ及びはんだ接合体
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20220120BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
B23K35/26 310A
B23K35/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123185
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高周波が流れても優れた特性を有するため、高速で情報を処理する半導体装置の使用材料に適しているはんだと、はんだ接合体を提供する。
【解決手段】はんだ合金に、金属粒子が分散されているはんだであり、前記金属粒子はCu‐Zr合金および/またはSn‐Zr合金であるはんだとはんだ接合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ合金中に、金属粒子が分散されているはんだであって、前記金属粒子はCu―Zn合金および/またはSn-Zn合金であるはんだ。
【請求項2】
前記はんだ合金がSnを主成分とするはんだ合金である、請求項1のはんだ。
【請求項3】
請求項1また請求項2に記載のはんだを用いてはんだ付けをすることを特徴とするはんだ接合体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用の高周波特性を有したはんだと、そのはんだを用いた接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の高速通信システムとして期待されている第5世代移動通信システム(以下5G)は、これまでの通信システムと比較して、(1)高速大容量(2)高信頼低遅延(3)多数同時接続といった3つの機能が飛躍的に向上する。この5Gの普及に伴い、VR,AI,自動運転といった関連技術の開発が進み、経済の成長や産業の新陳代謝が促進されると予想されている。さらに5Gの活用によって、リアルタイム通訳、完全自動運転の実現など、人々の生活への変化が予想される。日本では2019年に5Gの試験サービスが始まっており、2020年には通信各社による5Gのサービスが開始された。
【0003】
5Gでは、通信スピードをより高速にするため、これまでの世代より大量のデータ送信に適した高い周波数帯を用いる。しかし、高周波数帯では、電波の直進性も高くなることから、携帯電話基地局の影では電波が届きにくくなる。それをカバーするには多数の携帯電話基地局を数十メートル単位で設置する必要があり、このような携帯端末や基地局には、大量のデータを高速処理することが要求されている。
【0004】
また、各自動車メーカーが技術開発を進めている自動運転では、完全自動運転を実現するためには、車外からの情報を受信し、大量のデータを高速処理する必要がある。例えば、マップ情報にアクセスして導き出される回答からは、正確な車両の位置情報や刻々と変わる周囲の状況を、さらに道路に取り付けられた機器から発信される情報など、大量のデータを常時収集し、高速で処理して自動車の動きを制御して、安全性を確保していかなければならない。そのためには、大容量と低遅延の無線システムである5Gの活用と、大量のデータを高速処理が可能な半導体装置が欠かせない。
【0005】
上記のように大量のデータを高速処理するには、高周波で情報を処理する半導体装置が不可欠あり、さらにその半導体装置に使用される材料にも高周波特性に優れた材料が要求されている。
【0006】
高周波で情報を処理する半導体装置に使用される材料のなかでも、半導体と基板を接合しているはんだやその接合体に高周波特性が求められている。
【0007】
高周波で情報処理する半導体装置で発生する現象の一つに表皮効果がある。表皮効果とは交流電流が導体を流れるとき、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる現象をいう。表皮効果によって周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するので、導体の抵抗は高くなる。それは高周波だけでなく大電流を扱う際にも重要となる。
【0008】
そのような表皮効果は、通過させようとする交流電力から電磁誘導によって発生する磁界と、それによって発生する誘導起電力と誘導電流により導体内部で渦電流が発生することで現れる。渦電流の向きは導体の中心部分では電流を阻止する方向に、導体の表面付近では電流を扇動する方向となるため、導体の表面付近にのみ電流が流れるという表皮効果が発生する。半導体装置に使用するはんだ接合体も、高周波を流した場合に表皮効果が発生し、表面付近にのみ電流がながれるため抵抗となって、高周波信号の劣化が懸念されている。
【0009】
これまでもはんだ合金には、電気抵抗の上昇を抑制する技術や高電流で使用可能となる合金の技術がみられた。
【0010】
例えば、特許文献1では高温エージング後、被接合体とはんだ合金間の接合部において電気抵抗率が上昇することを抑制するものである。
【0011】
また、特許文献2では、高温高電流密度環境で発生するエレクトロマイグレーション起因のはんだ継手の破断を抑制するものである。
【0012】
しかし、それらの文献には、高周波が原因で発生する表皮効果に着目したものではなく、それとは別で各々の目的とする効果を得るため、適切な材料と含有範囲を選択してはんだ合金の組成としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2019―155476
【特許文献2】特許第6586883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
はんだ接合体に高周波が流れても表皮効果による抵抗が低減される高周波特性の優れたはんだとはんだ接合体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行なってきた。そして、はんだにジルコニウム(Zr)を含有させると、はんだ接合体に優れた高周波特性が得られることを見出した。
【0016】
またそのようなジルコニウムの特性を、はんだ接合体内で活かすには、はんだ接合体の内部に均一にジルコニウムを分散する必要があることがわかった。ただし、ジルコニウム粒子をSnが主成分となる合金、例えばSn-Ag-Cu系やSn‐Cu‐Ni系のはんだ合金に含有しても、はんだ合金とジルコニウムの比重が違うため分離する。
【0017】
そこで、ジルコニウムを単体ではなく、Sn‐Zr合金、Cu‐Zr合金の粒子にして比重を調整することで、合金に含有したときの分離をなくし、はんだ内部に均一に分散させる。そのようなはんだを用いたはんだ接合体は、高周波特性の優れたはんだ合金となる。
【0018】
さらに、ジルコニウムには酸化防止機能があるため、はんだの酸化をも防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るはんだを用いたはんだ接合体は、従来のはんだ合金を用いた接合体に比べて高周波信号の伝達損失が少ないはんだ接合体である。このような高周波特性を有しているため、高周波で情報を処理する半導体装置に使用するはんだに適している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のはんだは、はんだ合金中に金属粒子を分散させたはんだであって、金属粒子はSn-Zr合金またはCu-Zr合金であり、どちらか一方の金属粒子または両方の金属粒子を含む。
【0021】
実施するためのはんだ合金に特に制限がないが、Snを主成分とするはんだ合金が好ましい。例えばSn‐Ag系、Sn‐Ag‐Cu系、Sn‐Cu‐Ni系、Sn‐Zn系、Sn‐Ni系、Sn‐Sb系などが挙げられる。このうち、Sn‐Ag‐Cu系、Sn‐Cu‐Ni系、Sn‐Ni系のはんだ合金が好ましい。また、これらのはんだ合金に、本発明の効果を有する範囲において、Ni、Co、P、Ge、Bi、In、を適宜に添加することも可能である。
【0022】
金属粒子はSn‐Zr合金またはCu‐Zr合金のうちどちらかを選択してもいいし、両方の金属粒子を適宜組み合わせてもよい。
【0023】
金属粒子の平均粒径の範囲は特に定めはないが、5μm以上が好ましく、50μm~300μmさらには50μm~100μmが好ましい。平均粒子径の上限は、電気抵抗やはんだの接合強度、接合部品と基板間の大きさなどから必要とされる物性を考慮して適宜設定できる。また、金属粒子の粒子径のばらつきについては限定しないが、必要に応じて粒径のばらつきを調整して使用できる。
【0024】
金属粒子の含有量には特に限定はなく、用途に応じて要求される物性(例えば電気抵抗、接合強度、耐熱性、熱伝導性など)と、信頼性との関係に基づき適宜決定することができる。具体的には金属粒子をはんだ全体に対して、0.01~10質量%が好ましく、さらには0.1~0.3質量%が好ましい。
【実施例0025】
Sn‐Cu‐Ni系のはんだ合金に、粒径75~95μmのSn‐Zr合金粒子および/またはCu‐Zr合金粒子を含有させ、当該合金粒子の合計をはんだ全体の質量%に対して0.1~0.2質量%とする。
さらに、得られたはんだを、ディップはんだ付け方法によるはんだ接合では棒状のはんだ形状、リフローによるはんだ付け方法によるはんだ接合ではペースト形状やボール形状並びにプリフォーム形状に加工し、また、はんだ鏝を用いたはんだ接合の場合には、やに入りはんだ等の線状にそれぞれ加工することが可能である
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のはんだはを用いたはんだ接合体は、高周波が流れた際に優れた特性を有するはんだ接合体となるため、大量のデータを高速処理する半導体装置に使用するはんだに適している。
【手続補正書】
【提出日】2020-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
はんだ合金中に、金属粒子が分散されているはんだであって、前記金属粒子はCu―Zr合金および/またはSn-Zr合金であるはんだ。