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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019438
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】植生工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20220120BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20220120BHJP
   A01G 24/15 20180101ALI20220120BHJP
【FI】
E02D17/20 102B
A01G20/00
A01G24/15
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123274
(22)【出願日】2020-07-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】515007718
【氏名又は名称】芽苗工法促進会株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】竹原 利保
【テーマコード(参考)】
2B022
2D044
【Fターム(参考)】
2B022BA04
2B022BB01
2D044DA13
2D044DA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複雑な法面の施工を必要とせず施工そのものが安価であり、また法面の土壌に対する苗の支持根の食い込みがよく、根付きが良好となり、結果として法面への苗の定着率が向上する植生工法を提供する。
【解決手段】芽苗を特殊育成苗Pとして法面に用いる植生工法Aであって、法面を不織布シートで覆う被覆工程S1と、不織布シートを法面に固定する不織布シート固定工程S2と、不織布シートに植生のための植口を形成する植口形成工程S3と、植口の真下の法面の特殊育成苗Pを植え込むための植え込み用穴を空ける植え込み用穴形成工程S4と、植え込み用穴に植口を介して特殊育成苗Pを植え込む植え込み工程S5と、よりなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芽苗を特殊育成苗として法面に用いる植生工法であって、
前記法面を不織布シートで覆う被覆工程と、
該不織布シートを法面に固定する不織布シート固定工程と、
前記不織布シートに植生のための植口を形成する植口形成工程と、
前記植口の真下の法面の前記特殊育成苗を植え込むための植え込み用穴を空ける植え込み用穴形成工程と、
該植え込み用穴に前記植口を介して前記特殊育成苗を植え込む植え込み工程と、よりなる植生工法。
【請求項2】
前記特殊育成苗が種子から特殊育苗工程を経て育成された実生の芽苗である請求項1記載の植生工法。
【請求項3】
前記特殊育苗工程において、前記種子は水中に放置され、沈んだ状態のものを採用したものである請求項2記載の植生工法。
【請求項4】
前記特殊育苗工程が、
(a)開口容器にバーミキュライトにより基礎土層を形成し、
(b)前記基礎土層に前記種子を互いに接触しない状態で播種し、
(c)前記種子の上にバーミキュライトを被せ、一定の厚みとなるよう盛り土層を形成し、
(d)前記開口容器を半日陰の屋外に放置し前記種子を発芽させて一定の大きさの特殊育成苗に育成するものである請求項2又は3記載の植生工法。
【請求項5】
前記盛り土層の厚みが1~2cmである請求項4記載の植生工法。
【請求項6】
前記植え込み工程における特殊育成苗は、主根の長さが20cm以上である請求項4記載の植生工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面等の植生工法に関し、更に詳しくは複雑な法面の施工を必要とせず安価であり、法面の土壌に対する苗の支持根の食い込みがよく、根付きが良好となり法面への定着率が向上する植生工法に関する。
【背景技術】
【0002】
工事後の用地、造成地、河川堤防、山、道路等の傾斜面(いわゆる法面)はそのまま露出した状態で放置すると、そのあとが侵食したり、剥がれたり、陥没したり等、荒廃化した状態となりやすい。
更に、荒廃化を原因として、大量の風雨等により土砂が流出することもあり、危険である。
また、見栄えも悪い。
このようなことから、荒廃化した、または、荒廃化する恐れのある法面に対し植生を施すことが広く行われている。
【0003】
この植生の方法として、例えば、特許文献1のような植生工法がある。これは、法面を第1不織布シートで覆うための第1覆工程、第1不織布シートの上に客土層を形成する客土層形成工程、客土層の上を第2不織布シートで覆う第2覆工程、第2不織布シートと共に第1不織布シートを法面に固定する不織布シート固定工程、第2不織布シートに植生のための植口を形成する植口形成工程、植口の真下にて客土層に植え込みのための穴を空ける植え込み用穴形成工程、植え込み用穴に土と共に植生原料を植え込む植え込み工程よりなることを特徴とする植生工法である。
【0004】
特許文献1の植生工法においては、苗の種類、または育苗方法は開示されていな。法面の荒廃化を防ぐ植生を定着させるためには、植え込みに用いる苗の枝及び根塊が、植え込みに適した形態となっていることが必要である。
具体的には、横方向に張り出す支枝が成長しすぎている場合、苗を1株ごとに分ける株分け作業の際に妨げとなり、作業性が低下する。さらに、法面への植生の際に、横方向に張り出す支持根が発達していると、支持根が傷つき易い。支持根が傷つくと成長が阻害され、さらに悪しくは根腐れ等の原因となる。
そうすると法面への支持根の食い込みが悪く、法面において苗が成長しない状態、より悪しくは枯死する状態となり、定着率が低下する。
【0005】
また、植生に用いる苗を育成するための方法として、例えば、特許文献2の生育装置及び方法又は特許文献3の育苗資材を用いた育苗方法がある。
特許文献2の生育装置は、ジグザグに折り癖が形成された帯状の栽培床と、折角度制御部材と、支持部材と、光源と、養分供給部とからなるものである。
また、特許文献3の育苗資材は、セルロースアシレートを含むものであり、これを用いた育苗方法は、苗床が温湿度調節機の内部に置かれ、育苗されるものである。
【0006】
特許文献2の生育装置又は、特許文献3の育苗資材を用いた育苗方法においては、生育装置又は温湿度調節機を要する。
すなわち、苗は工業的に生産されるものであり、専用の設備と、設備を稼働するためのエネルギーが必要となり、また管理のために手間を要する。
さらに、これらの文献においても、枝や根塊の形態については示唆がなく、法面への植生に適した形態の苗を育成する思想は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5699291号公報
【特許文献2】特開2014-60938号公報
【特許文献3】特開2019-41587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の課題を受けて開発されたものである。
すなわち、本発明は、複雑な法面の施工を必要とせず施工そのものが安価であり、また植え込みに際して根が傷つき難く、法面の土壌に対する苗の支持根の食い込みがよく、根付きが良好となり、結果として法面への苗の定着率が向上する植生工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、特殊育成苗を用いることで、法面の土壌に対する苗の支持根の食い込みがよくなることを見出した。本発明はこの知見に基づく。
【0010】
本発明は(1)、芽苗を特殊育成苗として法面に用いる植生工法であって、法面を不織布シートで覆う被覆工程と、不織布シートを法面に固定する不織布シート固定工程と、不織布シートに植生のための植口を形成する植口形成工程と、植口の真下の法面の特殊育成苗を植え込むための植え込み用穴を空ける植え込み用穴形成工程と、植え込み用穴に植口を介して特殊育成苗を植え込む植え込み工程と、よりなる植生工法に存する。
なお、ここで芽苗とは、発芽した状態の苗、すなわち、芽、幹(茎)、葉及び根が発生した状態の植物の苗をいう。
【0011】
本発明は(2)、特殊育成苗が種子から特殊育苗工程を経て育成された実生の芽苗である上記(1)記載の植生工法に存する。
【0012】
本発明は(3)、特殊育苗工程において、種子は水中に放置され、沈んだ状態のものを採用したものである上記(2)記載の植生工法に存する。
【0013】
本発明は(4)、特殊育苗工程が、(a)開口容器にバーミキュライトにより基礎土層を形成し、(b)基礎土層に種子を互いに接触しない状態で播種し、(c)種子の上にバーミキュライトを被せ、一定の厚みとなるよう盛り土層を形成し、(d)開口容器を半日陰の屋外に放置し種子を発芽させて一定の大きさの特殊育成苗に育成するものである上記(2)又は(3)記載の植生工法に存する。
【0014】
本発明は(5)、盛り土層の厚みが1~2cmである上記(4)記載の植生工法に存する。
【0015】
本発明は(6)、植え込み工程における特殊育成苗は、主根の長さが20cm以上である上記(4)記載の植生工法に存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の植生工法は、芽苗を特殊育成苗として法面に用いる植生工法であって、法面を不織布シートで覆う被覆工程と、不織布シートを法面に固定する不織布シート固定工程と、不織布シートに植生のための植口を形成する植口形成工程と、植口の真下の法面の特殊育成苗を植え込むための植え込み用穴を空ける植え込み用穴形成工程と、植え込み用穴に植口を介して特殊育成苗を植え込む植え込み工程と、を有することにより、複雑な法面の施工を必要とせず、施工工数が少ない。
そのため、工期も短くなり、コストも安価となる。
また、雨水が多量であっても、不織布シートに沿って雨水を積極的に流すことができるため、急激な雨水による法面の浸食を防止することが可能となる。
さらに、特殊育成苗は鉛直下方に伸びる主根が発達する一方で、略横方向に伸びる支持根の成長が極力抑制されたものであるため、隣接する苗の根同士が絡み合わず、株分けの作業性が向上する。さらに、植え込みに際して根が傷つき難く、特殊育成苗の法面への支持根の食い込みが良く根付きが良好となり、特殊育成苗の定着率を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の植生工法は、特殊育成苗が種子から特殊育苗工程を経て育成された実生の芽苗であることにより、特殊育成苗の法面の定着がよく、法面の荒廃化を効率的に防止することが可能となる。
【0018】
本発明の植生工法は、特殊育苗工程において、種子は水中に放置され、沈んだ状態のものを採用したものであることにより、種子の発芽率が高く特殊育成苗の育成を効率的に行うことが可能となる。
【0019】
本発明の植生工法は、特殊育苗工程が、(a)開口容器にバーミキュライトにより基礎土層を形成し、(b)基礎土層に種子を互いに接触しない状態で播種し、(c)種子の上にバーミキュライトを被せ、一定の厚みとなるよう盛り土層を形成し、(d)開口容器を半日陰の屋外に放置し種子を発芽させて一定の大きさの特殊育成苗に育成するものであることにより、容易に苗の成長をコントロールすることが可能となり、法面への施工時に最適な成長度合いの苗を得ることができる。これにより、法面への施工時期が予期せず前後した場合にも対応することが可能となる。
また、特殊育苗工程が、半日陰の屋外において行われるものであるため、特段の設備、電力等のエネルギー等を必要とせず、苗を管理するための工数及びコストを削減することができる。
また、植生に適した特殊育成苗の育成を行うことが可能となる。より詳しくは、特殊育苗工程において、特殊育成苗が略垂直方向に伸びる主根が発達する一方、略横方向に伸びる支持根の成長が抑制される。これにより、植え込み工程において支持根が傷つくことが少ない。
そして植え込み工程を経た後においても、法面の土壌に食い込むように絡み根塊が安定し根付きが良好となり、結果的に特殊育成苗の定着率が向上する。
さらに、バーミキュライトが開口容器に入れられた状態となっているため、必要に応じて、開口容器ごと苗を容易に移動させることが可能となる。
【0020】
本発明の植生工法においては、盛り土層の厚みが1~2cmであることにより、種子の発芽率が向上する。これにより、特殊育成苗をより効率的に育成することが可能となる。
【0021】
本発明の植生工法においては、植え込み工程における特殊育成苗の主根の長さが20cm以上であることにより、根付きの観点からみて、特殊育成苗が法面への植え込みに耐えうる強さを有し、法面への定着率が向上する。このため、法面の荒廃化をより効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、植生工法を説明するためのブロック図である。
図2図2は、植生工法を示す法面の断面図である。
図3(A)】図3(A)は、植口形成工程における切り欠きの例を示した図である。
図3(B)】図3(B)は、植口形成工程における切り欠きの例を示した図である。
図3(C)】図3(C)は、植口形成工程における切り欠きの例を示した図である。
図4(A)】図4(A)は、図3(A)の切り欠きを開いた図である。
図4(B)】図4(B)は、図3(B)の切り欠きを開いた図である。
図4(C)】図4(C)は、図3(C)の切り欠きを開いた図である。
図5図5は、開口容器を示す斜視図である。
図6(A)】図6(A)は、基礎土層が形成された開口容器を説明する断面図である。
図6(B)】図6(B)は、基礎土層に種子を播種した状態を説明する断面図である。
図6(C)】図6(C)は、盛り土層が形成された開口容器を説明する断面図である。
図6(D)】図6(D)は、種子が発芽した状態の開口容器を説明する断面図である。
図7図7は、植え込み工程を経た植口を示す上面図である。
図8図8は、実験1により得られた特殊育成苗を示す。
図9図9は、他の実施例にかかる植生工法を示す法面の断面図である。
図10図10は、他の実施例にかかる植生工法を示す法面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。 なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0024】
本発明の植生工法Aに用いる特殊育成苗Pは、種子を発芽させて成長させた、いわゆる実生の芽苗である。
特殊育成苗Pの植物種としては、高木、中木、低木等、各種の木本植物が用いられる。
特殊育成苗Pはその根系が、主として鉛直下方へ伸びる主根と、略横方向(主根に対して略垂直方向)に伸びる支持根とによって構成される。
【0025】
図1は、植生工法Aを説明するためのブロック図である。
本発明の植生工法Aは、芽苗を特殊育成苗Pとして法面2に用いる植生工法Aであって、種子から特殊育成苗Pを育成する特殊育苗工程S6と、法面2を不織布シート3で覆う被覆工程S1と、不織布シート3を法面2に固定する不織布シート固定工程S2と、不織布シート3に植生のための植口31を形成する植口形成工程S3と、植口31の真下の法面2の特殊育成苗Pを植え込むための植え込み用穴21を空ける植え込み用穴形成工程S4と、植え込み用穴21に植口31を介して特殊育成苗Pを植え込む植え込み工程S5と、よりなる。
【0026】
図2は、植生工法Aを示す法面2の断面図である。
被覆工程S1においては、法面2に上に不織布シート3を敷設する。
不織布シート3は、例えば、幅2m×長さ50m程度の、矩形上の不織布により構成されている。
不織布シート3は、その透水性が1×10-3~10-5(cm/sec)であることが好ましい。
これにより、雨が急激に降ったとしても、雨水はこの不織布シート3に沿って(法面2に沿って)下方に流れるよう誘導され、排出が促される。
一方で、適度に透水性を有することにより、雨水等が不織布シート3の下にある法面2の土壌に吸収されることができ、土壌の水分を維持することができる。
これにより、後述するように法面2に植え込まれた特殊育成苗Pが、十分に成長することが可能となる。
また、不織布シート3を敷設することで、法面2から上方に伸びる特殊育成苗P以外の草芽(すなわち雑草)の発生を阻止する(すなわち防草する)効果がある。
【0027】
不織布シート3の材料としては、合繊繊維(ポリエステル、レーヨン等)により形成されたものであることが好ましい。また、生分解性の繊維を用いることも可能である。
不織布シート3が合成繊維により形成されていることにより、施工後も数年間は腐りにくく、保形性が良いという利点がある。
また、これらの素材による不織布シート3は伸びる自由度があるため、後述する植口形成工程S3、植え込み用穴形成工程S4、及び植え込み工程S5において、作業性が向上する。
また、生物分解性を有する繊維を用いた場合、特殊育成苗Pが十分に育った後に、不織布シート3が自然と分解されるため、処分の手間が掛からず、環境負荷を小さくすることができる。また、分解された成分は特殊育成苗Pの養分となる。
【0028】
不織布シート3を法面2に敷設する場合、不織布シート3の端部の一定部分は法面2の土壌に埋め込む。
不織布シート3を敷設する際に、施工面積が不織布シート3よりも大きい場合は、一定の大きさを有するシート状の不織布シート3を平面状に多数枚連結していくことで施工面積を広める。このとき、複数の不織布シート3の端部同士は一定の面積が重ね合わされた状態とする。
その場合、その不織布シート3の端部同士を重ね合わせて接着することが好ましい。
【0029】
不織布シート固定工程S2において、不織布シート3は、特殊育成苗Pが法面2においてある程度育った状態においては、腐食しても差し支えない。
この場合、育った特殊育成苗Pの地上部分(枝や葉等)により、雨水や強風から土壌が保護されることに加え、特殊育成苗Pの根系により水分が保持され、また物理的に土壌が維持されることにより、不織布シート3が腐食したとしても法面2の荒廃化を防止することが可能となる。
【0030】
不織布シート3を敷設した後、止めピン等の固定具4を用いて当該不織布シート3を法面2に対して固定する。
この場合、不織布シート3の上から止ピンを法面2の土壌に打ち込む。止めピンには、釘状のピン、又はU字状のピンを好適に用いることができる。
不織布シート3は外気に露出しているため風雨等によって捲れ上がることがある。止めピンで不織布シート3を法面2に固定することにより、このようなことを防ぐことができる。
なお、複数枚の不織布シート3を敷設している場合、止めピンは不織布シート3の端部同士が重ね合わされた部分にも打ち込むことが好ましい。
また、上述したように不織布シート3の周囲の端部は、一定の距離、土壌に埋め込む。このとき、もっとも外側に打ち込まれた止めピンよりも外側の不織布シート3の端部は、全て土壌に埋め込まれていることが好ましい。これにより、不織布シート3が捲れあがったり、法面2から浮いたりすることが防止され、不織布シート3を法面2に対して強固に固定することができる。
【0031】
植口形成工程S3においては、法面2に固定された不織布シート3に対して特殊育成苗Pを植え込むための植口31を形成する。
図3(A)~図3(C)は、植口形成工程S3における切り欠きSの例を示した図である。
図3(A)はZ字型の切り欠きSを開いた例であり、図3(B)は、十字型の切り欠きSを開いた例である。 また図3(C)はV字型の切り欠きSを開いた例である。
植口31は不織布シート3に形成された線状の切り欠きSよりなる。
植口31が線状の切り欠きSよりなることで、植口31の形成作業を単純化することが可能となり、作業効率が向上する。
また、植口31の切り欠きSを、ハサミ又はナイフ等の刃物を用いて形成することが可能となる。
切り欠きSの切り口は極力細いことが好ましい。これにより、後述するように植え込み形成を終えた後に、法面2の土壌が露出する部分を極力小さくすることができる。
【0032】
図4(A)~図4(C)は、それぞれ図3(A)~図3(C)の切り欠きSを開いた図である。
図4(A)は、図3(A)のZ字型の切り欠きSを開いた図であり、開かれた植口31は長方形状となる。
図4(B)は、図3(B)の十字型の切り欠きSを開いた図であり、開かれた植口31は菱形状となる。
また、図4(C)は、図3(C)のV字型の切り欠きSを開いた図であり、開かれた植口31は三角形状となる。
このように、切り欠きSの形状により、植口31の形状を変更することができるため、特殊育成苗Pの根塊の状態に応じて、適宜の形状を選択することが可能である。
特にZ字形の切り欠きSは一筆切りで切り欠きSが形成され、且つ矩形の植口31ができるため、特殊育成苗Pの根塊が比較的大きい場合にも対応できる。
さらに、施工効率が良いことも利点である。
もっとも、切り欠きSがいかなる形状であっても、それぞれ開き加減を変えることで植口31の大きさや形はある程度調整することができる。
また、上述したように、不織布シート3は、多少伸びるので、施工時には植口31を広げることが可能であり、施工後には切り欠いた端部を引っ張って、余分な植口31を極力小さくすることができる。
【0033】
次に、植え込み用穴形成工程S4においては、植口形成工程S3において形成した植口31に対応する位置に、法面2の土壌に特殊育成苗Pを植え込むための穴を掘る。
この植え込み用穴21は、特殊育成苗Pの根塊の大きさによって異なるが、中程度の特殊育成苗Pであれば主根の長さが20cm以上となり、植え込み用穴21の深さもこれに対応した深さとなる。
ちなみに、この場合、特殊育成苗Pの地上部分の高さも同様に20cm以上となっている。
すなわち特殊育成苗Pには,通常、根塊があるので、植え込み用穴21は、これを収納できるだけの大きさがあればよい。
具体的な植え込み用穴21の空け方は、移植コテ(スコップ等)を植口31を通して法面2の土壌に押し入れて、一定角度横方向に動かし、土壌を押しのけることで空間ができ、この部分が植え込み用穴21となる。
このように植え込み用穴形成工程S4は、特殊育成苗Pの根塊を収納するための穴としての空間を形成するものである。
【0034】
次に、植え込み工程S5においては、植口31を介して植え込み用穴21に特殊育成苗Pを植え込む。
特殊育成苗Pについていうと、上述した特殊育苗工程S6において育成した実生の芽苗であり、開口容器1から1株ごとに株分けした状態のものを用いる。
この場合、特殊育成苗Pは、基礎土層11と盛り土層12が形成された開口容器1においてバーミキュライトを用いて特殊な状態で育成されたものである。
その根塊においては、主根が発達する一方で、横方向に伸びる支持根はさほど発達しない。
これにより、開口容器1において横方向に隣接する特殊育成苗Pの根の絡まりが少なく、株分けを容易に行うことができる。
また、枝においても、主枝が発達する一方で、横方向に伸びる支枝は、さほど発達しない。
これにより、開口容器1において隣接する特殊育成苗Pの枝の絡まりが少なく、株分けを容易に行うことができ、株分けの作業性が向上する。
植え込み工程S5では、特殊育成苗Pを不織布シート3に形成した植口31を介して法面2の植え込み用穴21に植え込む。特殊育成苗Pを植え込む際、上述したように根塊としては横方向に伸びている支持根はさほど発達していないため、傷つくことが少ない。
そのため、支持根が法面に含まれるがれきや石等の間に食い込み、根付きが良好となる。
結果的に苗の定着率が向上するのである。
一方、特殊育成苗Pにおいては、枝として横方向に伸びる支枝が発達していないため扱い易く、植え込みの作業性がよい。
この場合、植え込み用穴形成工程S4により形成された植え込み用穴21と不織布シート3の植口31とが対応した位置にあるので、植口31を通して植え込み用穴21に土と共に根塊を有する特殊育成苗Pを植え込む。
そして植え込んだ周りの土壌を押さえて固める。
ここで、根塊を植えた後は、不織布シート3は引っ張ると伸びるので、その切り欠きSの端部を引っ張って特殊育成苗Pの茎の周りの植口31を極力小さくして土壌が露出しないようにすることが好ましい。
【0035】
図5は、開口容器1を示す斜視図である。
特殊育苗工程S6においては、開口容器1を用いて種子から特殊育成苗Pを育成する。
開口容器1は上方が開口した箱状の容器であり、移動のし易さや特殊育成苗の大きさの観点から、例えば、縦横が50~65cm×20~35cm程度、深さは25~35cm程度のものであることが好ましい。
【0036】
図6(A)は、基礎土層11が形成された開口容器1を説明する断面図である。
特殊育苗工程S6においては、(a)開口容器1にバーミキュライトを使って、まず基礎土層11を形成する。
基礎土層11を形成するには、開口容器1にバーミキュライトを、開口容器1の深さに対して8分目を目安に入れ、表面を平らに均す。
ここで、バーミキュライトとは、苦土蛭石を熱膨張させた園芸用の土壌であり、軽量性、保水性に優れる特性をもち、バーミキュライト自体は植物にとっての養分を含まない。
バーミキュライトの基礎土層11は、後述するように、特殊育成苗Pの主根の成長を効率よく促進させる一方で、支持根の成長を抑制するため、後に施工する法面の土壌(特にがれき)に効果的に食い込む根塊を有する特殊育成苗Pが得られる。
【0037】
開口容器1の深さは25~35cm程度とすることで、特殊育成苗Pの根が法面2への植え込みに適する大きさまで十分に成長することができる。
これにより、後述する法面2への植え込み以降、特殊育成苗Pが法面2の土壌から十分に水分及び養分を吸収することができると同時に、法面2の土壌に特殊育成苗Pの支持根が食い込むことができ、特殊育成苗Pが自重を支持することが可能となる。
また、開口容器1全体の大きさを縦横が50~65cm×20~35cm程度、深さが25~35cm程度とすることにより、基礎土層11、盛り土層12、及び成長した特殊育成苗Pが入った状態であっても、開口容器1を持ち運んで比較的容易に移動することができる。
これにより、特殊育成苗Pの成長状態や周囲の状況の変化に応じて、開口容器1を適切な場所へと移動することができる。
開口容器1には、例えば、公知のプランターから大きさを選んで用いることができる。
【0038】
図6(B)は、基礎土層11に種子P1を播種した状態を説明する断面図である。
基礎土層11を形成した後、(b)基礎土層に特殊育成苗Pの種子P1を互いに接触しない状態で播種する。
このとき、種子P1同士が、できるだけ一定の間隔となるように播種する。
ここで種子P1同士の相互の間隔は1~3cm程度とすることが好ましい。
これにより狭い面積で極力多くの苗を育成することができる。
バーミキュライトを使った基礎土層11によって、主根から横方向に伸びる根である支持根の成長が極力抑制され、主根自体が効率よく成長する。
すなわち略横方向に延びる支持根の成長よりも主根の成長がより促進される。
そのため、種子P1の間隔が上記のようなものであっても、支持根が、隣接する苗の支持根と絡まることが少なく、特殊育成苗Pを一株ごとに分別する株分けを効率よく行うことができ、作業性が向上する。
【0039】
図6(C)は、盛り土層12が形成された開口容器1を説明する断面図である。
種子P1を播種した後、(c)種子P1の上にバーミキュライトを被せ、一定の厚みとなるよう盛り土層12を形成する。
盛り土層12は、発芽率の観点から、厚さ1~2cm程度とすることが好ましい。このとき、種子P1は基礎土層11の表面に置かれた状態で盛り土層12によって埋め込まれる。
このようなバーミキュライトの盛り土層12を形成することにより、種子P1の乾燥を防止することができ、種子P1の発芽率が向上する。
また、盛り土層12を設けることにより、発芽の初期段階で垂直方向への主枝の成長が促進され、且つ横方向への支枝の成長が抑制される。
支枝が、隣接する苗の支枝と絡まることが少なく、そのため特殊育成苗Pを一株ごとに分別する株分け作業を効率よく行うことができる。
【0040】
図6(D)は、種子P1が発芽した状態の開口容器1を説明する断面図である。
盛り土層12を形成した後、(d)開口容器1を半日陰の屋外に放置し、種子P1を発芽させて一定の大きさの特殊育成苗Pに育成する。
ここで半日陰とは、遮光率1/3~1/2程度の、直射日光が当たらず、一定の光量が維持されている環境をいう。
例えば、全日を通して木漏れ日の指すような場所が好適に用いられる。日に数時間程度の日光が指す状態であることは差し支えない。
開口容器1を設置する場所は、土壌が露出している場所が好適である。土壌が露出している場所に開口容器1を設置することにより、温度及び湿度が特殊育成苗Pの育成に適した状態に維持される。
また、周辺に川や池等の水場がある場所であれば、特に湿度が維持されているため、特殊育成苗Pを好適に育成することが可能となる。
【0041】
開口容器1を半日陰の屋外に放置した後、特殊育成苗Pを主根の長さが25cm~35cm程になるまで、成長させる。通常、12か月程度の期間を要する。この間、特殊育成苗Pに対しては、極端な悪天候が継続しているような状況を除き水やり、寒冷紗をかけての防寒等の処理を行わない。
特殊育成苗Pを、主根の長さが25cm~35cm程になるまで成長させることで、特殊育成苗Pの法面2への根付きが良好となり、植え込みに耐えうる強さとなる。
開口容器1を半日陰の屋外に放置して特殊育成苗Pを成長させることにより、特殊育成苗Pの育成のための特段の設備、エネルギー等を必要とせず、管理の工数及びコストを削減することが可能となる。
また、開口容器1の深さを25cm~35cm程度とすることにより、特殊育成苗Pはこれより長期間放置しても、一定以上の大きさに成長しない。これにより、仮に法面2への施工が予期せぬ事情により延期された場合であったとしても、特殊育成苗Pが成長し過ぎて、施工に適さない状態となることを防止することができる。
ちなみに、特殊育成苗Pの主根の下端は尖った状態となっていることが好ましい。主根の下端が尖った状態であることにより、後に法面2に植え付けた場合に寝つきがより良好となる。
【0042】
特殊育苗工程S6を経て特殊育成苗Pを育成した後、今度は植え込み工程S5において、法面2に対しての植生を行う。
施工対象となる部分(法面2)は、土壌が露出しており、植生が可能な法面2であれば、本発明の植生工法Aが適用可能である。
なお、法面2の土壌に草根が含まれる場合、極力、事前に除去することが好ましい。
ところで、法面2の土壌のがれき等を含むため、本発明の特殊育成苗Pとは異なって、従来のように、支持根が発達していた場合、植え込みに際してがれき等により支持根に傷がつき易い。
支持根が傷つくと、特殊育成苗Pの自重を支える力が弱くなり、土壌から栄養を吸収する能力も低下する。
また、新たな根の成長も阻害される。したがって、特殊育成苗Pの法面への定着率を低下させる要因となる。
ここで本実施例において、特殊育成苗Pは上述の通り、特殊育苗工程S6によって育成されたものであり、鉛直下方に伸びる主根が発達している一方で、略横方向に伸びる支持根の成長は抑制されている。このため、株分けや植え込みの際に支持根が傷つくことが少ない。
したがって、植え込み工程S5を経て後特殊育成苗Pを法面へ植え込んだ後は、支持根が横方向に効率よく伸びる。
詳しくは、法面2の土壌に含まれるがれきの間にこの支持根が食い込むように絡んで成長する。そのため根塊が安定して根付きが良好となり、その結果、特殊育成苗Pの定着率が大きく向上するのである。
さらに、特殊育成苗Pは支枝の発達していない直線的な形状であるため、植え込み作業の際にも扱い易く、運搬、植え込みの作業性が向上する。
【0043】
参考までに、図7は、植え込み工程S5を経た植口31を示す上面図である。
植口31の切り欠きSは、特殊育成苗Pを挿入した部分以外の部分は開かないようにボンド等の接着剤Rを使って塞いでおくことがより好ましい。
これにより、風雨により水が不織布シート3に沿って流れ排水される際に、雨水等がこの植口31から入りにくくなり、法面2の浸食を防止することが可能となる。
因みに、特殊育成苗Pを植え込んだ後、特殊育成苗Pが法面2に根付くまでの一定期間は、法面2を安定した状態に保持しておくことが必要であるが、植口31から雨水が大量に流れ込むと泥水となって法面2が浸食崩壊し易く、根付きが期待できない。
特殊育成苗Pにより、植口31よりも幹の径が大きくなることがありうるが、このときには不織布シート3そのものが伸びること、並びに不織布シート3及び接着剤Rが劣化することにより植口31が大きくなり、特殊育成苗Pの成長が阻害されることがない。
【0044】
以上述べたように、この植生工法Aは、複雑な法面2の施工を必要とせず施工工数が少なく、そのため工期も短くなりコストを下げることが可能となる。
また、雨水が多量であっても該不織布シート3に沿って積極的に流して排水することができる。
しかも不織布シート3は適度な透水性を示すので、法面2の土壌にも必要となる水分を適宜供給することができる。
【0045】
(実験例)
以下に、本発明の特殊育苗工程S6を用いて育成した苗の例を示す。
(実験1)
図8は、実験1により得られた特殊育成苗Pを示す。
樹種はコナラ、54cm×21cm×25cmの開口容器1を用い、バーミキュライトの基礎土層11を8分目程満たしたのち、種子同士の間隔を2cm程開けて播種した。
また、バーミキュライトの盛り土層12を開口容器1の全面にわたって2cm程の厚さに設けた。
この開口容器1を半日陰の環境に12か月放置した。
その結果、地上部分26cm、主根28cm程の特殊育成苗Pが得られた。
このとき、図9に示すように、主根に対して横方向に伸びる支持根の発達はさほど見られず、基礎土層11の内部において、隣接する特殊育成苗Pの根同士の絡み合いはほとんど見られなかった。
これにより、特殊育成苗Pの株分けを手作業で容易に行うことができた。
【0046】
(実験2)
実験2においては、特殊育成苗Pとしてヤマザクラを用いた。
実験1と同様の方法により特殊育苗工程S6を行い、地上部分29cm、主根の長さ32cm程のヤマザクラを得た。この際、支枝も短く支持根の発達も少なく、株分けを容易に行うことができた。
硬い土壌でなく植生が可能な土壌の法面2(300m)を対象に、本発明の植生方法を施工した。
法面2を直接覆う不織布シート3としては、ポリエステル不織布シート3(厚さ2mm、透水性は1×10-3cm/sec)を使った。
ポリエステル不織布シート3(幅2m×長さ10m)の重ね幅は、10cmとし、U字型の止めピン(長さ30cm)で固定した。
ポリエステル不織布シート3には、ナイフを使ってZ字形に切り欠きS、植口31を作った。
そしてスコップで法面2の土壌に穴を形成し、ヤマザクラの苗(主枝26cm、主根28cm)を植え込んだ。
植え込んだ後、切り欠きS端部を引っ張って植口31から法面2が露出しないようにした。
また、植口31の切り欠きSは、植生材料を挿入した部分以外の部分は開かないようにボンド等の接着剤RRを使って塞いだ。
施工後、12か月すると、ヤマザクラが55cm程度に育って、雑草が殆ど生えてこない状態となっていた。
不織布シート3の下を観察したところ、法面2の土壌から伸びた雑草は、その多くが不織布シート3によって伸びるのを阻止されていた。
また、植口31における茎の周囲も露出してなく、その下も急激な雨水の浸食による窪みもできていなかった。
また、植え込みから20か月後、法面に植生した特殊育成苗Pのうち、枯れ状態のものはほとんどなく、定着率は98%となった。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0048】
図9は、他の実施例にかかる植生工法Aを示す法面2の断面図である。
本実施例においては、不織布シート3を法面2に直接敷設していたが、不織布シート3の敷設に先立ち、法面2の上に客土層5を設け、当該客土層5を法面2に固定するように不織布シート3を敷設してもよい。
客土層5は、土の他、砂や砂利を含んだ土壌により形成される。客土層5の組成は、特殊育成苗Pの植物種や法面2の応じ適宜変更可能である。客土層5を構成する土壌には、肥料、吸水性高分子等を適宜配合することができ、法面2の土壌を特殊育成苗Pの樹種に応じて改良することが可能であるが、必須ではない。
この実施形態は、法面2が比較的固い土壌(軟質岩盤上等)である場合に、好適に利用することが可能である。客土層5を設けることにより、特殊育成苗Pが法面2に根付きやすくなり、定着率が向上する。
この場合、本実施例と同様に法面2の草根を極力取り除いた後に、法面2の上に一定量の客土を敷設して客土層5を形成する。客土層5を設ける厚さは特殊育成苗Pや植え込み用穴21の大きさによって異なるが、10~70cm程度である。この場合、植え込み用穴21は客土層5を貫通し、法面2に到達する深さに設けることが好ましい。
客土層5を設けることにより、法面2の土壌の性質が改良され、特殊育成苗Pの法面2への定着率を向上させることが可能となる。
これにより、法面2の荒廃化をより効果的に防止することができる。
【0049】
図10は、他の実施例にかかる植生工法Aを示す法面2の断面図である。
本実施例では、法面2に敷設される不織布シート3は1層であったが、法面2に不織布シート3(下側不織布シート32)を敷設し、その上に客土層5を設け、さらに不織布シート3(上側不織布シート33)を下側不織布シート32及び客土層5を法面2に固定するように敷設してもよい。この場合、植口31は下側不織布シート32及び上側不織布シート33の両方の対応する位置に設ける必要がある。
また、植え込み用穴21は、客土層5を貫通し、法面2に至る深さに設けることが好ましい。
この実施形態は、法面2を構成する土壌の水分量が多く、湧水等が余剰水となる場合に、好適に利用することができる。
この場合、下側不織布シート32が排水層となり、余剰水を下方へと排水する効果を有する。
また、上側不織布シート33により、客土層5及び法面2が雨水等から保護されるとともに、上側不織布シート33により雨水等が排水される。
また、下側不織布シート32により、法面2に存在する雑草が客土層5に侵入することを防止することができ、特殊育成苗Pの成長が阻害されることを防止することができる。
仮に、客土層5に成長した雑草が侵入した場合であっても、上側不織布シート33により雑草の成長が阻害され、同様に特殊育成苗Pの成長が阻害されることを防止することができる。
【0050】
実験例において、開口容器1は54×21×25cmの箱状であるが、必ずしも、大きさ、形状はこれに限定されるものではない。
【0051】
本実施例において、不織布シート3は2×50mの矩形のシートであるが、不織布シート3の大きさ及び形状は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0052】
本実施例において、植口形成工程S3及び植え込み用穴形成工程S4は被覆工程S1の後に行われているが、事前に法面2の状態や特殊育成苗Pの状態が分かっており、植口31同士の間隔が予め決定できるような場合は、植口形成工程S3及び/又は植え込み用穴形成工程S4を先に行い、被覆工程S1を後で行ってもよい。
この場合、被覆工程S1において、植口31又は植え込み用穴21の位置合わせが必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の植生工法Aは、法面2の土壌の性質によらずに適用可能であり、複雑な法面2の施工を必要とせず、施工工数が少ない。そのため、工期も短くなり、コストも安価となる。
また、雨水が多量であっても、不織布シート3に沿って雨水を積極的に流すことができるため、急激な雨水による法面2の浸食を防止することが可能となる。
また、特殊育苗工程S6により、バーミキュライトを使った基礎土層11によって、主根から横方向に伸びる根である支持根の成長が極力抑制され、主根自体が効率よく成長する。
そのため、株分けが容易であり、法面の土壌にも支持根が食い込んで根塊が安定し、定着率も向上する。
河川、海岸、山等の種々の法面に適応可能である。
【符号の説明】
【0054】
A・・・植生工法
S1・・・被覆工程
S2・・不織布シート固定工程
S3・・・植口形成工程
S4・・・植え込み用穴形成工程
S5・・・植え込み工程
S6・・・特殊育苗工程
P・・・特殊育成苗
P1・・・種子
1・・・開口容器
11・・・基礎土層
12・・・盛り土層
2・・・法面
21・・・植え込み用穴
3・・・不織布シート
31・・・植口
32・・・下側不織布シート
33・・・上側不織布シート
4・・・固定具
R・・・接着剤
S・・・切り欠き
5・・・客土層
図1
図2
図3(A)】
図3(B)】
図3(C)】
図4(A)】
図4(B)】
図4(C)】
図5
図6(A)】
図6(B)】
図6(C)】
図6(D)】
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2020-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芽苗を特殊育成苗として法面に用いる植生工法であって、
前記法面を不織布シートで覆う被覆工程と、
該不織布シートを法面に固定する不織布シート固定工程と、
前記不織布シートに植生のための植口を形成する植口形成工程と、
前記植口の真下の法面の前記特殊育成苗を植え込むための植え込み用穴を空ける植え込み用穴形成工程と、
該植え込み用穴に前記植口を介して前記特殊育成苗を植え込む植え込み工程と、よりなり、
前記特殊育成苗が、水中に放置され、沈んだ状態の種子から特殊育苗工程を経て育成された実生の芽苗であり、
前記特殊育苗工程が、
開口容器にバーミキュライトにより基礎土層を形成し、
前記基礎土層に前記種子同士を互いに接触しない状態で、種子同士の間隔を1~3cmとして播種し、
前記種子の上にバーミキュライトを被せ、1~2cmの厚みとなるよう盛り土層を形成し、
前記開口容器を半日陰の屋外に放置し前記種子を発芽させて一定の大きさの特殊育成苗に育成するものであり、
前記植え込み工程における特殊育成苗は、主根から横方向に伸びる根である支持根の発達が抑制され主根自体が効率よく成長した形状であり、且つ、垂直方向への主枝が成長し、横方向への支枝の成長が抑制された形状である植生工法。
【請求項2】
前記特殊育成苗は、前記主根の下端が尖った形状である請求項1記載の植生工法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は(1)、芽苗を特殊育成苗として法面に用いる植生工法であって、法面を不織布シートで覆う被覆工程と、不織布シートを法面に固定する不織布シート固定工程と、不織布シートに植生のための植口を形成する植口形成工程と、植口の真下の法面の特殊育成苗を植え込むための植え込み用穴を空ける植え込み用穴形成工程と、植え込み用穴に植口を介して特殊育成苗を植え込む植え込み工程と、よりなり、特殊育成苗が、水中に放置され、沈んだ状態の種子から特殊育苗工程を経て育成された実生の芽苗であり、特殊育苗工程が、開口容器にバーミキュライトにより基礎土層を形成し、基礎土層に種子同士を互いに接触しない状態で、種子同士の間隔を1~3cmとして播種し、種子の上にバーミキュライトを被せ、1~2cmの厚みとなるよう盛り土層を形成し、開口容器を半日陰の屋外に放置し種子を発芽させて一定の大きさの特殊育成苗に育成するものであり、植え込み工程における特殊育成苗は、主根から横方向に伸びる根である支持根の発達が抑制され主根自体が効率よく成長した形状であり、且つ、垂直方向への主枝が成長し、横方向への支枝の成長が抑制された形状である植生工法に存する。
なお、ここで芽苗とは、発芽した状態の苗、すなわち、芽、幹(茎)、葉及び根が発生した状態の植物の苗をいう。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明は(2)、特殊育成苗は、主根の下端が尖った形状である上記(1)記載の植生工法に存する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】