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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019453
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】撮像装置、半導体膜、及び分散液
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20220120BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220120BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220120BHJP
【FI】
H01L31/08 Z
H01L27/146 E
B82Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123305
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 修一
(72)【発明者】
【氏名】塩見 治典
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】田邊 守
(72)【発明者】
【氏名】山下 俊介
【テーマコード(参考)】
4M118
5F849
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA07
4M118CA14
4M118CA22
4M118CA40
4M118CB01
4M118CB13
4M118CB14
4M118DD04
4M118FA06
4M118FA38
4M118FB23
4M118FB24
4M118GB03
4M118GC07
4M118GD03
4M118GD04
4M118HA30
4M118HA33
5F849AA20
5F849AB01
5F849BA01
5F849BA03
5F849BB03
5F849DA44
5F849LA01
5F849XB24
(57)【要約】
【課題】光電変換層における電荷の移動度が向上した撮像装置を提供する。
【解決手段】I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子を含む光電変換層を備える、撮像装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子
を含む光電変換層を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記半導体コアは、I族元素及びVI族元素をそれぞれ含む、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記半導体コアは、AgInSe、AgInTe、AgSe、又はAgTeの少なくとも1つ以上を含む、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記単原子リガンドは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は硫黄原子のいずれかである、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記単原子リガンドは、硫黄原子である、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記粒子本体は、前記半導体コアを覆うように設けられたシェルをさらに有し、
前記シェルは、PbO、PbO、Pb、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaS、又はGaSeの少なくとも1つ以上を含む、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光電変換層は、前記半導体ナノ粒子の間に介在する金属イオンをさらに含む、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子
を含む、半導体膜。
【請求項9】
I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子
を含む、分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置、半導体膜、及び分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、量子ドットと呼ばれる半導体ナノ粒子を光電変換層に含む光電変換素子が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-112623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような光電変換素子を含む撮像装置では、光電変換時の応答特性を向上させることが望まれている。そのため、光電変換層に含まれる半導体ナノ粒子の間の距離を短くすることで、光電変換層における電荷の移動度をより高めることが望まれている。
【0005】
よって、光電変換層における電荷の移動度が向上した撮像装置、該光電変換層を構成する半導体膜、及び該半導体膜を形成可能な分散液を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る撮像装置は、半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子を含む光電変換層を備える。
【0007】
本開示の一実施形態に係る半導体膜は、I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子を含む。
【0008】
本開示の一実施形態に係る分散液は、I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子を含む。
【0009】
本開示の一実施形態に係る撮像装置、半導体膜、及び分散液では、半導体コアを有する粒子本体と、粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子が光電変換材料として含まれる。これにより、例えば、半導体ナノ粒子は、粒子間の距離をより短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る半導体ナノ粒子の構成を示す模式的な断面図である。
図2】半導体ナノ粒子の粒子本体のTEM観察結果と、粒子本体の表面に配位された単原子リガンドのEDX解析結果との重ね合わせを示す説明図である。
図3】半導体ナノ粒子のUV-Vis-NIRスペクトルを示すグラフ図である。
図4】同実施形態の変形例に係る半導体ナノ粒子の構成を示す模式的な断面図である。
図5】本開示の他の実施形態に係る分散液の構成を示す模式図である。
図6】本開示のさらに他の実施形態に係る半導体膜の構成を示す模式図である。
図7】同実施形態の変形例に係る半導体膜の構成を示す模式図である。
図8】本開示の一実施形態に係る撮像装置の全体構成を概略的に説明する模式図である。
図9】同実施形態に係る撮像装置における画素の断面構成の一例を示す縦断面図である。
図10】同実施形態に係る撮像装置における画素の断面構成の他の例を示す縦断面図である。
図11】本開示の一実施形態に係る撮像装置を備えた電子機器の構成例を示すブロック図である。
図12】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図13】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図14】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図15】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下で説明する実施形態は本開示の一具体例であって、本開示にかかる技術が以下の態様に限定されるわけではない。また、本開示の各構成要素の配置、寸法、及び寸法比等についても、各図に示す様態に限定されるわけではない。
【0012】
なお、説明は以下の順序で行う。
1.半導体ナノ粒子
1.1.構成例
1.2.実験例
1.3.変形例
2.分散液
3.半導体膜
4.撮像装置
4.1.全体構成
4.2.画素構成
5.適用例
【0013】
<1.半導体ナノ粒子>
(1.1.構成例)
まず、図1を参照して、本開示の一実施形態に係る半導体ナノ粒子について説明する。図1は、本実施形態に係る半導体ナノ粒子100の構成を示す模式的な断面図である。
【0014】
半導体ナノ粒子100は、数nm~数十nmの粒径を有する半導体結晶である。半導体ナノ粒子100は、組成及び粒径によってバンドギャップの大きさを制御することが可能であり、かつマルチエキシトン生成効果によって量子効率を高めることができるため、光電変換材料として注目されている。
【0015】
本実施形態に係る半導体ナノ粒子100は、光電変換材料として用いられる場合、より幅広い波長帯域の光を光電変換することが可能となる。例えば、本実施形態に係る半導体ナノ粒子100は、よりナローバンドギャップとなることで、吸収端波長をより大きくすることができる。したがって、本実施形態に係る半導体ナノ粒子100を光電変換層に含む撮像装置は、例えば、近赤外線(Near-InfraRed:NIR)を検出することが可能となる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体ナノ粒子100は、粒子本体101と、単原子リガンド102とを備える。
【0017】
粒子本体101は、I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む化合物半導体で構成された半導体コア103を有する。半導体コア103は、化合物半導体で構成されることにより、光を吸収し、励起子(エキシトン)を生成することができる。これにより、半導体ナノ粒子100を含む光電変換層は、生成された励起子にて電子及び正孔を分離することができるため、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0018】
例えば、粒子本体101の半導体コア103は、InN、InAs、InSb、AgS、AgSe、AgTe、CuFeS、CuFeSe、又はAgSbSeの少なくとも1つ以上を含む化合物半導体にて構成されてもよい。半導体コア103は、IV族元素であるPb(鉛)を含まない化合物半導体で構成されることにより、半導体ナノ粒子100の安全性をより高めることができる。また、半導体コア103は、II族元素であるZn(亜鉛)を含まない化合物半導体で構成されることにより、バンドギャップをより狭くすることができるため、近赤外線などの波長がより長い光を吸収することができる。
【0019】
具体的には、粒子本体101の半導体コア103は、I族元素及びVI族元素をそれぞれ含む化合物半導体で構成されてもよい。例えば、半導体コア103は、AgInSe、AgInTe、AgSe、又はAgTeの少なくとも1つ以上を含む化合物半導体にて構成されてもよい。これによれば、半導体ナノ粒子100は、より幅広い波長帯域の光を吸収することができるようになる。
【0020】
例えば、以下の表1に、AgInSe、AgInTe、AgSe、及びAgTeのバルク状態における吸収端波長を示す。なお、表1では、比較のために、CuInSのバルク状態における吸収端波長をも示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示すように、AgInSe、AgInTe、AgSe、及びAgTeは、バルク状態での吸収端波長が長波長側にシフトしている。したがって、粒子本体101の半導体コア103をAgInSe、AgInTe、AgSe、又はAgTeで構成することで、半導体ナノ粒子100は、より幅広い波長帯域の光を吸収することが可能となると考えられる。特に、AgSeは、バルク状態での吸収端波長が1400nm超であるため、AgSeで構成された半導体コア103を有する半導体ナノ粒子100は、紫外線から近赤外線までの幅広い波長帯域の光を吸収することが可能となると考えられる。したがって、このような半導体ナノ粒子100を光電変換層に含む撮像装置は、より広い波長範囲の光を検出することが可能となると考えられる。
【0023】
単原子リガンド102は、1つの原子で構成され、粒子本体101の表面に結合された配位子である。具体的には、単原子リガンド102は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は硫黄原子のいずれかであってもよい。より具体的には、単原子リガンド102は、2価イオンにイオン化された硫黄原子(すなわち、硫化物イオン)であってもよい。単原子リガンド102は、粒子本体101の表面に複数結合することによって、半導体ナノ粒子100の分散性を高めることができるため、半導体ナノ粒子100の凝集を抑制することができる。
【0024】
粒子本体101の表面に結合する単原子リガンド102などの配位子は、溶液法などを用いて半導体ナノ粒子100を形成する際に半導体ナノ粒子100の溶解性、反応性、又は安定性などの特性を制御するために設けられる。ただし、粒子本体101の表面に結合する配位子は、長鎖であるほど安定性が高く、かつ半導体ナノ粒子100の分散性を高めることができるものの、一方で半導体ナノ粒子100の粒子間距離を広げてしまうため、粒子間の電荷の移動度を低下させてしまう。
【0025】
本開示に係る技術では、半導体ナノ粒子100の粒子本体101の表面に結合する配位子を1つの原子で構成された単原子リガンド102とすることで、半導体ナノ粒子100の粒子間距離を狭くし、粒子間の電荷の移動度をより高めることができる。
【0026】
例えば、以下の表2に、粒子本体101の表面に結合する配位子の種類及び分子鎖長を示す。なお、表2において、オレイルアミン、オレイン酸、及び1-ドデカンチオールは、溶液法などを用いて半導体ナノ粒子100を形成する際に一般的に用いられる配位子である。
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示すように、硫黄原子は、他の配位子と比較して分子鎖長が極めて短いため、単原子リガンド102として粒子本体101に結合することにより、半導体ナノ粒子100の粒子間距離をより短くすることが可能である。したがって、単原子リガンド102は、半導体ナノ粒子100の粒子間の電荷の移動度をより高めることが可能である。
【0029】
このような半導体ナノ粒子100は、例えば、溶液法などを用いて形成された後、表面に結合された配位子を配位子交換によって単原子リガンド102に変換されることで形成され得る。半導体ナノ粒子100における配位子の交換は、例えば、以下の方法で行うことができる。
【0030】
具体的には、まず、溶液法にて形成されており、粒子本体101の表面にオレイン酸などの長鎖分子が配位している半導体ナノ粒子100を用意する。次に、長鎖分子が配位した半導体ナノ粒子100をオクタンなどの低極性溶媒に分散させた後、半導体ナノ粒子100の分散液をスピンコート法によって基板等に塗布する。その後、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は硫黄原子をイオンとして含む化合物(例えば、テトラブチルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物、又は硫化物)を極性溶媒に溶解させた溶液を塗布された半導体ナノ粒子100に滴下する。その後、極性溶媒を半導体ナノ粒子100上に滴下することで、交換された長鎖分子の配位子を洗浄する。上記の滴下及び洗浄の操作を10回程度繰り返すことで、配位子をオレイン酸などから塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は硫黄原子に交換することができる。
【0031】
本実施形態に係る半導体ナノ粒子100は、近赤外線を含む幅広い波長帯域の光を吸収することが可能であり、かつ粒子間での電荷の移動度を高めることができる。したがって、本実施形態に係る半導体ナノ粒子100を含む光電変換層を備える撮像装置は、近赤外線を含む幅広い波長帯域の光を光電変換した際の応答特性を向上させることができる。
【0032】
(1.2.実験例)
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る半導体ナノ粒子の実験例について説明する。
【0033】
半導体ナノ粒子は、溶液法を用いることで形成することができる。具体的には、オレイルアミンに酢酸銀、酢酸インジウム、及びセレノウレアを加え、N雰囲気下で250℃にて10分間反応させることで、半導体コアがAgInSeで構成された半導体ナノ粒子を形成した。また、形成された半導体ナノ粒子の表面には、溶液として用いたオレイルアミンが配位子として存在していた。なお、半導体ナノ粒子の平均粒径(例えば、半導体ナノ粒子の形状を球形に近似した場合の半導体ナノ粒子の平均直径)は、例えば、3nm以上10nm以下であった。
【0034】
その後、上記で形成した半導体ナノ粒子を含む溶液に硫化アンモニウム水溶液を加えることで、粒子本体の表面に配位する配位子を長鎖分子から単原子リガンドである硫黄原子に交換した。続いて、半導体ナノ粒子を含む溶液の溶媒を交換することで、長鎖分子の洗浄及び除去を行った。
【0035】
図2に、上記にて形成した半導体ナノ粒子の粒子本体のTEM(Transmission Electron Microscope)観察結果と、粒子本体の表面に配位された単原子リガンドのEDX(Energy Dispersive X-ray spectroscopy)解析結果と、これらの結果の重ね合わせ画像とを示す。
【0036】
図2に示すように、単原子リガンドである硫黄原子は、半導体ナノ粒子の粒子本体の表面に分布しており、上記方法により、粒子本体の表面の配位子が適切に単原子リガンドに交換されていることがわかる。これにより、本実施形態に係る半導体ナノ粒子の形成が確認された。
【0037】
また、図3に上記にて形成した半導体ナノ粒子のUV-Vis-NIRスペクトルを示す。図3では、硫化アンモニウム水溶液による配位子交換前(すなわち、配位子が長鎖分子)の半導体ナノ粒子のUV-Vis-NIRスペクトルと、配位子交換後(すなわち、配位子が単原子リガンド)の半導体ナノ粒子のUV-Vis-NIRスペクトルとを併せて示す。
【0038】
図3に示すように、本実施形態に係る半導体ナノ粒子は、配位子交換前後でUV-Vis-NIRスペクトルの形状が変わっていないため、硫化アンモニウム水溶液による配位子の交換は、光学的特性に影響を及ぼさないことがわかる。
【0039】
また、半導体コアがAgInSeで構成された半導体ナノ粒子の吸収端波長は、おおよそ1000nmであり、バルク状態の吸収端波長と同程度であることがわかる。したがって、上述したように、バルク状態での吸収端波長がより長波長の化合物半導体で半導体コアを構成することで、半導体ナノ粒子は、紫外線から近赤外線までの幅広い波長帯域の光を吸収可能であることがわかる。
【0040】
(1.3.変形例)
続いて、図4を参照して、図1にて示した半導体ナノ粒子100の変形例について説明する。図4は、変形例に係る半導体ナノ粒子100Aの構成を示す模式的な断面図である。
【0041】
図4に示すように、半導体ナノ粒子100Aの粒子本体101Aは、半導体コア103及びシェル104を有してもよい。すなわち、半導体ナノ粒子100Aの粒子本体101Aは、半導体コア103を覆うようにシェル104が形成されたコア-シェル構造にて設けられてもよい。なお、単原子リガンド102については、図1で示した半導体ナノ粒子100と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0042】
半導体コア103は、図1で示した半導体ナノ粒子100と同様に、I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む化合物半導体で構成される。具体的には、半導体コア103は、InN、InAs、InSb、AgS、AgSe、AgTe、CuFeS、CuFeSe、又はAgSbSeの少なくとも1つ以上を含む化合物半導体にて構成されてもよい。より具体的には、半導体コア103は、I族元素及びVI族元素をそれぞれ含む化合物半導体で構成されてもよく、例えば、AgInSe、AgInTe、AgSe、又はAgTeの少なくとも1つ以上を含む化合物半導体にて構成されてもよい。
【0043】
シェル104は、化合物半導体にて半導体コア103を覆うように設けられる。シェル104は、半導体コア103を保護することで、半導体ナノ粒子100Aをより安定化させることができる。具体的には、シェル104は、PbO、PbO、Pb、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaS、又はGaSeの少なくとも1つ以上を含んで設けられてもよい。なお、シェル104は、半導体コア103での光の吸収を妨げないためには、半導体ナノ粒子100Aにて吸収対象とする光の波長帯域よりも吸収端波長が短い化合物半導体で設けられることが好ましい。
【0044】
<2.分散液>
次に、図5を参照して、本開示の他の実施形態に係る分散液について説明する。図5は、本実施形態に係る分散液200の構成を示す模式図である。分散液200は、例えば、半導体ナノ粒子100を含む半導体膜の形成などに用いられるインクである。
【0045】
図5に示すように、本実施形態に係る分散液200は、上述した半導体ナノ粒子100を分散溶媒210に分散させることで構成される。分散液200は、半導体ナノ粒子100は、イオン化した単原子リガンド102の静電気的な斥力によって半導体ナノ粒子100を互いに反発させ合うことができるため、半導体ナノ粒子100を凝集させることなく分散させることができる。分散溶媒210は、例えば、高極性溶媒であってもよい。このような場合、分散溶媒210は、イオン化した単原子リガンド102を備える半導体ナノ粒子100をより適切に分散させることができる。
【0046】
本実施形態に係る分散液200は、単原子リガンド102を備える半導体ナノ粒子100をあらかじめ分散溶媒210に分散させることで、半導体ナノ粒子100を塗布成膜したのちに配位子交換を行うことを回避することができる。これによれば、本実施形態に係る分散液200は、塗布成膜された半導体ナノ粒子100に対して配位子交換を行う際に、半導体ナノ粒子100を含む膜に割れ等が生じることを回避することができる。
【0047】
<3.半導体膜>
続いて、図6を参照して、本開示のさらに他の実施形態に係る半導体膜について説明する。図6は、本実施形態に係る半導体膜300の構成を示す模式図である。半導体膜300は、例えば、撮像装置の光電変換層として用いられ得る。
【0048】
図6に示すように、本実施形態に係る半導体膜300は、基板310などの上に、上述した半導体ナノ粒子100を膜形成材料320に分散させることで構成され得る。膜形成材料320は、例えば、導電性高分子などであってもよい。または、膜形成材料320は、半導体ナノ粒子100とは異なる導電型の半導体材料であってもよい。さらには、半導体膜300は、膜形成材料320を含まず、基板310の上に塗布成膜された半導体ナノ粒子100のみにて構成されてもよい。
【0049】
半導体膜300は、例えば、半導体ナノ粒子100が分散された分散液200をスピンコート法などにて基板310上に塗布成膜し、分散液200の分散溶媒210を除去することで形成することができる。
【0050】
また、図7を参照して、半導体膜300の変形例について説明する。図7は、本実施形態の変形例に係る半導体膜300Aの構成を示す模式図である。
【0051】
図7に示すように、半導体膜300Aは、半導体ナノ粒子100の粒子間に金属イオン330をさらに備えていてもよい。
【0052】
具体的には、金属イオン330は、カチオンである。例えば、金属イオン330は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又は遷移金属イオンのいずれであってもよい。金属イオン330は、静電気的な引力にて半導体ナノ粒子100の粒子間にトラップされた分散溶媒210をイオン交換によって除去することができるため、半導体ナノ粒子100の粒子間距離をより近づけることができる。また、金属イオン330は、イオン化した単原子リガンド102との間で静電気的な引力を発生させることができるため、半導体ナノ粒子100の粒子間距離をより近づけることも可能である。
【0053】
<4.撮像装置>
次に、図8図10を参照して、本開示の一実施形態に係る撮像装置について説明する。本実施形態に係る撮像装置は、半導体ナノ粒子100を含む光電変換層を備え、半導体ナノ粒子100を含む光電変換層にて光電変換された電荷に基づいて画素信号を取得する撮像装置である。
【0054】
(4.1.全体構成)
まず、図8を参照して、本実施形態に係る撮像装置の全体構成について説明する。図8は、本開示の一実施形態に係る撮像装置1の全体構成を概略的に説明する模式図である。
【0055】
図8に示すように、本実施形態に係る撮像装置1は、例えば、画素2が行列状に二次元配列された画素アレイ部3と、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5、水平駆動回路6、信号処理回路7、及び制御回路8を含む周辺回路部とを備える。画素アレイ部3及び周辺回路部は、シリコン(Si)などの半導体で構成された基板上に設けられてもよい。
【0056】
画素2は、上述した半導体ナノ粒子100を含む光電変換層と、光電変換層にて生成された光電荷を画素信号に変換する画素トランジスタ群とを含む。画素トランジスタ群は、例えば、アンプトランジスタ、リセットトランジスタ、及び選択トランジスタなどの複数のMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタを含む。
【0057】
制御回路8は、周辺回路部に含まれる各回路を動作させるための各種信号を生成し、生成した各種信号を各回路に出力する。具体的には、制御回路8は、垂直同期信号、水平同期信号、及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5、及び水平駆動回路6などの動作を制御するクロック信号及び制御信号を生成する。また、制御回路8は、生成したクロック信号及び制御信号を垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5、及び水平駆動回路6に出力する。
【0058】
垂直駆動回路4は、例えば、シフトレジスタにて構成される。垂直駆動回路4は、所定の画素駆動線Lreadを選択し、選択した画素駆動線Lreadに画素2を駆動させるためのパルス信号を供給する。これにより、垂直駆動回路4は、行単位で画素2を駆動させることができる。換言すると、垂直駆動回路4は、画素アレイ部3の画素2の各々を垂直方向に走査しながら行単位で順次選択し、画素2の光電変換部にて生成された光電荷に基づく画素信号を、垂直信号線Lsigを介して信号処理回路7に出力させる。
【0059】
カラム信号処理回路5は、画素2の列ごとに設けられ、画素2から出力される画素信号を画素2の列ごとに信号処理する。例えば、カラム信号処理回路5は、画素2から出力される画素信号に対して、画素2に固有の固定パターンノイズを除去するためのCDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)処理、及びAD(Analog-Digital)変換処理などの信号処理を行ってもよい。
【0060】
水平駆動回路6は、例えば、シフトレジスタにて構成される。水平駆動回路6は、水平走査パルス信号によってカラム信号処理回路5の各々を順次選択し、カラム信号処理回路5の各々から画素信号を水平信号線9に出力させる。
【0061】
信号処理回路7は、カラム信号処理回路5の各々から水平信号線9を介して順次出力される画素信号に対して所定の信号処理を行い、信号処理された画素信号を撮像装置1の外部に出力する。例えば、信号処理回路7は、画素信号に対して暗電流補正、列ばらつき補正、又は各種デジタル信号処理などの所定の信号処理を行ってもよく、画素信号のバッファリングのみを行ってもよい。
【0062】
以上の構成を備える撮像装置1は、カラム信号処理回路5が画素2の列ごとに設けられたカラムAD方式と呼ばれるCMOSイメージセンサである。ただし、撮像装置1は、カラム信号処理回路5が画素2ごとに設けられた画素AD方式のCMOSイメージセンサであってもよい。
【0063】
(4.2.画素構成)
(第1の構成例)
続いて、図9を参照して、本実施形態に係る撮像装置1における画素2の第1の構成例についてより具体的に説明する。図9は、第1の構成例に係る画素2Aの断面構成を示す縦断面図である。
【0064】
図9に示すように、画素2Aでは、例えば、半導体基板30の第1面(裏面とも称される)30A側に光電変換部10が設けられる。光電変換部10は、対向配置された下部電極11と上部電極15との間に、上述した半導体ナノ粒子100を含む光電変換層14を備える。また、下部電極11と光電変換層14との間には、絶縁層12を介して半導体層13が設けられる。なお、半導体基板30の第1面30A側が光の入射面S1側であり、第1面30Aと反対側の第2面30B側が配線層面S2側である。
【0065】
光電変換部10は、選択的な波長帯域(例えば、700nm以上2500nm以下)の一部又は全部の光を吸収し、電子-正孔対を発生させる光電変換素子である。光電変換部10では、例えば、下部電極11は、画素2Aごとに互いに分離して設けられる。また、半導体層13、光電変換層14、及び上部電極15は、それぞれ画素2Aごとに互いに分離して設けられてもよく、複数の画素2Aに広がった連続層として設けられてもよい。
【0066】
光電変換層14は、上述した半導体ナノ粒子100を含む。光電変換層14は、例えば、導電性高分子中に複数の半導体ナノ粒子100が分散されることで設けられてもよい。光電変換層14は、対応する波長帯域の光を吸収した際に生じる励起子によって電子と正孔とが分離される場を提供する。光電変換層14は、半導体層13の伝導帯のエネルギー準位と等しい、又は半導体層13の伝導帯のエネルギー準位よりも浅いエネルギー準位となるように構成されてもよい。
【0067】
半導体層13は、光電変換層14内で発生した信号電荷を蓄積し、かつ信号電荷を下部電極11へ転送する。半導体層13は、光電変換層14よりも電荷の移動度が高く、かつバンドギャップが大きな材料を用いて形成されることで、下部電極11への電荷転送を高速化すると共に、下部電極11から半導体層13への電荷注入を抑制することができる。半導体層13は、例えば、酸化物半導体材料を含んで構成されてもよい。
【0068】
上部電極15は、光透過性を有する導電性材料により構成される。上部電極15は、画素2Aごとに分離されて設けられてもよく、複数の画素2Aに広がって設けられてもよい。上部電極15は、チタン(Ti)、銀(Ag)、又はアルミニウム(Al)などの下部電極11よりも仕事関数の高い導電性材料で形成されてもよい。また、上部電極15は、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)を積層した多層膜として形成されてもよい。
【0069】
なお、半導体層13と光電変換層14との間、及び光電変換層14と上部電極15との間には、他の層が設けられていてもよい。例えば、信号電荷として電子を読み出す場合、光電変換層14と上部電極15との間には、MoO、WO、又はVなどの仕事関数の大きな材料で構成される層が追加で設けられてもよい。これによれば、撮像装置1は、下部電極11と、上部電極15との間に発生する内部電界を強化することができる。
【0070】
下部電極11は、互いに独立した複数の読み出し電極11Aと、蓄積電極11Bと、読み出し電極11A及び蓄積電極11Bの間に配置された転送電極11Cとを有する。蓄積電極11B及び転送電極11Cは、絶縁層12によって覆われる。一方、読み出し電極11Aは、絶縁層12に設けられた開口12Hを介して半導体層13と電気的に接続される。下部電極11の各電極は、例えば、光透過性を有する導電性材料(透明導電性材料)を用いて形成されてもよい。または、下部電極11の各電極は、例えば、チタン(Ti)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、又は銅(Cu)などの金属材料にて極薄膜として形成されてもよい。
【0071】
読み出し電極11Aは、例えば、上部第1コンタクト17A、パッド部39A、貫通電極34、接続部41A、及び下部第2コンタクト46を介して、半導体基板30の第2面(表面とも称される)30B側に設けられたフローティングディフュージョンに接続される。読み出し電極11Aは、光電変換層14で発生した信号電荷をフローティングディフュージョンに転送することができる。
【0072】
蓄積電極11Bは、例えば、上部第2コンタクト17B、パッド部39B、及び図示しない配線等を介して電圧が印可される。蓄積電極11Bは、光電変換層14で発生した信号電荷を半導体層13に蓄積することができる。蓄積電極11Bは、より多くの電荷を蓄積するために、読み出し電極11Aよりも大きく設けられてもよい。
【0073】
転送電極11Cは、例えば、上部第3コンタクト17C及びパッド部39Cを介して駆動回路を構成する画素駆動回路に接続され、読み出し電極11Aと蓄積電極11Bとの間に設けられる。転送電極11Cは、蓄積電極11Bにて蓄積された信号電荷を読み出し電極11Aに転送する効率を向上させることができる。
【0074】
絶縁層12は、下部電極11を覆うように、例えば、層間絶縁層17上に設けられる。絶縁層12は、蓄積電極11B及び転送電極11Cと、半導体層13とを電気的に分離することができる。また、絶縁層12には、読み出し電極11Aに対応して開口12Hが設けられ、読み出し電極11A及び半導体層13は、開口12Hを介して電気的に接続される。絶縁層12は、ケイ素(Si)系の無機絶縁材料、又は有機樹脂系の有機絶縁材料で設けられてもよい。
【0075】
半導体基板30の第1面30Aと下部電極11との間には、例えば、固定電荷層16A、誘電体層16B、及び層間絶縁層17が設けられる。
【0076】
固定電荷層16Aは、正又は負の固定電荷を有する層である。例えば、固定電荷層16Aは、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、又は酸化チタンなどによって、負の固定電荷を有する層として設けられてもよい。このような場合、固定電荷層16Aは、正孔蓄積層として機能することが可能である。なお、固定電荷層16Aは、2種類以上の層を積層した積層構造にて設けられてもよい。
【0077】
誘電体層16Bは、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコンなどの絶縁性材料にて設けられてもよい。
【0078】
層間絶縁層17は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコンなどの1種からなる単層膜、又はこれらの2種以上からなる積層膜として設けられてもよい。
【0079】
上部電極15の上には、保護層18が設けられる。保護層18は、光透過性を有する材料により構成され、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコンなどの光透過性を有する絶縁性材料の1種いずれかよりなる単層膜、又はこれら2種以上からなる積層膜として設けられてもよい。
【0080】
保護層18の内部には、読み出し電極11Aに対応するように、遮光膜21が設けられる。具体的には、遮光膜21は、読み出し電極11Aと光電変換層14とが直接接している領域を少なくとも覆うように設けられてもよい。また、保護層18の内部には、蓄積電極11Bに対応するように、カラーフィルタ22が設けられる。カラーフィルタ22は、例えば、光電変換層14へ入射する光の波長帯域を制御することができる。なお、遮光膜21及びカラーフィルタ22は、保護層18の膜厚方向にて異なる位置に設けられてもよく、同じ位置に設けられてもよい。保護層18の入射面S1側には、オンチップレンズ23等の光学部材がさらに設けられる。
【0081】
半導体基板30は、例えば、n型のシリコン(Si)にて構成され、所定領域にpウェル31を有している。半導体基板30の第2面30Bには、例えば、フローティングディフュージョン(半導体基板30内のソース/ドレイン領域36Bが対応)、アンプトランジスタAMP、リセットトランジスタRST、選択トランジスタSEL、及び多層配線40が設けられる。なお、多層配線40は、例えば、絶縁層44の内部に積層された配線層41、42、43にて構成されてもよい。また、半導体基板30を貫通するように貫通電極34が設けられる。
【0082】
光電変換部10は、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGamp、及びリセットトランジスタRSTのソース/ドレイン領域36B(すなわち、フローティングディフュージョン)に電気的に接続されている。これにより、撮像装置1では、半導体基板30の第1面30A側に設けられた光電変換部10にて生じた信号電荷を半導体基板30の第2面30B側に良好に転送することができる。
【0083】
貫通電極34の一端は、例えば、配線層41内の接続部41Aに電気的に接続されている。具体的には、接続部41Aと、アンプトランジスタAMPのゲートGampとは、下部第1コンタクト45を介して電気的に接続されており、接続部41Aと、リセットトランジスタRSTのソース/ドレイン領域36B(すなわち、フローティングディフュージョン)とは、下部第2コンタクト46を介して電気的に接続されている。貫通電極34の他端は、例えば、パッド部39A及び上部第1コンタクト17Aを介して読み出し電極11Aに電気的に接続されている。貫通電極34は、光電変換部10と、アンプトランジスタAMPのゲートGamp及びフローティングディフュージョンとを電気的に接続することで、光電変換部10にて生じた信号電荷の伝送路として機能する。
【0084】
リセットトランジスタRSTは、ゲートGrstと、チャネル形成領域36Aと、ソース/ドレイン領域36B、36Cとから構成され、フローティングディフュージョンに蓄積された信号電荷を排出し、フローティングディフュージョンの電位をリセットすることができる。具体的には、ゲートGrstは、リセット線に電気的に接続され、ソース/ドレイン領域36Cは、アンプトランジスタAMPのソース/ドレイン領域35Bと領域を共有し、電源線に接続される。ソース/ドレイン領域36Bは、フローティングディフュージョンとして機能する。
【0085】
アンプトランジスタAMPは、ゲートGampと、チャネル形成領域35Aと、ソース/ドレイン領域35B、35Cとから構成され、光電変換部10で生じた信号電荷の電荷量を電圧に変調することができる。具体的には、ゲートGampは、下部第1コンタクト45、接続部41A、下部第2コンタクト46、及び貫通電極34を介して、読み出し電極11A及びリセットトランジスタRSTのソース/ドレイン領域36B(すなわち、フローティングディフュージョン)に電気的に接続される。ソース/ドレイン領域35Bは、リセットトランジスタRSTのソース/ドレイン領域36Cと領域を共有し、電源線に電気的に接続される。ソース/ドレイン領域35Cは、選択トランジスタSELのソース/ドレイン領域34Bと領域を共有する。
【0086】
選択トランジスタSELは、ゲートGselと、チャネル形成領域34Aと、ソース/ドレイン領域34B、34Cとから構成され、データ出力線への画素信号の出力可否を制御する。具体的には、ゲートGselは、選択線に電気的に接続される。ソース/ドレイン領域34Bは、アンプトランジスタAMPのソース/ドレイン領域35Cと領域を共有する。ソース/ドレイン領域34Cは、データ出力線に電気的に接続される。データ出力線からアンプトランジスタAMPにて電圧に変調された画素信号が出力される。
【0087】
第1の構成例に係る画素2Aを備える撮像装置1によれば、光電変換部10にて受光した近赤外線を含む光の画像データを取得することができる。
【0088】
(第2の構成例)
また、図10を参照して、本実施形態に係る撮像装置1における画素2の第2の構成例についてより具体的に説明する。図10は、第2の構成例に係る画素2Bの断面構成を示す縦断面図である。
【0089】
図10に示すように、第2の構成例に係る画素2Bは、互いに異なる波長帯域の光を選択的に光電変換する赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bを厚み方向に積層した構造を有する。
【0090】
具体的には、画素2Bは、半導体基板110に、絶縁層112、赤色光電変換部120R、絶縁層124、緑色光電変換部120G、絶縁層125、青色光電変換部120B、保護層131、及び平坦化層132を順に積層した積層構造を有する。さらに、画素2Bでは、平坦化層32の上にオンチップレンズ33がさらに設けられる。
【0091】
第2の構成例に係る画素2Bでは、赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bが光の入射方向に積層されて設けられる。したがって、画素2Bでは、カラーフィルタ等を用いることなく、1画素にて複数の色信号を取得することができる。このような画素2Bの分光方式は、縦型分光とも称される。赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、又は青色光電変換部120Bの少なくとも1つ以上は、光電変換する光の波長に対応した半導体ナノ粒子100を含んでもよい。
【0092】
半導体基板110は、例えば、p型のシリコン(Si)基板である。半導体基板120の所定の領域には、赤色蓄電層110R、緑色蓄電層110G、及び青色蓄電層110Bがn型領域として設けられる。赤色蓄電層110R、緑色蓄電層110G、及び青色蓄電層110Bの各々には、それぞれ赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bにて光電変換された信号電荷が蓄積される。赤色蓄電層110R、緑色蓄電層110G、及び青色蓄電層110Bは、例えば、半導体基板110にリン(P)又はヒ素(As)等のn型不純物をドーピングすることで形成されてもよい。
【0093】
半導体基板110の絶縁層112が設けられた面と反対側の面には、赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bの各々に対応する画素トランジスタ群、及びロジック回路等の周辺回路部が形成された回路形成層が設けられる(図示せず)。
【0094】
画素トランジスタ群は、例えば、転送トランジスタ、リセットトランジスタ、アンプトランジスタ、及び選択トランジスタなどのMOSトランジスタを含んでもよい。画素トランジスタ群は、赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bごとに設けられ、赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bの各々で光電変換された信号電荷を画素信号に変換する。
【0095】
絶縁層112は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、又は酸化ハフニウム等により構成される。絶縁層112は、上述した材料の単層又は多層構造にて設けられてもよい。絶縁層112には、赤色蓄電層110Rと、赤色光電変換部120Rとを電気的に接続するプラグ又は電極(図示せず)が設けられる。同様に、絶縁層112には、緑色蓄電層110Gと、緑色光電変換部120Gとを電気的に接続するプラグ又は電極(図示せず)が設けられ、青色蓄電層110Bと、青色光電変換部120Bとを電気的に接続するプラグ又は電極(図示せず)が設けられる。
【0096】
赤色光電変換部120Rは、絶縁層112の上に、第1電極121Rと、半導体膜122Rと、第2電極123Rとを順に積層することで構成される。赤色光電変換部120Rは、赤色光(例えば、600nm~750nmの波長帯域の光)を選択的に吸収することで、電子-正孔対を発生させる。
【0097】
緑色光電変換部120Gは、絶縁層124の上に、第1電極121Gと、半導体膜122Gと、第2電極123Gとを順に積層することで構成される。緑色光電変換部120Gは、緑色光(例えば、500nm~650nmの波長帯域の光)を選択的に吸収することで、電子-正孔対を発生させる。
【0098】
青色光電変換部120Bは、絶縁層125の上に、第1電極121Bと、半導体膜122Bと、第2電極123Bを順に積層することで構成される。青色光電変換部120Bは、青色光(例えば、400nm~550nmの波長帯域の光)を選択的に吸収することで、電子-正孔対を発生させる。
【0099】
半導体膜122R、122G、122Bは、選択的な波長帯域の光(すなわち、赤色光、緑色光、又は青色光)をそれぞれ吸収することで、電子-正孔対を発生させる光電変換層である。
【0100】
第1電極121R、121G、121Bは、例えば、画素ごとに設けられ、半導体基板110の内部に設けられた図示しないプラグに電気的に接続される。第1電極121R、121G、121Bは、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide)などの光透過性を有する透明導電材料により構成されてもよい。
【0101】
第2電極123R、123G、123Bは、図示しないコンタクト部を介して、半導体基板110の絶縁層112が設けられた面と反対側の面に設けられた回路形成層の電源又はグランド等に電気的に接続される。第2電極123R、123G、123Bは、第1電極121R、121G、121Bと同様に、透明導電材料により構成されてもよい。
【0102】
なお、半導体膜122Rと第2電極123Rとの間、半導体膜122Gと第2電極123Gとの間、及び半導体膜122Bと第2電極123Bとの間には、それぞれ正孔輸送層が設けられてもよい。正孔輸送層は、例えば、酸化モリブデン又は酸化ニッケル等により構成されることができる。正孔輸送層は、半導体膜122R、122G、122Bから信号電荷として正孔が取り出される場合、半導体膜122R、122G、122Bで生じた正孔が第2電極123R、123G、123Bへ移動することを促進することができる。正孔輸送層は、酸化モリブデンと酸化ニッケルとの積層構造にて構成されてもよい。
【0103】
絶縁層124、125は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、又は酸化ハフニウム等により構成される。絶縁層124、125は、上述した材料の単層又は多層構造にて設けられてもよい。
【0104】
保護層131は、光透過性を有する材料にて設けられる。例えば、保護層131は、酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコン等の単層膜又は積層膜にて設けられてもよい。保護層131は、外界の水分等から赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bを保護することができる。
【0105】
平坦化層132は、アクリル系樹脂材料、スチレン系樹脂材料、又はエポキシ系樹脂材料にて設けられてもよい。なお、平坦化層132は、必要に応じて設けられる。
【0106】
オンチップレンズ133は、入射した光を赤色光電変換部120R、緑色光電変換部120G、及び青色光電変換部120Bの各々の受光面に集光させることができる。
【0107】
第2の構成例に係る画素2Bを備える撮像装置1によれば、1画素にて近赤外線を含むより幅広い波長範囲の複数の信号を取得することができる。
【0108】
(電子機器への適用)
本開示に係る技術は、固体撮像装置に加えて光学レンズ系等を有するカメラモジュール、デジタルスチルカメラ若しくはビデオカメラ等の撮像装置、撮像機能を有する携帯端末装置(例えばスマートフォン又はタブレット型端末)、又は画像読取部として固体撮像装置が用いられた複写機など、固体撮像装置を有する電子機器全般に対して適用されてもよい。
【0109】
図11は、上記実施形態及び変形例に係る撮像装置1を備えた電子機器1000の構成例を示すブロック図である。
【0110】
電子機器1000は、例えば、上述したように、デジタルスチルカメラ若しくはビデオカメラ等の撮像装置、又はスマートフォン若しくはタブレット型端末等の携帯端末装置などの電子機器である。
【0111】
図11に示すように、電子機器1000は、例えば、レンズ1100、シャッタ1120、上記実施形態に係る撮像装置1、DSP(Digital Signal Processor)回路1210、フレームメモリ1220、表示部1230、記憶部1240、操作部1250、及び電源部1260を備える。DSP回路1210、フレームメモリ1220、表示部1230、記憶部1240、操作部1250、及び電源部1260は、バスライン1270を介して相互に接続されている。
【0112】
撮像装置1は、レンズ1100及びシャッタ1120を介して入射した光に応じた画像データを出力する。DSP回路1210は、撮像装置1から出力される画像データを信号処理する回路である。フレームメモリ1220は、DSP回路1210により信号処理された画像データをフレーム単位で一時的に保持する記憶装置である。表示部1230は、例えば、液晶表示装置又はOLED(Organic Light Emitting Diode)表示装置を含み、撮像装置1で撮像された動画又は静止画を画像データに基づいて表示する。記憶部1240は、撮像装置1で撮像された動画又は静止画の画像データを記憶する半導体メモリ又はハードディスクドライブ等の記憶装置である。操作部1250は、ユーザによる操作に基づいて、電子機器1000の各種の機能に対する操作指示を出力する入力装置である。電源部1260は、DSP回路1210、フレームメモリ1220、表示部1230、記憶部1240、及び操作部1250の動作電源であり、各部に対して電力を適宜供給する。
【0113】
(移動体への適用)
例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置に対して適用されてもよい。
【0114】
図12は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0115】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図12に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0116】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0117】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0118】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0119】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0120】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0121】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0122】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0123】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0124】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図12の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0125】
図13は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0126】
図13では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0127】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0128】
なお、図13には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0129】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0130】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0131】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0132】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0133】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031等に適用され得る。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、光電変換時の応答特性を向上させることができるため、より高画質の撮像画像を得ることができるため、マイクロコンピュータ12051は、自動運転等をより高精度に行うことができる。
【0134】
(内視鏡手術システムへの適用)
例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0135】
図14は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0136】
図14では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0137】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0138】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0139】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0140】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0141】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0142】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0143】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0144】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0145】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0146】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0147】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0148】
図15は、図14に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0149】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0150】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0151】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0152】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0153】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0154】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0155】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0156】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0157】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0158】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0159】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0160】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0161】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0162】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0163】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0164】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0165】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、内視鏡11100やカメラヘッド11102の撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、例えば、光電変換時の応答特性を向上させることができるため、より高画質の撮像画像を得ることができる。したがって、内視鏡手術システムは、術者に術部を直接観察している場合と同様の感覚で処置を行わせることが可能になる。
【0166】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0167】
以上、実施形態を挙げて、本開示にかかる技術を説明した。ただし、本開示にかかる技術は、上記実施形態等に限定されるわけではなく、種々の変形が可能である。
【0168】
さらに、各実施形態で説明した構成および動作の全てが本開示の構成および動作として必須であるとは限らない。たとえば、各実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素は、任意の構成要素として理解されるべきである。
【0169】
本明細書および添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるとして記載された様態に限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するとして記載された様態に限定されない」と解釈されるべきである。
【0170】
本明細書で使用した用語には、単に説明の便宜のために用いており、構成及び動作を限定する目的で使用したわけではない用語が含まれる。たとえば、「右」、「左」、「上」、「下」などの用語は、参照している図面上での方向を示しているにすぎない。また、「内側」、「外側」という用語は、それぞれ、注目要素の中心に向かう方向、注目要素の中心から離れる方向を示しているにすぎない。これらに類似する用語や同様の趣旨の用語についても同様である。
【0171】
なお、本開示にかかる技術は、以下のような構成を取ることも可能である。以下の構成を備える本開示にかかる技術によれば、半導体コアを有する粒子本体と、粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子の粒子間距離を短くすることで、半導体ナノ粒子の間の電荷の移動度をより高めることができる。したがって、半導体ナノ粒子を含む光電変換層を備える撮像装置は、光電変換時の応答特性をより高めることができるため、より高画質の撮像画像を取得することができる。本開示にかかる技術が奏する効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるわけではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
(1)
半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子
を含む光電変換層を備える、撮像装置。
(2)
前記半導体コアは、I族元素及びVI族元素をそれぞれ含む、上記(1)に記載の撮像装置。
(3)
前記半導体コアは、AgInSe、AgInTe、AgSe、又はAgTeの少なくとも1つ以上を含む、上記(2)に記載の撮像装置。
(4)
前記単原子リガンドは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は硫黄原子のいずれかである、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(5)
前記単原子リガンドは、硫黄原子である、上記(4)に記載の撮像装置。
(6)
前記粒子本体は、前記半導体コアを覆うように設けられたシェルをさらに有し、
前記シェルは、PbO、PbO、Pb、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaS、又はGaSeの少なくとも1つ以上を含む、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(7)
前記光電変換層は、前記半導体ナノ粒子の間に介在する金属イオンをさらに含む、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(8)
I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子
を含む、半導体膜。
(9)
I族元素、III族元素、V族元素、及びVI族元素のうちから選択された少なくとも2以上の元素を含む半導体コアを有する粒子本体と、前記粒子本体の表面に結合した単原子リガンドとを含む半導体ナノ粒子
を含む、分散液。
【符号の説明】
【0172】
1…撮像装置、2,2A,2B…画素、3…画素アレイ部、4…垂直駆動回路、5…カラム信号処理回路、6…水平駆動回路、7…信号処理回路、8…制御回路、9…水平信号線、100、100A…半導体ナノ粒子、101、101A…粒子本体、102…単原子リガンド、103…半導体コア、104…シェル、200…分散液、210…分散溶媒、300、300A…半導体膜、310…基板、320…膜形成材料、330…金属イオン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15