(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019513
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】回転絞り弁式気化器
(51)【国際特許分類】
F02M 9/08 20060101AFI20220120BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
F02M9/08 A
F02D9/02 351C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015346
(22)【出願日】2021-02-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020121728
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307043902
【氏名又は名称】ザマ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大佑
(72)【発明者】
【氏名】和田 尚也
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA22
3G065EA01
3G065FA09
3G065GA43
3G065KA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品構成が少なく、始動性が初期状態に比べて低下したとしても部品などの交換を要することなく容易に調整が可能な回転絞り弁式気化器を提供する。
【解決手段】冷間始動時に絞り弁レバー13を手動の操作カム21によって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁を空気増量状態としてエンジンを起動させる始動機構20を有する回転絞り弁式気化器において、始動機構20が、頂面の先端に形成した係止突起の基端側を絞り弁に螺挿された調節ねじ22の先端を係止する係止部とした横断面が横P形であって付勢部材により常時は基端方向に付勢されて直線的に往復動する直動カムである手動の操作カム21と、絞り弁レバー13に貫通形成され絞り弁の中心軸線に並行な中心軸を有するねじ孔に螺挿されてその先端を操作カム21に当接させる調節ねじ22とから形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り通孔および計量針を有し気化器本体の吸気通路に直交させて配置された円柱形の絞り弁と、定燃料室に接続され前記絞り通孔内に開口して前記計量針が挿入された燃料ノズルとを具えており、前記絞り弁に固着した絞り弁レバーのアクセル操作に応じた旋回動により前記絞り弁が回転しながら自身の中心軸線方向へ移動して空気流量と燃料流量とを制御するとともに、冷間始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーを前記絞り弁の回転軸に直交する面において直線的に往復動する操作カムによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁を空気増量状態としてエンジンを起動させる始動機構を有し、前記始動機構が前記操作カムと、前記絞り弁レバーに貫通形成され前記絞り弁の中心軸線に並行な中心軸を有するねじ孔に螺挿されてその先端を前記操作カムに当接させる調節ねじとから形成され、前記調節ねじの回転操作により前記絞り弁レバーからの突出長さを調節して前記手動の操作カムによる始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能とした回転絞り弁式気化器において、
前記始動機構を形成する操作カムが、その頂面の先端に形成した係止突起の基端側を前記絞り弁に螺挿された調節ねじの先端を係止する係止部とした横断面が横P形であって付勢部材により常時は基端方向に付勢されて直線的に往復動する直動カムであり、前記操作カムを先端方向に移動させて冷間始動時の旋回位置にある絞り弁レバーの前記調節ねじを前記係止突起により押し上げて前記係止部に当接させて絞り弁レバーを所定の高さ位置に保持させ、始動した後に前記絞り弁レバーを回転させて前記係止部に保持させた調節ねじとの係合を解除させて前記操作カムを前記付勢部材により非作動時の元の状態に復帰させることを特徴とする回転絞り弁式気化器。
【請求項2】
前記調節ねじの基端に形成された操作部が前記絞り弁レバーの頂面に露出しており、前記絞り弁レバーの頂面側から調節ねじを操作して前記手動の操作カムによる前記絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能としたことを特徴とする請求項1記載の回転絞り弁式気化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル弁を弁軸方向に移動させるカム機構を備えた回転絞り弁式気化器(ロータリー式気化器)に関する。
【背景技術】
【0002】
農・林業用の携帯作業機械や小型車両などのエンジンに気化燃料を供給する装置として、スロットル弁(絞り弁)を弁軸方向に移動させるためのカム機構を備えた回転絞り弁式気化器が広く普及している。
【0003】
この回転絞り弁式気化器では、気化器本体の吸気通路に直交させてスロットル弁孔及び計量針を有した円柱状のスロットル弁を配置し、このスロットル弁をアクセル操作に応じて回動させながらその弁軸方向に移動させることにより、スロットル弁孔の吸気通路との重なり度合いを変更しながら空気流量を制御するとともに、計量針の燃料ノズルへの挿入深さを変えて燃料流量を制御するようになっている。
【0004】
ところで、エンジンを始動するとき、冷間時にあっては温間時に比べて高濃度混合気を必要とするので、燃料系統が単一である回転絞り弁式気化器においては計量針の燃料ノズルへの挿入深さをアイドル時よりも浅くして燃料噴口の開口面積を大きくすることにより燃料を増量させる始動機構が備えられている。
【0005】
そして、始動機構の手段として、絞り弁に固着されてアクセル操作を伝達する絞り弁レバーを手動のカムによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させてエンジンを始動させるようにしたものが知られており、例えば、実開平6-83943号公報、実開平6-67841号公報、特開平10-131808号公報、特開2000-161142号公報などに提示されて実施されている。
【0006】
しかしながら、前記公報に提示されている回転絞り弁式気化器の始動機構は、絞り弁レバーを押し上げるカムが一律であり、冷間時における絞り弁レバーの押し上げ位置が固定されていた。
【0007】
そのため、長期の使用により性能が劣化したエンジンや、ガソリンなどの影響により始動性が初期状態に比べて低下し、初めに装着したカムと絞り弁レバーとの組み合わせではエンジンが始動しない、或いは始動し難いと言う問題が生じる。
【0008】
また、各エンジンの状態に合わせてカムと絞り弁レバーとの組み合わせを調整するには、エンジンに合わせた部品構成が必要であり、予め複数種類のカムなどの部品を揃えることになり部品の管理や組み立てが面倒で、経済的負担も大きい。
【0009】
更に、カムや絞り弁レバーなどの部品における集積公差によって、始動時の燃料流量が異なるため、出荷時の流量調整に多大な時間を要するばかりか性能を満足できない場合が生じることにもなる。
【0010】
そこで、
図5に示すように、冷間始動時に始動時の旋回位置にある絞り弁レバー1aを手動の操作カム2aによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁3aを空気増量状態としてエンジン(図示せず)を起動させる始動機構を有するとともに、前記始動機構が、手動の操作カム2a、前記絞り弁レバー3aに貫通形成され前記絞り弁の中心軸線に並行な中心軸を有するねじ孔4aに螺挿されてその先端を前記手動の操作カム2aに当接させる調節ねじ5aとから形成され、前記調節ねじ5aの回転操作により前記絞り弁レバー1aからの突出長さを調節して前記手動の操作カム2aによる始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバー1aの押し上げ位置を調整可能とした回転絞り弁式気化器が特開2008-31858号公報に提示されており、このような始動機構を有する回転絞り弁式気化器長期の使用により性能が劣化したエンジンや、ガソリンなどの影響により始動性が初期状態に比べて低下したとしても部品などの交換を要することなく調整が可能な冷間始動時に前記絞り弁レバーを手動の操作カムによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁を空気増量状態としてエンジンを起動させることができる。
【0011】
しかしながら、この公報に提示されている従来の絞り弁レバー1aの押し上げ位置を調整可能とした始動機構を有する回転絞り弁式気化器は、先端に傾斜面を有する直線方向に往復動する操作カム2aのカム面は冷間始動時に前記絞り弁レバー1aを押し上げ位置に持ち上げるだけであり、持ち上げた状態に保持する保持手段を冷間時に操作カム2aを前記絞り弁レバー1aの中心軸に固着した回転カム6aと前記操作カム2aの先端に前記回転カム6aの周面に形成されたカム面に係合するカムねじ7aとからなる前記操作カム2aの先端を前記調節ねじ5aの位置に保持させるための保持機構を別途に必要としていた。
【0012】
そのため、構成が複雑となり、部品点数の増加などによる製造工程の増加や高価格化、更には集積公差のバラツキが生じ易いなどの問題があった。
【0013】
また、前記従来の絞り弁レバー1aの押し上げ位置を調整可能とした始動機構を有する回転絞り弁式気化器における前記絞り弁レバー1aに螺挿された調節ねじ5aを介して押し上げ位置を調節可能に持ち上げる直線方向に往復動する手動の操作カム2aは、前記絞り弁レバー1aの弁軸に固着した回転カム6aに係止して前記操作カム2aを絞り弁レバー1aが冷間位置にあるように保持するものであり、エンジンによる振動によって、セットが解除されるおそれがあり、また、同一の操作カムで異なるアドバンス角度を有する排気量が異なる気化器に使用することができなくなり、更に、前記回転カム6aに係止して前記操作カム2aを絞り弁レバー1aが冷間位置にあるように保持するものであり、回転カム6aの分だけ冷間位置からスロットル全開までの間のセット状態が短くなると言う課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開平6-83943号公報
【特許文献2】実開平6-67841号公報
【特許文献3】特開平10-131808号公報
【特許文献4】特開2000-161142号公報
【特許文献5】特開2008-31858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記従来の絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能とした始動機構を有する回転絞り弁式気化器における課題を解決するためになされたものであり、部品構成が少なくて済むので経済的であり、部品などの集積公差のバラツキがあっても始動時の燃料流量の調整が容易であるとともに、長期の使用により性能が劣化したエンジンや、ガソリンなどの影響により始動性が初期状態に比べて低下したとしても部品などの交換を要することなく調整が可能で、更に、エンジンによる振動によって、セットが解除される心配がなく、同一の操作カムで異なるアドバンス角度を有する排気量が異なる気化器に使用することが可能であり、冷間位置からスロットル全開までの間のセット状態が短くなることのない絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能とした始動機構を有する回転絞り弁式気化器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するためになされた本発明である回転絞り弁式気化器は、絞り通孔および計量針を有し気化器本体の吸気通路に直交させて配置された円柱形の絞り弁と、定燃料室に接続され前記絞り通孔内に開口して前記計量針が挿入された燃料ノズルとを具えており、前記絞り弁に固着した絞り弁レバーのアクセル操作に応じた旋回動により前記絞り弁が回転しながら自身の中心軸線方向へ移動して空気流量と燃料流量とを制御するとともに、冷間始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーを前記絞り弁の回転軸に直交する面において直線的に往復動する操作カムによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁を空気増量状態としてエンジンを起動させる始動機構を有し、前記始動機構が前記操作カムと、前記絞り弁レバーに貫通形成され前記絞り弁の中心軸線に並行な中心軸を有するねじ孔に螺挿されてその先端を前記操作カムに当接させる調節ねじとから形成され、前記調節ねじの回転操作により前記絞り弁レバーからの突出長さを調節して前記手動の操作カムによる始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能とした回転絞り弁式気化器において、前記始動機構を形成する操作カムが、その頂面の先端に形成した係止突起の基端側を前記絞り弁に螺挿された調節ねじの先端を係止する係止部とした横断面が横P形であって付勢部材により常時は基端方向に付勢されて直線的に往復動する直動カムであり、前記操作カムを先端方向に移動させて冷間始動時の旋回位置にある絞り弁レバーの前記調節ねじを前記係止突起により押し上げて前記係止部に当接させて絞り弁レバーを所定の高さ位置に保持させ、始動した後に前記絞り弁レバーを回転させて前記係止部に保持させた調節ねじとの係合を解除させて前記操作カムを前記付勢部材により非作動時の元の状態に復帰させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明において、前記調節ねじの基端に形成された操作部が前記絞り弁レバーの頂面に露出しており、前記絞り弁レバーの頂面側から調節ねじを操作して前記手動の操作カムによる前記絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能とした場合には、部品を分解することなく簡単且つ迅速に調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のような始動機構を具えた本発明によると、冷間起動を容易且つ確実に行なうことができるとともに、部品構成が少なくて済むので経済的であり、部品などの集積公差のバラツキがあっても始動時の燃料流量の調整が容易であるとともに、長期の使用により性能が劣化したエンジンや、ガソリンなどの影響により始動性が初期状態に比べて低下したとしても部品などの交換を要することなく簡単に調整が可能な冷間始動時に前記絞り弁レバーを手動の操作カムによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁を空気増量状態としてエンジンを起動させる始動機構を有する回転絞り弁式気化器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態を示す外観概略図である。
【
図2】
図1に示した実施の形態における部分縦断面図である。
【
図3】
図1に示した実施の形態における始動機構が作動時の一部分解斜視図である。
【
図4】
図1に示した実施の形態における始動装置の部分を拡大した縦断面図であり、(a)は始動機構が非作動時を、(b)は始動機構が作動時を示す。
【
図5】従来の押し上げ位置を調整可能とした始動機構を有する回転絞り弁式気化器を示すものであり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0021】
図1乃至
図4は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、気化器本体1は前後に貫通した吸気通路2およびこれと直交し下端が閉止された弁孔3を有しており、円柱形の絞り弁4が弁孔3に回転可能且つ自身の中心軸線方向へ移動可能に嵌込まれている。
【0022】
また、絞り弁4はその中心軸線に直交して吸気通路2とほぼ同一径の絞り通孔5を有しており、その中心軸線上に位置させてノズル挿通孔6,計量針7,弁軸8を有している。
【0023】
そして、前記ノズル挿通孔6が前記弁孔3の閉止端側に設けられて燃料ノズル9を挿通させており、弁軸8は弁孔3の開放端側に位置する絞り弁4の端部に固結されているとともに、弁孔3の頂部に形成される開放端面を覆ったカバー体10を貫通して気化器本体1の外部へ突出して延びている。計量針7は弁軸8のねじ孔81にねじ込んだ調節ねじ11に押しばね12のばね作用で押付けられており、調節ねじ11のねじ込み位置により絞り通孔5への突出長さ、即ち、アイドル位置における燃料ノズル9への挿入深さを調節可能として絞り弁4に保持されている。
【0024】
更に、前記弁軸8の軸端には運転者のアクセル操作によって旋回する絞り弁レバー13が固着されているとともに、絞り弁4とカバー体10との間には両端をこれらに固定したねじりコイルばねからなる閉弁ばね14が弁軸8を囲んで装入されている。
【0025】
また、絞り弁4の弁軸8側の端部にフランジ41が設けられており、その吸気通路2へ向かう下面にカム16が形成されていて、気化器本体1に突設したピン15にカム16が接しており、アクセル操作によって絞り弁レバー13を旋回させると、絞り弁4が一体に回転して絞り通孔5の吸気通路2との重なり度合いが変わることによってエンジンに送られる空気流量が制御される。
【0026】
これと同時に、前記ピン15に接したカム16に従って絞り弁4が自身の中心軸線方向へ移動して計量針7の燃料ノズル9への挿入深さが変わることによって燃料噴口91から吸い出される燃料流量が制御されるものである。
【0027】
また、気化器本体1の吸気通路2を挟んでカバー体10と反対側の端面には、広く知られている膜式気化器と同じ定燃料室17がダイヤフラム18により大気から区画されて設けられており、この定燃料室17の燃料が燃料ノズル9に送られて計量針7により開口面積が規制された燃料噴口91から絞り通孔5の内部に吸い出され、また、エンジンのクラ設置されており、手動式のプライマリーポンプ19、絞り弁4、定燃料室17、ダイヤフラム18を具えた構成は従来から知られている回転絞り弁式気化器と同じである。
【0028】
一方、本実施の形態は、カバー体10の頂面101に本発明の主要部分である始動機構20が設置されている。
【0029】
この始動機構20は、
図4(a)に示すように、前記気化器本体1におけるカバー体10の頂面101から所定距離L1を空けて弁軸8(
図1および
図3参照)の軸端に配置される前記絞り弁レバー13と、前記カバー体10の頂面101における所定位置に配置した手動式の操作カム21とからなり、冷間始動時に例えばアクセルワイヤーなど(図示せず)により前記絞り弁レバー13を予め定めた始動時の回転位置に保持して、操作カム21によりカバー体10の頂面101から
図3(b)に示すように所定距離L2の位置に押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて前記
図1および
図2に示した計量針7の燃料ノズル9への挿入深さをアイドル時よりも浅くして燃料噴口91の開口面積を大きくすることにより燃料を増量させるようにして冷間時にエンジンを始動させるように基本的に従来の始動装置と同様であるが、本実施の形態は前記絞り弁レバー13におけるカバー体10の頂面101から所定距離L2を調整可能にした点が特徴である。
【0030】
そして、本実施の形態に用いられる始動機構20は、前記操作カム21と、前記操作カム21の先端に形成した係止突起211の基端側に形成される係止部212に係止する前記絞り弁レバー13に貫通、形成した絞り弁4(
図2参照)の中心軸心に並行な中心軸を有するねじ孔27に螺入させた調節ねじ22とから構成される。
【0031】
更に、詳細に説明すると、前記操作カム21は、前記カバー体10に取付られた保持部材23により前記絞り弁レバー13が始動位置において前記調節ねじ22がほぼ中心軸線上に位置するとともに前記絞り弁レバー13の軸芯に向けて直線的に往復動可能に保持されており、殊に、始動機構20を使用しない常温時のようにエンジン温度が冷間でないときには、
図4(a)に示すように、操作カム21が保持部材23との間に架設された圧縮ばねである付勢部材24により矢印方向に付勢されるとともにカバー体10に取付られた停止ピン25により先端に形成した係止突起211が前記絞り弁レバー13の調節ねじ22の手前に位置する状態に保持される。
【0032】
そして、冷間時において始動機構20を使用する場合には、
図4(b)に示すように操作カム21の基端に形成されている押圧部213を付勢部材24の付勢力に抗して前記図示する矢印方向に前進させると、前記調節ねじ22の先端221が前記係止突起211を乗り越えて基端側に形成される係止部212に係止して、前記絞り弁レバー13をカバー体10の頂面101から所定距離L2位置である冷間時の位置に押し上げるので前記
図2に示した計量針7の燃料ノズルへの挿入深さをアイドル時よりも浅くして燃料噴口の開口面積を大きくすることにより燃料を増量させるようにして冷間時にエンジンを始動させ易くする。
【0033】
このとき、本実施の形態は、前記始動機構20を構成する前記絞り弁レバー13に形成したねじ孔25に螺入された調節ねじ22の回転操作により前記絞り弁レバー13からの突出長さを調節して前記手動の操作カム21による前記絞り弁レバー13の押し上げ位置を調整可能としたことにより製造時において部品の追加や交換をすることなく冷間始動の調整が容易且つ確実で経済面でも有利であり、その後、長期の使用により性能が劣化したエンジンや、ガソリンなどの影響により始動性が初期状態に比べて低下したとしてもきわめて容易に再調整が可能である。
【0034】
また、本実施の形態では、前記調節ねじ22が前記絞り弁レバー13に形成されたねじ孔27に螺入されていて、基端に形成された操作部222が前記絞り弁レバー13に頂面に露出しており、前記絞り弁レバー13の頂面側からドライバーのような工具28により調節ねじ22を操作して前記手動の操作カム21による前記絞り弁レバー13の押し上げ位置を調整可能としているので調整作業もきわめて容易である。
【0035】
特に、本実施の形態は、冷間始動時に絞り弁レバー13に備えた調節ねじ22を係止させる操作カム21の係止部212を形成する係止突起211が操作カム21の往復移動方向の動きを直接的に制限するものであり、そのための機構を別途に備える必要がないので部品の増加や組み立て、更には集積公差のバラツキもなく、操作カム21と絞り弁レバー13とが互いの軸線方向に噛み合って付勢部材24により確実に冷間位置において拘束されるのでエンジンの振動などにより外れる恐れも少ない。
【0036】
更に、本実施の形態は、操作カム21の係止部212に係止した調節ねじ22は幅方向への移動は自由であり、冷間時に始動装置20を作動させてエンジンを始動した後はアクセル操作でエンジン回転を上げることで前記絞り弁レバー13が回転して調節ねじ22が始動位置から回転して前記操作カム21の係止部212から離脱して前記操作カム21と絞り弁レバー13に備えた調節ねじ22との係合が解除され操作カム21は保持部材23との間に挿入された圧縮ばねである付勢部材24により外方向に停止ピン25まで押されて
図3(a)に示した始動装置20が非作動時の元の状態へと確実に復帰する。
【0037】
更にまた、本実施の形態は操作カム21と絞り弁レバー13とが互いの軸線方向において直接的に噛み合うことで従来の水平方向に係止する回転カムによる絞り弁レバーの冷間保持機構に比べて回転域の冷間位置に要する領域が少なくて済むので冷間位置からスロットル全開までの間のセット状態を長く設計することが可能である。
【0038】
加えて、本実施の形態は、殊に、同一の操作カムで異なるアドバンス角度を有する排気量が異なる気化器に使用することができることから、経済的にも有利である。
【符号の説明】
【0039】
1 気化器本体、2 吸気通路、3 弁孔、4 絞り弁、5 絞り通孔、6 ノズル挿通孔、7 計量針、8 弁軸、9 燃料ノズル、10 カバー体、11 調節ねじ、12 押しばね、13 絞り弁レバー、14 閉弁ばね、15 ピン、16 カム、17 定燃料室、18 ダイヤフラム、19 プライマリーポンプ、20 始動機構、21 操作カム、22 調節ねじ、23 保持部材、24 付勢部材、25 停止ピン、26 インレットパイプ、27 ねじ孔、28 工具、41 フランジ、81 ねじ孔、91 燃料噴口、101 頂面、211 係止突起、212 係止部、213 押圧部、221 先端、222 操作部
【手続補正書】
【提出日】2021-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り通孔および計量針を有し気化器本体の吸気通路に直交させて配置された円柱形の絞り弁と、定燃料室に接続され前記絞り通孔内に開口して前記計量針が挿入された燃料ノズルとを具えており、前記絞り弁に固着した絞り弁レバーのアクセル操作に応じた旋回動により前記絞り弁が回転しながら自身の中心軸線方向へ移動して空気流量と燃料流量とを制御するとともに、冷間始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーを前記絞り弁の回転軸に直交する面において直線的に往復動する操作カムによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁を空気増量状態としてエンジンを起動させる始動機構を有し、前記始動機構が前記操作カムと、前記絞り弁レバーに貫通形成され前記絞り弁の中心軸線に並行な中心軸を有するねじ孔に螺挿されてその先端を前記操作カムに当接させる調節ねじとから形成され、前記調節ねじの回転操作により前記絞り弁レバーからの突出長さを調節して手動の操作カムによる始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能とした回転絞り弁式気化器において、
前記始動機構を形成する操作カムが、付勢部材により常時は基端方向に付勢されて直線的に往復動する直動カムであり、その頂面の先端に形成した係止突起の基端側を前記絞り弁に螺挿された調節ねじの先端を前記操作カムの往復移動方向の動きを直接的に制限するとともに前記操作カムの幅方向への移動を自由に係止する前記操作カムの往復移動方向に直角な直線状の係止部とした横断面が横P形であって、前記操作カムを先端方向に移動させて、アクセルワイヤーなどにより冷間始動時の旋回位置とした絞り弁レバーの前記調節ねじを前記係止突起により押し上げて前記係止部に当接させて絞り弁レバーを所定の高さ位置に保持させ、始動した後に前記絞り弁レバーを回転させて前記係止部に保持させた調節ねじとの係合を解除させて前記操作カムを前記付勢部材により非作動時の元の状態に復帰させることを特徴とする回転絞り弁式気化器。
【請求項2】
前記調節ねじの基端に形成された操作部が前記絞り弁レバーの頂面に露出しており、前記絞り弁レバーの頂面側から調節ねじを操作して前記手動の操作カムによる前記絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能としたことを特徴とする請求項1記載の回転絞り弁式気化器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
前記課題を解決するためになされた本発明である回転絞り弁式気化器は、絞り通孔および計量針を有し気化器本体の吸気通路に直交させて配置された円柱形の絞り弁と、定燃料室に接続され前記絞り通孔内に開口して前記計量針が挿入された燃料ノズルとを具えており、前記絞り弁に固着した絞り弁レバーのアクセル操作に応じた旋回動により前記絞り弁が回転しながら自身の中心軸線方向へ移動して空気流量と燃料流量とを制御するとともに、冷間始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーを前記絞り弁の回転軸に直交する面において直線的に往復動する操作カムによって押し上げるとともに押し上げ位置に保持させて絞り弁を空気増量状態としてエンジンを起動させる始動機構を有し、前記始動機構が前記操作カムと、前記絞り弁レバーに貫通形成され前記絞り弁の中心軸線に並行な中心軸を有するねじ孔に螺挿されてその先端を前記操作カムに当接させる調節ねじとから形成され、前記調節ねじの回転操作により前記絞り弁レバーからの突出長さを調節して手動の操作カムによる始動時の旋回位置にある前記絞り弁レバーの押し上げ位置を調整可能とした回転絞り弁式気化器において、前記始動機構を形成する操作カムが、付勢部材により常時は基端方向に付勢されて直線的に往復動する直動カムであり、その頂面の先端に形成した係止突起の基端側を前記絞り弁に螺挿された調節ねじの先端を前記操作カムの往復移動方向の動きを直接的に制限するとともに前記操作カムの幅方向への移動を自由に係止する前記操作カムの往復移動方向に直角な直線状の係止部とした横断面が横P形であって、前記操作カムを先端方向に移動させて、アクセルワイヤーなどにより冷間始動時の旋回位置とした絞り弁レバーの前記調節ねじを前記係止突起により押し上げて前記係止部に当接させて絞り弁レバーを所定の高さ位置に保持させ、始動した後に前記絞り弁レバーを回転させて前記係止部に保持させた調節ねじとの係合を解除させて前記操作カムを前記付勢部材により非作動時の元の状態に復帰させることを特徴とする。