(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019527
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220120BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220120BHJP
D04B 1/16 20060101ALI20220120BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
D04B1/16
D03D1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052783
(22)【出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2020121814
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021004322
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021043769
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨路本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】松下 範彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 眞矢
(72)【発明者】
【氏名】高月 珠里
【テーマコード(参考)】
2E185
4L002
4L048
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC73
4L002AA07
4L002AC07
4L002BA00
4L002BA04
4L002BB01
4L002BB03
4L002DA00
4L002EA00
4L002EA02
4L002EA03
4L002EA06
4L002FA00
4L048AA07
4L048AA08
4L048AA13
4L048AB01
4L048AB11
4L048BA01
4L048CA00
4L048CA04
4L048CA15
4L048DA22
4L048EB00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気温や湿度の高い季節に常時マスクを着用するシーンにおいて、十分な快適性を得ることができるマスクであって、織物と編物を積層させた生地からなるマスクを提供する。
【解決手段】鼻および口を含む顔面を覆う本体部と、該本体部の左右側部に設けられた耳に係止するための耳掛け部とを備えるマスクであって、本体部がポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物とセルロース繊維を50質量%以上含有する織物を積層させてなる生地からなるマスク。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻および口を含む顔面を覆う本体部と、該本体部の左右側部に設けられた耳に係止するための耳掛け部とを備えるマスクであって、本体部がポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物とセルロース繊維を50質量%以上含有する織物を積層させてなる生地からなるマスク。
【請求項2】
ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物が顔面に触れない表層、セルロース繊維を50質量%以上含有する織物が顔面に触れる内側層である、請求項1記載のマスク。
【請求項3】
セルロース繊維を50質量%以上含有する織物のL値が50~90である、請求項1又は2記載のマスク。
【請求項4】
ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物に含まれるポリエステル繊維は、酸化チタンを0.01~10.0質量%含有し、単糸繊度が0.8~8デシテックスである、請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物の編組織は、スムース、鹿の子、メッシュのいずれかであり、編物の目付が80~300g/m2、編物の伸長率が30~200%である、請求項1~4のいずれかに記載のマスク。
【請求項6】
セルロース繊維を50質量%以上含有する織物に含まれるセルロース繊維は、30~180番手の紡績糸である、請求項1~5のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
セルロース繊維を50質量%以上含有する織物は、カバーファクターが10~40、伸長率が1~20%である、請求項1~6のいずれかに記載のマスク。
【請求項8】
セルロース繊維がリヨセル、綿の少なくとも1種類である、請求項1~7のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
セルロース繊維を50質量%以上含有する織物は、JIS L 1092(スプレー法)での撥水度が1~2級である、請求項1~8のいずれかに記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル繊維を主体とする編物とセルロース繊維を主体とする織物を積層させてなる生地からなるマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉症やウイルス対策のために、常時顔面にマスクを着用することが習慣となってきており、気温や湿度の高い季節に常時マスクを着用することは、かなりの苦痛を伴うことがある。
したがって、マスクとしては、使用中の快適性に優れ、かつ、細菌、ウイルスおよび花粉等の微小有害物を通過させない効果に優れたものが求められている。
【0003】
特許文献1には、上記のような効果を奏するものとして、表地部と、裏地部とを有するマスクであって、該裏地部に芯部がポリエステル繊維、鞘部がコットン繊維からなる2層構造糸を用いて編成した編物を用いるものが提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された編物は、表地部に不織布を使用しているものであり、使用中の快適性としてはある程度の快適性は得られるが、気温や湿度の高い季節に常時マスクを着用するシーンにおいては、十分な快適性を得ることができなかった。
さらには、気温や湿度の高い季節に常時マスクを着用する場合、女性は汗をかくことによりマスクの内側にファンデーションや口紅等の化粧料が付着する。このような汚れがマスクの表側から透けて見えないことが要望されている。さらには、布製マスクは洗濯を行い複数回使用することから、マスクの内側に付着した化粧料が洗濯により落ちやすいことも要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、気温や湿度の高い季節に常時マスクを着用するシーンにおいて、十分な快適性を得ることができるマスクであって、通気性、速乾性を有しながら、表情の動きに追随する伸びを有し、かつ防透性を有し、さらには付着した化粧料が洗濯により落ちやすいマスクを提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を鑑みて種々検討した結果、ポリエステル繊維を主体とする編物とセルロース繊維を主体とする織物を積層させてなる生地からなるマスクとし、前記編物を顔面に触れない表層、前記織物を顔面に触れる内側層とすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)鼻および口を含む顔面を覆う本体部と、該本体部の左右側部に設けられた耳に係止するための耳掛け部とを備えるマスクであって、本体部がポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物とセルロース繊維を50質量%以上含有する織物を積層させてなる生地からなるマスク。
(2)ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物が顔面に触れない表層、セルロース繊維を50質量%以上含有する織物が顔面に触れる内側層である、(1)記載のマスク。
(3)セルロース繊維を50質量%以上含有する織物のL値が50~90である、(1)又は(2)記載のマスク。
(4)ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物に含まれるポリエステル繊維は、酸化チタンを0.01~10.0質量%含有し、単糸繊度が0.8~8デシテックスである、(1)~(3)のいずれかに記載のマスク。
(5)ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物の編組織は、スムース、鹿の子、メッシュのいずれかであり、編物の目付が80~300g/m2、編物の伸長率が30~200%である、(1)~(4)のいずれかに記載のマスク。
(6)セルロース繊維を50質量%以上含有する織物に含まれるセルロース繊維は、30~180番手の紡績糸である、(1)~(5)のいずれかに記載のマスク。
(7)セルロース繊維を50質量%以上含有する織物は、カバーファクターが10~40、伸長率が1~20%である、(1)~(6)のいずれかに記載のマスク。
(8)セルロース繊維がリヨセル、綿の少なくとも1種類である、(1)~(7)のいずれかに記載のマスク。
(9)セルロース繊維を50質量%以上含有する織物は、JIS L 1092(スプレー法)での撥水度が1~2級である、(1)~(8)のいずれかに記載のマスク。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスクは、細菌、ウイルスおよび花粉等の微小有害物を通過させない効果に優れるとともに、気温や湿度の高い季節に常時マスクを着用するシーンにおいて、通気性と速乾性に優れ、かつ表情の動きに追随する伸びを有することから十分な快適性を得ることができる。
また、マスクの内側層にファンデーションや口紅等の化粧料が付着しても、マスク表側層から透けて見えないため、女性が使用する際に長時間快適に着用することができる。
さらには、マスクの内側層の織物に撥水加工を施し、適度な撥水性を付与することにより、マスクの内側に付着した化粧料を洗濯により落ちやすいものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明のマスクを構成する編物組織の一実施態様を示す模式図である。
【
図3】本発明のマスクを構成する編物組織の他の実施態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のマスクは、鼻および口を含む顔面を覆う本体部と、該本体部の左右側部に設けられた耳に係止するための耳掛け部とを備えるものである。
そして、本体部は、ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物とセルロース繊維を50質量%以上含有する織物を積層させてなる生地からなるものである。
このような編物と織物を積層させる手段は特に限定するものではなく、縫製や接着にて積層させることが好ましい。
【0012】
本発明のマスクは、ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物が顔面に触れない表層、セルロース繊維を50質量%以上含有する織物が顔面に触れる内側層とすることが好ましい。
【0013】
本体部を形成するポリエステル繊維を含有する編物は、ポリエステル繊維を50質量%以上含有するものであり、中でも70質量%以上、さらには90質量%以上含有していることが好ましい。ポリエステル繊維は、繊維の中に水分が入り込まず、水分率がほとんど0に近いため、水や汗が生地に触れたときにすぐさま拡散して蒸発する。ポリエステル繊維の含有量が50質量%未満であると、このような速乾性を付与することが困難となる。
【0014】
本発明における編物を構成するポリエステル繊維としては、単糸繊度が0.8~8デシテックス、総繊度が50~165デシテックスのものが好ましい。中でも単糸繊度が1~5デシテックス、総繊度が60~150デシテックスのものが好ましい。
【0015】
さらに、該ポリエステル繊維は、酸化チタンを0.01~10.0質量%含有するものであることが好ましく、中でも0.01~2.0質量%であることが好ましい。これにより、ポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物に防透性を付与することができる。
【0016】
ポリエステル繊維以外の繊維としては、合成繊維、再生繊維および天然繊維等、特に限定されることなく使用することができ、具体的には、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン、塩化ビニルおよびポリプロピレン等の合成繊維、ジアセテートやトリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセル等のセルロース繊維、綿、麻、ケナフ、パルプ、羊毛および絹等の天然繊維を使用することができる。また、これらを任意の割合で2種以上、混練、混繊、混紡して用いてもよい。
【0017】
ポリエステル繊維を含有する編物としては、通気性、速乾性、防透性の性能を満足するものとして、好ましい編組織は、スムース、鹿の子、メッシュのいずれかであり、中でもメッシュ組織のものが好ましい。
【0018】
さらに、ポリエステル繊維を含有する編物の目付は80~300g/m2であることが好ましく、中でも100~280g/m2であることが好ましい。
そして、ポリエステル繊維を含有する編物は、上記のような糸使い、編組織とするとともに、伸長率が30~200%であることが好ましく、中でも30~100%であることが好ましい。伸長率が上記範囲を満足することによって、表情の動きに追随する伸びを有するとともに、セルロース繊維を50質量%以上含有する織物から吸水された水分を、ふいご作用により放出し、速乾性と通気性に優れる効果を奏するものとなる。
【0019】
なお、伸長率は、JIS L1096:2010 織物および編物の生地試験方法」の「8.16.1 伸び率」の「b)B法(編物の定荷重法)」に規定されている方法で測定されるものである。ただし試験片は幅50 mm、長さ75 mm のものを用いる。そして、タテ方向、ヨコ方向のいずれの伸長率も上記範囲のものであることが好ましい。
【0020】
次に、本体部を形成するセルロース繊維を含有する織物は、セルロース繊維を50質量%以上含有するものであり、中でも70質量%以上、さらには90質量%以上含有していることが好ましい。セルロース繊維としては、天然繊維に分類される綿、麻、ケナフ等と、化学繊維に分類される再生セルロース繊維を含むものであり、再生セルロース繊維としては、レーヨン、ベンベルグ、キュプラ等や天然セルロースをN-メチルモルホリン-N-オキサイド等の溶剤に溶解して紡出したリヨセルを挙げることができる。本体部を形成するセルロース繊維としては、中でもリヨセルや綿を使用することが好ましい。
【0021】
さらには、本発明におけるセルロース繊維は、紡績糸であることが好ましい。紡績糸として、セルロース繊維のみからなるものを使用することが好ましいが、セルロース繊維とセルロース繊維以外の繊維との混紡糸であってもよい。
【0022】
本発明における織物において、上記のようなセルロース繊維を50質量%以上含有していることによって、肌触りがソフトとなり、長時間快適に着用することが可能となる。
【0023】
本発明における織物を構成するセルロース繊維としては、単糸繊度が30番手~180番手のものが好ましく、中でも50番手~120番手のものを使用することが好ましい。
【0024】
織物を構成するセルロース繊維以外の繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン、塩化ビニルおよびポリプロピレン等の合成繊維、ジアセテートやトリアセテート等の半合成繊維、羊毛、絹等の天然繊維を使用することができる。
【0025】
セルロース繊維を含有する織物としては、ソフトな肌触りと通気性、防透性等性能を有するものであれば、特に組織や柄等を規定するものではなく、平織、朱子織、綾織のいずれであってもよいが、中でも平織が好ましい。
【0026】
そして、本発明における織物は、カバーファクターが10~40であることが好ましく、中でも10~30であることが好ましい。
カバーファクター(CF)とは、織編物の粗密を数値化したものであり、織物の場合、以下の式により算出される。ここで、式中、Dは経糸の総繊度を示す。Eは緯糸の総繊度を示す。
CF=D1/2×経糸密度(本/2.54cm)+E1/2×緯糸密度(本/2.54cm)
【0027】
さらに、セルロース繊維を含有する織物の目付は50~150g/m2であることが好ましく、中でも60~120g/m2であることが好ましい。
【0028】
本発明における織物は、伸長率が1~20%であることが好ましく、中でも1~10%であることが好ましい。伸長率が上記範囲を満足することによって、表情の動きに追随する伸びを有するものとなる。
なお、伸長率は、JIS L1096:2010 織物および編物の生地試験方法」の「8.16.1 伸び率」の「b)B法(織物の定荷重法)」に規定されている方法で測定されるものである。ただし試験片は幅50 mm、長さ75 mm のものを用いる。そして、タテ方向、ヨコ方向のいずれの伸長率も上記範囲のものであることが好ましい。
【0029】
顔面に触れる内側層に上記のような糸使い、織密度、目付や伸長率を満足する織物を用いることによって、肌触りが柔らかいものとなる。また、内側層に該織物を用いることによって、肌から出る汗等の水分を素早く吸放湿することができ、その後表層のポリエステル繊維を50質量%以上含有する編物が水分を拡散および蒸発させることで、本発明のマスクは速乾性かつ通気性を有するものとなる。このため、気温や湿度の高い季節に常時マスクを着用するシーンにおいて、肌への負担が少なく、十分な快適性を得ることが可能となる。
【0030】
また、セルロース繊維を含有する織物は、ベージュ(肌色)に着色されていることが好ましく、具体的にはL値が50~90であることが好ましい。中でも60~80であることが好ましい。
肌色に着色されていることにより、ファンデーションや口紅等の化粧料が付着した着色部が生じた際に、表層側にこれらの着色部が透けて見えにくくなり、より快適な長時間の着用が可能となる。
【0031】
さらに、本発明のマスクにおいて、セルロース繊維を含有する織物は、JIS L 1092(スプレー法)での撥水度が1~2級であることが好ましい。撥水度が1~2級の範囲の撥水性を有することによって、ファンデーションや口紅等の化粧料が付着した場合であっても、洗濯により容易に化粧料を落とすことが可能となる。
【0032】
セルロース繊維を含有する織物が上記のような撥水度を有するには、該織物の表面に撥水加工を施すことが好ましい。撥水加工が施された織物としては、親水性基を有するフルオロアルキルアクリレート共重合体と、トリアジン系化合物及び/またはイソシアネート系化合物である架橋剤と、セルロース系化合物と、により形成される被膜層を備える織物が好ましい。このような織物を得る方法は、特許第6420655号に記載された方法を採用することが好ましい。
【0033】
JIS L 1092(スプレー法)での撥水度は、生地に水を散布して布表面の湿潤(ぬれ)に対する抵抗性(水のはじきやすさ)を見る指標であるが、本発明においては、セルロース繊維を含有する織物は、撥水度が1~2級という比較的低い撥水度を有していることが好ましい。撥水度が1級であると、「表面全体に湿潤を示すもの」とされ、2級であると、「表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの」とされている。
撥水度が2級を超えたり、1級未満であると、付着した化粧料が洗濯により容易に落ちにくくなる。また、撥水度が3級や4級になると撥水性が強くなりすぎて、マスク着用時の快適性も損なわれやすくなる。
【0034】
また、本発明のマスクは、上記生地により、鼻および口を含む顔面を覆う本体部が形成されているものである。そして、本体部の左右側部には、耳に係止するための耳掛け部が形成されている。耳掛け部は、本体部を形成する生地を表層から内側層に折り返し、折り返し部にゴムを通した形状とすることが好ましい。
【実施例0035】
以下、本発明を実施例に従って更に詳細に説明する。
(編物の作製)
編物1
ポリエステル繊維として、酸化チタンを0.2質量%含有する75dtex/36fのポリエチレンテレフタレートからなる繊維を用い(100%使い)、福原精機製丸編機(LPJ33”28G)を用いて製編し、
図2に示すメッシュ組織の編物を得た。そして、液流染色機で精練処理を80℃で30分間行った後に、分散染料Dinix Blue UN-SE1.0%o.m.f、酢酸0.2cc/l、ニッカサンソルト0.5g/l、吸水性を付与するために高松油脂社製の、SR1801を2.0%o.m.fを用い、130℃30分間染色を行った後に、仕上げセットを行い、目付225g/m
2、伸長率(タテ方向:30%、ヨコ方向50%)の編物を得た。
【0036】
編物2
実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートからなる繊維を用い(100%使い)、福原精機製丸編機(LPJ33”28G)を用いて製編し、
図3に示すポンチ組織の編物を得た。そして、実施例1と同様にして染色、仕上げセットを行い、目付260g/m
2、伸長率(タテ方向:35%、ヨコ方向60%)の編物を得た。
【0037】
(織物の作製)
織物1
セルロース繊維として、リヨセル繊維からなる紡績糸(80番手)を経糸と緯糸に用い(100%使い)、経糸密度155本/2.54cm、緯糸密度100本/2.54cmの平織物を製織した。この織物に、通常の方法で糊抜、精練、シルケット加工を施した後に、液流染色機を用いて、ベージュ(肌色)に着色し、温度130℃、時間20分のリラックス処理を行った。得られた織物は、経糸密度160本/2.54cm、緯糸密度106本/2.54cm、L値が80、目付79g/m2、カバーファクター20.5、伸長率(タテ方向:2%、ヨコ方向3%)のものであった。
なお、織物1は撥水加工を施していないため、撥水性を有していなかった。
【0038】
織物2
織物1で使用したリヨセル繊維からなる紡績糸(80番手)を、綿の紡績糸(80番手)に変更した以外は織物1と同様にして、経糸密度155本/2.54cm、緯糸密度100本/2.54cmの平織物を製織した。
この織物に実施例1と同様にして染色加工、リラックス処理を行って織物を得た。得られた織物は、経糸密度158本/2.54cm、緯糸密度106本/2.54cm、L値が80、目付80g/m2、カバーファクター20.5、伸長率(タテ方向:2%、ヨコ方向4%)のものであった。
なお、織物2は撥水加工を施していないため、撥水性を有していなかった。
【0039】
織物3
織物1で使用したリヨセル繊維からなる紡績糸(80番手)を経糸、織物2で使用した綿からなる紡績糸(80番手)を緯糸に用いた以外は織物1と同様にして、経糸密度155本/2.54cm、緯糸密度100本/2.54cmの平織物を製織した。
この織物に実施例1と同様にして染色加工、リラックス処理を行って織物を得た。得られた織物は、経糸密度158本/2.54cm、緯糸密度106本/2.54cm、L値が80、目付80g/m2、カバーファクター20.5、伸長率(タテ方向:2%、ヨコ方向4%)のものであった。
なお、織物3は撥水加工を施していないため、撥水性を有していなかった。
【0040】
織物4
織物1に以下に示す撥水加工を施した。下記処方1とした浴に投入した後、マングルで絞り(絞り率:80質量%)、130℃で60秒間の予備乾燥をおこなった。そして、予備乾燥をおこなった織物1に対して170℃、60秒間の条件で熱処理をおこない、60℃で10分間湯洗い、130℃で2分乾燥を行った。
撥水加工後の織物4は、JIS L 1092(スプレー法)での撥水度が2級であった。
<処方1>
親水性基を含有するフルオロアルキルアクリレート共重合体(大原パラジウム株式会社製 、商品名「パラガードSRF6000」 固形分20%):75g/L
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセルファインケム株式会社製 商品名「SP400」 ):10g/L
【0041】
織物5
織物1に以下に示す撥水加工を施した。下記処方2とした浴に投入した後、マングルで絞り(絞り率:80質量%)、130℃で60秒間の予備乾燥をおこなった。そして、予備乾燥をおこなった織物1に対して170℃、60秒間の条件で熱処理をおこない、60℃で10分間湯洗い、130℃で2分乾燥を行った。
撥水加工後の織物5は、JIS L 1092(スプレー法)での撥水度が3級であった。
<処方2>
親水性基を含有するフルオロアルキルアクリレート共重合体(大原パラジウム株式会社製 、商品名「パラガードSRF6000」 固形分20%):75g/L
【0042】
(快適性試験)
ファンデーションと口紅を使用して化粧を施した女性10名が、温度28℃、湿度65%の試験室で得られたマスクを着用した状態でデスクワークを4時間行った。その後、快適性の評価として以下の2項目について、10点満点で評価してもらい、その合計点を示す。
・通気性;ムレ感や息苦しさがなくデスクワークを行うことができた。
・着用性(追随性、速乾性);肌表面への貼り着き感がなくデスクワークを行うことができた。
・防透性;マスクの表側層からファンデーションや口紅の付着が透けて見えなかった。
【0043】
(化粧品防汚評価)
<口紅>
資生堂社製マキアージュドラマティックルージュEX RS329を使用し、エンボス加工フィルムに直径1cm円に塗り延ばし、生地、ゴム栓の順で置き、上から押し転写する。
<ファンデーション>
資生堂社製マキアージュドラマティックジェリーリキッド オークル20を使用し、エンボス加工フィルムに直径1cm円に塗り延ばし、生地、荷重100gの順で置き、荷重を20回円を描くように回転させて転写する。
JIS L 0217に記載の103法に従って、洗濯を1回施した後(HL1)の化粧料の落ち具合をJIS L 0805に準拠する汚染用グレースケールにて判定した。なお、化粧料の付着がない場合が5級であり、3-4級以上を合格とした。
【0044】
実施例1
(マスクの作製)
鼻および口を含む顔面を覆う本体部の顔面に触れない表層に前記編物1を、顔面に触れる内側層に前記織物1を配し、編物と織物をマスク本体部の外縁を縫製することにより積層した。そして、本体部の左右側部に、本体部を形成する生地(前記編物と織物を積層したもの)を表層から内側層に折り返し、折り返し部にゴムを通した耳掛け部を形成し、
図1に示す形態のマスクを作製した。
得られたマスクの通気性評価は100点、着用性評価は100点、防透性評価は100点、化粧品防汚評価は、口紅、ファンデーションともに1-2級であった。
【0045】
実施例2
(マスクの作製)
鼻および口を含む顔面を覆う本体部の顔面に触れない表層に前記編物2を、顔面に触れる内側層に前記織物2を配した以外は、実施例1と同様にしてマスクを作製した。
得られたマスクの通気性評価は90点、着用性評価は100点、防透性評価は100点、化粧品防汚評価は、口紅、ファンデーションともに1-2級であった。
【0046】
実施例3
(マスクの作製)
鼻および口を含む顔面を覆う本体部の顔面に触れない表層に前記編物1を、顔面に触れる内側層に前記織物3を配した以外は、実施例1と同様にしてマスクを作製した。
得られたマスクの通気性評価は96点、着用性評価は100点、防透性評価は100 点、化粧品防汚評価は、口紅、ファンデーションともに1-2級であった。
【0047】
実施例4
(マスクの作製)
鼻および口を含む顔面を覆う本体部の顔面に触れない表層に前記編物1を、顔面に触れる内側層に前記織物4を配した以外は、実施例1と同様にしてマスクを作製した。
得られたマスクの通気性評価は100点、着用性評価は100点、防透性評価は100点、化粧品防汚評価は、口紅、ファンデーションともに4-5級であった。
【0048】
実施例5
(マスクの作製)
鼻および口を含む顔面を覆う本体部の顔面に触れない表層に前記編物1を、顔面に触れる内側層に前記織物5を配した以外は、実施例1と同様にしてマスクを作製した。
得られたマスクの通気性評価は90点、着用性評価は85点、防透性評価は100点、化粧品防汚評価は、口紅、ファンデーションともに3級であった。
【0049】
比較例1
ユニチャーム社製「超快適」マスク、やわらかストレッチ耳かけタイプの普通サイズを用いて快適性試験を行った。
得られたマスクの通気性評価は58点、着用性評価は60点、防透性評価は70点、化粧品防汚評価は、口紅、ファンデーションともに1-2級であった。