(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019556
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ピンフィン型パワーモジュールを封止する型、およびパワーモジュールを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20220120BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220120BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20220120BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C45/26
B29C33/12
B29C45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021084827
(22)【出願日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】10 2020 208 862.4
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】リウ ウェイ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AA39
4F202AD03
4F202AD05
4F202AD19
4F202AG03
4F202AH37
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CQ01
4F202CQ05
4F206AA39
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD19
4F206AG03
4F206AH37
4F206JA02
4F206JB12
4F206JB17
4F206JF05
4F206JL02
4F206JQ81
5F061AA01
5F061BA07
5F061CA21
5F061DA04
5F061DA06
5F061FA05
(57)【要約】
【課題】ピンフィン型パワーモジュールを封止する型、およびパワーモジュールを製造する方法を提供する。
【解決手段】ピンフィン型パワーモジュールを樹脂で封止する型を開示する。パワーモジュールは、DBCまたはIMSと、DBCまたはIMSの第1表面上に設けられたパワーチップおよび複数の端子と、DBCまたはIMSの第2表面上に設けられたピンフィン構造と、を備える。型は、さらに、パワーモジュールを収容するキャビティと、それぞれが端子の少なくとも一部を受容するために、端子にそれぞれ対応する複数の端子保護素子と、型の底部または型の側壁に設けられた注入孔と、を備える。第1表面は型の内側底面に面している。パワーモジュールがキャビティ内に配置されると、注入孔は、第1表面の下にある。トランスファ成形の間に、端子およびフィンは樹脂から十分に保護される。本発明は、また、パワーモジュールを製造する方法に関する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンフィン型パワーモジュールを樹脂で封止する型であって、前記パワーモジュールは、DBCまたはIMSと、パワーチップと、前記DBCまたはIMSの第1表面上に設けられた複数の端子と、前記DBCまたはIMSの前記第1表面と反対側の第2表面上に設けられたピンフィン構造と、を備え、前記型は、さらに、
前記パワーモジュールを収容するキャビティと、
それぞれが端子の少なくとも一部を受容するために、前記端子にそれぞれ対応する複数の端子保護素子と、
前記型の底部または前記型の側壁に設けられた注入孔と、を備え、
前記第1表面は前記型の内側底面に面しており、前記パワーモジュールが前記キャビティ内に配置されると、前記注入孔は、前記第1表面の下にある、型。
【請求項2】
請求項1に記載の型であって、前記端子保護素子は、前記型の前記内側底面に設けられた凹部である、型。
【請求項3】
請求項2に記載の型であって、前記凹部は、対応する端子の少なくとも一部を包む、型。
【請求項4】
請求項2に記載の型であって、前記凹部の深さは、対応する端子の高さよりも浅い、型。
【請求項5】
請求項2に記載の型であって、前記凹部の内壁は弾性を有する、型。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の型であって、前記ピンフィン構造は金属板を備え、前記金属板は前記DBCまたはIMSに結合され、前記金属板は、前記フィンが設けられた中央領域と、前記中央領域の周囲であるフィンのないエッジ領域と、を備える、型。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の型であって、前記第1表面の周縁部を支持するために、前記型の内側表面に段差部が設けられている、型。
【請求項8】
請求項1~5の何れか一項に記載の型であって、前記型は、上型と下型とによって組み立てられ、前記キャビティは、前記上型の内壁と前記下型の内壁とによって形成され、前記端子保護素子および前記注入孔は、前記下型に設けられている、型。
【請求項9】
請求項8に記載の型を使用してパワーモジュールを製造する方法であって、
前記パワーモジュールを前記下型に配置するステップであって、各端子の少なくとも一部が対応する端子保護素子によって受容されるステップと、
前記上型と前記下型とを組み立てるステップと、
第1表面がエポキシ樹脂で封止されるように前記注入孔を介してエポキシ樹脂を注入するステップと、
前記上型と前記下型とを除去するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、エポキシ樹脂を注入する前に、前記キャビティを排気する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンフィン型パワーモジュールを封止する型、およびピンフィン型パワーモジュールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、パッケージング前の従来のパワーモジュールが開示される。IGBTまたはSiCデバイスのようなパワーチップ2、ならびにインバータのACコネクタおよびDCコネクタのような端子31、32は、DBC(Direct Bonded Copper:直接接合銅)またはIMS(Insulated Metal Substrate:絶縁金属基板)1の前面に設けられていれる。放熱用の金属ブロック4は、DBCまたはIMS1の後面に結合されている。通常、ゲルまたは樹脂が、パワーチップ2、端子31、32およびDBCまたはIMSの前面を封止するために使用される。エポキシ樹脂が使用される場合、パワーモジュールを、トランスファ成形プロセスによって封止することができる。
図2を参照すると、下型51には注入孔511が設けられている。下型51と上型52とは、
図1に示す構造を収容するキャビティ50を画定する。エポキシ樹脂は、注入孔511を介して上方に注入される。キャビティ50は、特定の圧力下で、エポキシ樹脂で充填される。金属ブロック4は、トランスファ成形プロセスの間に、良好な支持を提供することができる。下型および上型を除去した後、
図3に示すように、エポキシ樹脂6を備えるパッケージされたパワーモジュールが形成される。しかしながら、パワーチップ2は別として、端子31、32もエポキシ樹脂6によって完全に封止されている。端子は電気的接続のために露出される必要があるため、追加の穿孔プロセスが必要である。
【0003】
また、放熱能力を向上させるため、金属ブロックの代わりにピンフィン構造を使用している。
図4に示すように、ピンフィン構造は、DBCまたはIMS1の後面に結合され、金属板41および金属板41上の複数のフィン42を備える。パワーチップの急速なスイッチング中に発生する熱を、フィン42を介して迅速に放散することができる。
図5および
図6に示すように、下型51と上型52とで形成されたキャビティ50内にピンフィン構造を備えるパワーモジュールを配置すると、隣り合う2つのフィンの隙間もエポキシ樹脂で充填されることになる。これは許容できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィンおよび端子が樹脂によって封止されることを回避するために、本発明は、ピンフィン型パワーモジュールを樹脂で封止する型を提供する。パワーモジュールは、DBCまたはIMSと、DBCまたはIMSの第1表面上に設けられたパワーチップおよび複数の端子と、DBCまたはIMSの第1表面と反対側の第2表面上に設けられたピンフィン構造と、を備える。型は、さらに、パワーモジュールを収容するキャビティと、それぞれが端子の少なくとも一部を受容するために、端子にそれぞれ対応する複数の端子保護素子と、型の底部または型の側壁に設けられた注入孔と、を備える。第1表面は型の内側底面に面している。パワーモジュールがキャビティ内に配置されると、注入孔は、第1表面の下にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
好適な実施形態において、端子保護素子は、型の内側底面に設けられた凹部である。
【0006】
別の好適な実施形態において、凹部は、対応する端子の少なくとも一部を包む。例えば、凹部は、対応する端子の頂部を包む。
【0007】
別の好ましい実施形態では、凹部の深さは、対応する端子の高さよりも浅い。したがって、トランスファ成形プロセスの間に、各端子の凹部に受容されていない部分が、樹脂に浸漬される。樹脂が固化した後には、各端子の凹部に受容されていなかった部分が封止される。一方、各端子の凹部によって受容されていた部分は、固化した樹脂から突出する。したがって、電気的な接続を形成するために、追加の穿孔プロセスが必要とされない。
【0008】
別の好適な実施形態において、凹部の内壁は弾性を有する。好適には、凹部の内壁は、ゴム層のような弾性層によって覆われている。
【0009】
別の好適な実施形態において、ピンフィン構造は金属板を備える。金属板は、金属板上に設けられたDBCまたはIMSおよびフィンに結合されている。金属板は、フィンが設けられた中央領域と、フィンのないエッジ領域と、を備える。エッジ領域は中央領域の周囲である。樹脂が上方に注入されと、エッジ領域は、トランスファ成形の間にフィンが樹脂によって影響を受けることを防止できる。
【0010】
別の好適な実施形態において、第1表面の周縁部を支持するために、型の内側底面に段差部が設けられている。
【0011】
別の好適な実施形態において、型は、上型と下型とによって組み立てられる。キャビティは、上型の内壁と下型の内壁とによって形成されている。端子保護素子および注入孔は、下型に設けられている。
【0012】
本発明の別の態様によれば、ピンフィン型パワーモジュールを製造する方法も開示される。上述の型を使用してパワーモジュールを製造する方法は、パワーモジュールを下型に配置するステップであって、各端子の少なくとも一部が対応する端子保護素子によって受容されるステップと、上型と下型とを組み立てるステップと、第1表面がエポキシ樹脂で封止されるように注入孔を介してエポキシ樹脂を注入するステップと、上型と下型とを除去するステップと、を含む。
【0013】
別の好適な実施形態において、エポキシ樹脂を注入する前に、キャビティを排気する。
【0014】
実施形態の他の態様および利点は、記載される実施形態の原理を例として示す添付の図面と併せて解釈される、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0015】
記載される実施形態およびその利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。これらの図面は、当業者によってなされ得る、記載される実施形態の精神および範囲から逸脱することのない、記載される実施形態の形態および詳細のいかなる変化をも、決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】パッケージング前の、従来のパワーモジュールの断面図である。
【
図2】
図1に示すパワーモジュールを封止する、従来の型の断面図である。
【
図3】従来技術における、型が除去された後の樹脂封止型パワーモジュールの断面図である。
【
図4】パッケージング前の、ピンフィン構造を備えるパワーモジュールの断面図である。
【
図5】従来技術における、型内に配置されている
図4に示すパワーモジュールの断面図である。
【
図6】従来技術における、型が除去された後のピンフィン構造を有する樹脂封止型パワーモジュールの断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、ピンフィン構造を備えるパワーモジュールを封止する型の断面図である。
【
図8】
図7の型内に配置されている、ピンフィン構造を備えるパワーモジュールの断面図である。
【
図9】型が取り外されている、
図8の封止型パワーモジュールの断面図である。
【
図10】本発明の別の実施形態による、ピンフィン構造を備えるパワーモジュールを封止する下型の断面図である。
【
図11】
図10の下型内に配置されている、ピンフィン構造を備えるパワーモジュールの断面図である。
【
図12】本発明の別の実施形態による下型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。ピンフィン型パワーモジュールを樹脂で封止する型と、ピンフィン型パワーモジュールを製造する方法について、
図4、
図7乃至
図9を用いて詳細に説明する。
図4に示すように、パワーモジュールは、DBCまたはIMS1と、パワーチップ2と、DBCまたはIMS1の第1表面上に設けられた複数の端子31、32と、DBCまたはIMS1の第1表面と反対側の第2表面上に設けられたピンフィン構造と、を備える。SiCデバイスのようなパワーチップ、ならびにACコネクタおよびDCコネクタのような端子は、DBCまたはIMS上に溶接されている。ピンフィン構造は、金属板41を備える。金属板41は、金属板41上に設けられたDBCまたはIMS1およびフィン42に結合されている。金属板41は、パワーチップのスイッチングの間に発生する熱が冷却剤に浸漬されたフィン42に伝達されるように、熱伝導性のある接着剤によって、DBCまたはIMSに結合されている。
【0018】
図7および
図8を参照すると、型は、下型501および上型502を備える。
図4に示されるパワーモジュールを収容するキャビティ500は、下型501と上型502とによって形成される。下型501の内側底面には、端子31、32にそれぞれ対応する複数の端子保護素子5011、5012が設けられ、それぞれ、端子の少なくとも一部を受容する。凹部の深さは、対応する端子の高さよりも浅い。各端子保護素子は、弾性層を備える凹部である。したがって、フィン42を上方に、端子を下方にして、パワーモジュールがキャビティ500内に配置されると、各端子の一部、例えば各端子の頂部が各凹部の弾性層によって包まれるため、各端子が十分に保護される。
【0019】
下型501は、さらに、型の底部に設けられた注入孔5013を備える。DBCまたはIMSの第1表面は、型の底部に面している。パワーモジュールがキャビティ内に配置されると、注入孔は第1表面の下にある。エポキシ樹脂は、注入孔5013を介してキャビティ500内に注入される。
【0020】
平坦な底部を備える従来の型とは異なり、パワーモジュールは、端子が十分に保護された状態で逆向きに配置される。端子保護素子に受容されていない端子の部分は、注入孔5013を介して注入されたエポキシ樹脂に露出される。
【0021】
本発明は、さらに、上述の型を使用してパワーモジュールを製造する方法を提供する。方法は、各端子の頂部が対応する端子保護素子によって受容される下型に、パワーモジュールを配置するステップと、キャビティ500を形成するために上型と下型とを組み立てるステップと、注入孔5013を介してエポキシ樹脂を上方に注入するステップであって、このステップの間に、エポキシ樹脂が流れるにつれて、パワーチップおよび露出されている端子がエポキシ樹脂に浸漬されるステップと、を含む。エポキシ樹脂が固化した後、型を取り除き、
図9に示される封止型パワーモジュールが完成する。端子保護素子の保護により、各端子31、32の頂部311、321は、エポキシ樹脂によって封止されず、したがって露出される。これは、電気的な接続に望ましく、従来の型を使用するトランスファ成形プロセスと比較して、追加の穿孔プロセスを必要としない。
【0022】
次に、
図10乃至
図11を参照する。別の好適な実施形態が開示される。金属板は、フィンが設けられた中央領域と、フィンが設けられていない中央領域の周りのエッジ領域401と、を備える。樹脂が上方に注入される際に、エッジ領域は、トランスファ成形の間にフィンが樹脂によって影響を受けることを防止することができる。
【0023】
この実施形態において、第1表面の周縁部を支持するために、下型501の内側底面に段差部7が設けられている。下型の側壁には、注入孔が設けられている。
図11に示すように、段差部7が、エポキシ樹脂が金属板の側壁およびフィン42に影響を及ぼすことを防止する。
【0024】
次に
図12を参照すると、本発明の別の好ましい実施形態による下型501が示される。この実施形態は、
図10乃至11に示す実施形態と同様に、下型501の内側底面に、第1表面の周縁部を支持する段差部7が設けられている。下型の床面には、内側にゴム素子を備える複数の端子保護素子5011、5012が設けられている。下型の側壁には、注入孔5013が設けられている。パワーモジュールがキャビティ内に配置されると、注入孔の最も高い位置は、第1表面の下にある。
【0025】
複数の代替的な構造要素およびプロセスのステップが、好適な実施形態のために提案されている。したがって、本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、この説明は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、多様な変形および応用を想到することができる。
【外国語明細書】