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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019568
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】含フッ素表面改質剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/22 20060101AFI20220120BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C08F20/22
C09K3/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098474
(22)【出願日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020121827
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【テーマコード(参考)】
4H020
4J100
【Fターム(参考)】
4H020BA13
4J100AB02Q
4J100AB03Q
4J100AB04Q
4J100AC03Q
4J100AC04Q
4J100AC12Q
4J100AC23Q
4J100AC24Q
4J100AG10Q
4J100AJ02Q
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AM21Q
4J100BA08Q
4J100BB12P
4J100BB18P
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100GC17
4J100GC25
4J100JA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】撥水撥油性に優れ、引火性及び樹脂への浸食性が低い含フッ素表面改質剤組成物を提供する。
【解決手段】下式(1)で示される残基単位を有する含フッ素重合体と、フッ素系溶媒を含む、含フッ素表面改質剤組成物を用いる。

(式中、RfとRfはフッ素含有基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される残基単位を有する含フッ素重合体と、フッ素系溶媒とを含むことを特徴とする、含フッ素表面改質剤組成物。
【化5】
(式(1)中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基であり、nは1~4の整数であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
【請求項2】
含フッ素重合体は、下記一般式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルが重合されてなることを特徴とする、請求項1に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
【化6】
(式(1)中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基であり、nは1~4の整数であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
【請求項3】
含フッ素重合体が、単量体A及び単量体Aと共重合する単量体Bから構成されており、単量体Aと単量体Bとの重量比(A)/(B)が1:99~99.9:0.1の重量比で共重合されてなる、請求項1に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
【請求項4】
単量体Bが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン類、脂肪酸アリルエステル類及びアクリルアミド類からなる群より選ばれる一種以上である、請求項1または請求項3に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
【請求項5】
フッ素系溶媒が、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン及びクロロフルオロカーボンからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1~4のいずれか一項に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
【請求項6】
含フッ素重合体とフッ素系溶媒の総量に対して、含フッ素重合体を0.01重量%~50重量%含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素表面改質剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、炭素-フッ素結合の性質に基づき、耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、低摩擦性、剥離性等の特徴的な機能を示す。これらの性質を利用して、含フッ素化合物は、例えば撥水撥油剤、防汚剤、離型剤、防湿コーティング剤等、種々の基材に機能を付与する表面改質剤として用いられている。
【0003】
これまで、含フッ素表面改質剤の原料としては、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合単位として含む含フッ素重合体が用いられてきた。特に、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを重合単位として含む含フッ素重合体は、動的撥水性に優れ、表面に付着した水滴等を効果的に滑落させられることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物は、生体蓄積性等、環境及び生体に対して悪影響を与える可能性が問題視されている。
このため、生体蓄積性が低いとされる炭素数6以下の短鎖パーフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを重合単位として含む含フッ素重合体による代替が検討されてきた。しかし、短鎖パーフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体からなる表面改質剤は、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体と比較して撥水撥油性等の機能が低下することが知られている。
【0004】
特許文献1には側鎖に不飽和結合を有する含フッ素(メタ)アクリレート重合体を含む表面改質剤が開示されている。しかし、溶媒として非フッ素系有機溶媒を用いているため、引火性や樹脂基材への侵食性を有するなどの課題があり、さらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/119371号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromoelcules,2010年,第43巻,454-460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生体蓄積性が低いとされる炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基から構成される含フッ素重合体を用いて、撥水撥油性に優れ、引火性及び樹脂への浸食性が低い含フッ素表面改質剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、側鎖に不飽和結合を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位からなる含フッ素重合体と、引火性及び樹脂への浸食性が低いフッ素系溶媒を含む組成物が、優れた撥水撥油性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下に係る。
[1] 下記一般式(1)で示される残基単位を有する含フッ素重合体と、フッ素系溶媒とを含むことを特徴とする、含フッ素表面改質剤組成物。
【化1】
(式(1)中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基であり、nは1~4の整数であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
[2] 含フッ素重合体は、下記一般式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルが重合されてなることを特徴とする、[1]に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
【化2】
(式(1)中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基であり、nは1~4の整数であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
なお、本発明に係る含フッ素表面改質剤組成物は、含フッ素(メタ)アクリル酸エステルが重合されてなる含フッ素重合体とフッ素系溶媒とを含むが、含フッ素重合体をその構造から規定するよりも原料となるモノマーを規定した上で重合されるとすることで把握しやすく実際的である。以下の[3]においても同様である。
[3] 含フッ素重合体が、単量体A及び単量体Aと共重合する単量体Bから構成されており、単量体Aと単量体Bとの重量比(A)/(B)が1:99~99.9:0.1の重量比で共重合されてなる、[1]に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
[4] 単量体Bが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン類、脂肪酸アリルエステル類及びアクリルアミド類からなる群より選ばれる一種以上である、[3]に記載の含フッ素表面改質剤組成物。
[5] フッ素系溶媒が、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン及びクロロフルオロカーボンからなる群より選ばれる少なくとも一つである、[1]~[4]のいずれかに記載の含フッ素表面改質剤組成物。
[6] 含フッ素重合体とフッ素系溶媒の総量、すなわち合計重量に対して、含フッ素重合体を0.01重量%~50重量%含む、[1]~[5]のいずれかに記載の含フッ素表面改質剤組成物。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で示される残基単位を有する含フッ素重合体において、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基である。中でも、直鎖の炭素数1~6のパーフルオロアルキル基が好ましく、直鎖の炭素数4~6のパーフルオロアルキル基がさらに好ましく、直鎖の炭素数6のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
本発明の一般式(1)で示される残基単位を有する含フッ素重合体において、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基である。中でも、直鎖の炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基が好ましく、直鎖の炭素数4~6のパーフルオロアルキレン基がさらに好ましく、直鎖の炭素数6のパーフルオロアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)における、Rf-CH=CH-Rf-の部分の具体的構造としては、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C12-、C-CH=CH-C-、C-CH=CH-C12、C13-CH=CH-C-、C13-CH=CH-C12-などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明の一般式(1)で示される残基単位を有する含フッ素重合体において、nは1~4の整数である。中でも、nは2~3が好ましく、2が特に好ましい。
本発明の一般式(1)で示される残基単位を有する含フッ素重合体において、Rは水素原子またはメチル基である。
【0012】
本発明の好ましい態様の一つとして、含フッ素重合体は、一般式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(以下、含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを用いて、他のモノマーと共重合させるときに、「単量体A」と称することがある。)を重合させて得られる。ここで、一般式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステル単独で重合させるときは、単独重合ということがある。本態様において、重合方法は特に限定されないが、例えば溶媒を用いた溶液重合を行うことができる。
【0013】
本態様において、溶液重合に用いられる溶媒は特に限定されないが、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン等の複素環式化合物系溶媒、トリフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、ヘキサフルオロベンゼン、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
本態様において、溶液重合に用いる溶媒の使用量は特に限定されないが、重合反応に具する単量体Aに対し、好ましくは1重量倍量~200重量倍量、さらに好ましくは2重量倍量~100重量倍量である。
【0014】
本態様において、例えば重合開始剤を用いることにより、重合反応を進行させることができる。重合開始剤は特に限定されないが、例えば2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ラウリルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
本態様において、重合開始剤の使用量は特に限定されないが、重合反応に具する単量体Aに対し、好ましくは0.001重量%~50重量%、さらに好ましくは0.005重量%~20重量%、特に好ましくは0.01重量%~10重量%である。
【0015】
本態様において、重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。重合反応の温度は、好ましくは40℃~150℃、さらに好ましくは40℃~100℃である。重合反応時間は、1時間~48時間の範囲が好ましく、1時間~24時間の範囲がさらに好ましい。これらの反応温度及び反応時間の条件は、単量体Aの種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量に応じて適宜調整することでよい。
【0016】
本態様において、重合反応の終了後、得られた含フッ素重合体を任意の方法で回収し、必要に応じて精製等の後処理を行う。反応溶液から重合体を回収する方法としては、濃縮、再沈殿等公知の方法が利用できる。
【0017】
本態様において、得られた含フッ素ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000~1,000,000、さらに好ましくは10,000~500,000である。
【0018】
本発明の好ましい態様の一つとして、上記した含フッ素重合体の原料となる単量体Aとは別に、単量体Aと共重合する、あるいは共重合しうる単量体Bを用い、共重合させて含フッ素重合体を得、この含フッ素重合体とフッ素系溶媒とを、少なくとも含む含フッ素表面改質剤組成物が挙げられる。
ここで単量体Aと共重合する、あるいは共重合しうる単量体Bとは、、含フッ素重合体が形成できるものであればよい。また共重合された含フッ素重合体の構成は、単量体Aと単量体Bに由来する残基単位を有する。
また、単量体Bは、単量体Aと共重合する、あるいは共重合しうるものであれば特に制限はない。さらに単量体Bとしては特定の一種としてよいが、単量体A以外に2種以上の単量体としてもよい。
本発明において、一般式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルである単量体Aは一般式(2)で示される化合物構造として種々適用可能であるが、その中で、単量体Aと共重合する、あるいは共重合しうる単量体Bとの組み合わせは、適宜検討のうえ採用できる。さらに、その他の共重合条件についても、適宜検討のうえ採用できる。
【0019】
その上で、含フッ素重合体が、単量体A及び単量体Aと共重合する単量体Bから構成されているところ、単量体Aと単量体Bとの重合反応時の配合比率としては、単量体Aと単量体Bとの重量比(A)/(B)が1:99~99.9:0.1の重量比となるようにすることが好ましく、10:90~99.9:0.1の重量比がさらに好ましい。
【0020】
本態様において、単量体Bは単量体Aと共重合する、あるいは共重合しうる単量体であれば特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン類、脂肪酸アリルエステル類及びアクリルアミド類からなる群より選ばれる一種以上であることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、プロピル、2-エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、ベヘニル、β-ヒドロキシエチル、グリシジル、フェニル、ベンジル、4-シアノフェニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコールエステル類、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル、N-メチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。これらの単量体は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本態様において、重合方法は特に限定されないが、例えば溶媒を用いた溶液重合を行うことができる。
【0022】
本態様において、溶液重合に用いられる溶媒は特に限定されないが、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン等の複素環式化合物系溶媒、トリフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、ヘキサフルオロベンゼン、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
本態様において、溶液重合に用いる溶媒の使用量は特に限定されないが、重合反応に具する単量体A及び単量体Bの総量に対し、好ましくは1重量倍量~200重量倍量、さらに好ましくは2重量倍量~100重量倍量である。
【0023】
本態様において、例えば重合開始剤を用いることにより、重合反応を進行させることができる。重合開始剤は特に限定されないが、例えば2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ラウリルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
本態様において、重合開始剤の使用量は特に限定されないが、重合反応に具する単量体A及び単量体Bの総量に対し、好ましくは0.001重量%~50重量%、さらに好ましくは0.005重量%~20重量%、特に好ましくは0.01重量%~10重量%である。
【0024】
本態様において、重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。重合反応の温度は、好ましくは40℃~150℃、さらに好ましくは40℃~100℃である。重合反応時間は、1時間~48時間の範囲が好ましく、1時間~24時間の範囲がさらに好ましい。これらの反応温度及び反応時間の条件は、単量体Aの種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量に応じて適宜調整することでよい。
【0025】
本態様において、重合反応の終了後、得られた含フッ素重合体を任意の方法で回収し、必要に応じて精製等の後処理を行う。反応溶液から重合体を回収する方法としては、濃縮、再沈殿等公知の方法が利用できる。
【0026】
本態様において、得られた含フッ素ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000~1,000,000、さらに好ましくは5,000~500,000である。
【0027】
本発明の含フッ素重合体は、フッ素系溶媒に溶解し、含フッ素重合体及びフッ素系溶媒を含む含フッ素表面改質剤組成物として用いることができる。溶液状の組成物とすることにより、塗布、浸漬等により基材を処理可能な形態とすることができる。
本発明の表面改質剤組成物の用途は、特に限定されないが、例えばコーティング剤、撥水撥油剤、防錆剤、防汚剤、耐水化剤、剥離剤、離型剤、オイルバリア剤、フラックス這い上がり防止剤等として用いることができる。
【0028】
本発明の含フッ素表面改質剤組成物において、フッ素系溶媒は、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。具体的には例えば、メチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7100)、エチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7200)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン(HFE7300)、ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、ヘキサフルオロベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、2,2,3,3-テトラクロロヘキサフルオロブタン等が挙げられる。中でも、メチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7100)、エチルノナフルオロブチルエーテル(HFE7200)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン(HFE7300)、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロデカリン等が、引火点が無く取り扱い容易である観点から好ましい。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの溶媒については、使用する目的に応じて適宜選択して用いることでよい。フッ素系溶媒を用いることにより、含フッ素重合体を均一に溶解でき、引火性及び樹脂への浸食性が低い組成物とすることができる点で有用である。
本発明の表面改質剤組成物において、含フッ素重合体とフッ素系溶媒の総量に対して、含フッ素重合体を0.01~50重量%含むことが好ましく、0.05重量%~20重量%含むことがさらに好ましい。
【0029】
本発明の表面改質剤組成物は、得られた含フッ素重合体と上記フッ素系溶媒を混合することにより調製してもよく、フッ素系溶媒を用いた溶液重合により得られた含フッ素重合体溶液をそのまま表面改質剤として用いてもよく、フッ素系溶媒を用いた溶液重合により得られた含フッ素重合体溶液をさらに溶媒で希釈することにより調製してもよい。
【0030】
本発明の表面改質剤組成物により処理される基材としては、特に限定されないが、金属、プラスチック、セラミックス等が挙げられる。特に、プリント基板等の電子部品を処理する場合に、本発明の表面改質剤組成物は浸食性が低いため有用である。
【0031】
本発明の表面改質剤組成物による基材の処理は、刷毛塗り、ワイプやウエス等による塗布、浸漬、霧吹き等による噴射、スプレーガンによる噴射、エアゾール噴射等、通常用いられる任意の方法により行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の含フッ素表面改質剤組成物を用いることにより、基材表面に優れた撥水撥油性等を付与できる。さらに、該組成物は生体蓄積性が低いとされる炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基から構成され、引火性及び樹脂への浸食性が低い。
【実施例0033】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
<NMR>
装置:ブルカー製AVANCE II 400
内部標準:テトラメチルシラン、トリフルオロメチルベンゼン
溶媒:アセトン-d6
<GPC>
装置:東ソー製 HLC-8320GPC
カラム:TSKgel G4000H/G3000H/G2500H/G2000H
溶離液:ヘキサフルオロイソプロパノールまたはテトラヒドロフラン
流量:0.3mL/minまたは1mL/min
<DSC>
装置:TA Instruments製 DSC Q2000
走査速度:10℃/min
【0034】
<接触角の測定>
測定対象試料(以降に示す重合体)について、純水及びジヨードメタンの静的接触角、並びに拡張/収縮法による純水の動的接触角を測定した。
具体的に、測定対象試料である重合体の所定量を、フッ素系溶媒に溶解させた後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過し、て所定濃度の重合体溶液を調製した。この重合体溶液を直径2インチのシリコンウェハー上にスピンコーティングにより製膜した。
スピンコーティングには、アクティブ製マニュアル・スピンコーターACT-300AIIを用い、接触角測定には、協和界面科学製接触角計DMs-401を用いた。
【0035】
ここで、静的接触角について、ぬれ性の数値化などの測定のために測定する。液滴を固体表面に接触させて着滴したとき,試料面とのなす角度を接触角θとする。本発明では、解析はθ/2法を使用した。静的接触角が大きい方が撥水撥油性に優れる。
また動的接触角について、液除去性の数値化などのために測定する。ぬれ拡がるとき(拡張)の接触角を(動的)前進角、収縮するときの接触角を(動的)後退角とする。本発明では、拡張/収縮法を使用し、解析は真円フィッティング法を使用した。動的接触角測定で得られる前進接触角と後退接触角の差である接触角ヒステリシスが小さい方が動的撥水性に優れる。
【0036】
実施例1
重合体1の合成
【化3】
50mLのフラスコに化合物(3)5.00g(東ソー・ファインケム製)、2-ブタノン15.00g(富士フイルム和光純薬製)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)10.8mg(富士フイルム和光純薬製、1mol%)を仕込み、窒素置換した後、70℃で12時間撹拌した。
反応終了後、2層に分離した反応液の上澄みをデカンテーションした後、メチルノナフルオロブチルエーテル5g(3M製)を加えた。得られた溶液をヘキサン20gに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄み液をデカンテーションした後、真空乾燥して、4.00gの重合体1を無色固体として得た。収率は80%(重量換算、以下同じ)であった。得られた目的物のGPCによるPMMA換算で測定される数平均分子量Mnは8,100、分散度Mw/Mnは1.8であった。DSC測定を行ったところ、ガラス転移温度は27.0℃であった。
【0037】
実施例2
重合体2の合成
【化4】
実施例1において、化合物(3)に替えて化合物(4)5.00g(東ソー・ファインケム製)を用いた以外、同様の操作で4.09gの重合体2を白色固体として得た。収率は82%であった。得られた目的物のGPCによるPMMA換算で測定される数平均分子量Mnは13,000、分散度Mw/Mnは2.7であった。DSC測定を行ったところ、融解温度は42.7℃であった。
【0038】
比較例1
重合体3の合成
実施例1において、化合物(3)に替えて、メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチル(東京化成工業製)5.00gを用いた以外、同様の操作で3.50gの重合体2を無色固体として得た。収率は70%であった。得られた目的物のGPCによるPMMA換算で測定される数平均分子量Mnは6,400、分散度Mw/Mnは1.5であった。DSC測定を行ったところ、ガラス転移温度は24.8℃であった。
【0039】
比較例2
重合体4の合成
実施例1において、化合物(3)に替えて、アクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチル(東京化成工業製)5.00gを用いた以外、同様の操作で4.00gの重合体2を無色粘稠物として得た。収率は80%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは5,500、分散度Mw/Mnは1.4であった。DSC測定を行ったところ、ガラス転移温度は-16.1℃であった。
【0040】
実施例3
実施例1で得られた重合体1の20mgを、デカフルオロペンタン(三井・ケマーズフロロプロダクツ製)1.98gに溶解させた後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過して1.0重量%の重合体溶液とし、表面改質剤組成物を調製した。この組成物を直径2インチのシリコンウェハー上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm10秒間、さらにslope5秒間)により製膜した。得られた薄膜について、前記した方法により、純水及びジヨードメタンの静的接触角(液滴量2μL)、並びに拡張/収縮法による純水の動的接触角を測定した。
【0041】
実施例4
実施例3において、重合体1に替えて重合体2を用いて、同様の測定を行った。
【0042】
比較例3
実施例3において、重合体1に替えて重合体3を用いて、同様の測定を行った。
【0043】
比較例4
実施例3において、重合体1に替えて重合体4を用いて、同様の測定を行った。
【0044】
以上、得られた結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から、実施例3,4で示される本発明の含フッ素重合体及びフッ素系溶媒を含む表面改質剤により形成される薄膜は、比較例3,4で示される従来の炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体を含む表面改質剤により形成される薄膜と比較すると以下のことが分かる。
純水に対する静的接触角の測定結果から、実施例3,4の結果は比較例3,4に比べ高いことから撥水性に優れ、ジヨードメタンに対する静的接触角の測定から、実施例3,4の結果は比較例3,4に比べ高いことから撥油性にも優れることが分かる。
純水に対する動的接触角の測定結果から、前進接触角について実施例3,4の結果は比較例3,4と概ね同程度であるものの、後退接触角について実施例3,4の結果は比較例3,4に比べ高く、さらに接触角ヒステリシスが小さいことから水滴除去性に優れることが分かる。
【0047】
実施例5
重合体5の合成
10mLの試験管に化合物(3)0.80g(東ソー・ファインケム製)、メタクリル酸2-エチルヘキシル0.20g(富士フイルム和光純薬製)、2-ブタノン4.00g(富士フイルム和光純薬製)、t-ブチルパーオキシオクトエート10.0mg(日油製)を仕込み、窒素置換した後、75℃で12時間撹拌した。
反応終了後、2層に分離した反応液の上澄みをデカンテーションした後、真空乾燥して、0.62gの重合体5を無色固体として得た。収率は62%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは16,000、分散度Mw/Mnは1.3であった。H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸2-エチルヘキシルからなる残基単位が21%(重量換算、以下同じ)であった。
【0048】
実施例6
重合体6の合成
実施例5において、メタクリル酸2-エチルヘキシルに替えて、メタクリル酸ドデシル(東京化成工業製)0.20gを用いた以外、同様の操作で0.69gの重合体6を無色固体として得た。収率は69%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは11,000、分散度Mw/Mnは1.5であった。H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ドデシルからなる残基単位が24%であった。
【0049】
比較例5
重合体7の合成
実施例5において、化合物(3)に替えて、メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチル(東京化成工業製)0.80gを用いた以外、同様の操作で0.76gの重合体7を無色固体として得た。収率は76%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは11,000、分散度Mw/Mnは1.8であった。H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸2-エチルヘキシルからなる残基単位が18%であった。
【0050】
比較例6
重合体8の合成
実施例6において、化合物(3)に替えて、メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-n-オクチル(東京化成工業製)0.80gを用いた以外、同様の操作で0.77gの重合体8を無色固体として得た。収率は77%であった。得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される数平均分子量Mnは16,000、分散度Mw/Mnは1.6であった。H NMRで測定した共重合比は、共重合体中メタクリル酸ドデシルからなる残基単位が19%であった。
【0051】
実施例7
実施例5で得られた重合体5の20mgを、エチルノナフルオロブチルエーテル(3M製)1.98gに溶解させた後、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過して1.0重量%の重合体溶液とし、表面改質剤組成物を調製した。この組成物を直径2インチのシリコンウェハー上にスピンコーティング(slope5秒間、次いで2,000rpm10秒間、さらにslope5秒間)により製膜した。得られた薄膜について、前記した方法により、純水及びジヨードメタンの静的接触角(液滴量2μL)を測定した。
実施例8
実施例7において、重合体5に替えて重合体6を用いて、同様の測定を行った。
【0052】
比較例7
実施例7において、重合体5に替えて重合体7を用いて、同様の測定を行った。
【0053】
比較例8
実施例7において、重合体5に替えて重合体8を用いて、同様の測定を行った。
【表2】
【0054】
表2の結果から、実施例7、8で示される本発明の含フッ素重合体及びフッ素系溶媒を含む表面改質剤により形成される薄膜は、比較例7、8で示される従来の炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体を含む表面改質剤により形成される薄膜と比較すると以下のことが分かる。
実施例7と比較例7を比較すると、単量体Bとして両者が同じメタクリル酸2-エチルヘキシルから構成されている。この場合、純水に対する静的接触角の測定結果について、実施例7の結果は比較例7に比べ高いことから撥水性に優れ、ジヨードメタンに対する静的接触角の測定結果では両者同程度であった。このことから、単量体Aが化合物(3)から構成される重合体5の方が撥水性に優れており、本発明の組成物が撥水性に優れることが分かる。
実施例8と比較例8を比較すると、単量体Bとして両者が同じメタクリル酸ドデシルから構成されている。この場合、純水に対する静的接触角の測定結果について、実施例8の結果は比較例8に比べ高いことから撥水性に優れ、ジヨードメタンに対する静的接触角の測定結果では両者同程度であった。このことから、単量体Aが化合物(3)から構成される重合体6の方が撥水性に優れており、本発明の組成物が撥水性に優れることが分かる。
【0055】
以上の結果から、本発明の含フッ素重合体及びフッ素系溶媒を含む表面改質剤により形成される薄膜は、従来の炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体を含む表面改質剤により形成される薄膜と比較して優れた撥水撥油性を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の含フッ素重合体とフッ素系溶媒を含む組成物を用いることにより、撥水撥油性に優れ、引火性及び樹脂への浸食性が低い含フッ素表面改質剤組成物が提供でき、産業上有用である。