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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019573
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】スペーサを製造するための装置と方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/30 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
A61F2/30
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021102462
(22)【出願日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】20186551.6
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097AA07
4C097AA13
4C097BB01
4C097BB08
4C097EE03
4C097EE08
4C097EE11
4C097MM03
4C097MM04
4C097MM07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨セメントペーストを成形型内で硬化させてスペーサを製造する装置を提供する。
【解決手段】本発明は、空洞(2)を有する成形型下部(1)と、空洞(2)の端から周囲に延び、反対側が開口した成形型壁(3)と、成形面(6)を有する成形型上部(5)と、を有するスペーサを製造するための装置に関する。成形型上部(5)は、成形型下部(1)の内部(4)に挿入でき、空洞(2)の方向に変位でき、空洞(2)、成形面(6)及び成形型壁(3)によって区切られ、スペーサを成形可能な中空空間が形成されるように、余分な骨セメントペーストを受け入れるための少なくとも1つの容器(7)と、成形面(6)の少なくとも1つの開口(8)と、及び/又は余分な骨セメントペーストを受け入れるための少なくとも1つの容器(7)に開口する、成形面(6)及び/又は空洞(2)に設けられた少なくとも1つの開口部が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型内で骨セメントペースト(36)を硬化させてスペーサ(42,92,142,192)を製造する装置であって、
前記スペーサ(42,92,142,192)は、医療分野において、関節の関節面を含む関節又は関節の一部を一時的に置換するために提供され、特に股関節、膝関節又は肩関節を一時的に置換するために提供され、
前記装置は、成形型下部(1,51,101,151)であって、前記成形型下部(1,51,101,151)は、骨セメントペースト(36)を受け入れ前記骨セメントペースト(36)から前記スペーサ(42,92,142,192)の第1の表面領域を成形するための空洞(2,52,102,152)を有する成形型下部(1,51,101,151)と、
前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)の周縁から前記空洞(2,52,102,152)から離れて周囲に延び、前記空洞(2,52,102,152)とは反対側が開口している成形型壁(3,53,103,153)であって、前記空洞(2,52,102,152)が前記成形型壁(3,53,103,153)によって区切られた内部(4,54,104,154)を介してアクセスできる成形型壁(3,53,103,153)と、
成形型上部(5,55,105,155)であって、前記成形型上部(5,55,105,155)は、前記骨セメントペースト(36)から前記スペーサ(42,92,142,192)の第2の表面領域を成形するための成形面(6,56,106,156)を有し、前記成形型上部(5,55,105,155)は、前記空洞(2,52,102,152)とは反対側の前記成形型壁(3,53,103,153)の前記開口した側から前記内部(4,54,104,154)に挿入でき、前記空洞(2,52,102,152)の方向に変位でき、前記成形型下部(1,51,101,151)の空洞(2,52,102,152)、前記成形型上部(5,55,105,155)の前記成形面(6,56,106,156)、及び前記成形型壁(3,53,103,153)を区切り、前記スペーサ(42,92,142,192)を成形可能な中空空間が形成される、成形型上部(5,55,105,155)と、
余分な骨セメントペースト(38)を受け入れるための少なくとも1つの容器(7,57,107,157)と、
前記成形型上部(5,55,105,155)の前記成形面(6,56,106,156)及び/又は前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)に設けられた少なくとも1つの開口(8,58,108,158)であって、前記少なくとも1つの開口(8,58,108,158)が、余分な骨セメントペースト(38)を受け入れるための少なくとも1つの容器(7,57,107,157)内に開口している、少なくとも1つの開口(8,58,108,158)と、を備え、
前記装置は、1つ又は2つの蓋(9,59,109,159)を有し、
蓋により前記成形型上部(5,55,105,155)が、前記成形型上部(5,55,105,155)の成形面(6,56,106,156)とは反対側の外側に閉鎖され、又は閉鎖でき、前記成形型上部(5,55,105,155)と前記蓋(9,59,109,159)との間に骨セメントペースト(36)を受け入れるための前記少なくとも1つの容器(7,57,107,157)の1つとして外側に閉鎖された上部容器が形成され、及び/又は、
前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)とは反対側で前記成形型下部(1,51,101,151)が外側に閉鎖され、又は閉鎖でき、前記成形型下部(1,51,101,151)と前記蓋(9,59,109,159)との間に、骨セメントペースト(36)を受け入れるための前記少なくとも1つの容器(7,57,107,157)の1つとして、外側に閉鎖された下部容器が形成され、前記蓋(9,59,109,159)又は2つの前記蓋の1つは、前記成形型上部(5,55,105,155)の中又は上に、又は、前記成形型上部(5,55,105,155)の内壁(11,61,111,161)の中又は上に配置され又は配置でき、成形型上部(5,55,105,155)の前記成形面(6,56,106,156)とは反対側を外側に閉鎖し、余分な骨セメントペースト(38)を受け入れるための閉鎖された容器(7,57,107,157)を形成し、及び/又は、前記蓋(9,59,109,159)又は2つの前記蓋の1つは、前記成形型下部(1,51,101,151)の中又は上に配置され又は配置でき、前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)と反対側を外側に閉鎖し、余分な骨セメントペースト(38)を受け入れるための閉鎖された容器(7,57,107,157)が形成されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記成形型壁(3,53,103,153)の互いに対向する部分が互いに平行に配向され、又は前記成形型壁(3,53,103,153)が前記空洞(2,52,102,152)の方向にわずかに円錐形に先細りし、又は前記成形型壁(3,53,103,153)は、その基部領域が空洞(2,52,102,152)の周縁によって区切られている垂直又は斜めの一般的なシリンダの形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記成形型上部(5,55,105,155)の前記内壁(11,61,111,161)が、前記成形型上部(5,55,105,155)の前記成形面(6,56,106,156)の周縁から、前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)から離れて周縁に延び、前記内壁(11,61,111,161)は、好ましくは少なくとも所々で、少なくとも1つの容器(7,57,107,157)で区切られ、及び/又は、前記内壁(11,61,111,161)の互いに対向する部分は、互いに平行に配向されており、又は、前記内壁(11,61,111,161)は、垂直又は斜めの一般的なシリンダの形状を有しており、その基部領域は、前記成形型上部(5,55,105,155)の前記成形面(6,56,106,156)の周縁によって区切られていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記成形型上部(5,55,105,155)が前記成形型壁(3,53,103,153)に押し込まれたときに、前記内壁(11,61,111,161)及び前記成形型壁(3,53,103,153)が互いに面一になり、及び/又は、
前記成形型上部(5,55,105,155)が前記成形型壁(3,53,103,153)に押し込まれたときに、前記内壁(11,61,111,161)が前記骨セメントペースト(36)のために前記成形型壁(3,53,103,153)に対してシールを形成することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記蓋(9,59,109,159)が少なくとも1つの通気口を有し、及び/又は前記蓋(9,59,109,159)が成形型上部(5,55,105,155)とガス透過的に閉鎖され、又は閉鎖できることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)の体積と、前記成形型壁(3,53,103,153)で区切られた体積とを合わせると、製造される前記スペーサ(42,92,142,192)の体積よりも大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記成形型壁(3,53,103,153)と前記成形型下部(1,51,101,151)とが1つの部品として形成されており、好ましくは、前記成形型壁(3,53,103,153)が前記成形型下部(1,51,101,151)の一部であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、骨セメントペースト(36)、セメント粉及びモノマー液を混合するための混合システムを有し、前記セメント粉及び前記モノマー液は互いに別々に保管され、前記骨セメントペースト(36)は、前記混合システムを用いて、前記セメント粉及び前記モノマー液から混合可能であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記混合システムは、混合カップ(26)を含み、好ましくは、前記混合カップ(26)は、前記混合カップ(26)から骨セメントペースト(36)を、前記成形型壁(3,53,103,153)によって区切られた前記空洞(2,52,102,152)及び前記内部(4,54,104,154)に導入するための注ぎ口(28)を含み、又は、
前記混合システムは、前記セメント粉及び前記モノマー液を貯蔵及び混合するための及び混合された骨セメントペースト(36)を骨セメントカートリッジから送出するための骨セメントカートリッジであり、前記骨セメントカートリッジは、好ましくは、前記セメント粉及び前記モノマー液を、液密に互いに分離された領域に含むことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記成形型下部(1,51,101,151)と、前記成形型上部(5,55,105,155)と、好ましくは前記成形型壁(3,53,103,153)と、存在する場合には前記蓋(9,59,109,159)とがプラスチックフィルムで構成され、又は、実質的にプラスチックフィルムで構成され、又は、
前記成形型下部(1,51,101,151)と、前記成形型上部(5,55,105,155)と、好ましくは前記成形型壁(3,53,103,153)と、存在する場合には前記蓋(9,59,109,159)とがそれぞれの場合において互いに連結された2つ以上のプラスチックフィルムで構成され、特に好ましくは、溶接又は接着剤で互いに結合されることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記成形型下部(1,51,101,151)と、前記成形型上部(5,55,105,155)と、前記成形型壁(3,53,103,153)と、存在する場合には前記蓋(9,59,109,159)とが実質的に又は全体的にプラスチック材料で構成されており、好ましくはポリオレフィン、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)、特に好ましくはPETGフィルム及び/又はポリアミドフィルム及び/又はPEフィルムで製造されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの開口(8,58,108,158)は、最大2.5mm、好ましくは最大2mm、特に好ましくは最大1.5mm、より特に好ましくは最大1mmの最小断面長さを有し、及び/又は、
前記少なくとも1つの開口(8,58,108,158)は、少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.5mm、特に好ましくは少なくとも1mmの最小断面長さを有することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)とは反対側の前記成形型壁(3,53,103,153)の端部に、成形型壁(3,53,103,153)内の成形型上部(5,55,105,155)の前記空洞(2,52,102,152)の方向への移動を制限するための制限停止部(20,70,120,170)が配置され、好ましくは、前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)とは反対側の前記成形型壁(3,53,103,153)の前記端部に、制限停止部(20,70,120,170)として接触面が配置され、特に好ましくは、接触面は、前記成形型壁(3,53,103,153)から直角に突出していることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記空洞(2,52)内に配置されるべき、又は配置される金属コア(10,60)を有し、好ましくは、前記空洞(2,52)内の前記金属コア(10,60)を、空洞(2,52)の内側から及び前記成形型壁(3,53)の内側から間隔を空けて保持する複数の間隔片(12,62)を有し、特に好ましくは、前記間隔片(12,62)は、硬化した骨セメント、特にポリメチルメタクリレートで構成されることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記成形型下部(1,51,101,151)、又は、前記成形型下部(1,51,101,151)及び前記成形型壁(3,53,103,153)、又は、前記成形型下部(1,51,101,151)、前記成形型壁(3,53,103,153)及び前記成形型上部(5,55,105,155)が、透明又は半透明であることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの開口(8,58,108,158)は、前記成形型の通常の配置において、前記中空空間の最も高い位置となる領域に配置されていることを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記成形型上部(5,55,105,155)の前記成形面(6,56,106,156)は、外縁によって前記成形型壁(3,53,103,153)に対して内部に支持され、前記成形型上部(5,55,105,155)が押し込まれると、その縁が前記成形型壁(3,53,103,153)に対して内部でスライドし、好ましくは、前記縁はワイパーリム又はワイパーリップを有することを特徴とする請求項1~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、スタンド(16,66,116,166)を有し、前記成形型下部(1,51,101,151)が前記スタンド(16,66,116,166)に挿入でき、前記スタンド(16,66,116,166)は、前記成形型下部(1,51,101,151)がスタンドにある状態で平らな支持体に置かれることに適合し、前記スタンド(16,66,116,166)は、好ましくは、実質的又は全体的にプラスチックフィルムで構成されている又は2つ以上のプラスチックフィルムが互いに接合され、特に好ましくは、溶接又は接着剤で接合されている請求項1~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記関節の関節面を含む、関節又は関節の一部、特に股関節、膝関節又は肩関節を一時的に置換するためのスペーサ(42,92,142,192)を製造する方法であって、請求項1~18のいずれかに記載の装置を用いて実施され、前記方法は、時系列的な
A)流動性の骨セメントペースト(36)を、前記空洞(2,52,102,152)と、前記成形型壁(3,53,103,153)によって区切られた前記内部(4,54,104,154)とに導入するステップであって、前記流動性の骨セメントペースト(36)の量が、前記スペーサ(42,92,142,192)に必要とされる量よりも多く導入される、ステップ、
B)前記成形面(6,56,106,156)が前記空洞(2,52,102,152)の方向を向いている状態で、前記成形型上部(5,55,105,155)を前記成形型壁(3,53,103,153)に挿入するステップ、
C)前記成形型上部(5,55,105,155)を、前記成形型壁(3,53,103,153)内の前記空洞(2,52,102,152)の方向に押し込むステップ、
D)前記成形型上部(5,55,105,155)が押し込まれ続けると、前記少なくとも1つの開口(8,58,108,158)を介して余分な骨セメントペースト(38)が出現するステップであって、前記余分な骨セメントペースト(38)が、前記余分な骨セメントペースト(38)を受け入れるための前記少なくとも1つの容器(7,57,107,157)に流入する、ステップ、
E)制限停止部(20,70,120,170)に達したとき、又は前記スペーサ(42,92,142,192)の所望の高さに達したときに、押し込みが完了するステップ、
F)前記空洞(2,52,102,152)、前記成形型上部(5,55,105,155)の前記成形面(6,56,106,156)、及び前記成形型壁(3,53,103,153)によって形成される中空空間で前記骨セメントペースト(36)を硬化するステップ、及び
G)このようにして成形され、硬化された前記スペーサ(42,92,142,192)を前記中空空間から除去するステップであって、前記少なくとも1つの開口(8,58,108,158)に形成された硬化した前記骨セメントペースト(36)のスプルー(40,90,140,190)が剥離される、ステップ、
を有する、方法。
【請求項20】
ステップD)において、前記余分な骨セメントペースト(38)が、前記成形型下部(1,51,101,151)の前記余分な骨セメントペースト(38)を受け入れるための蓋(9,59,109,159)で閉鎖された下部容器に流れ込み、その中に封入され、及び/又は、前記成形型上部(5,55,105,155)の余分な骨セメントペースト(38)を受け入れるための蓋(9,59,109,159)で閉鎖された上部容器(7,57,107,157)に流れ込み、その中に封入され、
ステップF)の後、又はステップG)で硬化したスペーサ(42,92,142,192)を離型するときに、硬化した余分な骨セメントペースト(38)が前記下部容器及び/又は前記上部容器(7,57,107,157)に残っていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップA)の前に、前記骨セメントペースト(36)を、モノマー液とセメント粉から混合し、特に均質な骨セメントペースト(36)が得られるまで混合することを特徴とする請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
ステップA)の前に、金属コア(10,60)が前記空洞(2,52)内に配置され、好ましくは、前記金属コア(10,60)は、ピン状の間隔片(12,62)を用いて、前記空洞(2,52)の内壁及び前記成形型壁(3,53)から間隔を空けられることを特徴とする請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ステップC)において、前記成形型下部(1,51,101,151)の前記空洞(2,52,102,152)、前記成形型上部(5,55,105,155)の成形面(6,56,106,156)、及び前記成形型壁(3,53,103,153)によって区切られた前記中空空間から、前記少なくとも1つの開口(8,58,108,158)を介して空気が排出されることを特徴とする請求項19~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ステップF)の後、ステップG)の前に、前記成形型上部(5,55,105,155)を前記成形型壁(3,53,103,153)の前記開口の端から引き抜くことを特徴とする請求項19~23のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメントペーストを成形型内で硬化させてスペーサを製造する装置に関するもので、スペーサは、医療分野において、関節の関節面を含む関節又は関節の一部を一時的に置換するために提供され、特に、股関節、膝関節又は肩関節を一時的に置換するために提供されるものである。このスペーサは、医療用途において、関節の関節面を含む関節又は関節の一部を一時的に置換するための代替物(placeholder)として提供される。スペーサは、好ましくは、股関節、膝関節、肩関節を一時的に置換するのに適しており、提供される。したがって、この装置は、好ましくは、股関節スペーサ、膝スペーサ、又は肩関節スペーサを製造するために提供される。また、本発明は、このような装置を用いて、このようなスペーサを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
特に本発明は、感染した人工股関節、人工肩関節、人工膝関節といった人工関節の2段階の再置換において、中間段階の一時的な代替物(スペーサ)となる股関節、肩、膝のスペーサを術中に製造する装置を提供する。この装置は、低粘度及び高粘度のポリメチルメタクリレート製骨セメントペーストを用いたスペーサの製造に適している。また、本発明は、この装置を用いたスペーサの製造方法を提供する。
【0003】
股関節用人工関節、膝関節用人工関節、肩関節用人工関節などの関節用人工関節は、世界中で広く移植されている。残念なことに、ごく一部のケースでは、人工関節に微生物、特にグラム陽性菌やグラム陰性菌、そしてごくわずかに酵母や真菌がコロニーを形成している。これらの微生物は、主に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの典型的な皮膚微生物で、外科手術(OP)の際に患者の体内に侵入する可能性がある。また、微生物が血流により人工関節内に侵入することもある。人工関節に微生物がコロニー形成するとき、その周辺の骨や軟部組織も微生物に感染し、ダメージを受けてしまう。
【0004】
先行技術には主に、感染した人工関節の治療法として、1段階の敗血性の再置換と2段階の敗血性の再置換の2つがある。一段階の再置換の場合には、まず感染した人工関節を抜去し、次に根治的に清浄化(debridement)し、そして1回のOP内に再置換用の人工関節を移植する。
【0005】
股関節スペーサは、ステム、カラー、ネック、ボールヘッドで構成されており、形状やサイズは人工股関節を再現している。同様に、肩関節スペーサは、人工肩関節の形状や大きさを再現している。膝スペーサは、脛骨コンポーネントと大腿骨コンポーネントを有し、基本的には人工膝関節の形状とサイズを再現している。脛骨コンポーネントは、ステムと脛骨プラトーを有し、脛骨プラトーは、膝関節の摺動面又は転動面を形成し、ステムは、脛骨に固定できる。大腿骨コンポーネントは、大腿骨に固定するためのステムと、脛骨プラトー上で転がすための2つの顆頭を備えている。脛骨コンポーネントと大腿骨コンポーネントは、骨セメントを用いてそれぞれの骨に固定される。即ち、例えば、大腿骨コンポーネントの場合には、大腿骨遠位部又は大腿管に、ステムを備えた脛骨コンポーネントの場合には、脛骨近位部又は脛骨管に固定される。
【0006】
スペーサは、骨セメントでそれぞれの骨に固定される。即ち、例えば、股関節スペーサの場合には、大腿骨近位部や大腿管に固定される。スペーサは、炎症が治まり、臨床的な炎症マーカーが後退するまで、最長で数週間、患者に残存する。その後、2回目のOP内でスペーサを除去し、新たに清浄化した後、再置換用の人工関節を移植する。
【0007】
スペーサの場合には、実際にスペーサを作る前にセメント粉に抗生物質を添加する。この抗生物質で修飾された骨セメント粉を用いて、モノマー液を混合して骨セメントペーストを製造し、この骨セメントペーストからスペーサを鋳造し、セメント粉に添加したモノマー液を用いて重合して硬化させる。このようにして、骨セメントペーストは、抗生物質を実質的に組み込んでいる。表面に近い領域にある抗生物質の粒子は、傷口からの分泌物などの体液の影響を受けて放出される。有効成分の放出は開始時に最も多く、その後、数日にわたり減少する。
【0008】
特許文献1は、インプラント内部に液体用のリザーバを備えた人工股関節を開示している。特許文献2から、くぼみを有する股関節スペーサが知られており、骨を治療するための物質がくぼみに導入されることがある。特許文献3は、表面に抗生物質を塗布した人工股関節を提案している。特許文献4には、装置内の袋を用いて液体活性成分を分配する装置が開示されている。特許文献5や特許文献6には、有効成分を含む股関節スペーサが記載されている。特許文献7は、液体回路を作ることができる洗浄可能な股関節スペーサを開示している。特許文献8及び特許文献9には、洗浄機能を備えたさらなるスペーサが記載されている。
【0009】
2段階の敗血性の再置換では、最初のOPで感染した人工関節を抜去した後、清浄化し、その後スペーサを移植する。スペーサは、人工膝関節、人工股関節、人工肩関節といった人工関節の2段階の敗血性の再置換術において、中間段階の一時的な代替物として大きな意味を持つ。これらのスペーサを術中に製造する際、医療スタッフは、感染症の原因となっている微生物の利用可能な薬剤感受性に応じて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)製骨セメントに、その微生物に特別に調整された1種類以上の抗生物質を添加できる。このような骨セメントは、例えば、特許文献10から知られている。ポリメチルメタクリレート製骨セメントを用いたスペーサの術中作製には、従来から樹脂成形型が用いられている。このような成形型は、例えば、特許文献11、特許文献12や、先行公開されていない特許文献13、特許文献14などで知られている。加熱可能な成形型は、特許文献15で知られている。
【0010】
スペーサは、例えば特許文献16又は特許文献17に記載されているように、例えばスペーサ成形を用いて、PMMAの骨セメント粉、抗生物質及びモノマー液から、OP担当者がOP自体の間に製造してもよいが、一方では、骨セメントから工業的に定型化されたスペーサを使用することも従来から行われている。術中に1つの部品(one-part)の股関節スペーサを製造するための樹脂成形型は、特許文献18に記載されている。この成形型は透明で、充填口が2つに分かれている。その結果、高粘度の骨セメントペーストであっても、骨セメントペーストの流路が比較的短いため、少ない圧力で成形型内に導入することがでる。高粘度でない骨セメントペーストを使用した場合、成形型への充填が完了すると、硬化が始まる前に充填口から骨セメントペーストが逆流してしまう危険性がある。
【0011】
さらなる発展として、特許文献19~特許文献22では、モジュール式股関節スペーサを製造するためのマルチパート成形型(multipart casting mold)が提案されている。このモジュール式股関節スペーサは、スペーサヘッドと独立したステムで構成されている。そのため、スペーサヘッド用の1つの成形型とステム用の別個の成形型を用意する必要がある。ステム用の成形型は一体型で、骨セメントペーストを入れたセメントカートリッジに成形型を接続するためのねじ山が充填口に設けられている。このようなモジュラーシステムは、高粘度の骨セメントペーストを注入する際の圧力に耐えられるように、個々に適切なサイズに組み立てられ、各部分を接続しなければならない。マルチパート成形型はそれなりにコストがかかり、使い方も複雑である。
【0012】
特許文献23には、骨セメントペーストが成形型に導入された後、プラグを使用して成形型の充填口を閉鎖できる成形型が記載されている。しかし、その前に、成形型をセメントカートリッジからねじを外す必要がある。低粘度のセメントペーストを使用した場合、成形型の持ち方が悪いと、プラグがねじ込まれる前の成形型をセメントカートリッジから分離する間に、セメントペーストが流出してしまうことがある。高粘度の骨セメントペーストを使用した場合、充填に必要な圧力によって成形型が弾性変形し、成形型が元の形状に戻ったときに、内部にある骨セメントペーストが開いた充填口から押し出されるため、基本的に同じリスクがある。
【0013】
特許文献24には、股関節スペーサモールドが記載されている。このスペーサモールドは、複数のモールドのセグメントを連結して構成されている。複数のセグメントにより、スペーサモールドは患者の解剖学的な状況に非常に正確に適合させることができる。スペーサモールドのセグメントは、ウォームギアのホースクリップ(worm drive hose clips)で結合されている。PMMA製骨セメントペースト(ポリメチルメタクリレート製骨セメントペースト)をスペーサモールドのチャンネルから導入する。成形型が複雑な構造をしているため、スペーサモールドのセグメントを結合する作業や、PMMA製骨セメントペーストの硬化が完了した後に股関節スペーサを除去する作業が非常に煩雑である。
【0014】
特許文献25では、ステムの長さを調整するために、相対的に変位可能な2つの部品で構成される股関節スペーサ用のスペーサモールドを提案している。さらに、特許文献26には、成形型が開示されている。本装置は、少なくとも2つの部品(twо parts)から構成されており、第1の部品には挿入部が、第2の部品には挿入受容部が配置されている。この2つの部品は互いに挿入され、股関節スペーサのステムを製造するための成形型を形成できる。特許文献27には、複雑な成形型が記載されている。これにより、異なるボールヘッドを持つ股関節スペーサの製造が可能にする。成形型の要素は、連結要素を使って固定されている。特許文献28には、骨セメントペーストを成形型に導入した後、プラグを用いて成形型の充填口を閉鎖できる成形型が記載されている。しかし、その前に、骨セメントのカートリッジから成形型を外す必要がある。高粘度ではない骨セメントペーストを使用する場合、成形型の持ち方が悪いと、プラグがねじ込まれ挿入される前の成形型を骨セメントカートリッジから分離している間に、骨セメントペーストが流出してしまうことがある。
【0015】
特許文献29~特許文献31には、抗生物質の送達に適した膝スペーサの脛骨コンポーネントを製造するための骨セメントモールドが開示されている。しかし、モールドの部品を組み立て、それらを固定するにはかなりの手間がかかる。また、必要なコンポーネントにより、成形型はそれ自体が複雑で、安価ではなく、使用方法も複雑である。特許文献32には、髄内管を充填するコンポーネントを製造するための、脛骨スペーサモールド、大腿骨スペーサモールド、及び第3のモールドを備えた3つの部品(three parts)からなるスペーサモールドが開示されている。
【0016】
特許文献33には、膝スペーサの脛骨コンポーネントを製造するための成形型が開示されている。この成形型を使って、高さの異なる脛骨コンポーネントを製造できる。成形型は下部と上部で構成されており、下部と上部はポリメチルメタクリレート製骨セメントペーストを注入するための中空空間が形成する。鋳造される脛骨コンポーネントの高さは、成形型下部と上部の間の距離を設定する歯を持つラッチ機構によって画定する。
【0017】
同様の概念は、特許文献34が膝スペーサのモールドを請求項としていることからもわかる。この成形型にはポートがあり、ポートは離型後には髄内にステムとして存在する。成形型は、セメントカートリッジを用いて、ポートから充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0042213号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/178951号
【特許文献3】米国特許第6,245,111号明細書
【特許文献4】米国特許第5,681,289号明細書
【特許文献5】欧州特許第1,991,170号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2011/0015754号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2019/0290833号明細書
【特許文献8】国際公開第2016/205077号
【特許文献9】米国特許第8,900,322号明細書
【特許文献10】欧州特許第1,985,317号明細書
【特許文献11】欧州特許第2,617,393号明細書
【特許文献12】欧州特許第3,075,357号明細書
【特許文献13】欧州特許出願第20,164,534号明細書
【特許文献14】欧州特許出願第20,164,541号明細書
【特許文献15】欧州特許第2,818,138号明細書
【特許文献16】独国特許第10,2015,104,704号明細書
【特許文献17】欧州特許第2,617,393号明細書
【特許文献18】米国特許第6,361,731号明細書
【特許文献19】米国特許第7,637,729号明細書
【特許文献20】米国特許第7,789,646号明細書
【特許文献21】米国特許第8,480,389号明細書
【特許文献22】米国特許第8,801,983号明細書
【特許文献23】米国特許第7,789,646号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2007/0222114号明細書
【特許文献25】国際公開第2009/073,781号
【特許文献26】欧州特許出願公開第2,522,310号明細書
【特許文献27】欧州特許出願公開第2,787,928号明細書
【特許文献28】米国特許第7,789,646号明細書
【特許文献29】欧州特許第2,931,180号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2010/0102484号明細書
【特許文献31】欧州特許第2,532,323号明細書
【特許文献32】欧州特許第3,143,963号明細書
【特許文献33】米国特許第10,071,511号明細書
【特許文献34】米国特許第9,433,506号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服することにある。特に、本発明の目的は、骨セメントペーストを成形型内で硬化させてスペーサを製造するために、可能な限り少ない労力で使用できる安価な装置を開発することであり、また、骨セメントペーストを成形型内で硬化させてスペーサを製造するために、簡単かつ安価に実施できる方法を開発することであり、これにより、骨セメントペースト、特にポリメチルメタクリレート製骨セメントを使用して、手術室で医療従事者が1つの部品のスペーサ、特に股関節、膝、肩のスペーサを製造できる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、ポリメチルメタクリレート製骨セメントを用いて、手術室の医療従事者が簡単に関節用の膝・股・肩のスペーサや膝スペーサの脛骨・大腿骨コンポーネントを製造できる、安価で簡単な装置を開発することである。股関節スペーサと肩スペーサは、同様の構造である。これらはステムとスペーサヘッドで構成されている。機械的な安定化を目的として、股関節・肩スペーサの内部に金属コアが配置されてもよく、既に配置されていてもよい。膝スペーサは、脛骨コンポーネントと大腿骨コンポーネントで構成されている。低粘度、非高粘度だけでなく、高粘度(ポリメチルメタクリレート)の骨セメントペーストを使用してスペーサを製造できてもよい。
【0021】
この装置は、スペーサを製造するために、排出可能なカートリッジを使用したセメントシステムが必要ないように構成されていることが好ましい。スペーサの製造には、混合ボウルの中で混合用スパチュラを使って手作業で混合した骨セメントペーストを使用できることを意図している。好ましくは、カートリッジ排出装置を使用せずに装置を充填することが可能であるべきである。あらゆる出現する余分な骨セメントペーストにより、医療従事者や手術室の環境が汚染されることは、できる限り避けるべきである。
【0022】
本発明の目的は、骨セメントペーストを成形型内で硬化させてスペーサを製造する装置であって、スペーサは、医療分野で関節の関節面を含む関節又は関節の一部を一時的に置換するために提供され、特に股関節、膝関節又は肩関節を一時的に置換するために提供される装置であって、以下を有する。
【0023】
前記装置は、成形型下部であって、前記成形型下部は、骨セメントペーストを受け入れ前記骨セメントペーストから前記スペーサの第1の表面領域を成形するための空洞を有する成形型下部と、前記成形型下部の前記空洞の周縁から前記空洞から離れて周囲に延び、前記空洞とは反対側が開口している成形型壁であって、前記空洞が前記成形型壁によって区切られた内部を介してアクセスできる成形型壁と、成形型上部であって、前記成形型上部は、前記骨セメントペーストから前記スペーサの第2の表面領域を成形するための成形面を有し、前記成形型上部は、前記空洞とは反対側の前記成形型壁の前記開口した側から前記内部に挿入でき、前記空洞の方向に変位でき、前記成形型下部の空洞、前記成形型上部の前記成形面、及び前記成形型壁を区切り、前記スペーサを成形可能な中空空間が形成される、成形型上部と、余分な骨セメントペーストを受け入れるための少なくとも1つの容器と、前記成形型上部の前記成形面及び/又は前記成形型下部の前記空洞に設けられた少なくとも1つの開口であって、前記少なくとも1つの開口が、余分な骨セメントペーストを受け入れるための少なくとも1つの容器内に開口している、少なくとも1つの開口と、を備え、前記装置は、1つ又は2つの蓋を有し、蓋により前記成形型上部が、前記成形型上部の成形面とは反対側の外側に閉鎖され、又は閉鎖でき、前記成形型上部と前記蓋との間に骨セメントペーストを受け入れるための前記少なくとも1つの容器の1つとして外側に閉鎖された上部容器が形成され、及び/又は、前記成形型下部の前記空洞とは反対側で前記成形型下部が外側に閉鎖され、又は閉鎖でき、前記成形型下部と前記蓋との間に、骨セメントペーストを受け入れるための前記少なくとも1つの容器の1つとして、外側に閉鎖された下部容器が形成され、前記蓋又は2つの前記蓋の1つは、前記成形型上部の中又は上に、又は、前記成形型上部の前記内壁の中又は上に配置され又は配置でき、成形型上部の前記成形面とは反対側を外側に閉鎖し、余分な骨セメントペーストを受け入れるための閉鎖された容器を形成し、及び/又は、前記蓋又は2つの前記蓋の1つは、前記成形型下部の中又は上に配置され又は配置でき、前記成形型下部の前記空洞と反対側を外側に閉鎖し、余分な骨セメントペーストを受け入れるための閉鎖された容器が形成される。
【0024】
成形型壁の高さが少なくとも10mmで提供されることが好ましい。
【0025】
少なくとも1つの開口は、成形型上部の成形面にのみ配置されることが好ましい。このようにして、低粘度の骨セメントは、空洞の少なくとも1つの開口から流出することなく、空洞に導入される。
【0026】
成形型上部の成形面も同様に、空洞として成形してもよい。
【0027】
成形型壁は、成形型下部の空洞で区切られた体積に隣り合う内部を囲むことが好ましい。
【0028】
容器は、開口してもよいが、骨セメントペーストによる周囲の汚染を防ぐために、骨セメントペーストに対し不透過性に閉鎖され、又は、閉鎖できることが好ましい。
【0029】
股関節や肩のスペーサを製造するため、成形型は、スペーサを製造する過程で成形型下部と成形型上部に分割されることが好ましい。つまり、1つのスペーサの半分は成形型下部の空洞で、第2のスペーサの半分は成形型上部の成形面で成形される。
【0030】
膝スペーサの脛骨コンポーネントや大腿骨コンポーネントの場合、成形型下部の空洞が摺動面の形状を再現し、成形型上部の成形面が膝スペーサ部品のそれぞれの裏面を再現することが有利であり、好ましい。この場合、分割部は、有利には、膝スペーサコンポーネントの後部側面の上端に位置する。
【0031】
この装置は、好ましくは、低粘度の骨セメントペーストや、冷却された中粘度から高粘度の骨セメントペーストに適している。
【0032】
骨セメントペーストを受け入れるための少なくとも1つの容器は、好ましくは、骨セメントペーストのために外部に対して不透過性に閉鎖されている。
【0033】
空洞は、好ましくは半球状のシェルのような形をしている。
【0034】
本発明に係る装置は、前記成形型壁の互いに対向する部分が互いに平行に配向され、又は前記成形型壁が前記空洞の方向にわずかに円錐形に先細りし、又は前記成形型壁は、その基部領域が空洞の周縁によって区切られている垂直又は斜めの一般的なシリンダの形状をしている。
【0035】
このようにして、成形型上部は、成形型壁の中で直線的に変位させることができ、少なくとも1つの開口とは別に、同時に上部の中空空間をシール(seal)することができる。その結果、成形型内の骨セメントペーストを所望の形状に押し込むことができる。
【0036】
成形型が空洞方向にわずかに円錐形に先細るということは、円錐の鋭角又は壁が互いに傾く角度が15°以下、好ましくは4°以下、特に好ましくは1°以下であることを意味する。
【0037】
一般的なシリンダは、基部領域を、ここでは空洞の周縁部で区切られた基部領域基部領域を直線的に変位させることで得られる。垂直のシリンダ(right cylinder)では、変位はこの基部領域に対して垂直に進むが、斜めのシリンダ(skewed cylinder)では、90°以外の角度で進む。
【0038】
また、前記成形型上部の前記内壁が、前記成形型上部の前記成形面の周縁から、前記成形型下部の前記空洞から離れて周縁に延び、前記内壁は、好ましくは少なくとも所々で、少なくとも1つの容器で区切られ、及び/又は、前記内壁の互いに対向する部分は、互いに平行に配向されており、又は、前記内壁は、垂直又は斜めの一般的なシリンダの形状を有しており、その基部領域は、前記成形型上部の前記成形面の周縁によって区切られている。
【0039】
内壁は、成形型壁に対して平らなシールを提供できる。同時に、成形型上部は、成形型壁の中に安定して導かれる。
【0040】
「内壁」は、成形型壁に対して内側に配置されているため、このように表記されている。ここでいう内壁とは、壁の内側を意味するのではなく、体積を持った物理的な壁を意味している。
【0041】
内壁は、好ましくは、成形型上部と一体的に具現化されてもよく、特に好ましくは、成形型上部の一部である。
【0042】
また、内壁の高さは、10mm以上にしてもよい。
【0043】
また、内壁の外周は、成形型の内周と全く同じ大きさか、やや小さくしてもよい。
【0044】
また、前記成形型上部が前記成形型壁に押し込まれたときに、前記内壁及び前記成形型壁が互いに面一になり、及び/又は、前記成形型上部が前記成形型壁に押し込まれたときに、前記内壁が前記骨セメントペーストのために前記成形型壁に対してシールを形成する。
【0045】
このようにして、この装置の組み立てられた成形型部品の内部には、スペーサを形成するための外部にシールされた中空空間が形成される。また、成形型下部に対する成形型上部の傾きをこのように防止できる。そのため、スペーサの表面が意図せずに互いに傾いてしまうこと、例えば、脛骨プラトーが残存する脛骨膝スペーサコンポーネントに対して意図せずに傾いてしまうことを防ぐことができる。さらに、このようにパンチ状の成形型上部が安定することで、薄いプラスチックフィルムからも成形型上部を作ることができる。
【0046】
また、前記装置は、1つ又は2つの蓋を有し、蓋により前記成形型上部が、前記成形型上部の成形面とは反対側の外側に閉鎖され、又は閉鎖でき、前記成形型上部と前記蓋との間に骨セメントペーストを受け入れるための前記少なくとも1つの容器の1つとして外側に閉鎖された上部容器が形成され、及び/又は、前記成形型下部の前記空洞とは反対側で前記成形型下部が外側に閉鎖され、又は閉鎖でき、前記成形型下部と前記蓋との間に、骨セメントペーストを受け入れるための前記少なくとも1つの容器の1つとして、外側に閉鎖された下部容器が形成される。
【0047】
ここで、前記蓋又は2つの前記蓋の1つは、前記成形型上部の中又は上に、又は、前記成形型上部の前記内壁の中又は上に配置され又は配置でき、成形型上部の前記成形面とは反対側を外側に閉鎖し、余分な骨セメントペーストを受け入れるための閉鎖された容器を形成し、及び/又は、前記蓋又は2つの前記蓋の1つは、前記成形型下部の中又は上に配置され又は配置でき、前記成形型下部の前記空洞と反対側を外側に閉鎖し、余分な骨セメントペーストを受け入れるための閉鎖された容器が形成される。
【0048】
特に、成形型上部と下部がプラスチックフィルムから、又は、プラスチックフィルムで製造されている場合には、蓋が成形型上部と成形型下部を機械的に安定させる。これにより、少なくとも1つの開口から出てきた骨セメントペーストが周囲を汚染したり、汚したりすることを防ぐことができる。このようにして、使用者は骨セメントペーストとの有害な接触から保護され、少なくとも1つの開口を介したスペーサの汚染が防止されるか、少なくとも困難になる。
【0049】
本発明の改良した形態によれば、前記蓋が少なくとも1つの通気口を有し、及び/又は前記蓋が成形型上部とガス透過的に閉鎖され、又は閉鎖できる。
【0050】
このようにして、骨セメントペーストが容器の少なくとも1つの開口を通って流れるときに、蓋で区切られた上部又は下部の容器、又は蓋で区切られた容器から空気を逃がすことができる。これにより、ガスの背圧のあらゆる蓄積を防ぐことができる。
【0051】
また、前記成形型下部の前記空洞の体積と、前記成形型壁で区切られた体積とを合わせると、製造される前記スペーサの体積よりも大きい。
【0052】
これにより、確実に骨セメントペーストが余分に導入され、スペーサ内に空気が閉じ込められないようにすることができる。
【0053】
また、成形型壁と前記成形型下部とが1つの部品として形成されており、好ましくは、前記成形型壁が前記成形型下部の一部である
【0054】
このようにして、装置はより低コストで簡単に製造できる。
【0055】
また、前記装置は、骨セメントペースト、セメント粉及びモノマー液を混合するための混合システムを有し、前記セメント粉及び前記モノマー液は互いに別々に保管され、前記骨セメントペーストは、前記混合システムを用いて、前記セメント粉及び前記モノマー液から混合可能である。
【0056】
また、前記混合システムは、混合カップを含み、好ましくは、前記混合カップは、前記混合カップから骨セメントペーストを、前記成形型壁によって区切られた前記空洞及び前記内部に導入するための注ぎ口を含み、又は、前記混合システムは、前記セメント粉及び前記モノマー液を貯蔵及び混合するための及び混合された骨セメントペーストを骨セメントカートリッジから送出するための骨セメントカートリッジであり、前記骨セメントカートリッジは、好ましくは、前記セメント粉及び前記モノマー液を、液密に互いに分離された領域に含む。
【0057】
混合システムは、さらに装置を完成させ、スペーサの製造に直接使用できる。
【0058】
理論的には、装置は、セメント粉とモノマー液のみを含むこともでき、好ましくは、セメント粉を含む閉鎖された第1の容器とモノマー液を含む閉鎖された第2の容器である。
【0059】
さらに、前記成形型下部と、前記成形型上部と、好ましくは前記成形型壁と、存在する場合には前記蓋とがプラスチックフィルムで構成され、又は、実質的にプラスチックフィルムで構成され、又は、前記成形型下部と、前記成形型上部と、好ましくは前記成形型壁と、存在する場合には前記蓋とがそれぞれの場合において互いに連結された2つ以上のプラスチックフィルムで構成され、特に好ましくは、溶接又は接着剤で互いに結合される。
【0060】
このようにして、この構造は特に安価でありながら、驚くべきことに、その中に骨セメントスペーサを成形するのに十分な頑丈さを備えている。また、使用後は焼却処分することで、安価で衛生的に廃棄できる。
【0061】
成形型下部及び上部、及び存在する場合には成形型壁及び/又は実質的にプラスチックフィルムで構成されている又は2つ以上のプラスチックフィルムが接合されて構成されているとは、成形型下部及び上部、及び任意の成形型壁及び蓋の体積又は重量の50%以上が、プラスチックフィルム又は2つ以上のプラスチックフィルムで構成されていることを意味する。
【0062】
成形型下部と成形型上部と、さらに好ましくは成形型壁と、存在する場合には蓋は、プラスチックフィルムを熱成形して製造されることが好ましい。
【0063】
本願の目的のために、フィルムは、好ましくは最大2mmの厚さを有し、好ましくは最大1mmの厚さを有するべきである。
【0064】
また、フィルムや接合されたフィルムは、自立していることが好ましく、コーティングの形態をとらないことが望ましい。
【0065】
また、前記成形型下部と、前記成形型上部と、前記成形型壁と、存在する場合には前記蓋とが実質的に又は全体的にプラスチック材料で構成されており、好ましくはポリオレフィン、ポリエチレン又はポリプロピレン、特に好ましくはPETGフィルム及び/又はポリアミドフィルム及び/又はPEフィルムで製造されている。
【0066】
この点でも、非常に安価な構造となっている。また、使用後は装置を焼却処分することで、安価で衛生的に廃棄できる。
【0067】
また、前記少なくとも1つの開口は、最大2.5mm、好ましくは最大2mm、特に好ましくは最大1.5mm、より特に好ましくは最大1mmの最小断面長さを有する。
【0068】
最大の断面長さは、少なくとも1つの開口で硬化した骨セメントペースト、すなわち、少なくとも1つの開口に形成されたスプルーが、スペーサを離型するために工具を使わずに剪断され、破壊されることを確実にする。セメントペーストが硬化すると、少なくとも1つの開口の直径が小さくなることは、そこを通過する骨セメントスプルー(該骨セメントスプルーは、成形型上部の成形面とは反対側の余分な骨セメントペーストつきの硬化したスペーサと接続する)が剪断や破断によって容易に剥離することを意味する。
【0069】
開口の最小断面長さは、自由な流れ(流れの方向に垂直な方向)に適した断面積の最も狭い寸法を意味する。スリット状の開口の場合、これは例えば幅であり、例えばスリットの長さではない。
【0070】
また、前記少なくとも1つの開口は、少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.5mm、特に好ましくは少なくとも1mmの最小断面長さを有する。
【0071】
最小断面長さは、骨セメントペーストの粘度が高くても、少なくとも1つの開口から過度に高い機械的圧力をかけずに骨セメントペーストを押すことを確実にする。手作業では適用できない、又は、成形型を破壊し、損傷することがある骨セメントペーストに余分な圧力をかける必要なく、余分な骨セメントペーストは、このように寸法が決められた開口から問題なく流れ出ることができる。
【0072】
少なくとも1つの開口は、好ましくはスリット状ではなく、特に好ましくは、最大で幅の2倍の長さである。
【0073】
更なる改良により、前記成形型下部の前記空洞とは反対側の前記成形型壁の端部に、成形型壁内の成形型上部の前記空洞の方向への移動を制限するための制限停止部が配置され、好ましくは、前記成形型下部の前記空洞とは反対側の前記成形型壁の前記端部に、制限停止部として接触面が配置され、特に好ましくは、接触面は、前記成形型壁から直角に突出している。
【0074】
このようにして、骨セメントペーストからスペーサを成形するために、制限停止部に達するまで成形型上部を成形型壁に押し込むことができる。
【0075】
また、前記装置は、前記空洞内に配置されるべき、又は配置される金属コアを有し、好ましくは、前記空洞内の前記金属コアを、空洞の内側から及び前記成形型壁の内側から間隔を空けて保持する複数の間隔片を有し、特に好ましくは、前記間隔片は、硬化した骨セメント、特にポリメチルメタクリレートで構成される。
【0076】
このようにして、製造されるスペーサに、金属コアの形で機械的に安定した補強材を配置できる。
【0077】
金属コアを備えた装置では、ピン状の間隔片を受け入れるための孔を金属コアに設けることができるが、この孔は、スペーサの摺動面を成形するための空洞の領域には配置されていないことが好ましく、特にスペーサのステムを成形するための空洞の領域に配置されていることが好ましい。
【0078】
成形型下部に配置される金属コアのための股関節及び肩スペーサを製造するのに有利であり、この金属コアは、間隔片によって成形型下部の壁から間隔を空けられている。特に、ポリメチルメタクリレートピンが間隔片として適している。このピンは、骨セメントペーストと結合し、硬化後はスペーサの輪郭に合わせてトリミングすることができる。
【0079】
加えて、前記成形型下部、又は、前記成形型下部及び前記成形型壁、又は、前記成形型下部、前記成形型壁及び前記成形型上部が、透明又は半透明である
【0080】
このようにして、空洞の充填中やスペーサの形成中に、スペーサの型に骨セメントペーストが充填されているのか、どのように充填されているか、またその中でどのように硬化しているかを視覚的に監視できる。そのため、スペーサが目的の形状になっているかどうかを視覚的に監視できる。
【0081】
さらに、前記少なくとも1つの開口は、前記成形型の通常の配置において、前記中空空間の最も高い位置となる領域に配置されている。
【0082】
このようにして、中空空間から逃げきれない閉じ込められた空気が中空空間で発生することを防ぐことができる。
【0083】
また、前記成形型上部の前記成形面は、外縁によって前記成形型壁に対して内部に支持され、前記成形型上部が押し込まれると、その縁が前記成形型壁に対して内部でスライドし、好ましくは、前記縁はワイパーリム又はワイパーリップを有する。
【0084】
これにより、成形型上部を押し込んで骨セメントペーストを回収し、圧縮する際に、成形型の内部で骨セメントペーストが確実に使用される。
【0085】
加えて、前記装置は、スタンドを有し、前記成形型下部が前記スタンドに挿入でき、前記スタンドは、前記成形型下部がスタンドにある状態で平らな支持体に置かれることに適合し、前記スタンドは、好ましくは、実質的又は全体的にプラスチックフィルムで構成されている又は2つ以上のプラスチックフィルムが互いに接合され、特に好ましくは、溶接又は接着剤で接合されている。
【0086】
これは、スペーサを成形する際に、テーブルなどの平らな支持体の上に装置を配置できるという利点がある。同時に、このスタンドは、成形型、特に成形型下部を安定させるためにも使用できる。
【0087】
スタンドは、実質的に又は全体的にPE、PP、又はポリオレフィンで構成されている。
【0088】
実質的にプラスチックフィルム又は2つ以上のプラスチックフィルムを接合したもので構成されるスタンドとは、スタンドの体積又は重量の50%以上がプラスチックフィルム又は2つ以上のプラスチックフィルムを接合したもので構成されることを意味する。
【0089】
また、本発明の根底にある目的は、前記関節の関節面を含む、関節又は関節の一部、特に股関節、膝関節又は肩関節を一時的に置換するためのスペーサを製造する方法であって、上記装置を用いて実施され、前記方法は、時系列的な
A)流動性の骨セメントペーストを、前記空洞と、前記成形型壁によって区切られた前記内部とに導入するステップであって、前記流動性の骨セメントペーストの量が、前記スペーサに必要とされる量よりも多く導入される、ステップ、B)前記成形面が前記空洞の方向を向いている状態で、前記成形型上部を前記成形型壁に挿入するステップ、C)前記成形型上部を、前記成形型壁内の前記空洞の方向に押し込むステップ、D)前記成形型上部が押し込まれ続けると、前記少なくとも1つの開口を介して余分な骨セメントペーストが出現するステップであって、前記余分な骨セメントペーストが、前記余分な骨セメントペーストを受け入れるための前記少なくとも1つの容器に流入する、ステップ、E)制限停止部に達したとき、又は前記スペーサの所望の高さに達したときに、押し込みが完了するステップ、F)前記空洞、前記成形型上部の前記成形面、及び前記成形型壁によって形成される中空空間で前記骨セメントペーストを硬化するステップ、及びG)このようにして成形され、硬化された前記スペーサを前記中空空間から除去するステップであって、前記少なくとも1つの開口に形成された硬化した前記骨セメントペーストのスプルーが剥離される、ステップ、を有する、方法によって達成される。
【0090】
この方法は、好ましくはPMMA製骨セメントペーストを用いて実施される。
【0091】
この方法は、低粘度の骨セメントペースト、又は冷却した中粘度から高粘度の骨セメントペーストを用いて適用されることが好ましい。
【0092】
また、ステップD)において、前記余分な骨セメントペーストが、前記成形型下部の前記余分な骨セメントペーストを受け入れるための蓋で閉鎖された下部容器に流れ込み、その中に封入され、及び/又は、前記成形型上部の余分な骨セメントペーストを受け入れるための蓋で閉鎖された上部容器に流れ込み、その中に封入され、ステップF)の後、又はステップG)で硬化したスペーサを離型するときに、硬化した余分な骨セメントペーストが前記下部容器及び/又は前記上部容器に残っている。
【0093】
これにより、骨セメントペーストが外に出て周囲を汚染することを防ぐことができる。
【0094】
加えて、ステップA)の前に、前記骨セメントペーストを、モノマー液とセメント粉から混合し、特に均質な骨セメントペーストが得られるまで混合し、好ましくは、ステップA)の前に、金属コアが前記空洞内に配置され、好ましくは、前記金属コアは、ピン状の間隔片を用いて、前記空洞の内壁及び前記成形型壁から間隔を空けられる。
【0095】
これで方法は完了する。
【0096】
また、ステップC)において、前記成形型下部の前記空洞、前記成形型上部の成形面、及び前記成形型壁によって区切られた前記中空空間から、前記少なくとも1つの開口を介して空気が排出される。
【0097】
これにより、閉じ込められた空気によるスペーサに意図しない欠陥が発生することを防ぐことができる。
【0098】
ステップF)の後、ステップG)の前に、前記成形型上部を前記成形型壁の前記開口の端から引き抜いてもよい。
【0099】
これにより、スペーサの離型が容易になる。
【0100】
本発明は、以下の驚くべき認識に基づいている。非常に単純化された安価な成形型を用いて、余分な骨セメントペーストを含む成形型の2つの部品を互いに押し込むことができ、成形型はスペーサを製造するための余分な骨セメントペーストを含んでおり、成形面に設けられた少なくとも1つの適切な開口を通して余分な骨セメントペーストを成形型から出すことができる。出現する骨セメントペーストは、成形型の閉鎖された領域に取り込まれ、封入されることが好ましい。少なくとも1つの開口は、閉じ込められた空気が少なくとも1つの開口から出てくるようにして、スペーサの欠陥を回避するために、成形型の使用時に上部に配置される成形型の一箇所に配置されることが好ましい。余分な骨セメントペーストを受け入れるための少なくとも1つの容器は、装置を使用する際に、成形型から出てきた骨セメントペーストで使用者や周囲が汚染されることを防ぐ。同時に、結果として装置の使用が単純化する。
【0101】
本発明による例示的な装置は、以下のように構成できる。
a)スペーサを成形するための少なくとも1つの空洞をその上部に有する成形型下部と
b)空洞に隣り合い垂直かつ上方に配置された成形型壁であって、成形型壁の互いに対向する壁部が互いに平行であり、成形型壁の周囲が内部を囲んでいる成形型壁と
c)スペーサを成形するための少なくとも1つの面を底部に有する成形型上部と
d)成形面に隣り合い垂直かつ上方に配置された内壁であって、内壁の互いに対向する壁部が互いに平行である内壁と、
e)成形型上部に挿入され、成形型上部の上面と内壁とで形成される空間を閉鎖し、余分な骨セメントペーストを受け入れる容器としての蓋と、
f)成形型上部の壁に設けられ、成形型上部の成形面と、成形型上部の上面と内壁とで形成される空間とを連通する少なくとも1つの開口と、を備え、
g)成形型上部が成形型下部に上下にスライド可能に配置され、
h)空洞の体積と周囲を成形型壁で区切られた内部の体積との合計が、製造されるスペーサの体積よりも大きく、
i)空洞及び周囲を成形型で区切られた内部に骨セメントペーストが充填され、その後、成形型上部が空洞の方向に押し込まれると、余分な骨セメントペーストが、蓋で上部が閉鎖された余分な骨セメントペーストを受け入れるための容器の少なくとも1つの開口から出てきて、その中に留まることを特徴とする。
【0102】
本発明による装置は、まず、骨セメントペーストを成形型下部の空洞と成形型壁で区切られた内部に導入するように使用される。骨セメントペーストの体積は、製造するスペーサの体積よりもいくらか大きくする必要がある。続いて、成形型上部を成形型下部に挿入する。成形型上部の内壁の外側は、成形型下部の成形型壁に対して内部に支持される。その後、成形型上部又は成形型上部の蓋に圧力を加え、成形型上部を成形型下部の空洞の方向に下降させる。成形型壁と成形型上部の成形面で区切られた内部の骨セメントペーストの上方に位置する空気は、成形型上部の上面と内壁で形成された空間の少なくとも1つの開口を通って、すなわち、余分な骨セメントペーストを受け入れるための容器に逃げる。骨セメントペーストは、成形型上部の成形面に接触し、それを覆う。移動を続けると、骨セメントペーストは、成形型下部の空洞の壁(空洞の内側)の輪郭に沿って、骨セメントペーストが少なくとも1つの開口に到達するまで流れる。このようにして、成形型下部の空洞と成形型上部の成形面に骨セメントペーストが充填される。その結果、スペーサが成形される。その後、フリーラジカル重合により骨セメントペーストが硬化する。硬化が完了すると、成形型上部が成形型下部から引き抜かれる。形成されたスペーサは、少なくとも1つの開口の領域でアンダーカットによって成形型上部に接続されているので、通常は成形型上部に固着したままである。その後、成形型上部をスペーサから取り外す。そうすることで、少なくとも1つの開口を通っている骨セメントスプルーは剪断され、余分な骨セメントペーストを受け入れるための容器内に残る。
【0103】
本発明による装置でスペーサを製造するための本発明による例示的な方法は、以下の連続したステップを含んでいてもよい。
a)セメント粉をモノマー液と混合し、均質な骨セメントペーストが得られるまでセメント成分を均質化するステップ
b)骨セメントペーストを、成形型下部及び成形型壁で区切られた内部の空洞に導入するステップ
c)成形型上部を成形型下部の成形型壁で区切られた内部に挿入するステップ
d)成形型上部を成形型下部の空洞の方向に押し下げるステップ
e)骨セメントペーストと成形型上部の成形面との間の成形型の内部から、少なくとも1つの開口を介して、成形型上部の上面と内壁とで形成される空間に空気を排出するステップ
f)余分な骨セメントペーストを、少なくとも1つの開口を介して成形型の内部から、余分な骨セメントペーストを受け入れる容器としての成形型上部の上部と内壁とで形成される空間に排出するステップ
g)骨セメントペーストを硬化させるステップ
h)成形型上部を引き抜くステップ
i)硬化した余分な骨セメントペーストが、余分な骨セメントペーストを受け入れるための容器として、成形型上部と内壁とで形成される空間に残っている、硬化したスペーサを離型するステップ
【0104】
本発明のさらなる例示的な実施形態は、35枚の概略図を参照して以下に説明されるが、それによって本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】別々に描かれた個々の部品を備えた股関節スペーサを製造するための装置としての本発明の第1の例示的な実施形態を示す概略的な透視外観図である。
図2】成形型上部を開口した概略的な平面図である。
図3】成形型下部に金属コアを配置する前の、図1及び図2による第1の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図4】骨セメントペースト導入時の第1の例示的な実施形態の成形型の概略的な透視外観図である。
図5】成形型上部を成形型下部に挿入する前の第1の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図6】第1の例示的な実施形態の閉鎖された成形型を示す概略平面図であり、断面図Bが示されている。
図7】閉鎖された状態の第1の例示的な実施形態の図6による断面B上の模式的な断面図である。
図8】閉鎖された状態の第1の例示的な実施形態の骨セメントペーストを充填した成形型を示す、概略的な透視角度付き断面図である。
図9図8の装置の蓋を外した状態の概略的な透視図である。
図10図1図9までの第1の例示的な実施形態の装置を用いて製造されたスペーサの概略的な透視側面図である。
図11】間隔片を外した図10のスペーサの概略的な断面図である。
図12】肩関節用のスペーサを製造するための装置としての本発明の第2の例示的な実施形態の各部分に関する概略的な透視図である。
図13】成形型下部に金属コアを配置する前の、図12による第2の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図14】骨セメントペーストの導入中の第2の例示的な実施形態の成形型の概略的な透視外観図である。
図15】成形型上部を成形型下部に挿入する前の第2の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図16】第2の例示的な実施形態の閉鎖された成形型に関する概略的な透視図である。
図17】硬化したスペーサの除去中の第1の例示的な実施形態の概略的な透視図である。
図18図12図17による第2の例示的な実施形態の装置を用いて製造されたスペーサを示す概略的な透視側面図である。
図19】第2の例示的な実施形態の閉鎖された成形型を示す概略平面図であり、断面平面A及びBが示されている。
図20】閉鎖された状態の第2の例示的な実施形態の図19による断面B上の概略的な断面図である。
図21】閉鎖された状態の第2の例示的な実施形態の図19による断面A上の概略的な断面図である。
図22】第2の例示的な実施形態の骨セメントペーストを充填した成形型が閉鎖された状態を示す概略的な透視断面図である。
図23】膝関節用の関節スペーサの2つのコンポーネントを製造するための装置としての本発明の第3の例示的な実施形態の個々の部品に関する概略的な透視図である。
図24】成形型下部を開口した図23による第3の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図25】骨セメントペーストの導入中の第3の例示的な実施形態の成形型の概略的な透視外観図である。
図26】成形型上部を成形型下部に挿入する前の第3の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図27】成形型上部を成形型下部に挿入している間の、第3の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図28】第3の例示的な実施形態の閉鎖された成形型に関する概略的な透視図である。
図29】第3の例示的な実施形態の骨セメントペーストを充填した成形型を閉鎖された状態で示す概略的な透視断面図である。
図30】成形型下部から成形型上部を引き抜く際の第3の例示的な実施形態の概略的な透視外観図である。
図31】膝関節用の2つのスペーサを備えた第3の例示的な実施形態の個々の部品に関する概略的な透視図である。
図32】閉鎖された成形型と成形型のスタンドを備えた第3の例示的な実施形態の概略的な透視図である。
図33】第3の例示的な実施形態の成形型を閉鎖された状態で示す概略的な断面図である。
図34】第3の例示的な実施形態による装置を使用して製造されたスペーサの2つの部品を示す概略的な透視図である。
図35】第3の例示的な実施形態の蓋を外した成形型を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
図1図9は、股関節用のスペーサを製造するための本発明による装置の第1の例示的な実施形態と、その装置の部品を示す様々な図である。図1図11は、第1の例示的な実施形態による装置を用いて実施される、本発明による方法の第1の例示的な実施形態の経過を示している。
【0107】
本発明による第1の装置は、股関節用のスペーサ42(図10及び図11参照)を製造するのに適しており、提供される。この装置は、マルチパート成形型で構成されている。成形型は、成形型下部1と成形型上部5を有している。成形型下部1には、骨セメントペースト36(図4図5及び図8参照)を受け入れ、製造するスペーサ42の表面の一部を形成するための空洞2が配置されている。空洞2は、スペーサ42の半分を形成できる。また、空洞2が形成する中空空間を内部4で拡張する成形型壁3を、空洞2の縁に配置してもよい。このため、成形型壁3は、空洞2の縁の周囲を囲んでいてもよい。成形型壁3の壁は、成形型壁3が一般的なシリンダ形の形状を有するように、互いに平行に配向されてもよく、一般的なシリンダの基部領域は、空洞2の縁を画定する領域によって画定される。骨セメントペースト36を導入するための内部4は、成形型壁3の壁内に配置されており、この内部は、空洞2と接続されており、好ましくは、整列もしている。
【0108】
成形型上部5は、好ましくは、成形型下部1に挿入又は押し込むことができる。成形型上部5は、その底部に成形面6を有しており、この成形面により、製造されるスペーサ42の表面のさらに一部が成形可能であり、好ましくは製造されるスペーサ42の表面の残りの部分が成形可能である。空洞2とともに、成形面6は、スペーサ42の全表面又はスペーサ42の全表面の少なくとも90%を画定してもよい。成形面6は、成形型上部5にくぼみを形成してもよい。また、成形型壁3の一部がスペーサ42の表面の一部を形成することや、スペーサ42の表面の一部を形成する1つ以上のインサート(図示せず)が空洞2に追加で挿入されることや、成形面6に配置されることも可能である。
【0109】
余分な骨セメントペースト38(図8及び図9参照)を受け入れるための容器7を、成形面6とは反対側の成形型上部5の側に配置してもよい。余分な骨セメントペースト38を成形面6の側から容器7に向けて貫通させる開口8が、成形面6に存在していてもよい。開口8は、好ましくは、装置の適切な配置において、成形型の最も高い成形点となる成形面6の位置に配置される。このようにして、製造されるスペーサ42において閉じ込められた空気が回避されるように、成形型内に閉じ込められたガスは開口8を介して逃げることができる。
【0110】
容器7は、蓋9で骨セメントペースト36のために外部に不透過性に閉鎖されていたか、又は閉鎖されていてもよい。また、容器7を区切る内壁11は、成形面6の裏面から始まり、そこから離れて延びていてもよい。内壁11は、成形型壁3と完全に適合するように外部に配置されてもよい。このようにして、成形型上部5を成形型下部1の成形型壁3に完全にはめ込み、それに応じて骨セメントペースト36を成形型壁3の内側から採取して、空洞2と成形面6に押し込むことができる。このため、成形型壁3が空洞2の方向に先細りしていれば十分であり、このため、先細りは鋭角でなければならない。
【0111】
なお、容器7は、周囲とガス透過的を有していてもよい。このため、蓋9が圧迫されて閉まらないようにすることができ、及び/又は、蓋及び/又は内壁11に小さな通気口(図示せず)が配置されてもよい。
【0112】
スペーサ42の補強材として、金属コア10を設けてもよい。このため、金属コア10は、硬化したPMMAのピン状の間隔片12を用いて、空洞2の内側及び成形型壁3から間隔を空けて保持されてもよく、これにより、骨セメントペースト36は、一方では金属コア10と、他方では空洞2の内側及び成形面6との間で、金属コア10の周りを完全に流れることができる。間隔片12を配置するために、ピン状の間隔片12の一端を受け入れるための孔14を金属コア10に設けてもよい。ピン状の間隔片12の反対側の端部を受け入れるための合致するくぼみも、同様に、空洞2の内側に配置されてもよい。
【0113】
また、成形型下部1を下に、成形型壁3を上に垂直にして成形型を正しく配置するために、成形型下部1を載せる又は挿入することができるスタンド16を設けてもよい。スタンド16は、テーブルなどの平らな面に配置するために設けられていてもよい。
【0114】
成形型下部1、成形型上部5、蓋9及びスタンド16は、プラスチックフィルム又は複数の接合されたプラスチックフィルムから、特に射出成形又は熱成形によって安価に製造できる。組み立てられた状態では、プラスチックフィルムから製造された装置の部分は、互いに機械的に安定している。プラスチックフィルムは、ポリオレフィン、ポリエチレン(PET)、グリコール変性PET(PETG)で構成されることが好ましい。複数のフィルムを使用する場合には、接着剤で、又は高温で積層されてもよい。
【0115】
内部に配置された溝18と、外部に配置されたスプルー19とは、成形型壁3の空洞2とは反対側の側面に設けられた制限停止部20から空洞2の縁に向かって延びるものであり、成形型壁3に配置してもよい。スプルー19は、溝18を形成するための体積を含んでいてもよい。金属コア10の孔14に挿入されてそこから突出したピン状の間隔片12の端部は、これらの溝18に沿って空洞2に案内されてもよい。
【0116】
スプルー19に合致する溝21は、スタンド16の内部に設けてもよい。その結果、成形型下部1をスタンド16に案内して押し込むことができ、成形型下部1がスタンド16から容易に外れたり、スタンド16に対して容易に移動したりすることがなくなる。
【0117】
間隔片12、ひいては金属コア10を固定するために、成形型上部5の成形面6の端部に合致する凹部23を配置してもよい。なお、凹部23は、成形型上部5が成形型下部1の成形型壁3に押し込まれたときに、成形型壁3の溝18に沿って移動するように、成形面6の端部に配置されていてもよい。それに伴い、金属コア10から突出した間隔片12の端部は、成形型上部5と成形型下部1との間の成形型内の所定の位置にクランプされる。
【0118】
なお、制限停止部20は、成形型壁3の空洞2から離れた側に、成形型壁3から垂直に突出した周囲の帯状の縁として配置されていてもよい。制限停止部20は、成形型上部5を成形型下部1に押し込むことができる距離を制限できる。このため、成形型上部5は、内壁11から垂直に突出し、成形面6とは反対側の内壁11の側に配置される周縁の形態の嵌合停止部22を有してもよい。成形型上部5が成形型下部1に完全に押し込まれたとき、嵌合停止部22が制限停止部20で支持される。同様に、制限停止部20とは反対側の嵌合停止部22の側に配置可能な蓋縁24を蓋9に配置してもよい。制限停止部20、嵌合停止部22、蓋縁24が、隣り合う部品から斜めに突出しているため、組立状態において、成形型下部1、成形型上部5、蓋9の形状が機械的に安定する。これは、プラスチックフィルムや複数のプラスチックフィルムを熱成形して製造された部品の場合に特に有効である。
【0119】
この装置は、さらに、骨セメントペースト36を混合カップ26から注ぐための注ぎ口28を備えた混合カップ26(図3参照)と、セメント粉を含むフィルムパウチ30、モノマー液を含むアンプル32、及び混合カップ26内でセメント粉とモノマー液を混合するためのスパチュラ34を含むことができる。その後、骨セメントペースト36は、成形型又は成形型下部1に導入される前に、混合カップ26で混合されてもよい。しかし、骨セメントペースト36は、成形型に導入される前に、別の方法で製造することもできる。したがって、この装置は、混合カップ26を必ずしも必要とせず、また、骨セメントペースト36又はその出発成分を必要としない。この装置は、原則として、骨セメントペーストを製造するための他の既知のシステム、例えば、骨セメントペーストを貯蔵し、混合するための適切なカートリッジシステムに適用し、使用することができる。
【0120】
本発明による方法の第1の例示的な実施形態の経過を、図1図11を参照して以下に説明する。
【0121】
装置は、まず無菌状態のパッケージ(図示せず)から取り出され、その後、図1に、又は図3又は図4に示すように存在できる。また、成形型下部1がまだスタンド16に挿入されていない場合には、溝21を介して成形型下部1をスタンド16に押し込んでもよい。まだ存在していない場合には、金属コア10を空洞2に挿入してもよい(図3参照)。そうすると、間隔片12の突出した端部は、成形型壁3の溝18内をスライドする。
【0122】
骨セメントペースト36は、フィルムパウチ30からのセメント粉と、アンプル32からのモノマー液とを、スパチュラ34を用いて混合カップ26内で混合することにより、混合することができる。あるいはまた、骨セメントペースト36は、任意の他の方法で製造されてもよい。
【0123】
金属コア10を空洞2又は内部4に挿入する際、骨セメントペースト36を内部4及び空洞2に余分に導入できる(図4参照)。その後、成形型上部5は、成形型下部1又は成形型壁3に挿入され、押し込まれてもよい。このため、容器7は蓋9で閉鎖されてもよい(図5参照)。
【0124】
成形型上部5は、嵌合停止部22が制限停止部20(この点については、成形型に封入された骨セメントペーストを示していない図6及び図7を参照)で支持されるまで、成形型下部1の内部4に押し込むことができる。成形型上部5を押し込むと、存在する骨セメントペースト36が空洞2内に押し込まれ、成形型内の体積が連続的に減少することがある。余分な骨セメントペースト38は、開口8から容器7内に押し出される(図8、9参照)。余分な骨セメントペースト38は、蓋9を用いて容器7内に封入できる。
【0125】
その後、骨セメントペースト36は、成形型内で硬化させることができ、その表面は、成形型下部1の空洞2の表面と成形型上部5の成形面6によって成形される。その結果、例えば図10、11に示すようなスペーサ42が得られる。骨セメントペースト36の硬化中に、スペーサ42と容器7内の硬化した余分な骨セメントペースト38とを接続するスプルー40が、開口8に形成されてもよい。スペーサ42は、成形型下部1及び成形型上部5から切り離されて離型される。その際、スプルー40が剪断され、折れることがある。確実に直線的に離型できるように、スプルー40は、スペーサ42を成形型上部5から分離する際に、手動で折れ、剪断できるような小さな直径でなければならない。このため、スプルー40の直径が最大2.5cm、好ましくは最大2cmであることが有効であることが分かっている。したがって、開口8の内径は、最大2.5cm、好ましくは最大2cmであることが望ましい。また、スプルー40の分離をさらに容易にするために、より小さな直径を選択することもできる。しかし、開口8は、骨セメントペースト36が過度の抵抗なしに開口8から押し出されるように、0.2mm以下の直径を有してはならない。そうしないと、骨セメントペースト36の粘度によっては、成形型上部5を成形型下部1に押し込む際の抵抗が大きくなりすぎて、まだ手作業で行うことができないことや、成形型の損傷や破壊を避けることができないことになる。ここでの開口8の最適な直径は、使用される骨セメントペースト36の粘度に依存する。典型的な骨セメントに適した直径は、1mmから20mmである。経験則として、骨セメントペースト36の粘度が高いほど、選択した開口8の内径を大きくする必要がある。
【0126】
離型後、突出した間隔片12、成形型下部1と成形型上部5との接合部に形成されたバリ、スプルー40の突出した残骸は、例えば、ナイフやメスで切り落としたり、研削ヘッドで削ったりして除去してもよい。最終的には、図11に示すようなスペーサ42が得られる。
【0127】
図12図22は、肩関節用のスペーサを製造するための本発明による装置の第2の例示的な実施形態、装置の部品、及びその装置を用いて製造されたスペーサを示す様々な図である。図12図18及び図22は、第2の例示的な実施形態による装置を用いて実施される、本発明による方法の第2の例示的な実施形態の経過を示している。
【0128】
本発明による第2の装置は、肩関節用のスペーサ92(図17図18参照)を製造するのに適しており、提供される。この装置は、マルチパート成形型で構成されている。成形型は、成形型下部51と成形型上部55を有している。成形型下部51には、骨セメントペースト36(図12図15参照)を受け入れ、製造するスペーサ92の表面の一部を形成するための空洞52が配置されている。空洞52は、スペーサ92の半分を形成できる。また、空洞52が形成する中空空間を内部54で拡張する成形型壁53を、空洞52の縁に配置してもよい。このため、成形型壁53は、空洞52の縁の周囲を囲んでいてもよい。成形型壁53の壁は、成形型壁53が一般的なシリンダ形の形状を有するように、互いに平行に配向されてもよく、一般的なシリンダの基部領域は、空洞52の縁を画定する領域によって画定される。骨セメントペースト36を導入するための内部54は、成形型壁53の壁内に配置されており、この内部は、空洞52と接続されており、好ましくは、整列もしている。
【0129】
成形型上部55は、好ましくは、成形型下部51に挿入又は押し込むことができる。成形型上部55は、その底部に成形面56を有しており、この成形面により、製造されるスペーサ92の表面のさらに一部が成形可能であり、好ましくは製造されるスペーサ92の表面の残りの部分が成形可能である。空洞52とともに、成形面56は、スペーサ92の全表面又はスペーサ92の全表面の少なくとも90%を画定してもよい。成形面56は、成形型上部55にくぼみを形成してもよい。また、成形型壁53の一部がスペーサ92の表面の一部を形成することや、スペーサ92の表面の一部を形成する1つ以上のインサート(図示せず)が空洞52に追加で挿入されることや、成形面56に配置されることも可能である。
【0130】
余分な骨セメントペースト38(図22参照)を受け入れるための容器57を、成形面56とは反対側の成形型上部55の側に配置してもよい。余分な骨セメントペースト38を成形面56の側から容器57に向けて貫通させる開口58が、成形面56に存在していてもよい。開口58は、好ましくは、装置の適切な配置において、成形型の最も高い成形点となる成形面56の位置に配置される。このようにして、製造されるスペーサ92において閉じ込められた空気が回避されるように、成形型内に閉じ込められたガスは開口58を介して逃げることができる。
【0131】
容器57は、蓋59で骨セメントペースト36のために外部に不透過性に閉鎖されていたか、又は閉鎖されていてもよい。また、容器57を区切る内壁61は、成形面56の裏面から始まり、そこから離れて延びていてもよい。内壁61は、成形型壁53と完全に適合するように外部に配置されてもよい。このようにして、成形型上部55を成形型下部51の成形型壁53に完全にはめ込み、それに応じて骨セメントペースト36を成形型壁53の内側から採取して、空洞52と成形面56に押し込むことができる。このため、成形型壁53が空洞52の方向に先細りしていれば十分であり、このため、先細りは鋭角でなければならない。
【0132】
なお、容器57は、周囲とガス透過的を有していてもよい。このため、蓋59が圧迫されて閉まらないようにすることができ、及び/又は、蓋及び/又は内壁61に小さな通気口(図示せず)が配置されてもよい。
【0133】
スペーサ92の補強材として、金属コア60を設けてもよい。このため、金属コア60は、硬化したPMMAのピン状の間隔片62を用いて、空洞52の内側及び成形型壁53から間隔を空けて保持されてもよく、これにより、骨セメントペースト36は、一方では金属コア60と、他方では空洞52の内側及び成形面56との間で、金属コア60の周りを完全に流れることができる。間隔片62を配置するために、ピン状の間隔片62の一端を受け入れるための孔(図示せず)を金属コア60に設けてもよい。ピン状の間隔片62の反対側の端部を受け入れるための合致するくぼみも、同様に、空洞52の内側に配置されてもよい。
【0134】
また、成形型下部51を下に、成形型壁53を上に垂直にして成形型を正しく配置するために、成形型下部51を載せる又は挿入することができるスタンド66を設けてもよい。スタンド66は、テーブルなどの平らな面に配置するために設けられていてもよい。
【0135】
成形型下部51、成形型上部55、蓋59及びスタンド66は、プラスチックフィルム又は複数の接合されたプラスチックフィルムから、特に射出成形又は熱成形によって安価に製造できる。組み立てられた状態では、プラスチックフィルムから製造された装置の部分は、互いに機械的に安定している。プラスチックフィルムは、ポリオレフィン、ポリエチレン(PET)、グリコール変性PET(PETG)で構成されることが好ましい。複数のフィルムを使用する場合には、接着剤で、又は高温で積層されてもよい。
【0136】
内部に配置された溝68と、外部に配置されたスプルー69とは、成形型壁53の空洞52とは反対側の側面に設けられた制限停止部70から空洞52の縁に向かって延びるものであり、成形型壁53に配置してもよい。スプルー69は、溝68を形成するための体積を含んでいてもよい。金属コア60から突出したピン状の間隔片62の端部は、これらの溝68に沿って空洞52に案内されてもよい。
【0137】
スプルー69に合致する溝71は、スタンド66の内部に設けてもよい。その結果、成形型下部51をスタンド66に案内して押し込むことができ、成形型下部51がスタンド66から容易に外れたり、スタンド66に対して容易に移動したりすることがなくなる。
【0138】
間隔片62、ひいては金属コア60を固定するために、成形型上部55の成形面56の端部に合致する凹部73を配置してもよい。なお、凹部73は、成形型上部55が成形型下部51の成形型壁53に押し込まれたときに、成形型壁53の溝68に沿って移動するように、成形面56の端部に配置されていてもよい。それに伴い、金属コア60から突出した間隔片62の端部は、成形型上部55と成形型下部51との間の成形型内の所定の位置にクランプされる。
【0139】
なお、制限停止部70は、成形型壁53の空洞52から離れた側に、成形型壁53から垂直に突出した周囲の帯状の縁として配置されていてもよい。制限停止部70は、成形型上部55を成形型下部51に押し込むことができる距離を制限できる。このため、成形型上部55は、内壁61から垂直に突出し、成形面56とは反対側の内壁61の側に配置される周縁の形態の嵌合停止部72を有してもよい。成形型上部55が成形型下部51に完全に押し込まれたとき、嵌合停止部72が制限停止部70で支持される。同様に、制限停止部70とは反対側の嵌合停止部72の側に配置可能な蓋縁74を蓋59に配置してもよい。制限停止部70、嵌合停止部72、蓋縁74が、隣り合う部品から斜めに突出しているため、組立状態において、成形型下部51、成形型上部55、蓋59の形状が機械的に安定する。これは、プラスチックフィルムや複数のプラスチックフィルムを熱成形して製造された部品の場合に特に有効である。
【0140】
この装置は、さらに、骨セメントペースト36を混合カップ26から注ぐための注ぎ口28を備えた混合カップ26(図14参照)を含むことができる。また、この装置は、骨セメントペースト36の出発成分(図示せず)を別々の容器に入れたものであってもよい。その後、骨セメントペースト36は、成形型又は成形型下部51に導入される前に、混合カップ26で混合されてもよい。しかし、骨セメントペースト36は、成形型に導入される前に、別の方法で製造することもできる。したがって、この装置は、混合カップ26を必ずしも必要とせず、また、骨セメントペースト36又はその出発成分を必要としない。この装置は、原則として、骨セメントペーストを製造するための他の既知のシステム、例えば、骨セメントペーストを貯蔵し、混合するための適切なカートリッジシステムに適用し、使用することができる。
【0141】
本発明による方法の第1の例示的な実施形態の経過を、図12図22を参照して以下に説明する。
【0142】
装置は、まず無菌状態のパッケージ(図示せず)から取り出され、その後、図12又は図13に示すように存在できる。また、成形型下部51がまだスタンド66に挿入されていない場合には、溝71を介して成形型下部51をスタンド66に押し込んでもよい。まだ存在していない場合には、金属コア60を空洞52に挿入してもよい(図13参照)。そうすると、間隔片62の突出した端部は、成形型壁53の溝68内をスライドする。
【0143】
金属コア60を空洞52又は内部54に挿入する際、骨セメントペースト36を内部54及び空洞52に余分に導入できる(図14参照)。その後、成形型上部55は、成形型下部51又は成形型壁53に挿入され、押し込まれてもよい。このため、容器57は蓋59で閉鎖されてもよい(図15参照)。
【0144】
成形型上部55は、嵌合停止部72が制限停止部70(この点については、成形型に封入された骨セメントペーストを示していない図16図20及び視ることができない図21を参照)で支持されるまで、成形型下部51の内部54に押し込むことができる。成形型上部55を押し込むと、存在する骨セメントペースト36が空洞52内に押し込まれ、成形型内の体積が連続的に減少することがある。余分な骨セメントペースト38は、開口58から容器57内に押し出される(図22参照)。余分な骨セメントペースト38は、蓋59を用いて容器57内に封入できる。
【0145】
その後、骨セメントペースト36は、成形型内で硬化させることができ、その表面は、成形型下部51の空洞52の表面と成形型上部55の成形面56によって成形される。その結果、例えば図17図18に示すようなスペーサ92が得られる。骨セメントペースト36の硬化中に、スペーサ92と容器57内の硬化した余分な骨セメントペースト38とを接続するスプルー90が、開口58に形成されてもよい。スペーサ92は、成形型下部51及び成形型上部55から切り離されて離型される。その際、スプルー90が剪断され、折れることがある。確実に直線的に離型できるように、スプルー90は、スペーサ92を成形型上部55から分離する際に、手動で折れ、剪断できるような小さな直径でなければならない。このため、スプルー90の直径が最大2.5cm、好ましくは最大2cmであることが有効であることが分かっている。したがって、開口58の内径は、最大2.5cm、好ましくは最大2cmであることが望ましい。また、スプルー90の分離をさらに容易にするために、より小さな直径を選択することもできる。しかし、開口58は、骨セメントペースト36が過度の抵抗なしに開口58から押し出されるように、0.2mm以下の直径を有してはならない。そうしないと、骨セメントペースト36の粘度によっては、成形型上部55を成形型下部51に押し込む際の抵抗が大きくなりすぎて、まだ手作業で行うことができないことや、成形型の損傷や破壊を避けることができないことになる。ここでの開口58の最適な直径は、使用される骨セメントペースト36の粘度に依存する。典型的な骨セメントに適した直径は、1mmから20mmである。経験則として、骨セメントペースト36の粘度が高いほど、選択した開口58の内径を大きくする必要がある。
【0146】
離型後、突出した間隔片62、成形型下部51と成形型上部55との接合部に形成されたバリ、スプルー90の突出した残骸は、例えば、ナイフやメスで切り落としたり、研削ヘッドで削ったりして除去してもよい。最終的には、図18に示すようなスペーサ92が得られる。
【0147】
図23図35は、膝関節用のスペーサを製造するための本発明による装置の第3の例示的な実施形態、スペーサの部品、及び装置の部品を示す様々な図である。図23図31は、第3の例示的な実施形態による装置を用いて実施される本発明による方法の第3の例示的な実施形態の経過を示している。
【0148】
本発明による第3の装置は、膝関節を置換するための、大腿骨用のスペーサ142と脛骨用のスペーサ192(図31及び図34参照)を備えた2つの部品からなる関節スペーサを製造するのに適しており、提供される。この装置は、大腿骨用のスペーサ142を製造するための大腿骨コンポーネント成形型(図23図28及び図30図32及び図35の左側、図29及び図33の上部)と、脛骨用のスペーサ192を製造するための脛骨コンポーネント成形型(図23図28及び図30図32及び図35の右側、図29及び図33の下部)の2つのマルチパート成形型を有している。第3の例示的な実施形態は、本発明の目的のために、本発明による2つの異なる装置、すなわち、大腿骨用のスペーサ142を製造するための第4の装置と、脛骨用のスペーサ192を製造するための第5の装置として理解することもできる。
【0149】
大腿骨コンポーネント成形型は、成形型下部101と成形型上部105とを有している。成形型下部101には、骨セメントペースト36(図23図25図29及び図33参照)を受け入れ、製造するスペーサ142の表面の一部を形成するための空洞102が配置されている。空洞102は、スペーサ142の半分を形成できる。また、空洞102が形成する中空空間を内部104で拡張する成形型壁103を、空洞102の縁に配置してもよい。このため、成形型壁103は、空洞102の縁の周囲を囲んでいてもよい。成形型壁103の壁は、成形型壁103が一般的なシリンダ形の形状を有するように、互いに平行に配向されてもよく、一般的なシリンダの基部領域は、空洞102の縁を画定する領域によって画定される。骨セメントペースト36を導入するための内部104は、成形型壁103の壁内に配置されており、この内部は、空洞102と接続されており、好ましくは、整列もしている。
【0150】
成形型上部105は、好ましくは、成形型下部101に挿入又は押し込むことができる。成形型上部105は、その底部に成形面106を有しており、この成形面により、製造されるスペーサ142の表面のさらに一部が成形可能であり、好ましくは製造されるスペーサ142の表面の残りの部分が成形可能である。空洞102とともに、成形面106は、スペーサ142の全表面又はスペーサ142の全表面の少なくとも90%を画定してもよい。成形面106は、成形型上部105にくぼみを形成してもよい。また、成形型壁103の一部がスペーサ142の表面の一部を形成することや、スペーサ142の表面の一部を形成する1つ以上のインサート(図示せず)が空洞102に追加で挿入されることや、成形面106に配置されることも可能である。
【0151】
余分な骨セメントペースト38(図29参照)を受け入れるための容器107を、成形面106とは反対側の成形型上部105の側に配置してもよい。成形型上部105の内壁111にはチャンネルの形態で、余分な骨セメントペースト38を成形面106側から容器107側へ貫通させる開口108が、成形面106に存在してもよい。開口108は、好ましくは、装置の適切な配置において、大腿骨コンポーネント成形型の最も高い成形点となる成形面106の位置に配置される。このようにして、製造されるスペーサ142内に閉じ込められた空気が回避されるように、大腿骨コンポーネント成形型内に閉じ込められたガスは開口108を介して逃げることができる。
【0152】
容器107は、蓋109で骨セメントペースト36のために外部に不透過性に閉鎖されていたか、又は閉鎖されていてもよい。また、容器107を区切る内壁111は、成形面106の裏面から始まり、そこから離れて延びていてもよい。内壁111は、成形型壁103と完全に適合するように外部に配置されてもよい。このようにして、成形型上部105を成形型下部101の成形型壁103に完全にはめ込み、それに応じて骨セメントペースト36を成形型壁103の内側から採取して、空洞102と成形面106に押し込むことができる。このため、成形型壁103が空洞102の方向に先細りしていれば十分であり、このため、先細りは鋭角でなければならない。
【0153】
なお、容器107は、周囲とガス透過的を有していてもよい。このため、蓋109が圧迫されて閉まらないようにすることができ、及び/又は、蓋及び/又は内壁111に小さな通気口(図示せず)が配置されてもよい。
【0154】
第3の例示的な実施形態の好ましい変形例によれば、成形型下部101を下に、成形型壁103を上に垂直に配置して大腿骨コンポーネント成形型を正しく配置するために、成形型下部101が配置又は挿入されるスタンド116を設けてもよい(図32及び図33を参照)。スタンド116は、テーブルなどの平らな面に配置するために設けられていてもよい。
【0155】
成形型下部101、成形型上部105、蓋109及びスタンド116は、プラスチックフィルム又は複数の接合されたプラスチックフィルムから、特に射出成形又は熱成形によって安価に製造できる。組み立てられた状態では、プラスチックフィルムから製造された装置の部分は、互いに機械的に安定している。プラスチックフィルムは、ポリオレフィン、ポリエチレン(PET)、グリコール変性PET(PETG)で構成されることが好ましい。複数のフィルムを使用する場合には、接着剤で、又は高温で積層されてもよい。
【0156】
なお、制限停止部120は、成形型壁103の空洞102から離れた側に、成形型壁103から垂直に突出した周囲の帯状の縁として配置されていてもよい。制限停止部120は、成形型上部105を成形型下部101に押し込むことができる距離を制限できる。このため、成形型上部105は、内壁111から垂直に突出し、成形面106とは反対側の内壁111の側に配置される周縁の形態の嵌合停止部122を有してもよい。成形型上部105が成形型下部101に完全に押し込まれたとき、嵌合停止部122が制限停止部120で支持される。同様に、制限停止部120とは反対側の嵌合停止部122の側に配置可能な蓋縁124を蓋109に配置してもよい。制限停止部120、嵌合停止部122、蓋縁124が、隣り合う部品から斜めに突出しているため、組立状態において、成形型下部101、成形型上部105、蓋109の形状が機械的に安定する。これは、プラスチックフィルムや複数のプラスチックフィルムを熱成形して製造された部品の場合に特に有効である。
【0157】
脛骨コンポーネントは、大腿骨コンポーネント成形型と同様の構造であり、成形型下部151と成形型上部155とを有している。成形型下部151には、骨セメントペースト36(図23図25図29及び図33参照)を受け入れ、製造するスペーサ192の表面の一部を形成するための空洞152が配置されている。空洞152は、スペーサ192の半分を形成できる。また、空洞152が形成する中空空間を内部154で拡張する成形型壁153を、空洞152の縁に配置してもよい。このため、成形型壁153は、空洞152の縁の周囲を囲んでいてもよい。成形型壁153の壁は、成形型壁153が一般的なシリンダ形の形状を有するように、互いに平行に配向されてもよく、一般的なシリンダの基部領域は、空洞152の縁を画定する領域によって画定される。骨セメントペースト36を導入するための内部154は、成形型壁153の壁内に配置されており、この内部は、空洞152と接続されており、好ましくは、整列もしている。
【0158】
成形型上部155は、好ましくは、成形型下部151に挿入又は押し込むことができる。成形型上部155は、その底部に成形面156を有しており、この成形面により、製造されるスペーサ192の表面のさらに一部が成形可能であり、好ましくは製造されるスペーサ192の表面の残りの部分が成形可能である。空洞152とともに、成形面156は、スペーサ192の全表面又はスペーサ192の全表面の少なくとも90%を画定してもよい。成形面156は、成形型上部155にくぼみを形成してもよい。また、成形型壁153の一部がスペーサ192の表面の一部を形成することや、スペーサ192の表面の一部を形成する1つ以上のインサート(図示せず)が空洞152に追加で挿入されることや、成形面156に配置されることも可能である。
【0159】
余分な骨セメントペースト38(図29参照)を受け入れるための容器157を、成形面156とは反対側の成形型上部155の側に配置してもよい。余分な骨セメントペースト38を成形面156の側から容器157に向けて貫通させる開口158が、成形面156に存在していてもよい。開口158は、好ましくは、装置の適切な配置において、脛骨コンポーネント成形型の最も高い成形点となる成形面156の位置に配置される。このようにして、製造されるスペーサ1192内に閉じ込められた空気が回避されるように、脛骨コンポーネント成形型内に閉じ込められたガスは開口158を介して逃れることができる。
【0160】
容器157は、蓋159で骨セメントペースト36のために外部に不透過性に閉鎖されていたか、又は閉鎖されていてもよい。また、容器157を区切る内壁161は、成形面156の裏面から始まり、そこから離れて延びていてもよい。内壁161は、成形型壁153と完全に適合するように外部に配置されてもよい。このようにして、成形型上部155を成形型下部151の成形型壁153に完全にはめ込み、それに応じて骨セメントペースト36を成形型壁153の内側から採取して、空洞152と成形面156に押し込むことができる。このため、成形型壁153が空洞152の方向に先細りしていれば十分であり、このため、先細りは鋭角でなければならない。
【0161】
なお、容器157は、周囲とガス透過的を有していてもよい。このため、蓋159が圧迫されて閉まらないようにすることができ、及び/又は、蓋及び/又は内壁161に小さな通気口(図示せず)が配置されてもよい。
【0162】
第3の例示的な実施形態の好ましい変形例によれば、成形型下部151を下に、成形型壁153を上に垂直に配置して脛骨コンポーネント成形型を正しく配置するために、成形型下部151が配置又は挿入されるスタンド166を設けてもよい(図32及び33を参照)。スタンド166は、テーブルなどの平らな面に配置するために設けられていてもよい。
【0163】
成形型下部151、成形型上部155、蓋159及びスタンド166は、プラスチックフィルム又は複数の接合されたプラスチックフィルムから、特に射出成形又は熱成形によって安価に製造できる。組み立てられた状態では、プラスチックフィルムから製造された装置の部分は、互いに機械的に安定している。プラスチックフィルムは、ポリオレフィン、ポリエチレン(PET)、グリコール変性PET(PETG)で構成されることが好ましい。複数のフィルムを使用する場合には、接着剤で、又は高温で積層されてもよい。
【0164】
なお、制限停止部170は、成形型壁153の空洞152から離れた側に、成形型壁153から垂直に突出した周囲の帯状の縁として配置されていてもよい。制限停止部170は、成形型上部155を成形型下部151に押し込むことができる距離を制限できる。このため、成形型上部155は、内壁161から垂直に突出し、成形面156とは反対側の内壁161の側に配置される周縁の形態の嵌合停止部172を有してもよい。成形型上部155が成形型下部151に完全に押し込まれたとき、嵌合停止部172が制限停止部170で支持される。同様に、制限停止部170とは反対側の嵌合停止部172の側に配置可能な蓋縁174を蓋159に配置してもよい。制限停止部170、嵌合停止部172、蓋縁174が、隣り合う部品から斜めに突出しているため、組立状態において、成形型下部151、成形型上部155、蓋159の形状が機械的に安定する。これは、プラスチックフィルムや複数のプラスチックフィルムを熱成形して製造された部品の場合に特に有効である。
【0165】
この装置は、さらに、骨セメントペースト36を混合カップ26から注ぐための注ぎ口28を備えた混合カップ26(図23参照)と、セメント粉を含むフィルムパウチ30、モノマー液を含むアンプル32、及び混合カップ26内でセメント粉とモノマー液を混合するためのスパチュラ34を含むことができる。その後、骨セメントペースト36は、成形型又は成形型下部1に導入される前に、混合カップ26で混合されてもよい。しかし、骨セメントペースト36は、成形型に導入される前に、別の方法で製造することもできる。したがって、この装置は、混合カップ26を必ずしも必要とせず、また、骨セメントペースト36又はその出発成分を必要としない。この装置は、原則として、骨セメントペーストを製造するための他の既知のシステム、例えば、骨セメントペーストを貯蔵し、混合するための適切なカートリッジシステムに適用し、使用することができる。
【0166】
本発明による方法の第3の例示的な実施形態の経過を、図23図35を参照して以下に説明する。
【0167】
装置は、まず無菌状態のパッケージ(図示せず)から取り出され、その後、図23又は図25に示すように存在できる。スタンド116,166が存在する場合、成形型下部101,105は任意でスタンド116,166に挿入されてもよい。
【0168】
骨セメントペースト36は、フィルムパウチ30からのセメント粉と、アンプル32からのモノマー液とを、スパチュラ34を用いて混合カップ26内で混合することにより、混合することができる。あるいはまた、骨セメントペースト36は、任意の他の方法で製造されてもよい。
【0169】
骨セメントペースト36を、それぞれ、内部104及び空洞102に余分に導入でき、内部154及び空洞152に余分に導入できる(図25参照)。その後、成形型上部105は、成形型下部101に挿入され、押し込まれ、成形型上部155は、成形型下部151に挿入され、押し込まれてもよい。このため、容器107は蓋109で閉鎖され、容器157は蓋159で閉鎖されてもよい(図26図27参照)。
【0170】
成形型上部105は、嵌合停止部122が制限停止部120で支持されるまで、成形型下部101の内部104に押し込むことができ、成形型上部155は、嵌合停止部172が制限停止部170で支持されるまで、成形型下部151の内部154に押し込むことができる(この点については、図28図29を参照)。成形型上部105,155を押し込むと、存在する骨セメントペースト36が空洞102,152内に押し込まれ、大腿骨コンポーネント成形型、及び脛骨コンポーネント成形型内の体積が連続的に減少することがある。余分な骨セメントペースト38は、開口108,158から容器107,157内に押し出される(図29参照)。余分な骨セメントペースト38は、蓋109,159を用いて容器107,157内に封入できる。
【0171】
その後、大腿骨コンポーネント成形型、及び脛骨コンポーネント成形型内の骨セメントペースト36は、成形型内で硬化させることができ、その表面は、成形型下部101の空洞102の表面と成形型上部105の成形面106によって、又は、成形型下部151の空洞152の表面と成形型上部155の成形面156によって成形される。その結果、例えば図31図34に示すように、大腿骨の場合はスペーサ142が、脛骨の場合はスペーサ192が得られる。骨セメントペースト36の硬化中に、大腿骨のスペーサ142と容器107内の硬化した余分な骨セメントペースト38とを接続するスプルー140が、開口108に形成されてもよい。同様に、骨セメントペースト36の硬化中に、脛骨のスペーサ192と容器157内の硬化した余分な骨セメントペースト38とを接続するスプルー190が、開口158に形成されてもよい。スペーサ142,192は、成形型下部101,151及び成形型上部105,155から切り離されて離型される。その際、スプルー140,190が剪断され、折れることがある。確実に直線的に離型できるように、スプルー140,190は、スペーサ142,192を成形型上部105,155から分離する際に、手動で折れ、剪断できるような小さな直径でなければならない。このため、スプルー140,190の直径が最大2.5cm、好ましくは最大2cmであることが有効であることが分かっている。したがって、開口8の内径は、最大2.5cm、好ましくは最大2cmであることが望ましい。また、スプルー140,190の分離をさらに容易にするために、より小さな直径を選択することもできる。しかし、開口108,158は、骨セメントペースト36が過度の抵抗なしに開口108,158から押し出されるように、0.2mm以下の直径を有してはならない。そうしないと、骨セメントペースト36の粘度によっては、成形型上部105を成形型下部101に押し込む際の、又は、成形型上部155を成形型下部151に押し込む際の抵抗が大きくなりすぎて、まだ手作業で行うことができないことや、大腿骨の成形型と脛骨の成形型の損傷や破壊を避けることができないことになる。ここでの開口108,158の最適な直径は、使用される骨セメントペースト36の粘度に依存する。典型的な骨セメントに適した直径は、1mmから20mmである。経験則として、骨セメントペースト36の粘度が高いほど、選択した開口108,158の内径を大きくする必要がある。
【0172】
離型後、成形型下部101,151と成形型上部105,155との接合部に形成されたバリ、スプルー140,190の突出した残骸は、例えば、ナイフやメスで切り落としたり、研削ヘッドで削ったりして除去してもよい。最終的には、図34に示すようなスペーサ142,192が得られる。
【0173】
これまでの説明で開示された本発明の特徴は、特許請求の範囲、図及び例示的な実施形態と同様に、本発明をその様々な実施形態で実現するために、個別にも任意の組み合わせでも必須となり得る。
【符号の説明】
【0174】
1,51,101,151 成形型下部
2,52,102,152 空洞
3,53,103,153 成形型壁
4,54,104,154 内部
5,55,105,155 成形型上部
6,56,106,156 成形面
7,57,107,157 容器
8,58,108,158 開口
9,59,109,159 蓋
10,60 金属コア
11,61,111,161 内壁
12,62 間隔片
14 孔
16,66,116,166 スタンド
18,68 溝
19,69 スプルー
20,70,120,170 制限停止部/接触面
21,71 溝
22,72,122,172 嵌合停止部/接触面
23,73 凹部
24,74,124,174 蓋縁
26 混合カップ
28 注ぎ口
30 骨セメント粉入りフィルムパウチ
32 モノマー液入りアンプル
34 スパチュラ
36 骨セメントペースト
38 余分な骨セメントペースト
40,90,140,190 スプルー
42,92,142,192 スペーサ
44,94 スペーサヘッド
46,96 ステム
図1
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【外国語明細書】