(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019598
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】改良した電気的特性を有するJBSダイオードを有するワイドバンドギャップ半導体電子装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20220120BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20220120BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20220120BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20220120BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220120BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H01L29/91 K
H01L29/86 301D
H01L29/91 F
H01L29/86 301F
H01L29/91 C
H01L29/48 D
H01L29/48 P
H01L21/28 301B
H01L21/265 Z
H01L21/265 602A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112285
(22)【出願日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】102020000017221
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ラスクーナ
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB05
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB21
4M104CC01
4M104CC03
4M104GG02
4M104GG03
4M104HH16
4M104HH17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改良した電気的特性を有するJBSダイオードを有するワイドバンドギャップパワーデバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ジャンクションバリアショットキーダイオード50において、第1導電型で表面55Aを有するシリコンカーバイドの本体55は、ドリフト領域59及び表面55Aによって区画化される複数個の第1部分59Aと、第2部分59Bと、表面55Aからドリフト領域59内へ延在する第2導電型を有する複数個の第1注入領域62と、表面55A上に配置されている複数個の金属部分(第1部分65A、第2部分66A)とによって形成される。各金属部分は、複数個の表面部分夫々の表面部分とショットキーコンタクトして第1タイプのショットキーダイオード51及び第2タイプのショットキーダイオード52を形成する。各ショットキーダイオードは、平衡状態において、異なる高さのショットキーバリアを有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型導通電子パワーデバイス(50;100;200;250)において、
第1導電型及び表面(55A)を有しているワイドバンドギャップ半導体の本体(55)であって、ドリフト領域(59)及び該表面によって区画化されている複数個の表面部分(59A,59B;105,105A;105B)を有している該本体(55)、
該表面から該ドリフト領域内へ延在している第2導電型の複数個の第1注入領域(62)、
該表面(55A)上に配置されている複数個の金属部分(65A,66A;115A,115B;215A,216A;265A、266A,266B)であって、各金属部分が該複数個の表面部分の夫々の表面部分とショットキーコンタクトをしていて第1ショットキーダイオードと第2ショットキーダイオードとを含む複数個のショットキーダイオード(51,52;101,102;201,201;251,252,253)を形成している該複数個の金属部分、
を有しており、該第1ショットキーダイオードが、平衡状態において、該第2ショットキ-ダイオードとは異なる高さを有するショットキーバリアを有しているパワーデバイス。
【請求項2】
該第1ショットキーダイオード(51;101;201;251)が該複数個の金属部分の内の第1金属部分(65A;115A;215A;265A)及び該複数個の表面部分(59A;105;105A)の内の第1表面部分を有しており、該第1金属部分が該第1表面部分とショットキーコンタクトしており且つ、平衡状態において、第1高さ(φ1)を有するショットキーバリアを形成しており;該第2ショットキーダイオード(52;102;202;252)が該複数個の金属部分の内の第2金属部分(66A;115B;216A;266A)及び該複数個の表面部分の内の第2表面部分(59B)を有しており、該第2金属部分は該第2表面部分とショットキーコンタクトしており且つ、平衡状態において、第2高さ(φ2)のショットキーバリアを形成しており、該第1高さが該第2高さよりも一層小さい請求項1記載のパワーデバイス。
【請求項3】
該第1表面部分(59A;105;105A)が各々夫々の第1注入領域(62)から第1距離に配置されており、該第2表面部分(59B)が各々同じ夫々の第1注入領域から第2距離に配置されており、該第1距離が該第2距離よりも一層小さい請求項2記載のパワーデバイス。
【請求項4】
該第1金属部分(65A;115A;215A;265A)が第1金属物質からなり、且つ該第2金属部分(66A;115B;216A;266A)が第2金属物質からなり、該ドリフト領域及び該第1及び第2表面部分が該第1導電型を有しており、該第1金属物質が該第2金属物質とは異なるものであり及び/又は該第1及び第2表面部分が異なるドーピングレベルを有している請求項2又は3記載のパワーデバイス。
【請求項5】
該ドリフト領域及び該第1及び第2表面部分が同一のドーピングレベルを有しており、且つ該第1金属物質が該第2金属物質とは異なるものである請求項1乃至4の内のいずれか1項に記載のパワーデバイス。
【請求項6】
該第1表面部分が第1ドーピングレベルを有しており、且つ該第2表面部分が該第2ドーピングレベルよちも一層低い第2ドーピングレベルを有しており、且つ該第1金属物質が該第2金属物質とは異なるものである請求項4記載のパワーデバイス。
【請求項7】
各第1表面部分が夫々の第1注入領域と隣接しており且つ該夫々の第1注入領域と夫々の第2注入領域との間に配置されており、本デバイスが、更に、複数個の第1金属領域(65;215)及び第2金属領域(66,216)を有しており、各第1金属領域は夫々の第1注入領域の上側のオーミックコンタクト部分(65B;215B)及び夫々の第1表面部分(59A)とコンタクトしている夫々の第1金属部分を形成するショットキーコンタクト部分(65A;215A)を有しており、及び該第2金属領域は該第1金属領域上を延在しており且つ該第2表面部分(59B)とコンタクトしている第2金属部分を形成している請求項5又は6に記載のパワーデバイス。
【請求項8】
更に、該複数個の金属部分の内の第3金属部分(266B)及び該複数個の表面部分の内の第3表面部分(105B)を含む第3ショットキーアイオード(253)を有しており、該第3金属部分は該第3表面部分(105B)とショットキーコンタクトしており且つ、平衡状態において、第3高さ(φ3)を有するショットキーバリアを形成しており、該第3表面部分は該第1ドーピングレベルを有しており且つ各々が夫々の第1表面部分(105A)と夫々の第2表面部分(59B)との間に配置されており、且つ該第3高さ(φ3)が該第1高さ(φ1)よりも一層大きく且つ該第2高さ(φ2)よりも一層小さい請求項6記載のパワーデバイス。
【請求項9】
各第1表面部分が夫々の第1注入領域と隣接しており、本パワーデバイスが、更に、複数個の第1金属領域(265)及び第2金属領域(266)を有しており、各第1金属領域は夫々の第1注入領域上側のオーミックコンタクト部分(265B)及び夫々の第1表面部分とコンタクトしている夫々の第1金属部分を形成しているショットキーコンタクト部分(265A)を有しており、及び該第2金属領域が該第1金属領域上を延在しており且つ該第2表面部分(59B)とコンタクトしている該第2金属部分(266A)及び該第3表面部分(105B)とコンタクトしている第3金属部分(266B)を形成している請求項8記載のパワーデバイス。
【請求項10】
該第1表面部分(105)が第1ドーピングレベルを有しており且つ該第2表面部分(59B)が該第1ドーピングレベルよりも一層低い第2ドーピングレベル及び該第1金属物資が該第2金属物質と同じである請求項4記載のパワーデバイス。
【請求項11】
各第1表面部分が夫々の第1注入領域(62)と隣接しており且つ該夫々の第1注入領域と夫々の第2表面部分との間に配置されており、該第1表面部分は第2注入領域(105)によって形成されており、及び該第1及び第2金属部分(115A,115B)が該第2注入領域及び該第2表面部分の上を延在しており且つそれらと直接的に電気的にコンタクトしている単一金属領域(115)を形成している請求項10記載のパワーデバイス。
【請求項12】
更に、複数個の導電性領域(63)を有しており、該導電性領域は各々夫々の注入領域(62)と及び夫々の金属部分とオーミックコンタクトしている請求項1乃至11の内のいずれか1項に記載のパワーデバイス。
【請求項13】
第1導電型及び表面(300A;400A)を有しているワイドバンドギャップ半導体のウエハ(300;400)であって、ドリフト領域(59)と複数個の第1注入領域(62)を包含しており該複数個の第1注入領域が第2導電型を有しており且つ該表面から該ドリフト領域内へ延在している該ウエハから縦型導通電子パワーデバイスを製造する方法において、
該表面上に複数個の金属部分(65A,66A;115A,115B;215A,216Z,266A,266B)を形成し、各金属部分は該ドリフト領域の複数個の表面部分(59A,59B;105)において該ドリフト領域とショットキーコンタクトしており、各表面部分は該表面により区画化されていて第1ショットキーダイオード及び第2ショットキーダイオードを含む複数個のショットキーダイオード(51,52;101,102;201,202;251,252,253)を形成し、
該第1ショットキーダイオードが、平衡状態において、該第2ショットキーダイオードとは異なる高さを有するショットキーバリアを有している方法。
【請求項14】
複数個の金属部分を形成することが金属物質の層(406)を付着させることを包含しており、本方法が、更に、該表面部分に第1導電型のドーパント種を導入することを包含している請求項13記載の方法。
【請求項15】
複数個の金属部分を形成することが、
第1金属物質の第1層(305)を付着させ、
該複数個の表面部分の内の第1表面部分(59A;105;105A)とショットキーコンタクトしている第1金属部分(65A;115A;215A;265A)を形成するために該第1層をパターン形成し、及び
第2金属物質の第2層(306)を付着させる、
ことを包含している請求項13記載の方法。
【請求項16】
該ドリフト領域が第1導電型及び第1ドーピングレベルを有しており、且つ、本方法が、更に、各々が第1ドーピングレベルよりも一層高い第2ドーピングレベルを有するドープ領域(410)を形成するために該注入領域(62)の周りの表面区域において該ドリフト領域内に第1導電型のイオンを選択的に注入する、
ことを包含している請求項13又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良した電気的特性を有するJBS(ジャンクションバリアショットキー)ダイオードを有しているワイドバンドギャップ半導体電子装置及び対応する製造方法に関するものである。特に、以後、縦型導通(vertical-conduction)電子パワーデバイスを参照する。
【背景技術】
【0002】
既知の如く、シリコンカーバイド(SiC)及びガリウムナイトライド(GaN)等の、例えば1.1eVより一層大きなワイドバンドギャップと、低オン状態抵抗と、高熱伝導度と、高動作周波数と、電荷キャリアの高い飽和速度とを有する半導体物質は、特に、例えば600Vと1300Vとの間の電圧において又は高温度等の特定の動作条件において動作するパワー適用例において、シリコン電子装置よりもより良い性能を有する例えばダイオード及びトランジスタ等の電子装置を得ることを可能とする。
【0003】
特に、上述した特性によって区別される例えば3C-SiC、4H-SiC、6H-SiC等のポリタイプの内の一つにおけるシリコンカーバイドからなるウエハから上記電子装置を得ることが知られている。
【0004】
例えば、
図1は、シリコンカーバイドからなる既知のJBSダイオード1を示している。該JBSダイオード1は、概略、複数個の基本セル(1個のみ図示)から形成されており、それらのセルは互いに等しく且つ同一のダイ内に並列的に配置されており、各基本セルはショットキーダイオード2と互いに並列接続されている一対のPNダイオード3とを有している。
【0005】
該JBSダイオード1は、シリコンカーバイド(SiC)の本体5内に形成されており、該本体はカーテシアン座標系XYZの第1軸Zに沿って互いに反対側である第1表面5Aと第2表面5Bとによって区画されており且つ基板7と例えばエピタキシャル成長によって該基板7の上に形成されたドリフト領域9とを有している。基板7はN型のものであって且つ本体5の第2表面5Bを形成している。ドリフト領域9はN型であって基板7のドーピングレベルよりも一層低いドーピングレベルを有しており且つ本体5の第1表面5Aを形成している。
【0006】
例えばニッケル又はニッケルシリサイドの導電性物質からなるカソードメタリゼーション領域10が本体5の第2表面5B上を延在しており且つJSB装置1のカソードKを形成している。
【0007】
JBSダイオード1は、更に、複数個のバリア領域12を有しており、
図1中にはその内の2個のみが示されており且つそれらは実質的にドリフト領域9内に収容されている。該バリア領域12は、カーテシアン座標系XYZの第2軸Yに沿って互いに離隔されて配置されており、且つその各々は本体5の第1表面5Aからドリフト領域9内へ延在するP型の夫々の注入領域13によって形成されている。更に、該バリア領域12は、カーテシアン座標系XYZの第3軸Xに沿って延在している。
【0008】
バリア領域12の各々は、更に、例えばニッケルシリサイド等の導電物質からなる夫々のオーミックコンタクト領域14を有しており、それは夫々の注入領域13上を部分的にその中に入って延在しており、且つ、
図1の断面図において、夫々の注入領域13の範囲以下の第2軸Yに沿っての範囲を有している。注入領域13とドリフト領域9との間の界面の各々はPNダイオード3を形成している。
【0009】
JBSダイオード1は、更に、チタン、ニッケル、又はモリブデン等の金属物質からなるアノードメタリゼーション領域18を有しており、それは本体5の第1表面5A上を延在しており且つJBSダイオード1のアノードAを形成している。注入領域13のそばでドリフト領域9と直接的に電気的接触しているアノードメタリゼーション領域18の部分は、ショットキー接合(即ち、半導体-金属接合)を形成しており、その各々は夫々のショットキーダイオード2を構成している。
【0010】
該ショットキー接合の各々は平衡状態において高さφ0を有する夫々のバリアを有しており、それは夫々のショットキーダイオード2の導通スレッシュホールド電圧を決定する。使用する場合に、逆バイアス又は順方向バイアスを得るためにJBSダイオード1のカソードKとアノードAとの間にバイアス電圧を印加させることが可能である。詳細に説明すると、順方向バイアスにおいては(アノードAがカソードKよりも一層高い電位にある)、ショットキー接合のバリア高さφ0を低下させる順方向電圧を印加して、ショットキーダイオード2をスイッチオンさせ且つJBSダイオード1のアノードAとカソードKとの間に例えば10Aの動作電流が流れることを許容する。
【0011】
低バリア高さφ0、従ってショットキーダイオード2の低導通スレッシュホールド電圧は、該動作電流の流れに必要な順方向電圧の値を低下させること、従ってJBSダイオード1の低電力消費を達成することを可能とする。
【0012】
一方、逆バイアスにおいては(即ち、カソードKがアノードAよりも一層高い電位にある)、JBSダイオード1は、例えば、600Vと1300Vとの間の高いバイアス電圧の存在下においてアノードAとカソードKとの間のリーク電流の値が可及的に低いものであることを保証せねばならない。
【0013】
この様に高いバイアス電圧はショットキー接合内に高い電界を発生し、例えばトンネル効果に起因してリーク電流を増加させる。この様な増加は、特にバリア高さφ0が小さい場合に特に顕著である。その結果、小さなバリア高さφ0は高いリーク電流を発生させ、従ってJBSダイオード1の動作問題を発生させる。
【0014】
更に、逆バイアスにおいては、各PNダイオード3は、低濃度の電荷キャリアを有する夫々の空乏ゾーンを形成させ、それは夫々の注入領域13とドリフト領域9との間の界面から主にドリフト領域9内側を延在する。該空乏ゾーンは、夫々のショットキー接合の近傍において、高バイアス電圧によって発生される電界値を局所的に低下させることに貢献する。
【0015】
従って、2つの隣接する注入領域13の間の第2軸Yに沿っての距離を可及的に小さいものであるようにJBSダイオード1を設計することが知られている。2つの隣接する注入領域13の間の距離がより小さければ、実際に、ショットキー接合全体の電界の低下を一層大きなものとし、その結果リーク電流を低下させることとなる。しかしながら、2つの隣接する注入領域13の間の距離が一層小さいと、順方向バイアスにおける電流の流れのために使用可能なショットキーダイオード2の面積が一層小さくなり、従ってJBSダイオード1の抵抗を増加させ、その結果JBSダイオード1の性能を悪化させることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的とするところは、該従来技術の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、特許請求の範囲に記載されるように、JBSダイオードを有するワイドバンドギャップ半導体電子装置及び対応する製造方法が提供される。本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照して純粋に非制限的な例としての本発明の実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】既知のワイドバンドギャップ電子半導体パワーデバイスの断面図。
【
図2】電気的均等性がハイライトされている本ワイドバンドギャップ電子半導体パワーデバイスの1実施例の断面図。
【
図2A】本電子装置の幾何学的パラメータがハイライトされている
図2の拡大詳細図。
【
図3】
図1の既知の電子装置の基本セルと比較した
図2の電子装置の基本セルの順方向バイアス電流-電圧曲線のシミュレーションを示したグラフ図。
【
図4】
図2Aのセクションライン80に沿っての電界の挙動を示したグラフ図。
【
図5】別の実施例に基づく本ワイドバンドギャップ電子半導体パワーデバイスの断面図。
【
図6】別の実施例に基づく本ワイドバンドギャップ電子半導体パワーデバイスの断面図。
【
図7】別の実施例に基づく本ワイドバンドギャップ電子半導体パワーデバイスの断面図。
【
図8】製造中の或るステップにおける
図2の電子パワーデバイスを示した断面図。
【
図9】製造中の或るステップにおける
図2の電子パワーデバイスを示した断面図。
【
図10】製造中の或るステップにおける
図2の電子パワーデバイスを示した断面図。
【
図11】製造中の或るステップにおける
図2の電子パワーデバイスを示した断面図。
【
図12】製造中の或るステップにおける
図5の電子装置を示した断面図。
【
図13】製造中の或るステップにおける
図5の電子装置を示した断面図。
【
図14】製造中の或るステップにおける
図5の電子装置を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
縦型導通電子パワーデバイス内に組み込まれており且つ異なるタイプの複数個のショットキーダイオードであって各タイプのショットキーダイオードが平衡状態において異なるバリア高さを有するショットキー接合を有している該複数個のショットキーバリアダイオードを有しており特にシリコンカーバイドのワイドバンドギャップ半導体JBS(ジャンクションバリアショットキー)ダイオードについて以下説明する。
【0020】
詳細には、
図2及び2AはJBSダイオード50を示しており、それは、本実施例においては、互いに等しいものであり同一のダイ内に並列接続されている複数個の基本セル54を有している。
【0021】
特に
図2に示した如く、各基本セル54は、一つ又はそれ以上の第1タイプのショットキーダイオード51と、一つ又はそれ以上の第2タイプのショットキーダイオード52と、並列して配置された一つ又はそれ以上のPNダイオード53とを有している。特に、この実施例においては、各基本セル54は、2個の第1タイプのショットキーダイオード51によって及び2個の隣接するPNダイオード53の間に配置されている1個の第2タイプのショットキーダイオード52によって形成されている。
【0022】
JBSダイオード50は、シリコンカーバイド(SiC)の本体55内に形成されており、該本体はカーテシアン座標系XYZの第1軸Zに沿って互いに反対側の第1表面55Aと第2表面55Bとによって区画化されており且つ基板57とその上に例えばエピタキシャル的に成長されたドリフト領域59とを有している。基板57は、N型であり、例えば2mΩ・cmと30mΩ・cmとの間の低い固有抵抗を有するようなドーピングレベルであり、例えば、50μmと360μmとの間で特に180μmである厚さを有しており、且つ本体55の第2表面55Bを形成している。ドリフト領域59はN型であり、基板57のドーピングレベルよりも一層低く、例えば1016at/cm3のオーダーのドーピングレベルを有しており、5μmと15μmとの間の厚さを有しており且つ本体33の第1表面55Aを形成している。
【0023】
ドリフト領域59の厚さは、JBSダイオード50の特定の適用例に基づいて、例えばJBSダイオード50へ印加されるべき最大動作電圧に従って、設計段階において選択することが可能である。例えばニッケル又はニッケルシリサイド等の導電性物質のカソードメタリゼーション領域54が本体55の第2表面55B上を延在しており且つJBS50のカソードKを形成している。JBSダイオード50は、更に、ドリフト領域59内に収容されている複数個の注入領域62を有している。
【0024】
注入領域62はP型であり、ドリフト領域59のドーピングレベルよりも一層高いドーピングレベルを有しており、各々が第1軸Zに沿ってドリフト領域59内部を本体55の第1表面55Aから或る深さ延在しており、且つ各々が、例えば1μmと6μmとの間のカーテシアン座標系XYZの第2軸Yに沿っての或る幅を有している。
【0025】
更に、注入領域62は、第2軸Yに沿って互いに或る距離、例えば2μmと5μmとの間、SY離隔されて配置されている。平面図(ここでは例示されていない)において、注入領域62は、カーテシアン座標系XYZの第3軸Xに沿って長手方向に延在するストリップの形状を有することが可能であり、又はその他の任意の形状を有することが可能であり、例えば、それらは、正方形、矩形、六角形、又は円等の規則的又は不規則的な幾何学的図形を形成することが可能である。
【0026】
その結果、
図2に例示されている注入領域62は、例示した断面において別個の領域として見ることが可能な一層複雑な形状を有している単一の領域の一部とすることが可能である。注入領域62とドリフト領域59との間の界面はPN接合を形成しており、各々が夫々のPNダイオード53を形成している。
【0027】
JBSダイオード50は、更に、導電性物質からなる複数個のオーミックコンタクト領域63を有することが可能であり、その各々は夫々の注入領域62上を延在しており且つ注入領域62のものにほぼ対応する形状を有している。各オーミックコンタクト領域63は夫々の注入領域62と直接的に電気的にコンタクトしており且つ、第2軸Yに沿って、夫々の注入領域62の幅と等しいか又はそれより小さい幅にわたり延在している。
【0028】
詳細に説明すると、この実施例においては、オーミックコンタクト領域63はニッケルシリサイドからなり、その各々は夫々の注入領域62内を部分的に延在しており且つ夫々の注入領域62のものよりも一層小さい幅を有している。
【0029】
JBSダイオード50は、更に、各タイプのショットキーダイオードに対して1個づつ(後に詳述する如く)、複数個のアノードメタリゼーション領域を有しており、それは本体55の第1表面55A上を延在している。この実施例においては、JBSダイオード50は第1アノードメタリゼーション領域65及び第2アノードメタリゼーション領域66を有している。
【0030】
第1アノードメタリゼーション領域65も夫々の注入領域62のものにほぼ対応する形状を有しているが、後に詳述するように、一層大きな幅を有しており、更に、注入領域62について上述した如く、それらは一層複雑な形状を有する第1の単一のアノードメタリゼーション領域65の一部を構成することが可能である。それらは、いずれにしても、電気的に並列接続されており、従ってそれらは単一の領域として考えることが可能である。
【0031】
第1アノードメタリゼーション領域65は、例えばモリブデンである第1金属物質からなり、且つその各々は少なくとも1個の第1部分65A(
図2A)を有しており、該第1部分65Aは、夫々の注入領域62に隣接した位置においてその側部上においてドリフト領域59の夫々の第1部分59A上を延在しており且つ直接的に電気的にコンタクトしている。この実施例においては、第1アノードメタリゼーション領域65の各々は、更に、夫々の第2領域65Bを有しており、該第2領域65Bは夫々の注入領域62及び夫々のオーミックコンタクト63の上を延在しており且つそれらと直接的に電気的にコンタクトしている。
【0032】
第1アノードメタリゼーション領域65の第1部分65Aは、各々、幅W1を有しており且つ隣接する第1アノードメタリゼーション領域65の第1部分65Aから距離W2に配置されている。
【0033】
第1アノードメタリゼーション領域65の第1部分65Aは、各々、ドリフト領域59の夫々の第1 部分59Aと共に、夫々の第1タイプのショットキーダイオード51(
図2)を構成するショットキー接合を形成している。第1タイプのショットキーダイオード51の接合は、各々、夫々のショットキーバリアを有しており、該バリアは、夫々の第1タイプのショットキーダイオード51の第1導通スレッシュホールド電圧を決定する例えば約0.5eVである高さφ
1を平衡状態において有している。
【0034】
第2アノードメタリゼーション領域66は、例えばチタン又はニッケルなどの第2金属物質からなり且つ本体55の第1表面55A上及び第1アノードメタリゼーション領域65上を延在している。その結果(
図2A)、第2メタリゼーション領域66の一部66Aは、隣接する第1アノードメタリゼーション領域65の2つの第1部分65Aの間の距離W
2に等しい幅に対してドリフト領域59の第2部分59Bと直接的に電気的にコンタクト(ショットキーコンタクト)している。
【0035】
換言すると、第2部分59Bは、夫々の同一の注入領域62から、第1部分59Aに関して、一層大きな距離に配置されている。
【0036】
従って、第2メタリゼーション領域66の一部66Aは、ドリフト領域59の第2部分59Bと共に、夫々の第2タイプのショットキーダイオード52(
図2)を構成するショットキー接合を形成している。第2タイプのショットキーダイオード52の接合は、各々、夫々のショットキーバリアを有しており、該バリアは、平衡状態において、第1導通スレッシュホールド電圧よりも一層高い夫々の第2タイプのショットキーダイオード52の第2導通スレッシュホールド電圧を決定するバリア高さφ
1よりも一層大きな高さφ
2、例えば1.2eV、を有している。
【0037】
第1及び第2アノードメタリゼーション領域65,66は、更に、JBSダイオード50のアノードAを形成する。
【0038】
使用する場合に、順方向バイアスにおいて(JBSダイオード50のカソードKへ印加される電圧よりもアノードAへ印加される電圧が一層高い)、低電圧がJBSダイオード50のアノードAからカソードKへの例えば10Aの値の高い動作電流の流れを可能とさせる。実際に、第1タイプのショットキーダイオード51は第2タイプのショットキーダイオード52と比較して、より低い順方向電圧での電流の流れを可能とさせる。何故ならば、第1導通スレッシュホールド電圧が第2導通スレッシュホールド電圧よりも一層低いからである。
【0039】
その結果、全体として、本発明者等によって行われた
図3に例示したシミュレーションに表されているように、JBSダイオード50は
図1に例示したJBSダイオード1よりも一層低い導通スレッシュホールドを有しており、
図3において、実線の曲線はJBSダイオード50に対しての電圧Vの関数としての電流Iのプロットを表しており且つ点線は基本セルに関しての既知のJBSダイオード1に対する同様のプロットを示している。理解されるように、JBSダイオード50の場合には、アノードAとカソードKとの間に印加される一層低い順方向バイアス電圧で同一の電流の流れを得ることが可能である。従って、JBSダイオード50は順方向バイアスにおける電力消費は低いものである。
【0040】
逆バイアスにおいては、アノードAとカソードKとの間に例えば600Vと1300Vとの間の高い電圧をJBSダイオード50へ印加させることが可能である。逆バイアスにおいては、注入領域62とドリフト領域59との間の界面は、各々、電荷キャリアの低濃度を有している夫々の空乏領域を形成し、それは、特に本体55の第1表面55Aの近傍において、高電圧によって発生される電界を局所的に低下させる。実際に、本実施例においては、該空乏領域は、主に、ドリフト領域59内に延在するが、その理由は、ドリフト領域59のドーピングレベルは注入領域62のドーピングレベルよりも一層低いからである。
【0041】
特に、ドリフト領域59の第1部分59Aは、各々、ドリフト領域59の第2部分59Bと比較して、夫々のPN接合から一層小さい距離に延在している。従って、第1部分59Aは夫々の空乏ゾーンの影響によってより一層影響される。その結果、第1部分59Aは、本体55の第1表面55Aの近傍において、ドリフト領域59の第2部分59Bの平均電界よりも一層低い平均電界へ局所的に露呈される。
【0042】
換言すると、ドリフト領域59における電界は、本体55の第1表面55Aの近傍において、ドリフト領域59の第1部分59Aと注入領域62との間の界面において最小値を有しており、且つドリフト領域59の第2部分59Bの中央において、即ち注入領域62から最大距離において、それが最大値となるまで第2軸Yに沿って注入領域62から離れるに従って増加する。
【0043】
上記の電気的挙動は本発明者等が行った
図4のシミュレーションに例示されており、それは
図2Aのライン80に沿っての電界Eの挙動を示しており、該ラインは、注入領域62とドリフト領域59の第1部分59Aとの間の界面からドリフト領域59の第2部分59Bの中央点へ第1表面55Aに対して平行な方向に延在している。
【0044】
第1タイプのショットキーダイオード51はドリフト領域59の第1部分59A内に延在しており、従って低い平均電界に露呈される。従って、第1タイプのショットキーダイオード51は、逆バイアスにおいて印加される高い電圧にもかかわらずに低いリーク電流を保証することが可能である。
【0045】
第2タイプのショットキーダイオード52は、ドリフト領域59の第2部分59Bに延在しており、従って一層高い平均電界に露呈される。しかしながら、第2タイプのショットキーダイオード52はバリア高さφ1よりも一層大きなバリア高さφ2を有しており、従って一層高い電界が存在しても低いリーク電流を保証することが可能である。従って、全体としては、JBSダイオード50は逆バイアスにおいて低いリーク電流を得ることが可能である。
【0046】
設計段階において、2つの隣接する注入領域62の間の距離SYを一定に維持することによって、その幅W1及び距離W2を、特定の適用例によって要求されるJBSダイオード50の特性に基づいて、調整することが可能である。例えば、低い順方向バイアス電圧を得ることが望ましい場合には、幅W1を増加させ且つ距離W2を減少させることが可能である。一方、逆バイアスにおいて低いリーク電流とすることが望ましい場合には、幅W1を減少させることが可能であり且つ距離W2を増加させることが可能である。
【0047】
更に、例えば2つの隣接するPNダイオード53の空乏領域が殆どオーバーラップが無い状態となる点まで、2つの隣接する注入領域62の間の距離SYが大きいものであるようにJBSダイオード50を構成することが可能である。
【0048】
2つの隣接する空乏領域62が殆どオーバーラップしない状態にあるということは、距離SYが一層小さい場合と比較して、ドリフト領域59の第2部分59Bにおける平均電界を一層高くさせる。しかしながら、第2タイプのショットキーダイオード52の一層大きなバリア高さがこの様な一層大きな平均電界を補償して低いリーク電流を保証することを可能とさせる。更に、一層大きな距離SYは、アノードとカソードとの間の電流の流れに対してJBSダイオード50が一層低い抵抗を有することを可能とし、従って順方向バイアスにおいての電力消費を低下させることを可能とする。
【0049】
距離SYが実際に大きい場合、幅W1と距離W2とにも夫々依存する電流の流れのために使用可能な第1タイプのショットキーダイオード51の及び第2タイプのショットキーダイオード52の面積は、一層小さな距離SYに対するものよりも一層大きい。従って、全体として、JBSダイオード50は電流の通過のために使用可能な一層大きな面積を有することが可能であり、従って順方向バイアスにおいて一層低い抵抗とすることが可能である。
【0050】
換言すると、JBSダイオード50は、順方向バイアスにおける低電力消費と逆バイアスにおける低いリーク電流の両方を提供することが可能である。
【0051】
図5は、別の実施例に基づくJBSダイオード100を示している。
【0052】
JBSダイオード100は、JBSダイオード50と同様の構造を有しており、従って共通の要素には同一の参照番号を付してある。
【0053】
詳細に説明すると、JBSダイオード100は、第1タイプのショットキーダイオード101と、第2タイプのショットキーダイオード102と、PNダイオード53とを有しており、且つ本体55内に形成されている。本体55も基板57と、ドリフト領域59と、注入領域62と、オーミックコンタクト領域63とを有している。更に、カソードメタリゼーション領域54が本体55の第2表面55B上に延在している。
【0054】
JBSダイオード100は、更に、N型の複数個の注入したアノード領域105を有しており、該アノード領域は各注入領域62の横で、本体55の第1表面55Aからドリフト領域59内へ延在している。注入したアノード領域105は、ドリフト領域59のドーピングレベルよりも一層高いドーピングレベルを有しており、例えば、1×1017at/cm3よりも一層高いドーパント原子の濃度を有しており、且つ、例えば10nmと100nmとの間の小さな深さを有している。
【0055】
詳細に説明すると、注入したアノード領域105は、各々、夫々の注入領域62と隣接してドリフト領域59内に延在しており、各々、幅W1を有しており且つ、第1アノードメタリゼーション領域65の第1部分65Aに対するJBSダイオード50に関して前述したように、夫々の隣接する注入したアノード領域105から距離W2に配置されている。
【0056】
従って、注入したアノード領域105は、JBSダイオード50の第1部分59Aと同様のドリフト領域59の表面部分を構成しており且つ第1部分59Aよりも一層高いドーピングレベルを有している。
【0057】
例えばモリブデン、チタン、又はニッケルのアノードメタリゼーション領域115が、本体55の第1表面55A上及びオーミックコンタクト領域63上を延在している。
【0058】
注入したアノード領域105と直接的に電気的にコンタクト(ショットキーコンタクト)しているアノードメタリゼーション領域115の第1部分115Aは、各々、夫々の第1タイプのショットキーダイオード101を形成し、各第1タイプのショットキーダイオード101は、平衡状態において、高さφ1のショットキーバリアを有している。
【0059】
2つの隣接する注入したアノード領域105の間の距離W2に等しい幅を有しているドリフト領域59の第2部分59Bと直接的に電気的にコンタクトしているアノードメタリゼーション領域115の第2部分115Bは、各々、夫々の第2タイプのショットキーダイオード102を形成しており、各第2タイプのショットキーダイオード102は、平衡状態において、第1タイプのショットキーダイオード101のものよりも一層大きな高さφ2のショットキーバリアを有している。
【0060】
本実施例においては、ショットキーダイオード101と第2タイプのショットキーダイオード102との間のバリア高さの差異は、注入したアノード領域105のドーピングレベルとドリフト領域59のドーピングレベルとの間の差異に依存する。この差異は、設計段階において、特定の適用例に従って調整することが可能である。
【0061】
JBSダイオード50に関して前述した如く、第1タイプのショットキーダイオード101のショットキー接合は、第2タイプのショットキーダイオード102のショットキー接合と比較して、一層小さなバリア高さを有しており且つ一層低い電界に露呈される。従って、全体として、JBSダイオード100は低電力消費であり、低リーク電流であり、且つ異なる動作条件に対して高い適応性を有している。
【0062】
図6は、本JBSダイオードの更なる実施例であるJBSダイオード200を示している。JBSダイオード200はJBSダイオード50と類似した概略構造を有しており、従って共通の要素には同じ参照番号を付してある。
【0063】
詳細に説明すると、JBSダイオード200は、第1タイプのショットキーダイオード201と第2タイプのショットキーダイオード202と、PNダイオードと、を有しており、基板57を有している本体55内に形成されている。該基板はここでもドリフト領域59と、注入領域62と、オーミックコンタクト領域63と、注入アノード領域105とを有している。更に、カソードメタリゼーション領域54が本体55の第2表面55B上を延在している。
【0064】
更に、JBSダイオード200は、第1アノードメタリゼーション領域215と第2アノードメタリゼーション領域216とを有しており、それらは本体55の第1表面55A上を延在している。第1アノードメタリゼーション領域215は、
図2のJBSダイオード50を参照して説明した第1アノードメタリゼーション領域65の形状と類似した形状を有しており、且つ例えばモリブデン等の第1金属物質からなる。
【0065】
特に、第1アノードメタリゼーション領域215は、各々、幅W1を有している少なくとも1個の第1部分215Aを含む複数個の部分を有しており、且つ夫々の注入アノード領域105と直接的に電気的コンタクト(ショットキーコンタクト)をしてそれらの上に配置されている。本実施例においては、各第1アノードメタリゼーション領域215も第2部分215Bを有しており、それは、夫々の注入領域62及び夫々のオーミックコンタクト領域63の上に延在しており且つそれらと直接的に電気的にコンタクトしている。
【0066】
夫々の注入アノード領域105とショットキーコンタクトしている第1アノードメタリゼーション領域215の第1部分215Aは、第1タイプのショットキーダイオード201を形成しており、その各々は、平衡状態において、高さφ1のショットキーバリアを有している。第2アノードメタリゼーション領域216は、例えばチタン又はニッケル等の第2金属物質からなり、且つ本体55の第1表面55A上及び第1アノードメタリゼーション領域215上を延在している。
【0067】
従って、第2アノードメタリゼーション領域216の一部216Aは、2つの隣接する注入アノード領域105の間に配置されているドリフト領域59の第2部分59Bと直接的に電気的にコンタクト(ショットキーコンタクト)しており、該第2部分59Bは距離W2に等しい幅を有している。第2アノードメタリゼーション領域216の一部216Aは、ドリフト領域59の第2部分59Bと共に、第2タイプのショットキーダイオード202を形成し、その各々は、第1タイプのショットキーダイオード201の高さφ1を有するバリアよりも一層大きな高さφ2のバリアを、平衡状態において、有するショットキー接合を有している。
【0068】
本実施例においては、第1タイプのショットキーダイオード201の及び第2タイプのショットキーダイオード202のバリア高さは、注入アノード領域105のドーピングレベルとドリフト領域59のドーピングレベルとの間の差を修正することによって、及び第1アノードメタリゼーション領域215と第2アノードメタリゼーション領域215とを夫々形成している第1金属物質と第2金属物質とによって誘起されるバリア高さの差を修正することの両方によって調整することが可能である。
【0069】
従って、JBSダイオード200は、JBSダイオード50,100に関して前述したものと同様の利点を有しており、且つ異なる動作条件に対する一層大きな適応性を有しており、それは設計段階において調整することが可能である。
【0070】
図7は、本JBSダイオードの更なる実施例であるJBSダイオード250を示している。JBSダイオード250は、JBSダイオード200の構造と類似した構造を有しており、従って、共通の要素には同一の参照番号を付してある。
【0071】
JBSダイオード250は、第1タイプのショットキーダイオード251と、第2タイプのショットキーダイオード252と、第3タイプのショットキーダイオード253とを有しており、それらはPNダイオード53と並列に配置されている。詳細に説明すると、本実施例においては、第1アノードメタリゼーション領域265の一部265A(JBSダイオード200の第1アノードメタリゼーション領域215の第1部分215Aと同様に)は、各々、夫々の注入領域62に隣接する夫々の注入アノード領域105の第1部分105A上を、注入アノード領域105の幅W1よりも一層小さな幅にわたり延在している。
【0072】
第2アノードメタリゼーション領域266(それはJBSダイオード200の第2アノードメタリゼーション領域216に類似している)は本体55の第1表面55A上を延在している。詳細に説明すると、第1アノードメタリゼーション領域266の第1部分266Aは、ドリフト領域59の第2部分59Bと直接的に電気的にコンタクト(ショットキーコンタクト)しており、且つ第2アノードメタリゼーション領域266の第2部分266Bは、第1部分105Aと隣接している注入アノード領域105の第2部分105Bと直接的に電気的にコンタクト(ショットキーコンタクト)している。
【0073】
従って、注入アノード領域105の第2部分105Bは、各々、注入アノード領域105の夫々の第1部分105Aとドリフト領域59の夫々の第2部分59Bとの間に配置されている。更に、注入アノード領域105の第2部分105Bは、各々、同じ夫々の注入領域62から夫々の第1部分105Aよりも一層大きな距離にあり、且つ同じ夫々の注入領域62から夫々の第2部分59Bよりも一層小さな距離にある。
【0074】
即ち、注入アノード領域105の第1部分105Aと直接的に電気的にコンタクトしている第1アノードメタリゼーション領域265の第1部分265Aは、平衡状態において高さφ1のバリアを有しており且つ第1タイプのショットキーダイオード251を形成するショットキー接合を形成する。
【0075】
ドリフト領域59の第2部分59Bと直接的に電気的にコンタクトしている第2アノードメタリゼーション領域266の第1部分266Aは、平衡状態において、高さφ1よりも一層大きな高さφ2のバリアを有しており且つ第2タイプのショットキーダイオード252を形成するショットキー接合を形成する。
【0076】
注入アノード領域105の第2部分105Bと直接的に電気的にコンタクトしている第2アノードメタリゼーション領域266の第2部分266Bは、平衡状態において、高さφ1よりも一層大きく且つ高さφ2よりも一層小さな高さφ3のバリアを有しており且つ第3タイプのショットキーダイオード253を形成するショットキー接合を形成している。
【0077】
従って、第3タイプのショットキーダイオード253は、第2タイプのショットキーダイオード252のものよりも一層低い導通スレッシュホールド電圧を有している。従って、全体的に、JBSダイオード250は低い導通スレッシュホールドを有しており、その結果低い電力消費を有している。
【0078】
更に、第3タイプのショットキーダイオード253は、注入アノード領域105の第2部分105Bに配置されており、それは、同じ隣接する注入領域62から第2部分59Bの距離よりも一層小さい隣接する注入領域62からの或る距離に配置されているので、逆バイアスにおいて、ドリフト領域59の第2部分59Bよりも一層低い平均電界に露呈される。
【0079】
その結果、全体的に、第1タイプのショットキーダイオード251、第2タイプのショットキーダイオード252、及び第3タイプのショットキーダイオード253もJBSダイオード250に対して低リーク電流を保証することが可能である。
【0080】
以後、JBSダイオード50,100,200,250を製造するステップについて説明する。
【0081】
JBSダイオード50は、第1表面300Aと第2表面300Bとを有しており且つ既に第1の既知の処理ステップが行われている
図8に断面で例示したシリコンカーバイド(SiC)のウエハ300から製造することが可能である。
【0082】
特に、
図8において、ウエハ300は、基板57と、ドリフト領域59と、注入領域62と、オーミックコンタクト領域63とを有する本体55(その第1及び第2表面55A,55Bは、夫々、ウエハ300の第1表面300A及び第2表面300Bに対応している)を形成するために既に処理されている。
【0083】
次いで、
図9に示すように、例えばモリブデンの第1金属物質の第1メタリゼーション層305をウエハ300の第1表面300A上に付着させ、且つ、既知のリソグラフィステップを介して、パターン形成(
図10)をして第1アノードメタリゼーション領域65を形成する。
【0084】
次いで、
図11に示すように、例えばチタン又はニッケルの第2金属物質の第2メタリゼーション層306をウエハ300の第1表面300A上に付着させて第2アノードメタリゼーション領域66を形成する。
【0085】
基板57の薄層化等の既知の処理ステップにより、ウエハ300の第2表面300B上にカソードメタリゼーション領域を形成し、ウエハ300をダイシングし、且つパッケージングを行ってJBSダイオード50を得る。
【0086】
JBSダイオード100は、
図12に例示したシリコンカーバイドのウエハ400から製造することが可能である。ウエハ400は
図8に例示したウエハ300と類似しており、従って、同様の要素には同一の参照番号を付してある。
【0087】
詳細に説明すると、ウエハ400は第1表面400Aと第2表面400Bとを有しており、且つ基板57,ドリフト層59,及び注入領域62を形成すべく既に処理されている。次いで、
図13に示すように、複数個のウィンドウ402を有するハードマスク401をウエハ400の第1表面400A上に設ける。ウィンドウ402は、注入領域62の上方及び注入アノード領域105が形成されることが意図されている箇所で夫々の注入領域62に隣接しているドリフト領域の部分の上方に配置される。
【0088】
ウィンドウ402は、模式的に矢印405で表したようにイオン注入のため及び注入イオン領域105を形成することが意図されているここではN型のドープ領域410を形成するために使用される。例えば1011と1013at/cm2との間で特に1012at/cm2のドーズでイオンを注入させることが可能である。このドーズは、実際に、注入領域62のドーピングを危険にさらすこと無しに、ドリフト領域59の夫々の部分のドーピングレベルを増加させるのに十分である。
【0089】
代替的に、ハードマスク401は、注入アノード領域105を形成することが意図されているドリフト領域59の部分の上方のみにウィンドウ402が配置されるように注入領域62上にも延在する部分(不図示)を有することが可能である。
【0090】
例示していないが既知の態様で、次いで、ハードマスク401を除去し、且つウエハ400を、例えば1500℃よりも高い温度においてドープ領域410を活性化させるためにアニーリングに露呈させて注入アノード領域105(
図14)を形成する。
【0091】
その後、
図14に示すように、オーミックコンタクト領域63を既知の態様で形成し、且つ例えばチタン又はニッケルの第2金属物質の第1メタリゼーション層406をウエハ400の第1表面400A上に付着させて第2アノードメタリゼーション領域115を形成する。
【0092】
基板57の薄層化等の既知の処理ステップが続いて、基板400の第2表面400B上にカソードメタリゼーション領域を形成し、ウエハ400をダイシングし、且つパッケージングをしてJBS100を得る。
【0093】
当業者等に明らかなように、JBSダイオード50,100について
図9-14を参照して既に説明したステップと同様のステップを介して
図12のウエハ400からJBSダイオード200,250を得ることが可能であるが、その詳細な説明は割愛する。
【0094】
最後に、明らかな如く、以上説明し例示した該ワイドバンドギャップ半導体電子装置に対して及びその製造方法に対して特許請求の範囲を逸脱すること無しに種々の修正及び変形を行うことが可能であることは勿論である。例えば、導電型PとNとを逆にすることも可能であり且つ上述したことをMPS(合体型PiNショットキー)ダイオードへ適用することも可能である。